(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0025】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の導電性基材について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の導電性基材の構成例を模式的に示す断面図である。
図1は、模式図のため、各部の形状は簡略化され、寸法は誇張されている(以下の図面も同様)。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の導電性基材100は、基板部10と、導電性合金膜3(積層膜)とを備える。
【0027】
基板部10は、透明基板1と、透明基板1の一方の表面である第1面1a上に形成された樹脂膜2とを備える。
【0028】
透明基板1は、導電性基材100の用途に応じた光透過性を有する基板が用いられる。例えば、導電性基材100がディスプレイにおける光透過部に配置される場合、透明基板1の透過率は、可視光に対して80%以上であってもよい。透明基板1の透過率は、可視光に対して95%以上であるとより好ましい。
透明基板1の厚さは、導電性基材100の用途における必要強度に応じて適宜設定されればよい。
透明基板1の材質としては、例えば、ガラス等の無機透明材料、あるいは、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマー等の透明樹脂材料が使用可能である。
透明基板1は、1種類の材料で形成されてもよいし、上記に例示された無機透明材料および透明樹脂材料のうちから選ばれた2種類以上の材料が組み合わされて形成されてもよい。
特に、導電性基材100の製造工程あるいは導電性基材100の使用時に加熱される用途では、透明基板1として、透明樹脂材料に比べて耐熱性が高いガラス基板が用いられることがより好ましい。
本実施形態では、一例として、透明基板1がガラス基板の場合で説明する。
【0029】
樹脂膜2は、透明基板1の第1面1aに適宜の機能を追加するために用いられる。
本実施形態では、一例として、樹脂膜2が、後述する導電性合金膜3が、第1面1aの反対側の第2面1bから見えないようにする遮蔽層の場合の例で説明する。
導電性合金膜3を覆って見えないようにするため、樹脂膜2は、透明基板1との密着性が良好な着色樹脂が用いられる。
例えば、樹脂膜2は、黒色顔料を分散させたアクリル系樹脂によって形成されてもよい。黒色顔料の例としては、例えば、カーボン粒子が用いられてもよい。導電性基材100がディスプレイに用いられる場合、樹脂膜2はブラックマトリクスを構成していてもよい。
樹脂膜2は、第1面1aの全面を覆っていてもよいが、本実施形態では、後述する導電性合金膜3が形成される範囲のみに形成されている。
【0030】
樹脂膜2のパターンは、必要な導電性合金膜3のパターンに応じた適宜のパターンが可能である。
本実施形態では、樹脂膜2は、一例として、図示横方向に適宜の間があけられるとともに、紙面奥行き方向にも適宜の間があけられた、格子状にパターニングされている。
樹脂膜2の表面2aは、樹脂膜2を除く透明基板1の第1面1aとともに、基板部10の一方の表面を構成している。
なお、
図1は、断面の一部を拡大して表示しているため、4列分の樹脂膜2のみが図示されているが、樹脂膜2のパターンは、4列のみには限定されない。
【0031】
導電性合金膜3は、基板部10の樹脂膜2の表面2aに積層された積層膜である。導電性合金膜3は、導電性基材100に導電性を付与するために設けられている。
導電性合金膜3の平面視形状は、導電性基材100の用途に応じて適宜の形状とすることができる。本実施形態における導電性合金膜3は、例えば、静電容量式タッチパネルの電極として用いることができるように、図示横方向に樹脂膜2と同様の間をあけて、紙面奥行き方向に延びるストライプ状にパターニングされている。
【0032】
導電性合金膜3は、樹脂膜2の表面2aに積層されるため、樹脂膜2の樹脂材料との密着性が良好となる組成の材料で形成されている。
導電性合金膜3は、銅(Cu)を主成分とし、ニッケル(Ni)と金属元素Aと含む合金で形成されている。
金属元素Aの種類は、銅膜中に含有された状態で673Kに加熱したときの拡散係数が5.0×10
−20cm
2/s以上5.0×10
−19cm
2/s以下であり、かつ293Kにおける酸化物形成エンタルピーが−2500kJ/mol以上−900kJ/mol以下であれば、特に限定されない。ここで「金属元素」とは、いわゆる「半金属」を含む広義の金属元素を意味する。
以下、本明細書では、簡単のため、単に「拡散係数」と記載された場合でも、特に断らない限りは、銅膜中に含有された状態で673Kに加熱したときの値を意味する。同様に「酸化物形成エンタルピー」は、293Kにおける値を意味する。
導電性合金膜3に含まれる金属元素Aは、1種類でもよいし、上記条件を満足する2種類以上の金属元素であってもよい。
【0033】
金属元素Aの例としては、例えば、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)が例示される。
アルミニウムの拡散係数は、6.78×10
−20cm
2/s、ケイ素の拡散係数は、3.30×10
−19cm
2/s、チタンの拡散係数は、4.24×10
−20cm
2/sである(LANDOLT−BORNSTEIN, NEW SERIES GROUP III,VOL.263,2,11,Springer Verlag, Berlin(1990)参照)。
【0034】
アルミニウムの温度293Kでの酸化物形成エンタルピーは、−1678.2kJ/mol、ケイ素の温度293Kでの酸化物形成エンタルピーは、−910.9kJ/mol、チタンの温度293Kでの酸化物形成エンタルピーは、−2457.2kJ/molである(subeteSmithells Metals Reference Book,Seventh Edition,8−25,Butterworth−Heinemann(1992)参照)。
【0035】
導電性合金膜3における組成は、導電性合金膜3における銅、ニッケル、および金属元素Aの各含有率を、それぞれα、β、γとするとき、以下の範囲をすべて満足する。
αの範囲は、95.4at%以上99.2at%以下である。βの範囲は、0.6at%以上2.2at%以下である。γの範囲は、0.2at%以上2.4at%以下である。
【0036】
導電性合金膜3における組成は、ITOの比抵抗よりも低い比抵抗が得られる組成としてもよい。ITOの比抵抗は986μΩ・cmである。
導電性合金膜3の組成は、比抵抗が2.0μΩ・cm以上15.0μΩ・cm以下になる組成とすることがより好ましい。このような比抵抗であると、例えば、導電性合金膜3を静電容量式タッチパネルの電極として用いる場合に、高速の応答性が得られる。さらに、静電容量式タッチパネルの電極に印加する電圧を低電圧化することができる。
【0037】
このような構成の導電性基材100は、例えば、透明基板1上に樹脂膜2が形成され、樹脂膜2がパターニングされた後、樹脂膜2の表面2a上に導電性合金膜3が積層されることによって製造される。
樹脂膜2は、透明基板1の第1面1aに、カーボン粒子が分散された液状のアクリル樹脂等の原料樹脂が塗布された後、原料樹脂の種類に応じて硬化されることによって形成されてもよい。
原料樹脂の塗布方法としては、例えば、スピンコート、スピンレスコート、あるいはディッピング法などが用いられてもよい。ただし、原料樹脂の塗布方法は、透明基板1上に均一な膜厚で塗布できる方法であればこれらの方法には限定されない。
樹脂膜2のパターニングは、例えば、フォトリソグラフィ法などが用いられてもよい。
【0038】
導電性合金膜3の形成方法としては、例えば、スパッタリング法によって、透明基板1の第1面1aおよび樹脂膜2の表面2aに一様に形成された後、樹脂膜2の表面2a上にのみ導電性合金膜3が残るようにパターニングする方法が挙げられる。パターニング方法としては、例えば、フォトリソグラフィ法などが挙げられる。
ただし、導電性合金膜3の成膜方法は、樹脂膜2上に均一な膜厚の成膜を行うことができれば、スパッタリング法には限定されない。例えば、導電性合金膜3は、CVD法、蒸着法、めっき法などで形成されてもよい。さらに成膜後のパターニング方法は、第1面1a上の導電性合金膜3を除去できれば、フォトリソグラフィ法には限定されない。
【0039】
次に、導電性基材100の作用について説明する。
導電性基材100では、導電性合金膜3によって導電性が得られる。
導電性合金膜3は銅を主成分とするため、導電性合金膜3の比抵抗は、例えばITOに比べて格段に低くなる。
導電性合金膜3は、ニッケルを含有する銅合金であるため、金属銅に比べて、耐腐食性が向上する。
しかし、銅膜あるいは銅ニッケル合金膜は、ガラスあるいは樹脂に対する密着性がITOに比べて劣るという問題がある。
そこで、本発明者らは、ガラスあるいは樹脂に対する密着性が良好であって、低い比抵抗を得るため、導電性合金膜3として、ガラスあるいは樹脂に対する密着性を向上できる金属元素成分を銅ニッケル合金に加えた3元系の合金を用いる研究を行った。本発明者らは、鋭意検討を行った結果、密着性を向上できる金属元素成分として、上述の金属元素Aが好適であることを見出した。金属元素Aが好適な理由は、必ずしも明らかではないが、以下のような理由が考えられる。
【0040】
金属元素Aは、銅膜中に含有された状態で673Kに加熱したときの拡散係数が5.0×10
−20cm
2/s以上5.0×10
−19cm
2/s以下であるため、銅を主成分とする導電性合金膜3中の一部の金属元素Aが、導電性合金膜3内で樹脂膜2との積層面に移動しやすい。
さらに、金属元素Aは、293Kにおける酸化物形成エンタルピーが−2500kJ/mol以上−900kJ/mol以下であるため、酸素との化学的親和性が高く、かつ結合力も大きい。このため、積層面に移動した金属元素Aは、基板部10の表面に豊富に含まれる酸素原子と強固な結合を形成しやすくなっていると考えられる。
このため、導電性合金膜3の積層面が、ガラス基板や樹脂などの酸素原子を豊富に含む材料で構成される場合に、特に、密着性が向上すると考えられる。
さらに、本発明者らは、密着性を良好にした上で、良好な導電性を得るためには、銅、ニッケル、金属元素Aの組成範囲が上述の範囲をα、β、γの範囲を満足する必要があることを見出し、本発明に到った。
【0041】
このように、本実施形態の導電性基材100によれば、銅、ニッケル、および金属元素Aが所定組成範囲だけ含まれる導電性合金膜3が、樹脂膜2に積層されるため、導電性合金膜3からなる導電部が低抵抗の導電性を有し、導電部と基板部との密着性が良好となる。
【0042】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態の導電性基材および導電性基材を含む配線付きカラーフィルタについて説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態の配線付きカラーフィルタおよび導電性基材の構成例を示す模式的な断面図である。
【0043】
図2に示すように、本実施形態の配線付きカラーフィルタ200は、上記第1の実施形態におけると同様の基板部10と、基板部10上に積層された積層膜12と、着色層11R、11G、11Bと、絶縁保護層6と、を備える。本実施形態の配線付きカラーフィルタ200において、基板部10および積層膜12は、導電性基材110を構成している。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0044】
積層膜12は、表面2aに積層されている。積層膜12は、表面2a側から、上記第1の実施形態におけると同様の導電性合金膜3と、金属膜4と、保護膜5とがこの順に積層されている。
【0045】
金属膜4は、良導体で構成される。金属膜4は、積層膜12としての比抵抗を低減するため、導電性合金膜3に積層されている。
金属膜4の材質は、積層膜12の導体部が導電性合金膜3のみの場合に比べて、積層膜12としての比抵抗を低減することができれば、特に限定されない。
例えば、金属膜4の材質は、銅、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム、ニッケル、マンガン(Mn)などの金属単体、または、これらの金属のうちから選ばれた2つ以上の金属を配合して形成された合金が用いられてもよい。
例えば、導電性合金膜3よりも比抵抗が低い銅合金膜は、積層膜12の比抵抗を低減でき、かつ安価であるため、金属膜4として好適である。さらに、銅膜は、導電性合金膜3よりも比抵抗が低く、かつ安価であるため、金属膜4としてより好ましい。
【0046】
保護膜5は、金属膜4と密着し、金属膜4を覆うように積層されている。
保護膜5は、金属膜4に密着して積層することによって、金属膜4を、例えば、機械的・物理的ストレス、化学的ストレス、および熱的ストレスのうち1種以上のストレスから保護する。
本実施形態では、保護膜5は、少なくとも、配線付きカラーフィルタ200の製造工程において、金属膜4の酸化を抑制する保護機能を備える。このため、保護膜5は、後述する着色層11R、11G、11Bを焼成する際の焼成温度に耐える耐熱性を備える材料で構成されている。保護膜5は、導体が用いられてもよいし、絶縁体が用いられてもよい。
本実施形態では、保護膜5は、金属膜4の酸化を抑制する効果の高いITOが用いられている。
【0047】
着色層11R、11G、11Bは、配線付きカラーフィルタ200においてカラーフィルタとして機能する。着色層11R、11G、11Bは、それぞれ赤色(R)、青色(G)、緑色(B)に着色された樹脂層である。例えば、本実施形態では、着色層11R、11G、11Bは、それぞれR、G、Bの顔料が分散されたアクリル系樹脂で構成される。
着色層11R、11G、11Bは、図示横方向には、樹脂膜2および積層膜12による配線パターンに挟まれた領域の第1面1a上に積層される。着色層11R、11G、11Bは、紙面奥行き方向には、樹脂膜2による格子状パターンに挟まれた領域の第1面1a上に積層される。着色層11R、11G、11Bの厚さは、第1面1aから樹脂膜2と反対側の積層膜12の表面12aまでの高さを超える厚さであれば特に限定されない。例えば、着色層11R、11G、11Bの厚さは、0.5μm以上3.0μm以下とされてもよい。
着色層11R、11G、11
Bの配列は、配線付きカラーフィルタ200を装着するディスプレイにおけるR、G、Bの各色に対応する画素の配置に応じた適宜の配列が可能である。
【0048】
絶縁保護層6は、少なくとも着色層11R、11G、11Bを保護するため、電気絶縁性を有する透明材料によって、図示下側から覆う層状に形成される。
本実施形態では、一例として、絶縁保護層6は、感光性を有する有機系の透明樹脂材料によって形成されている。本実施形態における絶縁保護層6に用いる有機系材料としては、例えば、重合性基含有オリゴマー、モノマー、光重合開始剤、およびその他の添加剤を含有するUV硬化型コーティング組成物が用いられてもよい。
図2に示すように、本実施形態では、絶縁保護層6は、着色層11R、11G、11Bと、積層膜12の各保護膜5を覆う層状に形成されている。
このため、配線付きカラーフィルタ200において、透明基板1と反対側の表面は、絶縁保護層6の表面6aによって形成されている。このため、積層膜12は、透明基板1と絶縁保護層6とに挟まれて、外部から絶縁されている。
【0049】
このような構成の配線付きカラーフィルタ200を製造するには、まず、上記第1の実施形態と同様にして、基板部10上に導電性合金膜3が積層される。この後、金属膜4、保護膜5が導電性合金膜3上に積層され、必要に応じて、金属膜4、保護膜5がパターニングされる。
金属膜4、保護膜5の成膜方法は、それぞれの積層部分上に均一な膜厚で成膜できれば、特に限定されない。例えば、金属膜4、保護膜5の成膜方法は、上記第1の実施形態において導電性合金膜3の成膜方法として例示されたのと同様の成膜方法から選ばれてもよい。
金属膜4、保護膜5のパターニング方法も特に限定されず、例えば、フォトリソグラフィ法、ウェットエッチングなどが用いられてもよい。
【0050】
積層膜12が形成された後、着色層11R、11G、11Bが形成される。
着色層11R、11G、11Bは、例えば、液晶ディスプレイのカラーフィルタを製造するための周知技術によって適宜形成される。
例えば、まず、着色層を形成する樹脂材料が、スピンコート、スピンレスコート、あるいはディッピング法などの適宜の塗布方法を用いて第1面1aおよび積層膜12上に塗布されて樹脂材料の種類に応じた硬化手段によって硬化される。この後、例えば、フォトリソグラフィ法などを用いて着色層の配置位置のみに残すパターニングがなされる。これを、各色について繰り返すことによって、着色層11R、11G、11Bが形成される。
【0051】
着色層11R、11G、11Bが形成された後、絶縁保護層6が形成される。
絶縁保護層6を形成するには、まず、絶縁保護層6を形成する樹脂材料が、着色層11R、11G、11B上および貫通孔部12の表面12aを覆うように塗布される。この樹脂材料の塗布方法としては、例えば、スピンコート、スピンレスコート、あるいはディッピング法などの適宜の塗布方法が用いられる。この後、塗布された樹脂材料が硬化される。例えば、樹脂材料がUV硬化樹脂の場合には、UV光を照射することによって樹脂材料が硬化される。これにより、絶縁保護層6が形成される。
【0052】
このような構成の配線付きカラーフィルタ200は、適宜方式の表示部に重ねて設置されることによって、カラーディスプレイを構成することができる。その際、積層膜12が静電容量式タッチパネルの電極として用いられることにより、カラーディスプレイにタッチセンシング機能を持たせることができる。
本実施形態の配線付きカラーフィルタ200では、積層膜12の間に、樹脂膜2で区画された着色層11R、11G、11Bが形成されている。本実施形態では、樹脂膜2は、黒色であるため、樹脂膜2は、カラーディスプレイにおけるブラックマトリクスの機能を備える。
【0053】
本実施形態の配線付きカラーフィルタ200は、用途に応じてパターニングされた積層膜12を備える。積層膜12は、少なくとも導電性合金膜3および金属膜4が導電性を有するため、配線として機能する。
【0054】
このように、本実施形態の配線付きカラーフィルタ200によれば、上記第1の実施形態の導電性基材100と同様、金属元素Aが含まれる導電性合金膜3が、樹脂膜2に積層される。このため、導電性合金膜3を含む導電部が低抵抗の導電性を有し、導電部と基板部との密着性が良好となる。
さらに、本実施形態では、配線である積層膜12において、導電性合金膜3と、導電性合金膜3よりも比抵抗が小さい金属膜4とが積層されている。このため、上記第1の実施形態の導電性基材100のように、導電部が導電性合金膜3のみからなる配線に比べて、配線としての比抵抗が低減される。
この結果、積層膜12の導電性が良好になり、例えば、積層膜12をタッチセンシング用配線として用いる場合に、応答性が向上されたり、より低電圧での駆動が可能になったりする。
さらに、本実施形態では、積層膜12が透明基板1および絶縁保護層6に挟まれているため、積層膜12の導電性合金膜3および金属膜4が外部環境の影響を受けにくくなる。
【0055】
[第1変形例]
次に、本実施形態の変形例(第1変形例)の配線付きカラーフィルタについて説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態の変形例(第1変形例)の配線付きカラーフィルタの構成例を示す模式的な断面図である。
【0056】
図3に示すように、本実施形態の配線付きカラーフィルタ300は、上記第2の実施形態の配線付きカラーフィルタ200に、対向電極7が追加されて構成される。
以下、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0057】
対向電極7は、積層膜12が図示横方向に離間して紙面奥行き方向に延ばされた配線パターンを構成するのに対して、紙面奥行き方向に離間して図示横方向に延ばされたストライプ状の配線パターンを構成する。
対向電極7は、透明基板1の第2面1b上に形成される。特に図示しないが、対向電極7および第2面1b上には、透明樹脂材料などによる絶縁保護膜が積層されている。
【0058】
対向電極7の材質は、積層膜12との間に静電容量を形成できる導体であれば特に限定されない。
例えば、対向電極7は、ITOなどの透明材料で形成されてもよい。
例えば、対向電極7は、不透明な金属膜または金属合金膜で形成されてもよい。対向電極7として不透明材料が用いられる場合、対向電極7は、平面視にて着色層11R、11G、11Bと重ならない範囲に形成されることが好ましい。さらに、対向電極7として不透明材料が用いられる場合、透明基板1と反対側の対向電極7の表面には、樹脂膜2と同様の材質の樹脂膜が積層されてもよい。これにより、対向電極7による反射光が抑制されるため、対向電極7が外部から目立たなくなる。
例えば、対向電極7として、積層膜12と同様な構成の積層膜が用いられてもよい。導電性合金膜3は、ガラス材料に対しても密着性が良好になるため、表面2a上に直接積層することができる。
【0059】
このような構成の本変形例の配線付きカラーフィルタ300によれば、上記第2の実施形態と同様の導電性基材を備えるため、上記第2の実施形態と同様の作用効果を備える。
さらに、本変形例によれば、配線である積層膜12と、対向電極7との間の静電容量を検出することで、積層膜12と対向電極7とを、静電容量式タッチパネルの検出電極および対向電極として使用することができる。このため、配線付きカラーフィルタ300は、適宜方式の表示部に重ねて設置されることによって、タッチセンシング機能を有するカラーディスプレイを構成することができる。
【0060】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態の液晶ディスプレイについて説明する。
図4は、本発明の第3の実施形態の液晶ディスプレイの構成例を模式的に示す断面図である。
【0061】
図4に示すように、本実施形態の液晶ディスプレイ400は、TFT基板30、液晶20、および上記第2の実施形態の配線付きカラーフィルタ200が、この順に積層されて表示部が構成されている。さらに、液晶ディスプレイ400は、タッチセンシング制御部40を備える。
以下、上記第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0062】
TFT基板30は、後述する液晶20をサブ画素ごとに駆動するTFTを含む駆動回路基板である。
液晶20は、配線付きカラーフィルタ200の着色層11R、11G、11Bにそれぞれ対応する位置に画素電極(図示略)が配置された液晶パネルである。液晶20における各画素電極は、TFT基板30の駆動回路にそれぞれ電気的に接続されている。
例えば、液晶20は、液晶を偏光板で挟んだ周知の構成を備える。液晶20における液晶駆動方式は、特に限定されない。
【0063】
本実施形態における配線付きカラーフィルタ200は、着色層11R、11G、11Bがそれぞれ液晶20のサブ画素と重なるように、液晶20上に積層配置されている。
配線付きカラーフィルタ200の積層膜12の導電部は、タッチセンシング制御部40と電気的に接続されている。
タッチセンシング制御部40は、積層膜12による配線パターンを用いて、透明基板1上の静電容量の変化を検出することによって、静電容量式のタッチセンシングを行う。
【0064】
液晶ディスプレイ400は、配線付きカラーフィルタ200および配線付きカラーフィルタ200に含まれる上記第2の実施形態の導電性基材を備え、積層膜12を静電容量式タッチパネルの電極に用いたカラー液晶ディスプレイになっている。
積層膜12は、液晶20およびTFT基板30と別体の基板になっているため、液晶20およびTFT基板30にタッチセンシング用配線を形成する場合に比べて、サブ画素の面積を広くすることができ、高画質化が可能である。
上記第2の実施形態の導電性基材は、導電性合金膜3を含む導電部が低抵抗の導電性を有し、導電部と基板部との密着性が良好となる。このため、液晶ディスプレイ400によれば、タッチセンシングの応答性およびタッチセンシング用配線の信頼性が向上される。
【0065】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態の液晶ディスプレイについて説明する。
図5は、本発明の第4の実施形態の液晶ディスプレイの構成例を模式的に示す断面図である。
【0066】
図5に示すように、本実施形態の液晶ディスプレイ500は、上記第4の実施形態のタッチセンシング制御部400の配線付きカラーフィルタ200、タッチセンシング制御部40に代えて、配線付きカラーフィルタ300、タッチセンシング制御部50を備える。 以下、上記第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0067】
本実施形態における配線付きカラーフィルタ300は、着色層11R、11G、11Bがそれぞれ液晶20のサブ画素と重なるように、液晶20上に積層配置されている。
配線付きカラーフィルタ300の積層膜12の導電部と、対向電極7とは、タッチセンシング制御部50と電気的に接続されている。
タッチセンシング制御部50は、積層膜12による配線パターンと、対向電極7による配線パターンとを用いて、透明基板1上の静電容量の変化を検出することによって、静電容量式のタッチセンシングを行う。
【0068】
液晶ディスプレイ500は、配線付きカラーフィルタ300および配線付きカラーフィルタ300に含まれる上記第2の実施形態の導電性基材を備え、積層膜12および対向電極7を静電容量式タッチパネルの検出電極および対向電極に用いたカラー液晶ディスプレイになっている。
液晶ディスプレイ500は、タッチセンシングに検出電極および対向電極を用いる点を除いて、上記第3の実施形態における液晶ディスプレイ400と同様の構成を有しており、液晶ディスプレイ400と同様の作用効果を備える。
【0069】
なお、上記各実施形態および変形例の説明では、導電性基材における樹脂膜2および導電性合金膜3がパターニングされており、かつ導電性合金膜3がタッチセンシング用配線を構成する場合の例で説明した。しかし、例えば、導電性基材の用途によっては、樹脂膜2および導電性合金膜3のパターニング形状は、パターニングされていないベタパターンでもよい。
さらに、樹脂膜2および導電性合金膜3がパターニングされている場合でも、パターニング形状は、上述の形状には限定されない。
例えば、樹脂膜2のパターンは、導電性基材の用途によっては、格子状に限定されず、液晶ディスプレイのブラックマトリクスの形状にも限定されない。
例えば、導電性合金膜3のパターンは、導電性基材の用途によっては、タッチセンシング用配線以外の配線の形状にパターニングされてもよい。さらに、導電性合金膜3のパターンは、配線以外の適宜の電極、グランドパターンなどの形状にパターニングされてもよい。
【0070】
上記第2の実施形態では、配線付きカラーフィルタ200の積層膜12が、金属膜4および保護膜5を有する場合の例で説明した。
しかし、導電性合金膜3によって必要な導電性が得られる場合には、金属膜4は省略されてもよい。
金属膜4が保護膜5によって保護される必要がない材質の場合、保護膜5は省略されてもよい。
金属膜4および保護膜5が削除できる場合、配線付きカラーフィルタ200は、上記第1の実施形態における導電性基材100の構成を備えてもよい。
【0071】
上記第3および第4の実施形態の説明では、液晶ディスプレイ400、500が導電性基材110を備える場合の例で説明した。しかし、液晶ディスプレイ400、500は、導電性基材として、上記第1の実施形態における導電性基材100を備えてもよいし、導電性基材110から金属膜4または保護膜5が削除された構成を備えてもよい。
【実施例】
【0072】
以下、上記第1の実施形態の導電性基材100およびこれを用いた上記第3の実施形態の液晶ディスプレイ400の実施例1〜27について、導電性基材の比較例1〜14とともに説明する。
【0073】
[導電性基材]
実施例1〜27、および比較例1〜14の各導電性基材の構成および評価結果について、下記[表1]、[表2]に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
[実施例1]
実施例1の導電性基材100では、透明基板1として無アルカリガラスが使用された。
樹脂膜2は、アクリル樹脂に黒色顔料を混合したブラックマトリックス樹脂が用いられた。具体的には、感光性を有するレジスト材料をベース樹脂とするブラックマトリクス樹脂がスピンコート法にて第1面1a上に塗布された。この塗膜は、ホットプレートにて120℃で2分間乾燥された。
この後、塗膜がフォトリソグラフィ法によってパターニングされた。具体的には、塗膜がパターニング形状に応じた開口部を有するフォトマスクを介して露光された。露光光源は、高圧水銀灯が用いられ、露光エネルギーは100mJ/cm
2とされた。
この後、塗膜に対して、0.2質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液にて30秒間のシャワー洗浄が実施された。さらに、水洗後、熱風循環式オーブンにて230℃で30分間加熱処理が行われた。これにより、透明基板1の第1面1a上に樹脂膜2が形成された。
【0077】
この後、樹脂膜2の表面2aに導電性合金膜3が形成された。導電性合金膜3の組成は、上記[表1]に記載されたように、Cu、Ni、Alがそれぞれ含有率97.6at%、2.2at%、0.2at%とされた。
導電性合金膜3は、上記含有率となるように、スパッタリング法で、一様な厚さ160nmに成膜された後、フォトリソグラフィ法によってパターニングされて形成された。ただし、各含有率は、小数点第1位に丸められており、例えば、ターゲット金属に含まれる不純物等が混じることによる微量の組成変化は無視されている(他の含有率も同様)。
【0078】
[実施例2〜27]
実施例1と同様にして、導電性合金膜3の組成のみが異なる実施例2〜27の導電性基材100が作製された。各組成は、上記[表1]、[表2]に示された含有率とされた。
実施例2〜9は、上記実施例1と同様、金属元素AがAlの場合の例である。実施例2〜9の導電性合金膜3はCu、Ni、Alからなる3元系合金であり、それぞれの含有率が変化された。
実施例10〜18は、金属元素AがSiの場合の例である。実施例10〜18の導電性合金膜3はCu、Ni、Siからなる3元系合金であり、それぞれの含有率が変化された。
実施例19〜27は、金属元素AがTiの場合の例である。実施例19〜27の導電性合金膜3はCu、Ni、Tiからなる3元系合金であり、それぞれの含有率が変化された。
【0079】
[比較例1〜14]
[表2]示すように、比較例1は、上記実施例1の導電性合金膜3に代えて、同厚さのITO膜が用いられた例である。
比較例2は、上記実施例1の導電性合金膜3に代えて、同厚さのCu膜が用いられた例である。
比較例3は、上記実施例1の導電性合金膜3に代えて、Cu、Niからなる同厚さの2元系合金膜が用いられた例である。
比較例4は、上記実施例1の導電性合金膜3に代えて、Cu、Alからなる同厚さの2元系合金膜が用いられた例である。
比較例5〜8は、上記実施例1〜9と同様、金属元素AがAlの場合の例である。ただし、比較例5〜8では、Niの含有率βおよびAlの含有率γの少なくとも一方が、上述の適正な組成範囲を満足していない。
比較例9〜11は、上記実施例1の導電性合金膜3に代えて、Cu、Ni、In(インジウム)からなる同厚さの3元系合金膜が用いられた例である。
Inは、拡散係数は、1.22×10
−19cm
2/sであるが、酸化物形成エンタルピーが−618kJ/molであるため、金属元素Aに該当しない。
比較例12〜14は、上記実施例1の導電性合金膜3に代えて、Cu、Ni、Ag(銀)からなる同厚さの3元系合金膜が用いられた例である。
Agは、拡散係数が4.2×10
−20cm
2/s、酸化物形成エンタルピーが−61kJ/molであるため、金属元素Aに該当しない。
【0080】
これらの導電性基材は、比抵抗の評価と、樹脂膜2との密着性の評価とが行われた。
比抵抗は、導電性合金膜のシート抵抗値を測定し、導電性合金膜の厚さに基づいて換算された。シート抵抗値の測定方法としては、4探針法が用いられた。
各実施例、各比較例におけるシート抵抗値の測定値と、比抵抗の換算値とは、[表1]、[表2]に記載された通りである。
導電性合金膜の密着性の評価は、クロスカット法によって行われた。具体的には、クロスカット法は、JIS K5600に基づいて行われた。[表1]には、各実施例、各比較例における評価結果が、JIS K5600の分類0〜5によって記載されている。
分類0は、「カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない」ことを示す。分類1〜5は、何らかの剥がれが生じたことを示す。
【0081】
[表1]、[表2]に記載された評価結果から分かるように、実施例1〜27の比抵抗は、3.2μΩ・cm〜12.8μΩ・cmの範囲に入っており、比較例1のITOの比抵抗986μΩ・cmに比べて極めて低い。
さらに、実施例1〜7の密着性評価はいずれも分類0になり、剥がれなどが発生しないことが分かった。
【0082】
比較例1の場合、密着性は良好であったが、比抵抗が格段に高くなった。
比較例2〜14の場合、いずれも剥がれ生じるなど、密着性がよくなかった。
比較例5〜8は、Niの含有率および金属元素Aの含有率の少なくとも一方の含有率が所定範囲に含まれていないため、密着性が悪くなる場合の例になっている。すなわち、上記実施例1〜27の密着性の評価結果と合わせると、αは、95.4at%以上99.2at%以下、βは、0.6at%以上2.2at%以下、γは、0.2at%以上2.4at%以下、とする必要があることが分かる。
比較例9〜14は、導電性合金膜が、金属元素A以外の元素と、Cu、Niとで構成される3元系合金では、良好な密着性が得られない場合の例になっている。
【0083】
[液晶ディスプレイ]
液晶ディスプレイは、上記実施例1〜27の導電性基材100をそれぞれ以下のようにして加工することによって作製された。
まず、スパッタリング法を用いて導電性基材100の導電性合金膜3上に、厚さ300nmの金属膜4が成膜された。さらに、同じくスパッタリング法によって、保護膜5として厚さ50nmのITO膜が成膜された。
この後、0.2質量%の硫酸と0.2質量%の過酸化水素水とが混合されたエッチング液を用いたウェットエッチング法によって、保護膜5、金属膜4、および導電性合金膜3のパターニングが行われた。
【0084】
この後、積層膜12の間の第1面1a上に、着色層11R、11G、11Bが順次厚さ2.5μmで形成された。
各着色層は、それぞれの色に着色されたアクリル系樹脂レジストをスピンコート法で塗布した後、フォトリソグラフィ法によってパターニングすることにより形成された。塗布されたアクリル系樹脂レジストは、各色の配置に対応するマスクを介して、高圧水銀灯による100mJ/cm
2の光量で露光されることによって露光部分が硬化された。この後、0.2質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液のシャワーを30秒間当てることで現像が行われた。これにより、露光されていない箇所のアクリル系樹脂レジストが除去された。
この後、絶縁保護層6を形成するため、オーバーコート剤V−259PA(商品名;新日鉄住金化学社製)からなる塗液が、スピンコート法で塗布された。この後、ホットプレートにて100℃で5分間乾燥することにより、塗膜が乾燥された。塗膜の乾燥後、高圧水銀灯を用いて100mJ/cm
2の光量で塗膜が露光された。これにより、塗膜が硬化し、絶縁保護層6が形成された。
【0085】
以上で、上記実施例1〜27の導電性基材100によって、それぞれ上記第2の実施形態の配線付きカラーフィルタ200が形成された。
この後、これら配線付きカラーフィルタ200と、TFT基板30との間に液晶20を挟んで、それぞれの対向面がシール材によって貼り合せられた。これにより、上記第3の実施形態の液晶ディスプレイ400が製造された。
【0086】
これらの液晶ディスプレイ400は、積層膜12にタッチセンシング制御部40の機能を含む制御用ICが接続され、タッチセンシング動作と、液晶駆動動作との動作確認が行われた。
いずれの実施例対応する液晶ディスプレイ400においても、タッチセンシング動作と液晶駆動動作とは、良好であった。
【0087】
以上、本発明の好ましい実施形態を、各実施例とともに説明したが、本発明はこの実施形態、各実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。