特許第6834194号(P6834194)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6834194ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834194
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20210215BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20210215BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20210215BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210215BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210215BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L45/00
   C08K5/5415
   C08K3/36
   B60C1/00 A
   B60C11/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-131228(P2016-131228)
(22)【出願日】2016年7月1日
(65)【公開番号】特開2018-2867(P2018-2867A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】杉本 洋樹
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−177501(JP,A)
【文献】 特開昭60−231409(JP,A)
【文献】 特開平03−075215(JP,A)
【文献】 特開2016−108428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/00
B60C 1/00
B60C 11/00
C08K 3/36
C08K 5/5415
C08L 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均ガラス転移温度(Tg)が−50〜−35℃であるジエン系ゴム100質量部に対し、
DBP吸油量が300ml/100gを超えかつ800ml/100g以下であり、なおかつ細孔容積Vpが2〜10ml/gである多孔質シリカを1〜50質量部、
軟化点が100〜150℃の芳香族変性テルペン樹脂を1〜50質量部、および
炭素数3〜20のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランをシリカの総量(前記多孔質シリカおよびそれ以外のシリカの合計量)に対し1〜20質量%配合し、
前記シリカの総量が80〜180質量部であり、かつ
前記多孔質シリカの配合量が、前記シリカの総量の30質量%未満である
ことを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記多孔質シリカのメタノール滴定による疎水化度が30〜60容量%であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記シリカ(前記多孔質シリカを除く)のCTAB比表面積が、180〜250m/gであることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性を同時に向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイパフォーマンスタイヤは、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性を高次元で具備する必要がある。
ウェットグリップ性能を向上させるためには、ガラス転移温度(Tg)の高いスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)や粒径の小さいフィラーを多量に配合する手法が挙げられるが、そのような配合では転がり抵抗性が悪化するという問題点がある。また、シリカを多量に配合することで転がり抵抗性は改善するが、耐摩耗性が悪化してしまう。
このように、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性を同時に向上することは、当業界で困難な事項とされていた。
なお、ゴム組成物に多孔質シリカを配合する技術は、下記特許文献1〜3等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−177501号公報
【特許文献2】特開2001−151945号公報
【特許文献3】特開2008−1826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の目的は、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性を同時に向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の平均Tgを有するジエン系ゴムに対し、特定範囲のDBP吸油量および細孔容積を満たす多孔質シリカ、それ以外のシリカ、特定の軟化点を有する芳香族変性テルペン樹脂、および特定のアルキルアルコキシシランを特定量でもって配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0006】
1.平均ガラス転移温度(Tg)が−50〜−35℃であるジエン系ゴム100質量部に対し、
DBP吸油量が300ml/100gを超えかつ800ml/100g以下であり、なおかつ細孔容積Vpが2〜10ml/gである多孔質シリカを1〜50質量部、
軟化点が100〜150℃の芳香族変性テルペン樹脂を1〜50質量部、および
炭素数3〜20のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランをシリカの総量(前記多孔質シリカおよびそれ以外のシリカの合計量)に対し1〜20質量%配合し、
前記シリカの総量が80〜180質量部であり、かつ
前記多孔質シリカの配合量が、前記シリカの総量の30質量%未満である
ことを特徴とするゴム組成物。
2.前記多孔質シリカのメタノール滴定による疎水化度が30〜60容量%であることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
3.前記多孔質シリカが表面処理され、かつ前記表面処理濃度が炭素濃度として5〜10%であることを特徴とする前記1または2に記載のゴム組成物。
4.前記シリカ(前記多孔質シリカを除く)のCTAB比表面積が、180〜250m/gであることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
5.前記1〜4のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の平均Tgを有するジエン系ゴムに対し、特定範囲のDBP吸油量および細孔容積を満たす多孔質シリカ、それ以外のシリカ、特定の軟化点を有する芳香族変性テルペン樹脂、および特定のアルキルアルコキシシランを特定量でもって配合したので、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性を同時に向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0009】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、ゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
これらのうち、本発明の効果が向上するという理由から、NR、BR、SBRを用いるのが好ましい。
また本発明で使用されるジエン系ゴムは、平均ガラス転移温度(平均Tg)が−50〜−35℃であることが必要である。平均Tgが−50℃未満であるとウェットグリップ性能が悪化する。逆に−35℃を超えると、耐摩耗性が悪化する。平均Tgは、ガラス転移温度の平均値であり、各ジエン系ゴムのガラス転移温度と各ジエン系ゴムの配合割合から平均値として算出することができる。
【0010】
(多孔質シリカ)
本発明では、DBP吸油量が300ml/100gを超えかつ800ml/100g以下であり、なおかつ細孔容積Vpが2〜10ml/gである多孔質シリカを使用する。
多孔質シリカのDBP吸油量が300ml/100g以下では、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性を同時に向上させることができない。またDBP吸油量が800ml/100gを超えると混合加工性が著しく低下し、その結果、フィラーの分散が悪化する。
本発明において、多孔質シリカのDBP吸油量は、450〜750ml/100gが好ましく、400〜600ml/100gがさらに好ましい。
なお、多孔質シリカのDBP吸油量は、JIS K6217−4吸油量A法に準拠して求めるものとする。
【0011】
多孔質シリカの細孔容積Vpが2ml/g未満であるとウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性を同時に向上させることができない。また細孔容積Vpが10ml/gを超えると耐摩耗性が悪化する。
本発明において、多孔質シリカの細孔容積Vpは、2.5〜7ml/gが好ましく、3〜6ml/gがさらに好ましい。
なお、多孔質シリカの細孔容積Vpは、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において、150℃の温度で2時間以上乾燥させ、その後液体窒素温度における窒素の吸着剤のみの吸着等温線を取得し、BJH法(Barrett,E.P.;Joyner,L.G.;Halenda,P.P.,J.Am.Chem.Soc.73,373(1951))により解析して得られる細孔半径1nm以上100nm以下の細孔に由来する細孔容積である。
【0012】
本発明で使用される多孔質シリカの製造方法は公知であり、例えば特開平10−236817号公報、特開2013−203804号公報等に開示されている方法が挙げられる。
【0013】
本発明で使用される多孔質シリカの比表面積は、300m/g〜800m/gであることが好ましく、350m/g〜700m/gであることがより好ましく、400m/g〜600m/gであることが特に好ましい。
なお、多孔質シリカの比表面積は、測定対象のサンプルを1kPa以下の真空下において150℃の温度で2時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を測定し、該吸着等温線をBET法により解析して求めた値であって、その際の解析に用いる圧力範囲は、相対圧0.1〜0.25の範囲である。
本発明で使用される多孔質シリカの一次粒子径は、例えば3nm〜10nm、好ましくは3nm〜7nmである。
【0014】
通常、多孔質シリカは複数の粒子が集まって二次粒子を形成し、一次粒子同士で形成される間隙部によって多孔質化する。この間隙部にゴムが入り込むことにより、ゴムと多孔質シリカの強固な複合体が形成され、ゴムの分子運度が遮られ、本発明の効果が奏されるものと推測される。
【0015】
また本発明の多孔質シリカは、メタノール滴定による疎水化度が30〜60容量(vol)%であることが好ましい。疎水化度が当該範囲を満たすことにより、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性をさらに高次に満足させることができる。
本発明において、多孔質シリカの疎水化度は、40〜55容量%がさらに好ましい。
上記疎水化度を達成するには、多孔質シリカを表面処理する際の処理剤量等の条件を調整する方法等がある。
なお、多孔質シリカの疎水化度は、多孔質シリカを水に加え、攪拌下にメタノールを滴定により加え、多孔質シリカの全量が水に懸濁した際のメタノール−水混合溶媒中のメタノールの濃度(容量%)の値を求めたものである。
【0016】
また本発明の多孔質シリカは表面処理され、かつ前記表面処理濃度が炭素濃度として5〜10%であることが好ましい。炭素濃度が当該範囲を満たすことにより、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性をさらに高次に満足させることができる。
本発明において、上記炭素濃度は6〜9%がさらに好ましい。
ここで言う表面処理とは、例えばシランカップリング剤を用いた処理、シリル化剤を用いた処理、シロキサン類を用いた処理等が挙げられる。
多孔質シリカの表面処理方法としては、例えばシリル化剤を用いた処理の場合、特開2013−203804号公報に開示される方法により処理することができる。
なお、炭素濃度は、多孔質シリカを完全燃焼させ、得られた燃焼ガス中の炭素ガスを定量し、換算することによって求めることができる。具体的には、エレメンタール社製のVario Micro cube等の市販の元素分析装置により測定することが可能である。
【0017】
(シリカ)
本発明で使用する、前記多孔質シリカ以外のシリカはとくに制限されず、通常ゴム組成物に配合されるシリカを使用することができる。なお、ここで言うシリカとは前記多孔質シリカ以外のシリカを指すものとする。
なお、シリカのCTAB比表面積(ISO5794/1に準拠して測定)は180〜250m/gであるのが好ましく、195〜250m/gであるのがさらに好ましい。
【0018】
(芳香族変性テルペン樹脂)
また本発明では、ウェットグリップ性能を高めるという観点から、軟化点が100〜150℃の芳香族変性テルペン樹脂を配合する。
芳香族変性テルペン樹脂としては、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネンなどのテルペン樹脂と、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデンなどの芳香族化合物とを重合させて得られる芳香族変性テルペン樹脂が有効に使用される。当該芳香族化合物の芳香族変性テルペン樹脂中での含有量は、10〜50質量%であることが好ましい。
【0019】
(アルキルアルコキシシラン)
本発明で使用されるアルキルアルコシキシランとしては、好適には下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】
(式(1)中、R1は炭素数3〜20のアルキル基を表し、Etはエチル基を表す。)
【0022】
ここで、R1の炭素数3〜20のアルキル基としては、中でも、炭素数7〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。これらのうち、ジエン系ゴムとの相溶性の観点から、炭素数8〜10のアルキル基がさらに好ましく、オクチル基、ノニル基であるのがとくに好ましい。
【0023】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、平均ガラス転移温度(Tg)が−50〜−35℃であるジエン系ゴム100質量部に対し、
上記多孔質シリカを1〜50質量部、
軟化点が100〜150℃の芳香族変性テルペン樹脂を1〜50質量部、および
炭素数3〜20のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランをシリカの総量(前記多孔質シリカおよびそれ以外のシリカの合計量)に対し1〜20質量%配合し、
前記シリカの総量が80〜180質量部であり、かつ
前記多孔質シリカの配合量が、前記シリカの総量の30質量%未満である
ことを特徴とする。
【0024】
多孔質シリカの配合量が1質量部未満であると、添加量が少なすぎて本発明の効果を奏することができない。逆に50質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する。
前記芳香族変性テルペン樹脂の配合量が1質量部未満であると、添加量が少なすぎて本発明の効果を奏することができない。逆に50質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する。
前記アルキルアルコキシシランの配合量が1質量%未満であると、添加量が少なすぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量%を超えると、耐摩耗性が悪化する。
前記シリカの総量が80質量部未満であるとウェット性能が悪化し、逆に180質量部を超えると低燃費性能が悪化する。
前記多孔質シリカの配合量が、前記シリカの総量の30質量%以上であると、耐摩耗性が悪化する。
【0025】
前記多孔質シリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、15〜30質量部がさらに好ましい。
前記芳香族変性テルペン樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、5〜15質量部がさらに好ましい。
前記アルキルアルコキシシランの配合量は、前記シリカの総量に対し、2〜10質量%がさらに好ましい。
前記シリカの総量は、ジエン系ゴム100質量部に対し90〜150質量部がさらに好ましい。
前記多孔質シリカの配合量は、前記シリカの総量に対し、5〜20質量%がさらに好ましい。
【0026】
(シランカップリング剤)
本発明においては、シランカップリング剤を配合することができる。シランカップリング剤としては、とくに制限されないが、含硫黄シランカップリング剤が好ましく、例えば3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン、ビス−(3−ビストリエトキシシリルプロピル)−テトラスルフィド、ビス−(3−ビストリエトキシシリルプロピル)−ジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0028】
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに適しており、トレッド、とくにキャップトレッドに適用するのがよい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0030】
標準例、実施例1〜5および比較例1〜7
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、混練物をミキサー外に放出させて室温冷却させた。その後、同バンバリーミキサーにおいて加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0031】
耐摩耗性:JIS K6264に準拠し、室温で測定した。結果は、標準例の値を100として指数で示した。指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。
転がり抵抗性:JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。結果は、標準例の値を100として指数表示した。指数が小さいほど低転がり抵抗性であることを示す。
ウェットグリップ性能:JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件で、tanδ(0℃)を測定した。結果は、標準例の値を100として指数表示した。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れることを示す。
結果を表1に併せて示す。
【0032】
【表1】
【0033】
*1:NR(天然ゴム、Tg=−65℃)
*2:E−SBR(日本ゼオン(株)製Nipol 9548、Tg=−42℃)
*3:S−SBR(日本ゼオン(株)製Nipol NS522、Tg=−31℃)
*4:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220、Tg=−105℃)
*5:カーボンブラック(キャボットジャパン社製ショウブラックN339)
*6:シリカ(ローディア社製Premium 200MP、CTAB比表面積=200m/g)
*7:多孔質シリカ−1
DBP吸油量=492ml/100g、
細孔容積Vp=3.8ml/g、
メタノール滴定による疎水化度=48容量%、
オクタメチルシクロテトラシロキサンによる表面処理有り(炭素濃度=8.1%)、
比表面積=502m/g
D50=2.2μm
*8:多孔質シリカ−2
DBP吸油量=150ml/100g、
細孔容積Vp=1.0ml/g、
メタノール滴定による疎水化度=46容量%、
オクタメチルシクロテトラシロキサンによる表面処理有り(炭素濃度=7.5%)、
比表面積=509m/g
D50=3.0μm
*9:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*10:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸)
*11:シランカップリング剤(Evonik Degussa社製Si69)
*12:アルキルアルコキシシラン(n−オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE−3083))
*13:芳香族変性テルペン樹脂(ヤスハラケミカル(株)製YSレジン TO−125、テルペンスチレン樹脂、Mw=2000、軟化点120〜130℃)
*14:アロマオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*15:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄、硫黄の含有量=95.24質量%))
*16:加硫促進剤−1(住友化学(株)製ソクシノールD−G)
*17:加硫促進剤−2(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
【0034】
表1の結果から、実施例のゴム組成物は、特定の平均Tgを有するジエン系ゴムに対し、特定範囲のDBP吸油量および細孔容積を満たす多孔質シリカ、それ以外のシリカ、特定の軟化点を有する芳香族変性テルペン樹脂、および特定のアルキルアルコキシシランを特定量でもって配合したので、従来の代表的な標準例の組成物に比べ、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性が同時に改善されていることが分かる。
これに対し、比較例1〜2は単にシリカの配合量を増加させた例であるので、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性を同時に改善することができなかった。
比較例3は、多孔質シリカの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、耐摩耗性が悪化した。
比較例4は、多孔質シリカのDBP吸油量および細孔容積が本発明で規定する下限未満であるので、耐摩耗性が悪化した。
比較例5は、多孔質シリカの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性の改善が確認できなかった。
比較例6は、ジエン系ゴムの平均Tgが本発明で規定する下限未満であるので、ウェットグリップ性能が悪化した。
比較例7は、アルキルアルコキシシランを配合していないので、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性および耐摩耗性の改善が確認できなかった。