(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予めごみ処理場のピットを複数のエリアに区分し、さらに、各エリアをマトリックス状に区切って番地を付与するとともに、ごみクレーンのバケットの複数の動作パターン毎に撹拌係数を定めておき、複数のエリアの各番地毎に、ごみクレーンのバケットの動作パターンに応じて撹拌係数を順次加算、減算して積算し、該積算された複数のエリアの各番地毎の撹拌係数に基づいて、ごみクレーンのバケットの動作パターンの選定及び焼却炉に接続されたホッパへの投入を行うようにするごみ処理場のピット内のごみの処理方法であって、前記焼却炉に接続されたホッパへの投入を、積算された撹拌係数の数値が他の番地と比較して相対的に高い番地のごみで、かつ、ごみクレーンのバケットで掴んだごみの重量と体積を測定して、その比重が所定値以下のごみから行うようにすることを特徴とするごみ処理場のピット内のごみの処理方法。
前記ごみクレーンのバケットの動作パターンが、ごみを任意の番地で掴んで、別の番地に移動してバケットを開く積替動作と、ごみを任意の番地で掴んで、別の番地まで移動しながらバケットを少しずつ開く撹拌動作と、ごみを任意の番地で掴んで、同一番地で上昇しながらバケットを開くほぐし動作とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のごみ処理場のピット内のごみの処理方法。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみ処理場では、ごみクレーンのバケットを使って、ごみを移動したり、ごみを高い位置まで掴み上げて落下させてごみの撹拌を行うようにしている。
【0003】
ところで、ごみの撹拌については、ごみを効率よく燃焼させるためにピット内でごみを撹拌し、ごみに含まれる水分量を調整した上で焼却炉に接続されたホッパへ投入するようにしているが、ごみの撹拌程度を示す指標となるものがないため、オペレータの経験に依存しているのが現状であった。
【0004】
なお、ごみの撹拌については、ガウス分布に基づいて計算することが提案されている(特許文献1参照。)が、ごみの山が崩れ落ちることを想定していないため、撹拌したごみがガウス分布より低くなって実運用からかけ離れたものとなるため、実用化がされていない。
【0005】
また、ピット内のごみの色や温度を測定し、これに基づいてピット内のごみを均一に撹拌することも提案されている(特許文献2及び3参照。)が、これらは、いずれも、ごみの表面の情報に基づくものであるため、正確性に欠けるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来のごみ処理場のピット内のごみの撹拌に関する問題点に鑑み、ごみの撹拌レベルを数値化して評価し、ごみクレーンのバケットの動作パターンの選定及び焼却炉に接続されたホッパへの投入に活用することができるようにしたごみ処理場のピット内のごみの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のごみ処理場のピット内のごみの処理方法は、予めごみ処理場のピットを複数のエリアに区分し、さらに、各エリアをマトリックス状に区切って番地を付与するとともに、ごみクレーンのバケットの複数の動作パターン毎に撹拌係数を定めておき、複数のエリアの各番地毎に、ごみクレーンのバケットの動作パターンに応じて撹拌係数を順次加算、減算して積算し、該積算された複数のエリアの各番地毎の撹拌係数に基づいて、ごみクレーンのバケットの動作パターンの選定及び焼却炉に接続されたホッパへの投入を行うようにするごみ処理場のピット内のごみの処理方法であって、前記焼却炉に接続されたホッパへの投入を、
積算された撹拌係数の
数値が
他の番地と比較して相対的に高い番地のごみ
で、かつ、ごみクレーンのバケットで掴んだごみの重量と体積を測定して、その比重が所定値以下のごみから行うようにすることを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記ごみ処理場のピットを、投入エリア、貯蔵エリア及び撹拌エリアに区分し、撹拌エリア内より貯蔵エリア若しくは投入エリアに
積算された撹拌係数の
数値が相対的に高い番地がある場合は、該当エリアのごみからホッパに投入することができる。
【0010】
また、前記ごみクレーンのバケットの動作パターンを、ごみを任意の番地で掴んで、別の番地に移動してバケットを開く積替動作と、ごみを任意の番地で掴んで、別の番地まで移動しながらバケットを少しずつ開く撹拌動作と、ごみを任意の番地で掴んで、同一番地で上昇しながらバケットを開くほぐし動作とからなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のごみ処理場のピット内のごみの処理方法によれば、予めごみ処理場のピットを複数のエリア(例えば、投入エリア、貯蔵エリア及び撹拌エリア)に区分し、さらに、各エリアをマトリックス状に区切って番地を付与するとともに、ごみクレーンのバケットの複数の動作パターン(例えば、ごみを任意の番地で掴んで、別の番地に移動してバケットを開く積替動作と、ごみを任意の番地で掴んで、別の番地まで移動しながらバケットを少しずつ開く撹拌動作と、ごみを任意の番地で掴んで、同一番地で上昇しながらバケットを開くほぐし動作との3つの動作パターン)毎に、撹拌係数を定めておき、複数のエリアの各番地毎に、ごみクレーンのバケットの動作パターンに応じて撹拌係数を順次加算、減算して積算し、該積算された複数のエリアの各番地毎の撹拌係数に基づいて、ごみクレーンのバケットの動作パターンの選定及び焼却炉に接続されたホッパへの投入を行うようにすることにより、ごみの撹拌レベルを数値化して評価し、ごみクレーンのバケットの動作パターンの選定及び焼却炉に接続されたホッパへの投入に活用することができ、オペレータの経験に依存することを排除することで、ごみ処理場のピット内のごみの処理方法を、一般化、均一化することができる。
【0013】
また、ごみクレーンのバケットで掴んだごみの重量と体積を測定して、その比重を計算することにより、当該ごみの撹拌レベルを判定し、該判定を加味して、ごみクレーンのバケットの動作パターンの選定及び焼却炉に接続されたホッパへの投入を行うようにすることにより、ごみに含まれる水分量の調整を、正確に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のごみ処理場のピット内のごみの処理方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
なお、本明細書における括弧付き数字は、図面の図中で用いている丸付き数字と対応している。
【0016】
本発明のごみ処理場のピット内のごみの処理方法は、予めごみ処理場のピットを複数のエリアに区分し、さらに、各エリアをマトリックス状に区切って番地を付与するとともに、ごみクレーンのバケットの複数の動作パターン毎に撹拌係数を定めておき、複数のエリアの各番地毎に、ごみクレーンのバケットの動作パターンに応じて撹拌係数を順次加算、減算して積算し、該積算された複数のエリアの各番地毎の撹拌係数に基づいて、ごみクレーンのバケットの動作パターンの選定及び焼却炉に接続されたホッパへの投入を行うようにする。
【0017】
図1に示す、本発明のごみ処理場のピット内のごみの処理方法を実施するごみ処理場の基本運用図のとおり、ごみ処理場のピットを複数のエリア(例えば、投入エリア、貯蔵エリア及び撹拌エリア)に区分し、さらに、各エリアをマトリックス状に区切って番地を付与するようにする。
ごみ処理場のピットの区分は、隔壁等の物理的な区分でも、情報上の仮想的な区分でもよく、各エリアのマトリックス状の区切りは、情報上の仮想的な区切りとする。
【0018】
ごみ処理場に到着したごみ収集車は、ごみ処理場の搬入ゲートからごみをピット内の投入エリアに投入する。
次に、投入エリアが満杯になることを避けるために、投入エリアのごみを貯蔵エリアに積替する。
積替することによりごみの撹拌効果も生まれるが、貯蔵エリア内でも後で説明する動作パターンでごみを撹拌する。貯蔵エリアのごみは撹拌される場合と撹拌されない場合があるので、より良く撹拌されたごみを燃焼炉に接続されたホッパに投入する際には、撹拌エリアでごみを撹拌するようにしている。
【0019】
次に、
図2に示す、本発明のごみ処理場のピット内のごみの処理方法におけるごみクレーンのバケットの動作パターンを定義する説明図のとおり、ごみクレーンのバケットの動作パターンは、3つのパターンからなる。
【0020】
・動作パターン(1)
ごみを任意の番地で掴んで、別の番地に移動してバケットを開く動きをする積替動作。
・動作パターン(2)
ごみを任意の番地で掴んで、別の番地まで移動しながらバケットを少しずつ開く動きをする撹拌動作。
・動作パターン(3)
ごみを任意の番地で掴んで、同一番地で上昇しながらバケットを開く動きをするほぐし動作。
この動作パターン毎に撹拌係数を定めておき、ごみの撹拌レベルを定量化する。その撹拌レベルを計算する方法を、
図3、
図4及び
図5に基づいて説明する。
【0021】
まず、新規ごみ処理場の場合、すべての番地の撹拌係数を「0」にセットしてから本運用を開始する。
【0022】
また、既に運用を開始しているごみ処理場の場合、
図1に示すような投入エリア、貯蔵エリア及び撹拌エリアに対して、例えば、投入エリアのすべての番地の撹拌係数を「0」にセットし、貯蔵エリアのすべての番地の撹拌係数を「5」にセットし、撹拌エリアのすべての番地の撹拌係数を「10」にセットする。
このように、撹拌係数を設定することにより、本システムの運用に近い状態で開始することができる。
ここで、上記撹拌係数のセットする値は、ごみ処理場毎に異なる場合がある。
【0023】
動作パターン(1)の撹拌係数の算出方法について、
図3に基づいて説明する。
動作パターン(1)は、ごみを掴んだ番地の撹拌係数をK1値で減算する。その番地の撹拌係数を減算して、撹拌係数がマイナス値になった場合は「0」にセットする。
次に、移動してごみを積替えた番地の撹拌係数をK2値で加算する。
さらに、移動してごみを積替えた番地の1番地周囲の撹拌係数をそれぞれK3値で加算する。これは、ごみが積替えた番地の周囲に散らばることがわかっているので、よりごみの撹拌レベルの精度を上げるためである。
ここで、K1、K2・・・の値は、任意の係数(値)として設定することができる(以下、同じ。)。
【0024】
動作パターン(2)の撹拌係数の算出方法について、
図4に基づいて説明する。
動作パターン(2)は、ごみを掴んだ番地の撹拌係数をK1値で減算する。その番地の撹拌係数を減算して、撹拌係数がマイナス値になった場合は「0」にセットする。
次に、移動してごみを積替えた番地の撹拌係数をK4値で加算する。
さらに、ごみを掴んだ番地と移動してごみを積替えた番地を結んだ直線状にかかる番地の撹拌係数をそれぞれK5値で加算する。これは、ごみを掴んだ番地から移動してごみを積替える番地まで移動しながらバケットを少しずつ開くことによって、ごみがその移動する番地の周囲に散らばることがわかっているので、よりごみの撹拌レベルの精度を上げるためである。
【0025】
動作パターン(3)の撹拌係数の算出方法について、
図5に基づいて説明する。
動作パターン(3)は、ごみを掴んだ番地の撹拌係数をK1値で減算する。その番地の撹拌係数を減算して、撹拌係数がマイナス値になった場合は「0」にセットする。
次に、同一番地で上昇しながらバケットを少しずつ開きながら上昇するので、同一番地の撹拌係数をK2値で加算する。
さらに、同一番地の1番地周囲の撹拌係数をそれぞれK3値で加算する。これは、ごみが積替えた番地の周囲に散らばることがわかっているので、よりごみの撹拌レベルの精度を上げるためである。
【0026】
本実施例に係るごみ処理場の基本的な運用について、
図1に基づいて説明したが、投入エリア、貯蔵エリア及び撹拌エリアは、ごみクレーンの動作パターン(1)〜(3)を適宜組み合わせて、自動運転モード及び手動運転モードで運用される。
ごみクレーンの運転は、クレーンの停止番地と同一であり、また、ごみの撹拌レベルを操作パターン毎に加算、減算する番地でもあるため、自動運転モードだけでなく、手動運転モードでも同様な運用をすることが可能である。
停止番地に従って行うため、自動運転モード、手動運転モードに関係なく実施することができる。
また、その運用は、同一エリア内で実施するほか、各エリアを跨って実施することができる。
【0027】
これにより、複数のエリアの各番地毎に、ごみクレーンのバケットの動作パターンに応じて撹拌係数を順次加算、減算して積算するようにし、積算された複数のエリアの各番地毎の撹拌係数に基づいて、ごみクレーンのバケットの動作パターンの選定及び焼却炉に接続されたホッパへの投入を行うようにする。具体的には、撹拌レベルの低い番地のごみの撹拌を積極的に行うとともに、撹拌レベルの高い番地のごみから焼却炉に接続されたホッパへの投入を行うようにすることができる。
これにより、ごみの撹拌レベルを数値化して評価し、ごみクレーンのバケットの動作パターンの選定及び焼却炉に接続されたホッパへの投入に活用することができ、オペレータの経験に依存することを排除することで、ごみ処理場のピット内のごみの処理方法を、一般化、均一化することができる。
【0028】
なお、ごみの焼却炉に接続されたホッパへの投入は、ホッパ側からの投入要求信号がON状態の時は、連続して投入し続ける。
また、投入要求信号がOFF状態の時は、投入しない。
【0029】
また、撹拌エリア内では、撹拌レベルの高い番地のごみからホッパに投入するが、同一撹拌レベルの場合はごみクレーンの番地の小さい番地のごみからホッパに投入する。
【0030】
また、撹拌エリア内より貯蔵エリア若しくは投入エリアに撹拌レベルの高い番地がある場合は、該当エリアのごみからホッパに投入する。
【0031】
また、ごみの撹拌レベルは経験等から決めた撹拌係数K1〜K5によって計算されているが、ごみ処理場毎に数値を変えることによりごみの撹拌レベルを向上させることができる。
【0032】
さらに、ごみクレーンのバケットで掴んだごみの重量と体積を測定して、その比重を計算することにより、当該ごみの撹拌レベルを判定し、該判定を加味して、ごみクレーンのバケットの動作パターンの選定及び焼却炉に接続されたホッパへの投入を行うようにすることができる。
これにより、ごみに含まれる水分量の調整を、正確に行うことができる。
ここで、ごみの重量は、バケットの総重量を測定する重量測定機構により、ごみの体積は、バケットに設けた光学センサ等からなるごみレベル検出機構により、それぞれ測定することができる。
そして、最終的には、バケットが掴んだごみの比重が一定以下の場合、ごみをホッパに投入する。
すなわち、比重が一定以下ということは、ごみに含まれる水分量が少なく、良く撹拌されている目安になり燃焼効率を良くすることができる。
一方、比重が一定以上ということは、ごみに含まれる水分量が多く、あまり撹拌されていないという目安になり燃焼効率を落とすことになるので可能な限りホッパへの投入は避ける。
なお、比重が一定以下のごみがない場合は、比重が一定以上でもホッパに投入する。
また、比重が一定以上のごみを掴んだ場合は、次に撹拌レベルの高い番地のごみをホッパに投入するようにする。
【0033】
以上、本発明のごみ処理場のピット内のごみの処理方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。