(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834570
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】蓋構造体
(51)【国際特許分類】
B65D 43/16 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
B65D43/16 200
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-27329(P2017-27329)
(22)【出願日】2017年2月16日
(65)【公開番号】特開2018-131247(P2018-131247A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】工藤 良太郎
【審査官】
杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−095301(JP,A)
【文献】
特開2005−170451(JP,A)
【文献】
特開2001−240096(JP,A)
【文献】
特開2000−211680(JP,A)
【文献】
特開2004−115114(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/23284(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/48992(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/8381(US,A1)
【文献】
特開平8−133319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り出し口を有する蓋本体と前記取り出し口を開閉可能に覆う開閉蓋とからなり、前記蓋本体と開閉蓋とがこの蓋本体と開閉蓋との間に設けられた枢支部を介して連結されて、前記蓋本体に開閉蓋が回動可能に取り付けられており、前記蓋本体と開閉蓋との間に、開閉蓋を常時開き方向に付勢する開閉蓋付勢手段が設けられている蓋構造体において、
前記開閉蓋付勢手段は、蓋本体の枢支部側の部分から開閉蓋側に向けて弾性部材であるゴム板を張り出して、張り出し先端を開閉蓋の枢支部側の部分に接させた弾性変形可能な張り出し領域部を備え、
前記張り出し領域部は、ゴム板を前記枢支部の長手方向の断面形状を略弧形にして曲成されており、
この張り出し領域部における蓋本体側の部分と開閉蓋に接する開閉蓋側の部分との間の中間部分に、開閉蓋の閉時のゴム板折り曲がり幅方向が枢支部の長手方向に沿う横曲がり部が位置し、
張り出し領域部における蓋本体側の部分の両側部分に、開閉蓋の閉時のゴム板折り曲がり幅方向が、前記横曲がり部でのゴム板折り曲がり幅方向と異なって枢支部の長手方向に対して傾斜して、横曲がり部の中心側に向いた方向である傾斜曲がり部が位置していることを特徴とする蓋構造体。
【請求項2】
上記横曲がり部と上記傾斜曲がり部との間に、この横曲がり部と傾斜曲がり部とが連続する連続曲がり部が位置している請求項1に記載の蓋構造体。
【請求項3】
上記開閉蓋付勢手段は、ゴム板を上記蓋本体に取り付けるゴム板取付具を有している請求項1または2に記載の蓋構造体。
【請求項4】
上記ゴム板取付具は、ゴム板を枢支部の長手方向の断面形状が略弧形となるように曲げる弧形形成部を備えている請求項3に記載の蓋構造体。
【請求項5】
上記張り出し領域部は、張り出し先端に向けて先細りした形状とされている請求項1から4の何れか一項に記載の蓋構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容物を取り出すための取り出し口を有する収納箱などに構成することができて、取り出し口を覆う開閉蓋を有する蓋構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、柔軟な袋入りのウエットティシュを一枚ずつ取り出すことができるようにした収納箱が多く流通している。この種の収納箱では、取り出し口を開閉蓋で覆う構造としており、収納箱の取り出し口を覆うことでウエットティシュが乾燥しないようにしている。そして開閉蓋の開き操作を簡便にするために、開閉蓋を常時開き方向に付勢する開閉蓋付勢手段を設ける工夫が行われている。
【0003】
例えば特許文献1では、可撓性を有していて折り曲げることで復元力が発生する弾性部材であるゴム板を短冊状にし、このゴム板を、収納箱の天面として構成されて上記取り出し口が開口されている蓋本体側に留め付けるとともに、ゴム板の自由端を開閉蓋に接しさせていて、これによって開閉蓋付勢手段を備えるものとしている点が示されており、この短冊状のゴム板を、ゴム板長手方向に直交する方向での断面形状が略弧形にして長手方向に亘る全体を樋状にした点も示されている。
【0004】
また特許文献2では、ゴム板長手方向中央位置で略U字状の曲がりを持った状態で収納箱の天面側(蓋本体側)から開閉蓋にかけて取り付けて、開閉蓋を閉じたときに、開閉蓋側のゴム板取付位置と、前記ゴム板長手方向中央位置と、蓋本体側のゴム板取付位置とのゴム板長手方向の順に並ぶ三か所それぞれで、曲がり部分の折り目方向が開閉蓋枢軸方向に沿った曲がり変形をするようにしていて、側方から見た状態でS字を繰り返した曲がり変形をする点が示されており、そのゴム板長手方向中央位置で略C字状に丸く曲がり変形した部分が蓋本体側の凹所に収容されるようにした工夫が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−095301号公報
【特許文献2】特開2011−168341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記開閉蓋付勢手段を備える包装箱は、内部に袋入りのウエットティシュを配して使用されるが、ウエットティシュ入りの商品として一般小売店舗で陳列されている時には開閉蓋が閉じられた形態である。また商品の購入者も、必要時にのみ開閉蓋を開いてウエットティシュを取り出すことになるので、商品の購入後も開閉蓋が閉じられた状態が多くなる。
【0007】
このように上記商品は、収納する物品が時折、使用されるものであることから、開閉蓋を閉じた状態が長時間に及ぶのが実情である。そのため、ゴム板を短冊状にして開閉蓋を閉じているときにそのゴム板が単にく字状に曲がる構成の開閉蓋付勢手段にあっては、ゴム板の曲がり部分に早期に折り癖が付いてしまい、収納箱を長期に使用すると、ゴム板の曲がり部分での復元力が消失し、その収納箱を長期に使用すればするほど、開閉蓋がスムーズには開き難くなるという問題がある。
【0008】
この対策としては、ゴム板を厚くしたりゴム質の硬度が高い素材からなるゴム材を用いるなどして、ゴム板の復元力を大きくすることが考えられる。しかし、復元力を大きくすると、折り曲げられているときの反発力(復元力)が開閉蓋の枢支部を持ち上げてしまい、その開閉蓋の枢支部が盛り上がって商品形態を損なってしまうという新たな問題が生じる。
【0009】
もちろん、この開閉蓋の枢支部が盛り上がって商品形態を損なうという点は、購入者が商品を購入した後においても起こり得る不具合である。
【0010】
また、上述したS字を繰り返すようにゴム板長手方向に並ぶ多数箇所で曲がり変形が生じるようにした開閉蓋付勢手段は、ゴム板を一方向に長くしてS字の繰り返しの折り曲げを行なってゴム板の長さ方向に順に多数箇所で折り曲がりが得られるようにして、各折り曲がり部分によるループに応力を分散させて応力集中による折り癖が付かないようにしている。
【0011】
即ち、曲がり部分の合計の長さを長くすれば、折り癖が付き難くなるメリットが大きくなる。しかし、ゴム板の長さ方向に順に多数箇所で折り曲がりを得るようにしている形状であることから、収納箱の組み立てに際して、その一方向に長いゴム板の取付作業が非常に煩雑になってしまうという問題がある。
【0012】
そこで本発明は上記事情に鑑み、上記ゴム板自体の形状をシンプルな形状にしながらも、開閉蓋の閉じによる応力の集中部分、即ち復元力が高まる部分を、枢支部の長手方向に折り目が沿う部分ばかりでなくそのゴム板の多数箇所に分散させて、ゴム板長さ方向での曲がり部分の長さを長くし、ゴム板全体で開閉蓋を開き方向に付勢できるようにすることを課題とし、収納箱における枢支部の盛り上がりを生じさせずに、スムーズに開閉蓋の開きが行える収納箱を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(請求項1の発明)
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、取り出し口を有する蓋本体と前記取り出し口を開閉可能に覆う開閉蓋とからなり、前記蓋本体と開閉蓋とがこの蓋本体と開閉蓋との間に設けられた枢支部を介して連結されて、前記蓋本体に開閉蓋が回動可能に取り付けられており、前記蓋本体と開閉蓋との間に、開閉蓋を常時開き方向に付勢する開閉蓋付勢手段が設けられている蓋構造体において、
前記開閉蓋付勢手段は、蓋本体の枢支部側の部分から開閉蓋側に向けて弾性部材であるゴム板を張り出して、張り出し先端を開閉蓋の枢支部側の部分に接させた弾性変形可能な張り出し領域部を備え、
前記張り出し領域部は、ゴム板を前記枢支部の長手方向の断面形状を略弧形にして曲成されており、
この張り出し領域部における蓋本体側の部分と開閉蓋に接する開閉蓋側の部分との間の中間部分に、開閉蓋の閉時のゴム板折り曲がり幅方向が枢支部の長手方向に沿う横曲がり部が位置し、
張り出し領域部における蓋本体側の部分の両側部分に、開閉蓋の閉時のゴム板折り曲がり幅方向が、前記横曲がり部でのゴム板折り曲がり幅方向と異なって枢支部の長手方向に対して傾斜して、横曲がり部の中心側に向いた方向である傾斜曲がり部が位置していることを特徴とする蓋構造体を提供して、上記課題を解消するものである。
【0014】
(請求項2の発明)
そして本発明において、上記横曲がり部と上記傾斜曲がり部との間に、この横曲がり部と傾斜曲がり部とが連続する連続曲がり部が位置していることが良好である。
【0015】
(請求項3の発明)
また本発明において、上記開閉蓋付勢手段は、ゴム板を上記蓋本体に取り付けるゴム板取付具を有していることが良好である。
【0016】
(請求項4の発明)
さらに、上記ゴム板取付具は、ゴム板を枢支部の長手方向の断面形状が略弧形となるように曲げる弧形形成部を備えているものとすることが可能である。
【0017】
(請求項5の発明)
また本発明において、上記張り出し領域部は、張り出し先端に向けて先細りした形状とされていることが良好である。
【発明の効果】
【0018】
(請求項1の発明の効果)
請求項1の発明によれば、開閉蓋が閉じられているときに、開閉蓋付勢手段における張り出し領域部の横曲がり部と傾斜曲がり部との複数個所が折り曲がって、それぞれでの復元力(反発力)が合わされて開閉蓋を開き方向に付勢することとなり、横曲がり部のみの復元力で開閉蓋を開き方向に付勢する構成に比べてそれぞれの曲がり部のゴム板に応力の集中が生じなくなる。
【0019】
これによって横曲がり部と傾斜曲がり部とに折り癖が付かなくなり、長期間に亘って開閉蓋を開き方向に付勢する力を保つことができるようになるという優れた効果を奏する。
【0020】
(請求項2の発明の効果)
請求項2の発明によれば、張り出し領域部の張り出し方向における曲がり部分の合計の長さが長くなり、ゴム板に折り癖が付き難くなって復元力の喪失を抑えることができる。
【0021】
(請求項3の発明の効果)
請求項3の発明によれば、開閉蓋付勢手段を蓋体本体と開閉蓋との間にゴム板を簡単に配置することができるという効果を奏する。
【0022】
(請求項4の発明の効果)
請求項4の発明によれば、ゴム板自体は平板のものを採用することができ、開閉蓋付勢手段を安価に形成できるという効果を奏する。さらにゴム板取付具がゴム板を略弧形に曲げるので、曲成された張り出し領域部を簡単に形成できるという効果を奏する。
【0023】
(請求項5の発明の効果)
請求項5の発明によれば、ゴム板の張り出しからなる張り出し領域部が先端に向けて先細りした形状に設けられているので、開いている開閉蓋を閉じる方向に戻す際、開閉蓋に加えられている開閉蓋付勢手段からの付勢力が小さくなっており、大きく開いている開閉蓋を、閉じ方向に簡単にして小さい力で動かすことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の蓋構造体を有する収納箱の一例を示すもので、開閉蓋が開いた状態を示す説明図である。
【
図3】蓋構造体における開閉蓋付勢手段を示すもので、(a)は開閉蓋付勢手段のゴム板取付具にゴム板を差し入れる状態を示す説明図、(b)は開閉蓋付勢手段を蓋本体に取り付ける状態を示す説明図、(c)は開閉蓋付勢手段が取り付けられた蓋本体の枢支部を示す説明図である。
【
図4】開閉蓋付勢手段を上方から見た状態で示す説明図である。
【
図5】開閉蓋付勢手段の張り出し領域部が折り曲げられている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
つぎに本発明を
図1から
図5に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。図中1は収納箱で、該収納箱1は、中央に取り出し口2を配して四方には下方に延設された周壁3が一体に連続している下開きの箱状の蓋本体4と、この蓋本体4の周壁3の下端と連結されて蓋本体4の下面を覆う底板5とからなるものである。
【0026】
本実施の形態において、収納箱1にあっては蓋本体4と底板5で構成される収納空間に、
図2に示されているように袋入りウエットティシュ製品aを収容して、ウエットティシュを一枚ずつ取り出し口2から取り出して使用するものである。なお、この実施の形態では、収容する物品を袋入りウエットティシュ製品として説明するが、取り出し口2を通して一枚ずつ取り出すものであれば、袋入りウエットティシュに限定されるものではない。
【0027】
また収納箱1は、
図1に示すように蓋本体4の一方の長辺中央にして前記取り出し口2の側方となる部分に開閉蓋6が枢着されている。開閉蓋6が枢着されている部分を、蓋本体4と開閉蓋6との間に設けられた枢支部15とし、この枢支部15を介して蓋本体4に開閉蓋6が回動可能に連結されることによって、取り出し口2が開閉蓋6で開閉可能に覆われるようにしており、ウエットティシュを取り出す取り出し口2を中央に配した前記蓋本体4と取り出し口2を開閉可能に覆う開閉蓋6とで、本発明の蓋構造体7が構成されている。
【0028】
(膜体)
本実施の形態において、収納箱1では、上記蓋構造体7における取り出し口2に工夫が施されていて、蓋本体4の天面中央に開口された前記取り出し口2には伸縮性を備えて膜体8が取り付けれている。膜体8はポリエチレン樹脂やシリコンゴムなどの軟質素材からなるもので、中央が最下部となるように下方に向けて(底板5側に向けて)凸となる凹面状に形成され、周辺と中央との間の中間領域には、周方向に延びる略Z型のスリットを複数本入れて、周辺から中央に亘る連結板9が形成されており、連結板9の間の開きと連結板9の伸びとによって膜体8の中央を簡単に押し下げることができるように設けられている。
【0029】
さらに膜体8の中央には透孔10が開口されている。そのため収容しているウエットティシュが少なくなって底板5側に位置している場合でも、前記透孔10の部分に指二本の指先などを差し入れながら、
図2の矢印で示すように膜体8の中央を押し下げることで、連結板9間の開きと連結板9の伸び、変形によって透孔10がある膜体中央部分が下がり、少なくなっているウエットティシュをその透孔10を通して確実につまみ出すことができるようにしている。
【0030】
膜体8は上述したように下方に向けて凸となる凹面状とされ、閉じた上記開閉蓋6と膜体8との間で、引き出し途中で透孔10の位置で止まったウエットティシュを外部に食み出させたり開閉蓋周辺で咬み込みさせずに隠ぺいする隠ぺい空間11が形成されている。
【0031】
加えて膜体8の周辺に亘って溝12が形成されているとともに、取り出し口2を覆う開閉蓋6の蓋本体4側の面に設けられた突堤13が前記溝12に嵌まり込むように設けられており、溝12に突堤13が嵌まることによって蓋本体4と閉じた開閉蓋6との隙間が膜体8で閉じられて、収納空間内の乾燥が起きないように図られている。
【0032】
(蓋構造体)
蓋本体4と開閉蓋6とからなる蓋構造体7では、閉じた開閉蓋6の自由端側に係脱可能に係止するととに、押し込みによって前記係止が解除できる係止操作部14が設けられており、この係止操作部14は、蓋本体4と開閉蓋6との間で開閉蓋6が回動可能に連結されている枢支部15とは反対側に位置している。
【0033】
(開閉蓋付勢手段)
さらに蓋構造体7にあっては、上記係止操作部14とは反対側、即ち枢支部15側であって蓋本体4の枢支部15側の部分4aと開閉蓋6の枢支部15側の部分6aとの間に亘って開閉蓋6を常時開き方向に付勢する開閉蓋付勢手段16が位置している。
図1参照
【0034】
上記開閉蓋付勢手段16は、
図3(a)から(c)に示すように蓋本体4の枢支部15側の部分に取り付けられたゴム板取付具17とこのゴム板取付具17に取り付けて後述のゴム板幅方向断面が略弧形になるように曲げられるゴム板18とからなるものである。
【0035】
(ゴム板取付具)
ゴム板取付具17は、例えば合成樹脂材から成形されたもので、上述のように蓋本体4の枢支部15側の凹所19に取付配置される。さらにゴム板取付具17には、ゴム板取付具17自体の後面から差し入れたゴム板18を、枢支部15の長手方向の断面形状を略弧形にして曲げる弧形形成部20が設けられている。
【0036】
弧形形成部20は取付具上板部にあって上方に向けて凸となるアーチ20aと、取付具下板部からアーチ20aの下面に近付くように立ち上げられた立ちリブ20bとを相対させてなるものであり、差し入れたゴム板18の後端側部を取付具側部で保持しながら前記アーチ20aと立ちリブ20bとでゴム板幅方向中央が持ち上がるように挟み込みすることにより、ゴム板18が上記断面形状を略弧形にして曲げられる。
【0037】
(ゴム板)
図3(a)に示すようにゴム板18は、上記ゴム板取付具17の後面から差し入れてそのゴム板取付具17の前方に張り出て、張り出し方向に向けて先細りする平面視での略台形状に設けられている。そして
図1や
図3(c)に示されているようにゴム板取付具17に支持された状態でゴム板取付具17から開閉蓋6の枢支部15側の部分6aに向けて張り出している。
【0038】
開閉蓋付勢手段16は、弾性部材のゴム板18をゴム板取付具17から張り出させることによって、張り出し先端を開閉蓋6の枢支部15側の部分に接させた弾性変形可能な張り出し領域部21を備えている。そして張り出し領域部21は、上述したようにゴム板18が、ゴム板取付具17にて枢支部15の長手方向の断面形状を略弧形にして曲げられることから、枢支部15の長手方向の断面形状を略弧形にして曲成されている。
【0039】
開閉蓋付勢手段16に用いられるゴム板18は、高引き裂き性シリコンゴムと汎用シリコンゴムとを混合して成形された弾性部材である。高引き裂き性シリコンゴムは強度が高い特性を有するものであり、また汎用シリコンゴムについては曲げ易い特性を有するものである。そして前記ゴム板18については、高引き裂き性シリコンゴムと汎用シリコンゴムとを混合して成形したものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、一方の高引き裂き性シリコンゴムでゴム板を得るようにしたり、他方の汎用シリコンゴムでゴム板を得るようにすることも可能である。
【0040】
なお、張り出し領域部21が、平板状の弾性部材であるゴム板18を、ゴム板取付具17によって枢支部15の長手方向(ゴム板幅方向)の断面形状が略弧形にして曲げて張り出させたものであることから、ゴム板18には全体的に平板の状態に戻ろうとする復元力が少なくとも生じている。
【0041】
そのため、ゴム板取付具17側の弧形の曲がりに比べて、張り出し先端側での断面形状が平板に近い弧形の曲がり度合いとなる場合もある。勿論、張り出し先端側の部分が開閉蓋6の枢支部15側の部分に重なるように接する状態では、その張り出し先端側の部分の断面形状は略平板形に変形することになる。
【0042】
(張り出し領域部)
図4に示すように断面形状略弧形の上記張り出し領域部21にあっては、蓋本体4における枢支部15側の部分4aに対応する部分、即ちゴム板取付具17側の部分22と、開閉蓋6における枢支部15側の部分6aに重なるようにして接する張り出し先端側の部分(開閉蓋6側の部分)23との間の中間部分24に、横曲がり部25が位置している。
【0043】
(横曲がり部)
図5では開閉蓋6が閉じられて開閉蓋付勢手段16の上記張り出し領域部21(ゴム板18)が折り曲げられている状態を示している。そして上記横曲がり部25は、開閉蓋6が閉じられるときに曲がり変形して復元力が生じる部分であり、開閉蓋6の閉時のゴム板折り曲がり幅方向Bが枢支部15の長手方向Aに沿うことになる部分である。(
図4参照)
【0044】
(傾斜曲がり部)
また張り出し領域部21にあっては、上記ゴム板取付具17側の部分22の両側部分26それぞれに、傾斜曲がり部27が位置している。前記傾斜曲がり部27それぞれは、この傾斜曲がり部27の位置において、開閉蓋6の閉時のゴム板折り曲がり幅方向Cが、上記横曲がり部25でのゴム板折り曲がり幅方向B(枢支部13の長手方向Aに沿う方向)と異なっており、枢支部15の長手方向に対して傾斜して横曲がり部25の中心側に向いた方向となるように設けられている。(
図4、5参照)
【0045】
このように張り出し領域部21において、ゴム板取付具側の部分22から張り出し先端側の部分23にかけて、傾斜曲がり部27と横曲がり部25とが順に配置されているので、開閉蓋6を閉じたときにもゴム板自体の反発力による応力集中が横曲がり部25に生じ難くなるという効果がある。
【0046】
(連続曲がり部)
また張り出し領域部21での上記横曲がり部25と上記傾斜曲がり部27とは一枚のゴム板18で繋がっていて、横曲がり部25と上記傾斜曲がり部27との間には、横曲がり部25と傾斜曲がり部27とが連続する連続曲がり部28が位置している。
【0047】
連続曲がり部28は開閉蓋6を閉じたときに単独で折り曲がる部位ではなく、横曲がり部25と傾斜曲がり部27とを連続させて、横曲がり部25と連続曲がり部28と傾斜曲がり部27とで、張り出し方向に沿った断面が一つの略弧形となるように折れ曲がることとなる。
【0048】
従ってゴム板18の長手方向(張り出し領域部の張り出し方向)での曲がり部分の長さの合計が長くなり、この点からも開閉蓋を閉じたときの応力集中を抑えて、横曲がり部25と傾斜曲がり部27と連続曲がり部28とのそれぞれに折り癖が付かないようになるという効果を奏する。
【0049】
(縦曲がり部)
さらに張り出し領域部21のゴム板取付具側の部分22において、
図4に示されているように左右の上記傾斜曲がり部27の間にして縦曲がり部29が位置するように設けられている。
【0050】
上記縦曲がり部29自体は、ゴム板取付具17の弧形形成部20によってゴム板幅方向での断面形状が上方に凸の略弧形となって、ゴム板折り曲がり幅方向Dが上記枢支部長手方向(即ち、横曲がり部25のゴム板折り曲がり幅方向B)に直交する方向となり、ゴム板折り曲がり幅方向Dが横曲がり部25の中央に向く部分である。
【0051】
そして傾斜曲がり部27では、開閉蓋6が閉じられるときに、そのゴム板折り曲がり幅方向Cに直交する方向での断面形状が下向きに凸となる曲がり方をするものであることに対し、縦曲がり部29では当然のことながらゴム板折り曲がり幅方向Dに直交する方向での断面が略弧形であることから、開閉蓋6が閉じられたときに、この縦曲がり部29の両側にある傾斜曲がり部27それぞれで生じる応力を、縦曲がり部29のゴム板幅方向での変形である程度吸収することとなり、傾斜曲がり部27での応力集中や連続曲がり部28での応力集中を抑えることができるようになるものである。
【符号の説明】
【0052】
1…収納箱
2…取り出し口
4…蓋本体
4a…蓋本体の枢支部側の部分
6…開閉蓋
6a…開閉蓋の枢支部側の部分
7…蓋構造体
8…膜体
15…枢支部
16…開閉蓋付勢手段
17…ゴム板取付具
18…ゴム板
20…弧形形成部
21…張り出し領域部
24…中間部分
25…横曲がり部
27…傾斜曲がり部
28…連続曲がり部
29…縦曲がり部