特許第6834426号(P6834426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834426
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/20 20210101AFI20210215BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   H01M2/10 S
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-235303(P2016-235303)
(22)【出願日】2016年12月2日
(65)【公開番号】特開2018-92797(P2018-92797A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】守作 直人
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−191836(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/002178(WO,A1)
【文献】 特開2016−035906(JP,A)
【文献】 特開2016−012456(JP,A)
【文献】 特開2015−158976(JP,A)
【文献】 特開2013−069657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/20 − 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に固定される電池モジュールであって、
一方向に沿って配列された複数の電池セルを含む配列体と、
前記配列体の前記一方向の両端に配置され前記配列体を挟持する一対の挟持部と、前記一対の挟持部の前記配列体と反対側の面に立設され前記配列体を前記筐体に固定する一対の固定部と、を有する一対のブラケットと、
前記一対の挟持部を互いに連結し、前記一対の挟持部を介して前記配列体に拘束荷重を付加する複数の連結部と、を備え、
前記電池セルは、
前記筐体と対向する第1側板と、
前記筐体及び前記第1側板の対向方向で前記第1側板と対向する第2側板と、
前記一方向及び前記対向方向と交差する交差方向で互いに対向する第3側板及び第4側板と、を有し、
前記複数の連結部は、
前記第2側板上に配置された第1連結部と、
前記第3側板上に配置された第2連結部と、
前記第4側板上に配置された第3連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記対向方向から見て、前記第2連結部と前記第3連結部との間に配置され、
前記第1連結部と前記固定部との距離は、前記第2連結部と前記固定部との距離及び前記第3連結部と前記固定部との距離のそれぞれよりも長く、
前記第1連結部の前記一方向の引張強度は、前記第2連結部の前記一方向の引張強度及び前記第3連結部の前記一方向の引張強度のそれぞれよりも高い、電池モジュール。
【請求項2】
前記第3側板上には前記固定部からの距離が互いに異なる複数の前記第2連結部が配置されており、
前記第4側板上には前記固定部からの距離が互いに異なる複数の前記第3連結部が配置されており、
複数の前記第2連結部及び複数の前記第3連結部の前記一方向の引張強度は、前記固定部からの距離が長いほど高くなるように設定されている、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
複数の前記第2連結部は、前記第3側板上に配置され、前記固定部からの距離が互いに異なる第一の第2連結部及び第二の第2連結部を含み、
複数の前記第3連結部は、前記第4側板上に配置され、前記固定部からの距離が互いに異なる第一の第3連結部及び第二の第3連結部を含み、
前記第一の第2連結部と前記固定部との距離L1、前記第二の第2連結部と前記固定部との距離L2、前記第一の第3連結部と前記固定部との距離L3、及び、前記第二の第3連結部と前記固定部との距離L4は、L2<L4<L3<L1という関係を満たす、請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記複数の連結部のそれぞれは、前記一対の挟持部を互いに連結するボルトを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記第1連結部は、前記一対の挟持部を互いに連結する第1連結部材を有し、
前記第3側板上に配置された1又は複数の前記第2連結部は、それぞれ、前記一対の挟持部を互いに連結する第2連結部材を有し、
前記第4側板上に配置された1又は複数の前記第3連結部は、それぞれ、前記一対の挟持部を互いに連結する第3連結部材を有し、
前記第1連結部材の前記一方向の引張強度、前記第2連結部材の前記一方向の引張強度、及び、前記第3連結部材の前記一方向の引張強度は、互いに等しく、
前記第1連結部の前記第1連結部材の数は、1つの前記第2連結部の前記第2連結部材の数及び1つの前記第3連結部の前記第3連結部材の数のそれぞれよりも多い、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池などの電池セルの配列体を備えた電池モジュールが知られている。かかる電池モジュールにおいて、配列体の両端に配置され、配列体を挟持する挟持部と、挟持部の配列体と反対側の面に立設され、配列体を筐体などの被固定部に固定する固定部と、を有するブラケットが用いられる場合がある。この場合、挟持部を連結部材により連結し、配列体に所定の拘束荷重を付加することで、電池セルにおいて内部抵抗等の特性が変動することを抑制している。
【0003】
例えば特許文献1に記載のバッテリ固定装置では、バッテリ電槽において相対する一対の側面に補強用ブラケットがそれぞれ嵌め込まれている。補強用ブラケットは、連結ボルト及びナットにより互いに連結される側面押さえ部と、締結ボルトによりレール状の固定部材に固定される固定用片とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−169242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に電池セルは、その使用期間が長くなると膨張する。電池セルが膨張すると、配列体の両端に配置されたブラケットの挟持部に電池セルの配列方向の応力が加わる。一方、ブラケットの固定部は被固定部に固定されている。このため、挟持部が固定部との接続部分を支点として倒れ込むように変形する場合がある。この場合、挟持部の変形量は、固定部から遠ざかるほど大きくなる。したがって、挟持部の変形量は、固定部からの距離によって変化する。これにより、挟持部において、固定部からの距離によっては、配列体に所定の拘束荷重を付加することができない領域が生じ、電池性能が確保できなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、電池性能の確保が可能な電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電池モジュールは、筐体に固定される電池モジュールであって、一方向に沿って配列された複数の電池セルを含む配列体と、配列体の一方向の両端に配置され配列体を挟持する一対の挟持部と、一対の挟持部の配列体と反対側の面に立設され配列体を筐体に固定する一対の固定部と、を有する一対のブラケットと、一対の挟持部を互いに連結し、一対の挟持部を介して配列体に拘束荷重を付加する第1連結部及び第2連結部と、を備え、第1連結部と固定部との距離は、第2連結部と固定部との距離よりも長く、第1連結部の一方向の引張強度は、第2連結部の一方向の引張強度よりも高い。
【0008】
この電池モジュールでは、一対の挟持部は、第1連結部及び第2連結部により連結され、第1連結部及び第2連結部には、一対の挟持部を介して一方向の引張応力が付加されている。電池セルが膨張すると、一対の挟持部には一方向において互いに離間する向きの応力が加わる。一方、固定部は筐体に固定されている。このため、挟持部が固定部との接続部分を支点として倒れ込むように変形する場合がある。挟持部が倒れ込むように変形すると、第1連結部及び第2連結部に加わる一方向の引張応力は、固定部との距離が長いほど大きくなる。第1連結部と固定部との距離は、第2連結部と固定部との距離よりも長い。このため、第1連結部に加わる一方向の引張応力は、第2連結部に加わる一方向の引張応力よりも大きくなる。ここで、第1連結部の一方向の引張強度は、第2連結部の一方向の引張強度よりも高くなっているので、第1連結部は、第2連結部よりも一方向に変形し難い。したがって、挟持部の倒れ込むような変形が抑制される。この結果、挟持部において、配列体に所定の拘束荷重を付加することができない領域の発生が抑制されるので、電池性能の確保が可能となる。
【0009】
本発明の一側面に係る電池モジュールにおいては、第1連結部の一方向に交差する面における断面積は、第2連結部の一方向に交差する面における断面積よりも大きくてもよい。この場合、第1連結部の一方向の引張強度を第2連結部の一方向の引張強度よりも高くすることができる。したがって、上述のように電池セルの特性のばらつきが抑制可能となる。
【0010】
本発明の一側面に係る電池モジュールにおいては、第1連結部のヤング率は、第2連結部のヤング率よりも大きくてもよい。この場合、第1連結部の一方向の引張強度を第2連結部の一方向の引張強度よりも高くすることができる。したがって、上述のように電池セルの特性のばらつきが抑制可能となる。
【0011】
本発明の一側面に係る電池モジュールにおいては、第1連結部は、一対の挟持部を互いに連結する第1ボルトを有し、第2連結部は、一対の挟持部を互いに連結する第2ボルトを有してもよい。この場合、第1ボルト及び第2ボルトの先端部に螺合される各ナットの位置により、一対の挟持部間の一方向における長さを容易に調整することができる。したがって、被挟持部である配列体の一方向における長さのばらつき等に対応し易い。
【0012】
本発明の一側面に係る電池モジュールにおいては、第1連結部は、一対の挟持部を互いに連結する第1バンドを有し、第2連結部は、一対の挟持部を互いに連結する第2バンドを有してもよい。この場合、例えば、第1バンドの幅を第2バンドの幅よりも広くすることにより、第1連結部の一方向の引張強度を第2連結部の一方向の引張強度よりも容易に高くすることができる。
【0013】
本発明の一側面に係る電池モジュールにおいては、第1連結部は、一対の挟持部を互いに連結する複数の第1連結部材を有し、第2連結部は、一対の挟持部を互いに連結する1又は複数の第2連結部材を有し、第1連結部材の数は、第2連結部材の数よりも多くてもよい。この場合、連結部の一方向の引張強度は、連結部材の数が多いほど高くなることから、第1連結部の一方向の引張強度を第2連結部の一方向の引張強度よりも高くすることができる。したがって、上述のように電池セルの特性のばらつきが抑制可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電池セルの特性のばらつきを抑制可能な電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る電池モジュールを備える電池パックの斜視図である。
図2図1に示される電池モジュールを示す斜視図である。
図3図2に示される電池セル、セルホルダ及び伝熱プレートの分解斜視図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図5は、図2に示される電池モジュールを筐体に取り付けた状態を示す図面である。
図6図5に示した白抜き矢印方向から電池モジュールを見た場合の図面である。
図7】比較例に係る電池モジュールの変形を説明するための図面である。
図8】第1実施形態に係る電池モジュールの変形を説明するための図面である。
図9】第2実施形態に係る電池モジュールを示す斜視図である。
図10】第3実施形態に係る電池モジュールを示す図面である。
図11図10の電池モジュールに含まれる電池セルを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る電池モジュールを備える電池パックを示す斜視図である。図1に示されるように、電池パック10は、電池モジュール1と、筐体2と、ボルト3と、を備えている。電池パック10は、例えばフォークリフト等の車両のバッテリーとして用いられる装置である。電池パック10は、所定のバッテリー収容部に収容される。
【0018】
筐体2は、鉄等の金属で形成されている。筐体2は、矩形箱状を呈しており、電池モジュール1を収容する。筐体2は、底壁部2aと、上壁部2bと、側壁部2cと、側壁部2dと、前壁部2eと、後壁部2fと、を含んでいる。底壁部2a、上壁部2b、側壁部2c、側壁部2d、前壁部2e、及び後壁部2fは、溶接又はボルト(不図示)による締結により一体化されている。
【0019】
電池モジュール1は、筐体2に収容されている。電池モジュール1は、複数のボルト3によって筐体2の側壁部2cに固定されている。この例では、X軸方向(一方向)に2つの電池モジュール1が配置され、各電池モジュール1の上に更に電池モジュール1が積み上げられている。電池モジュール1の数及び配置はこれに限られない。ボルト3は、電池モジュール1を側壁部2cに固定するための締結部材である。本実施形態では、1つの電池モジュール1を固定するために用いられるボルト3の本数は、8本であるが、これに限られない。
【0020】
図2は、図1に示される電池モジュールを示す斜視図である。図2に示されるように、電池モジュール1は、配列体5と、一対のブラケット6と、複数の連結部11〜14と、を備えている。
【0021】
図3は、図2に示される電池セル、セルホルダ及び伝熱プレートの分解斜視図である。図2及び図3に示されるように、配列体5は、X軸方向に配列された複数の電池セル7と、複数のセルホルダ8と、複数の伝熱プレート9と、を備えている。
【0022】
電池セル7は、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。電池セル7は、ケース20と、ケース20内に収容された電極組立体21と、ケース20に設けられた一対の電極端子22と、を有している。ケース20は、有底角筒状のケース本体23と、ケース本体23の開口を覆う蓋板24と、を有している。ケース20は、導電材料(例えばアルミニウム)からなっている。ケース本体23は、矩形平板状の底板23aと、一対の側板23bと、一対の側板23cと、を有している。一対の側板23bは、底板23aのX軸方向の端部に立設され、X軸方向において互いに対向している。一対の側板23cは、底板23aのY軸方向の端部に立設され、Y軸方向において互いに対向している。
【0023】
図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。図4に示されるように、ケース20の内部には、電極組立体21が収容される。電極組立体21は、正極21aと、負極21bと、正極21aと負極21bとの間に配置されたセパレータ21cと、を有している。正極21a、負極21b及びセパレータ21cは、それぞれ矩形シート状を呈している。本実施形態では、電極組立体21は、複数の正極21aと、複数の負極21bと、複数のセパレータ21cと、を有している。正極21a及び負極21bは、セパレータ21cを介して交互に積層されている。セパレータ21cは、袋状であってもよい。
【0024】
図3に示される一対の電極端子22は、電池セル7の電力を外部に取り出すための端子である。一対の電極端子22の一方は、電極組立体21の正極21aに電気的に接続され、正極端子として機能している。一対の電極端子22の他方は、負極21bに電気的に接続されており、負極端子として機能している。各電極端子22は、その一端部が蓋板24から外側に突出するように、蓋板24と絶縁された状態で蓋板24に固定されている。複数の電池セル7は、隣り合う電池セル7において、極性の異なる電極端子22同士が隣り合うように配列されている。複数の電池セル7は、このように隣り合う極性の異なる電極端子22同士がバスバー26(図1参照)を介して接続されることで、電気的に直列接続されている。複数の電池セル7は、電気的に並列接続されていてもよい。
【0025】
セルホルダ8は、樹脂によって一体成型された枠体であって、ケース本体23の底板23aと対向する底面部31と、ケース本体23の一対の側板23cと対向する一対の側面部32と、ケース本体23の蓋板24上に配置される上面部33と、を有している。底面部31は、一対の脚部34を有している。一対の脚部34は、底面部31のY軸方向の端部において、電池セル7と反対側に突出している。一対の脚部34には、後述のボルト11a,12aを案内するガイド孔34aが形成されている。ガイド孔34aは、X軸方向に沿って脚部34を貫通している。上面部33は、一対のボルトガイド35を有している。一対のボルトガイド35には、後述のボルト13a,14aを案内するガイド孔35aが形成されている。ガイド孔35aは、X軸方向に沿ってボルトガイド35を貫通している。
【0026】
伝熱プレート9は、L字状の金属プレートであり、ケース本体23の一対の側板23bのうち一方の側板23bと、セルホルダ8の一対の側面部32のうち一方の側面部32とを覆うように配置されている。伝熱プレート9の材料は、例えばアルミニウムである。伝熱プレート9は、一方の側板23bを覆う部分において電池セル7の熱を受け入れて、一方の側面部32を覆う部分から放熱する。
【0027】
図5は、図2に示される電池モジュールを筐体に取り付けた状態を示す図面である。図2及び図5に示されるように、一対のブラケット6は、配列体5のX軸方向の両端に配置される。一対のブラケット6のそれぞれは、L字状の金属プレートである。一対のブラケット6は、矩形板状の一対の挟持部6aと、矩形板状の一対の固定部6bと、を有している。一対の挟持部6aは、配列体5のX軸方向の両端に配置され、配列体5を挟持する。挟持部6aには、後述のボルト11a〜14aを挿通させるための複数の挿通孔6cが設けられている。挿通孔6cは、X軸方向に沿って挟持部6aを貫通している。複数の挿通孔6cは、X軸方向から見て、図3に示される各セルホルダ8のガイド孔34a及びガイド孔35aのそれぞれと重なる位置に設けられている。
【0028】
一対の固定部6bは、一対の挟持部6aの配列体5と反対側の面における筐体2側の端部に立設され、配列体5を筐体2における側壁部2cに固定する。固定部6bには、ボルト3を挿通させるための複数の挿通孔6dが設けられる。複数の挿通孔6dは、Z軸方向に沿って配列され、Y軸方向に沿って固定部6bを貫通している。本実施形態では、1つの固定部6bにおける挿通孔6dの数は、4つであるが、これに限られない。
【0029】
連結部11は、連結部材として、一対の挟持部6aを互いに連結(締結)するボルト11a及びナット11bを有している。連結部12は、連結部材として、一対の挟持部6aを互いに連結(締結)するボルト12a及びナット12bを有している。連結部13は、連結部材として、一対の挟持部6aを互いに連結(締結)するボルト13a及びナット13bを有している。連結部14は、連結部材として、一対の挟持部6aを互いに連結(締結)するボルト14a及びナット14bを有している。
【0030】
各ボルト11a〜14aは、鉄又はアルミニウム等の金属から構成されている。ボルト11a,12aは、一方のブラケット6の挿通孔6c、各セルホルダ8のガイド孔34a(図3参照)、及び他方のブラケット6の挿通孔6cに順次挿通される。ボルト13a,14aは、一方のブラケット6の挿通孔6c、各セルホルダ8のガイド孔35a(図3参照)、及び他方のブラケット6の挿通孔6cに順次挿通される。
【0031】
他方のブラケット6の挿通孔6cから突出した各ボルト11a〜14aの先端部には、各ナット11b〜14bが螺合されている。これにより、各連結部11〜14は、一対の挟持部6aを互いに連結(締結)し、一対の挟持部6aを介して配列体5に拘束荷重を付加する。この結果、図4に示される各電池セル7の正極21a及び負極21bが適度に密着するので、各電池セル7に所望の特性を発揮させることができる。
【0032】
図6は、図5に示した白抜き矢印方向から電池モジュールを見た場合の図面である。図6に示されるように、ボルト11aと固定部6bとの距離L1、ボルト12aと固定部6bとの距離L2、ボルト13aと固定部6bとの距離L3、及び、ボルト14aと固定部6bとの距離L4は、「L2<L4<L3<L1」という関係を満足している。各距離L1〜L4は、具体的には、各ボルト11a〜14aの中心軸(X軸方向)と、固定部6bの側壁部2cと反対側の面とのY軸方向における距離である。
【0033】
各ボルト11a〜14aのX軸方向の引張強度は、距離L1〜L4が長いほど高くなるように設定されている。すなわち、各ボルト11a〜14aのX軸方向の引張強度は、ボルト12a、ボルト14a、ボルト13a、及びボルト11aの順で高くなっている。ボルト11a〜14aのX軸方向の引張強度は、ボルト11a〜14aの断面積(X軸方向に交差(ここでは、直交)する面における断面積)が大きくなるほど高くなり、ボルト11a〜14aのヤング率が大きくなるほど高くなる。
【0034】
ここでは、各ボルト11a〜14aは、同じ材料から形成されて互いに同等のヤング率を有している。各ボルト11a〜14aの断面積は、距離L1〜L4が長いほど大きくなるように設定されている。すなわち、各ボルト11a〜14aの断面積は、ボルト12a、ボルト14a、ボルト13a、及びボルト11aの順で大きくなっている。各ボルト11a〜14aの中心軸に直交する面における断面は円形を呈しているので、各ボルト11a〜14aの軸径は、ボルト12a、ボルト14a、ボルト13a、及びボルト11aの順で大きくなっているとも言える。
【0035】
図7は、比較例に係る電池モジュールの変形を説明するための図面である。図7に示される比較例に係る電池モジュール100では、ボルト11a〜14a(図7ではボルト13a,14aの図示省略)のX軸方向の引張強度は互いに同等である。具体的には、ボルト11a〜14aは、同じ材料から形成されて互いに同等のヤング率を有すると共に、互いに同等の断面積を有する。このように電池モジュール100は、ボルト11a〜14aの点で、第1実施形態に係る電池モジュール1と相違し、その他の点で一致している。
【0036】
一対の挟持部6aは、連結部11〜14により連結されている。連結部11〜14のボルト11a〜14aには、一対の挟持部6aを介してX軸方向の引張応力が付加されている。電池セル7が膨張すると、一対の挟持部6aにはX軸方向において互いに離間する向きの応力が加わる。一方、固定部6bは側壁部2cに固定されている。このため、挟持部6aが固定部6bとの接続部分を支点として倒れ込むように変形する場合がある。挟持部6aが倒れ込むように変形すると、挟持部6aを介してボルト11a〜14aに加わるX軸方向の引張応力は、固定部6bとの距離が長いほど大きくなる。ここで、ボルト11a〜14aのX軸方向の引張強度は互いに同等である。したがって、電池モジュール100では、挟持部6aの倒れ込むような変形が抑制され難い。この結果、挟持部6aが倒れ込むように変形すると共に、配列体5は、配列体5の側壁部2c側の部分が湾曲内側となり、配列体5の側壁部2cと反対側の部分が湾曲外側となるようにアーチ状に変形する。これにより、挟持部6aにおいて、配列体5に所定の拘束荷重を付加することができない領域が生じ、電池性能が確保できなくなるおそれがある。
【0037】
図8は、第1実施形態に係る電池モジュールの変形を説明するための図面である。図8に示される第1実施形態に係る電池モジュール1においても、電池モジュール100(図7参照)と同様に、挟持部6aが固定部6bとの接続部分を支点として倒れ込むように変形すると、挟持部6aを介してボルト11a〜14aに加わるX軸方向の引張応力は、固定部6bとの距離が長いほど大きくなる。電池モジュール1では、各ボルト11a〜14a(図8ではボルト13a,14aの図示省略)のX軸方向の引張強度は、固定部6bとの距離が長いほど高く、変形し難いように設定されている。これにより、挟持部6aの倒れ込むような変形が抑制される。したがって、挟持部6aにおいて、配列体5に所定の拘束荷重を付加することができない領域の発生が抑制され、電池性能の確保が可能となる。
【0038】
電池モジュール1では、各連結部11〜14は、連結部材として、各ボルト11a〜14aを有している。このため、各ボルト11a〜14aの先端部に螺合させる各ナット11b〜14bの位置により、一対の挟持部6a間のX軸方向における長さを容易に調整することができる。したがって、電池モジュール1によれば、被挟持部である配列体5のX軸方向における長さのばらつき等に対応し易い。また、各ボルト11a〜14aを、各ボルト11a〜14aに対応する挿通孔6c等に挿通した後、各ボルト11a〜14aの先端部に各ナット11b〜14bを螺合させることにより、電池モジュール1を容易に組み立てることができる。また、電池モジュール1を分解することも容易であるため、電池モジュール1の製造時において、一度組み立てた電池モジュール1を分解して手直しすることが容易となる。
【0039】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態に係る電池モジュールを示す斜視図である。図9に示されるように、第2実施形態に係る電池モジュール1Aは、連結部11〜14の代わりに、連結部15,16を備える点で、第1実施形態に係る電池モジュール1と主に相違している。
【0040】
連結部15は、連結部材として、一対の挟持部6aを互いに連結する一対のバンド15a及び一対のボルト15bを有している。バンド15aは、X軸方向に沿って延びる長尺の板状部材により構成されている。一対のバンド15aは、配列体5及び一対の挟持部6aをZ軸方向において挟むように配置されている。バンド15aのX軸方向の両端部は直角に曲がっており、挟持部6aの配列体5と反対側の面に沿って配置されている。バンド15aのX軸方向の両端部には、ボルト15bが挿通される挿通孔(不図示)がそれぞれ設けられている。
【0041】
挟持部6aには、X軸方向から見て、バンド15aの挿通孔(不図示)と重なる位置にボルト15bと螺合するためのネジ孔(不図示)が設けられている。バンド15aは、挿通孔とネジ孔とを位置合わせして、ボルト15bを挿通孔に挿通し、ネジ孔に螺合することによって、挟持部6aに固定されている。
【0042】
連結部16は、連結部材として、一対の挟持部6aを互いに連結する一対のバンド16a及び一対のボルト16bを有している。バンド16aは、X軸方向に沿って延びる長尺の板状部材により構成されている。一対のバンド16aは、配列体5及び一対の挟持部6aをZ軸方向において挟むように配置されている。バンド16aのX軸方向の両端部は直角に曲がっており、挟持部6aの配列体5と反対側の面に沿って配置されている。バンド16aのX軸方向の両端部には、ボルト16bが挿通される挿通孔(不図示)がそれぞれ設けられている。
【0043】
挟持部6aには、X軸方向から見て、バンド16aの挿通孔(不図示)と重なる位置にボルト16bと螺合するためのネジ孔(不図示)が設けられている。バンド16aは、挿通孔とネジ孔とを位置合わせして、ボルト16bを挿通孔に挿通し、ネジ孔に螺合することによって、挟持部6aに固定されている。
【0044】
バンド15aと固定部6bとの距離L5は、バンド16aと固定部6bとの距離L6よりも長い。距離L5は、具体的には、バンド15aのY軸方向の中央と、固定部6bの挟持部6a側の面とのY軸方向における距離である。距離L6は、具体的には、バンド16aのY軸方向の中央と、固定部6bの挟持部6a側の面とのY軸方向における距離である。
【0045】
バンド15a及びバンド16aは、鉄又はアルミニウム等の金属から構成されている。バンド15a及びバンド16aのX軸方向の引張強度は、距離L5,L6が長いほど高くなるように設定されている。すなわち、バンド15aのX軸方向の引張強度は、バンド16aのX軸方向の引張強度よりも高くなるように設定されている。ここでは、バンド15a及びバンド16aは、同じ材料から形成されて互いに同等のヤング率を有している。バンド15a及びバンド16aの断面積(X軸方向に交差(ここでは、直交)する面における断面積)は、距離L5,L6が長いほど大きくなるように設定されている。バンド15a及びバンド16aは、同じ厚さの板状部材により構成され、バンド15aのY軸方向の幅W1は、バンド16aのY軸方向の幅W2よりも広く設定されている。
【0046】
以上のように構成された電池モジュール1Aにおいても、バンド15a及びバンド16aのX軸方向の引張強度は、固定部6bとの距離が長いほど高くなるように設定されているので、挟持部6aの倒れ込むような変形が抑制される。この結果、電池モジュール1と同様に、電池性能の確保が可能となる。
【0047】
電池モジュール1Aでは、各連結部15,16は、連結部材として、バンド15a,16aを有している。したがって、例えば、上述のように、バンド15aのY軸方向の幅W1をバンド16aのY軸方向の幅W2よりも広く設定することにより、バンド15aのX軸方向の引張強度をバンド16aのX軸方向の引張強度よりも容易に高くすることができる。また、バンド15a,16aによれば、ボルトに比べて、占有スペースが小さいので、電池モジュール1Aの小型化が可能となる。
【0048】
[第3実施形態]
図10は、第3実施形態に係る電池モジュールを示す図面である。図11は、図10の電池モジュールに含まれる電池セルを示す分解斜視図である。図10及び図11に示される第3実施形態に係る電池モジュール1Bは、連結部17を更に備える点、及びボルト11a〜14aのX軸方向の引張強度が互いに同等である点で、第1実施形態に係る電池モジュール1Aと主に相違している。
【0049】
連結部17は、連結部材18及び連結部材19を有している。連結部材18は、一対の挟持部6aを互いに連結(締結)するボルト18a及びナット(不図示)を有している。連結部材19は、一対の挟持部6aを互いに連結(締結)するボルト19a及びナット(不図示)を有している。セルホルダ8の一対の側面部32のうち他方の側面部32は、直方体状のボルトガイド36を有している。ボルトガイド36は、他方の側面部32のZ軸方向の中央部における電池セル7と反対側に立設されている。ボルトガイド36には、ボルト18a及びボルト19aを案内する一対のガイド孔36aがZ軸方向に並んで形成されている。ガイド孔36aは、X軸方向に沿ってボルトガイド36を貫通している。
【0050】
ボルト18a及びボルト19aは、Y軸方向において同じ位置に配置されている。ボルト18a及びボルト19aと固定部6bとの距離L7は、距離L1〜L4よりも長い。距離L7は、具体的には、ボルト18a及びボルト19aの中心軸(X軸方向)と、固定部6bの挟持部6a側の面とのY軸方向における距離である。
【0051】
ボルト11a〜14a、ボルト18a、及びボルト19aには、共通の部品が採用され、X軸方向の各引張強度は互いに同等である。連結部11〜14はそれぞれ連結部材としてのボルト11a〜14aを1つずつ有する。これに対し、連結部17は、ボルト18aを含む連結部材18、及びボルト19aを含む連結部材19を有する。つまり、連結部17のボルトの数は2であり、連結部11〜14のボルトの数よりも多い。したがって、連結部17のX軸方向の引張強度は、連結部11〜14のX軸方向の引張強度よりも高いと言える。
【0052】
以上のように構成された電池モジュール1Bおいて、連結部11〜14及び連結部17のうち、固定部6bからの距離が最も長い連結部17では、ボルトの数が他の連結部11〜14よりも多いことによって、X軸方向の引張強度が他の連結部11〜14よりも高く設定されている。したがって、連結部17において、ボルトの数が他の連結部11〜14と同等で、X軸方向の引張強度が同等である場合に比べて、電池モジュール1Bでは挟持部6aの倒れ込むような変形が抑制される。この結果、電池モジュール1と同様に、電池性能の確保が可能となる。またこの場合、連結部のX軸方向の引張強度をボルトの数により設定するので、ボルトとして共通の部品を採用することができる。
【0053】
本発明は上記実施形態に限定されず、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形してもよい。
【0054】
電池モジュール1では、各ボルト11a〜14aのX軸方向の引張強度は、距離L1〜L4が長いほど高くなるように設定されているが、複数のボルト11a〜14aのうち少なくとも2つのボルトにおいて、固定部6bとの距離が長くなるほどX軸方向の引張強度が高くなるように設定されていればよい。例えば、ボルト11aのX軸方向の引張強度は他のボルト12a〜14aのX軸方向の引張強度よりも高く、他のボルト12a〜14aのX軸方向の引張強度は互いに等しくてもよい。また、ボルト11a及びボルト13aのX軸方向の引張強度が互いに等しく、ボルト14a及びボルト12aのX軸方向の引張強度が互いに等しく、ボルト11a及びボルト13aのX軸方向の引張強度がボルト14a及びボルト12aのX軸方向の引張強度よりも高くてもよい。
【0055】
電池モジュール1では、各ボルト11a〜14aは、同じ材料から形成されて互いに同等のヤング率を有しているが、各ボルト11a〜14aが互いに異なる材料から形成されて、互いに異なるヤング率を有していてもよい。つまり、各ボルト11a〜14aのヤング率は、固定部6bとの距離が長いほど高くなるように設定されていてもよい。この場合、ヤング率の違いにより、各ボルト11a〜14aのX軸方向の引張強度において、固定部6bとの距離が長いほど高くなる関係が満足されるので、各ボルト11a〜14aの断面積は互いに同等であってもよい。
【0056】
電池モジュール1Aでは、バンド15a及びバンド16aは、同じ材料から形成されて互いに同等のヤング率を有しているが、バンド15a及びバンド16aが互いに異なる材料から形成されて、互いに異なるヤング率を有していてもよい。つまり、バンド15aのヤング率は、バンド16aのヤング率よりも高くなるように設定されていてもよい。この場合、ヤング率の違いにより、バンド15a及びバンド16aのX軸方向の引張強度において、固定部6bとの距離が長いほど高くなる関係が満足されるので、バンド15a及びバンド16aの断面積、具体的には幅W1及び幅W2は互いに同等であってもよい。
【0057】
電池モジュール1Aでは、幅W1及び幅W2を互いに同等とする代わりに、バンド15aの厚さをバンド16aの厚さよりも厚くしてもよい。
【0058】
電池モジュール1Bでは、連結部17が3以上のボルトを有していてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,1A,1B…電池モジュール、2…筐体、5…配列体、6…ブラケット、6a…挟持部、6b…固定部、7…電池セル、11〜17…連結部、11a,12a,13a,14a,18a,19a…ボルト、15a,16a…バンド、18,19…連結部材。
図1
図2
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図4
図5
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図7
図8
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図10
図11