(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機溶剤(C)が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルから成る群から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の複層塗膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
【0012】
工程(1)
工程(1)は、被塗物上に、ベース塗料(X)を塗装してベース塗膜を形成する工程であり、被塗物上に、固形分含有率が30〜62質量%、好ましくは34〜61質量%、さらに好ましくは40〜60質量%のベース塗料(X)を塗装して硬化膜厚が6〜45μm、好ましくは8〜40μm、さらに好ましくは15〜35μmのベース塗膜を形成する工程である。
【0013】
被塗物
本発明の複層塗膜形成方法において、被塗物としては、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属やこれらを含む合金などの金属材、及びこれらの金属による成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物、フィルム等を挙げることができる。これら素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理して被塗物とすることができる。該表面処理としては例えばリン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等が挙げられる。さらに、上記被塗物の素材が金属であれば、表面処理された金属素材の上にカチオン電着塗料によってカチオン電着塗膜が形成されていることが好ましい。該カチオン電着塗膜の上には中塗り塗膜が形成されていても良い。該中塗り塗膜は着色していることが下地隠蔽性及び耐候性等の点から好ましい。
【0014】
上記中塗り塗膜は、硬化膜であっても未硬化膜であってもよい。
【0015】
さらに、被塗物の素材がプラスチックである場合には、脱脂処理されたプラスチック素材の上にプライマー塗料によってプライマー塗膜が形成されていることが好ましい。該プライマー塗膜は、硬化膜であっても未硬化膜であってもよい。
【0016】
ベース塗料(X)
ベース塗料(X)は、ポリウレタン樹脂(A)、炭素数6〜12のアルコール(B)及びHLBが7〜9の有機溶剤(C)を含有する。
【0017】
ベース塗料(X)は、水性塗料、溶剤系塗料のいずれであってもよいが、塗料の低VOC化の観点から、水性塗料であることが望ましい。
【0018】
ポリウレタン樹脂(A)
ポリウレタン樹脂(A)は、塗料に通常使用されるものであれば特に制限なく使用することができるが、水に溶解又は分散しているものが好ましく、ポリウレタン樹脂(A)が水に分散している、ポリウレタン樹脂エマルション(A−1)であることがより好ましい。該ポリウレタン樹脂エマルション(A−1)は、アクリル等の樹脂で変性されていてもよい。
【0019】
ポリウレタン樹脂エマルション(A−1)は、例えば、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、必要に応じてさらに水分散基付与成分としての活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用して合成することができる。
【0020】
上記ポリイソシアネート成分は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及びそれらの誘導体等、並びにそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0021】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0022】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−若しくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)若しくはその混合物、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0023】
上記脂環族ポリイソシアネートとしては、得られる塗膜の耐有機溶剤膨潤性向上の観点から、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)が好ましい。
【0024】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−若しくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)又はその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0025】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)若しくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)又はその混合物、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4',4''−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4'−ジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0026】
また、上記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上述のポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン等、並びにポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
【0027】
前記ポリイソシアネート成分は、ブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートの形で用いてもよい。
【0028】
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0029】
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
【0030】
前記ポリイソシアネート成分は、金属調光沢を付与でき、且つ付着性及び耐水性に優れる複層塗膜を得る観点から、脂環族ポリイソシアネートを含有することが好ましい。該脂環族ポリイソシアネートの含有量は、ポリイソシアネート成分の合計固形分量を基準として、50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%であるのがさらに好ましい。
【0031】
ポリオール成分は、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物である。
【0032】
上記ポリオール成分としては、例えば、分子量が300未満である低分子量のポリオールを使用することができる。低分子量のポリオールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、2,5−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。一実施形態において、低分子量のポリオールは炭化水素鎖と水酸基のみからなる。これらの低分子量のポリオールは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
また、上記ポリオール成分としては、分子量が300以上である高分子量のポリオールを使用することができる。高分子量のポリオールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等を使用することが出来る。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記ポリエーテルポリオールとしては、前記低分子量のポリオールのアルキレンオキシド付加物、アルキレンオキシド又は環状エーテル(テトラヒドロフラン等)の開環(共)重合体等を使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの(ブロックまたはランダム)共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコール等が挙げられる。
【0035】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、下記一般式
HO−R−(O−C(O)−O−R)
x−OH
(式中RはC
1-12アルキレン基又はC
1-3アルキレン−C
3-8シクロアルキレン−C
1-3アルキレン基を示し、xは分子の繰返し単位の数を示し、通常5〜50の整数である。複数のRは同一でも異なっていても良い)
で示される化合物等を使用することができる。これらは、ポリオールと置換カーボネート(炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネート等)とを水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法、前記飽和脂肪族ポリオールとホスゲンを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ポリオールを反応させる方法等により得ることができる。
【0036】
上記Rで示されるC
1-12アルキレン基(飽和脂肪族ポリオール残基)としては、炭素数1〜12の直鎖状又は分枝鎖状、好ましくは直鎖状のアルキレン基が挙げられ、例えば、−CH
2−、−(CH
2)
2−、−(CH
2)
3−、−(CH
2)
4−、−CH
2−CH(CH
3)−CH
2−、−(CH
2)
5−、−CH
2−CH(C
2H
5)−CH
2−、−(CH
2)
6−、−(CH
2)
7−、−(CH
2)
8−、−(CH
2)
9−、−(CH
2)
10−、−(CH
2)
11−、−(CH
2)
12−等が含まれる。なかでも、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、−(CH
2)
6−であることが好ましい。
【0037】
また、Rで示される「C
1-3アルキレン−C
3-8シクロアルキレン−C
1-3アルキレン基」に含まれるC
1-3アルキレン基は、炭素数1〜3(好ましくは炭素数1)の直鎖状又は分枝鎖状、好ましくは直鎖状のアルキレン基を示し、例えば、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基(n−プロピレン基、イソプロピレン基を含む)が挙げられる。
【0038】
また、「C
1-3アルキレン−C
3-8シクロアルキレン−C
1-3アルキレン基」に含まれる2つの「C
1-3アルキレン」は同一であっても異なっていても良い(同一であることが好ましい)。
【0039】
「C
1-3アルキレン−C
3-8シクロアルキレン−C
1-3アルキレン基」に含まれるC
3-8シクロアルキレン基は炭素数3〜8、好ましくは炭素数5〜7、より好ましくは炭素数6のシクロアルカンから2個の水素原子を除いてできる2価の炭化水素基を示す。例えば、C
3-8シクロアルキレン基としては、1,1−シクロプロピレン基、1,2−シクロプロピレン基、1,1−シクロブチレン基、1,2−シクロブチレン基、1,3−シクロブチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,1−シクロへキシレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘプチレン基、1,4−シクロオクチレン基等が挙げられる。
【0040】
C
1-3アルキレン−C
3-8シクロアルキレン−C
1-3アルキレン基としては、上記に挙げたC
1-3アルキレン基、上記に挙げたC
3-8シクロアルキレン基及び上記に挙げたC
1-3アルキレン基がこの順番に結合した2価の置換基を挙げることができ、より具体的には、例えば、メチレン−1,2−シクロプロピレン−メチレン基、メチレン−1,2−シクロプロピレン−エチレン基、エチレン−1,2−シクロプロピレン−エチレン基、メチレン−1,3−シクロブチレン−メチレン基、メチレン−1,3−シクロペンチレン−メチレン基、メチレン−1,1−シクロヘキシレン−メチレン基、メチレン−1,3−シクロヘキシレン−メチレン基、メチレン−1,4−シクロヘキシレン−メチレン基、エチレン−1,4−シクロヘキシレン−エチレン基、メチレン−1,4−シクロヘキシレン−エチレン基、プロピレン−1,4−シクロヘキシレン−プロピレン基、メチレン−1,3−シクロヘプチレン−メチレン基、メチレン−1,4−シクロオクチレン−メチレン基等が挙げられ、なかでも、耐チッピング性の観点から、メチレン−1,4−シクロヘキシレン−メチレン基であることが好ましい。
【0041】
前記ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸(無水物)と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等の前記低分子量のポリオールとを水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものが挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコール−アジピン酸縮合物、ブタンジオール−アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール−アジピン酸縮合物、エチレングリコール−プロピレングリコール−アジピン酸縮合物、或いはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンポリオール等が挙げられる。
【0042】
前記ポリエーテルエステルポリオールとしては、エーテル基含有ポリオール(前記ポリエーテルポリオール又はジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を上記ポリエステルポリオールで例示したような(無水)ジカルボン酸に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるもの、例えば、ポリテトラメチレングリコール−アジピン酸縮合物等が挙げられる。
【0043】
前記ポリオール成分は、塗面平滑性の観点から、ポリカーボネートポリオールを含有することが好ましい。該ポリカーボネートポリオールの含有量は、ポリオール成分の合計固形分量を基準として、50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%であるのがさらに好ましい。
【0044】
前記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物の活性水素基としては、水酸基、アミノ基、イミノ基、尿素基等が挙げられる。イオン形成基としては、カルボキシル基、スルホン基等が挙げられる。
【0045】
前記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、例えば、一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物、一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物、一分子中に2個以上のアミノ基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
なかでも、上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物は好ましくは、一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物、一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物である。本発明において、上記一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物、一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物等の、2個以上の水酸基とイオン形成基とを併有する化合物は、前記ポリオール成分に含まれるものとする。
【0047】
上記一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、ジヒドロキシ安息香酸等のアルカノールカルボン酸化合物、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸及び/又は無水フタル酸とのハーフエステル化合物等をあげることができる。
【0048】
前記一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物としては、例えば、2−スルホン酸−1,4−ブタンジオール、5−スルホン酸−ジ−β−ヒドロキシエチルイソフタレート、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノエチルスルホン酸等をあげることができる。
【0049】
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物は、得られる塗膜の柔軟性の観点から、分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物であることが特に好ましい。
【0050】
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物の量は、水分散安定性、形成される塗膜の耐水性等の観点から、ポリウレタン樹脂エマルション(A−1)を構成する化合物の総量に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜7質量%、さらに好ましくは1〜5質量%の範囲内である。
【0051】
ポリウレタン樹脂エマルション(A−1)の製造方法は、特に制限を受けず、従来既知の方法を適用することが出来る。製造方法としては、例えば、有機溶剤中で、ポリイソシアネート成分とポリオール成分、さらに必要に応じて活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物とをウレタン化反応させてプレポリマーを合成し、得られたプレポリマーに、必要に応じ該イオン形成基に対する中和剤、及び脱イオン水を添加して、水分散(乳化)、必要に応じてさらに、鎖伸長反応、脱溶剤を行うことによりポリウレタン樹脂エマルション(A−1)を得ることができる。
【0052】
上記ポリイソシアネート成分とポリオール成分のウレタン化反応には、必要に応じて触媒を使用することが出来る。
【0053】
上記触媒としては、例えば、トリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス(III)等のカルボン酸ビスマス化合物;ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等を挙げることができる。
【0054】
上記ウレタン化反応は、50〜120℃で行なうことが好ましい。
【0055】
前記有機溶剤としては、ウレタン化反応に支障を及ぼさないイソシアネートと不活性の有機溶剤が使用可能であり、このような有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤等を挙げることができる。なかでも上記のうち、水分散安定性の観点から、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を好適に使用することができる。
【0056】
前記中和剤としては、上記イオン形成基を中和できるものであれば特に制限はなく、中和のための塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、ジエチルアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン等の有機アミン;或いは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等を挙げることができる。これらの中和剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
上記塩基性化合物のうち、塗料組成物に適用して得られる塗膜の耐水性の観点から、有機アミンが好ましい。
【0058】
これらの中和剤は、最終的にポリウレタン樹脂エマルション(A−1)の水分散液のpHが6.0〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
【0059】
上記中和剤を添加する場合、中和剤の添加量としては、カルボキシル基等の酸基に対して、0.1〜1.5当量、好ましくは0.3〜1.2当量用いることが好適である。
【0060】
水分散液を得る方法としては、通常の撹拌機による分散で可能であるが、より粒子径の細かい均一な水分散液を得るためにホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー、ラインミキサー等を使用することができる。
【0061】
ウレタンプレポリマーの鎖伸長反応(高分子量化)を行う場合、必要に応じて水以外の鎖伸長剤を添加して、ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを反応させることもできる。鎖伸長剤としては、活性水素を有する公知の鎖伸長剤を使用することができる。具体的には、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン化合物、ジエチレントリアミン等のトリアミン化合物、ヒドラジン等を挙げることができる。
【0062】
鎖伸長度を向上する観点からは、ジエチレントリアミン等のトリアミン化合物等、3官能以上のアミン化合物を好適に使用することができる。また、得られる塗膜の柔軟性の観点からは、エチレンジアミン等のジアミン化合物を好適に使用することができる。
【0063】
また、反応性官能基を導入する目的で、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン等のアミンと水酸基を1分子中にそれぞれ1つ以上持つ化合物も、好適に使用できる。
【0064】
ポリウレタン樹脂エマルション(A−1)のポリイソシアネート成分とポリオール成分の含有割合は、製造性等の観点から、ポリオール成分の有する活性水素基/ポリイソシアネート成分の有するイソシアネート基とのモル比で、1/1.01〜1/3.0であることが好ましく、1/1.05〜1/2.0であることがさらに好ましい。
【0065】
ポリウレタン樹脂エマルション(A−1)の分散性を安定させるために、界面活性剤等の乳化剤を1種類又は2種類以上用いてもよい。乳化剤の粒子径については、特に制限を受けないが、良好な分散状態を保つことができるので1μm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。
【0066】
上記の乳化剤としては、ウレタン樹脂エマルションに使用される周知一般のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等を使用することができる。これらを使用する場合は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤又はカチオン性界面活性剤がコストも低く、良好な乳化が得られるので好ましい。
【0067】
上記のアニオン性界面活性剤としては、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノレート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トルエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩などが挙げられる。
【0068】
上記のノニオン性界面活性剤としては、炭素数1〜18のアルコールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0069】
上記のノニオン性界面活性剤を構成する炭素数1〜18のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、第三ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第三アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、デカンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられ、アルキルフェノールとしては、フェノール、メチルフェノール、2,4−ジ第三ブチルフェノール、2,5−ジ第三ブチルフェノール、3,5−ジ第三ブチルフェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−第三オクチルフェノール、4−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられ、アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられ、アルキレンジアミンとしては、これらのアルキレングリコールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたものが挙げられる。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物とは、ランダム付加物でもブロック付加物でもよい。
【0070】
上記のカチオン性界面活性剤としては、1級〜3級アミン塩、ピリジニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ハロゲン化アルキル4級アンモニウム塩等の4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0071】
これらの乳化剤を使用する場合の使用量は、特に制限を受けず任意の量を使用することができるが、ウレタン樹脂1に対する質量比で0.05より小さいと充分な分散性が得られない場合があり、0.3を超えると水性塗料組成物から得られる塗膜等の耐水性、強度、延び等の物性が低下するおそれがあるので0.05〜0.3が好ましく、0.05〜0.2がより好ましい。
【0072】
ポリウレタン樹脂エマルション(A−1)において、その固形分は、特に制限を受けず、任意の値を選択できる。該固形分は10〜50質量%が分散性と塗装性が良好なので好ましく、20〜40質量%がより好ましい。
【0073】
ポリウレタン樹脂エマルション(A−1)に分散しているウレタン樹脂の重量平均分子量は、得られる塗膜の平滑性の観点から、2000〜50000であり、好ましくは、3000〜40000である。水酸基価は、特に制限を受けず、任意の値を選択することができる。水酸基価は、樹脂1g当たりのKOHの消費量(mg)で表され、通常0〜100mgKOH/gである。
【0074】
ベース塗料(X)においては、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、ベース塗料(X)中の樹脂100質量部(固形分)を基準として、上記ポリウレタン樹脂(A)を好ましくは5〜60質量部、より好ましくは10〜40質量部、さらに好ましくは15〜30質量部含有することができる。
【0075】
炭素数6〜12のアルコール(B)
アルコール(B)としては、炭素数6〜12の範囲内であれば特に制限なく使用することができるが、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、炭素数7〜11であることがさらに好ましい。炭素数が6よりも小さいと、ベース塗膜の粘度が低くなり、光輝性塗膜と混層し、塗膜外観が悪化する。また、炭素数が12よりも大きいと、ベース塗膜の粘度が高くなり、平滑感が悪化し、塗膜外観が損なわれる。
【0076】
炭素数6〜12のアルコール(B)としては直鎖又は分岐鎖の脂肪族アルコール、具体的には例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール;炭素数6〜12の芳香族アルコール、例えば、フェノール等が挙げられる。これらは飽和又は不飽和のいずれのものも使用できる。
【0077】
これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。該アルコール(B)としては、なかでも特に、ヘキサノール、オクタノールが好ましい。
【0078】
ベース塗料(X)においては、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、ベース塗料(X)中の樹脂100質量部(固形分)を基準として、上記アルコール(B)を好ましくは5〜45質量部、より好ましくは10〜40質量部、さらに好ましくは15〜30質量部含有することができる。
【0079】
HLB値が7〜9の有機溶剤(C)
HLB値が7〜9の有機溶剤(C)としては、HLB値が7〜9の範囲内であれば特に制限なく使用することができるが、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、HLB値が7.1〜8.5の範囲内であることがさらに好ましい。HLB値が7よりも小さいと、ベース塗膜の粘度が高くなり、平滑感が悪化し、塗膜外観が悪化する。また、HLB値が9よりも大きいと、ベース塗膜の極性が高くなり、光輝性塗膜と混層し、塗膜外観が損なわれる。
【0080】
HLB値とは化合物の水と油(水に不溶性の有機化合物)への親和性の程度を表す値である。Hydrophile−Lipophile Balanceの頭文字を取ったものである。本発明において、HLB値は、重量分率に基づく下記グリフィン式(1)により算出される値である。
【0081】
HLB=20(MH/M) (1)
(式中、MHは親水基部分の分子量、Mは化合物の分子量を意味する)
上記有機溶剤(C)としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルから成る群から選ばれる少なくとも一種である。これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。該有機溶剤(C)としては、なかでも特に、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルであることが好ましく、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルであることがさらに好ましい。
【0082】
ベース塗料(X)においては、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、ベース塗料(X)中の樹脂100質量部(固形分)を基準として、上記有機溶剤(C)を好ましくは3〜22質量部、より好ましくは5〜20質量部、さらに好ましくは8〜18質量部含有することができる。
【0083】
ベース塗料(X)は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、前記アルコール(B)と上記有機溶剤(C)の含有量が、(B)/(C)の質量比で0.7〜3、好ましくは1.0〜2.5、さらに好ましくは1.3〜2であることが好適である。
【0084】
ポリエステル樹脂(D)
ベース塗料(X)は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、前記成分(A)〜(C)に加えてさらに数平均分子量が1500〜10000、好ましくは1800〜8000、さらに好ましくは2000〜6000のポリエステル樹脂(D)を含有することが好ましい。
【0085】
上記ポリエステル樹脂(D)は、塗料に通常使用されるものであれば特に制限なく使用することができるが、水に溶解又は分散しているものが好ましく、通常、水溶液又は水分散液の形態で供される。
【0086】
上記ポリエステル樹脂(D)は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、アクリル変性されたポリエステルであることが好ましい。該アクリル変性されたポリエステルは水分散体であることが好ましい。
【0087】
アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体は、アクリル変性ポリエステル樹脂を水分散化することによって得ることができる。上記アクリル変性ポリエステル樹脂は特に限定されることのない既知の方法で得ることができる。例えばラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂及び重合性不飽和モノマーとの混合物を重合させて得ることができる。あるいはポリエステル樹脂とアクリル樹脂の樹脂同士のエステル化反応によって得ることができる。
【0088】
アクリル変性ポリエステル樹脂を、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂及び重合性不飽和モノマーとの混合物を重合させることによって得る方法とは、ポリエステル樹脂中のラジカル重合性不飽和基をグラフト点として、重合性不飽和モノマーを重合して行くことで、該ポリエステル樹脂をアクリル変性させる方法である。上記ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂を得る方法は特に限定されないが、例えば、既知の方法でポリエステル樹脂を得た後に末端の水酸基と酸無水物含有不飽和モノマーを反応させることによって、ポリエステル樹脂の末端にグラフト点をもたせることもできるし、あるいは重合性不飽和基を有する多塩基酸を含む酸成分と、アルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応することによって製造することもできる。金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点からは、後者の方法すなわち重合性不飽和基を有する多塩基酸を含む酸成分と、アルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応することによって製造する方が好ましい。そのなかでも特に、重合性不飽和基を有する多塩基酸として酸無水物基含有不飽和単量体を含む酸成分を使用することが金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、好ましい。
【0089】
ここで該酸無水物基含有不飽和単量体とは、1分子中に酸無水物基とラジカル重合性不飽和基をそれぞれ1個ずつ有する化合物である。具体的には無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水シトラコン酸、無水メサコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水2−ペンテン二酸、無水メチレンコハク酸、無水アリルマロン酸、無水イソプロピリデンコハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸無水物、無水アセチレンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物などの不飽和ジカルボン酸無水物が挙げられる。なかでも金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、無水マレイン酸が好ましい。
【0090】
酸無水物基含有不飽和単量体以外の酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0091】
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0092】
上記脂肪族多塩基酸としては、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが特に好ましい。
【0093】
前記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0094】
上記脂環族多塩基酸としては、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、を用いることが好ましく、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
【0095】
前記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0096】
上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸を使用することが好ましい。
【0097】
上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0098】
アクリル変性ポリエステル樹脂の製造に使用される前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0099】
上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することも出来る。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0100】
ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂を得る他の方法としては、酸成分の一部としてオレイン酸及びミリスチン酸のような不飽和脂肪酸を使用する方法も挙げられる。かかる方法では不飽和脂肪酸のラジカル重合性不飽和基をグラフト点として使用する。
【0101】
アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、ポリエステル部分の原料の酸成分中の脂環族多塩基酸の含有量が、該酸成分の合計量を基準として20〜100モル%であるものが好ましく、25〜95モル%であるものがより好ましく、30〜90モル%であるものがさらに好ましい。特に、上記脂環族多塩基酸が、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることが、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から好ましい。
【0102】
ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150〜250℃で、5〜10時間加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0103】
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて又は連続的に添加してもよい。まず、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られたラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂を反応させてハーフエステル化させてラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。まず、ラジカル重合性不飽和基及びカルボキシル基を含有するポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させてラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基及び水酸基を含有するポリエステル樹脂としてもよい。
【0104】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0105】
前記ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、油脂、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0106】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられる。
【0107】
油脂としては、これらの脂肪酸の脂肪酸油を挙げることができる。
【0108】
上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0109】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0110】
上記のごとくして得られたラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂と混合して重合させる重合性不飽和モノマーとしては、例えば、下記モノマー(i)〜(xx)等を使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーは単独で又は2種以上で組み合わせて使用することができる。
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix)ビニル化合物:N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(xi)水酸基含有重合性不飽和モノマー:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等。
(xii)含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等。
(xiii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiv)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xv)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xvi)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xvii)リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等。
(xviii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xix)紫外線安定性重合性不飽和モノマー:4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xx)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
【0111】
本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0112】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0113】
上記重合性不飽和モノマーとしては、少なくともその一部に、(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、及び(v)芳香環含有重合性不飽和モノマーを使用することがポリエステル樹脂とのグラフトのしやすさや、得られたアクリル酸変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)の安定性の点から好ましい。
【0114】
このとき、(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、及び(v)芳香環含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、重合性不飽和モノマー合計質量を基準として、
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを好ましくは20〜50質量%、より好ましくは25〜45質量%、特に好ましくは30〜40質量%、
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマーを好ましくは10〜60質量%、より好ましくは15〜55質量%、特に好ましくは20〜50質量%、
である。
【0115】
アクリル変性ポリエステル樹脂は、例えば、前記ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂及び前記重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法で共重合することによって得ることができる。
【0116】
具体的には、例えば、反応容器中にラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂、重合性不飽和モノマー、ラジカル開始剤及び必要に応じて連鎖移動剤を添加し、90〜160℃で1〜5時間加熱することにより得ることができる。発熱が大きく温度が制御しにくい場合には、反応容器中にラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂だけを先に仕込み、他の原料を時間をかけながら添加してもよい。
【0117】
上記重合開始剤としては、有機過酸化物系、アゾ系等のものが使用できる。有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシー2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシー2−エチルヘキサノエート等が挙げられ、アゾ系重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。上記連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン類等が挙げられる。
【0118】
重合性不飽和モノマーの添加量としては、グラフト重合の製造安定性の観点からラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂及び重合性不飽和モノマーの合計100重量部を基準として10〜95重量部であるのが好ましく、30〜90重量部であるのがより好ましく、65〜85重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0119】
アクリル変性ポリエステル樹脂は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、水酸基価が0〜200mgKOH/gであるのが好ましく、10〜100mgKOH/gであるのがより好ましく、20〜60mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
【0120】
アクリル変性ポリエステル樹脂が、更にカルボキシル基を有する場合は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、付着性の観点から、その酸価が55mgKOH/g以下であるのが好ましく、10〜50mgKOH/gであるのがより好ましく、20〜30mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
【0121】
アクリル変性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、好ましくは1500〜10000、より好ましくは1800〜8000、さらに好ましくは2000〜6000である。
【0122】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0123】
上記により合成されたアクリル変性ポリエステル樹脂は、中和、水分散することにより水性樹脂分散液を得ることができる。中和に用いる中和剤としては、アミン類やアンモニアが好適に使用される。上記アミン類の代表例として、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。中でも特にトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンが好適である。アクリル変性ポリエステル樹脂の中和の程度は、特に限定されるものではないが、樹脂中のカルボキシル基に対して通常0.3〜1.0当量中和の範囲であることが望ましい。
【0124】
アクリル変性ポリエステル樹脂が分散せしめられる水性媒体は、水のみであってもよいし、水と有機溶剤との混合物であってもよい。この有機溶剤としては、アクリル変性ポリエステル樹脂の水性媒体中での安定性に支障を来さない有機溶剤である限り、従来公知のものをいずれも使用できる。
【0125】
上記有機溶剤としては、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤などが好ましい。具体的には、例えば、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶剤などを挙げることができる。有機溶剤としては、上記以外の水と混合しない不活性有機溶剤もアクリル変性ポリエステル樹脂の水性媒体中での安定性に支障を来たさない範囲で使用可能であり、この有機溶剤として、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤などを挙げることができる。本発明の水性樹脂分散液における有機溶剤の量は、環境保護の観点から水性媒体中の50重量%以下の範囲であることが望ましい。
【0126】
アクリル変性ポリエステル樹脂を水性媒体中に中和、分散するには、常法によれば良く、例えば中和剤を含有する水性媒体中に、撹拌下にて、アクリル変性ポリエステル樹脂を徐々に添加する方法、アクリル変性ポリエステル樹脂を中和剤によって中和した後、撹拌下にて、この中和物に水性媒体を添加するか又はこの中和物を水性媒体中に添加する方法等を挙げることができる。
【0127】
ベース塗料(X)において上記ポリエステル樹脂(D)を含む場合、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、ベース塗料(X)中の樹脂100質量部(固形分)を基準として、上記ポリエステル樹脂(D)を好ましくは5〜60質量部、より好ましくは10〜40質量部、さらに好ましくは15〜30質量部含有することができる。
【0128】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E)
ベース塗料(X)は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、前記成分(A)〜(C)に加えてさらにノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E)を含有することが好ましい。
【0129】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E)(以下、「ブロックポリイソシアネート化合物(E)」と省略する場合がある)は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物の一部のイソシアネート基がノニオン性親水基で修飾され、残りの一部又は全部のイソシアネート基がブロック剤で封鎖されている化合物である。
【0130】
本発明の水性塗料組成物では、ブロックポリイソシアネート化合物(E)は、水性塗料組成物に含まれる水性媒体に分散されているか、又は溶解されている。
【0131】
ブロックポリイソシアネート化合物(E)は、例えば、1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(e1)のイソシアネート基に、ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(e2)及びブロック剤(e3)を反応させることにより得られる。
【0132】
1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(e1)(以下、「ポリイソシアネート化合物(e1)」と称する場合がある)のイソシアネート基と、ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(e2)(以下、「活性水素含有化合物(e2)」と称する場合がある)と、ブロック剤(e3)とを反応させる場合、ポリイソシアネート化合物(e1)、活性水素含有化合物(e2)及びブロック剤(e3)の反応の順序は、特に限定されない。
【0133】
具体的には、ポリイソシアネート化合物(e1)のイソシアネート基の一部に活性水素含有化合物(e2)を反応させた後、残りのイソシアネート基をブロック剤(e3)でブロックすることができ、ポリイソシアネート化合物(e1)中のイソシアネート基の一部をブロック剤(e3)でブロックした後、残りのイソシアネート基に活性水素含有化合物(e2)を反応させることができ、あるいはポリイソシアネート化合物(e1)のイソシアネート基に活性水素含有化合物(e2)及びブロック剤(e3)を、一度に反応させることができる。
【0134】
[1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(e1)]
1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(e1)は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されず、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及びそれらの誘導体、並びにそれらの任意の組み合わせ等が挙げられる。
【0135】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の説明欄に記載した脂肪族ポリイソシアネートを使用することができる。
【0136】
上記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の説明欄に記載した脂環族ポリイソシアネートを使用することができる。
【0137】
上記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の説明欄に記載した芳香脂肪族ポリイソシアネートを使用することができる。
【0138】
上記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の説明欄に記載した芳香族ポリイソシアネートを使用することができる。
【0139】
上記誘導体としては、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の説明欄に記載した誘導体を使用することができる。
【0140】
ポリイソシアネート化合物(e1)としては、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E)の加熱時の黄変が発生しにくい観点から、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びそれらの誘導体が好ましく、そして形成される塗膜の柔軟性の観点から、脂肪族ジイソシアネート及びその誘導体がより好ましい。
【0141】
ポリイソシアネート化合物(e1)としては、上記ポリイソシアネート及び/又はその誘導体と、ポリイソシアネートと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させることにより生成したプレポリマーであってもよい。上記ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等が挙げられる。
【0142】
ポリイソシアネート化合物(e1)は、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーのポリマー又はコポリマーであってもよい。
【0143】
ポリイソシアネート化合物(e1)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)の反応性及びブロックポリイソシアネート化合物(E)と他の塗料成分との相溶性の観点から、好ましくは約300〜約20000、より好ましくは約400〜約8000、そしてさらに好ましくは約500〜約2000の数平均分子量を有する。
【0144】
ポリイソシアネート化合物(e1)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)の反応性及びブロックポリイソシアネート化合物(E)と他の塗料成分との相溶性の観点から、1分子あたり、約2〜約100個の、平均イソシアネート官能基数を有することが好ましい。ブロックポリイソシアネート化合物(E)の反応性を高める観点から、平均イソシアネート官能基数は、約3以上であることが好ましい。ブロックポリイソシアネート化合物(E)の製造時にゲル化を防ぐ観点から、上記平均イソシアネート官能基数は、約20以下であることが好ましい。
【0145】
[ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(e2)]
ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(e2)としては、例えば、ポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物が挙げられる。上記ポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、並びにそれらの任意の組み合わせ、例えば、ポリオキシエチレン(オキシプロピレン)基が挙げられる。なかでも、ブロックポリイソシアネート化合物(E)の貯蔵安定性の観点から、活性水素含有化合物(e2)は、ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物(e21)であることが好ましい。
【0146】
ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物(e21)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)の貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐水性等の観点から、約3以上、好ましくは約5〜約100、より好ましくは約8〜約45の連続するオキシエチレン基(ポリオキシエチレン基)を有することが好適である。
【0147】
ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物(e21)は、連続するオキシエチレン基以外に、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を含有してもよい。上記オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシヘキシレン基等が挙げられる。ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物(e21)における、オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)を水分散させた後の貯蔵安定性の観点から、約20〜約100モル%の範囲内であることが好ましく、約50〜約100モル%の範囲内であることがより好ましい。オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率が約20モル%未満になると、親水性の付与が十分でなくなり、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E)の貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0148】
ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(e2)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)の貯蔵安定性及び形成される塗膜の耐水性の観点から、好ましくは約200〜約2000の数平均分子量を有する。上記数平均分子量は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)の貯蔵安定性の観点から、約300以上であることがより好ましく、そして約400であることがさらに好ましい。上記数平均分子量は、形成される塗膜の耐水性の観点から、約1500以下であることがより好ましく、そして約1200以下であることがさらに好ましい。
【0149】
ノニオン性親水基を有する活性水素含有化合物(e2)としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びポリエチレングリコールモノエチルエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシエチレン)、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル及びポリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシプロピレン)、ω−メトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ω−エトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)等のω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノエチルエーテル等のポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシプロピレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられ、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル及びポリエチレングリコールが好ましく、そしてポリエチレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
【0150】
なお、本明細書において、「ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)」は、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体を意味し、それらのブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれも含まれる。
【0151】
上記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「ユニオックスM−400」、「ユニオックスM−550」、「ユニオックスM−1000」、「ユニオックスM−2000」等が挙げられる。上記ポリエチレングリコールの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「PEG#200」、「PEG#300」、「PEG#400」、「PEG#600」、「PEG#1000」、「PEG#1500」、「PEG#1540」、「PEG#2000」等が挙げられる。
【0152】
ポリイソシアネート化合物(e1)中の一部のイソシアネート基と、活性水素含有化合物(e2)を反応させる場合、得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)の貯蔵安定性及び硬化性、並びに金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、ポリイソシアネート化合物(e1)及び活性水素含有化合物(e2)を、ポリイソシアネート化合物(e1)中のイソシアネート基1モルを基準として、活性水素含有化合物(e2)中の活性水素のモル数が約0.03〜約0.6モルの範囲にあるように反応させることが好ましい。
【0153】
活性水素含有化合物(e2)中の活性水素のモル数は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)の硬化性及び形成される塗膜の耐水性の観点から、約0.4以下であることがより好ましく、そして約0.3以下であることがさらに好ましい。活性水素含有化合物(e2)中の活性水素のモル数は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)の貯蔵安定性、並びに金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、約0.04以上であることがより好ましく、約0.05以上であることがさらに好ましい。
【0154】
[ブロック剤(e3)]
ブロック剤(e3)としては、例えば、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、カルバミン酸系、アミン系、イミン系、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。ブロック剤(e3)の具体例を、下記に示す。
【0155】
(1)フェノール系;
フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール等、
(2)アルコール系;
エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール等、
(3)活性メチレン系;
マロン酸ジエステル、アセト酢酸エステル、イソブチリル酢酸エステル等、
(4)メルカプタン系;
ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等、
(5)酸アミド系;
アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、
(6)酸イミド系;
コハク酸イミド、マレイン酸イミド等、
(7)イミダゾール系;
イミダゾール、2−メチルイミダゾール等、
(8)尿素系;
尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、
(9)オキシム系;
ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、
(10)カルバミン酸系;
N−フェニルカルバミン酸フェニル等
(11)アミン系;
ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等、
(12)イミン系;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
【0156】
ブロック剤(e3)によるイソシアネート基のブロック化反応には、所望により反応触媒を用いることができる。上記反応触媒としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、活性メチレン化合物の金属塩、活性メチレン化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等の塩基性化合物が挙げられる。
【0157】
上記オニウム塩は、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩であることが好ましい。上記反応触媒は、通常、ポリイソシアネート化合物(e1)及びブロック剤(e3)の合計固形分質量を基準として、好ましくは約10〜約10,000ppmの範囲内、そしてより好ましくは約20〜約5,000ppmの範囲内で用いられる。
【0158】
また、ブロック剤(e3)によるイソシアネート基のブロック化は、所望により、溶剤の存在下で、約0〜約150℃で実施することができる。上記溶媒は、非プロトン性溶剤であることが好ましく、そしてエステル、エーテル、N−アルキルアミド、ケトン等がより好ましい。反応が予定通り進行した後に、酸成分を添加して、触媒である塩基性化合物を中和し、反応を停止させてもよい。
【0159】
ブロック剤(e3)によるイソシアネート基のブロック化反応において、ブロック剤(e3)の量は、特には限定されないが、ポリイソシアネート化合物(e1)中のイソシアネート基1モルに対して、好ましくは約0.1〜約3モル、より好ましくは約0.2〜約2モルの比率で添加される。また、ポリイソシアネート化合物(e1)中のイソシアネート基と反応しなかったブロック剤は、ブロック化反応終了後に除去することができる。
【0160】
ブロック剤(e3)は、形成される塗膜の低温硬化性の観点から、活性メチレン系であることが好ましい。
【0161】
ブロックポリイソシアネート化合物(E)は、水性塗料組成物の安定性の観点から、下記のブロックポリイソシアネート化合物(E11)又はブロックポリイソシアネート化合物(E12)であることが好ましい。
[ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E11)]
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E11)(以下、「ブロックポリイソシアネート化合物(E11)」と称する場合がある)は、下記一般式(IV):
【0163】
(式中、R
1は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そして、R
1は、お互いに、同一であるか又は異なる。)
で示されるブロックイソシアネート基、及びノニオン性親水基を有する。
【0164】
ブロックポリイソシアネート化合物(E11)は、ブロック剤(e3)として、比較的容易に製造できる活性メチレン系化合物を使用できる点から、R
1が、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
【0165】
得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)と他の塗料成分との相溶性の観点から、R
1は、炭素数2又は3のアルキル基であることが好ましく、そして得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)の貯蔵安定性、並びに形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、R
1は、イソプロピル基であることがさらに好ましい。
【0166】
ブロックポリイソシアネート化合物(E11)は、例えば、ポリイソシアネート化合物(e1)と、活性水素含有化合物(e2)と、ブロック剤(e3)としての、炭素数1〜12の炭化水素基を有するマロン酸ジアルキルとを反応させることによって得られる。
【0167】
上記マロン酸ジアルキルとしては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジtert−ブチル、マロン酸ジn−ペンチル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ(2−エチルヘキシル)、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられ、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル及びマロン酸ジtert−ブチルが好ましく、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル及びマロン酸ジイソプロピルがより好ましく、そしてマロン酸ジイソプロピルがさらに好ましい。
[ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E12)]
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E12)(以下、「ブロックポリイソシアネート化合物(E12)」と称する場合がある)は、下記一般式(V):
【0169】
(式中、R
6及びR
7は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基、及びノニオン性親水基を有する。
【0170】
ブロックポリイソシアネート化合物(E12)は、ブロック剤(e3)として、比較的容易に製造できる活性メチレン系の化合物を使用できる点から、R
6及びR
7が、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。
【0171】
得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)と他の塗料成分との相溶性向上の観点から、R
6及びR
7は、炭素数2又は3のアルキル基であることが好ましく、そして得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)の貯蔵安定性、並びに形成される塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、R
6及びR
7は、イソプロピル基であることがさらに好ましい。
【0172】
ブロックポリイソシアネート化合物(E12)は、例えば、ポリイソシアネート化合物(e1)と、活性水素含有化合物(e2)と、ブロック剤(e3)としての、炭素数1〜12の炭化水素基を有するアセト酢酸エステル又は炭素数1〜12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルとを反応させることによって得られる。ブロック剤(e3)は、炭素数1〜12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルであることが好ましい。
【0173】
上記イソブチリル酢酸エステルとしては、例えば、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸n−プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸n−ブチル、イソブチリル酢酸イソブチル、イソブチリル酢酸sec−ブチル、イソブチリル酢酸tert−ブチル、イソブチリル酢酸n−ペンチル、イソブチリル酢酸n−ヘキシル、イソブチリル酢酸2−エチルヘキシル、イソブチリル酢酸フェニル、イソブチリル酢酸ベンジル等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記イソブチリル酢酸エステルとしては、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル及びイソブチリル酢酸イソプロピルが好ましい。
【0174】
上記アセト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸tert−ブチル、アセト酢酸n−ペンチル、アセト酢酸n−ヘキシル、アセト酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸フェニル、アセト酢酸ベンジル、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記アセト酢酸エステルとしては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びアセト酢酸イソプロピルが好ましい。
【0175】
ブロックポリイソシアネート化合物(E)は、水中での安定性の観点から、ブロックポリイソシアネート化合物(E)に2級アルコール(e)をさらに反応させることによって得られた、ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(以下、「ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E2)と称する」であることが好ましい。
【0176】
[ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E2)]
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E2)(以下、「ブロックポリイソシアネート化合物(E2)」と称する場合がある)は、例えば、ブロックポリイソシアネート化合物(E)と、下記一般式(VI):
【0178】
(式中、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そしてR
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。)
で示される2級アルコール(e4)とを反応させることによって得られる。
【0179】
[2級アルコール(e4)]
2級アルコール(e4)は、一般式(VI)で示される化合物であり、ブロックポリイソシアネート化合物(E)と、2級アルコール(e4)との反応性を高める観点から、R
2はメチル基であることが好ましい。R
3、R
4及びR
5は、それぞれ炭素数が多いと、得られるノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E2)の極性が低下し、他の塗料成分との相溶性が低下する場合があるため、R
3は炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、そしてR
4及びR
5はメチル基であることが好ましい。
【0180】
2級アルコール(e4)としては、例えば、4−メチル−2−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、6−メチル−2−ヘプタノール、7−メチル−2−オクタノール、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E)及び2級アルコール(e4)の反応後に、未反応の2級アルコール(e4)の一部又は全部を蒸留除去することが比較的容易であることから、2級アルコール(e4)は、比較的低い沸点を有する4−メチル−2−ペンタノールであることが好ましい。
【0181】
ブロックポリイソシアネート化合物(E2)は、水性塗料組成物の安定性の観点から、下記のノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E21)又はノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E22)であることが好ましい。
【0182】
[ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E21)]
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E21)(以下、「ブロックポリイソシアネート化合物(E21)」と称する場合がある)は、例えば、下記一般式(IV):
【0184】
(式中、R
1は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そして各R
1は、お互いに同一であるか、又は異なっている。)
で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E11)と、2級アルコール(e4)とを反応させることによって得られる。
【0185】
上記反応により、ブロックポリイソシアネート化合物(E11)のR
1の一方又は両方が、下記一般式(VII):
【0187】
(式中、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そしてR
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。)
で示される基に置換される。
【0188】
上記反応により得られたブロックポリイソシアネート化合物(E)は、下記一般式(I):
【0190】
(式中、R
1、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そしてR
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基、及び/又は下記一般式(II):
【0192】
(式中、R
2、R
3、R
4及びR
5は、上述の通りである。)
で示されるブロックイソシアネート基を有する。
【0193】
ブロックポリイソシアネート化合物(E11)及び2級アルコール(e4)の反応は、例えば、ブロックポリイソシアネート化合物(E11)のR
1の少なくとも一方を、一般式(VII)で示される基に置換できる方法であれば特に限定されない。上記反応としては、加熱及び減圧等により、ブロックポリイソシアネート化合物(E11)のR
1の少なくとも一方に由来するアルコールの一部又は全部を系外に蒸留除去することにより反応を促進させて、一般式(I)又は(II)で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E21)を得る方法が好ましい。
【0194】
上記方法では、約20〜約150℃、そして好ましくは約75〜約95℃の温度で、所望により減圧し、約5分間〜約20時間、そして好ましくは約10分間〜約10時間、上記アルコールの一部又は全部を除去するのが一般的である。上記温度が低すぎると、ブロックポリイソシアネート化合物(E11)のアルコキシ基の交換反応が遅く、製造効率が低下し、そして上記温度が高すぎると、生成するブロックポリイソシアネート化合物(E)が分解し、硬化性が低下する場合がある。
[ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E22)]
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E22)(以下、「ブロックポリイソシアネート化合物(E22)」と称する場合がある)は、例えば、一般式(V):
【0196】
(式中、R
6及びR
7は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E12)と、2級アルコール(e4)とを反応させることによって得られる。
【0197】
上記反応により、ブロックポリイソシアネート化合物(E12)のR
7が、下記一般式(VII):
【0199】
(式中、R
2、R
4及びR
5は、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、そしてR
3は、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。)
で示される基に置換される。
【0200】
上記反応により得られたブロックポリイソシアネート化合物(E)は、下記一般式(III):
【0202】
(式中、R
2、R
3、R
4及びR
5は、上述の通りであり、R
6は、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。)
で示されるブロックイソシアネート基を有する。
【0203】
ブロックポリイソシアネート化合物(E12)及び2級アルコール(e4)の反応は、例えば、ブロックポリイソシアネート化合物(E12)のR
7を、一般式(VII)で示される基に置換できる方法であれば特に限定されない。上記反応としては、加熱及び減圧等により、ブロックポリイソシアネート化合物(E12)中のR
7に由来するアルコールの一部又は全部を系外に蒸留除去することにより反応を促進させて、一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基及びノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E22)を得る方法が好ましい。
【0204】
上記方法では、約20〜約150℃、そして好ましくは約75〜約95℃の温度で、所望により減圧し、約5分間〜約20時間、そして好ましくは約10分間〜約10時間、上記アルコールの一部又は全部を除去するのが一般的である。上記温度が低すぎると、ブロックポリイソシアネート化合物(E12)のアルコキシ基の交換反応が遅く、製造効率が低下し、一方、上記温度が高すぎると、生成するブロックポリイソシアネート化合物(E2)が分解し、硬化性が低下する場合がある。
【0205】
ブロックポリイソシアネート化合物(E2)の製造における、ブロックポリイソシアネート化合物(E)及び2級アルコール(e4)の比率は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(E)の反応性及び製造効率の観点から、ブロックポリイソシアネート化合物(E)の固形分100質量部を基準として、2級アルコール(e4)が約5〜約500質量部の範囲内であることが好ましく、約10〜約200質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0206】
2級アルコール(e4)の比率が約5質量部未満になると、ブロックポリイソシアネート化合物(B1)及び2級アルコール(e4)の反応速度が遅すぎる場合がある。2級アルコール(e4)の比率が約500質量部を超えると、生成するブロックポリイソシアネート化合物(E2)の濃度が低くなり、製造効率が低下する場合がある。
【0207】
ブロックポリイソシアネート化合物(E1)及び2級アルコール(e4)の反応では、ブロックポリイソシアネート化合物(E2)の分子量を調整するために、ブロックポリイソシアネート化合物(E)及び2級アルコール(e4)に、ポリオール化合物を加えてから上記除去操作を行ってもよい。
【0208】
ブロックポリイソシアネート化合物(E21)及びブロックポリイソシアネート化合物(E22)が、水中での安定性に優れる理由としては、それらがノニオン性親水基を有するため、水中で比較的安定に存在し、またそれらが分岐構造を有する炭化水素基を有するために、ブロックイソシアネート基が低極性化し加水分解されにくくなるためと推察される。
【0209】
ブロックポリイソシアネート化合物(E)は、他の塗料成分との相溶性、金属調光沢優れる複層塗膜を得る観点から、好ましくは約600〜約30000の数平均分子量を有する。上記数平均分子量は、他の塗料成分との相溶性、並びに金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、約10000以下であることがより好ましく、そして約5000以下であることがさらに好ましい。上記数平均分子量は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、約900以上であることがより好ましく、そして約1000以上であることがさらに好ましい。
【0210】
ブロックポリイソシアネート化合物(E)は、界面活性剤との混合物であってもよい。上記界面活性剤は、水性塗料組成物の安定性の観点から、ノニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0211】
ベース塗料(X)において上記ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E)を含む場合は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、ベース塗料(X)中の樹脂100質量部(固形分)を基準として、上記ブロックポリイソシアネート化合物(E)を好ましくは2〜30質量部、より好ましくは4〜20質量部、さらに好ましくは7〜15質量部含有することができる。
【0212】
ベース塗料(X)は透明であってもよい。ベース塗料(X)は、着色されたものであってもよく、好ましくは着色されたものである。
【0213】
ベース塗料(X)は必要に応じて顔料を含むことができる。ベース塗料(X)が透明である場合は、顔料はベース塗料(X)の透明性を損なわない程度に含まれる。
【0214】
該顔料としては例えば、メタリック顔料、防錆顔料、着色顔料、体質顔料等を挙げることができ、なかでも着色顔料を使用することが好ましい。
【0215】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、オーカー、ジスアゾ、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、モノアゾレッド、無置換キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレット等が挙げられる。これらの着色顔料は、それぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0216】
ベース塗料(X)には、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、さらに必要に応じて、ポリウレタン樹脂(A)及びポリエステル樹脂(D)以外の基体樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物(E)以外の架橋剤、前記アルコール(B)及び前記有機溶媒(C)以外の有機溶剤、顔料分散剤、沈降防止剤、ならびに紫外線吸収剤等を適宜配合しても良い。
【0217】
ポリウレタン樹脂(A)及びポリエステル樹脂(D)以外の基体樹脂は、耐候性及び透明性等が良好である樹脂が好適であり、具体的には、アクリル樹脂、前記ポリエステル樹脂(D)以外のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0218】
上記アクリル樹脂としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミド基、メチロール基等の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及びその他の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等を共重合して得られる樹脂を挙げることができる。
【0219】
前記ポリエステル樹脂(D)以外のポリエステル樹脂としては、多塩基酸と、多価アルコールと、任意選択で変性油とを、常法により縮合反応させて得られるものを使用することができる。
【0220】
エポキシ樹脂としては、例えばエポキシ基と不飽和脂肪酸との反応によって、エポキシエステルを合成し、この不飽和基にα,β−不飽和酸を付加する方法や、エポキシエステルの水酸基と、フタル酸やトリメリット酸のような多塩基酸とをエステル化する方法等によって得られるエポキシエステル樹脂等が挙げられる。
【0221】
ベース塗料(X)が水性塗料である場合、上記基体樹脂は、樹脂を水溶性化もしくは水分散化するのに十分な量の親水性基、例えばカルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン結合等、最も一般的にはカルボキシル基を含有する樹脂を使用し、該親水性基を中和してアルカリ塩とすることにより基体樹脂を水溶性化もしくは水分散化することができる。その際の親水性基、例えばカルボキシル基の量は特に制限されず、水溶性化もしくは水分散化の程度に応じて任意に選択することができるが、一般には、酸価に基づいて約10mgKOH/g以上、好ましくは15〜200mgKOH/gの範囲内とすることができる。また中和に用いるアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、アミン化合物等を挙げることができる。
【0222】
上記樹脂の水分散化は、上記モノマー成分を界面活性剤や水溶性樹脂の存在下で乳化重合せしめることによっても行うことができる。さらに、上記樹脂を例えば乳化剤などの存在下で水中に分散することによっても得られる。この水分散化においては、基体樹脂中には前記親水性基を全く含んでいなくてもよく、あるいは上記水溶性樹脂よりも少なく含有することができる。
【0223】
前記ブロックポリイソシアネート化合物(E)以外の架橋剤としては、例えばアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物(E)以外のブロック化ポリイソシアネート化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物などが挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物(E)以外のブロック化ポリイソシアネート化合物;及びカルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましい。ポリイソシアネート化合物及びブロックポリイソシアネート化合物(E)以外のブロック化ポリイソシアネート化合物については、後述のクリヤー塗料(Z)の項で述べるものを使用することができる。上記架橋剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0224】
具体的には、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素等とホルムアルデヒドとの縮合もしくは共縮合又は、さらに低級1価アルコールでエーテル化する等によって得られるアミノ樹脂が好適に用いられる。また、ポリイソシアネート化合物もしくはブロックポリイソシアネート化合物も好適に使用できる。
【0225】
ベース塗料(X)には、必要に応じて上記アルコール(B)及び上記有機溶媒(C)以外の有機溶剤を使用することもできる。具体的には、通常塗料に用いられているものを使用することができ、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のエステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル;ブタノール、プロパノール、ジエチレングリコール等のアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトンの有機溶剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0226】
上記のうち、エステル、エーテル、アルコール、ケトンの有機溶剤が溶解性の観点から好ましい。
【0227】
ベース塗料(X)の塗装は、ベース塗料(X)に脱イオン水、必要に応じ増粘剤、消泡剤などの添加剤を加えて、固形分含有率を30〜62質量%、好ましくは34〜61質量%、さらに好ましくは40〜60質量%、粘度を200〜5000cps/6rpm(B型(Brookfield type)粘度計)に調整した後、前記被塗物面に、スプレー塗装、回転霧化塗装等により行う。塗装の際、必要に応じて静電印加を行うこともできる。
【0228】
ベース塗料(X)の固形分含有率が30質量%より低いと光輝性顔料分散体(Y)との混層のため塗膜外観が損なわれる場合がある。ベース塗料(X)の固形分含有率が63質量%より高くても、ベース塗料(X)の肌荒れのため塗膜外観が損なわれる場合がある。
【0229】
ベース塗料(X)を塗装して得られるベース塗膜の硬化膜厚は、6〜45μm、好ましくは8〜40μm、さらに好ましくは15〜35μmである。ベース塗膜の硬化膜厚が6未満であると、ベース塗料(X)の肌荒れのため塗膜外観が損なわれる場合がある。ベース塗膜の硬化膜厚が45μmを超えても、光輝性顔料分散体(Y)との混層のため塗膜外観が損なわれる場合がある。
【0230】
工程(2)
工程(2)は、工程(1)で形成されるベース塗膜上に、固形分含有率が0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、さらに好ましくは1〜6質量%の光輝性顔料分散体(Y)を塗装して硬化膜厚として0.1〜5.0μm、好ましくは0.2〜3.0μm、さらに好ましくは0.3〜2.5μmの光輝性塗膜を形成する工程である。
【0231】
光輝性顔料分散体(Y)
光輝性顔料分散体(Y)は、水、鱗片状光輝性顔料(P)、樹脂エマルション(Q)及びセルロースナノファイバー(R)を含有する。
【0232】
鱗片状光輝性顔料(P)
鱗片状光輝性顔料(P)としては、例えば、蒸着金属フレーク顔料、アルミニウムフレーク顔料、光干渉性顔料等を挙げることができる。これらの顔料は得られる塗膜に求められる質感によって1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。金属調光沢に優れた塗膜を得る観点では、蒸着金属フレーク顔料、アルミニウムフレーク顔料が好適である。一方、真珠調光沢に優れた塗膜を得る観点では、光干渉性顔料が好適である。
【0233】
蒸着金属フレーク顔料は、ベース基材上に金属膜を蒸着させ、ベース基材を剥離した後、蒸着金属膜を粉砕することにより得られる。上記基材としては、例えばフィルム等を挙げることができる。
【0234】
上記金属の材質としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等が挙げられる。なかでも特に入手しやすさ及び取扱いやすさ等の観点から、アルミニウム又はクロムが好適である。本明細書では、アルミニウムを蒸着して得られた蒸着金属フレーク顔料を「蒸着アルミニウムフレーク顔料」と呼び、クロムを蒸着して得られた蒸着金属フレーク顔料を「蒸着クロムフレーク顔料」と呼ぶ。
【0235】
蒸着金属フレーク顔料としては、蒸着金属皮膜1層から形成されたものを使用することができるが、蒸着金属皮膜にさらに他の金属や金属酸化物が形成された複層のタイプのものを使用してもよい。
【0236】
蒸着アルミニウムフレーク顔料は、表面がシリカ処理されていることが、貯蔵安定性、及び金属調光沢に優れた塗膜を得る等の観点から好ましい。
【0237】
上記蒸着アルミニウムフレーク顔料として使用できる市販品としては例えば、「METALURE」シリーズ(商品名、エカルト社製)、「Hydroshine WS」シリーズ(商品名、エカルト社製)、「Decomet」シリーズ(商品名、シュレンク社製)、「Metasheen」シリーズ(商品名、BASF社製)等を挙げることができる。
【0238】
上記蒸着クロムフレーク顔料として使用できる市販品としては例えば、「Metalure Liquid Black」シリーズ(商品名、エカルト社製)等を挙げることができる。
【0239】
上記蒸着金属フレーク顔料の平均厚みは、好ましくは0.01〜1.0μm、より好ましくは、0.015〜0.1μmである。
【0240】
上記蒸着金属フレーク顔料の平均粒子径(D50)は好ましくは1〜50μm、より好ましくは5〜20μmである。
【0241】
ここでいう平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。厚さは、該鱗片状光輝性顔料を含む塗膜断面を顕微鏡にて観察して、画像処理ソフトを使用して測定し、100個以上の測定値の平均値として定義するものとする。
【0242】
平均粒子径が、前記上限値を越えると、複層塗膜において、粒子感が生じてしまう場合があり、下限値未満では、ハイライトからシェードへの明度変化が小さくなりすぎる場合がある。
【0243】
アルミニウムフレーク顔料は、一般にアルミニウムをボールミル又はアトライターミル中で粉砕媒液の存在下、粉砕助剤を用いて粉砕、摩砕して製造される。該アルミニウムフレーク顔料の製造工程における粉砕助剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸のほか、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコールが使用される。上記粉砕媒液としてはミネラルスピリットなどの脂肪族系炭化水素が使用される。
【0244】
上記アルミニウムフレーク顔料は、粉砕助剤の種類によって、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプに大別することができる。本発明の光輝性顔料分散体においては、耐水性に優れ、かつハイライトで高い光沢度を有し、粒子感が小さく緻密な金属調塗膜を形成する観点からノンリーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料を使用することが好ましい。ノンリーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料としては、表面を特に処理していないものも使用できるが、表面を樹脂で被覆せしめたもの、シリカ処理を施したもの及びリン酸やモリブデン酸、シランカップリング剤で表面を処理したものも使用することができる。以上の各種表面処理の中から一種の処理をせしめたものを使用することができるが、複数種類の処理をせしめたものを使用してもよい。
【0245】
また上記アルミニウムフレーク顔料は、アルミニウムフレーク顔料表面に着色顔料を被覆してさらに樹脂被覆せしめたものや、アルミニウムフレーク顔料表面に酸化鉄等の金属酸化物を被覆したものなどの着色アルミニウム顔料を使用してもよい。
【0246】
上記アルミニウムフレーク顔料は、平均粒子径が1〜100μmの範囲内のものを使用することが、ハイライトで高い光沢度を有し、粒子感が小さく緻密な金属調塗膜を形成する観点から好ましく、より好ましくは平均粒子径が5〜50μmの範囲内、特に好ましくは6〜30μmの範囲内のものである。厚さは0.01〜1.0μmの範囲内のものを使用することが好ましく、特に好ましくは0.02〜0.5μmの範囲内のものである。
【0247】
光輝性顔料分散体(Y)における鱗片状光輝性顔料(P)は前記蒸着金属フレーク顔料と上記アルミニウムフレーク顔料を併用してもよい。
【0248】
前記光干渉性顔料としては、透明乃至半透明な基材を酸化チタンで被覆した光干渉性顔料を使用することが好ましい。本明細書では、透明な基材とは、可視光線を少なくとも90%透過する基材を指す。半透明な基材とは、可視光線を少なくとも10%〜90%未満透過する基材を指す。
【0249】
光干渉性顔料とは、マイカ、人工マイカ、ガラス、酸化鉄、酸化アルミニウム、及び各種金属酸化物などの透明乃至半透明な鱗片状基材の表面に、該基材とは屈折率が異なる金属酸化物が被覆された光輝性顔料である。上記金属酸化物としては、酸化チタン及び酸化鉄などを挙げることができ、該金属酸化物の厚さの違いによって、光干渉性顔料は種々の異なる干渉色を発現することができる。
【0250】
該光干渉性顔料としては具体的には、下記に示す金属酸化物被覆マイカ顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料などを挙げることができる。
【0251】
金属酸化物被覆マイカ顔料は、天然マイカ又は人工マイカを基材とし、該基材表面を金属酸化物が被覆した顔料である。天然マイカとは、鉱石のマイカ(雲母)を粉砕した鱗片状基材である。人工マイカとは、SiO
2、MgO、Al
2O
3、K
2SiF
6、Na
2SiF
6などの工業原料を加熱し、約1500℃の高温で熔融し、冷却して結晶化させて合成したものであり、天然のマイカと比較した場合において、不純物が少なく、大きさ及び厚さが均一なものである。人工マイカの基材としては具体的には、フッ素金雲母(KMg
3AlSi
3O
10F
2)、カリウム四ケイ素雲母(KMg
2.5AlSi
4O
10F
2)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg
2.5AlSi
4O
10F
2)、Naテニオライト(NaMg
2LiSi
4O
10F
2)、LiNaテニオライト(LiMg
2LiSi
4O
10F
2)などが知られている。
【0252】
金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料は、アルミナフレークを基材とし、基材表面を金属酸化物が被覆した顔料である。アルミナフレークとは、鱗片状(薄片状)酸化アルミニウムを意味し、無色透明なものである。該アルミナフレークは酸化アルミニウム単一成分である必要はなく、他の金属の酸化物を含有するものであってもよい。
【0253】
金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料とは、鱗片状のガラスを基材とし、基材表面を金属酸化物が被覆した顔料である。該金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料は、基材表面が平滑なため、強い光の反射が生じる。
【0254】
金属酸化物被覆シリカフレーク顔料は、表面が平滑で且つ厚さが均一な基材である鱗片状シリカを金属酸化物が被覆した顔料である。
【0255】
上記光干渉性顔料は、分散性、耐水性、耐薬品性、耐候性などを向上させるための表面処理が施されたものであってもよい。
【0256】
上記光干渉性顔料は、真珠調光沢に優れた塗膜を得る観点から、平均粒子径が5〜30μm、特に7〜20μmの範囲内のものを使用することが好ましい。
【0257】
ここでいう粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
【0258】
上記光干渉性顔料は、真珠調光沢に優れた塗膜を得る観点から、厚さが0.05〜1μm、特に0.1〜0.8μmの範囲内のものを使用することが好ましい。
【0259】
光輝性顔料分散体(Y)における鱗片状光輝性顔料(P)は、平均粒子径が1〜100μmの範囲内のものを使用することが、ハイライトで高い光沢度を有し、粒子感が小さく緻密な金属調又は真珠調光沢を有する塗膜を形成する観点から好ましく、より好ましくは平均粒子径が5〜50μmの範囲内、特に好ましくは7〜30μmの範囲内のものである。厚さは0.01〜1.0μmの範囲内のものを使用することが好ましく、特に好ましくは0.02〜0.5μmの範囲内のものである。
【0260】
光輝性顔料分散体(Y)における鱗片状光輝性顔料(P)の含有量は金属調又は真珠調光沢に優れた塗膜を得る観点から、光輝性顔料分散体(Y)中の合計固形分100質量部に対し、固形分として2〜97質量%の範囲内であることが好ましく、5〜65質量%の範囲内であることが特に好ましく、10〜60質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0261】
樹脂エマルション(Q)
樹脂エマルション(Q)としては、樹脂が水性溶媒に分散されているもので、塗膜形成能を有するものであれば特に制限はなく、従来公知のものを制限なく使用することができ、その具体例としては、アクリル樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルウレタン樹脂エマルション、ポリエステル樹脂エマルション、アルキド樹脂エマルション、オレフィン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、メラミン樹脂エマルション、酢酸ビニルエマルション、シリコーン樹脂エマルション、酢酸ビニル・ベオバ樹脂エマルションなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。該樹脂エマルションは変性されていてもよい。これらは単独で使用しても2種以上を併用しても良い。これらの中で、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルウレタン樹脂エマルションが好ましく、特にアクリル樹脂エマルションがよい。さらに水酸基含有アクリル樹脂エマルション、水酸基含有ウレタン樹脂エマルション及び水酸基含有アクリルウレタン樹脂エマルションが好ましい。
【0262】
水酸基含有アクリル樹脂エマルションは金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、特に、コアシェル型であることが好ましい。
【0263】
樹脂エマルション(Q)の平均粒子径は、50〜500μm、好ましくは、60〜300μm、さらに好ましくは、70〜200μmであることが好適である。本明細書において樹脂エマルションの平均粒子径はサブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定したものと定義する。
【0264】
樹脂エマルション(Q)の含有量は光輝性顔料分散体(Y)中の顔料以外の合計固形分100質量部に基づいて、5〜80質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは15〜70質量部、さらに好ましくは25〜65の範囲内である。
【0265】
セルロースナノファイバー(R)
セルロースナノファイバー(R)は、セルロースナノフィブリル、フィブリレーティドセルロース、ナノセルロースクリスタルと称されることもある。
【0266】
上記セルロースナノファイバー(R)は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、数平均繊維径が、好ましくは2〜500nm、より好ましくは2〜250nm、さらに好ましくは2〜150nmの範囲内であり、数平均繊維長が、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.1〜15μm、さらに好ましくは0.1〜10μmの範囲内である。数平均繊維長を数平均繊維径で除した数値であるアスペクト比は、好ましくは50〜10000、より好ましくは50〜5000、さらに好ましくは50〜1000の範囲内である。
【0267】
上記数平均繊維径及び数平均繊維長は、例えば、セルロースナノファイバーを水で希釈した試料を分散処理し、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、これを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した画像から測定算出される。
【0268】
上記セルロースナノファイバーは、セルロース原料を解繊し、水中で安定化させたものを使用することができる。ここでセルロース原料は、セルロースを主体とした様々な形態の材料を意味し、具体的には例えば、パルプ(木材パルプ、ジュート、マニラ麻、ケナフなどの草本由来のパルプなど);微生物によって生産されるセルロースなどの天然セルロース;セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体などの何らかの溶媒に溶解した後に紡糸された再生セルロース;及び上記セルロース原料に加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミルなどの機械的処理などをすることによってセルロースを解重合した微細セルロース;などが挙げられる。
【0269】
上記セルロース原料の解繊方法としては、セルロース原料が繊維状態を保持している限り特に制限はないが、例えば、ホモジナイザー又はグラインダーなどを用いた機械的解繊処理、酸化触媒などを用いた化学的処理、微生物などを用いた生物的処理といった方法が挙げられる。
【0270】
上記セルロースナノファイバーとしては、アニオン変性セルロースナノファイバーを使用することもできる。アニオン変性セルロースナノファイバーとしては、例えば、カルボキシル化セルロースナノファイバー、カルボキシルメチル化セルロースナノファイバー、リン酸基含有セルロースナノファイバーなどが挙げられる。上記アニオン変性セルロースナノファイバーは、例えば、セルロース原料に、カルボキシル基、カルボキシルメチル基などの官能基を公知の方法により導入し、得られた変性セルロースを洗浄して変性セルロースの分散液を調製し、この分散液を解繊して得ることができる。上記カルボキシル化セルロースは酸化セルロースとも呼ばれる。
【0271】
上記酸化セルロースは、例えば、前記セルロース原料を、N−オキシル化合物、臭化物、及びヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で酸化剤を用いて水中で酸化することによって得ることができる。
【0272】
N−オキシル化合物の使用量は、セルロースをナノファイバー化できる触媒量であれば特に制限されない。臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で適宜選択できる。
【0273】
上記酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などを使用できる。酸化セルロースにおけるカルボキシル基量は、該酸化セルロースの固形分質量に対して、0.2mmol/g以上となるように条件を設定することが好ましい。カルボキシル基量は、酸化反応時間の調整;酸化反応温度の調整;酸化反応時のpHの調整;N−オキシル化合物、臭化物、ヨウ化物、酸化剤などの添加量の調整などを行なうことにより調整できる。
【0274】
前記カルボキシメチル化セルロースは、例えば、前記セルロース原料と溶媒とを混合し、セルロース原料のグルコース残基当たり0.5〜20倍モルの水酸化アルカリ金属をマーセル化剤として使用して、反応温度0〜70℃、反応時間15分〜8時間程度で、マーセル化処理を行い、その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10倍モル添加し、反応温度30〜90℃で30分〜10時間程度反応することによって得ることができる。
【0275】
上記セルロース原料にカルボキシメチル基を導入して得られた変性セルロースにおけるグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は0.02〜0.5であることが好ましい。
【0276】
上記のようにして得られたアニオン変性セルロースは、水性溶媒中で分散液とすることができ、さらに該分散液を解繊することができる。解繊の方法は特に限定されないが、機械的処理によって行う場合、使用される装置は、高速せん断型、衝突型、ビーズミル型、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式のいずれのタイプのものも使用することができる。これらの複数を組み合わせて使用することもできる。
【0277】
前記セルロースナノファイバー(R)の市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のレオクリスタ(登録商標)などが挙げられる。
【0278】
光輝性顔料分散体(Y)におけるセルロースナノファイバー(R)の含有量は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、光輝性顔料分散体(Y)中の顔料以外の合計固形分100質量部に基づいて、固形分で5〜70質量部、好ましくは7〜50質量部、さらに好ましくは10〜40質量部の範囲内であることが好適である。
【0279】
湿潤剤(S)
光輝性顔料分散体(Y)は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、さらに湿潤剤(S)を含有することが好ましい。
【0280】
湿潤剤(S)としては、被塗物への光輝性顔料分散体(Y)の塗装時に、該光輝性顔料分散体を被塗物上に一様に配向するのを支援する効果のある材料であれば特に制限なく使用することができる。
【0281】
このような作用をもつ材料は、湿潤剤以外にも、分散剤、ヌレ剤、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤、界面活性剤、スーパーウェッターなどと称されることがあり、本発明の光輝性顔料分散体における湿潤剤(S)としては、分散剤、ヌレ剤、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤、界面活性剤、スーパーウェッターも含まれる。
【0282】
光輝性顔料分散体(Y)における湿潤剤(S)の配合量は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、光輝性顔料分散体(Y)中の顔料以外の合計固形分100質量部に基づいて、固形分で4〜70質量部、5〜60質量部、さらに好ましくは8〜50質量部であることが好ましい。
【0283】
湿潤剤(S)としては、例えばシリコーン系、アクリル系、ビニル系、フッ素系、アセチレンジオール系などの湿潤剤が挙げられる。上記湿潤剤はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0284】
湿潤剤(S)としては、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、アセチレンジオール系の湿潤剤及び/またはエチレンオキサイド鎖をもつ湿潤剤を使用することが好ましい。
【0285】
特に、湿潤剤(S)としては、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物である湿潤剤を使用することが好ましい。
【0286】
湿潤剤(S)の市販品は例えば、ビックケミー社製のBYKシリーズ、エヴォニック社製のTegoシリーズ、共栄社化学社製のグラノールシリーズ、ポリフローシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズ、エボニックインダストリーズ社製のサーフィノールシリーズなどが挙げられる。
【0287】
シリコーン系の湿潤剤としては、ポリジメチルシロキサン及びこれを変性した変性シリコーンが使用される。変性シリコーンとしては、ポリエーテル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーンなどが挙げられる。
【0288】
光輝性顔料分散体(Y)には、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、さらに必要に応じて、樹脂エマルション(Q)以外の樹脂を適宜配合しても良い。樹脂エマルション(Q)以外の樹脂としては、水分散性でない、例えば水溶性の樹脂であればよく、具体的には例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0289】
光輝性顔料分散体(Y)は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、さらにセルロースナノファイバー(R)以外の粘性調整剤を含有していても良い。セルロースナノファイバー(R)以外の粘性調整剤としては、既知のものを使用できるが、例えば、シリカ系微粉末、鉱物系粘性調整剤、硫酸バリウム微粒化粉末、ポリアミド系粘性調整剤、有機樹脂微粒子粘性調整剤、ジウレア系粘性調整剤、ウレタン会合型粘性調整剤、アクリル膨潤型であるポリアクリル酸系粘性調整剤、セルロースナノファイバー(R)以外のセルロース系粘性調整剤等を挙げることができる。なかでも金属調光沢に優れた塗膜を得る観点から特に、鉱物系粘性調整剤、ポリアクリル酸系粘性調整剤を使用することが好ましい。
【0290】
鉱物系粘性調整剤としては、その結晶構造が2:1型構造を有する膨潤性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、天然又は合成のモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、バイデライト、ノントロナイト、ベントナイト、ラポナイト等のスメクタイト族粘土鉱物や、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na塩型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母族粘土鉱物及びバーミキュライト、又はこれらの置換体や誘導体、或いはこれらの混合物が挙げられる。
【0291】
ポリアクリル酸系粘性調整剤としては、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0292】
該ポリアクリル酸系粘性調整剤の有効成分酸価としては、30〜300mgKOH/g、好ましくは80〜280mgKOH/gの範囲内であることができる。ポリアクリル酸系粘性調整剤の市販品として、例えば、ダウケミカル社製の「プライマルASE−60」、「プライマルTT615」、「プライマルRM5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0293】
光輝性顔料分散体(Y)において、上記セルロースナノファイバー(R)とアクリル酸系粘性調整剤を併用すると得られる塗膜が耐水性に優れる点で好ましい。この場合、セルロースナノファイバー(R)とアクリル酸系粘性調整剤の配合比は、10/90〜90/10、好ましくは20/80〜80/20、さらに好ましくは40/60〜60/40であることが好適である。
【0294】
セルロースナノファイバー(R)以外のセルロース系粘性調整剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を挙げることができる。
【0295】
これらの粘性調整剤はそれぞれ単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0296】
光輝性顔料分散体(Y)には、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、さらに必要に応じて、架橋剤、有機溶剤、着色顔料、体質顔料、顔料分散剤、沈降防止剤、ならびに紫外線吸収剤等を適宜配合しても良い。
【0297】
上記架橋剤としては、メラミン樹脂、メラミン樹脂誘導体、尿素樹脂、(メタ)アクリルアミド、ポリアジリジン、ポリカルボジイミド、ブロック化されていてもされていなくてもよいポリイソシアネート化合物などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0298】
なかでも特に、得られる塗膜の耐水性及び付着性の観点からブロックポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0299】
ブロックポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基にブロック剤を付加させたものである。付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は、常温においては安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約80〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。このような要件を満たすブロック剤としては、例えば、フェノール系、ラクタム系、アルコール系、エーテル系、オキシム系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、イミド系、アミン系、イミダゾール系、ピラゾール系等のブロック剤が挙げられる。なかでも得られる塗膜の耐水性、付着性等の観点から、架橋剤としては、ピラゾール系ブロックポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
【0300】
前記着色顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、オーカー、ジスアゾ、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、モノアゾレッド、無置換キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、その他;ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレット、などが挙げられる。
【0301】
前記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0302】
光輝性顔料分散体(Y)の塗装
光輝性顔料分散体(Y)は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製される。光輝性顔料分散体(Y)は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、塗装時の固形分含有率を、光輝性顔料分散体(Y)に基づいて、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、さらに好ましくは1〜6質量%に調整しておく。光輝性顔料分散体(Y)の塗装時の固形分含有率が0.1質量%より低いと、均一膜厚での塗装が困難となり、10質量%より高いと、形成された塗膜の金属調光沢が劣る。
【0303】
光輝性顔料分散体(Y)の粘度は、金属調光沢に優れる複層塗膜を得る観点から、温度20℃においてB型粘度計で測定する60rpmで1分後の粘度(本明細書では「B60値」ということがある)が好ましくは60〜1500mPa・s、より好ましくは60〜1000mPa・s、さらに好ましくは60〜500mPa・sである。このとき、使用する粘度計は、LVDV−I(商品名、BROOKFIELD社製、B型粘度計)である。
【0304】
光輝性顔料分散体(Y)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。本発明の複層塗膜形成方法においては、特に回転霧化式の静電塗装が好ましい。
【0305】
光輝性顔料分散体(Y)を塗装して得られた光輝性塗膜は乾燥していることが好ましい。
【0306】
上記光輝性塗膜を乾燥させる方法に特に制限はないが、例えば、常温で15〜30分間放置する方法、50〜100℃の温度で30秒〜10分間プレヒートを行なう方法等が挙げられる。
【0307】
光輝性顔料分散体(Y)を塗装して得られる光輝性塗膜は、その膜厚は硬化膜厚として0.1〜5.0μm、であり、好ましくは0.2〜3.0μm、さらに好ましくは0.3〜2.5μmである。光輝性塗膜の硬化膜厚が0.1μm未満であると、得られる複層塗膜の鏡面光沢度が低い。光輝性塗膜の硬化膜厚が5.0μmを超えると、得られる複層塗膜の鏡面光沢度が低く、また、塗膜外観が損なわれる。
【0308】
工程(3)
工程(3)は、工程(2)で形成される光輝性塗膜上に、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程である。
【0309】
水酸基含有樹脂
水酸基含有樹脂としては、水酸基を含有するものであれば従来公知の樹脂が制限なく使用できる。該水酸基含有樹脂としては例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、好ましいものとして、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂を挙げることができ、特に好ましいものとして水酸基含有アクリル樹脂を挙げることができる。
【0310】
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は80〜200mgKOH/gの範囲内であるのが好ましく、100〜180mgKOH/gの範囲内であるのがさらに好ましい。水酸基価が80mgKOH/g未満であると、架橋密度が低いために耐擦り傷性が不十分な場合がある。200mgKOH/gを越えると塗膜の耐水性が低下する場合がある。
【0311】
水酸基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は2500〜40000の範囲内であるのが好ましく、5000〜30000の範囲内であるのがさらに好ましい。重量平均分子量が2500未満であると耐酸性等の塗膜性能が低下する場合があり、40000を越えると塗膜の平滑性が低下するため、仕上り性が低下する場合がある。
【0312】
なお、本明細書において、平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0313】
水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は−40℃〜20℃、特に−30℃〜10℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度が−40℃未満であると塗膜硬度が不十分な場合があり、20℃を越えると塗膜の塗面平滑性が低下する場合がある。
【0314】
ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0315】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の説明欄に記載した脂肪族ポリイソシアネートを使用することができる。
【0316】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の説明欄に記載した脂環族ポリイソシアネートを使用することができる。
【0317】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の説明欄に記載した芳香脂肪族ポリイソシアネートを使用することができる。
【0318】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の説明欄に記載した芳香族ポリイソシアネートを使用することができる。
【0319】
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、ポリウレタン樹脂(A)の説明欄に記載したポリイソシアネートの誘導体を使用することができる。
【0320】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
【0321】
脂肪族ポリイソシアネートのなかでもヘキサメチレンジイソシアネート及びその誘導体、脂環族ポリイソシアネートのなかでも4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)及びその誘導体を好適に使用することができる。その中でも特に、付着性、相溶性等の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体が最適である。
【0322】
前記ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る、例えば、水酸基、アミノ基などの活性水素基を有する化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等が挙げられる。
【0323】
ポリイソシアネート化合物として、上記ポリイソシアネート及びその誘導体中のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することもできる。
【0324】
上記ブロック剤としては、ポリウレタン樹脂(A)の説明欄に記載したブロック剤を使用することができる。
【0325】
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
【0326】
ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0327】
ポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。本発明の2液型クリヤコート塗料において、塗膜の硬化性及び耐擦り傷性等の観点から、水酸基含有樹脂の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は好ましくは0.5〜2.0、さらに好ましくは0.8〜1.5の範囲内である。
【0328】
クリヤー塗料(Z)には、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0329】
上記クリヤー塗料(Z)には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料を適宜配合することができる。着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。その添加量は、適宜決定されて良いが、該クリヤー塗料(Z)中のビヒクル形成樹脂組成物100質量部に対して、30重量部以下、好ましくは0.01〜10重量部である。
【0330】
クリヤー塗料(Z)の形態は特に制限されるものではないが、通常、有機溶剤型の塗料組成物として使用される。この場合に使用する有機溶剤としては、各種の塗料用有機溶剤、例えば、芳香族又は脂肪族炭化水素系溶剤;エステル系溶剤;ケトン系溶剤;エーテル系溶剤等が使用できる。使用する有機溶剤は、水酸基含有樹脂等の調製時に用いたものをそのまま用いても良いし、更に適宜加えても良い。
【0331】
クリヤー塗料(Z)は、水酸基含有樹脂、ポリイソシアネート化合物及び必要に応じて使用される硬化触媒、顔料、各種樹脂、紫外線吸収剤、光安定剤、有機溶剤等を、公知の方法により混合することによって、調製することができる。
【0332】
クリヤー塗料(Z)は、貯蔵安定性から、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物とが分離した2液型塗料であり、使用直前に両者を混合して調整される。
【0333】
クリヤー塗料(Z)の固形分濃度は、30〜70質量%程度であるのが好ましく、40〜60質量%程度の範囲内であるのがより好ましい。
【0334】
前記光輝性塗膜上に、前述のクリヤー塗料(Z)の塗装が行なわれる。クリヤー塗料(Z)の塗装は、特に限定されずベースコート塗料と同様の方法で行うことができ、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などの塗装方法により行なうことができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加してもよい。これらのうち静電印加による回転霧化塗装が好ましい。クリヤー塗料(Z)の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10〜50μm程度となる量とするのが好ましい。
【0335】
クリヤー塗料(Z)の塗装にあたっては、クリヤー塗料(Z)の粘度を、塗装方法に適した粘度範囲、例えば、静電印加による回転霧化塗装においては、20℃でフォードカップNo.4粘度計による測定で、15〜60秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0336】
クリヤー塗料(Z)を塗装し、クリヤー塗膜を形成させた後、揮発成分の揮散を促進するために、例えば、50〜80℃程度の温度で3〜10分間程度のプレヒートを行なうこともできる。
【0337】
工程(4)
工程(4)は、工程(1)〜(3)で形成された未硬化のベース塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を同時に硬化させる工程である。なお、光輝性顔料分散体(Y)が上記架橋剤を含まない場合でも、上層及び/又は下層からの樹脂成分の移行によって光輝性塗膜が硬化する場合がある。
【0338】
加熱は公知の手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を適用できる。
【0339】
加熱温度は好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜140℃の範囲内にある。
【0340】
加熱時間は、特に制限されるものではないが、好ましくは10〜40分間、より好ましくは20〜30分間の範囲内である。
【0341】
上記の工程(1)〜(4)を順次行うことにより複層塗膜が形成される。
【0342】
本発明においては、各工程の間に、塗膜をプレヒートする工程、塗膜をセッティング(一定時間放置して溶媒を揮発)する工程、塗膜をサンディング(研磨)する工程等を適宜行うことができる。
【0343】
以下に、本発明において得られた複層塗膜の60度鏡面光沢度及びHG値の好ましい範囲について規定するが、前記ベース塗膜の硬化膜厚が6〜45μmかつ光輝性塗膜の硬化膜厚が0.1〜5.0μmすべての場合に上記範囲内であることを意味するものではなく、それぞれの塗膜が上記範囲内のいずれかの数値にあるときの60度鏡面光沢度及びHG値について規定するものとする。
【0344】
本発明において得られた複層塗膜は、60度鏡面光沢度が90以上であることが好適である。
【0345】
本発明において得られた複層塗膜が上記数値以上であることは、優れた金属光沢を持つことを意味する。
【0346】
本発明において得られた複層塗膜の60度鏡面光沢度(60°グロス)は、好ましくは90以上、より好ましくは94〜140、さらに好ましくは97〜130の範囲内である。
【0347】
鏡面光沢度とは、物体表面からの鏡面反射と基準面(屈折率1.567のガラス)からの鏡面反射光との比を意味し、JIS−Z8741に定義された数値である。具体的には、測定試料面に規定された入射角で規定の開き角の光束を入射し、鏡面反射方向に反射する規定の開き角の光束を受光器で測るもので、いわゆる光沢計を使用して測定される数値である。本明細書においては、光沢計(micro−TRI−gloss、BYK−Gardner社製)を用いて測定した60度鏡面光沢度(60°グロス)として定義するものとする。
【0348】
粒子感は、Hi−light Graininess値(以下、「HG値」と略記する)によって表される。HG値とは、微視的に観察した場合における質感であるミクロ光輝感の尺度の一つで、ハイライト(塗膜を入射光に対して正反射近傍から観察)側の粒子感を表わすパラメータである。塗膜を入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮像し、得られたデジタル画像データ、すなわち2次元の輝度分布データを2次元フーリエ変換処理し、得られたパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出し、算出した計測パラメータを、さらに0から100の数値を取り且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換して得られるものである。具体的には、ミクロ光輝感測定装置を使用して測定することができる。
【0349】
HGは次式によって求められる。
IPSL≧0.32の場合、HG=500・IPSL−142.5
0.32>IPSL≧0.15の場合、HG=102.9・IPSL−15.4
0.15>IPSLの場合、HG=0
ここで、IPSL(Integration of Power Spectrum of Low Frequency)は次式によって求められる。
【0350】
ここで、P (ν ,θ)は、取得した画像データから生成した2 次元の輝度分布データを2 次元フーリエ変換処理して得られるパワースペクトル、νは空間周波数、θは角度である。0〜Nは粒子感に対応する空間周波数領域である。
測定方法の詳細については、“塗料の研究”(関西ペイント技報)、No.138、2002年8月:p.8−p.24及び“塗料の研究”(関西ペイント技報)、No.132、1999年4月:p.22−p.35に記載している。粒子感のHG値が低いほど、塗膜の表面に粒子感が少なくなる。
【0351】
一実施形態において、鱗片状光輝性顔料(P)として蒸着金属フレーク顔料及び/又はアルミニウムフレーク顔料を含有する光輝性顔料分散体(Y)を使用して得られた複層塗膜のHG値は、金属調塗膜の緻密性の点で、好ましくは10〜45、より好ましくは10〜42、さらに好ましくは10〜40の範囲内である。
【0352】
別の実施形態において、鱗片状光輝性顔料(P)として光干渉性顔料を含有する光輝性顔料分散体(Y)を使用して得られた複層塗膜のHG値は、金属調塗膜の緻密性の点で、好ましくは10〜65、より好ましくは10〜63、さらに好ましくは10〜60の範囲内である。
【0353】
本発明は以下の構成を採用することもできる。
項1.下記の工程(1)〜(4):
(1)被塗物上に、固形分含有率が30〜62質量%のベース塗料(X)を塗装して硬化膜厚が6〜45μmのベース塗膜を形成する工程、
(2)工程(1)で形成されるベース塗膜上に、固形分含有率が0.1〜10質量%の光輝性顔料分散体(Y)を塗装して硬化膜厚として0.1〜5.0μmである光輝性塗膜を形成する工程、
(3)工程(2)で形成される光輝性塗膜上に、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び
(4)工程(1)〜(3)で形成された未硬化のベース塗膜、未硬化の光輝性塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を加熱することによって、上記塗膜を同時に硬化させる工程、を含む複層塗膜の形成方法であって、
ベース塗料(X)が、ポリウレタン樹脂(A)、炭素数6〜12のアルコール(B)並びにHLBが7〜9の有機溶剤(C)を含有し、
光輝性顔料分散体(Y)が、水、鱗片状光輝性顔料(P)、樹脂エマルション(Q)及びセルロースナノファイバー(R)を含有することを特徴とする複層塗膜形成方法。
項2.前記アルコール(B)と前記有機溶剤(C)の含有量が、(B)/(C)の質量比で0.7〜3.0である上記項1に記載の複層塗膜形成方法。
項3.前記アルコール(B)が直鎖又は分岐鎖の脂肪族アルコールである項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
項4.ベース塗料(X)中の樹脂100質量部(固形分)を基準として、前記アルコール(B)を好ましくは5〜45質量部、より好ましくは10〜40質量部、さらに好ましくは15〜30質量部含有する項1〜3のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
項5.前記有機溶剤(C)が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルから成る群から選ばれる少なくとも一種である上記項1〜4のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
項6.ベース塗料(X)中の樹脂100質量部(固形分)を基準として、前記有機溶剤(C)を好ましくは3〜22質量部、より好ましくは5〜20質量部、さらに好ましくは8〜18質量部含有する項1〜5のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
項7.ベース塗料(X)が、さらに数平均分子量が1500〜10000のポリエステル樹脂(D)を含有する上記項1〜6のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
項8.ベース塗料(X)が、さらにノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E)を含有する上記項1〜7のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
項9.ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E)がブロックポリイソシアネート化合物(E11)又はブロックポリイソシアネート化合物(E12)を含む項8に記載の複層塗膜形成方法。
項10.ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E)がブロックポリイソシアネート化合物(E21)又はブロックポリイソシアネート化合物(E22)を含む項8に記載の複層塗膜形成方法。
項11.ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E)を、ベース塗料(X)中の樹脂100質量部(固形分)を基準として、好ましくは2〜30質量部、より好ましくは4〜20質量部、さらに好ましくは7〜15質量部含有する項8〜10のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
項12.鱗片状光輝性顔料(P)が、蒸着金属フレーク顔料、アルミニウムフレーク顔料、及び光干渉性顔料のうちの1種又は2種を含む項1〜11のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
項13.樹脂エマルション(Q)がアクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、又はアクリルウレタン樹脂エマルションを含む項1〜12のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
項14.光輝性顔料分散体(Y)がさらに湿潤剤(S)を含有する項1〜13のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
項15.湿潤剤(S)がアセチレンジオール系の湿潤剤を含む項14に記載の複層塗膜形成方法。
項16.前記アセチレンジオール系の湿潤剤がアセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物である項15に記載の複層塗膜形成方法。
【実施例】
【0354】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0355】
ポリウレタン樹脂(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に30.1部の水添MDIとメチルエチルケトキシム1.5部を仕込み80℃に加温し1時間攪拌して、イソシアネート反応物を得た。別容器に「UM90(1/1)」(商品名、ジオール成分が1,4−シクロヘキサンジメタノール及び1,6−ヘキサンジオールであり、1,4−シクロヘキサンジメタノールの質量/1,6−ヘキサンジオールの質量=1/1であるポリカーボネートジオール、宇部興産社製)64.1部、ジメチロールプロピオン酸4.2部を仕込み、内容物を撹拌しながら80℃まで加熱した。80℃に達した後、前記イソシアネート反応物を1時間かけて滴下した。その後、N−メチルピロリドン29.9部を添加した後、更に80℃で熟成し、ウレタン化反応を行なった。イソシアネート価が3.0以下になったら加熱をやめ、70℃でトリエチルアミン2.75部を加えた。次いで50℃を維持した状態で脱イオン水200部を1時間かけて滴下し、水分散を行うことによりウレタン樹脂エマルション(A−1)を得た。得られたウレタン樹脂エマルション(A−1)は、固形分30%、酸価19.9mgKOH/g、重量平均分子量11300で、動的光散乱法により測定した粒子径は77nmであった。
【0356】
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを30部仕込み、窒素ガス通気下で145℃に昇温した後、窒素ガスの通気を止め、1段目(疎水鎖成分)として、n−ブチルアクリレート23.8部、n−ブチルメタクリレート14部、スチレン7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート24.5部、及びグリシジルメタクリレート0.7部、ならびに開始剤ジ−t−ブチルパーオキサイド3.0部の混合物を4時間かけて滴下した。その後、30分間、同温度で保持した。
【0357】
更に、2段目(親水鎖成分)として、n−ブチルアクリレート9部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12部、及びアクリル酸9部、ならびにジ−t−ブチルパーオキサイド1.0部の混合物を30分間かけて滴下した後、同温度で保持し、グラフト率が90%以上となった時点を終点として室温まで冷却した。
グラフト率(%)=(1−(2段目反応完了後のエポキシ価/1段目反応完了後のエポキシ価))×100
その後、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート51部を添加して、固形分55%のグラフトアクリル樹脂の溶液を得た。得られたグラフトアクリル樹脂の重量平均分子量は15000であった。
【0358】
温度計、サーモスタット、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、ウレタン樹脂成分の原材料である、「ETERNACOLL UH−100」(商品名、宇部興産製、1,6−ヘキサンジオールベースポリカーボネートジオール、分子量約1000)17.2部、及びジメチロールブタン酸2.5部を、アクリル樹脂成分の重合性不飽和モノマーである、n−ブチルアクリレート24部及びエチレングリコールジメタクリレート1.5部を、ならびに不飽和基の重合禁止剤として、ブチルヒドロキシトルエン0.008部を仕込み、攪拌しながら100℃まで昇温させた後、さらにウレタン樹脂成分の原材料である、水添MDI(4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)10.3部を30分かけて滴下した。
【0359】
その後100℃を保持してNCO価が14mg/g以下となるまで反応させた。
得られたウレタン樹脂成分の重量平均分子量は20000であった。
【0360】
この反応生成物に、アクリル樹脂成分の重合性不飽和モノマーである、2−ヒドロキシエチルアクリレート4.5部をさらに添加してNCO価が1mg/g以下となるまで反応させて室温まで冷却することにより、酸基及び末端不飽和基を有するポリウレタン樹脂のアクリルモノマー希釈溶液を得た。
【0361】
その後攪拌を続け、前記で得たグラフトアクリル樹脂溶液72.7部及びジメチルエタノールアミン2.0部を添加して中和を行い、脱イオン水112.9部を適時添加しながら水分散(転相乳化)を行った。
【0362】
水分散(乳化)完了後、攪拌しながら70℃まで昇温させ、「VA−057」(商品名、和光純薬工業社製、重合開始剤、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド])0.06部を脱イオン水2.4部に溶解させた重合開始剤溶液を30分間かけて滴下し、2時間撹拌した。これによりアクリル樹脂成分(重合性不飽和基)の重合反応の重合反応を行う。この間、重合熱により多少発熱するので必要に応じて適宜温度をコントロールする。
【0363】
その後、さらに「VA−057」0.03部を脱イオン水1.2部に溶解させた重合開始剤溶液を追加触媒として添加して、該温度を保持しながら2時間撹拌してさらに反応を行う。その後室温まで冷却することにより、アクリルウレタン複合樹脂粒子(A−2)の水分散体を得た。
【0364】
得られたアクリルウレタン複合樹脂粒子(A−2)の質量固形分濃度は40%、平均粒子径は180nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定)であった。
【0365】
ポリエステル樹脂(D)の製造
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌機、加熱装置及び精留塔を具備した反応容器に、ヘキサヒドロ無水フタル酸92.9部、アジピン酸52.6部、1,6−ヘキサンジオール83.1部、ネオペンチルグリコール10.5部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール32部、無水マレイン酸1.0部及びジブチル錫オキサイド0.12部を添加し、反応容器を、攪拌しながら160℃まで昇温した。次いで、内容物を160℃から240℃まで4時間かけて徐々に昇温し、精留塔を通して生成した縮合水を留去した。
【0366】
240℃で90分間反応を続けた後、精留塔を水分離器と置換し、反応容器にトルエン約15部を加え、水とトルエンとを共沸させて縮合水を除去した。トルエン添加の1時間後から、内容物の酸価の測定を開始し、内容物の酸価が3.5未満になったことを確認して加熱を停止した。次いで、反応容器からトルエンを減圧除去し、反応容器を冷却し、次いで、反応容器に2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール58部を加えた。
反応容器を130℃まで冷却した後、反応容器に、スチレン8.7部、アクリル酸12.2部、アクリル酸−2−エチルヘキシル22.7部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2.2部の混合物を、2時間かけて滴下した。
【0367】
130℃の温度を30分間保持した後、反応容器に、追加触媒としてtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.44部を加え、1時間熟成させた。次いで、反応容器を85℃まで冷却し、内容物をジメチルエタノールアミン14.6部で中和し、内容物に脱イオン水468.7部を加え、内容物を水分散させ、固形分35%のアクリル変性水性ポリエステル樹脂の水分散体(D−1)を得た。得られたアクリル変性水性ポリエステル樹脂は、35mgKOH/gの酸価と、11mgKOH/gの水酸基価と、6000の数平均分子量を有していた。
【0368】
製造例4
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、1,6−ヘキサンジオール82.6部、ネオペンチルグリコール12.5部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール38.0部、ヘキサヒドロ無水フタル酸38.2部、アジピン酸99.3部及びジブチル錫オキサイド0.12部を添加し、内容物を、攪拌しながら160℃まで昇温させた。次いで、内容物を160℃から240℃まで4時間かけて徐々に昇温した後、内容物を240℃で4時間縮合反応させ、縮合反応生成物を得た。
【0369】
次いで、上記縮合反応生成物に、無水トリメリット酸13.4部を添加し、170℃で30分間反応させて、縮合反応生成物にカルボキシル基を付加させた。次いで、縮合反応生成物を2−エチル−1−ヘキサノールで希釈し、固形分濃度70%のポリエステル樹脂の水分散体(1)を得た。得られたポリエステル樹脂は、35mgKOH/gの酸価と、6mgKOH/gの水酸基価と、1300の数平均分子量とを有していた。
【0370】
ノニオン性親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(E)の製造
製造例5
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)1610部、「ユニオックスM−550」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量約550)275部及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.9部を添加し、内容物を混合し、そして反応容器を窒素気流下で130℃で3時間加熱した。
【0371】
次いで、反応容器に、酢酸エチル550部及びマロン酸ジイソプロピル1150部を添加した。窒素気流下で攪拌しながら、反応容器にナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、内容物を65℃で8時間攪拌し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液は、約0.1モル/kgのイソシアネート量を有していた。
【0372】
次いで、反応容器に4−メチル−2−ペンタノール3110部を加え、反応容器の温度を80〜85℃に保持しながら、反応容器から減圧下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロックポリイソシアネート化合物(E−1)の溶液4920部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが585部含まれていた。ブロックポリイソシアネート化合物(E−1)の溶液の固形分濃度は約60%であった。
【0373】
アクリルエマルションの製造
製造例6
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、及び「アデカリアソープSR−1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
【0374】
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5% 2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%のアクリル樹脂水分散体(1)を得た。得られたアクリル樹脂水分散体は、酸価33mgKOH/g、水酸基価25mgKOH/gであった。
【0375】
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR−1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
【0376】
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR−1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メタクリル酸5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
【0377】
水溶性アクリル樹脂の製造
製造例7
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート32部、n−ブチルアクリレート27.7部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート10部、ヒドロキシプロピルアクリレート3部、アクリル酸6.3部、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート1部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の水溶性アクリル樹脂(1)溶液を得た。得られた水溶性アクリル樹脂(1)は酸価が51mgKOH/g、水酸基価が52mgKOH/gであった。
【0378】
ベース塗料(X)の製造
製造例8
ポリウレタン樹脂(A−1)66.7部(固形分20部)、n−オクタノール18部、n−ブタノール1部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル11部、ポリエステル樹脂(D−1)57.1部(固形分20部)、ポリエステル樹脂(1)14.3部(固形分10部)、ブロックポリイソシアネート(E−1)16.7部(固形分10部)、アクリルエマルション(1)66.7部(固形分20部)、「サイメル325」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分80%)25部(固形分20部)、「JR−903」(商品名、ルチル型酸化チタン顔料、テイカ社製)120部、「Raven5000」(商品名、コロンビアンカーボン社製、カーボンブラック顔料)1.5部を混合容器に入れ、内容物を均一に混合し、「プライマル ASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、増粘剤、固形分28%)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び蒸留水により、pH、固形分濃度及び粘度を調整して、pH8.0、50%の固形分濃度、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒のべース塗料(X−1)を得た。
【0379】
製造例9〜25
表1に記載の配合とする以外は全て製造例8と同様にしてベース塗料(X−2)〜(X−18)を得た。
【0380】
表1中の数値は、溶剤については液体の量、その他については固形分量を記載している。
【0381】
なお、表1における各成分は以下の通りである。
「デュラネートSBN−70D」商品名、旭化成ケミカルズ社製、ピラゾールブロックポリイソシアネート化合物、固形分70%。
【0382】
【表1】
【0383】
【表2】
【0384】
光輝性顔料分散体(Y)の製造
製造例26
攪拌混合容器に、蒸留水56.16部、「サーフィノール104A」(商品名、アセチレンジオール系湿潤剤、エアープロダクツ社製、固形分50%)1.34部(固形分0.67部)、「Hydroshine WS−3001」(商品名、水性用蒸着アルミニウムフレーク顔料、Eckart社製、固形分:10%、内部溶剤:イソプロパノール、平均粒子径D50:13μm、厚さ:0.05μm、表面がシリカ処理されている)2.5部(固形分0.25部)、「レオクリスタ」(商品名、第一工業製薬社製、セルロースナノファイバー、固形分2%)34部(固形分0.68部)、製造例6で製造したアクリルエマルション(1)6部(固形分1.8部)を添加して攪拌混合し、光輝性顔料分散体(Y−1)を調整した。
【0385】
製造例27〜31
表2に記載の配合とする以外は全て製造例26と同様にして光輝性顔料分散体(Y−2)〜(Y−6)を得た。
【0386】
表2中の数値は、蒸留水、溶剤については液体の量、その他については固形分量を記載している。
【0387】
なお、表2における各成分は以下の通りである。
「アルペースト EMR−B6360」(商品名、東洋アルミ社製、固形分48%、ノンリーフィングアルミニウムフレーク、平均粒子径D50:10.3μm、厚さ:0.19μm、表面がシリカ処理されている)、
「Xirallic T61−10 Micro Silver」(商品名、酸化チタン被覆アルミナフレーク顔料、メルク社製、一次平均粒子径:約12μm、平均厚さ:約0.3μm)、
「プライマル ASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、増粘剤、固形分28%)。
【0388】
【表3】
【0389】
被塗物の作製
被塗物1
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400mm×300mm×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロンGT−10」(商品名:関西ペイント社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に架橋剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させ、電着塗膜を形成せしめ、被塗物1とした。
【0390】
被塗物2
被塗物1上に中塗り塗料「WP−522H N−5.0」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系水性中塗り塗料)を硬化塗膜に基づいて膜厚が25μmになるように静電塗装し、室温にて6分間放置したものを被塗物2とした。
【0391】
試験板の作成
実施例1
被塗物1上に、ベース塗料(X−1)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚30μmになるように静電塗装し、3分間放置し、ベース塗膜を形成した。さらに該ベース塗膜上に、前述のように作成した光輝性顔料分散体(Y−1)を、ABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で、乾燥塗膜として、0.4μmとなるように塗装した。3分間放置し、その後、80℃にて3分間プレヒートし、光輝性塗膜を形成した。ついで、この光輝性塗膜上に、クリヤー塗料(Z−1)「KINO6510」(商品名、関西ペイント株式会社製、水酸基/イソシアネート基硬化型アクリル樹脂・ウレタン樹脂系2液型有機溶剤型塗料)をABB社製ロボットベルを用いて、ブース温度23℃、湿度68%の条件で乾燥塗膜として、35μmとなるように塗装しクリヤー塗膜を形成した。塗装後、室温にて7分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内を使用して、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥せしめて試験板とした。
【0392】
ここで、表3に記載した乾燥塗膜の膜厚は、下記式から算出した。以下の実施例についても同様である。
x=sc/sg/S*10000
x:膜厚[μm]
sc:塗着固形分[g]
sg:塗膜比重[g/cm
3]
S:塗着固形分の評価面積[cm
2]
【0393】
実施例2〜19、比較例1〜11
表3に記載の被塗物、塗料及び膜厚とする以外は全て実施例1と同様にして試験板を得た。
【0394】
【表4】
【0395】
【表5】
【0396】
【表6】
【0397】
塗膜評価
上記のようにして得られた各試験板について塗膜を評価し、表3にその結果を示した。
【0398】
鏡面光沢度(60°グロス)
上記で得られた試験板について、光沢計(micro−TRI−gloss、BYK−Gardner社製)を用いて60°グロス値を測定した。
【0399】
HG値
HG値は、Hi−light Graininess値の略称である。HG値は、塗膜面を微視的に観察した場合におけるミクロ光輝感の尺度の一つであり、ハイライトにおける粒子感を表す指標である。HG値は、次のようにして、算出される。先ず、塗膜面を、光の入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮影し、得られたデジタル画像データ(2次元の輝度分布データ)を2次元フーリエ変換処理して、パワースペクトル画像を得る。次に、このパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出して得られた計測パラメータを、更に0〜100の数値を取り、且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換した値が、HG値である。HG値の式については既に記載したとおりである。HG値は、光輝性顔料の粒子感が全くないものを0とし、光輝性顔料の粒子感が最も大きいものを100とした値である。
【0400】
塗膜外観
塗膜外観は、以下の基準に従って目視評価した。
S:ツヤ感が良好、A;ツヤ感がやや劣る、B;ツヤ感が劣る。
【0401】
以上、本発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0402】
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0403】
上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
被塗物上に、固形分含有率が30〜62質量%のベース塗料(X)を塗装して硬化膜厚が6〜45μmのベース塗膜を形成する工程、ベース塗膜上に、固形分含有率が0.1〜10質量%の光輝性顔料分散体(Y)を塗装して硬化膜厚として0.1〜5.0μmである光輝性塗膜を形成する工程、光輝性塗膜上に、水酸基含有樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び加熱することによって、ベース塗膜、光輝性塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させる工程、を含む複層塗膜の形成方法であって、ベース塗料(X)が、ポリウレタン樹脂(A)、炭素数6〜12のアルコール(B)並びにHLBが7〜9の有機溶剤(C)を含有し、光輝性顔料分散体(Y)が、水、鱗片状光輝性顔料(P)、樹脂エマルション(Q)及びセルロースナノファイバー(R)を含有することを特徴とする複層塗膜形成方法。