(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特徴量決定部は、前記領域のうち前記車両が走行する道路の下方に位置する領域と前記領域のうち前記道路の上方に位置する領域との一方を正の面積とし、他方を負の面積として計算した前記領域の面積の総和を特徴量として決定する、
請求項2に記載の区間決定装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
実施形態の区間決定装置は、例えば、車両に搭載された状態で使用され、車両が備える地図ユニットに記録されている道路の勾配情報を取得して、勾配が一定とみなせる走行区間(以下、等勾配区間)を設定する。車両は、勾配が一定とみなせる等勾配区間を走行する際は、車両の運行状態を制御する制御パラメータを一定に保って走行する。したがって、等勾配区間を実際の道路の起伏よりも長く設定することによって、ギア段の変更といった車両の制御を頻繁に行うことを避けられ、車両の乗り心地を改善することができる。
【0014】
なお、本明細書において標高情報とは、車両の進行方向前方の地点の車両に対する相対的な高さを示す標高相当値を意味する。例えば、車両と車両から25m先の地点との間の勾配が0.1である場合、当該25m先の地点の標高相当値は0.1である。また、車両から25m先の地点と車両から50m先の地点との間の勾配が−0.1である場合、車両から50m先の地点の標高相当値は0である。即ち、車両からn区間先の地点の標高相当値は、例えば、車両からn区間分の勾配を足し上げて求める。また、車両からn区間先の地点までの平均勾配は、例えば、上記n区間先の地点の標高相当値をnで除することによって求める。また、本明細書において絶対標高情報とは、例えば、海面からの高さを示す海抜である。
【0015】
[区間決定装置1の構成]
図1は、区間決定装置1の構成を示す図である。区間決定装置1は地図ユニット2、記憶部3及び制御部4を含む。地図ユニット2、記憶部3及び制御部4のそれぞれは、無線又は有線の通信回線で接続され、例えば、CAN(Controller Area Network)の通信プロトコルに基づいて、データを送受信する。
【0016】
地図ユニット2は、例えば、各地点の海面からの高さを示す絶対標高情報と任意の位置からの車両の進行方向の勾配情報とを含む地図データを有する。地図ユニット2は、GPS(Global Positioning System)を使用して取得した車両の位置情報に、車速センサ、ジャイロセンサ等の計測値を加味して車両の現在位置を決定する。地図ユニット2は、車両が走行する道路における複数の勾配情報を制御部4に送信する。
【0017】
地図ユニット2は、例えば、車両が位置する地点から500m先の地点まで、25m間隔で勾配情報を制御部4に送信する。制御部4は、取得した勾配情報に基づいて25m間隔で21地点の標高情報を計算して取得する。地図ユニット2が制御部4に送信する勾配情報は、車両が位置する地点から500m先の地点までの勾配情報に限定されない。地図ユニット2が制御部4に送信する勾配情報の数は、地図ユニット2と制御部4とが接続された通信回線が許容するバス負荷に応じて変更してもよい。地図ユニット2は、例えば、車両が位置する地点から1km先の地点まで、25m間隔で41地点の勾配情報を制御部4に送信してもよい。また、地図ユニット2は、車両が位置する地点から1km先の地点まで、50m間隔で21地点の勾配情報を制御部4に送信してもよい。また、地図ユニット2は、勾配情報を制御部4に送信する代わりに、車両が位置する地点から500m先の地点まで、25m間隔で21地点の標高情報を制御部4に送信してもよい。
【0018】
図2は、等勾配区間における車両Tの制御の例について説明するための図である。
図2に示した例では、区間決定装置1は、車両Tの現在位置(図中P1)を起点とし、道路上25m間隔で地点P2、P3、・・・、P20の勾配情報を地図ユニット2から取得し、取得後に計算した各地点の標高情報に基づいて、等勾配区間を設定することができる。
【0019】
図2に示された道路は、地点P1から地点P3までが登り道、地点P3から地点P4までが下り道、そして、地点P4から地点P10までが再び登り道となっている。等勾配区間が設定されない場合、車両Tは、例えば、登り道を走行する際は低いギア段にて走行し、登り道を走行しきった後は一段高いギア段にギアを変更する、変速制御を行う。
【0020】
図2に示した例では、車両Tは、地点P1から地点P3まで低いギア段で走行し、地点P3において一段高いギアに変更して地点P3から地点P4まで走行し、そして、再度地点P4にて低いギア段に変更して地点P4から地点P10まで走行する。このように、車両Tは、地点P3及びP4の双方においてギア段が変更されるため、車両Tの運転者は、比較的短い間隔で、ギア段が変更されることに伴う軽いショックを感じる。
【0021】
これに対して、
図3に示すように、区間決定装置1が地点P1から地点P9までを等勾配区間として設定した場合は、車両Tは同一のギア段で地点P1から地点P9までを走行することが可能となり、車両Tの運転者は滑らかな乗り心地を体験することができる。
【0022】
記憶部3は、例えば、制御部4が実行するプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)、制御部4が作業中にデータを一時的に記録するRAM(Random Access Memory)及び車両Tの走行状態を示すデータを記録するHDD(Hard Disk Drive)を含む。ROMには、制御部4が等勾配区間を設定する際に参照する閾値が記録されている。また、RAMには、制御部4が地図ユニット2から取得した勾配情報に基づいて算出する標高情報及び所望の2地点間の勾配情報と制御部4が勾配情報から決定し等勾配区間を決定するために用いる特徴量とが記録される。
【0023】
制御部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部4は、記憶部3に記録されたプログラムを読み出して実行することによって、標高情報取得部41、特徴量決定部42、判定部43及び区間決定部44として機能する。
【0024】
標高情報取得部41は、地図ユニット2から車両が走行する道路における複数の区間の勾配情報を取得して、上記複数の区間それぞれの端点である複数の地点の標高情報を計算する。上述したとおり、標高情報取得部41は、例えば、車両Tが位置する地点から500m先の地点まで、25m間隔で勾配情報を取得し、21地点の標高情報を計算する。標高情報取得部41は、例えば、地図ユニット2から1秒毎に勾配情報を取得する。車両Tは、時速90kmで走行している場合、1秒間に25m進むため、標高情報取得部41が1秒毎に標高情報を取得した場合、標高情報取得部41は1秒前に勾配情報を取得した地点よりも25m先の地点までの勾配情報を新たに得られる。標高情報取得部41は、勾配情報を取得後に計算した各地点の標高情報を記憶部3に記録し、標高情報を計算したことを特徴量決定部42に通知する。
【0025】
特徴量決定部42は、標高情報取得部41からの通知を受信すると、上記複数の地点のうち車両Tの進行方向の前方にある第1地点と、第1地点よりも更に前方にある第2地点と、を含む複数の地点の標高情報に基づいて道路の勾配情報を示す特徴量を決定する。例えば、第1地点は車両Tが位置する地点であり、第2地点は車両Tが位置する地点から100m先の地点である。特徴量決定部42は、決定した特徴量を記憶部3に記録し、特徴量を決定したことを判定部43に通知する。特徴量決定部42が決定する特徴量については、後に詳述する。
【0026】
判定部43は、特徴量決定部42からの通知を受信すると、特徴量決定部42が決定した特徴量が所定の範囲外であるか否かを判定し、判定結果を記憶部3に記録する。ここで所定の範囲とは、車両Tが走行する道路における2地点間が、実道路の勾配との乖離が十分に小さいとみなせるか否かを判定するために判定部43が参照する判定基準範囲である。この範囲の具体的な値は、例えば、車両Tの車両重量やエンジン性能、及び車両Tが走行することが想定される道路の勾配等を考慮して実験により定められている。
【0027】
判定部43は、特徴量が所定の範囲外でない場合、例えば、記憶部3に格納されている特徴量が所定の範囲外であることを示すフラグを0のままにし、特徴量が所定の範囲外でないことを特徴量決定部42に通知する。区間決定装置1は、特徴量決定部42が決定した特徴量が所定の範囲外でない場合、再度特徴量を算出しなおす。判定部43は、特徴量が所定の範囲外である場合、例えば、記憶部3に格納されている特徴量が所定の範囲外であることを示すフラグを0から1に変更し、区間決定部44に、フラグの値が1になったことを通知する。
【0028】
区間決定部44は、特徴量が所定の範囲外の場合、上記第1地点を始点とし、上記第2地点に隣接する2地点のうち車両Tから近い地点を終点とする区間を決定する。区間決定部44は、決定した上記区間を等勾配区間として記憶部3に記録する。車両Tは、等勾配区間を走行している間、例えば、車両Tの制御パラメータを変更せずに走行する。続いて、区間決定装置1が実行する等勾配区間を決定処理について詳しく説明する。
【0029】
[特徴量決定部が決定する特徴量]
図3は、特徴量決定部42が特徴量を決定する処理について説明するための図である。
図3において、地点P1から地点P9は、
図2に示した車両Tが走行する道路上に設けられた点である。
図3では、地点P1から地点P9に至るまでの地点を順次結んで得られる線と、地点P1と地点P9とを結んで得られる線と、で囲まれた領域に斜線がひかれている。また、
図3では、地点P1から地点P9に至るまでの地点を順次結んで得られる線と、地点P1と地点P9とを結んで得られる線と、の交点を交点Xとしている。以下では、一例として、特徴量決定部42が、地点P1から地点P9のそれぞれの標高情報に基づいて特徴量を決定する処理について説明する。
【0030】
特徴量決定部42は、複数の地点のうち車両Tの前方にある第1地点と第1地点よりも車両Tから遠い第2地点との間を結んで得られる線と、複数の地点のうち第1地点から第2地点に至るまでの複数の地点を順次結んで得られる線と、で囲まれる領域の面積の総和を特徴量として決定する。
図3に示した例では、第1地点が地点P1であり、第2地点が地点P9である。また、特徴量決定部42が計算する面積の総和は、斜線がひかれた領域の面積の総和である。
【0031】
特徴量決定部42は、例えば、地点P1、地点P2、地点P3及び交点Xで囲まれた領域の面積を以下のようにして算出する。特徴量決定部42は、地点P1と地点P9との標高差を、地点P1から地点P9までの道路に沿った距離200mで除することによって、地点P1と地点P9とを結んで得られる線の勾配を算出する。なお、地点P1から地点P9までの道路に沿った距離は、地点P1と地点P9との地図上の平面距離とは異なるため、特徴量決定部42が算出する勾配は実際の勾配と異なることも起こりうる。しかしながら、車両Tが走行することが想定される道路の勾配であれば、道路に沿った距離と地図上の平面距離との誤差は無視できると考える。
【0032】
また、特徴量決定部42は、例えば、地点P3及び地点P4の位置座標と、線分P3P4の勾配と、地点P1及び地点P9の位置座標と、線分P1P9の勾配と、から交点Xの位置座標を計算する。特徴量決定部42は、計算した上記値と標高情報取得部41が地図ユニット2から取得した線分P1P2、線分P2P3及び線分P3P4の勾配情報とに基づいて、地点P1、地点P2、地点P3及び交点Xで囲まれた領域の面積を算出する。
【0033】
特徴量決定部42は、同様にして、交点X、地点P4、地点P5、地点P6、地点P7、地点P8及び地点P9で囲まれた領域の面積を算出する。そして、特徴量決定部42は、算出した面積の総和を、勾配情報を示す特徴量として決定する。
【0034】
特徴量決定部42は、当該領域のうち車両Tが走行する道路の下方に位置する領域と当該領域のうち道路の上方に位置する領域との一方を正の面積とし、他方を負の面積として領域の面積の総和を特徴量として決定してもよい。
図3に示した例では、特徴量決定部42は、例えば、地点P1、地点P2、地点P3及び交点Xで囲まれた領域の面積を正とし、交点X、地点P4、地点P5、地点P6、地点P7、地点P8及び地点P9で囲まれた領域の面積を負として領域の面積の総和を特徴量として決定する。
【0035】
特徴量決定部42が、
図3において斜線が引かれた領域の面積の総和を決定する別の方法をさらに説明する。特徴量決定部42は、
図3において各地点P1〜P9の標高情報から線分P1P9の高さの差分を算出する。上記差分は、
図3において各地点P1〜P9に下ろされた線分の長さに相当し、地点P4〜P9の場合は、線分P1P9より下側にあるので負の値となる。例えば、地点P4における上記差分は、P4における標高相当値から線分P1P9の勾配を3倍した値を引いた値であり負の値となる。特徴量決定部42は、例えば、P4における差分とP5における差分を足した値を
図3における台形領域Yの面積として決定する。このようにして、特徴量決定部42は、
図3の斜線が引かれた領域の面積を正負を勘案して決定することができる。この特徴量の決定方法では、特徴量決定部42は、交点Xを決定しなくてもよいので計算量を抑制することができる。
【0036】
[判定部43による判定処理]
上記の説明では、特徴量決定部42が、地点P1から地点P9のそれぞれの標高情報に基づいて特徴量を決定する処理について説明した。以下では、特徴量決定部42が、特徴量を決定するために標高情報を取得する地点の選び方の例について説明する。区間決定装置1は、例えば、短い区間から等勾配区間として設定できるか否か判定し、等勾配区間として設定するには区間が長すぎると判定するまで、順次区間を長くして等勾配区間として設定できるか否か、判定を続ける。ここでいう短い区間とは、等勾配区間の最小距離として定められた所定の距離の区間である。言い換えると、所定の距離は、等勾配区間として望まれる最低限の距離である。
【0037】
例えば、最小距離が100mに設定されている場合、特徴量決定部42は、先ず、地点P1、地点P2、地点P3及び地点P4で囲まれた領域の面積の総和を算出する。算出した面積の総和が所定の範囲外でない場合、特徴量決定部42は、地点P1、地点P2、地点P3、地点P4及び地点P5で囲まれた領域の面積の総和を算出する。特徴量決定部42は、領域の面積の総和が所定の範囲外となるまで、上記処理を順次繰り返す。
【0038】
なお、区間決定部44は、等勾配区間として決定する区間の始点と終点との距離が所定の距離以下である場合、第2地点を終点とする区間を決定してもよい。ここでいう、所定の距離とは、上述した最小距離である。上記の例では、等勾配区間として決定する区間の最小距離を100mに設定しているため、地点P1、地点P2、地点P3及び地点P4で囲まれた領域の面積の総和が所定の範囲外である場合、区間決定部44は、地点P4に隣接する2地点P3及びP5のうち前記車両Tから近い地点P3を等勾配区間の終点とせず、地点P4を等勾配区間の終点とする。判定部43が参照する判定基準範囲は、好ましくは、最小距離よりも短い区間で特徴量を決定した場合に当該特徴量が所定の範囲外とならないように定められる。
【0039】
[等勾配区間を決定できない場合]
上述したとおり、標高情報取得部41は、地図ユニット2と接続された通信回線が許容するバス負荷の制約により、限定された区間の勾配情報しか取得しない。車両Tが走行する道路が、長い距離に亘って平坦である場合、区間決定装置1は、標高情報取得部41が計算した標高情報に基づいて等勾配区間を決定できないことがある。言い換えると、標高情報取得部41が計算した全ての地点の標高情報に基づいて特徴量を決定しても、特徴量が所定の範囲外とならない場合がある。
【0040】
上記の場合、標高情報取得部41は、特徴量決定部42が決定した特徴量が所定の範囲外となるまで、特徴量決定部42が特徴量を決定するのに用いた複数の地点の各々よりも車両Tから遠い地点を含む別の複数の地点の標高情報を計算する。例えば、標高情報取得部41が計算した21地点の標高情報に基づいて特徴量を決定しても、当該特徴量が所定の範囲外とならない場合、特徴量決定部42は標高情報取得部41が直近に地図ユニット2から勾配情報を取得して標高情報を計算してから1秒後に取得する別の勾配情報に基づいて計算する複数の地点の標高情報に基づいて、再度特徴量を決定する。車両Tが走行中であれば、上記別の複数の地点の標高情報には、地点P20よりも車両Tから遠い地点の標高情報が含まれている。
【0041】
[区間決定装置1が行う処理のフロー]
図4は、区間決定装置1が行う処理のフローチャートである。
図4のフローチャートでは、標高情報取得部41が地図ユニット2から複数の地点の標高情報を取得する時点から開始する(S41)。標高情報取得部41が複数の地点の標高情報を取得した後、特徴量決定部42は各地点間の勾配を算出する(S42)。特徴量決定部42は、算出した勾配に基づいて、道路の勾配情報を示す特徴量を決定する(S43)。判定部43は、特徴量決定部42が決定した特徴量が所定の範囲外であるか否かを判定する(S44)。
【0042】
特徴量が所定の範囲外である場合(S44においてYES)、区間決定部44は等勾配区間を決定し(S45)、処理を終了する。特徴量が所定の範囲外でない場合(S44においてNO)、区間決定部44は、標高情報取得部41が計算した全ての地点の標高情報に基づいて特徴量を決定したか否かを確認する(S46)。
【0043】
特徴量決定部42は、標高情報取得部41が計算した全ての地点の標高情報に基づいて特徴量を決定していない場合(S46においてNO)、再度複数の地点を選択し、特徴量を決定する。標高情報取得部41が計算した全ての地点の標高情報に基づいて特徴量を決定した場合(S46においてYES)、標高情報取得部41は、特徴量決定部42が特徴量を決定するのに用いた複数の地点の各々よりも車両Tから遠い地点を含む別の複数の地点の標高情報を計算する。
【0044】
[変形例1]
標高情報取得部41は、道路が存在する地域毎に当該複数の地点の間隔を変更して勾配情報を取得してもよい。或いは、地図ユニット2は、道路が存在する地域毎に当該複数の地点の間隔を変更して勾配情報を標高情報取得部41に送信してもよい。車両Tが走行する地域によっては、平坦な道が長く続く道路もあれば、起伏の激しい道路もある。例えば、区間決定装置1は、車両Tが平坦な道が長く続く地域を走行する場合、地図ユニット2から標高情報を取得する地点の間隔を50mにしてもよい。この場合、標高情報取得部41は、21地点の標高情報しか取得できなくても、1km先の地点までの標高情報を取得できるため、区間決定装置1は等勾配区間を決定しやすくなる。
【0045】
[変形例2]
判定部43は、特徴量と比較する所定の範囲を道路が存在する地域毎に変更して区間を決定してもよい。上記のとおり、車両Tが走行する地域によっては、平坦な道が長く続く道路もあれば、起伏の激しい道路もある。判定部43は、車両Tが起伏の激しい道路を走行する場合、特徴量と比較する当該所定の範囲を小さい範囲に変更して判定をしてもよい。こうすると、等勾配区間が決定されやすくなり、区間決定装置1が決定した等勾配区間は、実道路との乖離が少ない等勾配区間となる。
【0046】
[変形例3]
区間決定装置1は、等勾配区間を1つのみならず、複数決めてもよい。上記の説明では、区間決定装置1は、地点P1から地点P9までの等勾配区間を1つ決定したが、区間決定装置1は、地点P9から地点P20の標高情報に基づいて、地点P9から先の等勾配区間を決定してもよい。こうすると、車両Tは、始めに決定した等勾配区間よりも車両Tの進行方向前方の等勾配区間の情報に基づいて、始めに決定した等勾配区間を走行する際の車両Tの制御パラメータを決定することができる。具体的には、車両Tが走行中の等勾配区間よりも先の等勾配区間を決定することにより、例えば、当該先の等勾配区間に適したギア段の状態を、現時点で走行中の等勾配区間において前もって実現することが可能となる。
【0047】
区間決定部44は、第1の区間を決定する際に特徴量決定部42が決定した特徴量と、第2の区間を決定する際に特徴量決定部42が決定した特徴量と、を合算した特徴量が所定の範囲内である場合、第1の区間と第2の区間とを合併した区間を決定してもよい。具体的には、区間決定部44は、車両Tから近い側の等勾配区間の始点P1と車両Tから遠い側の別の等勾配区間の終点(例えば、P14)とを両端とする区間を決定してもよい。こうすると、区間決定装置1は、距離が長い等勾配区間を決定することができる。
【0048】
区間決定部44は、第1の区間の勾配と第2の区間の勾配との差が所定の範囲内である場合に、第1の区間と第2の区間とを合併した区間を決定してもよい。上記所定の範囲は、例えば、第1の区間と第2の区間とで車両Tの制御パラメータを変更せずとも運転者に大きな違和感を覚えさせずにすむ勾配差の値であり、実験により定められる値である。
【0049】
[本実施形態の区間決定装置1による効果]
以上説明したとおり、区間決定装置1は、複数の地点の標高情報を取得し、複数の地点の標高情報に基づいて道路の勾配情報を示す特徴量を決定する。区間決定装置1は、特徴量が所定の範囲外の場合、等勾配区間を決定する。このようにすると、区間決定装置1は、特徴量が所定の範囲外でない場合、即ち、特徴量決定部42が決定した特徴量が、勾配が変化していないと判定できる程十分に小さい場合、より長い距離の等勾配区間の決定を試みる。つまり、区間決定装置1は、車両が制御パラメータを頻繁に変更することなく運行される区間を長く設定できる等の効果を奏する。
【0050】
また、区間決定装置1は、複数の地点のうち車両Tの前方にある第1地点と第1地点よりも車両Tから遠い第2地点との間を結んで得られる線と、複数の地点のうち第1地点から第2地点に至るまでの複数の地点を順次結んで得られる線と、で囲まれる領域の面積の総和を特徴量として決定する。こうすると、区間決定装置1は、実道路との誤差が所定の範囲内に収まった等勾配区間を設定することができる。
【0051】
また、区間決定装置1は、線で囲まれる上記領域のうち車両Tが走行する道路の下方に位置する領域と上記領域のうち道路の上方に位置する領域との一方を正の面積とし、他方を負の面積として上記領域の面積の総和を特徴量として決定する。このようにすると、区間決定装置1は、車両Tが走行する道路が短い距離で上下するような場合、等勾配区間を長く設定できる。
【0052】
また、区間決定装置1は、始点と終点との距離が所定の距離以下である場合、第2地点を終点とする区間を決定する。このようにすると、区間決定装置1は、所定の距離以上の等勾配区間を設定できる。
【0053】
また、区間決定装置1は、道路が存在する地域毎に複数の地点の間隔を変更して標高情報を取得する。このようにすると、区間決定装置1は、道路の勾配がなだらかな地域では、長い距離に亘って勾配情報を取得することができる。その結果、区間決定装置1は、長い距離の等勾配区間を設定できる。
【0054】
また、区間決定装置1は、車両Tが走行する道路における複数の地点の標高情報を取得し、上記複数の地点のうち、車両Tの進行方向の前方にある第1地点と、第1地点よりも車両Tから遠い第2地点と、を含む複数の地点の標高情報に基づいて道路Tの勾配情報を示す特徴量を決定する。また、区間決定装置1は、決定した特徴量が所定の範囲外となるまで、特徴量を決定するのに用いた複数の地点の各々よりも車両Tから遠い地点を含む別の複数の地点の標高情報を取得する。また、区間決定装置1は、特徴量が所定の範囲外となった場合に、第1地点を始点とし第2地点に隣接する2地点のうち車両Tから近い地点を終点とする区間を決定する。こうすると、区間決定装置1は、距離に上限を設けずに等勾配区間を設定することができる。従って、区間決定装置1が積載された車両Tは、長い距離に亘って同一の等勾配区間を判別することができ、車両Tの制御パラメータを頻繁に変更しなくともよいといった効果を奏する。
【0055】
<第2の実施形態>
第1の実施形態の変形例3において、区間決定装置1が複数の等勾配区間を決定する場合について説明した。第2の実施形態の区間決定装置1は、複数の等勾配区間を決定した後は、1番目に決定した等勾配区間については端点を確定し、2番目以降に決定した等勾配区間については、1番目に決定した等勾配区間を車両Tが走行中に再計算して区間を更新する。2番目以降に決定した等勾配区間を更新する際は、区間決定装置1は、区間を更新する時点において車両Tが位置する地点から進行方向前方に位置する地点に至るまでの複数の地点の標高情報に基づいて等勾配区間を再計算する。区間決定装置1は、1番目に決定した等勾配区間の終点に到達した時点で、2番目の等勾配区間の端点を確定する。
【0056】
つまり、第2の実施形態の区間決定装置1は、2番目の等勾配区間を暫定的に決定し、1番目の等勾配区間を走破した時点で、直近に更新した2番目の等勾配区間を次に走行する等勾配区間として確定する。第2の実施形態の区間決定装置1は、2番目以降の等勾配区間を暫定的に決定し更新し続けることによって、走行区間として設定されない2番目以降の等勾配区間の情報を参照して、走行区間として設定される等勾配区間を車両Tが走行する際の制御パラメータ(例えば、ギア段)を決定することができる。
【0057】
図5は、区間決定装置1が、2番目の等勾配区間を決定する処理について説明するための図である。図中点Eは、走行区間として設定された1番目の等勾配区間の終点である。また、地点P1は、車両Tが位置する地点であり、地点P1〜地点P12は、車両Tが標高情報を取得できる地点である。第1の実施形態の時と同様に、地点P1〜地点P12は、例えば、実際の道路上に25m間隔で設けられた地点である。
【0058】
区間決定装置1は、車両Tが位置する地点から等間隔で設けられた複数の地点間の勾配情報を地図ユニット2から取得するため、終点Eが確定された等勾配区間を車両Tが走行し始めると、必ずしも常に終点Eの標高情報を計算することができない。従って、区間決定装置1は、等勾配区間の終点Eを始点とした複数の地点の標高情報に基づいて特徴量を決定することが常にできるわけではない。そのため、
図5に示した例では、区間決定装置1は、終点Eから最も近い地点を始点とする複数の地点の特徴量を決定し、2番目の等勾配区間を決定する。
【0059】
終点Eから最も近い地点が地点P4である場合、終点Eが確定した等勾配区間と暫定的に決定する2番目の等勾配区間とには、区間と区間との間に終点Eから地点P4までの空白が生じる。この場合、第2の実施形態の区間決定装置1は、2番目の等勾配区間を、端点が確定した等勾配区間に対して空白が生じないように決定する。
【0060】
また、終点Eから最も近い地点が地点P3である場合、終点Eが確定した等勾配区間と暫定的に決定する2番目の等勾配区間とには、区間と区間との間に地点P3から終点Eまでの重複が生じる。この場合、第2の実施形態の区間決定装置1は、2番目の等勾配区間を、端点が確定した等勾配区間に対して重複が生じないように決定する。
【0061】
[第2の実施形態の区間決定装置1の構成]
図6は、第2の実施形態の区間決定装置1の構成を示す図である。第2の実施形態の区間決定装置1は、残存距離算出部45及び基準地点決定部46を更に有する点で、第1の実施形態の区間決定装置1と異なる。
【0062】
標高情報取得部41は、車両Tが走行する走行区間が定められた道路における複数の地点の標高情報を計算する。上記複数の地点には、車両Tが位置する地点が含まれる。
【0063】
残存距離算出部45は、標高情報取得部41が標高情報を計算した複数の地点のうち車両Tが位置する地点と車両Tが走行する区間の終点との距離を算出する。車両Tが位置する地点と車両Tが走行する区間の終点との距離は、設定された等勾配区間の長さ、車両Tが等勾配区間を走行しだしてからの経過時間及び車速に基づいて算出する。具体的には、残存距離算出部45は、設定された等勾配区間の長さから、車両Tが等勾配区間を実際に進んだ距離を減算することによって、等勾配区間の残存距離を算出する。
【0064】
基準地点決定部46は、残存距離算出部45が算出した上記距離に基づいて、上記複数の地点のうち上記区間の終点と最も近い地点である基準地点を決定する。具体的には、基準地点決定部46は、標高情報を取得した地点のうち、車両Tが位置する地点からの距離が上記残存距離に最も近い地点を基準地点に決定する。
【0065】
基準地点決定部46は、等勾配区間の残存距離を、標高情報を計算する複数の地点の間隔で除算して、端数を四捨五入した値を、基準地点に決定する地点の番数としてもよい。例えば、標高情報取得部41が、車両Tが位置する地点から25m間隔で標高情報を計算する場合、等勾配区間の残存距離が80mであるならば80を25で除算した3.2の端数0.2を四捨五入した値は3なので、車両Tの現在位置P1から3番目の地点P4を基準地点に決定する。
【0066】
特徴量決定部42は、基準地点と、複数の地点のうち基準地点よりも車両Tから遠い地点と、を含む複数の地点の標高情報に基づいて勾配情報を示す特徴量を決定する。即ち、特徴量決定部42は、第1の実施形態において、始点を基準地点に置き換えた場合の特徴量を決定する。
【0067】
区間決定部44は、特徴量が所定の範囲外である場合、等勾配区間の終点を始点とし、車両Tから遠い地点に隣接する2地点のうち車両Tから近い地点を終点とする別の区間を決定する。
【0068】
このことについて、
図5を参照しながら具体的に説明する。例えば、特徴量決定部42が、基準地点P4からP9に至るまでの複数の地点の標高情報に基づいて特徴量を決定した場合に、特徴量が所定の範囲外となったとする。この場合、区間決定部44は、地点P4から地点P9までの距離に、等勾配区間の終点Eから地点P4までの距離を加算した値を、2番目の等勾配区間として暫定的に決定する。言い換えると、地点P4から地点P9までの区間(
図5中破線部)に終点Eから地点P4までの区間を追加した区間(
図5中実線部)を決定することにより、1番目の等勾配区間と暫定的に決定する2番目の等勾配区間との間に空白が生じないようにしている。
【0069】
[区間決定装置1が区間を決定する処理のフロー]
図7は、区間決定装置1が区間を決定する処理のフローチャートである。
図7のフローチャートでは、標高情報取得部41が地図ユニット2から複数の地点の標高情報を計算する時点から開始する(S71)。標高情報取得部41が複数の地点の標高情報を計算した後、残存距離算出部45は、車両Tが走行する等勾配区間の残存距離を算出する(S72)。続いて、基準地点決定部46は、複数の地点のうち、等勾配区間の終点と最も近い地点である基準地点を決定する(S73)。続いて、特徴量決定部42は各地点間の勾配を算出する(S74)。特徴量決定部42は、算出した勾配に基づいて、道路の勾配情報を示す特徴量を決定する(S75)。判定部43は、特徴量決定部42が決定した特徴量が所定の範囲外であるか否かを判定する(S76)。
【0070】
特徴量が所定の範囲外である場合(S76においてYES)、区間決定部44は等勾配区間を決定し(S77)、処理を終了する。特徴量が所定の範囲外でない場合(S76においてNO)、特徴量決定部42は再度複数の地点を選択し、勾配情報を示す特徴量を決定する。
【0071】
[本実施形態の区間決定装置1による効果]
以上説明したとおり、第2の実施形態の区間決定装置1は、複数の地点のうち車両Tが位置する地点と上記区間の終点との距離を算出し、算出した距離に基づいて、複数の地点のうち区間の終点と最も近い地点である基準地点を決定する。区間決定装置1は、基準地点と、上記複数の地点のうち基準地点よりも車両Tから遠い地点と、を含む複数の地点の標高情報に基づいて勾配情報を示す特徴量を決定し、特徴量が所定の範囲外である場合、上記区間の終点を始点とし、車両Tから遠い地点に隣接する2地点のうち車両Tから近い地点を終点とする別の区間を決定する。こうすることにより、車両Tは、設定された等勾配区間を走破し終わった後に前方勾配情報に合わせて、制御パラメータを更新する又は更新しないことによって最適な状態で次の等勾配区間を走行することが可能である。
【0072】
上記の説明では、区間決定装置1は、2番目の等勾配区間を暫定的に決定し、1番目の等勾配区間を走破した時点で、直近に更新した2番目の等勾配区間を次に走行する等勾配区間として確定するとした。区間決定装置1は、1番目の等勾配区間を走破した時点ではなく、1番目の等勾配区間を走破してから次に勾配情報を取得した際に、再度1番目の等勾配区間を決定してもよい。この場合も、1番目の等勾配区間を走行中に1番目よりも進行方向前方の等勾配区間を暫定的に決定しているため、車両Tは、設定された等勾配区間を走破し終わった後に、制御パラメータを更新する又は更新しないことによって最適な状態で次の等勾配区間を走行することが可能である。
【0073】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。