特許第6834349号(P6834349)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834349
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】鉄骨部材製作方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 37/00 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
   B21C37/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-211406(P2016-211406)
(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公開番号】特開2018-69282(P2018-69282A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 明良
(72)【発明者】
【氏名】冨村 宏紀
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−252217(JP,A)
【文献】 特公昭45−034248(JP,B1)
【文献】 特開平02−070807(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102704620(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103741584(CN,A)
【文献】 特公昭50−16569(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 37/00−37/29
E04C 3/00− 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手状の第1板部と、前記第1板部の幅方向の一端に接合された第2板部と、前記第1板部の幅方向の他端に接合された第3板部とを有し、前記第2及び第3板部の幅方向が前記第1板部の幅方向と交わるように前記第2及び第3板部が延在されている素材形鋼を準備する準備ステップ、
前記第1板部の長手方向に延びる線に沿って前記素材形鋼の前記第1板部を切断し、前記第2板部と第1切断片とを有する第1中間体、及び前記第3板部と第2切断片とを有する第2中間体を製作する中間体製作ステップ、並びに
前記第1及び第2切断片が前記第2及び第3板部の幅方向に互いにずれて位置するように前記第1及び第2中間体を配置し、前記第1切断片の先端を前記第3板部に接合するとともに、前記第2切断片の先端を前記第2板部に接合する接合ステップ
を含み、
前記第1板部を切断する前記線を、
前記第1板部の幅方向の中央位置で前記第1板部の長手方向に延びる線と、
前記第1板部の幅方向の中央位置から前記第2及び第3板部に向かってそれぞれ同じ距離だけ離れた第1及び第2位置をそれぞれ複数回通る線と
で切り替えて、幅に対する高さの比率が異なる鉄骨部材を前記素材形鋼から製作する、
鉄骨部材製作方法。
【請求項2】
長手状の第1板部と、前記第1板部の幅方向の一端に接合された第2板部と、前記第1板部の幅方向の他端に接合された第3板部とを有し、前記第2及び第3板部の幅方向が前記第1板部の幅方向と交わるように前記第2及び第3板部が延在されている素材形鋼を準備する準備ステップ、
前記第1板部の長手方向に延びる線に沿って前記素材形鋼の前記第1板部を切断し、前記第2板部と第1切断片とを有する第1中間体、及び前記第3板部と第2切断片とを有する第2中間体を製作する中間体製作ステップ、並びに
前記第1及び第2切断片が前記第2及び第3板部の幅方向に互いにずれて位置するように前記第1及び第2中間体を配置し、前記第1切断片の先端を前記第3板部に接合するとともに、前記第2切断片の先端を前記第2板部に接合する接合ステップ
を含み、
前記第1板部を切断する前記線は、前記第1板部の幅方向の中央位置から前記第2及び第3板部に向かってそれぞれ同じ距離だけ離れた第1及び第2位置をそれぞれ複数回通る線であり、
前記距離を変更し、幅に対する高さの比率が異なる鉄骨部材を前記素材形鋼から製作する、
鉄骨部材製作方法。
【請求項3】
前記接合ステップにおいて、前記第1及び第2切断片が互いに接するように前記第1及び第2中間体を配置する、
請求項1又は請求項2に記載の鉄骨部材製作方法。
【請求項4】
前記接合ステップにおいて、前記第1及び第2切断片が互いに離間するように前記第1及び第2中間体を配置する、
請求項1又は請求項2に記載の鉄骨部材製作方法。
【請求項5】
前記素材形鋼は、前記第2及び第3板部の幅方向の中央位置からずれた位置であって前記第2及び第3板部の非端部位置で前記第1板部が前記第2及び第3板部に接合されたものである、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の鉄骨部材製作方法。
【請求項6】
前記素材形鋼は、前記第2及び第3板部の端部位置で前記第1板部が前記第2及び第3板部に接続されたものである、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の鉄骨部材製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅に対する高さの比率が異なる鉄骨部材を製作する鉄骨部材製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の鉄骨部材製作方法としては、例えば下記の特許文献1等に示されている方法を挙げることができる。すなわち、従来方法では、図11に示すように、加工ロール100により素材板材101に加工を施すことでH形鋼等の鉄骨部材102を製作している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−312901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来方法では、加工ロール100により素材板材101に加工を施すことで鉄骨部材102を製作しているので、製作すべき鉄骨部材102の幅及び高さに応じた大きさの加工ロール100を準備する必要があり、鉄骨部材102の製造コストが増大してしまう。また、製作すべき鉄骨部材102が少ロットの場合、設備償却の問題から、その鉄骨部材102を製作するための設備投資自体を断念せざるを得ないこともある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、製作すべき鉄骨部材の幅及び高さの種類に応じた設備投資の必要性を抑えつつ、幅に対する高さの比率が異なる鉄骨部材を製作することができる鉄骨部材製作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鉄骨部材製作方法は、長手状の第1板部と、第1板部の幅方向の一端に接合された第2板部と、第1板部の幅方向の他端に接合された第3板部とを有し、第2及び第3板部の幅方向が第1板部の幅方向と交わるように第2及び第3板部が延在されている素材形鋼を準備する準備ステップ、第1板部の長手方向に延びる線に沿って素材形鋼の第1板部を切断し、第2板部と第1切断片とを有する第1中間体、及び第3板部と第2切断片とを有する第2中間体を製作する中間体製作ステップ、並びに第1及び第2切断片が第2及び第3板部の幅方向に互いにずれて位置するように第1及び第2中間体を配置し、第1切断片の先端を第3板部に接合するとともに、第2切断片の先端を第2板部に接合する接合ステップを含み、第1板部を切断する線を、第1板部の幅方向の中央位置で第1板部の長手方向に延びる線と、第1板部の幅方向の中央位置から第2及び第3板部に向かってそれぞれ同じ距離だけ離れた第1及び第2位置をそれぞれ複数回通る線とで切り替えて、幅に対する高さの比率が異なる鉄骨部材を素材形鋼から製作する。
【0007】
長手状の第1板部と、第1板部の幅方向の一端に接合された第2板部と、第1板部の幅方向の他端に接合された第3板部とを有し、第2及び第3板部の幅方向が第1板部の幅方向と交わるように第2及び第3板部が延在されている素材形鋼を準備する準備ステップ、第1板部の長手方向に延びる線に沿って素材形鋼の第1板部を切断し、第2板部と第1切断片とを有する第1中間体、及び第3板部と第2切断片とを有する第2中間体を製作する中間体製作ステップ、並びに第1及び第2切断片が第2及び第3板部の幅方向に互いにずれて位置するように第1及び第2中間体を配置し、第1切断片の先端を第3板部に接合するとともに、第2切断片の先端を第2板部に接合する接合ステップを含み、第1板部を切断する線は、第1板部の幅方向の中央位置から第2及び第3板部に向かってそれぞれ同じ距離だけ離れた第1及び第2位置をそれぞれ複数回通る線であり、距離を変更し、幅に対する高さの比率が異なる鉄骨部材を素材形鋼から製作する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の鉄骨部材製作方法によれば、第1板部を切断する線を、第1板部の幅方向の中央位置で第1板部の長手方向に延びる線と、第1板部の幅方向の中央位置から第2及び第3板部に向かってそれぞれ同じ距離だけ離れた第1及び第2位置をそれぞれ複数回通る線とで切り替えるか、又は第1板部を切断する線が通る第1及び第2位置の中央位置からの距離を変更して、幅に対する高さの比率が異なる鉄骨部材を素材形鋼から製作するので、製作すべき鉄骨部材の幅及び高さに応じた設備投資の必要性を抑えつつ、幅に対する高さの比率が異なる鉄骨部材を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1による鉄骨部材製作方法を示す説明図である。
図2】本実施の形態の鉄骨部材製作方法による図1の第1鉄骨部材2の製作方法を示す説明図である。
図3】本実施の形態の鉄骨部材製作方法による図1の第2鉄骨部材3の製作方法を示す説明図である。
図4】本実施の形態の鉄骨部材製作方法による図1の第3鉄骨部材4の製作方法を示す説明図である。
図5図1の第1〜第3鉄骨部材2〜4の第1使用態様を示す説明図である。
図6図1の第1〜第3鉄骨部材2〜4の第2使用態様を示す説明図である。
図7図1の鉄骨部材製作方法の第1変形例を示す説明図である。
図8図1の鉄骨部材製作方法の第2変形例を示す説明図である。
図9図1の鉄骨部材製作方法の第3変形例を示す説明図である。
図10図1の鉄骨部材製作方法の第4変形例を示す説明図である。
図11】従来の鉄骨部材製作方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による鉄骨部材製作方法を示す説明図である。図1に示すように、本実施の形態の鉄骨部材製作方法は、素材形鋼1から幅に対する高さの比率が異なる第1〜第3鉄骨部材2〜4を製作するものである。
【0011】
素材形鋼1は、ウェブ11(第1板部)、下フランジ12(第2板部)及び上フランジ13(第3板部)を有している。ウェブ11、下フランジ12及び上フランジ13は、長手状の板材であり、全体として断面形状がH形となるように互いに接合されている。すなわち、ウェブ11の幅方向Wの一端(下端)に下フランジ12が接合され、ウェブ11の幅方向Wの他端(上端)に上フランジ13が接合されている。下フランジ12及び上フランジ13は、それら下フランジ12及び上フランジ13の幅方向Wがウェブ11の幅方向Wと交わるように延在されている。ウェブ11の幅方向Wと下フランジ12及び上フランジ13の幅方向Wとが互いに直交していることが好ましい。
【0012】
素材形鋼1のウェブ11は、下フランジ12の幅方向Wに関して下フランジ12の中央位置12cから第1方向にずれた位置であって下フランジ12の非端部位置で下フランジ12に接合され、また上フランジ13の幅方向Wに関して上フランジ13の中央位置13cから第1方向とは逆の第2方向にずれた位置であって上フランジ13の非端部位置で上フランジ13に接合されていることが好ましい。
【0013】
第1〜第3鉄骨部材2〜4は、ウェブ14、下フランジ12及び上フランジ13をそれぞれ有している。ウェブ14、下フランジ12及び上フランジ13は、全体として断面形状がH形となるように互いに接合されている。
【0014】
第1〜第3鉄骨部材2〜4のウェブ14は、第1ウェブ板141と第2ウェブ板142とを有している。これら第1及び第2ウェブ板141,142の構成については後に図を用いて説明する。第1〜第3鉄骨部材2〜4の下フランジ12及び上フランジ13は、素材形鋼1の下フランジ12及び上フランジ13と同じものである。
【0015】
上述のように、第1〜第3鉄骨部材2〜4は、互いに幅に対する高さの比率が異なる。素材形鋼1及び第1〜第3鉄骨部材2〜4の幅は下フランジ12及び上フランジ13の延在幅によって定義され、素材形鋼1及び第1〜第3鉄骨部材2〜4の高さはウェブ11,14の延在幅に下フランジ12及び上フランジ13の板厚を加えた値によって定義される。本実施の形態の鉄骨部材製作方法では、素材形鋼1及び第1〜第3鉄骨部材2〜4の幅は互いに等しくされている。一方、素材形鋼1の高さをHとし、第1鉄骨部材2の高さをHとし、第2鉄骨部材3の高さをHとし、第3鉄骨部材4の高さをHとした場合、H>H>H>Hとされている。
【0016】
次に、図2は、本実施の形態の鉄骨部材製作方法による図1の第1鉄骨部材2の製作方法を示す説明図である。本実施の形態の鉄骨部材製作方法は、準備ステップ(図2の(a))、中間体製作ステップ(図2の(b))及び接合ステップ(図3の(b)及び(c))を含んでいる。
【0017】
準備ステップでは、上述の素材形鋼1を準備する。
【0018】
次の中間体製作ステップでは、素材形鋼1のウェブ11の長手方向Lに延びる線15(図2の(a)の破線)に沿って素材形鋼1のウェブ11を切断し、図2の(b)に示す第1中間体16と第2中間体17とを製作する。図2の(a)で破線にて示すように、図1の第1鉄骨部材2の製作する際の素材形鋼1のウェブ11を切断する線15は、ウェブ11の幅方向Wの中央位置Wでウェブ11の長手方向Lに延びる線である。
【0019】
図2の(b)に示すように、第1中間体16は、下フランジ12と第1切断片160とを有している。第1切断片160は、後に図1の第1ウェブ板142となる部分であり、側面視矩形の板部によって構成されている。
【0020】
また図2の(b)に示すように、第2中間体17は、上フランジ13と第2切断片170とを有している。第2切断片170は、後に図1の第2ウェブ板141となる部分であり、第1切断片160と同様に側面視矩形の板部によって構成されている。
【0021】
なお、図2の第1及び第2切断片160,170の網掛けは、図2の(c)における第1及び第2切断片160,170の重なりを識別しやすくするために付したものである。後の図3及び図4の網掛けも同様である。
【0022】
次の接合ステップでは、図2の(b)に示すように第1及び第2中間体16,17の位置関係を調整する。すなわち、図2の(c)の右側の正面図で示すように、第1及び第2切断片160,170が下フランジ12及び上フランジ13の幅方向Wに互いにずれて位置するように第1及び第2中間体16,17が配置される。また接合ステップでは、第1及び第2中間体16,17の位置関係を上述のように調整した後に、図2の(c)に示すように、第1中間体16の第1切断片160の先端を上フランジ13に接合するとともに、第2中間体17の第2切断片170の先端を下フランジ12に接合する。
【0023】
図1を用いて説明したように素材形鋼1のウェブ11が下フランジ12及び上フランジ13の中央位置12c,13cからずれて配置されていることで、接合ステップの後に第1及び第2ウェブ板141,142間の中央位置を下フランジ12及び上フランジ13の中央位置12c,13cに一致させるか又は近づけることができる。換言すると、素材形鋼1における下フランジ12及び上フランジ13の中央位置12c,13cからのウェブ11のずれ量は、鉄骨部材2〜4における第1及び第2ウェブ板141,142の想定離間距離に基づき設定することができる。
【0024】
これら準備ステップ、中間体製作ステップ及び接合ステップを経ることで、素材形鋼1から図1の第1鉄骨部材2が製作される。素材形鋼1のウェブ11の幅方向Wの中央位置Wでウェブ11の長手方向Lに延びる線15に沿ってウェブ11が切断されていることから、第1鉄骨部材2の高さHは、素材形鋼1のウェブ11の半分幅に下フランジ12及び上フランジ13の板厚を加えたものであり、素材形鋼1の高さHの約半分となる。第1鉄骨部材2の重量は、素材形鋼1の重量と実質的に変わらない。
【0025】
次に、図3は、本実施の形態の鉄骨部材製作方法による図1の第2鉄骨部材3の製作方法を示す説明図である。図3に示す第2鉄骨部材3の製作と上述の第1鉄骨部材2の製作とでは、素材形鋼1のウェブ11を切断する線15が異なる。すなわち、第1鉄骨部材2を製作する際には、素材形鋼1のウェブ11の幅方向Wの中央位置Wでウェブ11の長手方向Lに延びる線15に沿ってウェブ11を切断していた。一方で、第2鉄骨部材3を製作する際には、図3の(a)に示すように、素材形鋼1のウェブ11の幅方向Wの中央位置Wから下フランジ12及び上フランジ13に向かってそれぞれ同じ距離だけ離れた第1及び第2位置P,Pをそれぞれ複数回通る線15に沿って、素材形鋼1のウェブ11を切断する。
【0026】
第1及び第2位置P,Pをそれぞれ複数回通る線15に沿って素材形鋼1のウェブ11を切断することで、第1及び第2切断片160,170には凹部160a,170a及び凸部160b,170bが形成される。第1及び第2位置P,Pが中央位置Wからそれぞれ同じ距離だけ離れた位置であるので、下フランジ12の上面を基準とする第1切断片160の凸部160bの延在幅は、上フランジ13の下面を基準とする第2切断片170の凸部170bの延在幅と等しくされている。これら第1及び第2切断片160,170の凸部160b,170bの延在幅は、素材形鋼1におけるウェブ11の半分幅よりも広い。
【0027】
第1及び第2中間体16,17が作成された後に、第1中間体16の第1切断片160の先端を上フランジ13に接合するとともに、第2中間体17の第2切断片170の先端を下フランジ12に接合することで、第2鉄骨部材3が製作される。第2鉄骨部材3の高さHは、第1及び第2切断片160,170の凸部160b,170bの延在幅に下フランジ12及び上フランジ13の板厚を加えたものである。上述のように第1及び第2切断片160,170の凸部160b,170bの延在幅が素材形鋼1におけるウェブ11の半分幅よりも広いので、第2鉄骨部材3の高さHは第1鉄骨部材2の高さHよりも大きい。
【0028】
すなわち、素材形鋼1のウェブ11を切断する線15を、ウェブ11の幅方向Wの中央位置Wでウェブ11の長手方向Lに延びる線(図2参照)と、ウェブ11の幅方向Wの中央位置Wから下フランジ12及び上フランジ13に向かってそれぞれ同じ距離だけ離れた第1及び第2位置P,Pをそれぞれ複数回通る線(図3参照)とで切り替えることで、幅に対する高さの比率が異なる第1及び第2鉄骨部材2,3を素材形鋼1から製作することができる。なお、第2鉄骨部材3を製作する際のその他の工程は、第1鉄骨部材2を製作する際の工程と同じである。また、第2鉄骨部材3の重量は、素材形鋼1及び第1鉄骨部材2の重量と実質的に変わらない。
【0029】
次に、図4は、本実施の形態の鉄骨部材製作方法による図1の第3鉄骨部材4の製作方法を示す説明図である。第3鉄骨部材4の製作では、第2鉄骨部材3の製作から第1及び第2位置P,Pの場所が変更されている。すなわち、図4の(a)で破線にて示す素材形鋼1のウェブ11を切断する線15は、第1及び第2位置P,Pをそれぞれ複数回通る。第1及び第2位置P,Pは、素材形鋼1のウェブ11の幅方向Wの中央位置Wから下フランジ12及び上フランジ13に向かってそれぞれ同じ距離だけ離れた位置である。第3鉄骨部材4の製作におけるウェブ11の中央位置Wと第1及び第2位置P,Pと間の距離は、第2鉄骨部材3の製作におけるウェブ11の中央位置Wと第1及び第2位置P,Pと間の距離よりも広くされている。
【0030】
第1及び第2切断片160,170の凸部160b,170bの延在幅は、ウェブ11の中央位置Wからの第1及び第2位置P,Pの距離に対応する。すなわち、第3鉄骨部材4の製作における第1及び第2切断片160,170の凸部160b,170bの延在幅は、第2鉄骨部材3の製作における第1及び第2切断片160,170の凸部160b,170bの延在幅よりも広くされている。
【0031】
第2及び第3鉄骨部材3,4の高さH,Hは、第1及び第2切断片160,170の凸部160b,170bの延在幅に下フランジ12及び上フランジ13の板厚を加えたものである。上述のように、第3鉄骨部材4の凸部160b,170bの延在幅が第2鉄骨部材3の凸部160b,170bの延在幅よりも広くされているので、第3鉄骨部材4の高さHは第2鉄骨部材3の高さHよりも大きい。
【0032】
すなわち、素材形鋼1のウェブ11を切断する線15が通る第1及び第2位置P,Pの中央位置Wからの距離を変更することで、幅に対する高さの比率が異なる第2及び第3鉄骨部材2,3を素材形鋼1から製作することができる。なお、第3鉄骨部材4を製作する際のその他の工程は、第1及び第2鉄骨部材2,3を製作する際の工程と同じである。また、第3鉄骨部材4の重量は、素材形鋼1、第1鉄骨部材2及び第2鉄骨部材3の重量と実質的に変わらない。
【0033】
次に、図5は、図1の第1〜第3鉄骨部材2〜4の第1使用態様を示す説明図である。図5の第1使用態様では、建築物において天井に埋め込まれたエアコン5を吊り下げるためのエアコン用天井野縁50として図1の第1〜第3鉄骨部材2〜4を使用している。天井にエアコン5が埋め込まれる場合、天井上面51とエアコン5の上面5aとの間の離間距離は、天井にエアコン5が埋め込まれていない位置における天井上面51と天井下面52との離間距離よりも狭い。
【0034】
エアコンが埋め込まれていない位置における天井野縁53として素材形鋼1を使用するとともに、エアコン用天井野縁50として図1の第1〜第3鉄骨部材2〜4のいずれかを使用することで、上述の離間距離の違いに拘わらず天井を構成することができる。このとき、素材形鋼1及び第1〜第3鉄骨部材2〜4の重量が実質的に変わらないので、建築物のバランスを保つことができる。
【0035】
次に、図6は、図1の第1〜第3鉄骨部材2〜4の第2使用態様を示す説明図である。図6の第2使用態様では、建築物においてユニットバス本体6を支えるためのユニットバス本体用床根太60として図1の第1〜第3鉄骨部材2〜4を使用している。ユニットバス本体6の底部6aは、ユニットバス床板61よりも低い位置に配置されている。このため、ユニットバス本体6の底部6aとユニットバス支持部62との間の離間距離は、ユニットバス床板61とユニットバス支持部62との間の離間距離よりも狭くされている。
【0036】
ユニットバス床板61を支える床根太63として素材形鋼1を使用するとともに、ユニットバス本体用床根太60として図1の第1〜第3鉄骨部材2〜4のいずれかを使用することで、上述の離間距離の違いに拘わらずユニットバスを構成することができる。このとき、素材形鋼1及び第1〜第3鉄骨部材2〜4の重量が実質的に変わらないので、建築物のバランスを保つことができる。
【0037】
次に、図7は、図1の鉄骨部材製作方法の第1変形例を示す説明図である。図1では第1〜第3鉄骨部材2〜4の第1及び第2ウェブ板141,142が互いに離間するように示しているが、図7に示すように第1〜第3鉄骨部材2〜4の第1及び第2ウェブ板141,142を互いに隣接させてもよい。その他の構成は、図1の構成と同じである。
【0038】
次に、図8は、図1の鉄骨部材製作方法の第2変形例を示す説明図である。図8に示すように第1及び第2ウェブ板141,142の離間距離を広げ、第1〜第3鉄骨部材2〜4の断面を閉鎖断面に近づけるか又は閉鎖断面とすることもできる。図8に示す第1〜第3鉄骨部材2〜4では、下フランジ12及び上フランジ13の端部から下フランジ12及び上フランジ13の幅の1/4までの領域QRにおいて第1及び第2ウェブ板141,142が下フランジ12及び上フランジ13に接合されている。第1及び第2ウェブ板141,142の離間距離を広げることで、第1及び第2ウェブ板141,142の横座屈に対する耐久性を向上させることができる。その他の構成は、図1の構成と同じである。
【0039】
次に、図9は、図1の鉄骨部材製作方法の第3変形例を示す説明図である。下フランジ12及び上フランジ13にリップ12a,13aが形成された素材形鋼1を用いることで、図9に示すようなリップ付形鋼からなる第1〜第3鉄骨部材2,3,4を製作することもできる。その他の構成は、図1の構成と同じである。この第3変形例は、第1変形例又は第2変形例と組み合わせて実施できる。
【0040】
次に、図10は、図1の鉄骨部材製作方法の第4変形例を示す説明図である。第4変形例では、素材形鋼1として溝形鋼が使用されている。溝形鋼のウェブ11は、下フランジ12及び上フランジ13の端部位置でそれら下フランジ12及び上フランジ13に接続されている。図2図3で示すような線15に沿って溝形鋼のウェブ11を切断し、第1中間体16の第1切断片160の先端を上フランジ13に接合するとともに、第2中間体17の第2切断片170の先端を下フランジ12に接合することで、断面矩形の鉄骨部材7を製作することができる。
【0041】
図2に示すように素材形鋼1のウェブ11の幅方向Wの中央位置Wでウェブ11の長手方向Lに延びる線15に沿ってウェブ11を切断した場合、製作される鉄骨部材7は閉鎖断面の角形鋼管として使用できる。一方、図3及び図4に示すように、素材形鋼1のウェブ11の幅方向Wの中央位置Wから下フランジ12及び上フランジ13に向かってそれぞれ同じ距離だけ離れた第1及び第2位置P,Pをそれぞれ複数回通る線15に沿って素材形鋼1のウェブ11を切断した場合、製作される鉄骨部材7は側面に切欠きが形成された角形鋼管として使用できる。その他の構成は、図1の構成と同じである。
【0042】
このような鉄骨部材製作方法では、素材形鋼1のウェブ11を切断する線15を、ウェブ11の幅方向Wの中央位置Wでウェブ11の長手方向Lに延びる線15と、ウェブ11の幅方向Wの中央位置Wから下フランジ12及び上フランジ13に向かってそれぞれ同じ距離だけ離れた第1及び第2位置P,Pをそれぞれ複数回通る線15とで切り替えるか、又はウェブ11を切断する線15が通る第1及び第2位置P,Pの中央位置Wからの距離を変更して、幅に対する高さの比率が異なる鉄骨部材を素材形鋼から製作するので、大きな設備変更を伴わずに幅に対する高さの比率が異なる鉄骨部材を製作することができる。従って、製作すべき鉄骨部材の幅及び高さの種類に応じた設備投資の必要性を抑えつつ、幅に対する高さの比率が異なる鉄骨部材を製作することができる。
【0043】
また、接合ステップにおいて、第1及び第2切断片160,170が互いに接するように第1及び第2中間体16,17を配置するので、図7に示す断面を有する鉄骨部材2,3,4を製作できる。このような鉄骨部材2,3,4は、一般的なH形鋼の代替品として容易に使用することができる。
【0044】
さらに、接合ステップにおいて、第1及び第2切断片160,170が互いに離間するように第1及び第2中間体16,17を配置するので、第1〜第3鉄骨部材2〜4の断面を閉鎖断面に近づけるか又は閉鎖断面とすることもできる。また、第1及び第2ウェブ板141,142の離間距離を広げることで、第1及び第2ウェブ板141,142の横座屈に対する耐久性を向上させることができる。
【0045】
さらにまた、素材形鋼1は、下フランジ12及び上フランジ13の幅方向Wに関して下フランジ12及び上フランジ13の中央位置12cからずれた位置であって下フランジ12及び上フランジ13の非端部位置で下フランジ12及び上フランジ13にウェブ11が接合されたものであるので、第1及び第2ウェブ板141,142間の中央位置を下フランジ12及び上フランジ13の中央位置12c,13cに一致させるか又は近づけることができる。
【0046】
また、素材形鋼1は、下フランジ12及び上フランジ13の端部位置でウェブ11が下フランジ12及び上フランジ13に接続されたものであるので、閉鎖断面を有する角形鋼管又は側面に切欠きが形成された角形鋼管として使用できる鉄骨部材7を製作することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 素材形鋼
11 ウェブ(第1板部)
12 下フランジ(第2板部)
13 上フランジ(第3板部)
15 線
16,17 第1及び第2中間体
160,170 第1及び第2切断片
2,3,4,7 鉄骨部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11