【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
Na Liu et al.,Infrared Perfect Absorber and Its Application As Plasmonic Sensor,NANO LETTERS,American Chemical Society,2010年 6月18日,Vol.10,p.2342-2348
【文献】
宮崎英樹,笠谷岳士,岩長祐伸,崔峯碩,杉本喜正,迫田和彰,CO2濃度計測のための赤外熱放射メタ表面,第61回応用物理学会週春期学術講演会 講演予稿集,日本,2014年 3月,17p-F12-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7390689号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Appl. Phys. Lett. 92, 021117 (2008), JOSA A, Vol. 18, Issue 7, pp. 1471‐1476 (2001).
【非特許文献2】K. Aydin, V. E. Ferry, R. M. Briggs, and H. A. Atwater, “Broadband polarization‐independent resonant light absorption using ultrathin plasmonic super absorbers,” Nat Commun2, 517 (2011).
【非特許文献3】Kai Chen, Ronen Adato, and Hatice Altug, ACS Nano, 2012, 6(9), pp 7998‐8006.
【非特許文献4】D. Nau, A. Seidel, R. B. Orzekowsky, S.‐H. Lee, S. Deb, and H. Giessen, Optics Letters, Vol. 35, Issue 18, pp. 3150‐3152 (2010).
【非特許文献5】宮崎英樹,笠谷岳士,岩長祐伸,崔峯碩,杉本喜正,迫田和彰, 第61回応用物理学会週春期学術講演会,17p‐F12‐13
【非特許文献6】L. Isa, K. Kumar, M. Mueller, J. Grolig, M. Textor and E Reimhult, ACS Nano, 4(10), pp. 5665‐5670, 2010.
【非特許文献7】G. G. Fuentes, J. Appl. Phys. 90, 2737 (2001).
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態は導電体と誘電体薄膜とを積層し、紫外から遠赤外帯域の所定の波長の光を選択的かつ高効率に吸収することでその電磁波エネルギーを電気エネルギー、熱エネルギー、化学エネルギーに変換し、さらに、逆に加熱などを行うことなどで高効率な赤外線輻射も行うことのできる、軽量・安価かつ大面積な積層型2次元構造を有する電磁波吸収及び輻射材料、及びその製造方法に関する。
【0018】
ここで言う積層型2次元構造とは、具体的には
図1に示すように、導電体面から離間させて複数の導電体ディスクを配列した構造である。導電体面12aは導電体(
図1に第一金属層として示す)12の表面を使用する。第一金属層12は、
図1の(a)に示すように金属等の導電体の箔を使用したり、あるいは
図1の(b)に示すように導電体層(第一金属層12)を下地(基板等)10の上に成膜したりすることで、形成できる。なお、
図1に「第一金属層」として示す層12は必ずしも金属からなっている必要はなく、金属以外の各種の導電体も使用できるため、以下では必要に応じて「第一導電層」とも呼ぶ。なお、後述する「金属ディスク」、「金属ディスク層」等についても、同様に、必要に応じて「導電体ディスク」、「導電体ディスク層」とも呼ぶ。第一導電層12の厚さは10nm〜1mm程度で良い。10nm以上であれば、厚さが大きくなるほど応答性が高くなる。第一導電層を蒸着で成膜する場合、蒸着で成膜できる厚さを上限値とすれば良く、時間及び費用の観点から200nm程度がリーズナブルである。蒸着しない場合は無垢の平らな金属下地を用いても良い。第一導電層12の厚さは、好ましくは、50nm〜300nmであるが、これに限定されない。
【0019】
また、複数の導電体ディスク16aを配置した領域を、
図1に第二金属ディスク層16として示す。導電体ディスク16aの厚さは10nm〜10μm程度で良い。第一導電層と同様の理由から、導電体ディスク16aの厚さは、好ましくは、50nm〜300nmであるが、これに限定されない。また、導電体面12aと複数の導電体ディスク16aとを離間して配置するために、導電体面12a上に誘電体層(第一誘電体層)14を形成し、その上に導電体ディスク16aを配置することができる。
【0020】
更に、導電体ディスク16a上に保護用の第二誘電体層18を形成してもよい。第二誘電体層18の厚さは1nm〜1μm程度で良い。あるいは、保護等が不要である場合や、上述のようにして作製した電磁波吸収及び輻射材料を更に他の部材等と組み合わせて他の製品を作製する際に金属ディスクの保護のための処置も同時に行われる等の場合には、第二誘電体層18を省略しても構わない。
【0021】
ここで、導電体ディスク16aを円形とすることで、入射電磁波の偏光方向に影響されない電磁波吸収特性が実現される。また、これらのディスク16aを互いに同じサイズとすることで、鋭い波長選択性が得られる。ディスクサイズ(導電体ディスク16aの直径)は0.01μm〜100μmの範囲とするのが好ましく、0.5〜20μmがより好ましい。特に、ドライエッチングで製造する場合、導電体ディスク16aの直径が0.5〜20μmであると製造し易い。なお、導電体ディスク16aの直径はこの範囲に限定されない。ここで、ディスク16aの直径はプラズモンの定在波を生じるように、その共鳴波長に対して半分程度以下のオーダーになり、この波長で強い電磁波吸収が起こる。従って、所望の吸収波長からディスク16aの所要の直径のおおよその値を予想することができる。導電体ディスク16aの下面と導電体面12aとの間隔は、ディスク16aの厚さと同程度以上の値とディスク16aの直径の10分の1以上の値とのどちらか大きい方とするのが好ましい。また、当該間隔は、ディスクの密度が極端に小さくならず、同時にディスク同士の電磁気的相互作用があまり大きくならない距離とすることが好ましい。具体的には、ディスク16aの直径以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上ディスク16aの直径以下であるが、これに限定されない。
【0022】
また、
図5(b)、
図6の電子顕微鏡写真からわかるように、複数の導電体ディスク16aは格子点状(例えば、後述する単分散球体を稠密に充填した場合にできる稠密六方格子の格子点)に完全に規則的に配置する必要はない。むしろ、配置のランダム性、つまり格子点上配置からの多少のずれがあった方が好都合な面が多い。この場合、規則的な配列に起因する吸収波長特性の余分なピークを抑制できる(
図8A中のシミュレーション結果のグラフと実測値のグラフの波長4μm前後及び5.9μm前後の形状を比較されたい。
図8Aでは、導電体ディスク16aが稠密六方格子の格子点上に配列された電磁波吸収及び輻射材料に関するシミュレーション結果の方が、導電体ディスク16aが当該格子点上にからずれて配列された電磁波吸収及び輻射材料の実測値よりも、波長4μm前後及び5.9μm前後で大きなディップを示す)。なお、複数の導電体ディスク16aは、隣り合うディスクの中心間距離(周期)が、好ましくはディスク16aの直径の2倍程度〜1.1倍程度、より好ましくはディスク16aの直径の1.5倍程度〜1.1倍程度となるように配置され、全表面積に対するディスクの占有率が0.5〜0.8程度になるように配置されるが、これに限定されない。
【0023】
また、第一金属層12及び導電体ディスク16aの材料(原料)としては、通常のプラズモンを利用したデバイスで良く見られるようなAu等の貴金属に限定されるものではなく、軽金属(Al、Ti等)、その他の多様な卑金属(Fe、Cu等)、それらの合金、あるいはその他の導電性化合物(TiC、TaC、RuO等の導電性を有する金属炭化物、酸化物、窒化物、ホウ化物等)を使用できる。また、Mo、W、Nb、Ta,Re,MoSi
2、TiN、ZrN、HfN、TiC、TaC、LaB
6、AlB
2等の高耐熱材料も使用できる。さらに、第一金属層12と第二金属ディスク層16とは同じ導電性材料を使用してもよく、あるいは別の材料を使用してもよい。
【0024】
また、第一、第二誘電体層14、18も特に材料(原料)を限定するものではないが、例えばSiO
2、Al
2O
3等の酸化物絶縁体、Si
3N
4などの窒化物やBNなどのホウ化物の絶縁体、MgF
2、CaF
2等の金属ハロゲン化物絶縁体、絶縁性ポリマー等を使用することができる。これらの誘電体層14、18の材料も、必要とされる性能や製造プロセスの都合等に従って、それぞれ互いに独立に使用する材料を選択することができる。
【0025】
本実施形態に係る積層型2次元構造は、
図1に示すような金属層(導電体層)12の上に金属層12から離間させて導電体ディスク16aを配列した構造に限定されるものではなく、導電体ディスク16aの配列と相補的な形状、すなわち
図2に示すような複数の孔26aを配列した導電体層(孔付き導電体層)26を導電体ディスク16aの配列の代わりに使用してもよい。本願では、
図1に示すような導電体ディスクの配列を設けた構造を「ディスクアレイ構造」と、また
図2に示すような孔を配列した金属層を設けた構造を「ホールアレイ構造」と呼ぶ。
【0026】
図2に示すホールアレイ構造は、第一誘電体層14上に、複数の導電体ディスクではなく、複数の孔26aが配列された導電体層26が形成されている点を除いて、
図1のディスクアレイ構造と同様の構成を備える。ここで、ディスクアレイ構造について先に説明したように、「金属層」のように材料(原料)として「金属」と表記してあった場合、金属以外の導電体で構成してももちろんよい。
【0027】
導電体面12aを提供するための導電体層12の厚さは10nm〜1mm程度で良い。好ましくは、50〜200nmであるが、これに限定されない。また、孔26aを配列した導電体層(第二金属層)26の厚さは10nm〜10μm程度で良い。好ましくは、50〜200nmであるが、これに限定されない。なお、複数の孔26aは、導電体層26を貫通するものである。ここで、ディスクアレイ構造の場合と同様に、孔26aの直径は発生するプラズモン共鳴の共鳴波長の半分程度以下のオーダーになり、この波長で強い電磁波吸収が起こる。従って、ホールアレイ構造の場合も、所望の吸収波長から孔26aの所要の直径のおおよその値を求めることができる。更に、導電体面12aと孔26aを配列した導電体層26とを離間して配置するために、導電体面12a上に誘電体層(第一誘電体層)14を形成し、その上に孔26aを配列した導電体層26を設けることができる。更に、
図1A、1Bのディスクアレイ構造と同様、孔26aを配列した導電体層26の上に、保護用の第二誘電体層(図示せず)を形成してもよい。第二誘電体層の厚さは1nm〜1μm程度で良い。あるいは、保護等が不要である場合や、このようにして作製した電磁波吸収及び輻射材料を更に他の部材等と組み合わせて他の製品を作製する際に孔26aを配列した導電体層26の保護のための処置も同時に行われる等の場合には、第二誘電体層を設けなくてもよい。
【0028】
これらの第一、第二誘電体層も特に材料(原料)を限定するものではないが、例えばディスクアレイ構造の場合と同じく、SiO
2、Al
2O
3等の酸化物絶縁体、Si
3N
4などの窒化物やBNなどのホウ化物の絶縁体、MgF
2、CaF
2等の金属ハロゲン化物絶縁体、絶縁性ポリマー等を使用することができる。これら誘電体層の材料も、必要とされる性能や製造プロセスの都合等に従って、それぞれ互いに独立に使用する材料を選択することができる。
【0029】
また、導電体面12aを与える導電体層12及び孔26aを配列した導電体層26の材料(原料)についても、ディスクアレイ構造と同様に、通常のプラズモンを利用したデバイスで良く見られるようなAu等の貴金属に限定されず、軽金属(Al、Ti等)、その他の多様な卑金属(Fe、Cu等)、それらの合金、あるいはその他の導電性化合物(TiC、TaC、RuO等の導電性を有する金属炭化物、酸化物、窒化物、ホウ化物等)を使用できる。また、Mo、W、Nb、Ta,Re,MoSi
2、TiN、ZrN、HfN、TiC、TaC、LaB
6、AlB
2等の高耐熱材料も使用できる。さらに、これら両導電体層は同じ導電性材料を使用してもよく、あるいは別の材料を使用してもよい。
【0030】
また、孔26aを円形とすることで、入射電磁波の偏光方向に影響されない電磁波吸収特性が実現される。更に、孔26aを互いに同じサイズとすることで、鋭い波長選択性が得られる。孔26aのサイズ(直径)は0.01μm〜100μmの範囲とするのが好ましく、0.5〜20μmとすることがより好ましいが、これに限定されない。孔26aを配列した導電体層26の下面と導電体面12aとの間隔は、この導電体層26の厚さと同程度以上の値と孔26bの直径の10分の1以上の値とのどちらか大きい方とするのが好ましい。また、当該間隔は1μm以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1μm以下であるが、これに限定されない。
【0031】
このようなホールアレイ構造を有する電磁波吸収及び輻射材料においては、短い波長の共鳴モードはホール(孔26a)の周期(つまり、周期的に配列された孔26aの間隔)及び誘電体層14の厚さに、長い波長の共鳴モードは孔26aのサイズに主に依存する傾向を持つ。これらの構造を適切に調整することで、目的に応じた共鳴周波数及びモードの個数を実現することが可能となる。なお、ホールアレイ構造では、ディスクアレイ構造の場合に複数の導電体ディスク16aで構成されていた要素を一つの導電体層26で構成できる。従って、この部分(第二金属層16または26)に電気的接続を取る必要がある場合には、その実現が容易であるという利点がある。なお、複数の孔26aは、隣り合う孔の中心間距離が、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは1.0〜15.0μmとなるように配置され、全表面積に対する孔の占有率が0.3〜0.7程度になるように配置されるが、これに限定されない。
【0032】
また、ディスクアレイ構造の場合のように、孔26aの配置は必ずしも格子点状(例えば稠密六方格子の格子点)に完全に規則的に配置せず、配置のランダム性、つまり格子点上配置からの多少のずれを設けてもよい。ただし、ディスクアレイ構造とは違って、ホールアレイ構造の場合は、この不規則性の影響は長波長及び短波長の二つのモードの両方に現れる。つまり、ホールアレイ構造で孔26aの配置の周期性を崩すと、スペクトル全体に渡ってディップあるいはピークの形状がブロードになり、またディップの深さ/ピークの高さも減少する。ディスクアレイ構造では、長波長モード側にはほとんどこの不規則性の影響が現れず、短波長モード側で上述したブロード化及び深さ/高さの減少が起こるだけである。
【0033】
本実施形態に係る電磁波吸収及び輻射材料のうちのディスクアレイ構造を有するものは、以下のようにして作製することができる。
【0034】
第1の方法では、水溶液表面に浮かべた単層ポリスチレン球(
図3の符号B)を金属−誘電体−金属構造に転写する方法である、コロイダルリソグラフィー(非特許文献6)を用いる。これにより、ポリスチレン球をマスクとして用いて、大面積デバイス向けのディスクアレイ構造を簡便・迅速且つ安価に製造可能である。
【0035】
図3を参照して具体的に説明すれば、先ず、基板等の下地10の上に第一金属層(第一の導電体)12をスパッタ法、真空蒸着法、パルスレーザ堆積法等の物理堆積法あるいはスピンコートとゾルゲル法とを組み合わせた湿式法などを用いて成膜し、その上に第一誘電体層14、第二金属層(第二金属ディスク層、第二の導電体の層)16の順に成膜を行う。この上に、水溶液表面に浮かべた単層でサイズの揃ったPS球(ポリスチレン球)Bを転写する。これにより、第二金属層16上に、二次元的なPS球配列、つまり、PS球B同士が積み重ならないように単層配列されたPS球Bがそのまま転写されたPS球配列が得られる。その後、反応性イオンエッチング(反応性エッチング)によりPS球Bのサイズ(直径)を調節する(一様に縮小する)。その後、PS球Bをマスクとして第二金属層16を反応性エッチングして、PS球Bの直下にそれぞれサイズの揃った導電性ディスク16aを残す。PS球Bを除去することで電磁波吸収及び輻射材料が得られる。必要に応じてその上に第二誘電体層18を形成してもよい。
【0036】
図5(a)は、上述の湿式コロイダルリソグラフィーにおいて、第二金属層16上に2次元配列(単層配列)した、直径4.43μmのポリスチレン球Bの走査電子顕微鏡像である。また、
図5(b)は、
図5(a)のポリスチレン球Bをマスクとして用いて形成されたAlからなる導電体ディスク(Alディスク)16aの走査電子顕微鏡像である。さらに、
図6(a)〜(c)は、直径4.42μmのポリスチレン球Bをマスクとして用いて、上述の湿式コロイダルリソグラフィーにより形成された導電体ディスク16aの走査顕微鏡像である。導電体ディスク16aは、(a)ではAl、(b)及び(c)ではTiNからなる。また、
図6(c)は、反応性イオンエッチングにおけるポリスチレン球Bの直径の縮小量を
図6(b)よりも大きくした導電体ディスクを示している。
図5、6に示されるように、導電体ディスク16aの直径はマスクとなるポリスチレン球Bの直径に依存するので、ポリスチレン球Bの直径を縮小するための反応性イオンエッチング(反応性エッチング)は、所望の導電体ディスク16aの直径に応じてその条件を調整しても良い。
【0037】
ホールアレイ構造の場合も本質的に上に説明したものと同じ方法で作製することができる。この場合の作製手順を以下により具体的に説明する。
【0038】
まず、スパッタ法により、第一金属層12及び誘電体層(第一誘電体層)14を順に積層する。ここで、誘電体層14の上に、ディスクアレイ構造の作製の場合と同様に、水溶液表面に浮かべた単層でサイズの揃ったPS球Bを転写する手法を用いて、PS球Bの二次元配列膜を形成する。ディスクアレイ構造の場合と同様に、反応性イオンエッチングによってPS球Bのサイズを調節する。その後、電子線蒸着法により、第二金属層26を成膜する。このとき、第二金属層26を成膜する手法として、スパッタ法よりも電子線蒸着法の方が好ましい。なぜならば、スパッタ法による成膜では、マスクの背後へ原子が回り込んでしまう性質が強いため、PS球マスクの効果が薄れてしまうからである。第二金属層26を形成したのち、有機溶媒中で超音波洗浄することにより、PS球Bを除去することができる。このようにして、ディスクアレイ構造の場合と同様に、大面積のホールアレイ構造を有する電磁波吸収及び輻射材料を得ることができる。もちろん、ここにおける「第一金属層12」、「第二金属層26」についても、ディスクアレイ構造の場合について先に説明したものと全く同じ材料(原料)を使用して作製できるため、これらもより一般的には「第一導電層」、「第二導電層」と呼ぶことができることに注意されたい。
【0039】
ディスクアレイ構造、ホールアレイ構造の何れの場合も、上述した方法により、電子線リソグラフィー、集束イオンビーム加工等の方法を用いずに、迅速且つ簡便にマスクを製作することができる。PS球Bは真球度が高く、かつサイズ(直径)の分散の小さいものが市販されており、これを用いることにより、真円に近くサイズ(直径)の揃った導電体ディスクを第一誘電体層14上に配列できる。あるいは、そのような孔26aが配列された導電体層26を第一誘電体層14上に設けることができる。従って、この方法によれば、大面積で狭帯域の電磁波吸収及び輻射材料を容易に製作することができる。
【0040】
ここではマスク材料としてPS球を使用したが、同様な加工が可能である材料であればPS以外であっても当然使用できる。
【0041】
あるいは、小面積であれば、ディスクアレイ構造、ホールアレイ構造の何れの場合でも、真空環境と時間がかかる電子ビームリソグラフィーや集束イオンビーム加工を用いることなく、フォトリソグラフィーを用いてマスクを製作することで、電磁波吸収及び輻射材料を作製することが可能である。ディスクアレイ構造の場合の作製プロセスの例を
図4の左図に示す。もちろん、ホールアレイ構造も同様にして作製可能である。また、
図4の左図のようなエッチングではなく、
図4の右図のようなリフトオフプロセスを使用して導電体ディスク16a配列や孔26aの配列された導電体層26を形成することもできる。これらの方法で使用したプロセス自体は半導体製造技術分野で良く知られている事項であるので、詳細な説明は省略する。
【0042】
本実施形態に係る電磁波吸収及び輻射材料によれば、例えばアルミニウムなどの軽金属やその合金であってよい導電体を構成要素として持ち、自在に狭帯域な光吸収・輻射特性を付与させることのできる2次元積層構造が提供される。ここで導電体は貴金属、レアメタル、重金属に限定されるものではなく、軽金属やその合金等、あるいは導電性金属窒化物や金属ホウ化物を使用できる。
【0043】
また本実施形態に係る電磁波吸収及び輻射材料は、電子線リソグラフィーや集束イオンビーム加工などの真空を用いる高価かつ時間のかかる加工プロセスを経ずに、簡便且つ迅速に作製できる。具体的には、安価なコロイド化学的な自己組織化法や真空蒸着法を利用することにより、本実施形態の電磁波吸収及び輻射材料を作製することができる。また、このようにして得られた本実施形態の電磁波吸収及び輻射材料は高効率な電磁波吸収特性を発揮する。本実施形態では、従来の方法に比べて短時間、安価に高精度なディスクアレイ構造あるいはホールアレイ構造を製作できるため、cmスケール、数十cmスケール以上の大きな面積でも、狭帯域で高効率な吸収材料(電磁波吸収及び輻射材料)の製作が可能となる。本実施形態の材料は、特定波長の赤外光や可視光のみを吸収するという狭帯域特性を有することを応用し、高感度な波長選択型の検出器、それを応用した多波長計測型の温度センサーや小型分光器、ハイパースペクトルセンサーなどへの応用が可能となる。また、特定の波長の電磁波を選択的に輻射するパネル型電磁波輻射材料等への応用が可能となる。また、アルミニウム等や軽金属化合物を用いることができるため、軽量な吸収輻射材料(電磁波吸収及び輻射材料)を実現することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、高温(800℃程度以上)で動作可能な高耐熱な電磁波輻射材料を実現することが可能となる。電磁波輻射材料を高温動作させることにより、輻射強度を増大させることができ、かつ、プランクの輻射公式からわかるように、より短い波長の近赤外光を効率的に輻射できるようになる。このような、高温でも動作可能な電磁波輻射材料を実現するためには、具体的には例えばモリブデンや金属窒化物、金属炭化物などの高融点金属材料や、アルミナ、窒化珪素などの誘電体を用いればよい。これにより、高耐熱性及び高輻射強度の電磁波輻射材料を得ることができる。もちろん、用途によっては高温の環境下で電磁波吸収を行う場合もあり得るが、そのような用途で使用される電磁波吸収材料も同様に実現することができる。なお、高温で使用する際には熱膨張・収縮を繰り返すことになる。そのため、そのような電磁波吸収及び輻射材料、あるいはそれを使用する装置には、機械的強度を保つことができる金属―誘電体接合となる材料の組み合わせを使用してもよく、その他、高温下でも熱変形等の影響の出にくい任意の形状・構造を採用することもできる。
【0045】
ここで、輻射される電磁波は黒体輻射やそれに類する高温物体から輻射される電磁波に比べてそのスペクトルの帯域が狭く、また温度を変化させても中心周波数及びスペクトルの形状がほとんど変化しないという特徴を有する。従って、本実施形態の電磁波吸収及び輻射材料を電磁波輻射材料として使用した場合、電磁波輻射材料の温度を変化させるという単純な操作により、輻射スペクトルをほとんど変化させることなく、輻射強度だけを広い範囲で変化させることができる。
【実施例】
【0046】
<第1の実施例>
図3を参照して説明したところの、PS球Bによる湿式マスクを用いた製造方法でディスクアレイ構造の電磁波吸収及び輻射材料を作製した。この電磁波吸収及び輻射材料に関する計測結果及びシミュレーション結果を以下に示す。
図7(a)では、第一及び第二金属層12、16の材料(原料)として安価な軽金属のアルミニウムを用いたが、ほぼ100%に近い吸収率を実現できた。
【0047】
図7、
図8A、
図8Bは、上記の電磁波吸収及び輻射材料の第二金属層16の表面に光を当てた時に光の透過率等を測った、またはシミュレーションした結果を示す。
【0048】
図7は、電磁波吸収及び輻射材料の第二金属層16の表面に光を当てた時の、入射光強度に対する反射光、透過光及び吸収光の相対強度と入射光の波長との関係を示すシミュレーション結果である。シミュレーションには、第一金属層12、第一誘電体層14、及び第二金属層16の厚さがそれぞれ100nm、200nm、100nmである電磁波吸収及び輻射材料を用いた。また、ディスクの直径を3μm、周期(ディスクの中心間距離)を4.4μmとした。第一、第二金属層12、16を
図7(a)ではAl、(b)ではAu、(c)ではTiNとし、いずれも第一誘電体層14をAl2O3としてシミュレーションを行った。また、シミュレーションは、RCWA法という計算手法で行った。第一金属層12の厚さは大きいため、
図7に示すように、透過光の相対強度はゼロとなった。また、導電体層12、16の材料(原料)を変えても、各スペクトルは同様の特性を示した。
【0049】
[反射率]=1−[透過率]−[吸収率]
という一般に成立する関係式に透過率=0を代入すると、
[反射率]=1−[吸収率]
となり、実際、後述する電磁シミュレーションの結果は、反射率と吸収率が上下反転した形状になっている。キルヒホッフの法則によると、吸収率と輻射率は等しいため、吸収率が高いと言うことは輻射率も高いと言うことである。このため100%近い吸収率を持つと言うことは1.0に非常に近い輻射率を持つ非常に高効率な電磁波輻射材料に成りうることを示している。このため、構造を制御することで所望の波長の電磁波を高効率に輻射できるパネル型の材料が可能となる。
【0050】
図7のように、電磁シミュレーションでは、AlとAuの組み合わせでも同様な吸収特性が生じることが示された(
図7(b))。また、導電性セラミクス材料であるTiNを用いてもそん色ない性能が実現できると言うシミュレーション結果がえられた(
図7(c))。これは適切な材料(原料)を用いることで、金や銀を用いなくとも十分高性能な電磁波吸収の性能あるいは、電磁波輻射特性を持たせた電磁波吸収及び輻射材料を作成することが可能であることを示している。TiNは機械的強度が高く、軽量であり、また、高温でも使用できるため、例えば熱線を高効率に吸収しそのエネルギーを狭帯域な近赤外や中赤外波長の電磁波として高効率に輻射できる電磁波輻射材料として使用できる。
【0051】
[電磁シミュレーション]
FDTD法(Finite-difference time-domain method; FDTD method)による実空間電磁場分布シミュレーションとRCWA法(Rigorous coupled-wave analysis(RCWA))を用いた電磁シミュレーションの結果を
図8Aと
図8Bに示す。また、
図8Aには、反射率の実測値と300℃での輻射強度の測定結果も示す。シミュレーション及び測定には、第一金属層12、第一誘電体層14、及び第二金属層16の厚さがそれぞれ100nm、200nm、100nmである電磁波吸収及び輻射材料を用いた。また、ディスクの直径を2.3μm、周期(ディスクの中心間距離)を4.4μmとし、第一、第二導電体層12、16をアルミニウム、第一誘電体層14をアルミナで形成した。また、シミュレーションはRCWA法で行った。反射率の測定は赤外分光法で行った。輻射強度の測定は後述する
図10の計測装置を用いた。
図8Aに示すように、反射スペクトルの計算結果及び実測値は、7.3μm付近の波長に鋭い反射の減少を示し、波長7.3μmでほぼゼロとなった。この電磁波吸収及び輻射材料が、
図7に示すように電磁波を透過させないことを考慮すると、これは、この波長ではほぼ100%の電磁波の吸収が生じていることを示している(吸収=1−反射)。
【0052】
図8Bは、波長7.3μmにおける電磁場の分布を示す。この電磁場の分布を見ることにより、この様な鋭く、しかも強い吸収特性を持つ理由が分かる。すなわち、一般に、電磁場が金属の表面近傍から内部にしみこむ場合、金属材料の内部で電子が振動することによりエネルギーの損失が生じ、共鳴周波数が広がりスペクトルがブロードになる。一方、
図8Bの波長7.3μmにおける共振の振動モードを見ると、第一金属層12と第二金属層16での電子の動きが反対である(
図8Bの第一、第二金属層12、16上の矢印)。このため、発生した磁場は金属内よりはむしろ第一誘電体層14の中に強く閉じ込められるモードとなっている。このとき、第一金属層12と第二金属層16に生じる互いに逆向きの電流によって生じる実効的なループ電流により、第二電極層16直下の第一誘電体層14に強い磁場が生じている。なお、
図8Bの系に入力される電磁場は交流であるから、これによって引き起こされる第一誘電体層14中の強い磁場も当然交流磁場である。このことは、電磁場のエネルギーが金属表面から離れて誘電体内に集中しており、このために金属内での電子振動によるエネルギー損失が抑えられ、スペクトル幅が狭くなるのだと考えられる。また、
図8Bの電場の実空間分布を見ると、ディスク構造のエッジに集中して大きな電場を生じていることが分かる。この電場増強効果を利用することで、表面増強赤外吸収や表面増強ラマン散乱などの下地として、有用であることが予測できる。ここで一般的な説明を行えば、強い電磁場吸収が起きるモードは、上の金属層と下の金属層に反対方向の(プラズモン振動に伴う電荷移動により生じる)電気分極が生じる場合である。ここで上下の金属層の一方(
図8Bに示した例で言えば第二金属層)は、ディスクアレイ構造の場合には、
図8Bにおける磁場の空間分布に関する説明から直ちに理解できるように、導電体ディスクである。これに対して、ホールアレイ構造の場合には、上下の金属層の一方は、隣接する孔間に存在する導体であることもまた明らかであろう。
【0053】
図9は、導電体ディスク16aの直径による透過率及び垂直の輻射の違いを測定及びシミュレーションした結果である。第一金属層12、第一誘電体層14、及び第二金属層16の厚さがそれぞれ100nm、200nm、100nmである4つの電磁波吸収及び輻射材料S3a、S3b、S3c、S3dを用いた。周期(ディスクの中心間距離)を4.4μmとし、第一、第二導電体層12、16をAl、第一誘電体層14をアルミナで形成した。また、4つの電磁波吸収及び輻射材料S3a、S3b、S3c、S3dの導電体ディスク16aの直径を、それぞれ、6.73μm(S3a)、7.46μm(S3b)、8.15μm(S3c)、8.65μm(S3d)とした。
図9上図及び中図は、それぞれ、入射光の波長に対する第二金属層16の透過率(透過率のスペクトル)のシミュレーション結果及び測定結果である。
図9下図は、垂直の輻射とその波長との関係(輻射スペクトル)を測定した結果である。シミュレーションはRCWA法で行った。透過率は、「1−反射率」として求めた。垂直の輻射はFTIR法で測定した。
図9から、透過率の最小ピーク及び垂直の輻射の最大ピークを示す波長が、導電体ディスク16aの直径により変わることが分かる。
【0054】
<第2の実施例>
高い温度まで機能できるように、第一金属層12と第二金属層16共に耐熱性の高い材料(原料)であるMoを用い、また誘電体層14にアルミナを用いたディスクアレイ構造の電磁波吸収及び輻射材料を作製し、これを試料としてその特性を測定した。測定対象の電磁波吸収及び輻射材料の下地10はSiを使用し、Mo第一金属層12、アルミナ誘電体層14、及びMo第二金属層16の厚さはそれぞれ1μm、150nm、100nmであった。ディスク16aの直径は1.7μmであった。また、ここでの輻射測定に当たっては、
図10に構成を概念的に示す計測装置を使用した。なお、
図10の計測装置構成で真空窓が二つ用意されているのは、窓毎に種類の違う放射温度計を設置しておくことで、使用する放射温度計の切替を試料(赤外発光体)の角度の変更だけで実現できるようにするためである。実験は圧力10
−7Torr台の真空環境で行い、ZnSe真空窓(可視光から赤外光までの広い範囲を透過)を通してパワーメーター(0.19〜25μmの計測が可能)で可視波長・赤外光のパワーを計測し、また石英真空窓(4μmより短い波長の可視光・赤外光を透過)を通してパワーメーター(0.19〜25μmの計測が可能)を用いてパワーを計測した。測定はあらかじめ、窓の透過率スペクトルを測定し、それを用いて窓での透過率の減少を考慮した輻射パワーの補正を施した。
【0055】
図11の上側にこの実施例の室温における反射率のスペクトル(実線:理論計算結果、点線:実測値)のグラフを、下側に昇温状態での輻射強度スペクトルの実測値のグラフを示す。
【0056】
上側のグラフを見るに、波長6μm付近における計算による反射率は、シミュレーションでは0%に近い値をとり、実験(実測値)でも10%以下の値を示した。この試料では透過が無いため、この実測値はこの波長における吸収が90%以上あることを意味している。
【0057】
この試料の第一金属層12のMoにコンタクトを取り、10
−7Torr台の真空中で加熱を行った結果が下側のスペクトルである。温度を400℃から800℃まで100℃ずつ増加させて、赤外輻射強度を計測した。輻射スペクトルは、予想通り反射率のスペクトルのほぼ逆のスペクトル形状となり、6μmに大きなピークを持つことが確認された。2.8μmの高エネルギー側にも小さな輻射ピークが観察されたが、その強度は小さかった。従って、加熱することでこの電磁波吸収及び輻射材料は、6μm近傍に中心をもつとともに、温度を変化させることでスペクトルの形状をほぼ一定に維持したままで輻射強度だけを覆波に変化させることができる。そのため、この電磁波吸収及び輻射材料を単色の赤外輻射光源として使用が可能である。計測された輻射は、800℃において試料から150mmの距離で0.25mW/mm2であった。この輻射の角度分布は、表面法線方向から±70°程度に亘ってほぼ均一に広がっており、広角照射が必要とされる装置の光源として使用が可能である。たとえば、夜間に赤外光を用い撮影を行う暗視カメラなどに装備し、広範囲からの反射光を計測するなどの使用法が可能である。
【0058】
また、本実施例の電磁波吸収及び輻射材料は、レンズなどで集光することで2〜3W程度の赤外光源として使用することも可能である。更には、このように大きなエネルギーを取り出すことができること、また、上述したように本実施形態の電磁波吸収及び輻射材料は大面積化が容易であるため輻射量を更に増加させることも容易であること、さらに、発生する赤外線のスペクトルが通常の発熱体から輻射される赤外線と比較して峡帯域であり、その中心周波数やスペクトルの形状は温度にほとんど影響されないことなどから、例えば特定の対象を効率よく加熱でき、しかも輻射量を広い範囲で静的・動的に調節可能な(つまり、輻射量を最初に特定の値に設定したまま使用し続けることも、また動作中に輻射量を変化させることも可能な)赤外線源としても有用である。なお、このような赤外線源としては、本実施形態の電磁波吸収及び輻射材料を単独で使用してもよいし、あるいは発熱体、その他各種の補助的な構成要素(発熱体、制御回路、センサ、電源、筐体等)と組み合わせた、多様な構成を取り得る赤外線発生装置、より一般的には電磁波発生装置、として構成してもよい。また、本実施例はディスクアレイ構造を取っているが、当然のこととして、本実施例で説明した赤外線/電磁波発生装置としての特徴はホールアレイ構造を採用した場合もそのまま当てはまる。
【0059】
<第3の実施例>
図2に構造を概念的に示すホールアレイ構造の電磁波吸収及び輻射材料を作製した。具体的には、下地10としてのシリコンウエハ表面に、第一導電体層12としてMoを0.2μm、更に第一誘電体層14としてアルミナを0.47μm厚で成膜した。その上に、既に説明したように、直径3μmのポリスチレン(PS)球Bの単層を転写し、反応性エッチングによってこれらPS球のサイズを一様に縮小して直径1.1μm、1.2μm及び1.3μmとすることでマスクを形成した。このマスクの上からMoを0.1μm厚で製膜することで、それぞれ直径1.1μm、1.2μm及び1.3μmの複数の孔26aを有する3種類の孔付き導電体層26を形成し、
図2に概念的に示したホールアレイ構造を作製した。このようにして作製されたホールアレイ構造を有する電磁波吸収及び輻射材料の一を、その孔26aのあいたMo層26側から走査電子顕微鏡で観察した結果を
図12A及び
図12Bに示す。
図12Bは
図12Aと同じ表面を更に高倍率で観察した結果である。
【0060】
図13に、このホールアレイ構造を有する電磁波吸収及び輻射材料の反射スペクトルを計測した結果を示す。ホール径を1.1μm、1.2μm及び1.3μmの三通りに変化させることで、長波長側の波長3μm近傍の反射率のディップの波長が変化することがわかる。また、図示はしないが、アルミナ膜の厚さを変化させることで、
図13の波長2.2μmの反射率ディップの位置(波長)を変化させることができる。この性質を用いて、2つの吸収波長を変化させて波長選択吸収素子や、波長選択赤外光源を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
詳細に説明されている通り、本発明の電磁波吸収及び輻射材料(光吸収輻射材料)は、以下のものを含む広範な種類のデバイスにおいて使用することができるが、以下のものに限定されない。
(1)高温環境下で熱線を吸収し、そのエネルギーを近赤外光へと変換することのできる、熱光起電力用の熱エネルギー吸収・近赤外光輻射材料。
(2)赤外線検出素子に搭載され、その素子の高感度化と同時に、波長選択性を持たせることが可能であり、特定の波長を検出する赤外検出器。また、この赤外線検出素子を多数波長を変えて並べた、回折格子や干渉計を必要としない小型な高感度分光器。
(3)中赤外から近赤外の特定波長の電磁波を放出できるパネルヒーター。
(4)紫外‐中赤外の特定の波長の電磁波を輻射する無偏光タイプの狭帯域光源。
(5)紫外‐中赤外の特定の波長の電磁波を吸収する無偏光タイプの検出器。
(6)上記(4)を光源とし(5)を検出器とする、或いはその一方を用いるリモコン装置。
(7)表面増強赤外吸収や表面増強ラマン散乱などの高感度分光の為の下地。
(8)高価なLEDやレーザーの代わりとして使用する安価な赤外光源。
(9)小型赤外カメラのための広角な赤外光源。
(10)特定の分子の振動や吸収波長に合わせて輻射波長が設計された近赤外および中赤外輻射光源。
(11)上記(2)の波長選択赤外検出素子と(10)の赤外光源とを組み合わせた装置。光源と波長選択赤外検出素子との間に、計測する対象物を配置し、その対象物の状態や特定の物質の有無を計測する装置。
(12)対象物の特性に合わせた波長の赤外線を輻射することで効率よく加熱を行う赤外線源。