(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
難燃剤を含有しFMVSS No.302(JIS D1201)が100mm/min以下であり、前記難燃剤をポリオレフィン系樹脂架橋発泡体100質量部に対して14質量部から30質量部含有し、前記難燃剤が縮合型ホスホン酸エステルであり、かつ下記関係を満足する難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体。
引張強度(kPa)(温度条件 23℃)/見かけ密度(kg/m3)≧12
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、上記課題について鋭意検討し、
難燃性を有し、且つ成形性に優れることにより、家電用途向けの断熱材に適した難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を提供することができる。
以下、発明の詳細について記載する。
【0010】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂としては、とくに限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンなどに代表されるポリエチレン系樹脂(ここでいう密度の定義は以下の通り。超低密度:0.910g/cm
3未満、低密度:0.910g/cm
3以上0.940g/cm
3以下、高密度:0.940g/cm
3より大きく0.965g/cm
3以下)や、エチレンを主成分とする共重合体、もしくはホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体などに代表されるポリプロピレン系樹脂などが挙げられ、またこれらの混合物のいずれでもよい。前記エチレンを主成分とする共重合体としては、例えばエチレンと炭素数4つ以上のα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる)を重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、より好ましくは低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体である。更に好ましくは低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンである。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種もしくは2種以上の混合物のいずれでも良い。最も好ましくは低密度ポリエチレンと線状低密度ポリエチレンの混合物である。
【0011】
難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体に用いるポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR) は特に限定されないが、JIS K7210(1999)に基づき、温度190℃、荷重2.16 kgf の通常の条件で測定されるもので、1.0〜30g/10minの範囲にあるものが好ましい。このMFRが1.0g/10min未満であると、難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を製造する工程にてシート化する際に、該シートの表面が粗面化し、得られる発泡体が外観上問題を生じる場合がある。またMFRが30g/10minを超えると、難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の耐熱性が不十分となる場合がある。ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR) は、より好ましくは2.0〜15g/10minである。
【0012】
難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体に用いるポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、JIS K7210(1999)に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfの通常の条件で測定されるもので、0.5〜15g/10minの範囲にあるものが好ましい。このMFRが0.5g/10min未満であると、難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を製造する工程にてシート化する際に、該シートの表面が粗面化し、得られる発泡体が外観上問題を生じる場合がある。またMFRが15g/10minを超えると、難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の耐熱性が不十分となる場合がある。ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、より好ましくは1.0〜10g/10minである。
【0013】
また、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の特性を著しく損なわない範囲であれば、ポリオレフィン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を発泡体に加えても良い。ここでいうポリオレフィン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂とは、ハロゲンを含まない樹脂にあっては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートやスチレン−アクリル酸共重合体などのアクリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、低分子量ポリエチレン、高分子量ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリテートといった芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ビニル重合性モノマー及び含窒素ビニルモノマーを有する共重合体などが挙げられる。さらにイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ジメチルシリコーンゴム、エチレンプロピレンゴムなどのエラストマーなども含まれる。また、ハロゲンを含む樹脂にあっては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化三フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフルオロカーボン樹脂、溶剤可溶性パーフルオロカーボン樹脂などが挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂は、一種類でも良く、複数種含まれていても良い。所望の物性に合わせて種類、量は選択される。
【0014】
なお、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体は、ポリオレフィン系樹脂が主成分であることが重要である。ここで主成分とは、難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体において、質量的に最も大きい成分を意味する。より好ましくは、難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の全成分100質量%において、ポリオレフィン系樹脂は50質量%以上100質量%以下である。前述のポリオレフィン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂や、その他の添加剤などは、難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の全成分100質量%において、0質量%以上50質量%以下である。
【0015】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体のゲル分率は特に限定されないが、10〜40%が好適に用いられる。更に好ましくは15〜35%である。ゲル分率が10%より下回る場合は、発泡するときに表面が荒れる傾向があり、40%を上回る場合は、発泡するときに加工しにくく歩留まりが悪くなることがあり、好ましくない。
【0016】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を製造する際に使用する熱分解型発泡剤としては、該発泡体の原料であるポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物の溶融温度よりも高い分解温度を有するものであれば特に限定されない。好ましくは、アゾジカルボンアミドが挙げられ、更に、アゾジカルボンアミドと同等もしくはそれより高い分解温度を有するヒドラゾシカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム塩、ジニトロソペンタエチレンテトラミン、ニトロソグアニジン、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジンシンメトリックトリアジン、ビスベンゼンスルホニルヒドラジド、バリウムアゾジカルバキシレート、アゾビスイソブチロニトリル、トルエンスルホニルヒドラジド等を用いることができる。これらの熱分解型発泡剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂成分の合計量100質量部(以下、樹脂成分の合計量100質量部とは、ポリオレフィン系樹脂、他の熱可塑性樹脂等の全ての樹脂の合計量100質量部を意味する。この場合、添加剤等をマスターバッチ化(樹脂によりペレット化)したペレット中の樹脂も、樹脂成分に含まれる。)に対して、一般に2〜40重量部程度であり、所望の発泡倍率に応じて設定される。
【0017】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の見掛け密度は、
15〜200kg/m3が好適に用いられる。更に好ましくは
20〜67kg/m3である。
15kg/m3を下回れば、発泡体の表面に傷が付きやすく、
200kg/m3を上回れば、発泡体の型への追従がし難い問題がある。
【0018】
上記見掛け密度は、前述の熱分解型発泡剤の添加量によってコントロールする事が出来る。熱分解型発泡剤の種類、ガス量、使用するポリオレフィン系樹脂、その他の熱可塑性樹脂などによって、任意にその添加量を選択することが重要である。
【0019】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を製造する際には、発泡体の特性を損なわない範囲で、該発泡体の原料であるポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物中に、架橋助剤として多官能モノマーを含有することが出来る。多官能モノマーとしては、例えばジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジンおよびこれらの核置換化合物や近縁同族体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸系化合物、ジビニルフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ビスアクリロイルオキシエチルテレフタレート等の脂肪族および芳香族2価カルボン酸のビニルエステル、アリルエステル、アクリロイルオキシアルキルエステル、メタクリロイルオキシアルキルエステル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジビニルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル等の脂肪族および芳香族2価アルコールのビニルエーテルやアリルエーテル、N−フェニルマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド等のマレイミド系化合物、フタル酸ジプロパギル、マレイン酸ジプロパギル等の2個の三重結合を有する化合物などのモノマーを使用することができる。さらに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートと1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートと1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートと1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートとジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートとトリアリルシアヌレートと1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレートと1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレートと1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等も使用することができる。例えばジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、エチルビニルベンゼンなどを使用することができる。上記架橋助剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上混合しても良い。架橋助剤の配合量は、樹脂成分の合計量100 質量部に対して、0.1〜30質量部、より好ましくは0.5〜15質量部であり、所望のゲル分率に応じて設定される。
【0020】
又、架橋助剤と有機過酸化物を組み合わせて架橋することもできる。この有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等が用いられる。有機過酸化物の配合量は、樹脂成分の合計量100質量部に対して、0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部であり、所望のゲル分率に応じて設定される。
【0021】
本発明で用いる難燃剤は、特に規定しないが、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシロクドデカン、ヘキサブロモベンゼンなどの臭素系難燃剤、トリフェニルホスフェートなどのリン酸エステルの他、縮合リン酸エステル、ホスホン酸エステル、縮合ホスホン酸エステルなどのリン系有機難燃剤、赤リンなどのリン系無機難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物系難燃剤などが例示される。このうち1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。
本発明で用いる難燃剤はその基本骨格にハロゲン元素を含まないことが好ましい。これは近年の環境問題からくる各国の規制に対しても好適である。これら例示された難燃剤のうち、好ましいのはリン系有機難燃剤であり最も好ましくは縮合型ホスホン酸エステルである。
【0022】
本発明で用いる難燃剤の添加量は難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体100質量部に対して1質量部から40質量部であることが好ましい。さらに好ましくは3質量部から30質量部である。40質量部以上添加した場合、発泡体としての柔軟性が低下する。
【0023】
尚、本発明の特徴を損なわない範囲で、発泡剤の分解促進剤、気泡核調整剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、帯電防止剤、無機充填剤等の各種添加剤を、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の原料であるポリオレフィン系樹脂組成物は含むことができる。
本発明では、前記各成分を配合して得られたポリオレフィン系樹脂組成物を所定形状に成形した後、架橋・発泡して難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を製造する。
【0024】
具体的には、例えば、下記の製造方法が挙げられる。前記ポリオレフィン系樹脂組成物の所定量を、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ミキシングロール等の混練装置を用いて、熱分解型発泡剤の分解温度未満で均一に溶融混練し、これをシート状に成形する。
【0025】
次いで、得られたシートに電離性放射線を所定線量照射して、オレフィン系樹脂を架橋させ、この架橋シートを熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させる。電離性放射線照射による架橋にかえて、過酸化物による架橋や、シラン架橋を行っても良い。
【0026】
そして、この発泡性シートに電離性放射線の照射を行い、この発泡性シートを構成する樹脂を架橋させる。電離性放射線としては、電子線、X線、β線、γ線等が使用される。
【0027】
照射線量は、一般に1〜300kGy程度であり、所望のゲル分率に応じて線量が設定される。 樹脂が架橋された発泡性シートは、例えば、熱風、赤外線、メタルバス、オイルバス、ソルトバス等により、熱分解型発泡剤の分解温度以上で且つ樹脂の融点以上の温度、例えば190〜290℃に加熱し、発泡剤の分解ガスによって樹脂を発泡させ、こうして、難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を得る。
【0028】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体は難燃性を有している必要がある。この評価方法としてはJIS D1201(1998年度版)に規定されているF−MVSSで評価する。本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体は、燃焼速度が100mm/min未満であることが必要で有り、好ましくは80mm/minであり、もっとも好ましいのは自消性であることである。
【0029】
通常、難燃剤を添加した場合、引張強さが低下するが、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体は同じ見かけ密度であれば、引張強さが難燃剤添加前と比較し強度が向上している。ここでいう密度および引張強さとはJIS K6767(1999年度版)で規定されている方法に準拠する。
【0030】
発泡体の見かけ密度と引張強さの関係が本発明では引張強度(kPa)(温度条件 23℃)/見かけ密度(kg/m
3)≧10との関係を満たすことが必要である。好ましくは引張強度(kPa)(温度条件 23℃)/見かけ密度(kg/m
3)≧12となる。
【0031】
また、本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の成形絞り比は0.5以上であることが好ましい。ここでいう成形絞り比とは直径D、深さHの垂直円筒状の雌型上において、発泡体を加熱し、表面温度が170℃になったところ真空成形機を用いてストレート成形したときに、発泡体が破れることなく、円筒状に展開、伸長される限界でのH/Dの値のことである。なお、ここにおいて直径Dは50mmである。また、ここで使用する雌型は鉄製で表面粗さRaは5μm以下である。0.5未満であると成形時に破れる可能性があり好ましくない。このましくは0.6以上、さらに好ましくは0.65以上である。
【0032】
また、これまで述べてきた方法により得られた難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を用いて、積層体を得ることが出来る。
【0033】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を用いて積層体とする際に積層させる層としては、天然、人造の繊維を用いた布帛状物、ポリ塩化ビニル樹脂からなるシート、サーモプラスチックオレフィン(TPO)からなるシート、熱可塑性エラストマーシート、レザー等の表皮材、熱可塑性樹脂繊維を用いた不織布、ポリオレフィン系樹脂無架橋発泡シート、例えばポリウレタンなどを用いた連続気泡発泡体、ポリエステルフィルムやポリアクリルフィルム等に代表されるフィルム類、ダンボールプラスチック、発泡紙、銅・銀・ニッケルなどに代表される金属層などの公知のものから少なくとも一種類から選ばれるものをいい、それらを複数積層しても良いし、難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体の表面及び裏面の両面に積層させても良いし、片面のみに積層させても良い。
【0034】
本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体と上述する層を張り合わせて積層体とする方法は、例えば、上記発泡体上に熱可塑性樹脂を溶融させる押出ラミネート法、上記発泡体上に接着剤を塗布した後張り合わせる接着ラミネート法、表皮材等と必要ならば難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体も加熱して張り合わせる熱ラミネート法(融着ともいう)、ホットメルト法、高周波ウェルダー法、金属等では無電解メッキ法、電解メッキ法、蒸着法等が挙げられるが、これらに規定されるものではなくいかなる方法でも接着されればよい。
本発明の樹脂発泡体は、配管内を流れる気体や液体等の流動性を有する物体の保温、保冷、結露防止を効率的に行うため、配管形状に則した被覆を可能とする円筒体とすることが可能である。かかる発泡体を円筒体とする方法は特に限定されないが、例えば上記方法で製造した該発泡体を円筒の直径に応じた幅に切断し、熱風や赤外線ヒータ等の公知の熱源で該発泡体を加熱しながら円錐形状の口金を通す方法、あるいは樹脂発泡体を円筒の直径に応じた幅に切断し、熱風や赤外線ヒータ等の公知の熱源で該発泡体を加熱しながら円錐形状の口金を通し円筒体とした後、適度な幅に切断した未延伸のフィルム状に成形したポリオレフィン系樹脂層を溶媒系、水系等の液状、ゲル状、固形状の公知の接着剤や公知の粘着テープで接着する方法が例示される。
本発明の樹脂発泡体を被覆する配管の種類には、住宅用冷暖房機器に使用する冷媒配管、給水・給湯などに使用する水道管、貯湯式給湯器の連絡配管がある。配管の材質には、塩化ビニル管、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、塩化ビニルライニング管、銅管、ステンレス鋼管などが例示される。該樹脂発泡体は残留アンモニア濃度が著しく低く、銅管が腐食するのを防止するのに効果的である。
また、配管の湾曲部位、継手部位、バルブ等の流量調節部位等、配管の形状が円筒体と異なる部位は、該部位と同等形状の所定形状に成型し被覆を可能とする成型体とすることが望ましい。かかる発泡体を所定形状の成型体とする方法は特に限定されないが、例えば該発泡体を循環式熱風オーブンや赤外線ヒータ等の公知の熱源で加熱した後、微細孔を有する金属製や木製等の所定型の上に置き、微細孔より空気を抜き取り該発泡体と所定型を密着する方法が例示される。
【実施例】
【0035】
以下の方法によって、物性を評価した。
【0036】
(厚み測定方法)
ISO 1923(1981)「発泡プラスチック及びゴム−線寸法の測定」に準ずる。具体的には測定面積が約10cm
2となるダイヤルゲージを用いて、発泡体の厚みを測定する。
【0037】
(樹脂の密度測定方法)
JIS K6922―1,2(1997)「プラスチック−ポリエチレン (PE)成形用及び押出用材料」に準ずる。具体的にはメルトインデクサーの押出物で測定する。190℃の標準メルトインデクサーで押し出したサンプルを、気泡を含まない様にした上で適当な長さに切り、冷たい金属板の上で放置する。その後200mLの沸騰水に30分間入れアニール処理を行った後に24時間後に密度を測定する。ここでは株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサ型式F−B01を使用した。
【0038】
(メルトフローレートの測定方法)
JIS K7210(1999)「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト (MFR) 及びメルトボリュームフローレイト (MVR) の試験方法」に準ずる。上記規格の附属書B(参考)「熱可塑性プラスチック材料の規格と指定とその試験条件」に基づきポリプロピレン系樹脂は230℃、荷重2.16kgf(21.7N)、ポリエチレン系樹脂は温度190℃、荷重2.16kgf(21.7N)の条件で行った。株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサ型式F−B01を使用し、手動切り取り法を採用し、ダイから10分間にでてきた樹脂の質量によって規定されるものをいう。
【0039】
(ゲル分率の測定方法)
難燃性ポリオレフィン系樹脂架橋発泡体を、まず長手方向に短冊状に片刃で0.5mm間隔に切り、その後鋏を用いて幅方向に0.5mm間隔で切断したものを約50mg精密に秤量し、130℃のテトラリン200mlに3時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で自然濾過し、アセトンで洗浄し乾燥エアーを15秒間あてた後、金網上の不溶解分を1時間120℃下で熱風オーブンにて乾燥する。次いで、シリカゲルを入れたデシケータ中で10分間冷却し、この不溶解分の質量を精密に秤量し、以下の式に従ってゲル分率を百分率で算出した。
ゲル分率(%)={不溶解分の質量(mg)/秤量したポリオレフィン樹脂発泡体の質量(mg)}×100
そして5サンプルの測定により得られた値から上下限値を除いた3点の平均値を、ゲル分率とした。
【0040】
(見掛け密度の測定方法)
JIS K6767(1999)「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に基づいて測定されたものである。
例えば、15cm
3以上になるようなサンプルサイズ(例えば、10cm角)に打ち抜き、厚み、質量を測定する。サンプルの面積(10cm角の場合は100cm
2)とその厚みから体積を算出し、以下の式により見掛け密度を算出した。
見掛け密度(kg/m
3)=サンプル重量(kg)/{サンプル厚み(m)×サンプル面積(m
2)}
そして5サンプルの測定により得られた値から上下限値を除いた3点の平均値を、見掛け密度とした。
【0041】
(発泡体の難燃性評価方法)
JIS D1201(1998)に規定されているFMVSS No.302に準拠して測定した水平方向燃焼速度の数値で評価した。なお、標線まで炎が伝播しない場合、自己消火性を有すとする。
【0042】
(発泡体の引張強さ引張伸び測定方法)
引張強さ、引張伸びは、JIS K6767(1999年)に準拠して表1に記載の温度条件にて測定を行った。
【0043】
(圧縮永久歪)
圧縮永久歪はJIS K6767(1999年)に準拠して測定を行った。
【0044】
(加熱面アレ試験)
得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体をシート表面が170℃まで加熱し、常温に冷却後、表面状態を目視観察した。
◎:表面平滑で光沢があった。
○:◎には若干劣るものの表面状態が良好であった
×:表面に凹凸が見られたりした。
【0045】
(成形性(扁平率))
樹脂発泡体を幅110mmに切断し、300℃の熱風で該樹脂発泡体を加熱しながら円錐形状の口金を通して、内径18mmの円筒体を得た。
【0046】
円筒体の短径/長径×100で求められる数値を偏平率とし、85%未満の場合を(×)、85〜90%の場合を(△)、90%より大きい場合を(○)とする。
【0047】
(成形品の施工性、繰り返し施工性)
円筒体に成形した保温材を呼び径15A(外径15.88mm)、肉厚1.02mmの銅管へ施工するとき、保温材を全く通すことが出来ず使用出来ない場合は(×)、僅かな抵抗があるものの押し込むことで使用出来る場合は(△)、抵抗が一切ない場合は(○)とする。また、5回取り付け、取り外しを行い、やぶれ、欠け等が発生した水準を(×)、変化ないものを(○)とした。
【0048】
(成形絞り比)
成形絞り比とは直径D、深さHの垂直円筒状の雌型上において、発泡体を加熱し、表面温度が170℃になったところ真空成形機を用いてストレート成形したときに、発泡体が破れることなく、円筒状に展開、伸長される限界でのH/Dの値のことである。なお、ここにおいて直径Dは50mmである。また、ここで使用する雌型は鉄製で表面粗さRaは5μm以下である。
【0049】
(参考例1)
低密度ポリエチレン:日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m
3
(参考例2)
発泡剤:アゾジカルボンアミド:永和化成工業製ビニホールAC#LQ
(参考例3)
難燃剤A:芳香族ホスホン酸エステル:丸菱油化工業製、製品名:ノンネン73
難燃剤B:エチレンビスペンタブロモジフェニル:アルベマール製、製品名:SAYTEX 8010)2.5質量部
(参考例4)
難燃助剤C:三酸化アンチモン:日本精鉱製PATOX−K
(
比較例6)
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m
3):100質量部、難燃剤A:芳香族ホスホン酸エステル(丸菱油化工業製、製品名:ノンネン73)5質量部および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):10質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.5質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて150℃で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:1.5mmのポリエチレン系樹脂シートを作製した。このシートに加速電圧800kV、15kGyの電子線を両面から照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡した。その発泡体を50℃の水で冷却、発泡体表面を水洗して乾燥させ、厚さ:3.0mm、みかけ密度:33kg/m
3の発泡体の長尺ロールを得た。この発泡体の評価結果を表1に示す。
また、上記で得た樹脂発泡体を円筒の直径(18mm)に応じた幅に切断し、300℃の熱風で該樹脂発泡体を加熱しながら円錐形状の口金を通して、円筒体保温材を得た。
【0050】
(実施例2〜3)
実施例2〜3は、低密度ポリオレフィン樹脂、発泡剤、難燃剤は表1に記載ある質量部数を添加し、その他については
比較例6と同様の方法により発泡体を作成した。これら発泡体の評価結果を表1に示す。
【0051】
(実施例4)
低密度ポリオレフィン樹脂、発泡剤、難燃剤は表1に記載ある質量部数を添加し、Tダイを用いて厚さ1.7mmのシートを作成しその他については
比較例6と同様の方法により発泡体を作成した。これら発泡体の評価結果を表1に示す。
また、上記で得た樹脂発泡体を円筒の直径(18mm)に応じた幅に切断し、300℃の熱風で該樹脂発泡体を加熱しながら円錐形状の口金を通して、円筒体保温材を得た。
【0052】
(比較例1)
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m
3):100質量部および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):10質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.5質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて150℃で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:1.5mmのポリエチレン系樹脂シートを作製した。このシートに加速電圧800kV、15kGyの電子線を両面から照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡した。その発泡体を50℃の水で冷却、発泡体表面を水洗して乾燥させ、厚さ:3.0mm、みかけ密度:32kg/m3の発泡体の長尺ロールを得た。この発泡体の評価を表1に示す。
また、上記で得た樹脂発泡体を円筒の直径(18mm)に応じた幅に切断し、300℃の熱風で該樹脂発泡体を加熱しながら円錐形状の口金を通して、円筒体保温材を得た。
【0053】
(比較例2)
オレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン製ノバテックLD LE520H、MFR=4g/10分、密度=923kg/m
3):100質量部、難燃剤B:エチレンビスペンタブロモジフェニル(アルベマール製、製品名:SAYTEX 8010)2.5質量部、難燃助剤:三酸化アンチモン(日本精鉱製PATOX−K)1.0質量部、および発泡剤としてアゾジカルボンアミド(永和化成工業製ビニホールAC#LQ):10質量部、酸化防止剤(BASF社製IRGANOX 1010):0.5質量部をヘンシェルミキサーにて混合し、単軸押出機を用いて150℃で溶融押出し、Tダイを用いて厚さ:1.5mmのポリエチレン系樹脂シートを作製した。このシートに加速電圧800kV、15kGyの電子線を両面から照射して架橋シートを得た後、220℃の塩浴上にて浮かべ、上方から赤外線ヒータで加熱し発泡した。その発泡体を50℃の水で冷却、発泡体表面を水洗して乾燥させ、厚さ:3.0mm、みかけ密度:33kg/m
3の発泡体の長尺ロールを得た。この発泡体の評価を表1に示す。
また、上記で得た樹脂発泡体を円筒の直径(18mm)に応じた幅に切断し、300℃の熱風で該樹脂発泡体を加熱しながら円錐形状の口金を通して、円筒体保温材を得た。
【0054】
(比較例3、4)
比較例3、4では、難燃剤、難燃助剤について表1に記載ある質量部添加する以外、ポリオレフィン系樹脂、発泡剤、酸化防止剤、電離性放射線などは比較例2と同様な条件とし、
比較例6と同様の方法で発泡体を作成した。その結果、表1に示す。
また、上記で得た樹脂発泡体を円筒の直径(18mm)に応じた幅に切断し、300℃の熱風で該樹脂発泡体を加熱しながら円錐形状の口金を通して、円筒体保温材を得た。
【0055】
【表1】