特許第6834166号(P6834166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834166
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】エンジンのシリンダヘッド
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/36 20060101AFI20210215BHJP
   F02F 1/40 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   F02F1/36 C
   F02F1/40
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-80991(P2016-80991)
(22)【出願日】2016年4月14日
(65)【公開番号】特開2017-190731(P2017-190731A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】小山 和明
(72)【発明者】
【氏名】吉原 昭
(72)【発明者】
【氏名】高安 則夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 厳生
(72)【発明者】
【氏名】岡本 雄弥
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0126659(US,A1)
【文献】 特開2005−188351(JP,A)
【文献】 特開2000−161131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/36
F02F 1/40
F02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気系のマニホールドを内蔵するシリンダヘッドにおいて、
冷却水が内部を流通し、前記マニホールドを上下から挟むように配置された二つの冷却通路と、
前記冷却水が内部を流通し、前記二つの冷却通路のうち前記マニホールドの上下方向一方側に位置する冷却通路から分岐するとともに上下方向他方側に位置する冷却通路とは合流せずに前記マニホールドの集合部出口部の上下方向他方側を通るように前記集合部出口部の周囲を通って前記一方の冷却通路に合流する分岐冷却通路と、
を備えたことを特徴とする、エンジンのシリンダヘッド。
【請求項2】
前記一方の冷却通路が、前記分岐冷却通路に前記冷却水を案内する案内部を有する
ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンのシリンダヘッド。
【請求項3】
前記一方の冷却通路内の前記冷却水が、前記エンジンのフロント側およびリア側の一方から他方へと流通するものであり、
前記案内部が、前記分岐冷却通路の入口部よりも前記冷却水の流通方向の下流側に配置され、前記一方の冷却通路を形成する前記シリンダヘッドの外壁部から内側へ突設された突起として設けられる
ことを特徴とする、請求項2記載のエンジンのシリンダヘッド。
【請求項4】
前記シリンダヘッドと排気管との締結面に穿孔されたねじ穴を備え、
前記ねじ穴が、前記マニホールドの下流端の開口よりも上側に一つ配置されるとともに、前記開口よりも下側に二つ配置されている
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のエンジンのシリンダヘッド。
【請求項5】
前記分岐冷却通路が、前記マニホールドの下面に沿って配置された下側冷却通路から分岐するとともに、上側の前記ねじ穴よりも前記開口側を通って前記下側冷却通路に合流する
ことを特徴とする、請求項4記載のエンジンのシリンダヘッド。
【請求項6】
前記分岐冷却通路が、前記マニホールドの上面に沿って配置された上側冷却通路から分岐したのち合流する
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のエンジンのシリンダヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気系のマニホールドを内蔵するシリンダヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの燃焼室と繋がる複数の排気ポートがシリンダヘッド内で合流するように、シリンダヘッドと排気系のマニホールドとを一体に形成したものが開発されている。このようなシリンダヘッドでは、排気系に介装される排気浄化触媒とエンジンとの距離が短縮されるため、排気浄化性能が向上しうるほか、排気系自体の長さが短縮されることから、排気の圧力損失の低下やエンジンの省スペース化が容易となるといった利点がある。一方で、このようなシリンダヘッドでは、マニホールドが別設されたものと比較して、排気熱を受けて高温になりやすいという難点がある。そこで、排気ポートの周囲やマニホールドの出口付近にエンジン冷却水を流通させることによって、冷却性を向上させることが提唱されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−309158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリンダヘッドに内蔵されたマニホールドの出口付近は、各排気ポートを流通してきた排気が集合する部分であるため、特に高温になりやすい。これに対し、出口付近に冷却水が流通する流路を設ければ、この部分の冷却性は確保しうる。しかしながら、この出口付近は温度変化が大きいことから、単に冷却通路を設けただけでは、マニホールドの他の部分の冷却性に影響を与えかねない。
【0005】
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、マニホールド全体の冷却性を安定化させることができるようにした、エンジンのシリンダヘッドを提供することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示するエンジンのシリンダヘッドは、エンジンの排気系のマニホールドを内蔵するシリンダヘッドであって、冷却水が内部を流通し、前記マニホールドを上下から挟むように配置された二つの冷却通路と、前記冷却水が内部を流通し、前記二つの冷却通路のうち前記マニホールドの上下方向一方側に位置する冷却通路から分岐するとともに上下方向他方側に位置する冷却通路とは合流せずに前記マニホールドの集合部出口部の上下方向他方側を通るように前記集合部出口部の周囲を通って前記一方の冷却通路に合流する分岐冷却通路と、を備える。
【0007】
(2)前記一方の冷却通路が、前記分岐冷却通路に前記冷却水を案内する案内部を有することが好ましい。
(3)前記一方の冷却通路内の前記冷却水が、前記エンジンのフロント側およびリア側の一方から他方へと(一側から他側へと)流通するものであることが好ましい。この場合、前記案内部が、前記分岐冷却通路の入口部よりも前記冷却水の流通方向の下流側に配置され、前記一方の冷却通路を形成する前記シリンダヘッドの外壁部から内側へ突設された突起として設けられることが好ましい。
【0008】
(4)前記シリンダヘッドと排気管との締結面に穿孔されたねじ穴を備えることが好ましい。この場合、前記ねじ穴が、前記マニホールドの下流端の開口よりも上側に一つ配置されるとともに、前記開口よりも下側に二つ配置されていることが好ましい。
(5)前記分岐冷却通路が、前記マニホールドの下面に沿って配置された下側冷却通路から分岐するとともに、上側の前記ねじ穴よりも前記開口側を通って前記下側冷却通路に合流することが好ましい。
(6)あるいは、前記分岐冷却通路が、前記マニホールドの上面に沿って配置された上側冷却通路から分岐したのち合流することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
マニホールドの集合部出口部の周囲を通る分岐冷却通路が、分岐した冷却通路に戻る構成であるため、二つの冷却通路内の冷却水温度の変化を抑制することができる。これにより、マニホールド全体の冷却性を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るエンジンのシリンダヘッドおよびシリンダブロックを例示する斜視図である。
図2】エンジンの模式的な縦断面図である。
図3】シリンダヘッド内の排気ポート形状を示す水平断面図である。
図4】シリンダヘッド内の排気側の冷却通路を示す斜視図である。
図5】(A)は図4の冷却通路の上部(上側冷却通路)を示す水平断面図、(B)は図4の冷却通路の下部(下側冷却通路)を示す水平断面図である。
図6】(A)はシリンダヘッドの締結面を正面から見た図であり、(B)は図6(A)の冷却通路の構成を説明するための模式図である。
図7】変形例に係るシリンダヘッドに設けられた冷却通路の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、実施形態としてのエンジンのシリンダヘッドについて説明する。以下に示す各実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の各実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0012】
[1.全体構成]
本実施形態のシリンダヘッド1は、排気系のマニホールド(多分岐管)を内蔵したエキマニ一体のシリンダヘッドであり、水冷式多気筒のエンジン10のシリンダブロック2に取り付けられる。以下の説明では、シリンダヘッド1に対してシリンダブロック2が固定される側を下方とし、その逆側を上方とする。エンジン10の内部には、複数のシリンダ3が列をなして配置される。図1に示す例は、三つのシリンダ3が直列に配置された三気筒(フロント側から順に、#1,#2,#3)のエンジン10である。以下、シリンダ3の列設方向を符号Lで表す。
【0013】
図1および図2に示すように、シリンダ3の周囲には、その筒面3Bに沿って曲面状に掘り込まれた冷却通路30(ウォータージャケット)が形成される。冷却通路30の上方はシリンダブロック2の上面で開放され、シリンダヘッド1の内部に形成される排気側の冷却通路4(4B)と吸気側の冷却通路5とにそれぞれ連通する。これにより、排気ポート6の外周部分もエンジン冷却水(以下「冷却水」という)によって冷却される。なお、ここでは便宜上、シリンダヘッド1側の冷却通路4,5を排気側と吸気側とに分けて符号を付しているが、これらの冷却通路4,5はシリンダヘッド1の内部に一体で設けられる。
【0014】
図2に示すように、シリンダヘッド1の下面にはその天井面3A(燃焼室の天井面)となる凹みが形成され、各燃焼室に排気ポート6が接続される。排気ポート6は、排気系のマニホールドとして機能する多分岐型の排気流路である。図3に示すように、排気ポート6の上流端は六本に分岐した形状とされ、個々の排気バルブ孔12に対して接続される。一方、排気ポート6の下流側は、個々の通路がシリンダヘッド1の内部で一本に集約した形状とされる。以下、排気ポート6の集約部分を排気集合部6Aと呼ぶ。
【0015】
ここで、#2気筒の中心を通って水平に延びる仮想線のうち、シリンダ列方向Lに対して垂直な直線を「エンジン10の中心線C」とすると、排気集合部6Aは中心線Cに対してエンジン10のリア側にオフセットした位置に配置される。排気集合部6Aの下流端となる単一の開口(以下「排気口7」という)も同様に、中心線Cからリア側にオフセットした位置に設けられる。なお、図1図3に示すように、排気側の側壁8には、排気ポート6の全体を囲むように、シリンダヘッド1の外側に向かって半月状に膨出した張出部14が設けられる。
【0016】
図6(A)に示すように、排気口7の周囲には、排気の流通方向に対して垂直な平面状の締結面15Aを有するフランジ部15が形成される。フランジ部15は、図示しない下流側の排気管(触媒装置,ターボチャージャー等との接続用の管材を含む)が締結固定される部位である。フランジ部15の締結面15Aは、排気口7の周囲において、排気口7の上下左右を環状に囲むように設けられる。
【0017】
フランジ部15には、ボルトやねじ等の締結具を取り付けるための複数のボス部19が設けられる。各々のボス部19には、締結具と螺合する溝を内筒面に有するねじ穴20が穿設される。ねじ穴20の穿設方向は、締結面15Aに垂直な方向とされる。ボス部19の位置は、排気口7の周方向に所定の間隔をあけて設定される。図6(A)に示す例は、環状に配置された締結面15Aの上側に一つ,下側に二つのボス部19が形成されたものである。
【0018】
上側のボス部19(ねじ穴20)は、排気口7よりも上側(締結面15Aを正面から見たときの排気口7の中心点Pの略真上)に配置される。一方、下側の二つのボス部19(ねじ穴20)は、排気口7よりも下側において排気口7の左右(排気口7の中心点Pから略等距離)に配置される。これらのボス部19のうち、上側に位置するボス部19は、各ボス部19の上端が張出部14の上面14Aよりもやや上方に膨出するように形成される。一方、下側に位置するボス部19は、各ボス部19の下端が張出部14の下面14Bとほぼ一致するように(張出部14の下面14Bよりも下方へは突出しないように)形成される。
【0019】
[2.冷却通路]
シリンダヘッド1の内部における排気側の冷却通路4(ウォータージャケット)の形状を図4に例示する。シリンダヘッド1には、上記の排気ポート6(シリンダヘッド1に内蔵された排気系のマニホールド)の周囲を冷却するための冷却水が流通する冷却通路4として、排気ポート6を上下から挟むように配置された二系統の冷却通路4A,4Bが設けられる。さらに、シリンダヘッド1には、排気ポート6の集合部出口部6Bを冷却する分岐冷却通路4Cが設けられる。
【0020】
本実施形態のシリンダヘッド1では、エンジン10のフロント側に、ウォーターポンプ側から冷却水が送給される冷却水入口44が設けられ、リア側に冷却水出口45が設けられる。したがって、各冷却通路4A,4B内には、フロント側からリア側に向かって冷却水が流通する。排気ポート6の上側の冷却通路4A,下側の冷却通路4Bは、排気ポート6の上面,下面のそれぞれに沿って配置される。これらの冷却通路4A,4Bは、シリンダ3の天井面3Aの近傍では連通して設けられ、張出部14内では互いに独立するとともに張出部14の上面14A,下面14Bのそれぞれに対して略平行となるような面状に設けられる。
【0021】
上下の冷却通路4A,4Bのそれぞれを、張出部14の上面14A,下面14Bと略平行な平面で切断した断面図を図5(A),(B)に示す。なお、図5(A),(B)中の二点鎖線はシリンダ3の天井面3Aの輪郭に対応する。張出部14内における各冷却通路4A,4Bは、冷却水が分岐や合流をしながら蛇行してリア側へ流れるような形状となっている。また、図6(A)に示すように、本実施形態の上側冷却通路4Aは、締結面15Aに設けられた上側のねじ穴20と干渉しないように、このねじ穴20よりも下方に配置される。一方、下側冷却通路4Bは、締結面15Aの正面から見て、下側のねじ穴20と干渉する位置に設けられる。
【0022】
分岐冷却通路4Cは、上下の冷却通路4A,4Bのうちの一方から分岐するとともに、排気ポート6の集合部出口部6Bの周囲を通って元の冷却通路4A,4Bに合流する流路の一部であり、内部を冷却水が流通することで排気ポート6の集合部出口部6Bを冷却する。ここでいう集合部出口部6Bとは、図3に示すように、排気集合部6Aのうちの下流寄りの部分であって排気口7の直上流部を意味する。
【0023】
図6(A),(B)に示すように、本実施形態の分岐冷却通路4Cは、下側冷却通路4Bから分岐し、排気ポート6の集合部出口部6Bの周囲を通って再び下側冷却通路4Bに合流する。すなわち、分岐冷却通路4Cには、下側冷却通路4Bを流通している冷却水の一部が流れ込み、排気ポート6の集合部出口部6Bを冷却したのち、再び下側冷却通路4Bの冷却水に合流する。具体的には、分岐冷却通路4Cは、下側冷却通路4Bにおけるフロント側のボス部19よりも排気口7側から分岐し、排気ポート6の集合部出口部6Bのフロント側,上側,リア側をこの順に通ったのち、下側冷却通路4Bにおけるリア側のボス部19よりも排気口7側で合流する。本実施形態の分岐冷却通路4Cは、流路断面積が略一定に形成されている。
【0024】
分岐冷却通路4Cは、上下方向に延びる二つの部位(以下「縦通路41,42」という)が、締結面15Aの正面から見て、いずれも下側のボス部19と排気口7との間を通るように設けられる。また、分岐冷却通路4Cは、排気ポート6の上側を通る部位(以下「横通路43」という)が、上側のボス部19よりも排気口7側を通るように設けられる。このような分岐冷却通路4Cの配置により、排気口7からの排気の熱が各ボス部19のねじ穴20へ伝達することが抑制される。
【0025】
なお、本実施形態の分岐冷却通路4Cは、二つの縦通路41,42の左右の間隔が上方に行くほど狭くなるように、下側冷却通路4Bに対して傾斜して(ハの字状に)設けられる。すなわち、分岐冷却通路4Cによって、排気ポート6の集合部出口部6Bの周囲には、締結面15Aの正面から見て上底が下底よりも短い等脚台形状の流路が形成される。このような形状によっても、分岐冷却通路4Cへ冷却水が流れ込みやすくなっている。
【0026】
分岐冷却通路4Cは、上側冷却通路4Aとは合流しないように形成される。本実施形態では、図5(A)に示すように、上側冷却通路4Aが排気ポート6の集合部出口部6Bの近傍において、排気口7から離隔する方向へ凹状に形成されており、この凹状の部分に分岐冷却通路4Cの横通路43が配置される。上側冷却通路4Aと分岐冷却通路4C(横通路43)との間には冷却水が流通しない壁部18が設けられる。分岐冷却通路4Cは、この壁部18によって上側冷却通路4Aから隔離される。なお、本実施形態の分岐冷却通路4Cは、例えば、張出部14の上面又は下面からとエンジン10のリア側とから穴あけ加工するとともに、不要な開口をプラグでシールすることで形成される。
【0027】
図5(B)および図6(B)に示すように、下側冷却通路4Bには、分岐冷却通路4Cの入口部4dと出口部4eとが設けられる。入口部4dには、下側冷却通路4Bを流れる冷却水の流れ(以下「主流」という)から分岐した一部(以下「分流」という)が流入する。出口部4eからは、分岐冷却通路4Cを流れた冷却水が流出し、下側冷却通路4Bを流れる冷却水の流れと合流する。本実施形態の入口部4dおよび出口部4eは、締結面15Aの下側に設けられた二つのねじ穴20の間であってねじ穴20の先端よりもシリンダヘッド1の外側に配置される。下側冷却通路4Bは、フロント側のねじ穴20を迂回した形状をなし、この迂回した部分(以下「迂回部46」という)の先端に入口部4dが位置する。
【0028】
本実施形態の下側冷却通路4Bには、分岐冷却通路4Cへ冷却水を案内する案内部17が設けられる。案内部17は、入口部4dよりも冷却水出口45側(冷却水の流通方向の下流側)に配置され、下側冷却通路4Bを形成するシリンダヘッド1の外壁部(すなわち張出部14の側壁部)から内側に向かって突設された突起として設けられる。図4に示すように、案内部17が設けられた位置には冷却水が流通しないため、案内部17によって入口部4dに向かう流路が形成される。
【0029】
図5(B)に示すように、本実施形態の案内部17は、シリンダヘッド1の外壁部からフロント側に向かって斜め方向に突設される。案内部17の入口部4d側の面は、迂回部46との間に流路断面積が略一定の流路を形成するように湾曲している。これにより、フロント側からの冷却水の流れが入口部4dへ滑らかに案内される。さらに、案内部17は、下側冷却通路4Bの主流の流路断面積を狭めるように突設される。このように、本実施形態の案内部17は、下側冷却通路4Bを流れる冷却水の流れを主流と分流とに分け、主流の流速を高めるとともに分流の流量を確保するように構成される。
【0030】
[3.作用,効果]
(1)上述したシリンダヘッド1によれば、分岐冷却通路4Cによって排気ポート6(マニホールド)の集合部出口部6Bを冷却することができるため、排気ポート6から排出される排気を効率よく冷却することができる。さらに、この分岐冷却通路4Cが、二つの冷却通路4A,4Bのうちの一方から分岐したのち元の冷却通路4A,4Bに戻る構成であるため、二つの冷却通路4A,4B内の冷却水温度の変化を抑制することができる。これにより、排気ポート6全体(マニホールド全体)の冷却性を安定化させることができる。なお、上述したシリンダヘッド1には、二つの冷却通路4A,4Bが排気ポート6を上下で挟むように配置されていることから、シリンダヘッド1に内蔵された排気ポート6の周辺の冷却効率を向上させることができる。
【0031】
(2)上述したシリンダヘッド1では、分岐冷却通路4Cが分岐,合流する下側冷却通路4Bが、分岐冷却通路4Cに冷却水を案内する案内部17を有することから、分岐冷却通路4C内に冷却水が流れ込みやすくなり、排気の冷却効率を向上させることができる。
(3)さらに上述した案内部17は、分岐冷却通路4Cの入口部4dよりも冷却水の流通方向の下流側に配置され、下側冷却通路4Bを形成するシリンダヘッド1の外壁部から内側へ突設された突起として設けられる。このため、分岐冷却通路4Cの入口部4dへ効率よく冷却水を導くことができ、排気の冷却効率をより向上させることができる。
【0032】
(4)上述したシリンダヘッド1には、フランジ部15の締結面15Aに穿設されたねじ穴20が、排気口7よりも上側に一つ配置されるとともに下側に二つ配置され、各ねじ穴20に締結具が締結される。上述したシリンダヘッド1では、分岐冷却通路4Cを流通する冷却水によって排気ポート6の集合部出口部6Bの周囲が冷却されることから、ねじ穴20の周囲も冷却することができ、これにより締結具の締付力を向上させることができる。なお、上述したシリンダヘッド1では、排気口7の上側に一つ,下側に二つのねじ穴20が設けられるため、締結具の個数を最小限にして排気管を締結することができる。
【0033】
(5)上述した分岐冷却通路4Cは、排気ポート6の下面に沿って配置された下側冷却通路4Bから分岐するとともに、上側のねじ穴20よりも排気口7側を通って下側冷却通路4Bに合流する。すなわち、横通路43が上側のねじ穴20と排気ポート6の集合部出口部6Bとの間に配置される。このため、排気口7から排出される排気の熱の伝わりを抑制することができるとともに、ねじ穴20の冷却効率を高めることができ、締結具の締付力をより向上させることができる。
【0034】
[4.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述した分岐冷却通路4Cの構成は一例であって、上述したものに限られない。例えば、二つの縦通路41,42が下側冷却通路4Bに対して直交する方向に設けられていてもよい。また、入口部4dおよび出口部4eの一方又は両方が、下側のねじ穴20の外側(フロント側およびリア側)に設けられていてもよい。また、横通路43が、上側冷却通路4Aよりも上側あるいは下側に配置されていてもよいし、締結面15Aの正面から見て、上側のねじ穴20と干渉する位置に設けられていてもよい。
【0035】
また、図7に示すように、分岐冷却通路4Cが下流冷却通路4Bから分岐したものでなくてもよい。すなわち、シリンダヘッド1が、上側冷却通路4Aから分岐し、排気ポート6の集合部出口部6Bの周囲を通って再び上側冷却通路4Aに合流する分岐冷却通路4C′を有していてもよい。この場合、上側冷却通路4Aには、分岐冷却通路4C′の入口部4d′と出口部4e′とが設けられる。上側冷却通路4Aを流通する冷却水の温度は、下側冷却通路4Bを流通する冷却水の温度よりも低い傾向があることから、分岐冷却通路4C′を設けることで排気の冷却効率を向上させることができる。
【0036】
なお、この構成の場合に、上述した案内部17と同様の案内部17を上側冷却通路4Aに設けることで、分岐冷却通路4C′への冷却水の流入を促進することができる。ただし、上述した案内部17の構成は一例であって、上述したものに限られない。また、案内部17は必須の構成ではなく省略可能である。案内部17を省略した場合、冷却水が流れ込みやすくなるように、例えば分岐冷却通路4Cの入口部4dの開口面積を大きくしてもよい。また、分岐冷却通路4Cの流路断面積は一定でなくてもよく、例えば縦通路41,42の流路断面積が出口側に向かって徐々に小さくなるように形成されていてもよい。
【0037】
また、上下の冷却通路4A,4Bとボス部19(ねじ穴20)との位置関係は上述したものに限られない。例えば、締結面15Aの正面から見て、上側冷却通路4Aが上側のねじ穴20と干渉する位置に配置されていてもよいし、上側のねじ穴20よりも上方に配置されていてもよい。同様に、下側冷却通路4Bが下側のねじ穴20と干渉しない位置に配置されていてもよい。
なお、フランジ部15の形状やボス部19(ねじ穴20)の配置および個数は上述したものに限られない。また、冷却通路4A,4B内の冷却水の流通方向がリア側からフロント側に向かう方向であってもよい。また、エンジン10の気筒数やシリンダヘッド1の排気口7の位置も上述した構成に限られない。
【符号の説明】
【0038】
1 シリンダヘッド
4 排気側の冷却通路
4A 上側冷却通路
4B 下側冷却通路
4C,4C′ 分岐冷却通路
4d,4d′ 入口部
4e,4e′ 出口部
6 排気ポート(マニホールド)
6B 集合部出口部
7 排気口(開口)
10 エンジン
15A 締結面
17 案内部
18 壁部
20 ねじ穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7