(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2伝熱体が有する前記第1流路の少なくとも一部は、更に、前記第1伝熱体が有する前記第1流路の少なくとも一部と、接合方向で、かつ、非接触で重なる請求項1に記載の熱処理装置。
前記第2伝熱体が有する前記第1流路と、前記第1伝熱体が有する前記第2流路とが重なる割合xは、前記第1流路及び前記第2流路の接合方向の流路高さをHとし、前記第1流路及び前記第2流路の流路幅をWとすると、
x>1−(H/W)
との条件を満たす請求項1又は2に記載の熱処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。また、本願明細書及び図面において、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。さらに、以下の各図では、鉛直方向にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内において、後述する第1及び第2流路の延設方向にX軸を取り、かつ、X軸に垂直な方向にY軸を取る。
【0011】
本発明の熱処理装置は、第1流体と第2流体との熱交換を利用する。以下、本実施形態に係る熱処置装置は、反応装置であるものとする。ただし、本発明は、例えば熱交換器などにも適用可能である。
【0012】
図1は、本実施形態に係る反応装置1の構成を示す斜視分解図である。反応装置1は、熱交換型であり、反応体としての反応原料を含んだ気体又は液体の反応流体を加熱又は冷却することで、反応体の反応を進行させる。反応装置1は、本体部としての熱交換部101と、反応流体導入部120及び生成物排出部122と、熱媒体導入部130及び熱媒体排出部132とを備える。
【0013】
図2は、熱交換部101の構成を示す断面図であり、特に、
図2(a)は、
図1におけるA−A断面図を示し、
図2(b)は、
図1におけるB−B断面図を示す。熱交換部101は、第1流体としての反応流体又は生成物が流通する反応流路と、第2流体としての熱媒体が流通する熱媒体流路とを含み、第1流体と第2流体とが互いに反対方向に流れる対向流型の構造を有する。
【0014】
熱交換部101は、複数の伝熱体Pと、蓋体140とを備える。本実施形態では、一例として、鉛直方向の最上部に位置する伝熱体P1から最下部に位置する伝熱体P6までの計6つの伝熱体が存在するものとする。6つの伝熱体Pは、それぞれ、耐熱性を有する熱伝導性素材で形成される平板状部材であり、反応流路である第1流路FP1と、熱媒体流路である第2流路FP2とを有する。
【0015】
まず、伝熱体P1は、それぞれ複数の第1流路FP1と第2流路FP2とを有し、本実施形態では、一例として、3つの第1流路FP1と、2つの第2流路FP2とを有する。第1流路FP1及び第2流路FP2は、それぞれ同じ方向に沿って延設されており、本実施形態ではX軸方向に沿って延設されている。また、第1流路FP1と第2流路FP2とは、壁部P1aを介して交互に並設されている。
【0016】
第1流路FP1は、第2流路FP2を流通する熱媒体から供給された熱又は冷熱を受容して反応流体を反応させ、生成物を生成する。また、第1流路FP1は、鉛直方向上方を開とし、伝熱体P1の一方の端部の壁面から他方の端部の壁面まで一直線で貫通する溝である。さらに、不図示であるが、第1流路FP1には、反応体の反応を促進させるための触媒体を設置してもよい。なお、触媒体については、以下で詳説する。
【0017】
第2流路FP2は、熱媒体から供給された熱又は冷熱を、第1流路FP1に向けて供給する。また、第2流路FP2は、鉛直方向上方を開とし、互いに対向する2つの壁部P1aと、互いに対向する2つの壁部P1bとで側面四方を囲まれる溝である。さらに、不図示であるが、第2流路FP2には、熱媒体との接触面積を増加させて熱媒体と伝熱体Pとの間の伝熱を促進するための伝熱促進体を設置してもよい。伝熱促進体は、伝熱体Pとの接触面積を確保するために、コルゲート板状とし得る。また、伝熱促進体を構成する熱伝導性素材としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、鉄系メッキ鋼等の金属が挙げられる。
【0018】
伝熱体P2は、鉛直方向の上部で伝熱体P1に接合される伝熱体である。伝熱体P1と同様に、伝熱体P2も、複数の第1流路FP1と第2流路FP2とを有し、第1流路FP1及び第2流路FP2は、X軸方向に沿って延設され、壁部P2aを介して交互に並設されている。ただし、伝熱体P2の第1流路FP1及び第2流路FP2は、伝熱体P1の第1流路FP1及び第2流路FP2の位置に対して、延設方向であるX軸方向と接合方向であるZ軸方向とにそれぞれ垂直となるY軸方向に、ずれて形成されている。したがって、伝熱体P2は、2つの第1流路FP1と、3つの第2流路FP2とを有することになる。
【0019】
伝熱体P2の下部に接合される伝熱体P3は、伝熱体P1と同様の形状を有する。伝熱体P3の下部に接合される伝熱体P4は、伝熱体P2と同様の形状を有する。伝熱体P4の下部に接合される伝熱体P5は、伝熱体P1と同様の形状を有する。また、伝熱体P5の下部に接合される伝熱体P6は、伝熱体P2と同様の形状を有する。すなわち、それぞれの伝熱体Pに形成されている第1流路FP1及び第2流路FP2の位置は、伝熱体P一つおきに同じとなる。
【0020】
蓋体140は、伝熱体P1の鉛直方向の上部に設置される平板部材である。そして、
図1に示すように、平板面を水平として、鉛直方向に伝熱体P6から順にそれぞれの伝熱体Pと蓋体140とを接合することで、接合体又は積層体としての熱交換部101が形成される。熱交換部101の組み立ての際には、各部材間をTIG(Tungsten Inert Gas)溶接や拡散接合等のような接合方法を利用して固着させることで、各部材間の接触不良に起因する伝熱性の低下等が抑止される。
【0021】
ここで、第1流路FP1は、それぞれ、反応流体を熱交換部101の外部から導入する開口と、生成物を熱交換部101の外部に放出する開口とを直接的に有している。一方、第2流路FP2は、それぞれ、伝熱体Pの内部に形成されているため、熱交換部101の外部に直接的に開放されている開口を有していない。そこで、伝熱体Pは、それぞれ、第2流路FP2の一方の端部に連通し、伝熱体P及び蓋体140の接合方向に沿って設けられる第1連通路FP3と、第2流路FP2の他方の端部に連通し、同様に接合方向に沿って設けられる第2連通路FP4とを有する。
【0022】
具体的には、
図2(a)に示すように、伝熱体P1〜伝熱体P5に形成されている第1連通路FP3は、それぞれ接合方向に貫通している。そして、熱交換部101の最下部に位置する伝熱体P6に形成されている第1連通路FP3のみ、第2流体が熱交換部101の底部から放出されないように、貫通していない。また、それぞれの伝熱体Pに形成されている第1連通路FP3は、熱交換部101としてそれぞれの伝熱体Pが接合されている状態で、それぞれ連通している。すなわち、組み合わされた第1連通路FP3は、伝熱体P1の上面にある1つの開口を通じて外部に開放されることになる。なお、第2連通路FP4も、第1連通路FP3と同一形状である。
【0023】
熱交換部101を構成する各要素の熱伝導性素材としては、鉄系合金やニッケル合金等の耐熱性金属が好適である。具体的には、ステンレス綱等の鉄系合金、インコネル625(登録商標)、インコネル617(登録商標)、Haynes230(登録商標)等のニッケル合金のような耐熱合金が挙げられる。これらの熱伝導性素材は、第1流路FP1での反応進行や熱媒体として使用し得る燃焼ガスに対する耐久性又は耐食性を有するので好ましいが、これらに限定されるものではない。また、鉄系メッキ鋼や、フッ素樹脂等の耐熱樹脂で被覆した金属、又は、カーボングラファイト等でもよい。
【0024】
なお、熱交換部101は、少なくとも2つの伝熱体Pを用いても構成可能である。ただし、熱交換性能を向上させる観点から、伝熱体Pの数は多い方が望ましい。また、1つの伝熱体Pに形成される第1流路FP1及び第2流路FP2の数も、特に限定されるものではなく、熱交換部101の設計条件や伝熱効率などを考慮して適宜変更可能である。さらに、本実施形態では、熱交換部101自体を反応装置1の本体部と位置付けているが、熱交換部101からの放熱を抑制して熱損失を抑えるために、ハウジング又は断熱材で熱交換部101の周囲を覆う構成としてもよい。
【0025】
反応流体導入部120は、凹状に湾曲した筐体であり、複数の第1流路FP1が上流側で開放されている側の熱交換部101の側面を覆い、熱交換部101との間に空間を形成する。反応流体導入部120は、熱交換部101に対して着脱可能又は開閉可能に設置される。この着脱等により、例えば、作業者が第1流路FP1に対する触媒体の挿入や抜き出しを行うことができる。また、反応流体導入部120は、反応流体を熱交換部101の外部から内部へ導入する導入配管120aを有する。導入配管120aは、
図1に示すように、熱交換部101の側面に対して中心、具体的にはYZ平面上の中心に位置し、複数の第1流路FP1の開口方向と同一方向に連接されている。これにより、導入配管120aは、第1流路FP1のそれぞれに、反応流体をバランス良く分配することができる。
【0026】
生成物排出部122は、反応流体導入部120と同様に、凹状に湾曲した筐体であり、複数の第1流路FP1が下流側で開放されている側の熱交換部101の側面を覆い、熱交換部101との間に空間を形成する。生成物排出部122は、反応流体導入部120と同様に熱交換部101に対して着脱可能又は開閉可能に設置されるものとしてもよいが、反応流体導入部120が着脱可能等に構成されているのであれば、着脱等不可能であってもよい。その反対に、生成物排出部122が着脱可能等に構成されているのであれば、反応流体導入部120が着脱等不可能であってもよい。また、生成物排出部122は、生成物を熱交換部101の内部から外部へ排出する排出配管122aを有する。排出配管122aも、
図1に示すように、熱交換部101の側面に対して中心、具体的にはYZ平面上の中心に位置し、複数の第1流路FP1の開口方向と同一方向に連接されている。これにより、排出配管122aは、第1流路FP1のそれぞれから、効率良く生成物を回収しつつ排出させることができる。
【0027】
熱媒体導入部130は、蓋体140に形成された複数の開口部であり、伝熱体P1の上面から開放されている複数の第2連通路FP4にそれぞれ連通している。熱媒体導入部130は、不図示であるが、熱交換部101の外部から熱媒体を導入する導入配管に接続される。
【0028】
熱媒体排出部132は、蓋体140に形成された複数の開口部であり、伝熱体P1の上面から開放されている複数の第1連通路FP3にそれぞれ連通している。熱媒体排出部132は、不図示であるが、熱交換部101の外部へ熱媒体を排出する排出配管に接続される。
【0029】
熱交換部101は、液−液型熱交換器、気−気型熱交換器及び気−液型熱交換器のいずれとしても使用可能であり、反応装置1に供給する反応流体及び熱媒体は、気体及び液体のいずれであってもよい。また、反応装置1は、吸熱反応や発熱反応など様々な熱的反応による化学合成を可能とする。そのような熱的反応による合成として、例えば、式(1)で示すメタンの水蒸気改質反応、式(2)で示すメタンのドライリフォーミング反応のような吸熱反応、式(3)で示すシフト反応、式(4)で示すメタネーション反応、式(5)で示すフィッシャー−トロプシュ(Fischer tropsch)合成反応等の発熱反応による合成がある。なお、これらの反応における反応流体は、気体状である。
【0030】
CH
4 + H
2O → 3H
2 + CO ----式(1)
CH
4 + CO
2 → 2H
2 + 2CO ----式(2)
CO + H
2O → CO
2 + H
2 ----式(3)
CO + 3H
2 → CH
4 + H
2O ----式(4)
(2n+1)H
2 + nCO → C
nH
2n+2 + nH
2O ----式(5)
【0031】
また、上記反応以外に、アセチル化反応、付加反応、アルキル化反応、脱アルキル化反応、水素脱アルキル化反応、還元性アルキル化反応、アミン化反応、芳香族化反応、アリール化反応、自熱式改質反応、カルボニル化反応、脱カルボニル化反応、還元性カルボニル化反応、カルボキシル化反応、還元性カルボキシル化反応、還元性カップリング反応、縮合反応、分解(クラッキング)反応、水素分解反応、環化反応、シクロオリゴマー化(cyclooligomerization)反応、脱ハロゲン化反応、二量体化反応、エポキシ化反応、エステル化反応、交換反応、ハロゲン化反応、水素化反応、水素ハロゲン化反応、同族体形成(homologation)反応、水和反応、脱水反応、水素化反応、脱水素化反応、水素カルボキシル化反応、水素ホルミル化反応、水添分解反応、水素金属化反応、ヒドロシリル化反応、加水分解反応、水素化処理反応、異性体化反応、メチル化反応、脱メチル化反応、メタセシス(置換)反応、ニトロ化反応、酸化反応、部分酸化反応、重合反応、還元反応、逆水性ガスシフト(reverse water gas shift)反応、スルホン化反応、短鎖重合反応、エステル交換反応、三量体化反応等の実施に、反応装置1を適用してもよい。
【0032】
反応装置1では、上記のような化学反応に関与する原料などの物質を反応体とし、その反応体を有する流体を反応流体とする。反応流体は、第1流路FP1を流通する間に、第2流路FP2を流通する熱媒体の熱又は冷熱を受けて加熱又は冷却されて反応が進行し、反応体が目的生成物に変換される。なお、反応流体は、反応に関与しないキャリアを含有してもよい。キャリアは、実施する化学反応を考慮して、反応の進行に影響を与えない物質から適宜選択することができる。特に、気体状の反応流体に使用可能なキャリアとしては、不活性ガスや低反応性の気体状物質等の気体キャリアが挙げられる。一方、熱媒体としては、反応装置1の構成素材を腐食させない流体物質が好適であり、例えば、水、油等の液状物質や、燃焼ガス等の気体状物質が使用できる。熱媒体として気体状物質を使用する構成は、液体媒体を使用する場合と比較して、取り扱いが容易である。
【0033】
触媒体に含まれる触媒は、上述のような化学反応の進行促進に有効な活性金属を主成分として有し、反応装置1で遂行する合成反応に基づいて反応促進に適したものが適宜選択される。触媒成分である活性金属としては、例えば、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Pt(白金)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)等が挙げられ、1種、又は、反応促進に有効である限り、複数種を組み合わせて使用してもよい。触媒体は、例えば、触媒を構造材に担持することによって調製される。構造材は、耐熱性の金属から、成形加工が可能で、触媒の担持が可能なものが選択される。構造体、すなわち触媒体は、反応流体との接触面積を増加させるために、断面が波状に丸く湾曲したコルゲート板状や鋸歯状に屈曲した形状などがあり得る。耐熱性の金属としては、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Al(アルミニウム)、Y(イットリウム)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Mg(マグネシウム)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等の金属の1種又は複数種を主成分とする耐熱合金がある。例えばFecralloy(登録商標)等の耐熱合金製の薄板状構造材を成形加工して触媒体を構成してもよい。触媒の担持方法としては、表面修飾等によって構造材上に直接担持する方法や、担体を用いて間接的に担持する方法などがあり、実用的には、担体を用いた触媒の担持が容易である。担体は、反応装置1で実施する反応を考慮して、反応の進行を阻害せず耐久性を有する材料であって、使用する触媒を良好に担持し得るものが適宜選択される。例えば、Al
2O
3(アルミナ)、TiO
2(チタニア)、ZrO
2(ジルコニア)、CeO
2(セリア)、SiO
2(シリカ)等の金属酸化物が挙げられ、1種又は複数種を選択して担体として使用することができる。担体を用いた担持方法としては、例えば、成形した構造材の表面に触媒と担体との混合物層を形成する方式や、担体層を形成した後に表面修飾等によって触媒を担持させる方式などが挙げられる。
【0034】
次に、本実施形態による作用及び効果について説明する。
【0035】
まず、第1流体と第2流体との熱交換を利用する熱処理装置は、第1流体を流通させる第1流路FP1と、第2流体を流通させる第2流路FP2とが壁部を介して並設されている第1伝熱体と、第1流体を流通させる第1流路FP1と、第2流体を流通させる第2流路FP2とが壁部を介して並設され、第1伝熱体に接合される第2伝熱体と、を備え、第2伝熱体が有する第1流路FP1の少なくとも一部は、第1伝熱体が有する第2流路FP2の少なくとも一部と、接合方向で、かつ、非接触で重なる。
【0036】
ただし、熱処理装置は、本実施形態では反応装置1に相当する。第1流体は、反応流体又は生成物とし、第2流体は、熱媒体とし得る。また、第1伝熱体が本実施形態における伝熱体P2に相当するとすれば、第2伝熱体は、伝熱体P3に相当する。また、第1伝熱体が伝熱体P1に相当するとすれば、第1伝熱体の壁部は、壁部P1aに相当する。なお、その他の伝熱体P2〜伝熱体P6に設けられている壁部P2a〜P6aについても同様である。ここで、少なくとも一部と表現しているのは、第2伝熱体の第1流路FP1の一部と第1伝熱体の第2流路FP2の一部とが上記のように重なる場合を包含するだけではないからである。すなわち、以下で詳説するが、ここでは、第2伝熱体の第1流路FP1と、第1伝熱体の第2流路FP2とが、接合方向で、かつ、非接触で、完全に重なる場合も包含している。
【0037】
本実施形態に係る熱処理装置によれば、第1に、第1流路FP1は、側面の壁部を介して並設されている第2流路FP2から熱を受ける。すなわち、第1流路FP1は、延設方向及び接合方向に対して垂直となる図中左右方向から熱を受けることができる。第2に、第1流路FP1は、その第1流路FP1を有する伝熱体Pに接合されている他の伝熱体Pが有する第2流路FP2から熱を受ける。すなわち、第1流路FP1は、接合方向、具体的には、図中上下斜め方向から熱を受けることができる。したがって、反応流路が接合方向からしか熱を受けることができない従来の熱処理装置に比べて、その伝熱面積を増加させることができ、その結果、第1流体に与える熱供給量を増加させることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る熱処理装置では、第2伝熱体が有する第1流路FP1の少なくとも一部は、更に、第1伝熱体が有する第1流路FP1の少なくとも一部と、接合方向で、かつ、非接触で重なる。
【0039】
本実施形態に係る熱処理装置によれば、第2伝熱体の第1流路FP1は、結果的に、
図1及び
図2に示すように、第1伝熱体の第1流路FP1及び第2流路FP2の両方に対して一部が重なることになる。したがって、伝熱面積を従来よりも増加させる観点と、伝熱体Pの横幅、すなわち第1流路FP1と第2流路FP2とが並設される方向の幅を可能な限り縮小させる観点との双方を考慮した場合に、最も効率がよい。
【0040】
また、本実施形態に係る熱処理装置では、第2伝熱体が有する第1流路FP1と、第1伝熱体が有する第2流路FP2とが重なる割合xは、第1流路FP1及び第2流路FP2の接合方向の流路高さをHとし、第1流路FP1及び第2流路FP2の流路幅をWとすると、x>1−(H/W)との条件を満たす。
【0041】
本実施形態に係る熱処理装置によれば、熱交換部101を構成する伝熱体Pの設置数を従来に比べて減らすことも可能である。
図3は、熱交換部101における第1流路FP1と第2流路FP2との位置関係の詳細を示す拡大断面図である。ここでは、一例として、伝熱体P2に形成されている第2流路FP2と、伝熱体P2の下部に接合されている伝熱体P3に形成されている第1流路FP1とについて考える。
【0042】
ここで、本実施形態における流路配置では、第1流路FP1は、延設方向視で上下左右に存在する第2流路FP2から熱を受けるので、伝熱面積は、(2×H)+(2×xW)となる。一方、従来の流路配置では、反応流路及び熱媒体流路の寸法が上記と同様であるとすると、反応流路は、延設方向視で上下に存在する熱媒体流路からしか熱を受けないので、伝熱面積は、(2×W)となる。このことから、本実施形態における流路配置が、従来の流路配置よりも伝熱性能を向上させるものとなるためには、(2×H)+(2×xW)>(2×W)の式が成り立ち、すなわち、割合xが、x>1−(H/W)の条件を満たせばよい。したがって、この点を考慮して伝熱体Pを設計すれば、従来の熱交換部と比較して、伝熱面積を同等か又は向上させつつ、伝熱体Pの設置数を半分程度にまで減らすことができる。
【0043】
さらに、本実施形態に係る熱処理装置では、第1伝熱体及び第2伝熱体は、第1伝熱体が有する第2流路FP2と、第2伝熱体が有する第2流路FP2とを連通させる連通路FP3,FP4を有する。
【0044】
本実施形態に係る熱処理装置によれば、第1伝熱体及び第2伝熱体の内部に第1連通路FP3及び第2連通路FP4を設け、熱交換部101の内部に存在する複数の第2流路FP2を外部に連通させる。したがって、第1に、第1連通路FP3及び第2連通路FP4が熱交換部101の内部に存在することから、流路内の耐圧の点で有利となる。第2に、熱交換部101の側面などに、別途、連通路となる配管や筐体等を接続させる必要がないので、装置構成が簡略化し、また、第1連通路FP3及び第2連通路FP4の形成も、単に孔を開けるのみであるので簡単化するという利点がある。
【0045】
(他の実施形態)
なお、上記触れたように、本発明では、第2伝熱体の第1流路FP1と、第1伝熱体の第2流路FP2とが、接合方向で、かつ、非接触で、完全に重なる場合もあり得る。
図4は、この場合について説明するための熱交換部101の他の構成を示す断面図である。上記実施形態では、第2伝熱体の第1流路FP1と第1伝熱体の第2流路FP2とが接合方向で完全に重なるまでずれているわけではないので、第1連通路FP3及び第2連通路FP4を、
図2(a)に示すように一直線状に形成することができる。第1連通路FP3及び第2連通路FP4が一直線状であることは、第1連通路FP3及び第2連通路FP4を形成する上で容易となる。これに対して、
図4に示すような構成では、第2伝熱体の第1流路FP1と第1伝熱体の第2流路FP2とが接合方向で完全に重なっているので、第1連通路FP3は、例えば、第2流路FP2に連通する連通路FP3aと、接合方向に対して傾斜している連通路FP3bとを組み合わせて構成されることになる。これは、第2連通路FP4についても、同様である。この場合、第1連通路FP3及び第2連通路FP4を形成する工程が、上記の実施形態と比較して複雑となるが、伝熱面積をより増加させる点では有利となる。
【0046】
また、第1流体と第2流体とは、本発明が適用される熱処理装置によっては、それぞれ異なる物質となる場合も、同一の物質となる場合もあり得る。また、上記実施形態では、第1流体が反応流体又は生成物で、第2流体が熱媒体であるものとしたが、それぞれ反対とすることも可能である。さらに、本発明が適用される熱処理装置が熱交換器であるならば、第1流体及び第2流体ともに、熱媒体となる場合もあり得る。
【0047】
また、上記実施形態では、伝熱体Pごとに並設される2種類の形状の流路、すなわち、伝熱体Pの一方の端部の壁面から他方の端部の壁面まで一直線で貫通する第1流路FP1と、側面四方を壁部P1a,P1bで囲まれる第2流路FP2とを例示した。しかしながら、第1流路FP1及び第2流路FP2の形状は、それぞれ上記のような形状に限定されるものではない。例えば、第1流路FP1及び第2流路FP2ともに、1つの方向に延設される溝の一端が、上記の第1流路FP1の例示と同様に、伝熱体Pの一方の端部の壁面から貫通し、他端が、上記の第2流路FP2の例示と同様に、連通路に連接されるものとしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、熱交換部101が、第1流路FP1を流通する第1流体と第2流路FP2を流通する第2流体とが互いに反対方向に流れる対向流型であるものとしたが、互いに同方向に流れる並流型であってもよい。さらに、本発明では、第1流体と第2流体とが流れる方向についても、なんら限定されるものではない。
【0049】
さらに、上記実施形態では、熱交換部101を構成する6つの伝熱体Pが鉛直方向に接合すなわち積層されるものとしているが、本発明は、これに限られない。例えば、熱交換部101を構成する6つの伝熱体Pが、それぞれ接合されて鉛直方向に立設するような、いわゆる横置きとして使用されるものとしてもよい。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。