特許第6834504号(P6834504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834504
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】水素ステーション
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20210215BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20210215BHJP
【FI】
   F17C5/06
   H01M8/04 J
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-4397(P2017-4397)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-112291(P2018-112291A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年10月6日−7日の間に、「株式会社 大林組 本社」において開催された「大林組テクノフェア2016 品川会場」における、「株式会社 大林組」による展示パネル、及び、模型による公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年10月6日−7日の間に、「株式会社 大林組 本社」において開催された「大林組テクノフェア2016 品川会場」における、「株式会社 大林組」により配布されたリーフレットによる公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年10月12日−14日の間に、「株式会社 大林組 技術研究所」において開催された「大林組テクノフェア2016 清瀬会場」における、「株式会社 大林組」による展示パネル、及び、模型による公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年11月1日−2日の間に、「コングレコンベンションセンター」において開催された「大林組テクノフェア2016 大阪会場」における、「株式会社 大林組」による展示パネル、及び、模型による公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年11月18日、「株式会社 大林組」のウェブサイト(URL:http://www.obayashi.co.jp/technofair2016/04sustainable/04_03.html)における公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年11月22日、「三井住友神戸本部ビル」において開催された「SMBC 神戸エネルギーフォーラム」での発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年12月7日、「株式会社 大林組」が「岩手県庁」、及び、「株式会社 復建コンサルタント 盛岡支店」で配布したリーフレットによる公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真里子
(72)【発明者】
【氏名】笠原 修
【審査官】 杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−241398(JP,A)
【文献】 特開平07−101316(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3102605(JP,U)
【文献】 特開2006−022506(JP,A)
【文献】 米国特許第5244307(US,A)
【文献】 特開平2−23972(JP,A)
【文献】 特開2006−6020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/06
F17C 13/00−13/12
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを貯蔵する貯蔵タンクが配置された貯蔵エリアと、
前記貯蔵タンクから水素ガスを車両に供給する水素供給エリアと、
水素供給エリアに隣接された居住エリアとの境界に立設された境界部材とを備え、
前記貯蔵エリアを前記水素供給エリアの下方の領域に配置し、
前記境界部材を、前記居住エリアを構成する建物の側壁を用いて構成し、前記境界から前記水素供給エリアの上方を覆うように配置し、
前記境界部材内には、前記貯蔵エリアに連通する中空を有する給気経路部を備えた前記貯蔵エリアの換気設備を設けたことを特徴とする水素ステーション。
【請求項2】
前記境界部材は、前記貯蔵エリアに連通する中空を有する排気経路部を備え、
前記排気経路部は、前記境界部材の上端部まで延在していることを特徴とする請求項に記載の水素ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスを車両に供給する水素供給エリアを備えた水素ステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を招くCO2や、大気汚染の原因となるCO、NOx、SOx等の有害物質を排出しない燃料電池車両が普及しつつある。この燃料電池車両に、燃料である水素を供給する水素ステーションが検討されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の給水素スタンドは、燃料タンクに水素を供給する水素供給ホースと、水素吸蔵合金を冷却するための冷却液供給装置とを備えている。
また、非特許文献1に記載の水素ステーションでは、自動車等に燃料(水素)を供給するディスペンサと、このディスペンサの上方を覆うキャノピーとが配置された水素供給エリアを備えている。更に、この非特許文献1に記載の水素ステーションでは、水素供給エリアの側部にショールーム等の建物が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−108909号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ARCHITORIUM-OBAYASHI DESIGN PROJECTS 大林組 建築設計プロジェクト、「イワタニ水素ステーション芝公園」、[online]、[平成28年12月8日検索]、インターネット〈URL:http://www.obayashi.co.jp/design/#!/featured/hydrogen>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通常、水素ステーションでは、燃料を供給するディスペンサが設置された水素供給エリアの側方に、所定の距離を隔てて居住エリアを配置している。また、ディスペンサの上方には、従来のガソリンスタンドと同様に、キャノピーが配置されている。従って、水素供給エリアと居住エリアとを距離を置いて配置するため、敷地面積が大きくなり、土地の有効活用が難しかった。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされ、その目的は、周囲の空間を有効活用することができる水素ステーションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
・上記課題を解決するための水素ステーションは、水素ガスを貯蔵する貯蔵タンクが配置された貯蔵エリアと、前記貯蔵タンクから水素ガスを車両に供給する水素供給エリアと、水素供給エリアに隣接された居住エリアとの境界に立設された境界部材とを備え、前記境界部材を、前記境界から前記水素供給エリアの上方を覆うように配置する。これにより、境界部材を、水素供給エリアの庇として利用することができる。また、水素供給エリアの上方空間も、居住エリアとして有効活用することができる。
【0009】
・上記水素ステーションにおいて、前記居住エリアを構成する建物の側壁を用いて、前記境界部材を構成することが好ましい。これにより、境界部材を建物の一部に用いることができるので、境界部材を有効活用することができる。
【0010】
・上記水素ステーションにおいて、前記貯蔵エリアを前記水素供給エリアの下方の領域に配置し、前記貯蔵エリアの換気設備を、前記境界部材内に設けることが好ましい。これにより、貯蔵エリアにおける換気を、境界部材を活用して行なうことができる。
【0011】
・上記水素ステーションにおいて、前記境界部材は、前記貯蔵エリアに連通する中空を有する排気経路部を備え、前記排気経路部は、前記境界部材の上端部まで延在していることが好ましい。これにより、水素貯蔵エリアで水素の漏洩が生じた場合にも、境界部材の上端部から、水素を希薄化して排気することができる。
【0012】
・上記水素ステーションにおいて、前記境界部材は、前記貯蔵エリアに連通する中空を有する給気経路部を備えることが好ましい。これにより、給気用設備を境界部材で構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、周囲の空間を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における水素ステーションの概略構成を説明する模式断面図。
図2】実施形態における水素ステーションの構成を説明する断面図。
図3】実施形態における水素ステーションの境界部材の構成を説明する斜視図。
図4】変更例における境界部材の構成を説明する説明図であって、(a)が曲面形状の中空を有する境界部材、(b)は階段形状の中空を有する境界部材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図3を用いて、本発明を具体化した一実施形態を説明する。
図1の模式図に示すように、本実施形態の水素ステーション10は、地上に、水素供給エリアHA1を備える。この水素供給エリアHA1は、居住エリアRA1に隣接して配置される。水素供給エリアHA1と居住エリアRA1との境界には、境界部材20が配置される。境界部材20は、水素供給エリアHA1が配置された領域の境界(地上における端部)から、水素供給エリアHA1の上方を覆うように延在して立設されている。更に、水素供給エリアHA1の地下には、水素貯蔵エリアHA2が配置されている。この水素貯蔵エリアHA2における給排気は、後述するように、境界部材20内を用いて行なわれる。
【0016】
次に、図2及び図3を用いて、本実施形態の水素ステーション10について詳述する。
水素供給エリアHA1には、燃料電池車C1に水素を供給するためのディスペンサ30が地面に配置されている。
【0017】
居住エリアRA1は、複数階(例えば、4階)の建物40によって構成されている。この建物40においては、境界部材20を壁の一部として用いている。
水素貯蔵エリアHA2は、水素供給エリアHA1の地下に配置された地下室50によって構成されている。地下室50には、水素を貯蔵する貯蔵タンク51と、水素検知センサ(図示せず)とが配置されている。
【0018】
貯蔵タンク51は、圧縮機、蓄圧器ユニット、冷却機を介してディスペンサ30に接続されている。
水素検知センサは、地下室50における水素濃度を検出し、水素の漏洩を検知する。
【0019】
境界部材20は、排気経路部21と給気経路部22とを備えている。排気経路部21は、地上から、建物40(境界部材20)の上端部まで延在しており、排気経路部21の上端部には開口部U1が設けられている。給気経路部22は、排気経路部21よりも水素供給エリアHA1側に配置されている。この給気経路部22は、地上から、建物40の高さの途中位置まで延在しており、給気経路部22の上端部には開口部U2が設けられている。この開口部U2には、給気ファン(図示せず)が設けられている。この給気ファンは、水素検知センサによる水素の漏洩を検知した場合、地下室50を強制排気する。
【0020】
図3は、排気経路部21及び給気経路部22の斜視図である。排気経路部21及び給気経路部22の断面が矩形状からなる環状形状の部材によって構成されている。給気経路部22と、排気経路部21とは一体となって境界部材20を構成する。この場合、排気経路部21と給気経路部22とを、水素供給エリアHA1から境界部材20を見て、前後に平行に並ぶような位置に配置する。
【0021】
排気経路部21の中空S1には、地下室50に連通する開口S1aが設けられている。また、給気経路部22の中空S2には、地下室50に連通する開口S2aが設けられている。そして、開口S1a及び開口S2aは、水素供給エリアHA1から境界部材20を見て、左右に所定の距離を離した位置に設けられている。
【0022】
また、図2に示すように、排気経路部21の中空S1は、開口S1a及び排気管55を介して、地下室50の側壁の上部に設けた排気口55aに接続されている。
給気経路部22の中空S2は、開口S2a、縦給気管(図示せず)、地下室50の下方の給気スペース56を介して、地下室50の底面に設けた給気口56aに接続されている。
【0023】
この配置によって、排気経路部21と地下室50との連通路(開口S1a、排気管55、排気口55a)と、給気経路部22と地下室50との連通路(開口S2a、縦給気管、給気スペース56、給気口56a)とが、干渉せずに配置される構成になっている。
【0024】
一方、境界部材20の排気経路部21は、高さ方向に3つの部材(下部経路部21a、中央経路部21b、上部経路部21c)が連接されている。これら各経路部(21a,21b,21c)は、水平面に対して立設する角度が異なり、それぞれ鈍角を成すように接続されている。また、各経路部(21a,21b,21c)は、下方になるに従って、水平面と成す角度が大きく(鉛直に近く)なるように配置されている。本実施形態は、下部経路部21a、中央経路部21b、上部経路部21cは、水平面に対して、それぞれ、約75度、約35度、約20度を成すように立設されている。
【0025】
また、排気経路部21の下部経路部21aは、給気経路部22とともに、約8m(2階分)の高さまで延在して配置されている。排気経路部21の中央経路部21b、上部経路部21cは、高さが、それぞれ約4m(1階分)、約5mとなる長さで延在している。これにより、高さがある大型車両の燃料電池車を、水素供給エリアHA1で停止させることができる。
【0026】
次に、以上のように構成された水素ステーション10の作用について説明する。
図1及び図2に示すように、地下室50には、給気経路部22の開口部U2、中空S2、開口S2a、縦給気管、給気スペース56、給気口56aを介して、気体の密度差による通風力や、給気経路部22の開口部U2に配置された給気ファンにより、空気が取り込まれる。地下室50内の気体は、排気口55a、排気管55及び開口S1aを介して下部経路部21aの中空S1に排気される。そして、この気体は、下部経路部21aの中空S1から中央経路部21bの中空S1、上部経路部21cの中空S1及び開口部U1を介して、水素供給エリアHA1の上方に排気される。
【0027】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の水素ステーション10は、水素貯蔵エリアHA2と、水素供給エリアHA1と、水素供給エリアHA1に隣接された居住エリアRA1との境界に立設された境界部材20とを備える。この境界部材20を、水素供給エリアHA1の側方から上方を覆うように配置する。これにより、境界部材20を、水素供給エリアHA1の庇として有効活用することができる。また、水素供給エリアHA1の上方空間も、居住エリアRA1として有効活用することができる。
【0028】
(2)本実施形態においては、境界部材20を、居住エリアRA1を区画する建物40を構成する壁の一部で構成する。これにより、境界部材20を、居住エリアRA1の構成部材として用いるとともに、居住エリアRA1と水素供給エリアHA1とを近づけることができる。
【0029】
(3)本実施形態においては、水素貯蔵エリアHA2を水素供給エリアHA1の下方の領域に配置し、水素貯蔵エリアHA2の換気を、境界部材20内に設けた中空S1,S2を用いて行なう。これにより、境界部材20を用いて、水素貯蔵エリアHA2の換気を行なうことができる。
【0030】
(4)本実施形態においては、境界部材20は、水素貯蔵エリアHA2からの排気を行なう排気用の中空S1を有し、この排気用の中空S1は、境界部材20の上端部まで延在している。これにより、水素貯蔵エリアHA2で水素の漏洩が生じた場合にも、建物40の上端部より、希薄化しながら水素を排気することができる。
【0031】
(5)本実施形態においては、境界部材20は、水素貯蔵エリアHA2への給気を行なう給気用の中空S2を区画する給気経路部22と、水素貯蔵エリアHA2からの排気を行なう排気用の中空S1を区画する排気経路部21とを一体的に形成することにより構成されている。これにより、給気用設備と排気用設備とを、1つの部材(境界部材20)で構成することができる。
【0032】
(6)本実施形態においては、排気経路部21は、地下室50の側壁の上部に設けた排気口55aに接続されており、給気経路部22は、地下室50の底面に設けた給気口56aに接続されている。これにより、地下室50内において、給気経路部22の給気口56aを、排気口55aと離れた位置に設けたので、効率的に、給気経路部22から取り込まれた空気を地下室50に供給して、排気経路部21から排気することができる。
【0033】
(7)本実施形態においては、境界部材20の排気経路部21は、下方になるに従って、水平面と成す角度が大きくなるように配置されている。これにより、水素供給エリアHA1において面積と高さとを確保することができる。
(8)本実施形態においては、境界部材20の給気経路部22の開口部U2に給気ファンを設けるので、地下室50の強制排気するファンの水素防爆仕様を回避することができる。
【0034】
また、上記実施形態は、以下の態様に変更してもよい。
・上記実施形態においては、境界部材20の排気経路部21を、上方になるに従って、水平面に対する角度が小さくなる形状で構成した。境界部材20の排気経路部21の形状は、これに限定されない。
【0035】
例えば、図4(a)に示すように、垂直断面が円弧形状の中空S3を有する曲面形状の排気経路部を備えた境界部材70としてもよい。この場合、垂直断面が曲率の異なる円弧形状の中空が形成された部材を連接した境界部材としてもよい。
更に、図4(b)に示すように、垂直断面が、水平部と垂直部とを交互に組み合わせた階段形状の中空S4を有する排気経路部を備えた境界部材80としてもよい。
【0036】
・上記実施形態においては、境界部材20は、排気経路部21と給気経路部22とを、水素供給エリアHA1から境界部材20を見て、前後に平行に並ぶような位置に配置する。境界部材20における排気経路部21と給気経路部22との配置は、これに限られず、水素供給エリアHA1から境界部材20を見て左右に排気経路部21と給気経路部22とを並べた配置の構成としてもよい。また、境界部材20は、排気経路部21のみを備えた構造としてもよいし、中空を有しない建物40の壁として構成してもよい。なお、前者の場合には、給気経路部22の開口を、境界部材20とは別に、居住エリアRA1と反対側の水素供給エリアHA1の地面に設けるようにしてもよい。
【0037】
・上記実施形態においては、水素貯蔵エリアHA2を地下室50によって構成した。水素貯蔵エリアHA2は、水素供給エリアHA1の下方の領域であれば、地下に設けなくてもよい。例えば、水素供給エリアHA1が2階以上に設置される場合には、水素貯蔵エリアHA2を地上階等に設置してもよい。
【符号の説明】
【0038】
C1…燃料電池車、S1,S2,S3,S4…中空、HA1…水素供給エリア、HA2…水素貯蔵エリア、RA1…居住エリア、S1a,S2a…開口、U1,U2…開口部、10…水素ステーション、20,70,80…境界部材、21…排気経路部、21a…下部経路部、21b…中央経路部、21c…上部経路部、22…給気経路部、30…ディスペンサ、40…建物、50…地下室、51…貯蔵タンク、55…排気管、55a…排気口、56…給気スペース、56a…給気口。
図1
図2
図3
図4