(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834505
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造並びにガード部材
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20210215BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20210215BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20210215BHJP
B60R 16/08 20060101ALI20210215BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
H02G3/30
H02G3/04
B60R16/02 623Z
B60R16/08 J
B60R16/02 623T
F16L57/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-4510(P2017-4510)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-113830(P2018-113830A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松島 英司
【審査官】
木村 励
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−113903(JP,A)
【文献】
特許第6620903(JP,B1)
【文献】
実開平5−25784(JP,U)
【文献】
実開平6−74022(JP,U)
【文献】
特開2000−318601(JP,A)
【文献】
特開2006−1492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
H02G 3/04
B60R 16/02
B60R 16/08
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプと、
前記パイプの径方向外側に前記パイプの軸方向に沿うように延在するワイヤーハーネスと、
前記パイプにおける軸方向一端部から軸方向他端側までの被覆材が設けられない所定範囲を往復移動できるように設けられるフレアナットと、
前記ワイヤーハーネスを前記所定範囲から前記径方向外側に離間させるように支持するガード部材と、
を備える車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造。
【請求項2】
前記ガード部材は、前記所定範囲の前記軸方向他端側に設けられ、前記パイプから前記径方向外側に突出する凸状部を有する、請求項1に記載の車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造。
【請求項3】
前記ガード部材は、前記所定範囲を前記径方向外側から覆う管状部を有し、
前記管状部は、前記凸状部に設けられる、請求項2に記載の車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造。
【請求項4】
前記ガード部材は、前記所定範囲を前記径方向外側から覆う管状部を有し、
前記管状部は、前記フレアナットに設けられる、請求項1に記載の車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造。
【請求項5】
前記ガード部材は、前記ワイヤーハーネスから前記ワイヤーハーネスの延在方向に対して直交する方向に突出するリング状部を有する、請求項1に記載の車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造。
【請求項6】
パイプの径方向外側に前記パイプの軸方向に沿うように延在するワイヤーハーネスを、前記パイプにおける軸方向一端部から軸方向他端側までの被覆材が設けられない範囲であって、フレアナットが往復移動できるように設けられる所定範囲から前記径方向外側に離間させるように支持するガード部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造並びにガード部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造として、例えば、特許文献1には、パイプ形状のデッキクロスメンバと、デッキクロスメンバに沿うように延在するワイヤーハーネスとの接触を回避するために設けられるプロテクタが記載されている。
【0003】
例えば、特許文献2には、パイプの軸方向一端部から軸方向他端側までの所定範囲を往復移動できるように設けられるフレアナット(継手用ナットとも称される)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−102149号公報
【特許文献2】特開2004−125021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パイプにおける所定範囲(フレアナットの移動範囲)には被覆材が設けられていないため、例えば、ワイヤーハーネスの製造上のばらつきにより、ワイヤーハーネスがパイプに直接的に接触して、車体の振動等でワイヤーハーネスとパイプとが擦れ合うことにより、ワイヤーハーネスが損傷するおそれがあるという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献1,2にそれぞれ記載された構成を組み合わせた場合に、例えば、上記特許文献1に記載のプロテクタが上記特許文献2に記載のフレアナットの移動を妨げるおそれがあるため、両方の構成を単に組み合わせることができない。
【0007】
本開示の目的は、ワイヤーハーネスの損傷を防止することができる車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造並びにガード部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造は、
パイプと、
前記パイプの径方向外側に前記パイプの軸方向に沿うように延在するワイヤーハーネスと、
前記パイプにおける軸方向一端部から軸方向他端側までの被覆材が設けられない所定範囲を往復移動できるように設けられるフレアナットと、
前記ワイヤーハーネスを前記所定範囲から前記径方向外側に離間させるように支持するガード部材と、
を備える。
【0009】
本開示の車両におけるガード部材は、パイプの径方向外側に前記パイプの軸方向に沿うように延在するワイヤーハーネスを、前記パイプにおける軸方向一端部から軸方向他端側までの被覆材が設けられない範囲であって、フレアナットが往復移動できるように設けられる所定範囲から前記径方向外側に離間させるように支持する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ワイヤーハーネスの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造の一例を示す概略図
【
図2】雄ネジ部材に締結されたフレアナットの一例を示す図
【
図3A】雄ネジ部材にフレアナットを締結する前の工程の一例を示す図
【
図3B】雄ネジ部材にフレアナットを締結した後の工程を示す図
【
図3C】ワイヤーハーネスの組立工程の一例を示す図
【
図6】変形例3に係る車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は一例であり、本開示は実施の形態により限定されるものではない。
【0013】
図1は、本開示の一実施の形態に係る車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造1の一例を示す概略図である。なお、
図1には、X軸及びY軸が描かれている。以下の説明では、
図1における左右方向をX方向又は軸方向といい、左方向を「+X方向」又は「軸方向一端側」、右方向を「−X方向」又は「軸方向他端側」という。また、
図1における上下方向をY方向又は径方向といい、軸から外に向かう方向を「+Y方向」又は「径方向外側」、外から軸に向かう方向を「−Y方向」又は「径方向内側」という。
図1にパイプ2の軸方向他端側を省略して示す。また、
図1にワイヤーハーネス8の表面の一部を想像線で示す。
【0014】
車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造1は、パイプ2と、フレアナット6と、ガード部材7と、ワイヤーハーネス8とを備える。
【0015】
パイプ2は、例えば、車両用のエンジンオイル、冷却水または燃料を通すものである。パイプ2の軸方向一端部には口を広げた形状の鍔部2aが設けられている。パイプ2の軸方向一端部から軸方向他端側までの所定範囲20Aには被覆材4が設けられていない。つまり、被覆材4は、パイプ2における所定範囲20Aより軸方向他端側の範囲(被覆範囲20B)に設けられている。
【0016】
フレアナット6は、所定範囲20Aを軸方向(X方向)に往復移動できるようにパイプ2に外嵌されている。フレアナット6における軸方向一端側には径方向外側(+Y方向)に張り出した大径筒状部62が設けられている。大径筒状部62の内壁には雌ネジ部64が設けられている。フレアナット6の軸方向他端側には小径筒状部66が設けられている。小径筒状部66がパイプ2に相対的に移動可能に外嵌されている。大径筒状部62と小径筒状部66との間には段差部68が設けられている。
【0017】
図2は、雄ネジ部材9に締結されたフレアナット6の一例を示す図である。
図2に、雄ネジ部材9の軸方向一端側を省略して示す。
【0018】
フレアナット6は、
図2に示すように、雌ネジ部64を雄ネジ部材9に螺合させ、スパナ等で締め付けられることで、雄ネジ部材9に締結される。これにより、鍔部2aは、雄ネジ部材9の軸方向他端面92と段差部68とにより軸方向両側から圧接される。
【0019】
ガード部材7は、
図1に示すように、ワイヤーハーネス8(
図3C参照)を所定範囲20Aから離間させるように支持する。ガード部材7は、所定範囲20Aの軸方向他端側(−X方向)に設けられている。換言すれば、ガード部材7は、被覆範囲20Bの軸方向一端に設けられている。ガード部材7は、パイプ2から径方向外側(+Y方向)に突出する凸状部72を有する。
【0020】
凸状部72は、ワイヤーハーネス8における凸状部72とフレアナット6との間の部位(
図3C参照)を所定範囲20Aから所定距離以上離間させるような径方向外側(+Y方向)への突出量を有する。突出量は、ワイヤーハーネス8の製造上のばらつき、フレアナット6の形状、所定範囲20Aの長さ等に応じて定められる。凸状部72は、例えば、大径筒状部62の半径と同じ長さの突出量を有する。
【0021】
凸状部72は、ドーナツ盤形状を有し、被覆範囲20Bに外嵌し、公知の固定方法により、例えば接着剤や支持ブラケットより固定されている。凸状部72は、ワイヤーハーネス8と擦れ合う場合があってもワイヤーハーネス8を損傷させない材料、好ましくは、ゴム材料または樹脂材料により成形される。
【0022】
ワイヤーハーネス8は、例えば、車両用のバッテリーやスターターモーター等の電装品に接続されている。ワイヤーハーネス8は、
図3Cに示すように、パイプ2の径方向外側(+Y方向)に軸方向(X方向)に沿うように延在する。ワイヤーハーネス8はパイプ2に支持ブラケット(図示略)等により保持される。
【0023】
<パイプ2及びワイヤーハーネス8の組立方法>
次に、パイプ2及びワイヤーハーネス8の組立方法について
図3Aから
図3Cを参照して説明する。
図3Aから
図3Cに、パイプ2およびワイヤーハーネス8の軸方向他端側を省略して示し、また、雄ネジ部材9の軸方向一端側を省略して示す。
【0024】
先ず、作業者は、パイプ2を車両の所定位置に取り付ける。パイプ2の軸方向一端と雄ネジ部材9とが対向する(
図3A参照)。
【0025】
次に、作業者は、フレアナット6を雄ネジ部材9に締結する(
図3B参照)。
【0026】
次に、作業者は、ワイヤーハーネス8を車両の所定位置に配策する(
図3C参照)。フレアナット6が雄ネジ部材9に締結された状態において、ワイヤーハーネス8におけるフレアナット6と凸状部72との間の部位は、大径筒状部62が径方向外側に所定長さの半径を有し、また、凸状部72が径方向外側(+Y方向)に所定量(半径と同じ長さ)突出しているため、所定範囲20Aから径方向外側(+Y方向)に所定距離だけ離間した状態となる。
【0027】
<本実施の形態の効果>
以上のように、本実施の形態に係る車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造1は、パイプ2の径方向外側にパイプ2の軸方向に沿うように延在するワイヤーハーネス8と、パイプ2における軸方向一端部から軸方向他端側までの被覆材4が設けられない所定範囲20Aを往復移動できるように設けられるフレアナット6と、所定範囲20Aの軸方向他端側に設けられ、パイプ2から径方向外側に突出する凸状部72と、を備える。これにより、ワイヤーハーネス8におけるフレアナット6と凸状部72との間の部位は、所定範囲20Aから径方向外側(+Y方向)に所定距離だけ離間した状態となるため、車体の振動等でワイヤーハーネス8とパイプ2とが擦れ合うことがなく、ワイヤーハーネス8の損傷を防止することができる。
【0028】
凸状部72は、ドーナツ盤形状を有している。これにより、ワイヤーハーネス8が多少ばらついて配策された場合でも、ワイヤーハーネス8を所定範囲20Aから確実に径方向外側に離間させることができる。
【0029】
<本実施の形態の変形例>
次に、本実施の形態の各変形例にかかる車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造1ついて説明する。
【0030】
なお、各変形例の説明において、上記実施の形態と同じ構成には同一番号を付して、その説明を省略し、上記実施の形態と異なる構成について主に説明する。
【0031】
先ず、本実施の形態の変形例1について
図4を参照して説明する。
上記実施の形態におけるガード部材7は、ドーナツ盤形状の凸状部72を有する。
【0032】
これに対して、変形例1におけるガード部材7は、凸状部72および管状部74Aを有する。管状部74Aは、凸状部72と一体的に設けられ、所定範囲20Aを径方向外側(+Y方向)から覆うものである。ここで、「一体的」とは、凸状部72と管状部74Aとを別々に製造して一体化することを含む意味である。
【0033】
管状部74Aは、フレアナット6の所定範囲20Aにおける移動を妨げるものではなく、
図4に示すように所定範囲20Aの軸方向他端側に移動されたフレアナット6を収容するように構成される。
【0034】
変形例1においては、管状部74Aが所定範囲20Aを径方向外側から覆うため、所定範囲20Aが比較的長い場合に、ワイヤーハーネス8を所定範囲20Aから確実に径方向外側に離間させることができるという利点がある。
【0035】
次に、本実施の形態の変形例2について
図5を参照して説明する。
上記の実施の形態および変形例1では、ガード部材7がパイプ2側に設けられる。
【0036】
これに対し、変形例2では、ガード部材7は、フレアナット6と一体的に設けられる管状部74Bを有する。管状部74Bは、
図5に示すように、小径筒状部66から軸方向他端側(−X方向)に延在する。ここで、「一体的」とは、フレアナット6と管状部74Bとを別々に製造して一体化することを含む意味である。
【0037】
変形例2によれば、上記変形例1と同じく、管状部74Bが所定範囲20Aを径方向外側から覆うため、所定範囲20Aが比較的長い場合に、ワイヤーハーネス8を所定範囲20Aから確実に径方向外側に離間させることができるという利点がある。
【0038】
次に、本実施の形態の変形例3について
図6を参照して説明する。
上記の実施の形態および変形例1,2では、ガード部材7がパイプ2側またはフレアナット6側に設けられる。
【0039】
これに対して、変形例3では、ガード部材7は、ワイヤーハーネス8側に設けられ、ワイヤーハーネス8からその延在方向(軸方向に沿った方向)に対して直交する方向に突出するリング状部76を有する。リング状部76の突出量は、凸状部72の突出量と同様に、ワイヤーハーネス8の製造上のばらつき、フレアナット6の形状、所定範囲20Aの長さ等に応じて定められる。リング状部76は、例えば、大径筒状部62の半径と同じ長さ以上の突出量を有する。
【0040】
リング状部76は、公知の固定手段によりワイヤーハーネス8に固定される。リング状部76は、
図6に示すように、所定範囲20Aに当接することにより、ワイヤーハーネス8を所定範囲20Aから径方向外側(+Y方向)に所定距離だけ離間させる。所定範囲20Aにおけるリング状部76が当接する位置は、軸方向他端側である。
【0041】
変形例3におけるガード部材7は、例えば、フレアナット6を含むパイプ2側にガード部材7を設けるスペースがない場合に有効な手段となる。
【0042】
上記実施の形態および変形例では、ガード部材7をゴム材料または樹脂材料により製造したが、本発明はこれに限らず、ガード部材7を金属材料により製造してよい。この場合、ガード部材7は、例えばパイプ2に鑞付けされまたは溶接される。
【0043】
また、ガード部材7を、フレアナット6を含むパイプ2側およびワイヤーハーネス8側にそれぞれ設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示の車両におけるパイプ及びワイヤーハーネスの配置構造並びにガード部材は、ワイヤーハーネスの損傷を防止することが要求される部品取付構造として有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 パイプ及びワイヤーハーネスの配置構造
2 パイプ
4 被覆材
6 フレアナット
7 ガード部材
8 ワイヤーハーネス
9 雄ネジ部材
20A 所定範囲
20B 被覆範囲
62 大径筒状部
64 雌ネジ部
66 小径筒状部
68 段差部
72 凸状部
74A 管状部
74B 管状部
76 リング状部