(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834334
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】アーク故障検出システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/50 20200101AFI20210215BHJP
【FI】
G01R31/50
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-203256(P2016-203256)
(22)【出願日】2016年10月17日
(65)【公開番号】特開2018-66569(P2018-66569A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 修平
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳准
(72)【発明者】
【氏名】恩地 俊行
【審査官】
島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−509396(JP,A)
【文献】
特開2010−263027(JP,A)
【文献】
特開2016−019390(JP,A)
【文献】
特開2015−079799(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/029458(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記逆流防止素子の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置を有し、
一つの前記分岐系統の前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値が所定の分岐系統側閾値を超えた時に、当該分岐系統における正負の直流線路間に発生した並列アーク故障を検出することを特徴とするアーク故障検出システム。
【請求項2】
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記逆流防止素子の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置を有し、
一つの前記分岐系統に設置された前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれる時に、当該分岐系統における片側の直流線路上に発生した直列アーク故障を検出することを特徴とするアーク故障検出システム。
【請求項3】
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記正側母線と前記負側母線との間の線間電圧を検出する主幹系統側電圧検出装置と、
前記逆流防止素子の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置と、
を有し、
全ての前記分岐系統に設置された前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれ、かつ、前記主幹系統側電圧検出装置による電圧検出値が所定の主幹系統側閾値を下回った時に、前記主幹系統における正負の母線間に発生した並列アーク故障を検出することを特徴とするアーク故障検出システム。
【請求項4】
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記逆流防止素子の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置を有し、
全ての前記分岐系統に設置された前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれる時に、前記主幹系統における片側の母線上に発生した直列アーク故障を検出することを特徴とするアーク故障検出システム。
【請求項5】
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記逆流防止素子に直列に接続されたシャント抵抗と、
前記逆流防止素子と前記シャント抵抗との直列回路の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置と、
を有し、
一つの前記分岐系統の前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値が所定の分岐系統側閾値を超えた時に、当該分岐系統における正負の直流線路間に発生した並列アーク故障を検出することを特徴とするアーク故障検出システム。
【請求項6】
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記逆流防止素子に直列に接続されたシャント抵抗と、
前記逆流防止素子と前記シャント抵抗との直列回路の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置と、
を有し、
一つの前記分岐系統に設置された前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれる時に、当該分岐系統における片側の直流線路上に発生した直列アーク故障を検出することを特徴とするアーク故障検出システム。
【請求項7】
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記正側母線と前記負側母線との間の線間電圧を検出する主幹系統側電圧検出装置と、
前記逆流防止素子に直列に接続されたシャント抵抗と、
前記逆流防止素子と前記シャント抵抗との直列回路の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置と、
を有し、
全ての前記分岐系統に設置された前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれ、かつ、前記主幹系統側電圧検出装置による電圧検出値が所定の主幹系統側閾値を下回った時に、前記主幹系統における正負の母線間に発生した並列アーク故障を検出することを特徴とするアーク故障検出システム。
【請求項8】
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記逆流防止素子に直列に接続されたシャント抵抗と、
前記逆流防止素子と前記シャント抵抗との直列回路の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置と、
を有し、
全ての前記分岐系統に設置された前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれる時に、前記主幹系統における片側の母線上に発生した直列アーク故障を検出することを特徴とするアーク故障検出システム。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載したアーク故障検出システムにおいて、
前記分岐系統は、
前記直流母線と前記直流発電設備との間を開閉する断路用開閉器と、前記直流発電設備の出力側の正負の直流線路間を短絡するための短絡用開閉器と、を有することを特徴とするアーク故障検出システム。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載したアーク故障検出システムにおいて、
前記直流発電設備が太陽光発電設備であり、前記直流母線がパワーコンディショナを介して交流電源系統に接続されていることを特徴とするアーク故障検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システム等の直流発電システムや直流の電力供給システムにおいて、分岐系統や主幹系統に発生するアークを検出するためのアーク故障検出システ
ムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システム等の直流回路におけるアークを検出する従来技術として、以下に示すものが提案されている。
例えば、特許文献1に記載されたアーク検出手段では、太陽電池パネルに接続された端子台でのネジの締め忘れ等により、アークの発生、短絡及び断路故障が発生すると考え、端子台から出力側配線との間の電圧の変動と、端子台から出力側配線に流れる電流の変動とを同時に検出している。
【0003】
また、特許文献2に記載されたアーク検出装置は、メガソーラのように太陽電池パネルの数が多く複数の箇所に配置されており、かつ、パワーコンディショナ(PCS)のインバータのスイッチングノイズが重畳するような直流回路への適用を前提としている。
このアーク検出装置では、複数個の太陽電池パネルが直列接続された直流回路の両端電圧を検出し、その出力をパワースペクトルに変換した後にインバータのスイッチングノイズに相当する周波数帯域を除去し、除去した後のパワースペクトルの複数点で求めたパワースペクトルの傾きが所定の基準値を超えた場合に、直流回路におけるアークの発生を判定している。
【0004】
特許文献1に記載された従来技術では、その原理上、端子台の近傍、言い換えれば電圧センサの近傍でアークが発生し、電圧等が変動した場合に検出できるものである。しかしながら、特にメガソーラ等の大規模な太陽光発電システムでは、ケーブルが長距離にわたって敷設されているため、ケーブルの断線等に起因するアーク故障が様々な箇所で発生する場合がある。
このため、端子台より太陽電池パネル側のケーブル等で発生したアーク故障に関しては、端子台付近の電圧センサの設置位置における急激な電圧変動はほとんどなく、検出が困難である。
【0005】
また、特許文献2に記載された従来技術は、アーク発生時に発生する電圧の高周波成分に着目した検出方法であるが、主幹系統に接続された複数の分岐系統(ストリング)のうち、故障が発生した系統と健全な系統とを区別して検出するためには、逆流防止ダイオード付きの太陽光発電システムであることを必要とする。
しかしながら、近年における太陽光発電システムの世界的な主流では、逆流に対する安全策としてPVヒューズが使用されている。この種のシステムによると、特許文献2に記載の検出方法では故障系統と健全系統とを区別できないため、故障発生時にはシステム全体を停止する必要があると共に、故障点の特定や復旧に多くの時間や手間が必要であった。
すなわち、太陽光発電システムの構成によっては故障系統を判別することができず、太陽光発電を安定的に継続することが困難であった。
【0006】
上記の点に鑑み、出願人は、特願2016−161009号(以下、先願という)として、アーク故障が発生した分岐系統や主幹系統の特定を容易にし、故障箇所を切り離して健全系統からの電力供給を継続可能としたアーク故障検出システムを既に出願している。
【0007】
この先願発明は、例えば
図16に示すように、交流電源系統100、パワーコンディショナ(PCS)1、断路用開閉器11、直流母線40、電圧検出装置25を有する主幹系統と、直流母線40の正側母線Pと負側母線Nとの間に接続された分岐系統A,Bと、を備えたシステムにおいて、分岐系統A,Bは、太陽電池パネル4,5から直流母線40に至る経路に流れる電流を検出する電流検出装置21,22をそれぞれ有し、これらの電流検出装置21,22による電流検出値の周波数スペクトルに基づいて、各分岐系統A,Bにおける直列アーク故障を検出するものである。なお、分岐系統A,Bにおいて、12,13は断路用開閉器、14,15は短絡用開閉器である。
【0008】
ここで、直列アーク故障とは、単一の直流線路上で発生するアーク故障を言い、下記の並列アーク故障とは、正負の直流線路間で発生するアーク故障を言う。
すなわち、各分岐系統における並列アーク故障は、故障が発生した分岐系統の電流検出値が、他系統からの電流の流入によって特異な値になること、及び、直流母線40の電圧検出値が大幅に低下すること等によって検出可能である。
【0009】
また、主幹系統の直列アーク故障は、全ての分岐系統A,Bにおける電圧検出値にアーク故障特有の信号成分が含まれることから検出され、主幹系統の並列アーク故障は、主幹系統の電圧検出値がアーク電圧相当値(数10[V])まで低下し、分岐系統における電流検出値は健全時と比較して変化がないことに基づいて検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−7765号公報(段落[0031]〜[0040]、
図1〜
図3等)
【特許文献2】特開2014−134445号公報(段落[0012]〜[0014]、
図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
さて、
図16の分岐系統A,Bのように、直流母線40から太陽電池パネル4,5に向かう電流を阻止するための逆流防止ダイオード(図示せず)を備えていない場合には、直列・並列アーク故障の検出、故障系統の特定が可能である。
しかし、分岐系統に上記の逆流防止ダイオードが設けられている場合には、ある分岐系統で並列アーク故障が発生しても他の健全系統から電流が流入せず、また、電圧の変動も検出できないため、並列アーク故障を検出することができないという問題があった。
【0012】
国内の太陽光発電システムでは、通常、分岐系統と主幹系統とを接続する接続箱に逆流防止ダイオードが取り付けられており、このようなシステムにおいても分岐系統の直列・並列アーク故障を検出可能であることが求められている。
【0013】
そこで、本発明の解決課題は、分岐系統に逆流防止ダイオードが設けられている直流系統において、分岐系統または主幹系統における直列アーク故障及び並列アーク故障を確実に検出可能としたアーク故障検出システ
ムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1に係るアーク故障検出システムは、主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて
、
前記逆流防止素子の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置を
有し、
一つの前記分岐系統の前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値が所定の分岐系統側閾値を超えた時に、当該分岐系統における正負の直流線路間に発生した並列アーク故障を検出することを特徴とする。
【0015】
請求項2に係るアーク故障検出システムは、主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて
、
前記逆流防止素子の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置を
有し、
一つの前記分岐系統に設置された前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれる時に、当該分岐系統における片側の直流線路上に発生した直列アーク故障を検出することを特徴とする。
【0016】
請求項3に係るアーク故障検出システムは、主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記正側母線と前記負側母線との間の線間電圧を検出する主幹系統側電圧検出装置と、
前記逆流防止素子の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置と、
を
有し、
全ての前記分岐系統に設置された前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれ、かつ、前記主幹系統側電圧検出装置による電圧検出値が所定の主幹系統側閾値を下回った時に、前記主幹系統における正負の母線間に発生した並列アーク故障を検出することを特徴とする。
【0017】
請求項4に係るアーク故障検出システムは、
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記逆流防止素子の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置を有し、
全ての前記分岐系統に設置された前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれる時に、前記主幹系統における片側の母線上に発生した直列アーク故障を検出することを特徴とする。
【0018】
請求項5に係るアーク故障検出システムは、
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記逆流防止素子に直列に接続されたシャント抵抗と、
前記逆流防止素子と前記シャント抵抗との直列回路の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置と、
を有し、
一つの前記分岐系統の前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値が所定の分岐系統側閾値を超えた時に、当該分岐系統における正負の直流線路間に発生した並列アーク故障を検出することを特徴とする。
【0019】
請求項6に係るアーク故障検出
システムは、
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記逆流防止素子に直列に接続されたシャント抵抗と、
前記逆流防止素子と前記シャント抵抗との直列回路の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置と、
を有し、
一つの
前記分岐系統
に設置された前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値
にアーク故障特有の振動成分が含まれる時に、当該分岐系統における
片側の直流線路上に発生した直列アーク故
障を検出することを特徴とする。
【0020】
請求項7に係るアーク故障検出
システムは、
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記正側母線と前記負側母線との間の線間電圧を検出する主幹系統側電圧検出装置と、
前記逆流防止素子に直列に接続されたシャント抵抗と、
前記逆流防止素子と前記シャント抵抗との直列回路の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置と、
を有し、
全ての
前記分岐系統に設置された前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれ
、かつ、前記主幹系統側電圧検出装置による電圧検出値が所定の主幹系統側閾値を下回った時に、
前記主幹系統における
正負の母線間に発生した並列アーク故
障を検出することを特徴とする。
【0021】
請求項8に係るアーク故障検出
システムは、
主幹系統を構成する直流母線と、前記直流母線の正側母線と負側母線との間に接続された直流発電設備を有する一または複数の分岐系統と、を備え、
前記分岐系統に、前記正側母線から前記直流発電設備に向かう方向の電流を阻止するための逆流防止素子が接続されたシステムにおいて、
前記逆流防止素子に直列に接続されたシャント抵抗と、
前記逆流防止素子と前記シャント抵抗との直列回路の両端電圧を検出する分岐系統側電圧検出装置と、
を有し、
全ての
前記分岐系統に設置された前記分岐系統側電圧検出装置による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれ
る時に、前記主幹系統における
片側の母線上に発生した直列アーク故
障を検出することを特徴とする。
【0022】
請求項9に係るアーク故障検出
システムは、請求項1〜
8の何れか1項に記載したアーク故障検出システムに
おいて、
前記分岐系統は、前記直流母線と前記直流発電設備との間を開閉する断路用開閉器と、前記直流発電設備の出力側の正負の直流線路間を短絡するための短絡用開閉器と、を有することを特徴とする。
請求項10に係るアーク故障検出システムは、請求項1〜9の何れか1項に記載したアーク故障検出システムにおいて、
前記直流発電設備が太陽光発電設備であり、前記直流母線がパワーコンディショナを介して交流電源系統に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、分岐系統に逆流防止ダイオードがそれぞれ接続された直流系統において、分岐系統または主幹系統における直列アーク故障や並列アーク故障の発生並びに故障系統を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るアーク故障検出システムの構成図である。
【
図2】第1実施形態において、分岐系統に並列アーク故障が発生した時の動作説明図である。
【
図3】第1実施形態の分岐系統に設置された電圧検出装置の電圧特性図である。
【
図4】第1実施形態において、分岐系統の並列アーク故障を検出した後の動作説明図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るアーク故障検出システムの構成図である。
【
図6】第2実施形態において、分岐系統に直列アーク故障が発生した時の動作説明図である。
【
図7】第2実施形態の分岐系統に設置された電圧検出装置の電圧特性図である。
【
図8】第2実施形態において、分岐系統の直列アーク故障を検出した後の動作説明図である。
【
図9】第2実施形態において、主幹系統に直列アーク故障が発生した時の動作説明図である。
【
図10】第2実施形態において、主幹系統の直列アーク故障を検出した後の動作説明図である。
【
図11】第2実施形態において、分岐系統に並列アーク故障が発生した時の動作説明図である。
【
図12】第2実施形態において、分岐系統の並列アーク故障を検出した後の動作説明図である。
【
図13】第2実施形態において、主幹系統に並列アーク故障が発生した時の動作説明図である。
【
図14】第2実施形態において、主幹系統の並列アーク故障を検出した後の動作説明図である。
【
図15】本発明の第3実施形態に係るアーク故障検出システムの構成図である。
【
図16】先願発明のアーク故障検出システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るアーク故障検出システムの構成図である。
図1において、
図16と同一の部分については同一の番号を付してあり、以下では
図16との相違点を中心に説明する。なお、直流母線40に接続される分岐系統の数は、図示例に何ら限定されないのは言うまでもない。
【0026】
この第1実施形態では、主幹系統の正側母線Pと分岐系統A,Bの電流検出装置21,22との間に、逆流防止ダイオード2,3が図示の極性でそれぞれ接続されている。また、これらのダイオード2,3の両端には、分岐系統側電圧検出装置23,24がそれぞれ接続されている。
【0027】
次に、本実施形態の動作を、
図2〜
図5を参照しつつ説明する。
図2は、分岐系統において並列アーク故障が発生した場合の動作説明図である。ここで、並列アーク故障とは、電流検出装置21,22と太陽電池パネル4,5との間の正負の直流線路間でアークが発生する故障をいう。
【0028】
いま、
図2に示すように分岐系統Aにおいて並列アーク31が発生すると、太陽電池パネル4から出力された電流は並列アーク31を通る経路aを経て太陽電池パネル4に戻るため、主幹系統側へは流れない。また、逆流防止ダイオード2の作用により、健全な分岐系統Bから分岐系統Aに電流が流入することもない。
つまり、分岐系統Aに設けられた電流検出装置21にはアーク故障特有の信号成分が重畳した電流や分岐系統Bからの電流が流れないので、電流検出装置21による電流検出値に基づいて並列アーク31を検出することはできない。このことは、分岐系統Bの電流検出装置22と太陽電池パネル5との間で並列アーク故障が発生した場合も同様である。
なお、
図2において、c,dは分岐系統BとPCS1との間の電流経路を示している。
【0029】
一方、並列アーク故障が発生した分岐系統Aの線間電圧は、並列アーク31によるアーク電圧である数10[V]まで低下し、主幹系統の線間電圧(太陽電池パネル4,5の動作電圧である数100〜1,000[V])との間に電位差が生じる。
この電位差は、オン状態の断路用開閉器12と並列アーク31とを介して電圧検出装置23により測定される。すなわち、電圧検出装置23は、主幹系統の線間電圧と並列アーク31によるアーク電圧との差分を検出することとなる。
【0030】
図3(a)は、分岐系統Aにおいて時刻t
1に並列アーク31が発生した場合に、電圧検出装置23により検出される電圧を示す特性図であり、ΔVは並列アーク発生前後の電位差である。なお、
図3(b)は、健全系統Bの電圧特性図であり、並列アークの発生前後で電圧検出値は変化していない。
【0031】
並列アーク故障が発生していない健全時には、分岐系統Aの電圧検出装置23による検出値は、逆流防止ダイオード2の端子間電圧、例えば数10[mV]程度の大きさである。
一方、並列アーク31の発生時には、前述したように、電圧検出装置23によって直流母線40の線間電圧とアーク電圧との差分が検出されることになり、その値は数10[V]〜数100[V]になる。従って、電圧検出装置23による電圧検出値に対し、例えば、アーク電圧<閾値<主幹系統の線間電圧の範囲内で所定の閾値(請求項における分岐系統側閾値)を設定すれば、並列アーク31の発生を検出することができる。
【0032】
次に、
図4は、分岐系統Aの並列アーク故障を検出した場合の保護動作を示しており、32は消弧後の並列アークである。
電圧検出装置23の動作によって並列アークを検出したら、分岐系統Aの短絡用開閉器14をオンさせることにより、太陽電池パネル4の出力電流は短絡用開閉器14を通る経路bに流れ、並列アークが消弧される。更に、断路用開閉器12をオフさせることにより、分岐系統Aが直流母線40から切り離され、分岐系統B及び他の健全系統により太陽光発電システムの運転を継続することができる。
【0033】
この第1実施形態において、分岐系統A,Bの片側の直流線路で発生した直列アーク故障は、後述する
図7に示すように、電圧検出装置23または24による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれることに基づいて検出することができる。
また、主幹系統の正負の母線P,N間で発生した並列アーク故障は、全ての分岐系統A,Bの電圧検出装置23,24による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれ、かつ、主幹系統側電圧検出装置25による電圧検出値が所定の閾値(請求項における主幹系統側閾値)を下回ってアーク電圧相当値まで低下したことに基づいて検出可能である。
更に、主幹系統の片側の母線上で発生した直列アーク故障は、全ての分岐系統A,Bの電圧検出装置23,24による電圧検出値にアーク故障特有の振動成分が含まれることに基づいて検出可能である。
【0034】
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係るアーク故障検出システムの構成図である。
図5において、
図1の第1実施形態と同一の部分については同一の番号を付してあり、以下では
図1との相違点を中心に説明する。
【0035】
この第2実施形態では、逆流防止ダイオード2,3にシャント抵抗41,42がそれぞれ直列に接続されていると共に、逆流防止ダイオード2とシャント抵抗41との直列回路に並列に分岐系統側電圧検出装置23が接続され、逆流防止ダイオード3とシャント抵抗42との直列回路に並列に分岐系統側電圧検出装置24が接続されている。なお、
図1における電流検出装置21,22は除去されている。
【0036】
次に、本実施形態の動作を、
図6〜
図15を参照しつつ説明する。
図6は、分岐系統Aのシャント抵抗41と太陽電池パネル4との間で直列アーク33が発生した場合の動作説明図である。
この場合、太陽電池パネル4とPCS1との間の電流は、経路e,fとして示すように、直列アーク33、シャント抵抗41、逆流防止ダイオード2、断路用開閉器12を介して主幹系統に流れる。この電流にはアーク故障特有の信号成分が重畳しており、電圧検出装置23による電圧検出値には、
図7(a)に示すような振動成分が含まれる。従って、この振動成分を検出すれば、分岐系統Aに直列アーク33が発生したことを検出可能である。
【0037】
この時、分岐系統BとPCS1との間で経路c,dを流れる電流には、直列アーク33による前記信号成分がほとんど重畳されないので、分岐系統Bの電圧検出装置24が
図7(a)の振動成分を検出することはなく、電圧検出装置24による電圧検出値は
図7(b)のようになる。これは、図示されていない他の健全系統においても同様である。
更に、主幹系統に設置された電圧検出装置25でも、分岐系統Aの直列アーク33による振動成分は検出されない。
従って、分岐系統において発生した直列アーク故障は、当該分岐系統内の電圧検出装置のみによって検出することができ、当該分岐系統を故障系統として特定することができる。
【0038】
図8は、直列アーク故障を検出した場合の保護動作を示しており、34は消弧後の直列アークである。
直列アークの検出後は、断路用開閉器12をオフすることにより、分岐系統Aが直流母線40から切り離される。これにより、故障系統を除去した状態で、分岐系統Bを含む他の健全系統のみによって太陽光発電システムの運転を継続することができる。
【0039】
次いで、
図9は、主幹系統の正側母線P上で直列アーク故障が発生した場合の動作説明図である。
健全時において、太陽電池パネル4,5の出力電流は、シャント抵抗41,42、逆流防止ダイオード2,3、断路用開閉器12,13、及び主幹系統の断路用開閉器11を介してPCS1に供給されている。この状態で、例えば主幹系統の正側母線P上で直列アーク35が発生すると、分岐系統A,Bを流れる電流、言い換えれば、シャント抵抗41と逆流防止ダイオード
2との直列回路、及び、シャント抵抗42と逆流防止ダイオード
3との直列回路を流れる電流には、アーク故障特有の信号成分(振動成分)が重畳される。
【0040】
このため、分岐系統A,Bの電圧検出装置23,24による電圧検出値にも、上記の信号成分が重畳する。従って、全ての電圧検出装置23,24による電圧検出値に着目することにより、主幹系統で何らかのアーク故障が発生したことを検出可能である。
ただし、分岐系統A,Bの電圧検出装置23,24による電圧検出値だけでは、主幹系統で発生したアーク故障が直列アーク故障であるか並列アーク故障であるかの判別が不可能である。
【0041】
ここで、
図9に示したように主幹系統で直列アーク35が発生しても、主幹系統の線間電圧検出値に変動は生じないが、例えば、正負の母線P,Nが線間短絡して並列アーク故障が発生した場合には、線間電圧がアーク電圧相当値まで低下する。
このため、電圧検出装置25による線間電圧検出値に所定の閾値(請求項における主幹系統側閾値)を設けておき、線間電圧検出値がこの閾値を下回ったことに基づいて主幹系統における並列アーク故障の発生を検出することができる。
【0042】
つまり、分岐系統A,Bの電圧検出装置23,24によりアーク故障特有の信号成分が検出された場合には主幹系統において何らかのアーク故障が発生したと判断し、かつ、主幹系統の電圧検出装置25による線間電圧検出値が主幹系統側閾値以上である場合を直列アーク故障と判別し、上記閾値未満である場合を並列アーク故障と判別すれば良い。
【0043】
なお、メガソーラ等の大規模な設備では、分岐系統の数が多くなり、発電量にばらつきが生じることが考えられる。このため、電圧検出装置により検出される信号にもばらつきが生じ、特定の分岐系統では検出閾値以下まで信号が低下することが考えられる。このため、主幹系統で発生したアーク故障の種類を判別する際には、複数の分岐系統(例えば、3系統以上)の電圧検出装置によりアーク故障特有の信号成分が検出された場合に、主幹系統において直列アーク35が発生したと判別することが考えられる。
【0044】
図10は、主幹系統の直列アーク故障を検出した場合の保護動作を示しており、36は消弧後の直列アークである。
主幹系統において直列アーク故障を検出したら、主幹系統の断路用開閉器11をオフし、または、全ての分岐系統A,Bの断路器用開閉器12,13をオフする。
図10では、故障除去のために全ての断路用開閉器11,12,13をオフしている。
【0045】
次に、
図11は、分岐系統Aにおいて並列アーク31が発生した場合の動作を示している。
前述した
図2の場合と同様に、太陽電池パネル4の出力電流は、並列アーク31を通る経路aにより太陽電池パネル4に戻るため、主幹系統側へは流れない。また、逆流防止ダイオード2の作用により、分岐系統Bから分岐系統Aに電流が流入することはない。
このため、分岐系統A,Bの電圧検出装置23,24によりアーク故障特有の信号成分を検出することはできない。
【0046】
この場合には、
図2、
図3(a)と同様に、並列アーク31の発生時には、電圧検出装置23により主幹系統の線間電圧と並列アーク31によるアーク電圧との差分が検出されるため、電圧検出装置23による電圧検出値に所定の閾値(分岐系統側閾値)を設けることで並列アーク31を検出可能である。この閾値は、前記同様に、例えばアーク電圧<閾値<主幹系統の線間電圧の範囲内で設定すれば良い。
【0047】
図12は、分岐系統Aにおける並列アーク故障を検出した場合の保護動作を示しており、32は消弧後の並列アークである。
図4と同様に、並列アーク故障を検出したら分岐系統Aの短絡用開閉器14をオンさせることにより、太陽電池パネル4からの電流は経路bを流れ、並列アークは消弧される。更に、断路用開閉器12をオフさせれば分岐系統Aが直流母線40から切り離され、分岐系統B及び他の健全系統により太陽光発電システムの運転を継続することができる。
【0048】
図13は、主幹系統の正負の母線P,N間で並列アーク故障が発生した場合の動作説明図である。
主幹系統で並列アーク故障が発生すると、太陽電池パネル4,5の出力電流は、主幹系統の並列アーク37を通る経路g,hにより、それぞれ太陽電池パネル4,5に戻る。このため、太陽電池パネル4,5の出力電流にはアーク故障特有の信号成分が重畳すると共に、主幹系統の線間電圧はアーク電圧相当値まで低下する。
従って、分岐系統A,Bの電圧検出装置23,24が上記信号成分を検出し、更には、主幹系統の電圧検出装置25による電圧検出値が所定の閾値を下回ったことに基づいて、並列アーク37の発生を検出することができる。
【0049】
図14は、主幹系統の並列アーク故障を検出した場合の保護動作を示しており、38は消弧後の並列アークである。
並列アーク故障を検出したら、主幹系統及び分岐系統A,Bの断路用開閉器11,12,13をすべてオフすることで、PCS1や他の分岐系統を含む全ての分岐系統を主幹系統から切り離す。これにより、主幹系統に発生した
図13の並列アーク37に電力が供給されなくなり、
図14に符号38で示すごとく並列アークを消弧することができる。
【0050】
次に、
図15は、本発明の第3実施形態に係るアーク故障検出システムの構成図である。
この実施形態は、第2実施形態の分岐系統A,Bにおけるシャント抵抗41,42を除去したものに相当する。この実施形態においても、第1,第2実施形態と同様の方法により、分岐系統及び主幹系統における直列アーク故障、並列アーク故障を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、太陽光発電システムを始めとして、直流発電設備及び逆流防止ダイオードを有する一または複数の分岐系統が主幹系統に接続されたシステムにおいて、分岐系統や主幹系統に発生した直列アーク故障や並列アーク故障を検出する場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
A,B:分岐系統
P:正側母線
N:負側母線
1:パワーコンディショナ(PCS)
2,3:逆流防止ダイオード
4,5:太陽電池パネル
11,12,13:断路用開閉器
14,15:短絡用開閉器
21,22:電流検出装置
23,24:分岐系統側電圧検出装置
25:主幹系統側電圧検出装置
31,37:並列アーク
32,38:並列アーク(消弧後)
33,35:直列アーク
34,36:直列アーク(消弧後)
40:直流母線
41,42:シャント抵抗
100:交流電源系統