特許第6834354号(P6834354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834354
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】水処理装置および水処理装置の管理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/04 20060101AFI20210215BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   C02F3/04
   C02F3/12 A
   C02F3/12 F
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-213711(P2016-213711)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-69183(P2018-69183A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】岩永 匡紀
(72)【発明者】
【氏名】田坂 大輔
(72)【発明者】
【氏名】端谷 祐人
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭51−014824(JP,B1)
【文献】 特開平11−138138(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/161339(WO,A1)
【文献】 特開2002−018481(JP,A)
【文献】 特開2001−025782(JP,A)
【文献】 特開2003−103296(JP,A)
【文献】 特開2003−275765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F3/02−3/10
C02F3/12
C02F3/28−3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を処理する水処理装置であって;
前記被処理水の散水手段、ろ材層、一次処理水の排出口および気体流入口を備える散水ろ床槽と;
前記一次処理水の流入口、二次処理水の排出口、酸素を含む気体の供給手段および気体排出口を備える生物処理槽と;
前記散水ろ床槽の前記気体流入口と、前記生物処理槽の前記気体排出口との間の接続部材とを有し;
前記ろ材層の内部に、前記ろ材層を通過する前記被処理水の流れ方向と、前記生物処理槽から排出されて前記散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域を有し、
前記散水ろ床槽が、前記散水ろ床槽の水平断面の一部の面積を可変的な調整ができるように開放された前記散水ろ床槽の気体排出口を有する、水処理装置。
【請求項2】
前記散水ろ床槽が、前記生物処理槽の上部に位置する、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記水処理装置の底面積が、前記散水ろ床槽の底面積および前記生物処理槽の底面積のうち大きい方の底面積と等しい、請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記散水手段と前記気体流入口の間に前記ろ材層が存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記ろ材層が前記気体流入口の上部に位置し、かつ、
前記散水手段が前記ろ材層の上部に位置する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記接続部材が、面内の一部に開口を有する仕切りである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記散水ろ床槽の前記気体流入口として、前記生物処理槽を介さずに直接散水ろ床槽に気体を供給する気体流入口をさらに有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記散水ろ床槽の前記気体流入口および前記一次処理水の排出口が同じ部材である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記散水ろ床槽前記気体排出口を前記散水手段の上方に有し、
前記生物処理槽から排出されて前記散水ろ床槽に流入する気体が、前記散水ろ床槽の前記気体排出口から排出される、請求項1〜のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の水処理装置の管理方法であって、
前記生物処理槽および前記ろ材層を冠水させ、
冠水させた前記ろ材層に含まれるろ材に対して前記生物処理槽から流入する気体を直接接触させて、前記気体を破裂させて物理的な洗浄を行う、水処理装置の管理方法。
【請求項11】
前記生物処理槽および前記ろ材層を冠水させる方法が、前記二次処理水の排出速度を前記一次処理水の流入速度よりも遅くし、かつ、前記一次処理水の排出速度を前記被処理水の流入速度よりも遅くする方法である、請求項10に記載の水処理装置の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置および水処理装置の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
好気生物処理を用いる水処理装置として、様々な装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、被処理水を処理する水処理システムであって、
第1空気流入口および第1空気排出口を有する第1非開放水槽内に、スクリーンと、スクリーンで支持されたろ材層と、被処理水をろ材層に散布する散布機構とを配置してなる散水ろ床と、
第2空気流入口および第2空気排出口を有する第2非開放水槽内で流入水を好気的に処理する生物処理槽と、
散水ろ床の第1空気流入口と、生物処理槽の第2空気排出口とを接続する連通管と、を備える、水処理システムが記載されている。
【0004】
特許文献2には、微生物担体に付着した微生物を利用した汚水処理方法において、汚水処理が、それぞれ微生物担体を設置した複数の処理槽によってなされると共に、発生した汚泥を被処理水側の何れかの処理槽に返送し、必要に応じて微生物のための栄養源を添加することにより、汚泥が返送された処理槽中の栄養源含有量を調節する、余剰汚泥の少ない汚水処理方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、廃水供給管からの廃水を処理水排水管に向けて上向流または下向流で流動可能にする廃水処理槽と、廃水処理槽の内部に設けられる濾過床と、濾過床内に充填される多数の粒状体からなる浮上性または沈降性の濾材と、濾過床の複数位置に接続される空気供給管とを備え、濾過床の圧力損失の増加に応じて、空気供給を上流側から下流側に向けて切り換える生物濾過装置が記載されている。
【0006】
特許文献4には、濾過槽内に浮上性粒状濾材により形成された濾過層に被処理液を上向流で通して濾過を行う濾過方法において、濾過層の一部の濾材を引抜く引抜手段を濾過槽に設け、濾過操作中に引抜手段により濾過層から一部の濾材を引抜き、引抜いた濾材を洗浄して濾過槽の下部に返送しながら濾過を行う濾過方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−33666号公報
【特許文献2】国際公開WO99/42408号公報
【特許文献3】特開平10−230108号公報
【特許文献4】特開平07−112190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、散水ろ床は、曝気を必要としない省エネルギー型の水処理装置であるが、処理水の水質が生物処理に比べて劣る。
一方、生物処理槽は処理水の水質に優れる水処理装置である。本明細書中、特に断りなく生物処理という場合は、活性汚泥法の生物処理を意味する。活性汚泥法の生物処理では、酸素を含む気体の供給手段(いわゆる曝気装置)を連続的に供給する。生物処理槽は、曝気装置で酸素を供給する際に多大な電気代がかかり、高負荷排水を通水すると発泡などの異常が発生する可能性がある。
【0009】
これに対し、特許文献1および2には、散水ろ床の後段に生物処理槽を設ける方法が記載されている。
特許文献1に記載の方法は、散水ろ床の散水方向がろ材層の上側から下側に向かう方向であり、生物処理槽から供給される気体の流れ方向(散気方向)もろ材層の上側から下側に向かう方向であり、両者は並流であった。そのため、気液の接触効率が悪い方法であった。また、特許文献1では、生物処理槽に供給する酸素を散水ろ床に用いる理由は散水ろ床の温度の向上にあり、散水ろ床の処理水の水質の向上には十分に利用できていない方法であった。
特許文献2には、散水ろ床の散水方向と、生物処理槽からの散気方向の制御についてほとんど示唆はなかった。
【0010】
特許文献3および4には、散水ろ床の後段に生物処理槽を設ける方法の記載はないものの、ろ材を通過する水および気体の流れに関する記載がある。
特許文献3では、生物処理槽の内部において、被処理液の流れ方向がろ材の下側から上側に向かう方向であり、曝気手段から供給される気体の流れ方向がろ材の下側から上側に向かう方向であり、両者を並流とする方法が記載されている。特許文献3では、実質的にろ過操作を行いながらろ材の洗浄を行うことが目的であり、処理水の水質を高めることの示唆はなかった。
特許文献4では、生物処理槽の内部において、被処理液の流れ方向と、曝気手段から供給される気体の流れ方向を制御することが記載されている。特許文献4では、ろ材の逆洗間隔の延長および逆洗水量の低減をすることが目的であり、処理水の水質を高めることの示唆はなかった。
【0011】
散水ろ床の後段に生物処理槽を設けた場合に、散水ろ床および生物処理槽を通過した処理水の水質を高める方法として、生物処理槽に溶解しきれずに残った酸素を散水ろ床および/または生物処理槽で再利用することが考えられる。例えば、指標として、散水ろ床および/または生物処理槽を通過した処理水の溶存酸素が余る程度まで多くなれば、散水ろ床および生物処理槽で従来よりも好気処理がなされ、生物処理槽に溶解しきれずに残った酸素を散水ろ床および/または生物処理槽で再利用できたと判断することができる。
しかしながら、上述のとおり、散水ろ床および生物処理槽を通過した処理水の水質を高める方法を示唆する文献はなかった。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、生物処理槽に溶解しきれずに残った酸素を散水ろ床槽に非常に効率的に供給でき、散水ろ床槽を通過した処理水の溶存酸素を多くできる水処理方法を提供することである。
また、本発明が解決しようとする課題は、本発明の水処理装置を簡便な方法で効率的に洗浄することができる水処理装置の管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った。
その結果、ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流(互いに逆方向)となる領域を少なくともろ材層の一部に有する構成とすると、生物処理槽に溶解しきれずに残った酸素を散水ろ床槽に非常に効率的に供給でき、散水ろ床槽を通過した処理水の溶存酸素を多くできることを見出すに至った。
上記課題を解決するための具体的な手段である本発明の構成と、本発明の好ましい構成を以下に記載する。
【0014】
[1] 被処理水を処理する水処理装置であって;
被処理水の散水手段、ろ材層、一次処理水の排出口および気体流入口を備える散水ろ床槽と;
一次処理水の流入口、二次処理水の排出口、酸素を含む気体の供給手段および気体排出口を備える生物処理槽と;
散水ろ床槽の気体流入口と、生物処理槽の気体排出口との間の接続部材とを有し;
ろ材層の内部に、ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域を有する、水処理装置。
[2] 散水ろ床槽が、生物処理槽の上部に位置する[1]に記載の水処理装置。
[3] 水処理装置の底面積が、散水ろ床槽の底面積および生物処理槽の底面積のうち大きい方の底面積と等しい[2]に記載の水処理装置。
[4] 散水手段と気体流入口の間にろ材層が存在する[1]〜[3]のいずれか一つに記載の水処理装置。
[5] ろ材層が気体流入口の上部に位置し、かつ、
散水手段がろ材層の上部に位置する[1]〜[4]のいずれか一つに記載の水処理装置。
[6] 接続部材が、面内の一部に開口を有する仕切りである[1]〜[5]のいずれか一つに記載の水処理装置。
[7] 散水ろ床槽の気体流入口および一次処理水の排出口が同じ部材である[1]〜[6]のいずれか一つに記載の水処理装置。
[8] 散水ろ床槽が、散水ろ床槽の水平断面の一部または全部が開放された気体排出口を散水手段の上方に有し、
生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体が、散水ろ床槽の気体排出口から排出される[1]〜[7]のいずれか一つに記載の水処理装置。
[9] [1]〜[8]のいずれか一つに記載の水処理装置の管理方法であって、
生物処理槽およびろ材層を冠水させ、
冠水させたろ材層に対して生物処理槽から流入する気体を接触させて洗浄を行う、水処理装置の管理方法。
[10] 生物処理槽およびろ材層を冠水させる方法が、二次処理水の排出速度を一次処理水の流入速度よりも遅くし、かつ、一次処理水の排出速度を被処理水の流入速度よりも遅くする方法である[9]に記載の水処理装置の管理方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、生物処理槽に溶解しきれずに残った酸素を散水ろ床槽に非常に効率的に供給でき、散水ろ床槽を通過した処理水の溶存酸素を多くできる水処理方法を提供できる。
また、本発明によれば、本発明の水処理装置を簡便な方法で効率的に洗浄することができる水処理装置の管理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の水処理装置の一例を示した概略図である。
図2図2は、本発明の水処理装置の他の一例を示した概略図である。
図3図3は、本発明の水処理装置の他の一例を示した概略図である。
図4図4は、本発明の水処理装置の他の一例を示した概略図である。
図5図5は、本発明の水処理装置の他の一例を示した概略図である。
図6図6は、散水ろ床槽の気体排出口の開口面積の調整方法の一例を示した概略図である。
図7図7は、比較例1の水処理装置の概略図である。
図8図8は、比較例2の水処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0018】
[水処理装置]
本発明の水処理装置は、被処理水を処理する水処理装置であって;
被処理水の散水手段、ろ材層、一次処理水の排出口および気体流入口を備える散水ろ床槽と;
一次処理水の流入口、二次処理水の排出口、酸素を含む気体の供給手段および気体排出口を備える生物処理槽と;
散水ろ床槽の気体流入口と、生物処理槽の気体排出口との間の接続部材とを有し;
ろ材層の内部に、ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域を有する。
本発明によれば、このような構成により、生物処理槽に溶解しきれずに残った酸素(余剰な気体)を散水ろ床槽に非常に効率的に供給でき、散水ろ床槽(好ましくは散水ろ床槽および生物処理槽)を通過した処理水の溶存酸素を多くできる水処理方法を提供できる。特開2015−33666号公報では散水方向と散気方向が並流であったのに対して、本発明では散水方向と散気方向が向流となるため水への酸素溶解効率が向上する。そして、生物処理槽に溶解しきれずに残った酸素を散水ろ床槽に供給するため、前段の散水ろ床槽で高負荷処理(粗取り)を省エネルギーで(好ましくは高速度で)実施でき、かつ、一次処理水の水質および溶存酸素を高めることができる。前段の散水ろ床槽で負荷を落とすことで後段の生物処理槽の発泡などの異常を抑制でき、かつ、一次処理水の溶存酸素も多いために生物処理槽の処理も高めることができ、生物処理槽を通過した後の二次処理水の水質を高めることができる。特開2015−33666号公報の[0020]に記載のとおり、通常の曝気によって生物処理槽で消費される酸素は微量である。
なお、本明細書中、「向流」とは、一方の流れ方向と他方の流れ方向とが対向(向かい合う)状態であることを言い、厳密に一方の流れ方向と他方の流れ方向とが180°異なる場合に限定されるものではない。
上述の「向流」状態を達成するために、生物処理槽からの気体流入口が、散水ろ床槽の被処理水の流入口と異なることが好ましい。
また、生物処理槽からの気体流入口15と散水ろ床槽の被処理水の流入口10とは、上述の「向流」状態を得られるような位置関係にあることが好ましい。「生物処理槽からの気体流入口からの気体の流れ方向」と「散水ろ床槽の被処理水の流入口からの被処理水の流れ方向」とのなす角は、例えば45〜180°であることが好ましく、90〜180°であることがより好ましく、135〜180°であることが特に好ましく、180°(平行)であることが最も好ましい。
ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とのなす角は、例えば90°を超え180°以下であることが好ましく、135〜180°であることがより好ましく、180°(平行)であることが特に好ましい。
同様に、ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、(生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入した後の)ろ材層を通過する気体の流れ方向とのなす角も、例えば90°を超え180°以下であることが好ましく、135〜180°であることがより好ましく、180°(平行)であることが特に好ましい。
【0019】
水処理装置は、BOD(Biochemical Oxygen Demand)、COD(Chemical Oxygen Demand)、TOC(Total Organic Carbon)低減などの有機物低減、ならびに、アンモニアの硝化などの好気生物処理に適用できる。
水処理装置は、屋内に設置しても、屋外に設置してもよい。水処理装置を屋内に設置する場合、例えば直径30cm程度の円筒状のサイズとしてもよい。水処理装置を屋外に設置する場合、例えば縦10mおよび横10m程度の直方体状のサイズとしてもよい。
本発明の水処理装置では、二次処理水の水質を高められるため、従来の散水ろ床の後段に生物処理槽を設ける方法の生物処理槽よりも、本発明の水処理装置は生物処理槽を(必要に応じて)スケールダウンすることができる。
以下、本発明の水処理装置の好ましい態様について説明する。
【0020】
<水処理装置の構成>
図1に、本発明の水処理装置の一例を示した。本明細書中、上とは重力の反対方向を意味し、下とは重力の方向を意味する。
図1に示した水処理装置の一例は、被処理水1の散水手段12、ろ材層13、一次処理水の排出口14および気体流入口15を備える散水ろ床槽11を有する。散水ろ床槽11は、被処理水1の散水手段12の上部に被処理水の流入口10を有することが好ましい。
図1に示した水処理装置の一例は、一次処理水の流入口22、二次処理水の排出口23、酸素を含む気体の供給手段24および気体排出口25を備える生物処理槽21を有する。
図1に示した水処理装置の一例は、散水ろ床槽11の気体流入口15と、生物処理槽21の気体排出口25との間の接続部材31を有する。
【0021】
図1では、水の流れを実線の矢印で示した。図1に示すとおり、被処理水1は、散水手段12によってろ材層13に散水され、ろ材層13のろ材(不図示)を上から下の流れ方向で通過することによって処理され、一次処理水の排出口14(接続部材31でもある)を介して一次処理水2として散水ろ床槽11から排出される。次いで、一次処理水2は、一次処理水の流入口22(接続部材31でもある)から生物処理槽21に導入され、生物処理槽21の内部の活性汚泥(不図示)を通過することによって処理され、二次処理水の排出口23を介して二次処理水3として生物処理槽21から排出される。
図1では、気体の流れを破線の矢印で示した。図1に示すとおり、気体4は、気体の供給手段24によって生物処理槽21の内部に供給され、生物処理槽21の気体排出口25(接続部材31でもある)を介して生物処理槽21から排出される。次いで、気体4は、気体流入口15(接続部材31でもある)から散水ろ床槽11に導入され、ろ材層13を下から上の流れ方向で通過し、散水ろ床槽の気体排出口16を介して散水ろ床槽11から排出される。
図1に示した本発明の水処理装置の一例は、ろ材層13の内部に、ろ材層13を通過する被処理水1の流れ方向(上から下)と、生物処理槽21から排出されて散水ろ床槽11に流入する気体4の流れ方向(下から上)とが向流となる領域を有する。散水方向と散気方向が向流となる領域を有することで、水と気体の接触効率が良くなり、水への酸素溶解効率が向上する。
【0022】
散水ろ床槽および生物処理槽の配置については、特に制限はない。例えば、特開2015−33666号公報の配置のように、散水ろ床槽を生物処理槽の上部に配置せず、散水ろ床槽および生物処理槽を並列的に配置して連通管で接続してもよい。この場合は、ろ材層の内部にろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域を有するように、連通管の接続位置を特開2015−33666号公報の接続位置から変更すればよい。散水ろ床槽への連通管の接続位置は、ろ材層の高さの中で、溶存酸素が不足すると思われる高さの位置を任意に選択できる。例えば連通管の接続位置をろ材層よりも下とする配置が挙げられる。また、連通管の接続位置をろ材層の中央部として、ろ材層の上半分のみで生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域を有する配置が挙げられる。
また、散水ろ床槽が、生物処理槽の上部に位置してもよい。
これらの中でも、本発明では、散水ろ床槽が、生物処理槽の上部に位置することが好ましい。図1では、散水ろ床槽を、生物処理槽の上に配置してある。散水ろ床槽および生物処理槽を上下(縦)に接続することによって、省スペース化を図ることができ、水処理装置のイニシャルコストが小さくなる。また、散水ろ床槽および生物処理槽を上下(縦)に接続することによって、機器数の減少による製造コストの低下および省エネルギー化(消費電力の減少)をできる。例えば、生物処理槽に一次処理水を送るための送液ポンプ、散水ろ床槽に気体を供給するための吸引ポンプ、連通管から供給される気体を散水ろ床槽内に均一化するための攪拌翼等の機器を用いる必要が無くなる。
従来、散水ろ床槽および生物処理槽を直列に上下方向に配置しなかった理由は、散水ろ床槽の洗浄をしないとろ材の閉塞物や水が増して、散水ろ床槽が重くなり、生物処理槽が散水ろ床槽の重みに耐えられないためである。これに対し、本発明の水処理装置の好ましい態様では、後述する水処置装置の管理方法による効率的な洗浄が可能であるため、上に配置する散水ろ床槽への被処理水が貯まり、散水ろ床槽の質量が増加した状態になることを防止できる。そのため、上下方向に散水ろ床槽および生物処理槽を接続する構造上の問題を解決することができる。
【0023】
本発明では、水処理装置の底面積が、散水ろ床槽の底面積および生物処理槽の底面積のうち大きい方の底面積と等しいことが好ましい。この構成とすることで、省スペース化を図ることができ、水処理装置のイニシャルコストが小さくなる。生物処理槽の底面積が散水ろ床槽の底面積よりも大きく、水処理装置の底面積が生物処理槽の底面積と等しいことがより好ましい。
水処理装置の底面積が、散水ろ床槽の底面積および生物処理槽の底面積のうち大きい方の底面積と等しい配置のバリエーションを、図1図4に示した。
図1の配置では、散水ろ床槽11の底面積および生物処理槽21の底面積が等しく、水処理装置の底面積も散水ろ床槽11の底面積および生物処理槽21の底面積と等しい。
図2の配置では、生物処理槽21の底面積が散水ろ床槽11の底面積よりも大きく、水処理装置の底面積が生物処理槽21の底面積と等しい。図2の構成の場合、生物処理槽21の上部のうち散水ろ床槽11と接続されていない部分に蓋41を設け、生物処理槽21に供給された気体のなるべく多くが散水ろ床槽11に供給されるようにすることが好ましい。
図3の配置では、散水ろ床槽11の底面積(の合計)および生物処理槽21の底面積が等しく、水処理装置の底面積も散水ろ床槽11の底面積(の合計)および生物処理槽21の底面積と等しい。図3の構成は、1個の生物処理槽21に対し、2個の接続部材31を介して、2個の散水ろ床槽11を設け、各散水ろ床槽11の間に仕切りを設けた構成である。なお、1個の生物処理槽に対し、2個以上の接続部材および2個以上の散水ろ床槽を設け、各散水ろ床槽の間に仕切りを設けた構成としてもよい。
図4の配置では、生物処理槽21の底面積が散水ろ床槽11の底面積(の合計)よりも大きく、水処理装置の底面積が生物処理槽21の底面積と等しい。図4の構成は、1個の生物処理槽21に対し、複数個の接続部材31を介して、複数個の散水ろ床槽11を設けた構成である。また、図4の構成の場合、生物処理槽21の上部のうち散水ろ床槽11と接続されていない部分に蓋(不図示。図2と同様)を設け、生物処理槽21に供給された気体のなるべく多くが散水ろ床槽11に供給されるようにすることが好ましい。
その他、散水ろ床槽および生物処理槽を一体化した装置とすることもでき、その場合は接続部材を仕切りとして用いることができる。
【0024】
本発明の水処理装置の各構成について、順に説明する。なお、水処理装置の各構成としては、本明細書中に記載の内容に加えて、特開2015−33666号公報の[0015]〜[0039]の内容を本発明の趣旨に反しない範囲で用いることができ、この公報の内容は参照して本明細書に組み入れられる。
【0025】
<散水ろ床槽>
まず、散水ろ床槽について説明する。
散水ろ床槽は、被処理水の散水手段、ろ材層、一次処理水の排出口および気体流入口を備える。
【0026】
(被処理水)
被処理水の種類としては、特に制限はない。
被処理水の例としては、例えば、下水、畜産排水、工業排水等の様々な種類の汚水を挙げることができる。
【0027】
被処理水1を散水ろ床槽11に送液する際は、ポンプを用いて積極的に送液してもよく、高低差によって送液してもよい。ポンプを用いて積極的に送液することが好ましい。
図1に示すとおり、被処理水1を散水ろ床槽11に送液する配管に、必要に応じて、被処理水の溶存酸素の測定装置51を設けることができる。この構成により、被処理水の溶存酸素の変動を管理し、安定的に水処理装置を稼働させるように管理することができる。
被処理水を散水ろ床槽に送液する配管には、不図示のバルブを設けることが好ましい。この構成により、後述の水処理装置の管理方法において、ろ材を冠水させるために生物処理槽および散水ろ床槽の水位を制御できる。
【0028】
(散水手段)
散水手段としては特に制限は無い、公知の散水手段を用いることができる。散水手段は、1個であっても、複数個であってもよい。複数個の散水手段を用いる場合、均一に配置することが好ましい。
【0029】
(ろ材層)
ろ材層の内部に、ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域を有する。
ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域はろ材層の全領域であっても、ろ材層の一部の領域であってもよく、ろ材層の全領域であることが好ましい。
ろ材層と、散水手段および気体流入口の位置関係としては特に制限はない。本発明では、散水手段と気体流入口の間にろ材層が存在することが好ましい。この位置関係とすることによって、ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域を、ろ材層の全領域にすることができる。
本発明では、ろ材層が気体流入口の上部に位置し、かつ、散水手段がろ材層の上部に位置することがより好ましい。この構成とすることで、重力によりろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、気体流入口から上方向に向けて流入する気体の流れ方向とを向流にしやすくできる。
図1に示した水処理装置は、ろ材層13が気体流入口15の上部に位置し、かつ、散水手段12がろ材層13の上部に位置する構成である。また、図1に示した水処理装置では、ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域は、ろ材層の上下方向の全領域である。
【0030】
ろ材層に用いられるろ材は特に限定されない。ろ材層に用いられるろ材として、キューブ;スポンジ担体;円筒形のプラスチックなどの樹脂製パイプ;砂利;軽石などの従来知られたろ材を使用することができる。
ろ材のサイズは特に制限はない。被処理水の組成や接続部材の形状にあわせて、ろ材のサイズを調整することができる。
散水ろ床槽のろ材に用いる細菌等については好気的であれば特に制限はない。有機物(BOD、COD)およびアンモニア態窒素などの酸化処理や低減に用いられる生物処理槽を、本発明では好ましく用いることができる。
【0031】
(一次処理水の排出口)
一次処理水の排出口としては特に制限はない。一次処理水の排出口として、連通管を用いてもよく、後述する接続部材を用いてもよい。後述する接続部材を用いることが好ましい。
一次処理水の排出口は、散水ろ床槽の気体流入口と同じ部材であっても、異なる部材であってもよい。本発明では、機器数の減少による製造コストの低下の観点から、散水ろ床槽の気体流入口および一次処理水の排出口が同じ部材であることが好ましい。
一次処理水2を散水ろ床槽11から排出する際は、ポンプを用いて積極的に送液してもよく、高低差によって送液してもよい。高低差によって送液することが好ましい。
【0032】
(気体流入口)
気体流入口としては特に制限はない。気体流入口として、連通管を用いてもよく、後述する接続部材を用いてもよい。後述する接続部材を用いることが好ましい。
生物処理槽に供給された気体のなるべく多くが散水ろ床槽に供給されるように、散水ろ床槽および生物処理槽を接続することが好ましい。具体的には、後述する接続部材を用い、必要に応じて生物処理槽の上部のうち散水ろ床槽と接続されていない部分に蓋を設けることが好ましい。
散水ろ床槽の処理性を高めるために、生物処理槽を介さずに直接散水ろ床槽に気体を供給する気体流入口をさらに設けてもよい。例えば、任意の補助配管を設けて散水ろ床槽に気体を供給してもよい。補助配管は単独配管であっても、生物処理槽への気体の供給手段の配管からの分岐であってもよい。図5に、生物処理槽への気体の供給手段の配管からの分岐である補助配管を設けた水処理装置の一例を示した。図5の態様では、生物処理槽21への気体の供給手段24の配管からの分岐である補助配管32が設けられ、補助配管32を通じて、生物処理槽21を介さずに直接散水ろ床槽11に気体4を供給できる。
【0033】
(散水ろ床槽の気体排出口)
散水ろ床槽の気体排出口では、生物処理槽から流入する気体を排出する。散水ろ床槽の気体排出口としては特に制限はない。
本発明では、散水ろ床槽が、散水ろ床槽の水平断面の一部または全部が開放された気体排出口を散水手段の上方に有し、
生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体が、散水ろ床槽の気体排出口から排出されることが好ましい。
散水ろ床槽が、散水ろ床槽の水平断面の一部が開放された気体排出口を有することがより好ましく、散水ろ床槽の水平断面の一部の面積を可変的な調整ができるように開放された気体排出口を有することが特に好ましい。
散水ろ床槽の一部の面積を可変的な調整ができるように開放された気体排出口を有する場合、散水ろ床槽へ流れ込む気体の量を調整できる。好気処理である散水ろ床槽は、ろ材層の内部で散水方向と散気方向をより対向させやすくして処理効率を高めるために、気体量を調整できることが好ましい。
また、散水ろ床槽の一部の面積を可変的な調整ができるように開放された気体排出口を有する場合、後述の水処理装置の管理方法を用いてろ材を冠水して洗浄する際に、散水ろ床槽を容易に大気開放しやすくできる。
図6は、散水ろ床槽の気体排出口の開口面積の調整方法の一例を示した概略図である。図6では、散水ろ床槽11の水平断面(上部)の一部が解放された気体排出口16が、水平方向に開閉自在な蓋41を有する構成である。図6(A)および図6(B)のとおり蓋41を連続的に開閉することによって、散水ろ床槽11の水平断面の一部の面積を可変的な調整ができるように開放された気体排出口16とすることができる。
蓋は一例であり、蓋と同様に、ダンパーやバルブを代わりに用いることができる。例えば、図4(A)および図4(B)に示したとおり、散水ろ床槽の気体排出口のバルブ17を設け、散水ろ床槽の気体排出口16である排気管の開度を調整することも好ましい。図4(A)は複数の散水ろ床槽の気体排出口のバルブ17の開度を均等にした態様であり、図4(B)は複数の散水ろ床槽の気体排出口のバルブ17のうち1個の開度を大きくした態様である。生物処理槽21からの気体の供給の分散の程度、散水手段の散水の分散の程度などにあわせて、散水ろ床槽の気体排出口のバルブ17の開度を可変的に調整することができる。一般的には、各散水ろ床槽への生物処理槽21からの気体の風量が均等分配できるように調整することが好ましい。
なお、散水ろ床槽の全部が開放された気体排出口を有する場合、すなわち上部が全面開放された散水ろ床槽の場合も、水処理装置の性能上の問題はない。
【0034】
<接続部材>
本発明の水処理装置は、散水ろ床槽の気体流入口と、生物処理槽の気体排出口との間の接続部材を有する。
本発明では、接続部材が、面内の一部に開口を有する仕切りであることが好ましい。
散水ろ床と生物処理槽との接続部材として、パンチングメタル、ストレーナー等が挙げられる。
接続部材の開口径が、ろ材のサイズ(例えば、断面の最大軸。直径など)より小さいことが好ましい。
【0035】
<生物処理槽>
生物処理槽(曝気槽とも言われる)について説明する。
生物処理槽により、前段の散水ろ床槽で処理しきれなかったために放流レベルの水質に達していない一次処理水を、放流レベルの水質まで処理することができる。
生物処理槽の活性汚泥や、活性汚泥に用いる細菌等については好気的であれば特に制限はない。有機物(BOD、COD)およびアンモニア態窒素などの酸化処理や低減に用いられる生物処理槽を、本発明では好ましく用いることができる。
生物処理槽の水位は、散水ろ床槽のろ材を冠水させる洗浄時を除いて、水処理装置の稼働中は散水ろ床槽および生物処理槽の境界以下であればよい。散水ろ床槽および生物処理槽の境界と、生物処理槽の水面との間に空間があってもよく、空間がなくてもよい。図1〜4には、散水ろ床槽および生物処理槽の境界である接続部材31と、水面との間に空間がある態様を示した。
【0036】
(一次処理水の流入口)
生物処理槽の一次処理水の流入口としては特に制限はない。一次処理水の流入口として、連通管を用いてもよく、後述する接続部材を用いてもよい。後述する接続部材を用いることが好ましい。
一次処理水の流入口は、生物処理槽の気体排出口と同じ部材であっても、異なる部材であってもよい。本発明では、機器数の減少による製造コストの低下の観点から、生物処理槽の気体排出口および一次処理水の流入口が同じ部材であることが好ましい。
一次処理水の流入口に、必要に応じて、一次処理水の溶存酸素の測定装置52を設けることができる。この構成により、一次処理水の溶存酸素の変動を管理し、安定的に水処理装置を稼働させるように管理することができる。
一次処理水の溶存酸素の濃度が被処理水の溶存酸素の濃度よりも高いことが好ましい。本発明の水処理装置は、一次処理水の溶存酸素の濃度によって制限されるものではない。
例えば被処理水の溶存酸素の濃度を0mg/Lとした場合、一次処理水の溶存酸素の濃度は2mg/L以上であることが好ましく、5mg/L以上であることがより好ましく、10mg/L以上であることが特に好ましい。
【0037】
(二次処理水の排出口)
二次処理水の排出口としては特に制限はない。
二次処理水の排出口23に、必要に応じて、二次処理水の溶存酸素の測定装置(不図示)を設けることができる。この構成により、二次処理水の溶存酸素の変動を管理し、安定的に水処理装置を稼働させるように管理することができる。
二次処理水の排出口には、不図示のバルブを設けることが好ましい。この構成により、後述の水処理装置の管理方法において、ろ材を冠水させるために生物処理槽および散水ろ床槽の水位を制御できる。
【0038】
(気体の供給手段)
生物処理槽への気体の供給手段としては特に制限はない。曝気装置として公知の気体の供給手段を用いることができる。例えば、ブロワ、ラインブロワなどを挙げることができる。気体の供給手段の気体供給部位は、1個であっても、複数個であってもよい。複数個の気体供給部位を用いる場合、均一に配置することが好ましい。生物処理槽の形状にもよるが、生物処理槽へ気体を供給した場合、気体が上昇するにつれて気体が水中で拡散して均一に供給されるため、気体の供給手段の気体供給部位を厳密に均一に配置しなくてもよい。
供給する気体は、酸素を含む気体であれば特に制限はない。例えば、空気や、空気よりも酸素の含有率を高めた気体などを挙げることができる。また、圧縮された気体を用いてもよい。
【0039】
(気体排出口)
生物処理槽の気体排出口では、気体の供給手段から供給される気体を排出する。生物処理槽の気体排出口としては特に制限はない。
気体排出口として、連通管を用いてもよく、後述する接続部材を用いてもよい。後述する接続部材を用いることが好ましい。
生物処理槽の気体排出口の好ましい態様は、散水ろ床槽の気体流入口の好ましい態様と同様である。
【0040】
(二次処理水)
二次処理水の溶存酸素の濃度が被処理水の溶存酸素の濃度よりも高いことが好ましい。本発明の水処理装置は、二次処理水の溶存酸素の濃度によって制限されるものではない。
例えば被処理水の溶存酸素の濃度を0mg/Lとした場合、二次処理水の溶存酸素の濃度は2mg/L以上であることが好ましく、5mg/L以上であることがより好ましく、10mg/L以上であることが特に好ましい。
【0041】
<その他の装置>
水処理装置は、その他の装置を備えていてもよい。
例えば、生物処理槽の下流に沈殿槽を設けることが、通常は好ましい。
【0042】
[水処理装置の管理方法]
本発明の水処理装置の管理方法は、生物処理槽およびろ材層を冠水させ、冠水させたろ材層に対して生物処理槽から流入する気体を接触させて洗浄を行う。
このような構成により、本発明の水処理装置を簡便な方法で効率的に洗浄することができる。特に、一般的な冠水に加えて、空気による物理的な洗浄でろ材の閉塞物を効率的に除去することができる。ろ材(充填材)の閉塞が懸念される散水ろ床槽の逆流洗浄において、生物処理槽からの気体の供給を併用することで、高い洗浄効果(閉塞物除去)を得ることができる。
特に高負荷排水あるいは夾雑物が多い排水へ散水ろ床槽を単独で適用する場合、ろ材が閉塞する可能性が大きく、一般的な逆流洗浄では効率的に閉塞物を剥離させることが難しい。また、特開2015−33666号公報に記載の方法では、散水ろ床槽のろ材の洗浄方法が冠水である為、閉塞物を十分に除去できない可能性がある。これに対し、本発明の水処理装置の管理方法によれば、上記のとおり、ろ材の閉塞物を効率的に除去することができる。
【0043】
本発明の水処理装置の管理方法では、生物処理槽およびろ材層を冠水させる方法が、二次処理水の排出速度を一次処理水の流入速度よりも遅くし、かつ、一次処理水の排出速度を被処理水の流入速度よりも遅くする方法であることが好ましい。
二次処理水の排出速度を一次処理水の流入速度よりも遅くする方法としては、二次処理水の排出口のバルブの開度を「生物処理槽への一次処理水の流入水量(流入速度)>生物処理槽からの二次処理水の排出水量(排出速度)」となるように調整または完全に閉める方法を挙げられる。
一次処理水の排出速度を被処理水の流入速度よりも遅くする方法としては、被処理水を散水ろ床槽に送液する配管のバルブの開度を「散水ろ床槽への被処理水の流入水量(流入速度)>散水ろ床槽からの一次処理水の流出水量(排出速度)」となるように調整または全開する方法を挙げられる。
洗浄が終わった後は、二次処理水の排出速度、一次処理水の流入速度および被処理水の流入速度を、元の稼働中の速度に戻すように調整することにより、容易に水処理装置を再稼働できる。
【実施例】
【0044】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0045】
[実施例1]
<水処理>
図1に示した水処理装置とほぼ同じ構成の水処理装置を用い、生物処理槽から、散水ろ床槽のろ材層よりも下部に気体(空気)を供給して、被処理水の処理を行った。ただし、散水ろ床槽の気体排出口16は、図6に示した蓋41を用いる構成とした。被処理水を散水ろ床槽に送液する配管および二次処理水の排出口には、バルブを設けた。
実施例1で用いた水処理装置は、ろ材層の内部に、ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域を有する(向流式)。実施例1で用いた水処理装置は、生物処理槽の上部および散水ろ床槽の底面はいずれも開放されており、面内の一部にパターン状の多数の開口を有する仕切りである接続部材31を介して、互いに連結されている。なお、接続部材31はパンチングメタルであり、開口径がろ材(キューブ)のサイズよりも小さいものを用いた。この場合、接続部材31は一次処理水の排出口14、気体流入口15および気体排出口25の役割を果たす部材であり、すなわち散水ろ床槽11の気体流入口15および一次処理水の排出口14が同じ部材である。この場合、接続部材31では、散水ろ床槽11から生物処理槽21に向けて一次処理水2が流れ、かつ、生物処理槽21からの空気は散水ろ床槽11に流入することを、煙などを送り込み目視で確認した。
また、実施例1で用いた水処理装置では、散水ろ床槽が、生物処理槽の上部に位置する。
実施例1で用いた水処理装置では、散水ろ床槽の底面積および生物処理槽の底面積が等しく、すなわち実施例1で用いた水処理装置の底面積は散水ろ床槽の底面積および生物処理槽の底面積と等しい。
実施例1で用いた水処理装置では、図1のろ材層13が気体流入口15の上部に位置し、かつ、散水手段12がろ材層13の上部に位置する配置である。
実施例1で用いた水処理装置では、散水ろ床槽11が、散水ろ床槽11の水平断面の一部または全部が開放された気体排出口16を散水手段12の上方に有し、生物処理槽21から排出されて散水ろ床槽11に流入する気体4が、散水ろ床槽11の気体排出口16から排出される配置である。
なお、散水ろ床槽および生物処理槽は、いずれも好気生物処理とした。
【0046】
<評価>
東京都下水道局技術調査年報(2009)p.139〜141における手順に従い、被処理水の溶存酸素を0mg/Lとした。被処理水の溶存酸素の測定は、一般的な溶存酸素計(HORIBA製 D−75)を用いて、図1に示す被処理水の溶存酸素の測定装置51の位置で測定した。
得られた一次処理水を採取し、溶存酸素濃度を測定した。一次処理水の溶存酸素の測定は、図1に示す一次処理水の溶存酸素の測定装置52の位置で測定した。
得られた結果を下記表1に記載した。
【0047】
[比較例1]
図7に示した水処理装置を用い、生物処理槽から、散水ろ床槽の充填材よりも上部に気体(空気)を供給して、被処理水の処理を行った。図7に示した水処理装置は、ろ材層の内部に、ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域を有さない。この場合、散水ろ床槽11の一次処理水の排出口14は、散水ろ床槽11から生物処理槽21に向けて一次処理水2が一方向に流れるのみであり、生物処理槽21からの空気に起因して一次処理水2中の溶存酸素が増加することは確認されなかった。
その後、実施例1と同様に得られた一次処理水を採取し、溶存酸素濃度を測定した。得られた結果を下記表1に記載した。
【0048】
[比較例2]
図8に示した水処理装置を用い、生物処理槽から散水ろ床槽への気体(空気)供給をせずに被処理水の処理を行った。図8に示した水処理装置は、ろ材層の内部に、ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域を有さない。この場合、散水ろ床槽11の一次処理水の排出口14は、散水ろ床槽11から生物処理槽21に向けて一次処理水2が一方向に流れるのみであり、生物処理槽21からの空気に起因して一次処理水2中の溶存酸素が増加することは確認されなかった。
その後、実施例1と同様に得られた一次処理水を採取し、溶存酸素濃度を測定した。得られた結果を下記表1に記載した。
【0049】
【表1】
【0050】
以上より、本発明の水処理装置によれば、生物処理槽に溶解しきれずに残った酸素を散水ろ床槽に非常に効率的に供給でき、散水ろ床槽を通過した処理水の溶存酸素を多くできることがわかった。向流式とした場合の一次処理水の溶存酸素の測定値が高い理由は、ろ材層の下部で十分な溶存酸素を含む一次処理水が得られ、散水ろ床槽および生物処理槽で酸素が消費され尽くされなかったためと考えられる。向流式の場合、水および空気の接触時間を長く取れる環境となり、酸素の水への溶解効率があがるためと考えられる。
比較例1によれば、生物処理槽に溶解しきれずに残った酸素を散水ろ床槽に供給する効率が実施例1よりも劣り、散水ろ床槽を通過した処理水の溶存酸素が少なかった。散水ろ床槽のろ材層よりも上部へ酸素を供給する場合、ろ材層の上部では被処理水の溶存酸素を多くできる可能性はある。しかしながら、ろ材層を通過するうちに酸素が消費されてしまい、ろ材層の下部で十分な溶存酸素を含む一次処理水が得られず、散水ろ床槽および生物処理槽で酸素がほぼ消費され尽くされると考えられる。比較例1の構成では、実施例1の構成よりも、散水ろ床槽および生物処理槽の好気生物処理の機能が低下すると考えられる。
比較例2によれば、生物処理槽に溶解しきれずに残った酸素を散水ろ床槽に供給しない場合、散水ろ床槽を通過した処理水の溶存酸素が比較例1よりもさらに少なかった。
【0051】
[実施例2]
<水処理装置の管理方法>
実施例1で用いた水処理装置を長時間運用した。その後、二次処理水の排出口のバルブを調整して二次処理水の排出速度を一次処理水の流入速度よりも遅くし、かつ、被処理水の流入口のバルブを調整して一次処理水の排出速度を被処理水の流入速度よりも遅くすることによって、生物処理槽およびろ材層を冠水させた。実施例1で用いた水処理装置は、生物処理槽の上部および散水ろ床槽の底面はいずれも開放されており、面内の一部に開口をパターン状に多数有する仕切りである接続部材31を介して、互いに連結されているため、以上の操作で生物処理槽およびろ材層を冠水できた。なお、水処理装置の管理方法は、以上の操作に制限されるものではない。
その後、冠水させたろ材層に対して生物処理槽から流入する気体を接触させて洗浄を行った。すなわち、生物処理槽からの気泡を、接続部材31を通過し、水中でろ材層に直接接触して破裂させた。
洗浄後の水処理装置を再度運用したところ、水処理能力は回復し、十分にろ材層は洗浄されていた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の水処理装置によれば、生物処理槽に溶解しきれずに残った酸素を散水ろ床槽に非常に効率的に供給でき、散水ろ床槽を通過した処理水の溶存酸素を多くできる。そのため、散水ろ床槽(好ましくは散水ろ床槽および生物処理槽)で酸素が消費され尽くされない環境が作れる。
また、本発明の水処理装置によれば、従来の散水ろ床槽と比較してより処理効果の高い散水ろ床槽とすることができ、散水ろ床槽で不可を下げることにより、後段に連結された生物処理槽の負荷軽減および安定的な処理に役立つ。
さらに、本発明の水処理装置によれば、前段の散水ろ床槽で多くの負荷を除去し、後段で生物処理することにより、高負荷処理を省エネルギーで実施できる。
本発明の水処理装置の管理方法によれば、本発明の水処理装置を簡便な方法で効率的に洗浄することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 被処理水
2 一次処理水
3 二次処理水
4 気体
10 被処理水の流入口
11 散水ろ床槽
12 散水手段
13 ろ材層
14 一次処理水の排出口
15 気体流入口
16 散水ろ床槽の気体排出口
17 散水ろ床槽の気体排出口のバルブ
21 生物処理槽
22 一次処理水の流入口
23 二次処理水の排出口
24 気体の供給手段
25 気体排出口
31 接続部材
32 補助配管
41 蓋
51 被処理水の溶存酸素の測定装置
52 一次処理水の溶存酸素の測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8