(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834090
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】誘電体組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタ
(51)【国際特許分類】
C04B 35/468 20060101AFI20210215BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20210215BHJP
H01B 3/12 20060101ALI20210215BHJP
H01B 5/14 20060101ALN20210215BHJP
【FI】
C04B35/468
H01G4/30 515
H01G4/30 201J
H01B3/12 303
!H01B5/14 Z
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-134611(P2016-134611)
(22)【出願日】2016年7月6日
(65)【公開番号】特開2017-119614(P2017-119614A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2019年6月20日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0187166
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジャエ スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン セオン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドー ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チャン ホーン
【審査官】
手島 理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−036606(JP,A)
【文献】
特開2006−111468(JP,A)
【文献】
特開2007−039325(JP,A)
【文献】
特開2006−169051(JP,A)
【文献】
特開2006−287046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/468
H01B 3/12
H01G 4/30
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ba及びTiの酸化物を主成分とし、
前記主成分は、Baの一部がNaで置換されて成る組成式(Ba1−xNax)TiO3で示され、
xは0.005≦x≦0.035であり、0.994<(Ba1−xNax)/Ti<1.003である条件を満たす、誘電体組成物。
【請求項2】
Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つの酸化物または炭酸塩である第1副成分を前記主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
Mg及びAlのうち少なくとも一つの酸化物または炭酸塩である第2副成分を前記主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項1または2に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
Ce、Nb、La及びSbのうち少なくとも一つの酸化物または炭酸塩である第3副成分を前記主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘電体組成物。
【請求項5】
Si、Ba、Ca及びAlのうち少なくとも一つの酸化物または炭酸塩である第4副成分を前記主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘電体組成物。
【請求項6】
Siを含むガラス化合物である第4副成分を前記主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘電体組成物。
【請求項7】
誘電体層と内部電極が交互に積層されたセラミック本体を含み、
前記誘電体層は、
Ba及びTiの酸化物を主成分とし、
前記主成分は、Baの一部がNaで置換されて成る組成式(Ba1−xNax)TiO3で示され、
xは0.005≦x≦0.035であり、0.994<(Ba1−xNax)/Ti<1.003である条件を満たす誘電体組成物を含む、積層セラミックキャパシタ。
【請求項8】
前記内部電極はNi成分を含む、請求項7に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
前記誘電体組成物は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つの酸化物または炭酸塩である第1副成分を前記主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項7または8に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項10】
前記誘電体組成物は、Mg及びAlのうち少なくとも一つの酸化物または炭酸塩である第2副成分を前記主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項11】
前記誘電体組成物は、Ce、Nb、La及びSbのうち少なくとも一つの酸化物または炭酸塩である第3副成分を前記主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項12】
前記誘電体組成物は、Si、Ba、Ca及びAlのうち少なくとも一つの酸化物または炭酸塩である第4副成分を前記主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項7〜11のいずれか1項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項13】
前記誘電体組成物は、Siを含むガラス化合物である第4副成分を前記主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項7〜11のいずれか1項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X5R、X7R及びX8R温度特性を満たすとともに信頼性が向上することができる新たな誘電体組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、映像機器の大型化、コンピュータのCPU速度の上昇などにより、電子機器の発熱が激しくなるため、IC(Integrated Circuit;集積回路)の安定した動作のために高い温度で安定した容量及び信頼性を確保することができるX5R(−55℃から85℃までの動作温度)またはX7R(−55℃から125℃までの動作温度)、さらにX8R(−55℃から150℃までの動作温度)タイプの機種に対する市場のニーズが高まっている。
【0003】
また、一般的な電子製品市場の趨勢である小型軽量化、多機能化に符合するために、積層セラミックキャパシタ(MLCC)チップ製品の小型化、高容量化、昇圧化が継続的に求められている。したがって、誘電体層の薄層化に伴い、優れた耐電圧及びDC特性がX5R、X7RまたはX8Rタイプの機種開発で重要であると考えられている。
【0004】
薄層化及び昇圧化は誘電体層にかかる電界の強さを高くしてDC特性及び耐電圧特性を悪化させる。特に、薄層化による微細構造上の欠陥がBDV(Breakdown Voltage)、高温IRなどの耐電圧特性に及ぼす影響をさらに激しくする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、X5R、X7R及びX8R温度特性を満たすとともに信頼性が向上することができる新たな誘電体組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、Ba及びTiの酸化物を主成分とし、上記主成分は、Baの一部がNaまたはCaで置換されて成る組成式(Ba
1−x(Na,Ca)
x)TiO
3で示され、ここで、xは0.005≦x≦0.035であり、0.994<(Ba
1−x(Na,Ca)
x)/Ti<1.003である条件を満たす誘電体組成物を提供する。
【0007】
さらに、このような誘電体組成物を用いて積層セラミックキャパシタを実現することにより、誘電特性、耐電圧特性などを向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によると、誘電率が高く、耐電圧特性に優れた誘電体組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】BaTiO
3においてBaをCa、Naで置換する場合の格子構造が変化する様相を模式的に示すものである。
【
図2】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図である。
【
図3】
図2のI−I'線に沿って取った積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがあり、図面上において同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0011】
また、本発明を明確に説明すべく、図面において説明と関係ない部分は省略し、多様の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0012】
本発明は誘電体組成物に関するもので、誘電体組成物を含む電子部品にはキャパシタ、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどがある。以下では、誘電体組成物及び電子部品の一例として積層セラミックキャパシタに関して説明する。
【0013】
誘電体組成物
本発明の一実施形態による誘電体組成物は、Ba 及びTiの酸化物を主成分とし、上記主成分は、Baの一部がNaまたはCaで置換されて成る組成式(Ba
1−x(Na,Ca)
x)TiO
3で示され、ここで、xは0.005≦x≦0.035であり、0.994<(Ba
1−x(Na,Ca)
x)/Ti<1.003である条件を満たす。
【0014】
このような条件を満たす誘電体組成物は、EIA(Electronic Industries Association)の規格で明示されたX5R(−55℃〜85℃)、X7R(−55℃〜125℃)、また、X8R(−55℃〜150℃)の特性を満たすことができる。
【0015】
より詳細には、本発明の一実施形態によると、ニッケル(Ni)を内部電極として使用し、1300℃以下で上記ニッケル(Ni)が酸化しない還元雰囲気で焼成が可能な誘電体組成物を提供する。また、これを用いた積層セラミックキャパシタを提供することで、上記温度特性を満たすとともに優れた信頼性を実現することができる。
【0016】
以下、本発明の一実施形態による誘電体組成物の各成分をより具体的に説明する。
【0017】
a)主成分
本発明の一実施形態による誘電体組成物の場合、主成分は、Ba及びTiの酸化物として、具体的には、Baの一部がNaまたはCaで置換されて成る組成式(Ba
1−x(Na,Ca)
x)TiO
3で示され、ここで、xは0.005≦x≦0.035であり、0.994<(Ba
1−x(Na,Ca)
x)/Ti<1.003である条件を満たす。
【0018】
MLCCの代表的な劣化モデルのうちの一つである還元モデルによると、BaTiO
3の基本構造で高い移動度を有する酸素空孔(void)が生成され、このような酸素空孔の移動によって劣化が発生すると知られている。即ち、酸素空孔が発生した状態で電場が印加されると、酸素空孔はカソードの側に移動してカソードには酸素空孔の濃度勾配が形成され、アノードには酸素が放出され還元されて電子の濃度が増加するようになる。
【0019】
このように、酸素空孔の移動によってリーク電流が増加する可能性があるため、本発明の発明者らは酸素空孔の濃度を制御し移動度を低くすることができる効果的な方法を導出しようとした。従来は、電子の濃度を減らしたり電子の移動を抑制するために、アクセプタドーパントの添加量を調節する方法を用いたが、これは化学量論比を満たさないため欠陥が発生するなどの問題がある。
【0020】
これと異なり、本実施形態による誘電体組成物の場合は、Baイオンに対してサイズが小さく同一の原子価を有したり(Ca)、または低い原子価を有する元素(Na)をBaの場所に置換することによりこのような問題を解決した。
図1を参照して具体的に説明すると、
図1はBaTiO
3においてBaをCa、Naで置換する場合の格子構造が変化する様相を模式的に示すものである。
【0021】
図1に示されているように、Baよりイオンサイズが小さいCaまたはNaでBaを置換する場合、格子が収縮しながら格子ひずみ(lattice distortion)が発生し、これにより、酸素空孔Vの移動が最小化することができる。この場合、酸素空孔Vの移動度が低くなるにつれてリーク電流が減少して優れた特性を有する誘電体組成物を得ることができる。また、Baをサイズが小さい元素で置換しながらも化学量論を満たしたり(Caの場合)、または電子の濃度増加を最小限にすることができるため(Naの場合)、誘電特性の低下を最小化することができる。もちろん、DyまたはYのような元素もBaの場所に置換できるイオンサイズを有するが、このようなドナー型ドーパントは、原子価がBaイオンに対して大きくBaサイトの置換時に電子の発生を誘発しかねないため格子ひずみを通じた信頼性の向上方法としては適さない。
【0022】
但し、本発明者の研究によると、Na、Caは両方とも一定量以上添加時に誘電率及び絶縁特性がかえって低下する可能性がある。これは、過度な置換による極性(polarization)の大きさの減少や誘電特性の低下、または欠陥化学的に生成される酸素空孔のような欠陥の濃度が増加するためであると理解される。
【0023】
したがって、Baの置換元素を選定するにあたり、その含量比を最適に選定する必要があり、また、(Ba,Na)/Tiまたは(Ba,Ca)/Tiの比率も誘電特性に及ぼす影響が大きいため適正比率を決定する必要がある。これは、ペロブスカイト(perovskite)型ABO
3の構造においてA/Bの比率(ratio)によってAサイトに置換される添加元素の固溶限界が異なるため焼結挙動、誘電特性及び信頼性に影響を与える可能性があるためである。これと関連して、本発明者の研究によると、(Ba
1−x(Na,Ca)
x)/Tiが1に近いとき、c/aが大きく極性の大きさも増加するため高い比誘電特性を得ることができた。また、Baサイトを置換する元素の固溶限界が最も効率的であるため、高い誘電特性及び信頼性を有するためには(Ba
1−x(Na,Ca)
x)/Tiを1に近づけるように設計する必要がある。
【0024】
上述の事項を総合的に考慮した結果、本実施形態の誘電体組成物において、xは0.005≦x≦0.035であり、0.994<(Ba
1−x(Na,Ca)
x)/Ti<1.003である条件を満たすようにした。これに対しては、後述する実験結果で詳細に説明する。
【0025】
本実施形態で提案する上記のような誘電体組成物を用いることにより、X5R、X7R及びX8R特性を満たし、さらに、誘電特性及び高温耐電圧特性が向上することができる。
【0026】
b)第1副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、第1副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上を含む酸化物または炭酸塩をさらに含むことができる。第1副成分は、原子価可変アクセプタ(variable valence acceptor)であり、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を低下させ、高温耐電圧特性を向上させる役割をすることができる。この場合、必ずしもこれに制限されるものではないが、第1副成分は主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%含まれることができる。第1副成分の含量及び後述する他の副成分の含量は主成分100モル%に対する量であり、各副成分が含む金属イオンのモル%と定義されることができる。第1副成分が主成分に対して0.1モル%未満である場合は耐還元性及び信頼性が低下する可能性があり、1.0モル%以上である場合は焼成温度の増加及び容量の低下などが発生するおそれがある。
【0027】
c)第2副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、第2副成分として、Mg及びAlのうち少なくとも一つの酸化物または炭酸塩をさらに含むことができる。上記第2副成分は、原子価固定アクセプタ(fixed valence acceptor)であり、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を低下させ、高温耐電圧特性を向上させる役割をすることができる。この場合、必ずしもこれに制限されるものではないが、第2副成分は主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%含まれることができる。第2副成分が主成分に対して0.1モル%未満である場合は耐還元性及び信頼性が低下する可能性があり、1.0モル%以上である場合は焼成温度の増加及び容量の低下などが発生するおそれがある。
【0028】
d)第3副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、第3副成分として、Ce、Nb、La及びSbのうち少なくとも一つの酸化物または炭酸塩をさらに含むことができる。この場合、必ずしもこれに制限されるものではないが、第3副成分は主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%含まれることができる。
【0029】
e)第4副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、第4副成分として、Si、Ba、Ca及びAlのうち少なくとも一つの酸化物または炭酸塩をさらに含むことができる。この場合、必ずしもこれに制限されるものではないが、第4副成分は主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%含まれることができる。
【0030】
また、第4副成分の他の例として、上記誘電体組成物は、Siを含むガラス化合物を含むことができ、同様に主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%含まれることができる。
【0031】
積層セラミックキャパシタ
図2は本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図であり、
図3は
図2のI−I'線に沿って取った積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図である。
【0032】
図2及び
図3を参照すると、本発明の他の実施形態による積層セラミックキャパシタは、誘電体層111と第1及び第2内部電極121、122が交互に積層されたセラミック本体110を有する。セラミック本体110の両端部にはセラミック本体110の内部に交互に配置された第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ導通する第1及び第2外部電極131、132が形成される。
【0033】
セラミック本体110の形状に特に制限はないが、一般的に六面体形状であることができる。また、その寸法も特に制限はなく、用途によって適切な寸法にすることができ、例えば、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)であることができる。
【0034】
誘電体層111の厚さはキャパシタの容量設計に応じて任意に変更することができ、本発明の一実施例において焼成後の誘電体層の厚さは1層当たりに0.2μm以上であることが好ましい。誘電体層が薄すぎると、一層内に存在する結晶粒数が少なくて信頼性に悪い影響を及ぼすため、誘電体層の厚さは0.2μm以上であることができる。
【0035】
第1及び第2内部電極121、122は、各端面がセラミック本体110の対向する両端部の表面に交互に露出するように積層される。第1及び第2外部電極131、132は、セラミック本体110の両端部に形成され、交互に配置された第1及び第2内部電極121、122の露出端面に電気的に連結されてキャパシタ回路を構成する。
【0036】
第1及び第2内部電極121、122に含有される導電性材料は、特に限定されないが、本発明の一実施形態による誘電体組成物を用いてセラミック本体110を形成する場合、約1300℃以下の還元雰囲気で焼成が可能であるとともにNi成分を含む物質で内部電極121、122を形成することができる。
【0037】
第1及び第2内部電極121、122の厚さは、用途などによって適切に決定されることができ、特に制限されるものではないが、例えば、0.1〜5μmまたは0.1〜2.5μmであることができる。
【0038】
第1及び第2外部電極131、132に含有される導電性材料は、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、またはこれらの合金を用いることができる。第1及び第2外部電極131、132の厚さは、用途などによって適切に決定されることができ、特に制限されるものではないが、例えば、10〜50μmであることができる。
【0039】
セラミック本体110を構成する誘電体層111は、本発明の一実施形態による上述の組成を有する誘電体組成物を含むことができる。
【0040】
上記誘電体組成物に対する具体的な説明は、上述の本発明の一実施形態による誘電体組成物の特徴と同一であるためここでは省略する。
【0041】
実験例
以下、本発明の発明者が行った実験例を通じて本発明をより詳細に説明する。これは発明の具体的な理解を助けるためのもので、本発明の範囲が実験例のみに限定されるものではない。
【0042】
母材主成分は、100nm級のBaTiO
3粉末を用いた。このとき、主成分及び副成分の具体的な組成は以下の表1(Na置換の場合)及び表2(Ca置換の場合)と同一である。具体的には、副成分の含量を下記比率で固定し、Na及びCaの含量と(Ba
1−x(Na,Ca)
x)/Tiの値を変化させた組成物サンプルを製作した。
【0045】
サンプルの製作過程をより具体的に説明すると、スラリーの製作時に、母材主成分及び副成分粉末にジルコニアボールを用いて混合/分散し、エタノール/トルエンと分散剤を混合した後、機械的ミリングを行った。その後、誘電体層が適切な水準の強度を有するようにバインダー混合工程をさらに行った。製造されたスラリーはK2バルクの試片を製作するために小型ドクターブレード方式の成形コーター(coater)を用いて10〜15μmの厚さで成形シートを製造した。圧着後に、グリーン(green)試片の厚さが約0.8mmになるように積層した後、1.0cm(横)×1.0cm(縦)サイズのK2バルク試片に切断した。
【0046】
製作が完了したK2バルク試片は、400℃で空気(air)仮焼した後、焼成温度1300℃以下、水素濃度0.5%H
2以下の条件で焼成し、電気的特性、絶縁抵抗、及び温度による容量変化率(TCC)などを測定した。バルク型K2で実現されたMLCCの常温静電容量及び誘電損失はLCRメーターを用いて1kHz、AC1Vで測定し、サンプルを10個ずつ取って常温絶縁抵抗をDC電圧が印加された状態で60秒経過後に測定した。温度による容量変化率(TCC)は、−55〜125℃の温度範囲で1kHz、AC1Vの電圧印加条件で行った。表1及び表2で製作したサンプルに対して誘電率、固有抵抗、及び高温耐電圧テストを行った結果は以下の表3(Na置換の場合)及び表4(Ca置換の場合)と同一である。ここで、各特性値とともに評価結果を示した。◎は優秀、○は良好、△は普通、Xは不良を示す。
【0049】
表3及び表4の実験結果を参照すると、まず、NaまたはCaがまったく添加されない場合と比較して0.5〜3.5%添加された場合、即ち、組成式(Ba
1−x(Na,Ca)
x)TiO
3で示された組成物において、0.005≦x≦0.035である場合に誘電特性が大きく変化せずに抵抗特性及び耐電圧特性が向上する結果を得ることができた。これは、既に説明した通り、Baの一部がこれよりイオンサイズが小さいCaまたはNaで置換されることにより格子の収縮をもたらして酸素空孔などの格子内の移動を抑制するためであると解釈されることができる。
【0050】
また、(Ba
1−x(Na,Ca)
x)/Tiが1に近い値(0.994〜1.003)で設定された上記実験結果から最も効果が良い範囲を導出した。(Ba
1−x(Na,Ca)
x)/Tiが0.994(表3では実験例1〜9、表4では実験例1〜8)に該当する組成物の場合、誘電特性または抵抗特性が低下することを確認した。同様に、(Ba
1−x(Na,Ca)
x)/Tiが1.003(表3では実験例29〜36、表4では実験例25〜32)に該当する組成物の場合、誘電特性及び抵抗特性(特に、誘電特性)に問題があることを確認した。
【0051】
このような結果から上述の0.994<(Ba
1−x(Na,Ca)
x)/Ti<1.003である条件を導出した。これは、上述の通り、(Ba
1−x(Na,Ca)
x)/Tiの値が1に近いとき、c/aが大きく極性の大きさも増加するため高い比誘電特性を得ることができ、さらに、Baサイトを置換する元素の固溶限界が最も効率的であるため、高い誘電特性及び信頼性を有するためであると説明されることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有するものには明らかである。
【符号の説明】
【0053】
110 セラミック本体
111 誘電体層
121、122 第1及び第2内部電極
131、132 第1及び第2外部電極