(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が含有する前記反応性官能基は、ヒドロキシ基、アミド基、カルボキシ基、ニトロ基及びシアノ基から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(粘着剤組成物)
本発明は、反応性官能基を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、反応性官能基と反応可能な架橋剤(B)と、少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、環状分子が架橋剤(B)と反応可能な反応性基を1つ以上有し、かつ直鎖状分子が両末端にブロック基を有するポリロタキサン(C)と、を有する粘着剤組成物に関する。ここで、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)において反応性官能基含有モノマー単位が占める割合は、10質量%以上である。また、ポリロタキサン(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して0.0001質量部以上8質量部以下である。
【0014】
本発明の粘着剤組成物は、上記構成を有するものであるため、十分な応力緩和性を有している。例えば、本発明の粘着剤組成物から形成された粘着シートを異なる素材からなる2種の光学部材に貼合した際には、線膨張係数の違いなどから光学部材に発生する寸法変化差由来の応力を緩和する働きをする。このため、光学部材全体の反りを抑制することができる。また、本発明の粘着剤組成物から形成された粘着シートは、優れた応力緩和性を有しつつも、粘着シート自体の強度に優れており、十分な耐久性を兼ね備えている。
さらに、本発明の粘着剤組成物は、上記構成を有するものであるため、透明性に優れた粘着シートを形成することができる。具体的には、本発明の粘着剤組成物は、ヘイズの低い粘着シートを形成することができる。また、このような粘着シートは全光線透過率も高く、透明性が高い。
【0015】
また、本発明の粘着剤組成物はポリロタキサンの添加部数を増配した場合であっても、形成される粘着シートのヘイズ値が上昇しないという特徴も有している。このため、応力緩和性を十分に高めつつも、透明性に優れた粘着シートを得ることができる。
【0016】
((メタ)アクリル酸エステル共重合体(A))
粘着剤組成物は、主成分として、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を含む。ここで「主成分」とは、粘着剤組成物の全質量に対して(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が50質量%以上含まれることを意味する。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸エステル共重合体」は、アクリル酸エステル共重合体又はメタクリル酸エステル共重合体であることを意味する。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、反応性官能基含有モノマー単位を有するものであることが好ましく、反応性官能基含有モノマー単位及び反応性官能基非含有モノマー単位を有するものであることがより好ましい。なお、本明細書において、「単位」は重合体を構成する繰り返し単位(モノマー単位)である。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)において反応性官能基含有モノマー単位が占める割合は、10質量%以上であればよく、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)において反応性官能基含有モノマー単位が占める割合は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。特に本発明の粘着剤組成物から形成される粘着シートが偏光板用粘着シートである場合、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)において反応性官能基含有モノマー単位が占める割合は、70質量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)において反応性官能基含有モノマー単位が占める割合が70質量%以下であると、粘着シートにリワーク性(剥離容易性)を持たせることもできる。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)において反応性官能基非含有モノマー単位が占める割合は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、25質量%以上であることが一層好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)において反応性官能基非含有モノマー単位が占める割合は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の反応性官能基のモノマー含有量はプロトンNMRやFT−IRを用いて定量できる。NMRやFT−IRを用いて定量する方法では、まず、反応性官能基含有モノマー量が10質量%、30質量%、50質量%、70質量%の粘着剤を合成し、それぞれプロトンNMRまたはFT−IRを測定する。そこで得られたピーク面積と反応性基含有量とから検量線を作成する。合成した粘着シートを用いてプロトンNMRまたはFT−IRを測定し、上記で得られた検量線より(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の反応性官能基含有モノマー単位量を算出することができる。
【0021】
また、反応性官能基がカルボキシル基または水酸基である場合はJIS K 0070(1992)に準拠した下記記載の方法で算出することができる。反応性官能基がカルボキシル基の場合、精密天秤で100ml三角フラスコに試料約2g程度を精秤し、これにトルエン/2−プロパノール/水=5/5/0.5(重量比)の混合溶媒10mlを加えて溶解する。更に、この容器に指示薬としてp−ナフトールベンゼン溶液を1〜3滴添加し、試料が均一になるまで十分に攪拌する。これを、0.1N水酸化カリウム−2−プロパノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを、中和の終点とする。その結果から下記の計算式(1)を用いて得た値を、試料のカルボキシル基含有モノマー量とする。
反応性官能基含有モノマー量(mgKOH/g)=[cKOH×(V
1−V
0)×5.611]/S (1)
計算式(1)中、cKOHは、0.1N水酸化カリウム−2−プロパノール溶液のモル濃度(mol/L)であり、V
1は試料の滴定に要した0.1mol/L水酸化カリウム−2−プロパノール溶液の量(mL)であり、V
0は空試験の滴定に要した0.1mol/L水酸化カリウム−2−プロパノール溶液の量(mL)であり、Sは、試料の採取量(g)である。
反応性官能基が水酸基の場合、まず、水酸基をアセチル化し、その後はカルボキシル基と同様に滴定することで水酸基含有量を算出することができる。
【0022】
反応性官能基非含有モノマー単位は、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する単位であることが好ましい。アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、炭素数が1以上18以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーであることが好ましい。
【0023】
炭素数が1以上18以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のカルボキシ基の水素原子を炭化水素基で置換した(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。炭化水素基の炭素数は1以上18以下が好ましく、1以上8以下がより好ましい。炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基としては、反応性官能基を含まないものであれば特に限定されず、たとえばメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。
【0024】
アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含むことを意味する。これらの中でも、接着性の点からは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチルが好ましい。
【0025】
反応性官能基含有モノマー単位が有する反応性官能基は、ヒドロキシ基、アミド基、カルボキシ基、ニトロ基及びシアノ基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、中でも、反応性官能基は、ヒドロキシ基であることが特に好ましい。
【0026】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、アリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グラタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸やその無水物などが挙げられる。
【0027】
本発明の粘着剤組成物から形成される粘着シートがスズドープ酸化インジウム膜や金属膜等の腐食性を有する膜に積層される場合は、腐食防止性の点から、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合に用いられるカルボキシ基含有モノマーの量は0.5質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましい。さらに、反応性官能基を有するモノマーはカルボキシ基含有モノマーを実質的に含まないことが好ましい。ここで、反応性官能基を有するモノマーがカルボキシ基含有モノマーを実質的に含まないとは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合に用いる反応性官能基を有するモノマーの酸価をJIS K 0070(1992)に準拠して測定した際に、その酸価が0.1mgKOH/g未満のことをいう。反応性官能基を有するモノマーの酸価が0.1mgKOH/g未満であれば、意図的に添加されたカルボキシ基含有モノマーを含んでいないと考えられ、0.1mgKOH/g以上1.0mgKOH/g以下であれば、意図的に添加されたカルボキシ基含有モノマーを微量含んでいると考えられるが、ITO腐食性は良好である。モノマーの酸価が1.0mgKOH/g以上である場合は、意図的に添加されたカルボキシ基含有モノマーを含んでいると考えられ、ITO腐食性も悪化する場合がある。なお、意図的な添加とは反応性官能基を有するモノマーとしてカルボキシ基含有モノマーを使用していることである。
【0028】
一方、本発明の粘着剤組成物から形成される粘着シートが偏光子の保護膜で用いられるCOP等に貼合される場合は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合に用いられるカルボキシ基含有モノマーの量は0.1質量%以上であってもよく、1.0質量%以上であってもよい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合に用いる反応性官能基を有するモノマーの酸価は、0.1mgKOH/g以上であってもよく、1mgKOH/g以上であってもよい。
【0029】
JIS K 2501に準拠して酸価を測定する場合は、例えば、以下のように測定する。
精密天秤で100ml三角フラスコに試料約2g程度を精秤し、これにトルエン/2−プロパノール/水=5/5/0.5(重量比)の混合溶媒10mlを加えて溶解する。更に、この容器に指示薬としてp−ナフトールベンゼン溶液を1〜3滴添加し、試料が均一になるまで充分に攪拌する。これを、0.1N水酸化カリウム−2−プロパノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを、中和の終点とする。その結果から下記の計算式(1)を用いて得た値を、試料の酸価とする。
酸価(mgKOH/g)=[cKOH×(V
1−V
0)×5.611]/S (1)
計算式(1)中、cKOHは、0.1N水酸化カリウム−2‐プロパノール溶液のモル濃度(mol/L)であり、V
1は試料の滴定に要した0.1mol/L水酸化カリウム‐2−プロパノール溶液の量(mL)であり、V
0は空試験の滴定に要した0.1mol/L水酸化カリウム‐2−プロパノール溶液の量(mL)であり、Sは、試料の採取量(g)である。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合には、反応性官能基含有モノマーと、反応性官能基非含有モノマー以外にその他のモノマーが用いられてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合に用いられるその他のモノマーの量は、重合に用いられるモノマーの全質量に対して20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は30万以上であることが好ましく、40万以上であることがより好ましく、50万以上であることがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、300万以下であることが好ましく、250万以下であることがより好ましく、200万以下であることがさらに好ましく、150万以下であることが特に好ましい。重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、十分な凝集力を発揮させることができ、耐久性を高めることができる。さらに、粘着剤組成物を含む塗工液の粘度上昇を抑えることができ、塗工により粘着剤層を形成しやすくなる。
【0032】
ここで言う(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したスチレン換算の分子量である。測定条件は以下のとおりである。
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量(流速):1.0ml/min
注入量:10μL
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500以上2,800,000以下迄の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
【0033】
(架橋剤(B))
本発明の粘着剤組成物は、上述した(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)が有する反応性官能基と反応可能な架橋剤(B)を含む。架橋剤(B)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ブチル化メラミン系架橋剤などが挙げられる。これら架橋剤の中でも、架橋剤(B)は(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を容易に架橋できることから、イソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤から選択される少なくとも1種であることが好ましく、イソシアネート系架橋剤であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)がヒドロキシ基含有モノマーを含む場合は、特にイソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。なお、本発明においては、架橋剤(B)はキレート系架橋剤を含まないことが好ましい。
【0034】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。また、イソシアネート系架橋剤としては、上述したジイソシアネートから得られるアダクト体、ヌレート体、ビュレット体などの3官能の誘導体を用いることがより好ましい。
エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサノン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0035】
架橋剤(B)の含有量は、所望とする粘着物性に応じて適宜選択することが好ましい。また、上記の架橋剤は単独または2種以上で用いることができる。
【0036】
架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。上記下限値以上であれば粘着シートからの発泡を抑えることができ、上記上限値以下であれば粘着シートが十分な応力緩和性を発揮しやすくなる。
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の反応性官能基と反応し得る架橋剤(B)の反応性基の当量比は0.01以上5以下であることが好ましく、0.05以上2以下であることがより好ましい。該当量比を上記範囲内とすることにより、粘着剤組成物から形成される粘着シートの強度を向上させることができ、かつ粘着シートが十分な応力緩和性を発揮しやすくなる。
【0037】
(ポリロタキサン(C))
本発明の粘着剤組成物は、ポリロタキサン(C)を含有する。ポリロタキサン(C)分子は、少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、環状分子が上述した架橋剤(B)と反応可能な反応性基を1つ以上有し、かつ直鎖状分子が両末端にブロック基を有する構造を持つ。
【0038】
図1は、ポリロタキサン(C)の模式図である。
図1に示されているように、ポリロタキサン分子1は、「回転子」として少なくとも2つの環状分子3を有する。そして、これらの環状分子3の開口部に、「軸」として直鎖状分子2が貫通しており、直鎖状分子2の両末端にはブロック基5を有する。環状分子3の内、少なくとも1つは反応性基R1を有しており、環状分子3の全てが各々、少なくとも1つの反応性基R1を有することが好ましい。ポリロタキサン(C)は、このようなポリロタキサン分子1を少なくとも2個以上有する。
【0039】
ポリロタキサン(C)の直鎖状分子2は、環状分子3に包接され、共有結合等の化学結合ではなく機械的な結合で一体化することができる分子または物質であって、直鎖状のものであれば、特に限定されない。なお、本明細書において、「直鎖状分子」の「直鎖」は、実質的に「直鎖」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子2上で環状分子3が移動可能であれば、直鎖状分子2は分岐鎖を有していてもよい。
【0040】
ポリロタキサン(C)の直鎖状分子2としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく、これらの直鎖状分子2は、粘着剤組成物中で2種以上混在していてもよい。
【0041】
ポリロタキサン(C)の直鎖状分子2の重量平均分子量は、1000以上30万以下であることが好ましく、3000以上10万以下であることがより好ましく、5000以上5万以下であることがさらに好ましい。直鎖状分子2の重量平均分子量を上記下限値以上とすることにより、環状分子3の直鎖状分子2上での移動量を適切な範囲内に維持することができ、粘着剤層の応力緩和性を高めることができる。また、直鎖状分子2の重量平均分子量を上記上限値以下とすることにより、ポリロタキサン(C)の溶剤への溶解性や(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)との相溶性を高めることができる。
【0042】
ポリロタキサン(C)の環状分子3は、上記直鎖状分子2を包接可能な分子であり、直鎖状分子2上を移動可能であれば、特に限定されない。なお、本明細書において、「環状分子」の「環状」は、実質的に「環状」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子2上を移動可能であれば、環状分子3は完全には閉環でなくてもよく、例えば螺旋構造であってもよい。
【0043】
ポリロタキサン(C)の環状分子3としては、環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン等の環状ポリマー、あるいは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等のシクロデキストリンが好ましく挙げられる。上記環状ポリマーの具体例としては、クラウンエーテルまたはその誘導体、カリックスアレーンまたはその誘導体、シクロファンまたはその誘導体、クリプタンドまたはその誘導体等が挙げられる。
【0044】
中でも、環状分子3としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等のシクロデキストリンが好ましく、さらにα−シクロデキストリンが好ましい。これらの環状分子3は、ポリロタキサン(C)中または粘着剤組成物中で2種以上混在していてもよい。上記環状分子3は比較的入手が容易であり、かつ、ブロック基5の種類を多数選択できるため好ましく用いられる。
【0045】
環状分子3としてシクロデキストリンを使用する場合、該シクロデキストリンは、ポリロタキサン(C)の溶解性を向上させることのできる置換基が導入されたものであってもよい。好ましい置換基としては、例えば、アセチル基、アルキル基、トリチル基、トシル基、トリメチルシラン基、フェニル基等の他、ポリエステル鎖、オキシエチレン鎖、アルキル鎖、アクリル酸エステル鎖等が挙げられる。置換基の重量平均分子量は、100以上10000以下が好ましく、特に400以上2000以下が好ましい。
【0046】
上記置換基のシクロデキストリンのヒドロキシ基への導入率(置換度)は、10%以上90%以下であることが好ましく、30%以上70%以下であることがより好ましい。導入率を上記下限値以上とすることにより、ポリロタキサン(C)の溶解性を高めることができる。導入率を上記範囲内とすることにより、ポリロタキサン(C)の反応性基R1と架橋剤(B)との反応を十分に行うことができる。
【0047】
ポリロタキサン(C)の環状分子3が有する反応性基R1は、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基及びアミノ基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ヒドロキシ基であることが特に好ましい。反応性基R1がヒドロキシ基である場合、粘着剤組成物が酸性側にもアルカリ側にも偏らず、反応により着色等が生じにくいため好ましい。これらの反応性基R1は、ポリロタキサン(C)中で2種以上混在していてもよい。なお、反応性基R1は環状分子3に直接に結合していなくてもよい。例えば上述したような置換基を介して上記反応性基R1が存在していてもよい。さらには、反応性基R1を介して異なる2種類以上の置換基を結合し、そのうちのいずれかの置換基に反応性基R1を有していてもよい。このような態様をとることにより、環状分子3からの距離を調節して環状分子3との立体障害を回避した上で反応性基R1を有する嵩高い置換基を導入することができる。また、環状分子3との立体障害を回避した上で反応性基を起点として重合を行い、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、またはこれらのオリゴマー鎖を置換基とし、かつ、該置換基に反応性基R1を1つ以上有する置換基を導入することもできる。
【0048】
具体的には、環状分子3がシクロデキストリンである場合は、シクロデキストリンそのものに存在するヒドロキシ基は反応性基R1であり、該ヒドロキシ基にヒドロキシプロピル基を付加した場合には、ヒドロキシプロピル基のヒドロキシ基も反応性基R1に含まれる。さらには、該ヒドロキシプロピル基のヒドロキシ基を介してε−カプロラクトンの開環重合を行った場合、該開環重合により得られたポリエステル鎖の反対側末端にはヒドロキシ基が形成される。この場合、該ヒドロキシ基も反応性基R1に含まれる。
【0049】
なお、ポリロタキサン(C)の相溶性と反応性を両立する観点から、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、またはこれらのオリゴマー鎖を置換基とし、かつ、該置換基に反応性基を1つ以上有する態様の置換基が環状分子3に導入されていることが特に好ましい。該置換基の導入率は、上記置換基の導入率で述べたとおりである。
【0050】
上記反応性基R1の環状分子3への導入率は、4%以上90%以下であることが好ましく、20%以上70%以下であることがより好ましい。反応性基R1の導入率を上記範囲内とすることにより、ポリロタキサン(C)が架橋剤(B)と十分に反応できる。また、反応性基R1の導入率を上記範囲内とすることにより、環状分子3における架橋点を適切な範囲に制御することができ、粘着シートは十分な応力緩和性を発揮することができる。
【0051】
ポリロタキサン(C)のブロック基5は、環状分子3が直鎖状分子2により串刺し状になった形態を保持し得る基であれば、特に限定されない。このような基としては、嵩高い基、イオン性基等が挙げられる。ポリロタキサン(C)のブロック基5としては、例えば、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、アントラセン類等、あるいは、重量平均分子量1000以上100万以下の高分子の主鎖または側鎖等を挙げることができる。これらのブロック基5は、ポリロタキサン(C)中で2種以上混在していてもよい。
【0052】
ポリロタキサン(C)のブロック基5として列挙した上記の重量平均分子量1000以上100万以下の高分子としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0053】
環状分子3が直鎖状分子2により串刺し状に包接される際に環状分子3が最大限に包接される量(包接量)を100%とした場合、包接量は0.1%以上60%以下であることが好ましく、1%以上50%以下であることがより好ましく、5%以上40%以下であることがより好ましい。
【0054】
なお、環状分子3の最大包接量は、直鎖状分子の長さと環状分子の厚さにより決定することができる。例えば、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がα−シクロデキストリン分子の場合、最大包接量は、実験的に求められる(Macromolecules 1993,26,5698−5703参照)。
【0055】
ポリロタキサン(C)の重量平均分子量は1000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましく、10000以上であることが更に好ましい。また、ポリロタキサン(C)の重量平均分子量は200万以下であることが好ましく、100万以下であることがより好ましく、50万以下であることがさらに好ましく、10万以下であることが特に好ましい。ポリロタキサン(C)の重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、十分な透明性と強度を兼ね備えた粘着シートが得られ易くなる。
【0056】
ここで言うポリロタキサン(C)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したスチレン換算の分子量である。測定条件は以下のとおりである。
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量(流速):1.0ml/min
注入量:10μL
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500以上2,800,000以下迄の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
【0057】
ポリロタキサン(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.0001質量部以上であればよく、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、0.5質量部以上であることが特に好ましい。また、ポリロタキサン(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、8質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましく、6質量部以下であることがさらに好ましく、5質量部以下であることが特に好ましい。ポリロタキサン(C)の含有量を上記範囲内とすることにより、十分な応力緩和性を有し、かつヘイズ値の低い粘着シートを得ることができる。また、ポリロタキサン(C)の含有量を上記範囲内とすることにより、耐久性と強度に優れた粘着シートを得ることができる。
【0058】
上述したようなポリロタキサン(C)は、従来公知の方法(例えば特開2005−154675号公報に記載の方法)によって得ることができる。
【0059】
(溶剤)
粘着剤組成物は、溶剤を含むものであってもよい。溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0060】
溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。粘着剤組成物中における溶剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対し、25質量部以上500質量部以下とすることが好ましい。
【0061】
(任意成分)
粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、粘着剤用の添加剤として公知の成分、例えば酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属腐食防止剤としては、ベンゾリアゾール系樹脂を挙げることができる。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。
【0062】
但し、本発明の粘着剤組成物は、キレート系架橋剤を実質的に含有しないものであることが好ましい。粘着剤組成物がキレート系架橋剤を実質的に含有しない状態は、キレート系架橋剤の含有量が(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以下である状態をいう。本発明においては、キレート系架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して0.001質量部以下であることが好ましい。
【0063】
(粘着剤組成物の製造方法)
粘着剤組成物の製造工程は、反応性官能基を含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と、反応性官能基と反応可能な架橋剤(B)と、少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、環状分子が架橋剤(B)と反応可能な反応性基を1つ以上有し、かつ直鎖状分子が両末端にブロック基を有するポリロタキサン(C)と、を混合する工程を含む。このような混合する工程では、ポリロタキサン(C)を(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して0.0001質量部以上8質量部以下となるように混合する。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)において反応性官能基含有モノマー単位が占める割合は、10質量%以上である。
【0064】
上述した混合する工程においては、必要に応じて溶剤を添加してもよい。溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等を挙げることができる。
【0065】
(粘着シート)
本発明は、上述した粘着剤組成物により形成される粘着剤層を含む粘着シートに関するものでもある。粘着シートは、上述した粘着剤組成物を塗工した後に溶剤を除去することにより製造することができる。塗工方法としては、ナイフコータ、マイクロバーコータ、エアナイフコータ、リバースロールコータ、リバースグラビアコータ、バリオグラビアコータ、ダイコータ、カーテンコータ等から適宜選択することができる。本発明の粘着シートを用いれば、貼合段階での粘着剤の塗布、乾燥工程が必要なく、粘着対象物の間に粘着シートを積層して加圧すれば粘着することができるため、簡便である。
【0066】
粘着剤組成物の塗工後には、加熱処理による乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥工程における加熱温度は30℃以上200℃以下であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることが好ましい。乾燥時間は1分以上100分以下とすることが好ましく、1分以上30分以下とすることがより好ましい。加熱工程においては、例えば、空気循環式恒温オーブンを用いて加熱乾燥をすることが好ましい。
【0067】
粘着シートに含まれる粘着剤層の厚みは5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、粘着剤層の厚みは100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。粘着剤層の厚みを上記範囲内とすることにより、粘着剤層の接着力と、応力緩和性能を十分に発揮することができる。
本発明の粘着シートは、基材層に粘着剤層が積層された多層構成を有していてもよいが、粘着剤層のみから構成される単層シートであることが好ましい。また、本発明の粘着シートは両面粘着シートであることが好ましい。
【0068】
本発明の粘着シートは、非常にヘイズ値が小さく透明性に優れている点に特徴がある。本明細書においては、粘着シートのヘイズは、JIS K 7136に準拠した方法で測定される値のことをいう。本発明の両面粘着シートが両面粘着シートのみの構成である場合、両面粘着シートのヘイズ値を測定することは困難なため、両面粘着シートを松浪ガラス社製のスライドガラス(品番:S9112)に貼合してヘイズ値を測定する。具体的には、両面粘着シートを松浪ガラス社製のスライドガラスに貼合した後、貼合時に混入した微細な空気などの影響を排除するために、積層されたサンプルに0.5MPa、40℃の条件で30分間オートクレーブ(加圧脱泡)処理を施す。その後、ガラス貼合面と逆面の剥離シートを剥がし、糊面がむき出しの状態で、日本電色工業(株)製のNDH4000を用いて測定する。
【0069】
上記の方法で測定された粘着剤層のヘイズは1.0%以下であることが好ましく、0.9%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の粘着シートの全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。なお、粘着シートの全光線透過率は、JIS K 7136に準拠した方法で測定される値のことをいう。粘着シートの全光線透過率は、上述したヘイズ値の測定方法と同様の方法で測定することができる。
【0070】
本発明の粘着シートを構成する粘着剤層の応力0.1N/mm
2時のひずみは、500%以上であることが好ましく、600%以上であることがより好ましく、700%以上であることがさらに好ましく、800%以上であることが特に好ましい。ここで、粘着シートの応力0.1N/mm
2時のひずみは、重剥離セパレーター/粘着剤層/軽剥離セパレーターの層構成の剥離シート付き粘着シートを作製し、以下のようにして測定することができる。
まず、上記構成の剥離シート付き粘着シート(粘着剤層の厚み20μm)を250×60mmに裁断し、軽剥離セパレーターを剥がして、重剥離セパレーター上で、長辺を巻き方向とし、空気が入らないように粘着剤層のみを丸める。長さ60mm、断面積が5mm
2となったロール状サンプルを重剥離セパレーターから剥がして23℃、相対湿度50%の環境下で引っ張り試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS−X)を用いてチャック間距離が30mmになるようにサンプルの幅方向の端部を挟み、引張速度10mm/minで引張り、応力が0.1N/mm
2に達したときの伸びを測定する。そして、チャック間距離に対する伸びの割合をひずみとして算出する。
【0071】
本発明においては、ポリロタキサン添加後のひずみ値をポリロタキサン添加前のひずみ値で除した値は、1.05以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましい。ポリロタキサン添加前のひずみ値は、ポリロタキサンを添加しない組成の粘着剤組成物から粘着シートを作製し、その粘着シートの応力0.1N/mm
2時のひずみを上述した方法で測定する。
【0072】
本発明の粘着シートは、光学部材の貼合用として好適に用いられる。例えば、本発明の粘着シートは、偏光板又は偏光子の少なくとも一方の面に貼合される偏光板用粘着シートであってもよい。なお、偏光板用粘着シートは、偏光子に直接貼合されてもよい。本発明の粘着シートが偏光子用粘着シートである場合は、粘着シートは偏光子と光学部材を貼合する用途に用いられることが好ましい。
【0073】
(剥離シート付き粘着シート)
本発明は、剥離シート付き粘着シートに関するものであってもよい。剥離シート付き粘着シートは、基材上に剥離剤を設けた剥離シートを粘着シートの片面または両面に設けた構造を有するものであることが好ましい。例えば、剥離シートを粘着剤層の両面に設けた剥離シート付き両面粘着シートは、高分子フィルムに剥離剤層を設けた第1の剥離シートの剥離層面に粘着剤塗工液を塗布、乾燥した後、第1の剥離シートとは剥離力の異なる剥離剤層からなる第2の剥離シートの剥離層面を粘着剤層に貼合圧着することにより得ることができる。第1の剥離シートと第2の剥離シートの剥離力が近接していると、軽剥離力側の剥離シートを剥離する際に、重剥離力側の剥離シートから粘着剤が浮き上がる泣別れ現象が発生する。そのため、重剥離力側の剥離シートの剥離力は0.05N以上0.15N以下であることが好ましく、軽剥離力側の剥離シートの剥離力は0.01N以上0.04N以下であることが好ましい。
また、このとき、二つの剥離シートの剥離力の差が保たれる場合は、第2の剥離シートに先に粘着剤塗工液を塗布したあと、第1の剥離シートを貼合圧着させてもよい。粘着シートの形状はシート状であってもよいし、ロール状に巻き上げられていてもよい。
【0074】
(積層体)
本発明は、上述した粘着シートが光学部材に積層された積層体に関するものであってもよい。このような積層体は画像表示装置に組み込まれて用いられることが好ましい。光学部材としては、液晶セル、有機EL又はタッチパネルなどを挙げることができる。
【0075】
本発明の粘着シートは、偏光子と光学部材の貼合用として用いられてもよい。偏光子としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂フィルムや特開2012−159778号公報に記載されているポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向されたものが用いられる。
【0076】
さらに、本発明の粘着シートは、ガラスと樹脂板の貼合用として用いられてもよい。樹脂板としては、例えばポリカーボネート板やポリメタクリル酸メチル板、ポリカーボネート板とポリメタクリル酸メチル板の共押しにより積層された樹脂板が用いられる。
【実施例】
【0077】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0078】
[アクリル酸エステル共重合体の製造]
<アクリル酸エステル共重合体(A−1)の合成>
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、ブチルアクリレート(BA)50質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)50質量部、酢酸エチル(EtAc)150質量部、メチルエチルケトン(MEK)20質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05質量部を加え、窒素雰囲気下、70℃で8時間重合反応を行なった。反応終了後、固形分濃度が20質量%となるよう酢酸エチル(EtAc)にて希釈し、重量平均分子量が50万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−1)を得た。なお、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、THF(テトラヒドラフラン)を溶解した試料をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
【0079】
<アクリル酸エステル共重合体(A−2)の合成>
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、ブチルアクリレート(BA)70質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)30質量部、酢酸エチル(EtAc)150質量部、メチルエチルケトン(MEK)20質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05質量部を加え、窒素雰囲気下、70℃で8時間重合反応を行なった。反応終了後、固形分濃度が30質量%となるよう酢酸エチル(EtAc)にて希釈し、重量平均分子量が50万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−2)を得た。
【0080】
<アクリル酸エステル共重合体(A−3)の合成>
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、ブチルアクリレート(BA)98.4質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)1.0質量部、アクリル酸(AAc)0.1質量部、アクリルアミド(MA)0.5質量部、酢酸エチル(EtAc)150質量部、メチルエチルケトン(MEK)20質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05質量部を加え、窒素雰囲気下、70℃で8時間重合反応を行なった。反応終了後、固形分濃度が15質量%となるよう酢酸エチル(EtAc)にて希釈し、重量平均分子量が180万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−3)を得た。
【0081】
(実施例1)
上記の通り得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−1)の固形分100質量部に対し、架橋剤(三井化学社製、タケネートD120N)0.15質量部と、ポリロタキサン(アドバンスト・ソフトマテリアルス社製、セルムスーパーポリマーSH1310P)0.5質量部を加え、酢酸エチルにて固形分濃度が15質量%の溶液となるように希釈攪拌し粘着剤組成物を調製した。
【0082】
<粘着シートの作製>
上記のように作製した粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム)(王子エフテックス社製、38RL−07(2))の表面に、乾燥後の塗工量が20μm/m
2になるようにアプリケーターで均一に塗工し、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥し、セパレータフィルムの表面に粘着剤層を形成した。次いで、該粘着剤層の表面に厚さ38μmのセパレータフィルム(王子エフテックス社製、38RL−07(L))を貼合した。このようにして、粘着剤層が剥離力差のある1対のセパレータフィルムに挟まれたセパレータフィルム/粘着剤層/セパレータフィルムの構成を備える剥離シート付き粘着シートを得た。該粘着シートは、23℃、相対湿度50%の条件で7日間養生した。
【0083】
(実施例2)
ポリロタキサンの添加部数を0.5質量部から3.0質量部に変更した以外は実施例1と同様にして実施例2の粘着シートを作製した。
【0084】
(実施例3)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−1)を(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−2)に代えた以外は実施例2と同様にして実施例3の粘着シートを作製した。
【0085】
(実施例4)
ポリロタキサンの添加部数を3.0質量部から5.0質量部に変更した以外は実施例3と同様にして実施例4の粘着シートを作製した。
【0086】
(比較例1)
ポリロタキサンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1の粘着シートを作製した。
【0087】
(比較例2)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−1)を(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−2)に代えた以外は比較例1と同様にして比較例2の粘着シートを作製した。
【0088】
(比較例3)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−2)の固形分100質量部に対し、架橋剤(三井化学社製、タケネートD120N)0.15質量部と、ポリロタキサン(アドバンスト・ソフトマテリアルス社製、セルムスーパーポリマーSH1310P)10.0質量部を加えた以外は実施例1と同様にして比較例3の粘着シートを作製した。
【0089】
(比較例4)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−1)を(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−3)に代えた以外は比較例1と同様にして比較例4の粘着シートを作製した。
【0090】
(比較例5)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−1)を(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−3)に代えた以外は実施例1と同様にして比較例5の粘着シートを作製した。
【0091】
(比較例6)
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−1)を(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A−3)に代えた以外は実施例2と同様にして比較例6の粘着シートを作製した。
【0092】
(評価及び分析)
<ゲル分率>
実施例及び比較例の粘着シートを60×100mmにカットし、両面の剥離フィルムを剥がした後、粘着シートを金属メッシュ(150メッシュ)に包んだ。メッシュに包まれたサンプルを酢酸エチルに浸し、40℃で24時間放置した。取り出した粘着シートを100℃で1時間乾燥させ、酢酸エチル浸漬前後の重量比率を算出し、下記式から粘着シートのゲル分率を求めた。
ゲル分率(%)=酢酸エチル浸漬後の粘着シートの重量/酢酸エチル浸漬前の粘着シートの重量×100
【0093】
<ヘイズ及び全光線透過率>
実施例及び比較例の粘着シートの一方の粘着面を松浪ガラス社製のスライドガラス(品番:S9112)に貼合し、続いて、貼合時に混入した微細な空気などの影響を排除するために、積層されたサンプルに0.5MPa、40℃の条件で30分間オートクレーブ(加圧脱泡)処理を実施した。その後、ガラス貼合面と逆面の剥離シートを剥がし、糊面がむき出しの状態で、日本電色工業(株)製のNDH4000を用いてヘイズ及び全光線透過率を測定した。
【0094】
<応力0.1N/mm
2時のひずみ(%)>
実施例及び比較例で得られた厚みが20μmの剥離シート付き粘着シートを250×60mmに裁断し、軽剥離セパレーターを剥がして、重剥離セパレーター上で、長辺を巻き方向とし、空気が入らないように粘着剤層のみを丸めた。長さ60mm、断面積が5mm
2となったロール状サンプルを重剥離セパレーターから剥がして23℃、相対湿度50%の環境下で引っ張り試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS−X)を用いてチャック間距離が30mmになるようにサンプルの幅方向の端部を挟み、引張速度10mm/minで引張り、応力が0.1N/mm
2に達したときの伸びを測定した。チャック間距離に対する伸びの割合をひずみとして算出した。
【0095】
<ポリロタキサン添加後のひずみ/ポリロタキサン添加前のひずみ>
先に測定した応力0.1N/mm
2時のひずみと、ポリロタキサン添加前の粘着シートの応力0.1N/mm
2時のひずみの比を計算した。具体的には、ポリロタキサンを添加しない組成の各粘着剤組成物から粘着シートを作製し、その粘着シートの応力0.1N/mm
2時のひずみを上述した方法で測定した。そして、ポリロタキサン添加後のひずみの値を、ポリロタキサン添加前のひずみの値で除して、ひずみの比を算出した。
【0096】
<反り>
実施例及び比較例の粘着シートの一方の粘着面を偏光板に貼合し、他方の粘着面を150×250×0.7mmの無アルカリガラスに貼合した。続いて、貼合時に混入した微細な空気などの影響を排除するために、積層されたサンプルに0.5MPa、40℃の条件で30分間オートクレーブ(加圧脱泡)処理を施した。オートクレーブ処理後、85℃環境下に150時間放置し、取り出した後すぐに、無アルカリガラス面が下になるように水平面を有する台の上に乗せ、四つ角の反り量を測定した。無アルカリガラスの各角頂部と、水平面を有する台の上面までの距離を測定し、四つの角の平均値を算出した。そして、以下の基準で評価した。
○:無アルカリガラスの各角頂部と水平面を有する台の上面までの距離の平均値が1.0cm未満である。
△:無アルカリガラスの各角頂部と水平面を有する台の上面までの距離の平均値が1.0cm以上1.2cm未満である。
×:無アルカリガラスの各角頂部と水平面を有する台の上面までの距離の平均値が1.2cm以上である。
【0097】
【表1】
【0098】
実施例では、ヘイズが低く、反り量の少ない粘着シートが得られた。実施例のヘイズは1%未満であり、光学部材貼合用の粘着シートに求められるヘイズ値が達成されていた。また、実施例の粘着シートにおいては、反り量が少なく、応力緩和性に優れていることがわかった。
【0099】
なお、ポリロタキサン添加後のひずみ/ポリロタキサン添加前のひずみの値が1.0よりも大きいものでは、応力緩和性が良い傾向が見られ、反り量も抑えられていた。