(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属ワーク(2)の前記ワーク表面(2A)に生成される前記マーキング点(6)は、前記ワーク表面(2A)において目に見えるマーキング経路を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
前記溶接ワイヤ電極(4)に存在する前記電圧(U)と前記溶接ワイヤ電極(4)を流れる前記電流(I)とのうち少なくとも一方は、溶接システム(1)の、前記溶接ワイヤ電極(4)に接続された溶接電源(5)によって制御され、前記金属ワーク(2)の前記ワーク表面(2A)にもたらされる前記材料の除去および材料の改質のうち少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
前記溶接ワイヤ電極(4)の、マーキングされる前記ワーク表面(2A)に近づいたり離れたりできる前記ワイヤ端部(4A)の移動プロファイルおよび移動周波数のうち少なくとも一方は調整されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
前記溶接ワイヤ電極(4)の前記ワイヤ端部(4A)を前記金属ワーク(2)のマーキングされる前記ワーク表面(2A)に沿って案内する前記溶接トーチ(3)の移動速度および移動経路のうち少なくとも一方が調整されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
前記金属ワーク(2)の前記ワーク表面(2A)に生成される前記マーキング点(6)およびマーキング経路のうち少なくとも一方は、データを表示するために、具体的には前記ワーク(2)にラベリングするために、および/またはコード、具体的にはQRコード(登録商標)で前記ワーク(2)を識別するために使用される請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
前記マーキング中、前記溶接ワイヤ電極(4)の前後移動する前記ワイヤ端部(4A)は、その後の溶接プロセスで生成される溶接シームのプログラムされた目標の進行に沿って案内されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
マーキング経路の実際の進行と前記溶接シームの前記目標とする進行との間のずれは、品質を管理および溶接トーチの案内を再調整する、または品質を管理もしくは溶接トーチの案内を再調整するために測定されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
前記ワーク表面(2A)に生成されるマーキング経路のコントラストレベルは、溶接電源(5)によって制御される前記電圧および電流レベルのうち少なくとも一方と、前記溶接ワイヤ電極(4)の移動プロファイルおよび移動周波数のうち少なくとも一方と、前記溶接ワイヤ電極(4)の前記ワイヤ端部(4A)を前記ワーク表面(2A)に沿って案内する前記溶接トーチ(3)の移動速度とのうち少なくとも1つを含むマーキングパラメータを変更することで調整されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
前記ワーク表面(2A)のマーキング中に使用される前記マーキングパラメータは、溶接システム(1)のデータストア(9)にデータセットとして保存され、その後のマーキングプロセスのために再び前記溶接システム(1)の前記データストア(9)から読み出されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
前記ワーク表面(2A)に形成されるマーキング経路の異なるコントラストレベルと、前記金属ワーク(2)の異なる材料と、異なる溶接ワイヤ電極(4)とのうち少なくとも1つに対して、適したマーキングパラメータの関連データセットが前記溶接システム(1)の前記データストア(9)から読み出され、前記金属ワーク(2)の前記ワーク表面(2A)にマーキングすることを特徴とする請求項11に記載の方法。
前記金属ワーク(2)の前記ワーク表面(2A)のマーキング中、前記ワーク表面(2A)は供給される保護ガスによって酸化から保護されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
前記ワーク表面(2A)のマーキング中、前記溶接トーチ(3)は、その後の溶接プロセスで生成される溶接シームのプログラムされた目標の進行に従ってロボットアームによって自動的に案内されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
前記溶接トーチ(3)は、前記ワーク表面(2A)のマーキング中、具体的には前記ワーク表面(2A)にラベリングするために、手動で案内されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明は、更なる経費をかけないで、溶接が行われる金属ワークのワーク表面にマーキングすることを可能にする方法および装置を提供することを目的とする。
この目的は、本発明に従って、請求項1に記載の特徴を有する、金属ワークのワーク表面にマーキングするための方法によって達成される。
【0005】
したがって、本発明は、溶接ワイヤ電極を備えた溶接トーチがマーキングされるワーク表面に沿って案内され、その一方で溶接ワイヤ電極のワイヤ端部がマーキングされるワーク表面に近づいたり離れたりして、溶接ワイヤ電極に存在する電圧および/または溶接ワイヤ電極を流れる電流が電気火花を引き起こし、その火花が金属ワークのワーク表面に材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかをもたらしてワーク表面にマーキングする、金属ワークのワーク表面にマーキングするための方法を提供する。
【0006】
本発明にかかる方法の可能な一実施形態では、溶接ワイヤ電極は、溶接プロセス中に溶融可能な添加材料からなる。
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、溶接ワイヤ電極のワイヤ端部は、金属ワークとの電気的な短絡が起きるまで繰り返しワーク表面に近づき、その後ワーク表面から離れる。電気的な短絡が遮断される度に火花が発生し、金属ワークのワーク表面上に点をベースにして材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかをもたらしてマーキング点を生成する。
【0007】
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、金属ワークのワーク表面に生成されるマーキング点は、ワーク表面において目に見えるマーキング経路を形成する。
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、溶接ワイヤ電極に存在する電圧および/または溶接ワイヤ電極を流れる電流は、溶接システムの、溶接ワイヤ電極に接続された溶接電源によって制御され、金属ワークのワーク表面にもたらされる材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかを調整する。
【0008】
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、ワイヤ電極が付着するのを防止するために、短絡開始後、所定の第1期間、所定の第1電流レベルを超えない。好ましくは、第1期間は400usより長く、第1電流レベルは30Aより小さい。
【0009】
溶接ワイヤ電極を上昇させることで実施される、本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、短絡が遮断されると火花が確実に点火されるように、電流は少なくとも所定の第2電流レベルに設定される。この文脈では、短絡の遮断の瞬間は、溶接ワイヤ電極の移動プロファイルに基づいてあらかじめ設定することができる。好ましくは、この第2電流レベルは10Aより大きい。
【0010】
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、短絡が遮断された後、マーキング点の出現に影響を及ぼすように、所定の電流/時間プロファイルに従って火花が維持される。電流/時間プロファイルは、時間経過に伴う電流進行のグラフにおける領域によってさらに詳細に決定することができる。好ましくは、あらかじめ設定される電流−時間領域は、100μAsと20μAsの間である。
【0011】
本発明にかかる方法の代替実施形態では、短絡の遮断後、火花を形成するのに十分な所定の電圧が溶接ワイヤ電極とワークとの間に設定される。溶接ワイヤ電極がワーク表面から離れる移動の過程で空隙が大きくなり、火花を消すことができる。この文脈では、マーキング点の出現は、電圧レベルと溶接ワイヤ電極の移動速度または移動プロファイルとにより調整することができる。好ましくは、電圧は10Vと20Vの間である。
【0012】
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、溶接ワイヤ電極の、マーキングされるワーク表面に近づいたり離れたりできるワイヤ端部の移動プロファイルおよび/または移動周波数が調整される。
【0013】
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、溶接ワイヤ電極のワイヤ端部を金属ワークのマーキングされるワーク表面に沿って案内する溶接トーチの移動速度および移動経路の両方、またはそのいずれかが調整される。
【0014】
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、金属ワークのワーク表面に生成されるマーキング点およびマーキング経路の両方、またはそのいずれかは、データを表示するために、具体的にはワークにラベリングするために、および/またはコード、具体的にはQRコード(登録商標)でワークを識別するために使用される。
【0015】
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、マーキング中、溶接ワイヤ電極の前後移動するワイヤ端部は、その後の溶接プロセスで生成される溶接シームのプログラムされた目標の進行に沿って案内される。
【0016】
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、品質を管理および溶接トーチの案内を再調整する、または品質を管理もしくは溶接トーチの案内を再調整するために、マーキング経路の実際の進行と溶接シームの目標とする進行との間のずれが測定される。
【0017】
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、ワーク表面に生成されるマーキング経路のコントラストレベルは、溶接電源によって制御される電圧および/もしくは電流レベル、溶接ワイヤ電極のワイヤ端部の移動プロファイルおよび/もしくは移動周波数、および/または溶接ワイヤ電極のワイヤ端部をワーク表面に沿って案内する溶接トーチの移動速度を含むマーキングパラメータを変更することで調整される。
【0018】
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、ワーク表面のマーキング中に使用されるマーキングパラメータは、溶接システムのデータストアにデータセットとして保存され、その後のマーキングプロセスのために再び溶接システムのデータストアから読み出される。
【0019】
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、ワーク表面に形成されるマーキング経路の異なるコントラストレベルに対して、および/または金属ワークの異なる材料に対して、および/または異なる溶接ワイヤ電極に対して、適したマーキングパラメータの関連データセットが溶接システムのデータストアから読み出され、金属ワークのワーク表面にマーキングする。
【0020】
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、金属ワークのワーク表面のマーキング中、ワーク表面は供給される保護ガスによって酸化から保護される。
本発明にかかる方法の別の可能な実施形態では、ワーク表面のマーキング中、溶接トーチは、その後の溶接プロセスで生成される溶接シームのプログラムされた目標の進行に従ってロボットアームによって自動的に案内される。
【0021】
本発明にかかる方法の別の代替実施形態では、ワーク表面のマーキング中、溶接トーチは、具体的にはワーク表面にラベリングするために手動で案内される。
別の態様では、本発明は、請求項16に記載の特徴を有する溶接システムをさらに提供する。
【0022】
本発明は、溶接システムの溶融可能な溶接ワイヤ電極のワイヤ端部を金属ワークのマーキングされるワーク表面に沿って案内することができ、その一方で、電気火花を発生させるように溶接ワイヤ電極のワイヤ端部をマーキングされるワーク表面に近づけたり離したりするのに適しており、火花が金属ワークのワーク表面に材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかをもたらしてワーク表面にマーキングする、金属ワークのワーク表面にマーキングするためのマーキング装置をさらに提供する。
【0023】
本発明にかかるマーキング装置の可能な実施形態では、溶接ワイヤ電極が溶接システムの溶接電源に接続され、この溶接電源は、溶接ワイヤ電極に存在する電圧および/または溶接ワイヤ電極を流れる電流を制御して、金属ワークのワーク表面にもたらされる材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかを調整する。
【0024】
本発明にかかるマーキング装置の別の可能な実施形態では、溶接ワイヤ電極のワイヤ端部は、溶接システムの案内された溶接トーチから突出し、ワーク表面のマーキング中、マーキングされるワーク表面に対して調整可能な移動プロファイルおよび/または調整可能な移動周波数で前後移動できる。
【0025】
本発明にかかるマーキング装置は、好ましくは、視覚・音響信号または視覚信号もしくは音響信号を使用してその後の溶接プロセスをシミュレートするために使用される。
本発明はまた、溶融可能な溶接ワイヤ電極を備えた溶接システムの溶接トーチを金属ワークのマーキングされるワーク表面に沿って案内することができ、その一方で、電気火花を発生させるように溶接ワイヤ電極のワイヤ端部をマーキングされるワーク表面に近づけたり離したりするのに適しており、火花が金属ワークのワーク表面に材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかをもたらしてワーク表面にマーキングする、金属ワークのワーク表面にマーキングするためのマーキング装置を備えた溶接システムを提供する。
【0026】
有利には、本発明にかかる溶接システムは、プッシュプルトーチを有し、50Hzを超え300Hzまでの移動周波数で溶接ワイヤ電極を前後移動させることを可能にする。このプッシュプルトーチは、バーナの領域にこの高移動周波数を可能にするワイヤバッファストレージを含んでいてもよい。
【0027】
本発明にかかる溶接システムの好適な実施形態では、溶融可能な溶接ワイヤ電極は、ほぼ垂直に前後移動する。
溶接システムの別の可能な実施形態では、溶接システムは、CMT(コールドメタルトランスファー)溶接システムである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、金属ワークのワーク表面にマーキングするための本発明にかかる方法および本発明にかかる装置の可能な実施形態を添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。
図1の概略図から分かるように、図示の実施形態において、本発明にかかる溶接システム1は、金属ワーク2のワーク表面2Aにマーキングするためのマーキング装置を有する。この文脈では、マーキング装置は、溶接システム1の溶融可能な溶接ワイヤ電極4を備えた溶接トーチ3を金属ワーク2のマーキングされるワーク表面2Aに沿って案内するのに適している。この文脈では、溶融可能な溶接ワイヤ電極4のワイヤ端部4Aは、金属ワーク2のマーキングされるワーク表面2Aに近づいたり離れたりして電気火花を発生させる。これらの電気火花は、金属ワーク2のワーク表面2Aにマーキングするために、そのワーク表面2Aに材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかをもたらす。この文脈では、材料の改質は、たとえば、表面溶融または金属ワーク2のワーク表面2Aの酸化によってもたらされてもよい。
図1に示すように、電圧Uが溶接ワイヤ電極4に存在する。さらに、溶接システム1の溶接電源5から生じる電流Iが溶接ワイヤ電極4を流れる。溶接ワイヤ電極4に存在する電圧Uと溶接ワイヤ電極4を流れる電流Iが電気火花を発生させ、それにより金属ワーク2のワーク表面2Aに材料の除去をもたらす。溶接ワイヤ電極4のワイヤ端部4Aは、金属ワーク2との電気的な短絡が起きるまで繰り返しワーク表面2Aに近づき、その後ワーク表面2Aから離れる。電気的な短絡が遮断される度に電気火花が発生し、金属ワーク2のワーク表面2A上に点をベースにして材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかをもたらしてマーキング点6を生成する。金属ワークのワーク表面2Aに生成されるマーキング点6は、ワーク2のワーク表面2Aにおいて目に見えるマーキング経路を形成することができる。結果として得られたマーキングは、複数のマーキング経路からなっていてもよい。マーキングはまた、マーキング経路が振動やジグザグ移動をするとき、たとえば広くしてもよい。同様に、わずかに偏心した円形、楕円形、または蛇行した経路を使用してマーキングを広くすることができる。溶接システム1の溶接電源5は、溶接ワイヤ電極4に存在する電圧Uおよび/または溶接ワイヤ電極4を流れる電流Iを制御して、金属ワーク2のワーク表面2Aにもたらされる材料の除去、したがって、生成されるマーキング点6の範囲を調整する。
【0030】
図1に模式的に示すように、溶接システム1は、溶接ワイヤ電極4の、マーキングされるワーク表面2Aに近づいたり離れたりできるワイヤ端部4Aの移動プロファイルおよび/または移動周波数を制御する制御システム7を有する。溶接システム1の制御システム7はまた、溶接システム1の溶接電源5を制御し、溶接ワイヤ電極に存在する電圧Uを調整しかつ溶接ワイヤ電極4を流れる電流Iを調整する、または溶接ワイヤ電極に存在する電圧Uもしくは溶接ワイヤ電極4を流れる電流Iを調整する。
【0031】
この文脈では、マーキングプロセスの間、または溶接システム1のマーキング動作モードの間、電圧Uおよび/または溶接ワイヤ電極4を流れる電流Iは、電気火花が生じ、金属ワーク2のワーク表面2Aに材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかをもたらすように設定されるが、溶融可能な溶接ワイヤ電極4の溶融は生じない。
【0032】
図1に模式的に示す溶接システム1の可能な一実施形態では、ワーク表面2Aにマーキングするためのマーキングプロセスの間、溶接トーチ3はロボットアーム3Aによって自動的に案内される。溶接ワイヤ電極4のワイヤ端部4Aを金属ワーク2のマーキングされるワーク表面2Aに沿って案内する、溶接トーチ3の移動速度は調整可能であり、ロボットアーム3Aの制御システム7Aによって制御できる。さらに、溶接システム1の制御システム7は、たとえば、ワイヤ端部4Aの前後移動の移動プロファイルを溶接トーチ3の移動速度に適合させるために、ロボットアーム3Aの制御システム7Aに通信接続されていてもよい。あるいは、制御システム7および制御システム7Aの機能は、上位の制御システム(さらに詳細には図示せず)において一緒に実行されることも考えられる。
【0033】
図1に模式的に示す溶接システム1の可能な一実施形態では、ワーク表面2Aにマーキングするためのマーキングプロセスの間、溶接トーチ3は、その後の溶接プロセスで生成される溶接シームのプログラムされた目標の進行に従って、ロボットアーム3Aによって自動的に案内される。この文脈では、制御システム7Aが、プログラムされた目標の進行に従って溶接トーチ3の移動を制御する。溶接ワイヤ電極4のワイヤ端部4Aは、溶接システム1の案内された溶接トーチ3から突出し、ワーク表面2Aのマーキングプロセスの間、マーキングされるワーク表面2Aに対して調整可能な移動プロファイルおよび/または調整可能な移動周波数fで前後移動する。
【0034】
可能な一実施形態では、品質を管理および溶接トーチの案内を再調整する、または品質を管理もしくは溶接トーチの案内を再調整するために、ワーク表面2Aに生成されるマーキング経路の実際の進行と溶接シームの目標とする進行との間のずれが測定される。別の実施形態では、マーキング経路の実際の進行と溶接シームの目標とする進行との間のずれを測定するための測定装置を設けて、上位の制御システムによってその差を自動的に判定して評価できるようにしてもよい。
【0035】
図1に示す実施形態では、溶接システム1はさらに、溶接ワイヤ4を送給するためのワイヤ前送り装置8を有する。溶接トーチ3における極めて動的なワイヤ駆動は、高移動速度に設定されて、移動周波数fでの溶接ワイヤ電極4の高周波前後移動をもたらす。この文脈では、溶接トーチ3のワイヤ駆動は高移動速度に設定される。これに対して、溶接作業中に溶融する溶接ワイヤ電極4は、ワイヤ前送り装置8によって送給される。
【0036】
本発明にかかる溶接システム1の可能な一実施形態では、ワーク表面2Aに生成されマーキング点6からなるマーキング経路のコントラストレベルを調整してマーキングパラメータを変更する。一実施形態では、これらのマーキングパラメータには、溶接電源5によって制御される電圧および/もしくは電流レベル、溶接ワイヤ電極4の移動プロファイルおよび/もしくは移動周波数、および/または溶接ワイヤ電極4のワイヤ端部4Aをワーク2のワーク表面2Aに沿って案内する溶接トーチ3の移動速度が含まれる。本発明にかかる方法の可能な実施形態では、ワーク表面2Aのマーキング中に使用されるマーキングパラメータは、溶接システム1のデータストア9にデータセットとして保存され、その後のマーキングプロセスのために制御システム7によって溶接システム1のデータストア9から再び読み出してもよい。本発明にかかる溶接システム1の可能な一実施形態では、マーキングプロセスのための様々なマーキングパラメータを手動で設定することを可能にするユーザーインターフェース10を備える。可能な一実施形態では、溶接システム1の溶接工は、ユーザーインターフェース10を使用して様々なマーキングパラメータを手動で設定し、マーキングプロセスを実行することを選択できる。たとえば、ユーザーが生成されたマーキング経路に満足している場合、使用したマーキングパラメータを溶接システム1のデータストア9にデータセットとして保存し、その後のマーキングプロセスに再使用することができる。さらに、データストア9は、異なるコントラストレベルを有するマーキング経路を形成するよう様々な事前構成されたデータセットを含んでいてもよい。ワーク表面2Aに形成されるマーキング経路の異なるコントラストレベルに対しておよび/または異なるワイヤ電極4に対して、適したマーキングパラメータの関連データセットをデータストア9に保存して制御装置7によって読み出し、マーキングプロセスにおいて金属ワーク2のワーク表面2Aにマーキングすることができる。可能な一実施形態では、溶接システム1のユーザーインターフェース10は、マーキングプロセスに使用されている設定したマーキングパラメータをユーザーまたは溶接工に表示する表示装置を有する。
【0037】
本発明にかかる溶接システム1の別の可能な実施形態では、溶接工またはユーザーはさらに、金属ワークの材料に関するデータまたは情報をユーザーインターフェース10を介して入力できる。入力されたワーク2の材料に応じて、そのためのマーキングパラメータの適したデータセットがデータストア9から読み出され、マーキングプロセスのために使用することができる。本発明にかかる溶接システム1の可能な一実施形態では、金属ワーク2のワーク表面2Aのマーキング中、ワーク表面2Aは供給される保護ガスによって酸化に対して保護される。可能な一実施形態では、溶接システム1のユーザーまたは溶接工は、マーキングプロセスの間、保護ガスの供給をユーザーインターフェース10を介して調整、たとえば、作動または停止することができる。本発明にかかる溶接システム1の可能な一実施形態では、溶接システム1は、金属活性ガス(マグ)法または金属不活性ガス(ミグ)法を採用した金属保護ガス溶接システムである。
【0038】
本発明にかかる溶接システム1では、
図1に模式的に示すように、極めて動的な逆転する溶接ワイヤ電極4によって、わずかな材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかでマーキング点を数多く配置することが可能になる。連続したマーキング点6は結果として、ワーク2のワーク表面2Aにおいて目に見えるマーキング経路になる。
【0039】
溶接ワイヤ電極4の溶接ワイヤ端部4Aは、溶接システム1の工具中心点TCPを形成する。工具中心点TCPは、運動連鎖の端部において点を形成し、機械加工プロセスに起因する位置決め要件が適用される目標変数を形成する。
【0040】
本発明にかかる溶接システム1の可能な一実施形態では、溶接トーチ3は、ロボットアーム3Aに取り付けられ、マーキングプロセス中、その後の溶接プロセスで形成される溶接シームのプログラムされた目標の進行に従って自動的に案内される。この目標とする進行は、好ましくは工具中心点TCPの進行、すなわち、溶接ワイヤ電極4のワイヤ端部4Aの目標とする進行に関連する。実際のTCPは、ワイヤ調節によって生じるワイヤ曲率の結果として、目標TCPまたは理想TCPとは異なることがある。ロボットアームの熱膨張や可動部品における遊びなど、他の影響もまた実際のTCPにおけるずれにつながることがある。本発明にかかる方法を使用すれば、実際のTCPは、マーキング経路を適用することでワーク表面2A上に視覚化できる。
【0041】
本発明にかかる溶接システム1の代替実施形態では、溶接トーチ3は、ワーク表面2Aのマーキング中、具体的にはワーク表面2Aにラベリングするために手動で案内される。マーキングプロセス中に発生する電気火花は、ワーク表面2Aにおいて目に見えるマーキング経路を生成し、これはワーク表面2Aにラベリングするために利用することができる。たとえば、このようにして、ユーザーまたは溶接工は、ワーク表面2Aにおいて、マーキングまたは溶接の時間を特定する1つのデータを刻むことができる。たとえば、ユーザーまたは溶接工はまた、ワーク2のワーク表面2Aにコードや署名を書き込んでもよく、誰が溶接を行ったのかを確定することができる。
【0042】
別の可能な実施形態では、マーキング装置は、視覚・音響信号または視覚信号もしくは音響信号を使用してその後の溶接プロセスをシミュレートするのに使用される。この文脈では、移動周波数の音響信号が、その後の溶接プロセスの溶接パラメータをシミュレートする。この文脈では、溶接速度、トーチの位置決め、溶解力、ワイヤ自由端の長さ(突き出し)、または補正係数などの個々の溶接パラメータを聞こえるようにできる。このために、音響信号の変更を実現するよう、溶接パラメータにおける対応する変更が、溶接ワイヤ端部4Aの前後移動の移動周波数において行われてもよい。マーキングプロセスで発生する電気火花は、実際の溶接プロセスの間に発生するアークほど明るく光を放たないため、その後の溶接プロセスは有利にも視覚化できる。マーキングプロセス中に発生する電気火花は、ユーザーによって直接観察できる。よって、この実施形態では、本発明にかかるマーキング装置の溶接システム1は、溶接工を訓練するための訓練装置を提供する。この実施形態では、溶接プロセスが音響的かつ光学的にまたは音響的もしくは光学的にシミュレートできるため、溶接システム1は人々を教えるために使用できる。
【0043】
本発明にかかる溶接システム1の別の可能な実施形態では、溶接システムは、CMT(コールドメタルトランスファー)溶接に適したCMT溶接システムである。この実施形態では、一旦マーキングプロセスが完了すると溶接プロセスが行われる。たとえば、溶接プロセスはCMT溶接プロセスである。この文脈では、溶接電源5は、好ましくはパルス溶接電流を提供し、さらに溶接ワイヤ電極4は、高周波数で前後移動する。溶接電源5が短絡を検出するとすぐに、溶接ワイヤ電極4の後方移動が同時に溶接電流の減少を伴って開始する。この文脈では、先のアーク段階において形成される溶滴は、はねを発生させることなく溶接ワイヤ電極4から解放される。形成された溶滴は、ワイヤ移動の結果、溶接ワイヤ電極4からさらに容易に解放され、よって実質的にはねの無い溶接を促進する。可能な一実施形態では、逆転する溶接ワイヤ電極4は、50Hzを超える比較的高い周波数で前後移動できる。溶滴が解放されると、溶接ワイヤ電極4は再び前方に案内され、新たにサイクルが始まる。CMT溶接方法は、鉄、アルミニウム、クロムニッケル鋼などすべての従来の溶接可能な金属に適し、また鉄とアルミニウムなど混合化合物にも適している。
【0044】
CMT溶接プロセスを実行する前または実行した後に、本発明にかかるマーキング方法を使用して、更なるハードウェアの経費をかけずに、加工される金属ワーク2のワーク表面2Aにマーキングすることができる。
【0045】
本発明にかかる溶接システム1の可能な一実施形態では、データを表示するためのマーキング点6またはマーキング経路が金属ワーク2のワーク表面2Aに生成される。これらのデータは、たとえば、可読コード、具体的にはQRコード(登録商標)を備える。このように、簡単な方法で、加工されるワーク2または機械加工プロセスに関する関連データが恒久的にワーク2と関連付けられ、後で読み取り装置を使用して読み出すことができる。読み出されるデータはたとえば、ワーク2を含む構成部品の品質管理またはメンテナンスに使用されてもよい。
【0046】
図2は、本発明にかかるマーキング装置を含む溶接システム1の実施形態を模式的に示している。
図2に示す溶接システム1は、種々の溶接方法に適し、具体的にはミグ/マグ溶接方法に適している。溶接システム1は、金属ワーク2のワーク表面2Aにマーキングするのを可能にする。この文脈では、溶接システム1の、溶接ワイヤ電極4を備えた溶接トーチ3は、マーキングされるワーク表面2Aに沿って案内される。溶接ワイヤ電極4のワイヤ端部4Aは、マーキングされるワーク表面2Aに近づいたり離れたりする。溶接ワイヤ電極4は、その後の溶接プロセスの溶融可能な溶接ワイヤ電極とすることができる。しかしながら、マーキングプロセスにのみ使用される、たとえばタングステン製の溶接ワイヤ電極4を使用することも可能である。溶接システム1は、電源ユニット5Aを備えた溶接電源5を有する。溶接システム1はさらに制御装置7を有する。制御装置7は、溶接電源5の電源ユニット5Aを作動させ、溶接ワイヤ電極4を送るワイヤ前送り装置8を作動させるためのものである。この文脈では、溶接ワイヤ電極4は、溶接システム1の予備ドラム11から巻き出すことができる。可能な一実施形態では、マーキングプロセスにおいて電気火花を発生させるための電流またはその後の溶接プロセスにおいてアークを発生させるための電流は、溶接電源5の電源ユニット5Aから電流供給ライン12を介して溶接トーチ3またはそこで案内される溶接ワイヤ電極4に供給できる。電力回路は、ワーク2から電源ユニット5Aへのライン(さらに詳細には図示せず)を介して閉じられる。
【0047】
マーキング軌跡の外観に保護ガスの組成を利用して影響を及ぼすことができる。一般に、活性比率、つまり、CO
2または酸素が増えるにつれて、マーキング軌跡はより暗く、また、より狭くなる。純アルゴン(不活性ガス)を使用する場合、マーキング軌跡はあらゆる表面上で比較的明るく広く、速度が増加するにつれて幅は減少する。保護ガスがなければ、マーキング経路は暗くて狭く、幅は速度とともに変化しない。
【0048】
特に電極がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる場合、保護ガスがなければ、酸化は、望まれない絶縁表面を形成することになり得る。これは、短絡が検出されない危険を招き、マーキングプロセスを中断させる可能性がある。
【0049】
図2に示す実施形態では、溶接トーチ3はさらに保護ガス用の供給ライン13を有する。金属ワーク2のワーク表面2Aにマーキングしている間、ワーク表面2Aは供給される保護ガスによって酸化から保護することができる。可能な一実施形態では、
図2に示すように、この保護ガスは、溶接システム1の保護ガス貯槽14から引き出される。
図2に示す実施形態では、ワイヤ前送り装置8によって予備ドラム11から巻き出された溶接ワイヤ電極は、電力線12を通じて溶接トーチ3に供給され、溶接電極4のワイヤ端部4Aは、溶接トーチ3から突出して、マーキングプロセス中、逆転して前後移動する。
【0050】
図2に示す実施形態では、溶接トーチ3はさらに、ライン15を介して溶接システム1の冷却回路に接続される。
図2に示す実施形態では、溶接システム1は、入力表示装置または入力装置もしくは表示装置を備えたユーザーインターフェース10を溶接電源5に有する。さらに、
図2に示すように、溶接システム1の溶接トーチ3に入力装置16および出力装置17を設けてもよい。可能な一実施形態では、ユーザーまたは溶接工は、ユーザーインターフェース10および溶接トーチ3の入力装置16において、またはユーザーインターフェース10もしくは溶接トーチ3の入力装置16において、溶接システム1のマーキング動作モードと溶接動作モードとの間で切り替えること、または、ユーザーインターフェースにおいて、溶接方法かマーキング方法かのどちらかを選ぶことを選択できる。さらに、ユーザーは、溶接電源5におけるユーザーインターフェース10を介してマーキングプロセス用の異なるマーキングパラメータを設定することを選択できる。可能な一実施形態では、これらのマーキングパラメータは、溶接電源5によって制御される電圧および/もしくは電流レベル、溶接ワイヤ電極4の移動プロファイルおよび/もしくは移動周波数f、および/または溶接ワイヤ電極4のワイヤ端部4Aをワーク2のワーク表面2Aに沿って案内する、溶接トーチ3の移動速度である。可能な一実施形態では、
図2に示す溶接システム1の溶接トーチ3は、ロボットアーム3Aによって案内される。あるいは、
図2に示す溶接システム1の溶接トーチ3は、マーキングプロセス中、ユーザーによって手動で案内することができる。
【0051】
図3A、
図3B、
図3Cは、本発明にかかるマーキング方法の機能性を示すための時間経過に伴う進行を示す。
図3Aは、時間経過に伴う溶接ワイヤ電極4のワイヤ前送り速度V
Dを示す。
図3Bは、溶接ワイヤ電極4を流れる電流Iを示す。
図3Cは、溶接ワイヤ電極4に存在する電極Uを示す。
【0052】
図3Aで分かるように、溶接ワイヤ電極4は前後移動する。すなわち、
図3Aに示すように、溶接ワイヤ電極4は、正のワイヤ前送り速度V
Dと負のワイヤ前送り速度V
Dを交互に有する。
図3A、
図3B、
図3Cでは、シンボル的拡大鏡Lによって示されるように、1つの時間間隔が引き伸ばされて示されている。マーキングプロセス中、上昇させた状態の溶接ワイヤ電極4は、時間t1でワーク2のワーク表面2Aに向かって前方に移動する。この文脈では、電圧降下により時間t2で短絡の発生を検出できるように電圧Uが溶接ワイヤ電極4に印加される。溶接ワイヤ電極4の金属ワーク2のワーク表面2Aとの接触が確立されると、ワイヤ前送り速度V
Dは減少する。すなわち、溶接ワイヤ電極4は制動される。この文脈では、溶接ワイヤ電極4のワーク表面2Aとの接触は、短絡の検出によって、ワイヤ前送りのモーター電流またはモータートルクにおける増加によって、あるいは移動した距離を計算することによって確立することができる。短絡が起きると、電圧ははっきりと検出可能に降下する。溶接ワイヤ電極4のワーク表面2Aとの接触を検出し続けるために、比較的小さく、より測定可能な電流I1が印加される。短絡の発生後、所定の第1期間△t1、好ましくは400usの間、この電流I1は、所定の第1電流レベルI1、好ましくは30Aを超えない。これは、ワイヤ電極が付着するのを防止することを目的としている。時間t3で、ワイヤ前送り速度V
Dは負になる。すなわち、溶接ワイヤ電極4は、ワーク表面2Aから離れて後方に移動する。溶接ワイヤ電極4のワイヤ端部4Aは、金属ワーク2との電気的な短絡が起きるまで繰り返しワーク表面2Aに近づく。金属ワーク2との電気的な短絡が起きるとすぐに、溶接ワイヤ電極4のワイヤ端部4Aはワーク表面2Aから離れる。溶接ワイヤ電極4を上昇させることでもたらされる短絡遮断t5の前の時間t4で、電流Iは、所定の第2電流レベルI2に、好ましくは10Aより大きく設定され、短絡が遮断されたときに火花の点火を確実にする。時間t4が短絡遮断の時間t5の直前である場合、時間t5は、溶接ワイヤ電極4の移動プロファイルに基づいてあらかじめ設定することができる。
図3Bに示すように、時間t5で火花に点火される。すなわち、電気火花が発生し、金属ワーク2のワーク表面2A上に点をベースにして材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかをもたらしてマーキング点6を生成する。
図3Bにおいて斜線部分Aによって表されるように、短絡が遮断された後、所定の電流/時間プロファイルに従って火花は維持される。マーキング点の出現は、時間経過に伴う電流進行のグラフにおける領域Aに比例する火花のエネルギーにより影響される。マーキング点に好ましい電流−時間領域は、100μAsと20μAsの間である。電圧Uがあらかじめ定義された閾値Us未満に下がる結果、火花は時間t6で消える。Usは、好ましくは12V未満である。そして、
図3Bで分かるように、溶接ワイヤ電極4を通る電流Iはゼロまで下がる。火花の点火と消滅との間の期間は、たとえば上述の電流/時間プロファイルを使用して設定することができる。ワイヤ前送り速度V
Dが後方移動から前方移動に戻ったら、または電流が0Aまで下がったら、
図3Cに示すように、電圧Uは再び増加し、溶接ワイヤ電極4のワーク表面2Aとの接触に起因する次の短絡を確実に検出するために、増加した電圧レベルにとどまる。これは、
図3Cにおいてワイヤ前送り速度V
Dが再び正になる時間t7に表されている。プロセスは周期的に繰り返される。
【0053】
図4A、
図4B、
図4Cは、本発明にかかるマーキング方法の機能性を示すための時間経過に伴う進行を示す。
図4Aは、時間経過に伴う溶接ワイヤ電極4のワイヤ前送り速度V
Dを示す。
図4Bは、溶接ワイヤ電極4を流れる電流Iを示す。
図4Cは、溶接ワイヤ電極4に存在する電圧Uを示す。
図3A〜
図3Cの実施形態に代わるものとして、これらの時間経過に伴う進行における電流Iは、時間t2で短絡が発生した後、ランプ状に増加する。この場合も、短絡の発生後、特定の第1期間△t1、好ましくは400usの間、電流Iは所定の第1電流レベルI1、好ましくは30Aを超えない。このため、
図4Bにおいて、I1に対して約20Aのレベルがプロットされている。溶接ワイヤ電極4を上昇させることによってもたらされる短絡遮断t5の前の時間t4で、電流Iは少なくとも所定の第2電流レベルI2に設定される。実施形態では、I2の値は、ランプでのさらなる直線的な上昇に起因する。
図4Cにおける電圧の進行では、
図3Cの代わりとして、直近の短絡発生を検出するための時間t1またはt7における電圧Uは、火花段階t5〜t6における電圧Uより大きい。これにより、短絡発生の検出を簡単にすることができる。
【0054】
本発明にかかるマーキング方法を使用すれば、その後に実行される溶接シームの位置を溶接経路または溶接シームに沿ってマーキングすることができ、この実際の位置は、自動化してまたは手動で視覚的に確認することができる。連続生産では、所望の溶接経路からのずれは、無作為抽出によって確認、補正することができる。異なるコントラストレベルのマーキング経路は、マーキングパラメータを変更することで金属表面に施すことができる。
【0055】
本発明にかかるマーキング方法は、マーキング方法を実行するのに更なるハードウェア部品が必要ではないため、とりわけCMT溶接システムに適している。
ワーク表面2Aにマーキングするために、溶接ワイヤ電極4は、好ましくはワーク表面2Aに対して垂直に前後移動する。あるいは、次に続くであろう溶接プロセスのワーク表面2Aに対するトーチ位置決め角度が溶接ワイヤ電極4の移動方向を特定してもよい。本発明にかかるマーキング方法は、実際の溶接プロセスの前に、溶接プロセスを「ドライラン」でシミュレートすることを可能にする。異なる溶接シーム、たとえば上進溶接シームまたは下進溶接シームに対して、関連する溶接プロセスをシミュレートするために異なるマーキングパラメータを使用することができる。本発明にかかる方法は、主に自動溶接を補助するのに適しているが、ワーク2にマーキングまたはラベリングするための手動溶接装置に使用することもできる。さらに、本発明にかかるマーキング方法は、位置決め角度、溶解力、補正などの溶接パラメータを音響的に示すために、教育の目的で使用することができる。
【0056】
本発明は次の実施形態からなる。
1.金属ワーク(2)のワーク表面(2A)にマーキングするための方法であって、
溶接ワイヤ電極(4)を備えた溶接トーチ(3)がマーキングされるワーク表面(2)に沿って案内され、その一方で溶接ワイヤ電極(4)のワイヤ端部(4A)がマーキングされるワーク表面(2A)に近づいたり離れたりする方法において、
溶接ワイヤ電極(4)に存在する電圧(U)と溶接ワイヤ電極(4)を流れる電流(I)とのうち少なくとも一方が電気火花を引き起こすことにより金属ワーク(2)のワーク表面(2A)に材料の除去および材料の改質のうち少なくとも一方をもたらし、ワーク表面(2A)にマーキングすることを特徴とする方法。
【0057】
2.溶接ワイヤ電極(4)は、溶接プロセス中に溶融可能な添加材料からなることを特徴とする実施形態1に記載の方法。
3.溶接ワイヤ電極(4)のワイヤ端部(4A)は、金属ワーク(2)との電気的な短絡が起きるまで繰り返しワーク表面(2A)に近づき、その後ワーク表面(2A)から離れ、短絡が遮断される度に電気火花が発生し、金属ワーク(2)のワーク表面(2A)上に点をベースにして材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかをもたらしてマーキング点(6)を生成することを特徴とする実施形態1または実施形態2に記載の方法。
【0058】
4.金属ワーク(2)のワーク表面(2A)に生成されるマーキング点(6)は、ワーク表面(2A)において目に見えるマーキング経路を形成することを特徴とする実施形態3に記載の方法。
【0059】
5.溶接ワイヤ電極(4)に存在する電圧(U)と溶接ワイヤ電極(4)を流れる電流(I)とのうち少なくとも一方は、溶接システム(1)の、溶接ワイヤ電極(4)に接続された溶接電源(5)によって制御され、金属ワーク(2)のワーク表面(2A)にもたらされる材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかを調整することを特徴とする前述の実施形態1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
6.溶接ワイヤ電極(4)の、マーキングされるワーク表面(2A)に近づいたり離れたりできるワイヤ端部(4A)の移動プロファイルおよび移動周波数のうち少なくとも一方は調整されることを特徴とする前述の実施形態1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【0061】
7.溶接ワイヤ電極(4)のワイヤ端部(4A)を金属ワーク(2)のマーキングされるワーク表面(2A)に沿って案内する溶接トーチ(3)の移動速度および移動経路の両方、またはそのいずれかは調整されることを特徴とする前述の実施形態1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
8.金属ワーク(2)のワーク表面(2A)に生成されるマーキング点(6)およびマーキング経路の両方、またはそのいずれかは、データを表示するために、具体的にはワーク(2)にラベリングするために、および/またはコード、具体的にはQRコード(登録商標)でワーク(2)を識別するために使用されることを特徴とする実施形態1乃至7に記載の方法。
【0063】
9.マーキング中、溶接ワイヤ電極(4)の前後移動するワイヤ端部(4A)は、その後の溶接プロセスで生成される溶接シームのプログラムされた目標の進行に沿って案内されることを特徴とする前述の実施形態1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【0064】
10.マーキング経路の実際の進行と溶接シームの目標とする進行との間のずれは、品質を管理および溶接トーチの案内を再調整する、または品質を管理もしくは溶接トーチの案内を再調整するために測定されることを特徴とする実施形態9に記載の方法。
【0065】
11.ワーク表面(2A)に生成されるマーキング経路のコントラストレベルは、溶接電源(5)によって制御される電圧および電流レベルのうち少なくとも一方と、溶接ワイヤ電極(4)の移動プロファイルおよび移動周波数のうち少なくとも一方と、溶接ワイヤ電極(4)のワイヤ端部(4A)をワーク表面(2A)に沿って案内する溶接トーチ(3)の移動速度とのうち少なくとも1つを含むマーキングパラメータを変更することで調整されることを特徴とする前述の実施形態1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
12.ワーク表面(2A)のマーキング中に使用されるマーキングパラメータは、溶接システム(1)のデータストア(9)にデータセットとして保存され、その後のマーキングプロセスのために再び溶接システム(1)のデータストア(9)から読み出されることを特徴とする実施形態11に記載の方法。
【0067】
13.ワーク表面(2A)に形成されるマーキング経路の異なるコントラストレベルと、金属ワーク(2)の異なる材料と、異なる溶接ワイヤ電極(4)とのうち少なくとも1つに対して、適したマーキングパラメータの関連データセットが溶接システム(1)のデータストア(9)から読み出され、金属ワーク(2)のワーク表面(2A)にマーキングすることを特徴とする実施形態12に記載の方法。
【0068】
14.金属ワーク(2)のワーク表面(2A)のマーキング中、ワーク表面(2A)は供給される保護ガスによって酸化から保護されることを特徴とする前述の実施形態1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【0069】
15.ワーク表面(2A)のマーキング中、溶接トーチ(3)は、その後の溶接プロセスで生成される溶接シームのプログラムされた目標の進行に従ってロボットアームによって自動的に案内されることを特徴とする前述の実施形態1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【0070】
16.溶接トーチ(3)は、ワーク表面(2A)のマーキング中、具体的にはワーク表面(2A)にラベリングするために、手動で案内されることを特徴とする前述の実施形態1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
17.金属ワーク(2)のワーク表面(2A)にマーキングするためのマーキング装置であって、
溶接システム(1)の溶融可能な溶接ワイヤ電極(4)を備えた溶接トーチ(3)を金属ワーク(2)のマーキングされるワーク表面(2A)に沿って案内することができ、その一方で電気火花を発生させるように溶融可能な溶接ワイヤ電極(4)のワイヤ端部(4A)をマーキングされるワーク表面(2A)に近づけたり離したりするのに適しており、火花が金属ワーク(2)のワーク表面(2A)に材料の除去および材料の改質の両方、またはそのいずれかをもたらしてワーク表面(2A)にマーキングするマーキング装置。
【0072】
18.溶接ワイヤ電極(4)は、溶接システム(1)の、溶接ワイヤ電極(4)に存在する電圧(U)と溶接ワイヤ電極(4)を流れる電流(I)とのうち少なくとも一方を制御する溶接電源(5)に接続され、金属ワーク(2)のワーク表面(2A)にもたらされる材料の除去を調整することを特徴とする実施形態17に記載のマーキング装置。
【0073】
19.溶接ワイヤ電極(4)のワイヤ端部(4A)は、溶接システム(1)の案内された溶接トーチ(3)から突出し、ワーク表面(2A)のマーキング中、マーキングされるワーク表面(2A)に対して調整可能な移動プロファイルおよび調整可能な移動周波数のうち少なくとも一方で前後移動できることを特徴とする実施形態17または実施形態18のいずれか一項に記載のマーキング装置。
【0074】
20.視覚・音響信号または視覚信号もしくは音響信号を使用してその後の溶接プロセスをシミュレートするための、前述の実施形態17乃至19のいずれか一項に記載のマーキング装置の使用。
【0075】
21.前述の実施形態17乃至19のいずれか一項に記載のマーキング装置を備えた溶接システム(1)。