特許第6834092号(P6834092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6834092誘電体組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834092
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】誘電体組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/468 20060101AFI20210215BHJP
   C04B 35/47 20060101ALI20210215BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20210215BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   C04B35/468
   C04B35/47
   H01B3/12 303
   H01G4/30 515
   H01G4/30 201J
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-152257(P2016-152257)
(22)【出願日】2016年8月2日
(65)【公開番号】特開2017-122037(P2017-122037A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2019年7月5日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0001076
(32)【優先日】2016年1月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パーク、ジャエ スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チャン ホーン
(72)【発明者】
【氏名】パーク、ヨーン ソー
(72)【発明者】
【氏名】キム、キ ハン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドー ヤン
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−281435(JP,A)
【文献】 特開2003−246672(JP,A)
【文献】 特開2014−210693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B35/00−35/84
H01B 3/12
H01G 4/12
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ba,Ti)O系列の強誘電体物質を第1主成分、
(Ca,Sr)(Zr,Ti)O系列の常誘電体物質を第2主成分とし、
前記第1主成分のモル分率をa、前記第2主成分のモル分率をbとすると、0.33≦a/b≦の条件を満たし、
前記第2主成分は、組成式(Ca,Sr)(Zr1−xTi)Oで表され、
ここで、xは、0.≦x≦0.8の条件を満たす誘電体組成物。
【請求項2】
前記第1主成分は、BaTiO、(Ba,Ca)(Ti,Ca)O、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O、Ba(Ti,Zr)O及び(Ba,Ca)(Ti,Sn)Oの少なくともいずれか一つの組成式で表される、請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnの少なくともいずれか一つの酸化物または炭酸塩である第1副成分を第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項1または2に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
Mg及びAlの少なくともいずれか一つの酸化物または炭酸塩である第2副成分を前記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項3に記載の誘電体組成物。
【請求項5】
Ce、Nb、La及びSbの少なくともいずれか一つの酸化物または炭酸塩である第3副成分を前記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項4に記載の誘電体組成物。
【請求項6】
Si、Ba、Ca及びAlの少なくともいずれか一つの酸化物または炭酸塩である第4副成分を前記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項5に記載の誘電体組成物。
【請求項7】
Siを含むガラス化合物である第4副成分を前記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項5または6に記載の誘電体組成物。
【請求項8】
誘電体層と内部電極が交互に積層されたセラミック本体を含み、
前記誘電体層は、
(Ba,Ti)O系列の強誘電体物質を第1主成分、
(Ca,Sr)(Zr,Ti)O系列の常誘電体物質を第2主成分とし、
前記第1主成分のモル分率をa、前記第2主成分のモル分率をbとすると、0.33≦a/b≦の条件を満たし、
前記第2主成分は、組成式(Ca,Sr)(Zr1−xTi)Oで表され、
ここで、xは、0.≦x≦0.8の条件を満たす誘電体組成物を含む積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
前記内部電極は、Ni成分を含む、請求項8に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項10】
Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnの少なくともいずれか一つの酸化物または炭酸塩である第1副成分を第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項8または9に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項11】
Mg及びAlの少なくともいずれか一つの酸化物または炭酸塩である第2副成分を前記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項10に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項12】
Ce、Nb、La及びSbの少なくともいずれか一つの酸化物または炭酸塩である第3副成分を前記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項11に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項13】
Si、Ba、Ca及びAlの少なくともいずれか一つの酸化物または炭酸塩である第4副成分を前記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項12に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項14】
Siを含むガラス化合物である第4副成分を前記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%さらに含む、請求項12または13に記載の積層セラミックキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X5R、X7R及びX8Rの温度特性を満たし、信頼性が向上可能な新規の誘電体組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、映像機器の大型化、コンピューターのCPU速度の上昇などによって、電子機器の発熱が深刻となっており、IC(Integrated Circuit;集積回路)の安定した動作のために、高い温度で安定した容量と信頼性が確保できるX5R(−55℃〜85℃まで動作温度)またはX7R(−25℃〜125℃まで動作温度)、さらにはX8R(−55℃〜150℃)級の機種に対する市場の要求が高まっている。
【0003】
これと共に、一般的な電子製品市場の傾向である小型軽量化、多機能化に符合するために、積層セラミックキャパシタ(MLCC)チップ製品の小型化、高容量化、昇圧化が継続的に要求されている。従って、誘電体層の薄層化と共に優れた耐電圧及びDC特性がX5R、X7RまたはX8R級の機種開発で重要に考慮されている。
【0004】
薄層化、昇圧化は、誘電体層にかかる電界の強さを高めて、DC特性と耐電圧特性を悪化させる。特に、薄層化による微細構造上の欠陥がBDV(Breakdown Voltage)、高温IRなどの耐電圧特性に及ぶ影響をさらに深刻にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一つは、X5R、X7R及びX8Rの温度特性及び信頼性が向上可能な新規の誘電体組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を解決するために、本発明は、一実施形態で強誘電体と常誘電体を固有の組成式及び割合で含有する誘電体組成物を提供し、具体的に、(Ba,Ti)O系列の強誘電体物質を第1主成分、(Ca,Sr)(Zr,Ti)O系列の常誘電体物質を第2主成分とし、上記第1主成分のモル分率をa、上記第2主成分のモル分率をbとすると、0.33≦a/b≦3の条件を満たし、上記第2主成分は、組成式(Ca,Sr)(Zr1−xTi)Oで表され、ここで、xは、0.2≦x≦0.8の条件を満たす。
【0007】
さらに、このような誘電体組成物を利用して積層セラミックキャパシタを具現することで、誘電特性、耐電圧特性などを向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によると、誘電率が高く、耐電圧特性に優れた誘電体組成物及びこれを含む積層セラミックキャパシタを具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】強誘電体材料と常誘電体材料において、結晶構造及び配位原子との酸素結合状態を模式的に示したものである。
図2】強誘電体材料と常誘電体材料において、温度による誘電特性の挙動を比較して示すグラフである。
図3】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図である。
図4図3のI−I'に沿った積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがあり、図面上において同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0011】
また、本発明を明確に説明すべく、説明と関係ない部分は省略し、多様の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0012】
本発明は、誘電体組成物に関し、誘電体組成物を含む電子部品は、キャパシタ、インダクター、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどがあり、以下では、誘電体組成物及び電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明する。
【0013】
誘電体組成物
本発明の一実施形態による誘電体組成物は、(Ba,Ti)O系列の強誘電体物質を第1主成分、(Ca,Sr)(Zr,Ti)O系列の常誘電体物質を第2主成分とし、上記第1主成分のモル分率をa、上記第2主成分のモル分率をbとすると、0.33≦a/b≦3の条件を満たし、上記第2主成分は組成式(Ca,Sr)(Zr1−xTi)Oで表され、ここで、xは、0.2≦x≦0.8の条件を満たす。
【0014】
このような条件を満たす誘電体組成物は、EIA(Electronic Industries Association)規格で明示したX5R(−55℃〜85℃)、X7R(−55℃〜125℃)、そしてX8R(−55℃〜150℃)特性を満たすことができる。
【0015】
さらに詳しくは、本発明の一実施形態によると、ニッケル(Ni)を内部電極として使用し、1300℃以下で上記ニッケル(Ni)が酸化しない還元雰囲気で焼成が可能な誘電体組成物を提供する。また、これを利用した積層セラミックキャパシタを提供して上記温度特性を満たすと同時に、優れた信頼性を具現することができる。
【0016】
以下、本発明の一実施形態による誘電体組成物の各成分をより具体的に説明する。
【0017】
a)主成分
本発明の一実施形態による誘電体組成物の場合、(Ba,Ti)O系列の強誘電体物質を第1主成分、(Ca,Sr)(Zr,Ti)O系列の常誘電体物質を第2主成分とし、上記第1主成分のモル分率をa、上記第2主成分のモル分率をbとすると、0.33≦a/b≦3の条件を満たし、上記第2主成分は組成式(Ca,Sr)(Zr1−xTi)Oで表され、ここで、xは、0.2≦x≦0.8の条件を満たす。
【0018】
この場合、上記第1主成分は、BaTiO、(Ba,Ca)(Ti,Ca)O、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O、Ba(Ti,Zr)O及び(Ba,Ca)(Ti,Sn)Oの少なくともいずれか一つの組成式で表されることができる。
【0019】
MLCCの代表的な劣化モデルの一つである還元モデルによると、BaTiOの基本構造で高い移動度を有する酸素空孔(void)が生成され、このような酸素空孔の移動によって劣化が発生すると知られている。即ち、酸素空孔が発生した状態で電場が印加されれば、酸素空孔はカソード側に移動して、カソードには酸素空孔の濃度勾配が形成され、アノードは酸素が放出されながら還元されて電子濃度が増加する。
【0020】
このように、酸素空孔の移動によって漏れ電流が増加し得るため、本発明の発明者は、酸素空孔の濃度を制御し、移動度を低くすることができる効果的な方法を導出しようとした。従来は、電子の濃度を低くするか、電子の移動を抑制するために、アクセプタドーパントの添加量を調節する方法を使用したが、これには、化学量論比を満たすことができず、欠陥が発生するなどの問題がある。
【0021】
このような酸素空孔の発生と移動様相は、物質によって異なり、本発明の発明者らは、強誘電体と常誘電体の差異に注目した。図1は、強誘電体材料と常誘電体材料において、結晶構造及び配位原子との酸素結合状態を模式的に示したものである。図1において、A、B、Oは、ABO結晶構造で各元素を表す。また、図2は、強誘電体材料と常誘電体材料において、温度による誘電特性の挙動を比較して示すグラフである。
【0022】
図1を参照すると、先ず、BaTiO等のような強誘電体物質の場合、温度による相変異とTc温度以下における格子変異により、体心に位置したTi陽イオン(Bに該当)と、その周りを配位している酸素陰イオン(Oに該当)との分極が形成される。このようにTi−O原子間の不安定な結合をしているため、強誘電体材料の場合、印加される電圧の方向によってより容易にTi−Oの結合構造が破壊されることができ、これにより、酸素空孔が生成され、移動度が増加する。
【0023】
これに比べて、常誘電体物質は、印加される電圧または温度に関係なく一定の格子構造を有し、図1に示すように、酸素とこれを配位する周辺の原子が常に一定の距離を維持している。このような安定した構造により高い結合エネルギーを有するため、常誘電体物質では酸素空孔の生成と移動が相対的に難しい。
【0024】
また、下記の図2に示す強誘電体と常誘電体の誘電特性をみると、強誘電体の場合、温度による格子変位によって誘電率の変化が大きいことを確認することができ、これに比べて、安定した結晶構造を有する常誘電体材料は、一定水準の誘電率挙動を表している。
【0025】
このような異種材料間の物性差を考慮し、本発明の発明者らは、強誘電体物質と常誘電体物質との両方を含む誘電体組成物を使用して、酸素空孔による絶縁特性の低下を抑制し、安定した温度特性を具現しようとした。さらに、後述するように、他の電気的特性、例えば、電気抵抗、高温耐電圧特性、温度特性などを考慮して各誘電物質の含量と組成式を適切な割合で調節した。
【0026】
上述したように、常誘電体物質が安定した特性を有するが、一般的に強誘電体物質より誘電率が低いため、全体誘電体組成物に含まれる含量は、多様な特性を考慮して調節する必要がある。また、本発明者らの研究によると、(Ca,Sr)(Zr,Ti)O系列の常誘電体物質の場合、Aサイト元素の割合(Ca/Sr)よりBサイト元素の割合(Zr/Ti)が、誘電特性と温度特性等に、より重要な影響を及ぼすことを発見した。
【0027】
上述した事項を総合的に考慮した結果、本実施形態の誘電体組成物では、第1及び第2主成分の割合は、0.33≦a/b≦3の条件を満たし、第2主成分の組成式(Ca,Sr)(Zr1−xTi)Oにおいて、xは、0.2≦x≦0.8の条件を満たすように設定した。これについては、後述する実験結果を通じて詳しく説明する。
【0028】
本実施形態で提案する上記のような誘電体組成物を使用することで、X5R、X7R及びX8Rの特性を満たし、さらに、誘電特性と高温耐電圧特性などが向上されることができる。
【0029】
b)第1副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、第1副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnの少なくともいずれか一つ以上を含む酸化物あるいは炭酸塩をさらに含むことができる。第1副成分は、原子が可変アクセプタ(variable valence acceptor)であり、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度の低下及び高温耐電圧特性を向上させる役割をすることができる。この場合、必ずしもこれに制限されるものではないが、第1副成分は、上記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%含まれることができる。第1副成分の含量及び後述する他の副成分の含量は、上記第1及び第2主成分100モル%に対する量であり、各副成分が含む金属イオンのモル%として定義することができる。第1副成分が上記第1及び第2主成分に対して0.1モル%未満の場合、耐還元性及び信頼性が低下し得て、1.0モル%以上の場合、焼成温度の増加及び容量の低下等が発生し得る。
【0030】
c)第2副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、第2副成分として、Mg及びAlの少なくともいずれか一つの酸化物または炭酸塩をさらに含むことができる。上記第2副成分は、原子が固定アクセプタ(fixed valence acceptor)であり、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度の低下及び高温耐電圧特性を向上させる役割をすることができる。この場合、必ずしもこれに制限されるものではないが、第2副成分は、上記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%含まれることができる。第2副成分が上記第1及び第2主成分に対して0.1モル%未満の場合、耐還元性及び信頼性が低下し得て、1.0モル%以上の場合、焼成温度の増加及び容量の低下などが発生し得る。
【0031】
d)第3副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、第3副成分として、Ce、Nb、La及びSbの少なくともいずれか一つの酸化物または炭酸塩をさらに含むことができる。この場合、必ずしもこれに制限されるものではないが、第3副成分は、上記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%含まれることができる。
【0032】
e)第4副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、第4副成分として、Si、Ba、Ca及びAlの少なくともいずれか一つの酸化物または炭酸塩をさらに含むことができる。この場合、必ずしもこれに制限されるものではないが、第4副成分は、上記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%含まれることができる。
【0033】
また、第4副成分の他の例として、上記誘電体組成物は、Siを含むガラス化合物を含むことができ、同様に、上記第1及び第2主成分100モル%に対して0.1〜1.0モル%含まれることができる。
【0034】
積層セラミックキャパシタ
図3は、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図であり、図4は、図2のI−I'に沿って見た積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図である。
【0035】
図3及び図4を参照すると、本発明の他の実施例による積層セラミックキャパシタは、誘電体層111と、第1及び第2内部電極121、122が交互に積層されたセラミック本体110とを有する。セラミック本体110の両端部には、セラミック本体110の内部に交互に配置された第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ導通する第1及び第2外部電極131、132が形成されている。
【0036】
セラミック本体110の形状に特に制限はないが、一般的に六面体形状であることができる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途によって適切な寸法にすることができ、例えば、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)であることができる。
【0037】
誘電体層111の厚さは、キャパシタの容量設計に合わせて任意に変更することができるが、本発明の一実施例において、焼成後の誘電体層の厚さは、1層当たり、好ましくは0.2μm以上であることができる。薄過ぎる厚さの誘電体層は、一層内に存在する結晶粒数が小さく、信頼性に悪影響を及ぼすため、誘電体層の厚さは0.2μm以上であることができる。
【0038】
第1及び第2内部電極121、122は、各断面がセラミック本体110の対向する両端部の表面に交互に露出するように積層されている。第1及び第2外部電極131、132は、セラミック本体110の両端部に形成され、交互に配置された第1及び第2内部電極121、122の露出断面に電気的に連結してキャパシタ回路を構成する。
【0039】
第1及び第2内部電極121、122に含有される導電性材料は、特に限定されないが、本発明の一実施形態による誘電体組成物を使用してセラミック本体110を形成する場合、約1300℃以下の還元雰囲気で焼成が可能であると同時に、Ni成分を含む物質で内部電極121、122を形成することができる。
【0040】
第1及び第2内部電極121、122の厚さは、用途などによって適切に決められ、特に制限されるものではないが、例えば、0.1〜5μmまたは0.1〜2.5μmであることができる。
【0041】
第1及び第2外部電極131、132に含有される導電性材料は、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、またはこれらの合金を利用することができる。第1及び第2外部電極131、132の厚さは、用途などによって適切に決められ、特に制限されるものではないが、例えば、10〜50μmであることができる。
【0042】
セラミック本体110を構成する誘電体層111は、本発明の一実施形態による上述した組成の誘電体組成物を含むことができる。
【0043】
上記誘電体組成物に対する具体的な説明は、上述した本発明の一実施形態による誘電体組成物の特徴と同一であり、ここでは省略する。
【0044】
実験例
以下、本発明の発明者が行った実験例を通じて、本発明をさらに詳しく説明するが、これは、発明の具体的な理解を助けるためのもので、本発明の範囲が実験例のみによって限定されるものではない。
【0045】
母材のうち、第1主成分は、300nm級のBaTiO粉末を使用し、第2主成分は、300nm級の(Ca,Sr)(Zr1−xTi)O組成式(下記の表1では、「CSZT」と表示する)を有する粉末を使用した。そして、下記の表1のように、第1及び第2主成分の割合と、第2主成分のZrとTiとの割合を調整しながら、組成物のサンプルを製作した。
【0046】
【表1】
【0047】
サンプルの製作過程をより具体的に説明すると、スラリーの製作時は、母材主成分及び副成分パウダーをジルコニアボールを利用して混合/分散し、エタノール/トルエンと分散剤を混合した後、機械的ミーリングを実施した。以後、誘電体層が適切な水準の強度を有するようにバインダー混合工程を追加した。製造されたスラリーは、K2バルク試片の製作のために、小型ドクターブレード方式の成形塗布機(coater)を利用して10〜15μmの厚さで成形シートを製造し、圧着後、グリーン(green)試片の厚さが約0.8mmとなるように積層した後、1.0cm(横)×1.0cm(縦)サイズのK2バルク試片に切断した。
【0048】
製作が完了したK2バルク試片は、400℃、エア(air)仮焼した後、焼成温度1300℃以下、水素濃度0.5%のH以下の条件で焼成し、電気的特性及び絶縁抵抗、温度による容量変化率(TCC)等を測定した。バルクタイプK2で具現されたMLCCの常温静電容量及び誘電損失は、LCRメータを利用して1kHz、AC 1Vで測定し、10個ずつサンプルを取り、常温絶縁抵抗をDC電圧を印加した状態で、60秒経過後に測定した。温度による容量変化率(TCC)は、−55〜125℃の温度範囲で1kHz、AC 1Vの電圧印加条件で実施した。表1のように製作したサンプルに対して、誘電率、固有抵抗及び高温耐電圧テストを実行した結果は、下記の表2の通りである。ここで、各特性値と共に評価結果を表し、◎は優秀、○は良好、△は普通、Xは不良として処理されたものである。
【0049】
【表2】
【0050】
表1及び表2の実験結果をみると、まず、常誘電体材料である第2主成分の含量が増加するほど、組成物全体では誘電率が低下することを観察し、反対に、抵抗、耐電圧及び温度特性は、大幅に向上する傾向を示している。上記実験例に基づいて、上記異種物質の最適の混合割合を考慮すると、上記第1主成分のモル分率をa、上記第2主成分のモル分率をbとすると、0.33≦a/b≦3の条件を導出することができる。
【0051】
また、ZrとTiの割合による特性変化をみると、Bサイト固溶元素であるTiが含まれた組成物の誘電率が相対的に高いことを確認することができた。具体的に、第2主成分(CSZT)でZr/Tiの割合を低くする場合、即ち、Tiの含量を相対的に高くする場合、強誘電体と常誘電体の混合システムで常誘電体、即ち、第2主成分の割合が増加することで発生し得る誘電特性の低下を緩和することができる。具体的に、相対的に低い誘電常数値を有する常誘電体物質の含量が増加しながら組成物全体の誘電率が低下する副効果があるが、Tiの含量増加によってこれを最小化することができる。このように誘電率の低下を最小化しながら、上述したように、常誘電体物質が有する安定的特性を通じて耐電圧と温度特性などを向上させることができる。上記実験例に基づいて、第2主成分のZrとTiの最適混合割合を考慮すると、上記第2主成分は組成式(Ca,Sr)(Zr1−xTi)Oで表され、xは、0.2≦x≦0.8の条件を導出することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0053】
110 セラミック本体
111 誘電体層
121、122 第1及び第2内部電極
131、132 第1及び第2外部電極
図1
図2
図3
図4