(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の前記1,4−トランス構造の割合が70モル%以下であり、前記1,4−シス構造の割合が30〜85モル%である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明のタイヤ用ゴム組成物及び本発明の空気入りタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される範囲は、その範囲に「〜」の前後に記載された両端を含む範囲を意味する。
【0014】
[タイヤ用ゴム組成物]
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムと、シリカと、シランカップリング剤とを含有するタイヤ用ゴム組成物である。
上記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度は−50℃以上である。
上記ジエン系ゴムは、後述する芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を10〜50質量%含有する。
上記ジエン系ゴム100質量部に対する上記シリカの含有量は30〜80質量部である。
上記シランカップリング剤の含有量は、上記シリカの含有量に対して、2〜20質量%である。
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤにしたときに優れたウェットグリップ性能、転がり抵抗性能、耐摩耗性能及び機械的強度を示す。
【0016】
この理由は確定しているわけではないが、概ね以下のとおりであると推定される。
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、芳香族ビニル含有量に比して低いガラス転移温度(Tg)を示すため、これを配合したタイヤ用ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)を低下させながら機械的強度を高くすることができる。これにより、従来、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)等の共役ジエン重合体を配合することによりタイヤ用ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)を低下させていた場合に比べて耐摩耗性及び機械的強度を改善することができ、タイヤにしたときに優れたウェットグリップ性能、転がり抵抗性能、耐摩耗性能及び機械的強度を達成することができると考えられる。
【0017】
1.ジエン系ゴム
上記ジエン系ゴムは、特定の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(以下「特定芳香族ビニル−共役ジエン共重合体」という場合がある。)を10〜50質量%含有する。
また、上記ジエン系ゴム中の上記特定芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の含有量は、本発明のタイヤ用ゴム組成物をタイヤにしたときの耐摩耗性能及び機械的強度がより優れることから、好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは15〜30質量%である。上記ジエン系ゴム中の上記特定芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の含有量が40質量%以下であると、本発明のタイヤ用ゴム組成物のガラス転移温度が高くなり、本発明のタイヤ用ゴム組成物をタイヤにしたときのウェットグリップ性能がより良好なものとなる。上記ジエン系ゴム中の特定芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の含有量が10質量%未満では耐摩耗性能が不十分となり、50質量部超ではウェットグリップ性能が不十分となる。
また、上記ジエン系ゴムは、上記特定芳香族ビニル−共役ジエン共重合体と、それ以外のジエン系ゴムとの合計は100質量%である。
【0018】
1.1)特定芳香族ビニル−共役ジエン共重合体
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(以下、単に「特定共重合体」という場合がある。)は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体である。
ここで、上記芳香族ビニル化合物に由来する繰返し単位の含有量は、18質量%以上である。
また、上記共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位の各ミクロ構造の割合は特定の範囲である。
具体的には、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位のうち、ビニル構造の割合は8モル%以下であり、1,4−トランス構造の割合は75モル%以下であり、1,4−シス構造の割合は17〜90モル%である。
また、上記特定共重合体のガラス転移温度は−60℃以下である。
上記特定共重合体は、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは溶液重合型共重合体であり、特に好ましくは溶液重合型スチレンブタジエンゴム(SBR)である。
以下、上記特定共重合体について詳述する。
【0019】
1.1.1)モノマー
上記特定共重合体は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体である。すなわち、上記特定共重合体は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とを共重合した共重合体である。上記特定共重合体は、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物に加え、さらに別のモノマーを共重合した共重合体であってもよい。
【0020】
1.1.1.1)芳香族ビニル化合物
上記芳香族ビニル化合物は特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン及びジメチルアミノエチルスチレンなどを挙げることができる。これらの中でも、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン及び4−メチルスチレンからなる群から選択される少なくとも1つであり、より好ましくはスチレンである。これらの芳香族ビニル化合物は、1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて、用いることができる。
【0021】
上記特定共重合体における、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位の含有量(以下「芳香族ビニル含有量」ともいう。)は、18質量%以上である。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上である。上限は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0022】
1.1.1.2)共役ジエン化合物
上記共役ジエン化合物は特に限定されないが、例えば、ブタジエン(例えば、1,3−ブタジエン)、イソプレン及びクロロプレンなどが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは1,3−ブタジエン及びイソプレンからなる群から選択される少なくとも1つであり、より好ましくは1,3−ブタジエンである。これらの共役ジエン化合物は、1種類を単独で、又は2種類以上を組み合わせて、用いることができる。
【0023】
上記特定共重合体における、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは82質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。また、下限は、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。
【0024】
1.1.1.3)その他のモノマー
上述したように、上記特定共重合体は、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物に加えて、その他のモノマーを共重合した共重合体であってもよい。当該その他のモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、アクリル酸、メタクリル酸及び無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸又は酸無水物、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びアクリル酸ブチル等の不飽和カルボン酸エステル、並びに1,5−ヘキサジエン、1,6−へプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン及び5−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエン化合物が挙げられる。
【0025】
1.1.2)ミクロ構造
1.1.2.1)ビニル構造
上記特定共重合体において、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位のうち、ビニル構造の割合は8モル%以下であり、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは5モル%以下である。下限は特に限定されず、0モル%である。
ここで、ビニル構造の割合とは、共役ジエン化合物に由来する全繰り返し単位のうち、ビニル構造(例えば、共役ジエン化合物が1,3−ブタジエンである場合は1,2−ビニル構造)を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)をいう。
【0026】
1.1.2.2)1,4−トランス構造
上記特定共重合体において、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位のうち、1,4−トランス構造の割合は75モル%以下であり、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは70モル%以下であり、より好ましくは70モル%未満であり、さらに好ましくは60モル%以下である。下限は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは20モル%以上であり、さらに好ましくは30モル%以上である。
ここで、1,4−トランス構造の割合とは、共役ジエン化合物に由来する全繰り返し単位のうち、1,4−トランス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)をいう。
【0027】
1.1.2.3)1,4−シス構造
上記特定共重合体において、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位のうち、1,4−シス構造の割合は17〜90モル%であり、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは20〜90モル%であり、より好ましくは25〜85モル%であり、さらに好ましくは30〜85モル%であり、いっそう好ましくは40〜75モル%である。
ここで、1,4−シス構造の割合とは、共役ジエン化合物に由来する全繰り返し単位のうち、1,4−シス構造を有する繰り返し単位が占める割合(モル%)を言う。
【0028】
なお、本明細書において、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位のうち「ビニル構造の割合(モル%)、1,4−トランス構造の割合(モル%)、1,4−シス構造の割合(モル%)」を「ビニル/トランス/シス」とも表す。
【0029】
1.1.3)ガラス転移温度
上記特定共重合体のガラス転移温度(Tg)は−60℃以下であり、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは−70℃以下であり、より好ましくは−80℃以下である。下限は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは−100℃以上であり、より好ましくは−90℃以上である。
なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC;Differential Scanning Calorimeter)を用いて10℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものとする。
【0030】
1.1.4)分子量
上記特定共重合体の分子量は、重量平均分子量(Mw)で、特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは1,000〜10,000,000であり、より好ましくは2,000〜5,000,000であり、さらに好ましくは3,000〜2,000,000である。
また、上記特定共重合体の分子量は、数平均分子量(Mn)で、特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは500〜5,000,000であり、より好ましくは1,000〜2,500,000であり、さらに好ましくは1,500〜1,000,000である。
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折率(RI)検出器
【0031】
1.1.5)好適な態様
上記特定共重合体の好適な態様としては、例えば、末端が、ハロゲン化チタン、ハロゲン化錫、環状シラザン、アルコキシシラン、エポキシド、アミン、ケトン及び後述する式(N)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の変性剤(以下「特定変性剤」ともいう。)で変性された態様が挙げられる。上記態様の場合、シリカの分散性が向上し、ウェット性能、耐摩耗性及び転がり抵抗性能がさらに向上する。
なお、特定変性剤がハロゲン化チタン、ハロゲン化錫又は後述する式(N)で表される化合物である場合、上記特定共重合体の末端はカーボンブラックと相互作用すると推測され、特定変性剤が環状シラザン、アルコキシシラン又はアミンである場合、上記特定共重合体の末端はシリカと相互作用すると推測され、特定変性剤がエポキシド又はケトンである場合、上記特定共重合体の末端はシリカ又はカーボンブラックと相互作用すると推測される。
【0032】
本発明の効果がより優れる理由から、特定変性剤は、好ましくは環状シラザン、アルコキシシラン又は後述する式(N)で表される化合物であり、より好ましくは環状シラザンである。
【0033】
1.1.5.1)特定変性剤
以下、各特定変性剤について説明する。
【0034】
1.1.5.1.1)ハロゲン化チタン
上記ハロゲン化チタンは特に限定されないが、例えば、TiCl
3、TiBr
3、Ti(OC
2H
5)Cl
2、Ti(OC
4H
9)Cl
2、TiCl
4、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(OC
4H
9)Cl
3などが挙げられる。
上記ハロゲン化チタンは、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくはTiCl
3(トリクロロチタン)及びTiCl
4(テトラクロロチタン)からなる群から選択される少なくとも1つであり、より好ましくはテトラクロロチタンである。
【0035】
1.1.5.1.2)ハロゲン化錫
上記ハロゲン化錫は特に限定されないが、例えば、フッ化錫、塩化錫、臭化錫、ヨウ化錫及びアスタチン化錫などが挙げられる。
【0036】
1.1.5.1.3)環状シラザン
上記環状シラザンは環状のシラザンであれば特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは下記式(S)で表される化合物である。
なお、本明細書において、シラザンとは、ケイ素原子と窒素原子とが直接結合した構造を有する化合物(Si−N結合を有する化合物)をいう。
【0038】
上記式(S)中、R
1〜R
3は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基の具体例は、後述する式(P)中のRと同じである。
R
1は、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくはアルキル基(好ましくは、炭素数1〜10)、アルキルシリル基(好ましくは、炭素数1〜10)又は芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6〜18)である。
R
2は、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくはアルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜10)である。
上記式(S)中、Lは、2価の有機基を表す。
上記2価の有機基としては、例えば、置換又は無置換の脂肪族炭化水素基、置換又は無置換の芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−SO
2−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、及びこれらの組合せなどが挙げられる。
上記置換又は無置換の脂肪族炭化水素基は、例えば、アルキレン基であり、好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基である。
上記置換又は無置換の芳香族炭化水素基は、例えば、アリーレン基であり、好ましくは炭素数6〜12のアリーレン基である。
上記組合せは、例えば、アルキレンオキシ基(−C
mH
2mO−:mは正の整数)、アルキレンオキシカルボニル基及びアルキレンカルボニルオキシ基などである。
Lは、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくはアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基である。
【0039】
上記式(S)で表される化合物としては、例えば、N−n−ブチル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン、N−フェニル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン、N−トリメチルシリル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン及びN−トリメチルシリル−1,1−ジエトキシ−2−アザシラシクロペンタンなどが挙げられる。
なお、環状シラザンのケイ素原子は求電子性を示すと考えられる。
【0040】
1.1.5.1.4)アルコキシシラン
上記アルコキシシランは、アルコキシシリル基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビストリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN,N−ビストリメチルシリル−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
上記アルコキシシリル基中のアルコキシ基の数は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは2個以上である。
なお、アルコキシシランのケイ素原子は求電子性を示すものと考えられる。
【0041】
1.1.5.1.5)エポキシド
上記エポキシドは、オキサシクロプロパン(オキシラン)構造を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、1−フェニルプロピレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグルシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、1−メトキシ−2−メチルプロピレンオキシド、アリルグリシジルエーテル、2−エチルオキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ラウリルアルコールグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、パルミチルグリシジルエーテル、ミリスチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、カプリルグリシジルエーテル及びカプロイルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0042】
1.1.5.1.6)アミン
上記アミンは、アミノ基(−NR
2:Rは水素原子又は炭化水素基を表す。2つのRは同一であっても異なっていてもよい。)を有する化合物であれば特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくはアジリジンである。
上記アジリジンとしては、例えば、N−メチルアジリジン、N−エチルアジリジン、N−イソプロピルアジリジン、N−フェニルアジリジン、N−(4−メチルフェニル)アジリジン及びN−メチル−2−メチルアジリジンなどが挙げられる。
【0043】
1.1.5.1.7)ケトン
上記ケトンは、ケトン基(>C=O)を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、アセトン、ベンゾフェノン及びこれらの誘導体などが挙げられる。
上記ベンゾフェノンの誘導体としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラエチル(4,4’−ジアミノ)−ベンゾフェノン、N,N−ジメチル−1−アミノベンゾキノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノベンゾキノン、N,N−ジメチル−1−アミノアントラキノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノアントラキノン及び4,4’−ジアセチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0044】
1.1.5.1.8)式(N)で表される化合物
前述した式(N)で表される化合物は、下記式(N)で表される化合物である。
【0046】
上記式(N)中、R
1は水素原子又はアルキル基を表し、R
2はアルキレン基を表す。上記アルキル基は、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、上記アルキレン基は、好ましくは炭素数2〜10のアルキレン基である。
【0047】
上記式(N)で表される化合物の非限定的な具体例としては、N−メチルピロリドン(上記式(N)において、R
1がメチル基であり、R
2がプロピレン基である化合物)が挙げられる。
【0048】
1.1.6)特定芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の製造方法
上記特定芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。芳香族ビニル含有量、ミクロ構造の割合及びガラス転移温度を特定の範囲にする方法は特に限定されないが、例えば、重合するモノマーの種類、モノマーの量比、開始剤の種類、開始剤の量比、反応温度などを調整することで、芳香族ビニル含有量、ミクロ構造の割合及びガラス転移温度を特定の範囲にすることができる。
【0049】
1.1.6.1)好適な態様
上記特定共重合体を製造する方法の好適な態様としては、例えば、有機リチウム化合物、アルキルアルミニウム及び金属アルコラートを用いて調製された開始剤(以下「特定開始剤」という場合がある。)を用いて芳香族ビニ化合物ル及び共役ジエン化合物を含むモノマーを共重合する方法(以下「特定共重合体の合成方法」という場合がある。)が挙げられる。この合成方法を用いて合成された特定共重合体は、タイヤにしたときにより優れた機械的特性及び耐摩耗性を示す。
【0050】
1.1.6.1.1)特定開始剤
上述のとおり、上記特定共重合体の合成方法では、有機リチウム化合物、アルキルアルミニウム及び金属アルコラートを用いて調製された開始剤(特定開始剤)が使用される。上記特定共重合体の合成方法では、特定開始剤が使用されるため、得られる特定共重合体において、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位のうちビニル構造が占める割合が、例えば、8モル%以下に抑えられると考えられる。
【0051】
上記特定開始剤は、本発明の効果がより優れる理由から、さらに芳香族ジビニル化合物を用いて調製されたものであることが好ましい。すなわち、上記特定開始剤は、有機リチウム化合物、アルキルアルミニウム、金属アルコラート及び芳香族ジビニル化合物を用いて調製されたものであることが好ましい。上記特定開始剤を調製する際に芳香族ジビニル化合物を用いると、得られる特定共重合体が分岐状になり、その分子量が大きくなる。これにより、上記特定共重合体を含有するゴム組成物を用いたタイヤの機械的特性及び耐摩耗性がより向上する。
【0052】
1.1.6.1.1.1)有機リチウム化合物
上記有機リチウム化合物は、炭素−リチウム結合を持つ有機金属化合物であれば特に限定されないが、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム及びベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物、並びに、1,4−ジリチオブタン、1,5−ジリチオペンタン、1,6−ジリチオヘキサン、1,10−ジリチオデカン、1,1−ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4−ジリチオベンゼン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン及び1,3,5−トリリチオ−2,4,6−トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。
上記有機リチウム化合物は、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム及びtert−ブチルリチウムからなる群から選択される少なくとも1つであり、より好ましくはtert−ブチルリチウムである。
【0053】
上記特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物の量は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、重合するモノマーに対して、好ましくは0.001〜10モル%である。
【0054】
1.1.6.1.1.2)アルキルアルミニウム
上記アルキルアルミニウムは、アルミニウム原子(Al)にアルキル基(鎖状、分岐状又は環状)が結合した化合物であれば特に限定されない。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10である。
上記アルキルアルミニウムとしては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ペンチルジエチルアルミニウム、2−メチルペンチル−ジエチルアルミニウム、ジシクロヘキシルエチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリ(2,2,4−トリメチルペンチル)アルミニウム、トリドデシルアルミニウム、トリ(2−メチルペンチル)アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、プロピルアルミニウムジハイドライド及びイソブチルアルミニウムジハイドライドなどが挙げられる。
上記アルキルアルミニウムは、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくはトリオクチルアルミニウムである。
【0055】
上記特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対するアルキルアルミニウムの割合は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは0.1〜50モル当量であり、より好ましくは0.5〜10モル当量である。ここで1モル当量とは、有機リチウム化合物を1モル用いた場合に、アルキルアルミニウムを1モル添加するときの量を示している。すなわち、上記特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対するアルキルアルミニウムの割合は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは10〜5000モル%であり、より好ましくは50〜1000モル%である。
【0056】
1.1.6.1.1.3)金属アルコラート
上記金属アルコラート(金属アルコキシド)は、アルコールのヒドロキシ基の水素を金属で置換した化合物であれば特に限定されない。
上記アルコールは、鎖状、分岐状又は環状の炭化水素の水素原子をヒドロキシ基で置換した化合物であれば特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上記アルコールの炭素数は、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20である。
上記金属は、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属(IUPAC周期表3族〜11族の金属)、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ及びアンチモンなどが挙げられ、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくはアルカリ土類金属であり、より好ましくはバリウムである。
【0057】
上記金属アルコラートは、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくはバリウムアルコラート(「バリウムアルコキシド」ともいう。)である。
上記バリウムアルコキシドの非限定的な具体例としては、バリウムジメトキシド、バリウムジエトキシド、バリウムジプロポキシド、バリウムジブトキシド及びバリウムビス(2−エチルヘキソキシド)が挙げられる。
【0058】
上記特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する金属アルコラートの割合は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは0.01〜5モル当量であり、より好ましくは0.1〜3モル当量である。ここで1モル当量とは、有機リチウム化合物を1モル用いた場合に、金属アルコラートを1モル添加するときの量を示している。すなわち、上記特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する金属アルコラートの割合は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは1〜500モル%であり、より好ましくは10〜300モル%である。
【0059】
1.1.6.1.1.4)芳香族ジビニル化合物
上記芳香族ジビニル化合物は、ビニル基を2つ有する芳香族化合物であれば特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくはジビニルベンゼンである。
【0060】
上記特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する芳香族ジビニル化合物の割合は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは0.1〜5モル当量であり、より好ましくは0.3〜3モル当量である。ここで1モル当量とは、有機リチウム化合物を1モル用いた場合に、芳香族ジビニルを1モル添加するときの量を示している。すなわち、上記特定開始剤の調製に使用される有機リチウム化合物に対する芳香族ジビニル化合物の割合は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは10〜500モル%であり、より好ましくは30〜300モル%である。
【0061】
1.1.6.1.1.5)特定開始剤の調製方法
上記特定開始剤の調製方法は特に限定されないが、上述した有機リチウム化合物、アルキルアルミニウム及び金属アルコラート等を、溶媒に溶解させる方法などが挙げられる。
上記溶媒は特に限定されないが、好ましくは有機溶剤であり、本発明の効果がより優れる理由から、より好ましくはアルコール以外の有機溶剤である。
【0062】
1.1.6.1.2)モノマー
モノマー(混合物)は芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を含む。芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の具体例及び好適な態様は上述したとおりである。
モノマー中の芳香族ビニル化合物の割合は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは18質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上である。上限は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。
また、モノマー中の共役ジエン化合物の割合は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは82質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。下限は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。
モノマーは、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物に加え、さらに別のモノマーを含んでいてもよい。そのようなモノマーの具体例は、上述した「その他のモノマー」と同じである。
【0063】
1.1.6.1.2.1)モノマーの共重合
上述のとおり、本発明の方法では、特定開始剤を用いて芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を含むモノマーを共重合する。特定開始剤及びモノマーについては上述のとおりである。
【0064】
モノマーの共重合方法は特定に限定されないが、上述した特定開始剤を含有する有機溶媒溶液に上述したモノマーを加え、0〜120℃(好ましくは30〜100℃)の温度範囲で撹拌する方法などが挙げられる。
【0065】
モノマーに対する特定開始剤中の有機リチウム化合物の割合は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、好ましくは0.001〜10モル%である。
【0066】
モノマーを共重合する際に、共重合系(例えば、上述した特定開始剤を含有する有機溶媒溶液)にフェノール化合物及び/又はアミン化合物を添加してもよい。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、共重合系にフェノール化合物が添加することが好ましい。共重合系にフェノール化合物を添加すると、得られる芳香族ビニル−共役ジエン共重合体において、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位のうち1,4−シス構造の割合が増える。
ここで、フェノール化合物とは、フェノール性水酸基又はその金属塩を有する化合物を意図する。また、アミン化合物とはアミノ基(−NH
2、−NHR、−NR
2)を有する化合物を意図する。ここで、Rは置換基を表す。置換基の具体例及び好適な態様は、後述する式(P)中のRと同じである。−NR
2の2つのRは同一であっても、異なっていてもよい。
上記フェノール化合物としては、例えば、下記式(P)で表される化合物が挙げられる。
【0068】
上記式(P)中、X
1は、水素原子又は金属原子を表す。金属原子としては、ナトリウム原子、カリウム原子などが挙げられる。
上記式(P)中、Rは、水素原子又は置換基を表す。複数あるRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記置換基は、1価の置換基であれば特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、メルカプト基、アシル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、シリル基、及びヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基などが挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びリン原子などが挙げられる。
上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、直鎖状又は分岐状のアルキル基、直鎖状又は分岐状のアルケニル基、及び直鎖状又は分岐状のアルキニル基が挙げられる。ここで、上記直鎖状又は分岐状のアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜30であり、上記直鎖状又は分岐状のアルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜30であり、上記直鎖状又は分岐状のアルキニル基の炭素数は、好ましくは2〜30である。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル等の炭素数6〜18の芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記式(P)中、Xは、水素原子、−OX
1基又は置換基を表す。X
1については上述したとおりである。また、置換基の具体例は、上述した式(P)中のRと同じである。
【0069】
反応系に添加するフェノール化合物の量は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上記有機リチウム化合物に対して、好ましくは0.01〜90モル%であり、より好ましくは0.1〜80モル%である。
【0070】
重合を停止する方法は特に限定されないが、重合溶液にアルコール、好ましくはメタノールを添加する方法などが挙げられる。
重合を停止する方法は、本発明の効果がより優れる理由から、ハロゲン化チタン、ハロゲン化錫、環状シラザン、アルコキシシラン、エポキシド、アミン、ケトン及び下記式(N)で表される化合物から選ばれる求電子剤(以下「特定求電子剤」という場合がある。)を用いて重合を停止する方法が好ましい。
すなわち、上記特定共重合体の合成方法は、特定開始剤を用いて芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を含むモノマーを共重合し、その後、特定求電子剤を用いて重合を停止する方法が好ましい。
特定求電子剤の定義、具体例及び好適な態様は、上述した特定変性剤と同じである。
特定求電子剤を用いて重合を停止することで、末端が特定求電子剤(特定変性剤)で変性された共重合体が得られる。
特定開始剤に対する特定求電子剤の量は特に限定されない。
有機リチウム化合物に対する求電子剤の割合(特定求電子剤/有機リチウム化合物)は、特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、モル比で、好ましくは0.1〜10であり、より好ましくは1〜5である。
また、アルキルアルミニウム(アルキルAl)に対する特定求電子剤の割合(特定求電子剤/アルキルAl)は、特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、モル比で、好ましくは0.1〜10であり、より好ましくは1〜5である。
さらに、金属アルコラートに対する求電子剤の割合(求電子剤/金属アルコラート)は、特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、モル比で、好ましくは0.1〜20であり、より好ましくは1〜10である。
【0071】
1.2)特定共重合体以外のジエン系ゴム
上記特定共重合体以外のジエン系ゴムは、ジエン系ゴムであって、上記特定共重合体以外のものであれば特に限定されない。
上記特定共重合体以外のジエン系ゴムとしては、例えば、上記特定共重合体以外の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体、非芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(非芳香族のビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体)、共役ジエン(共)重合体、及び天然ゴムが挙げられる。
上記特定共重合体以外の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体としては、例えば、上記特定共重合体以外のスチレンブタジエンゴム(SBR)が挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)は溶液重合型スチレンブタジエンゴム(S−SBR)又は乳化重合型スチレンブタジエンゴム(E−SBR)であってもよいが、好ましくは溶液重合型スチレンブタジエンゴム(S−SBR)である。
上記非芳香族ビニル−共役ジエン共重合体としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(イソブチレンイソプレンゴム)(IIR)、及びハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)が挙げられる。
上記共役ジエン(共)重合体としては、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、及びクロロプレンゴム(CR)が挙げられる。
上記特定共重合体以外のジエン系ゴムとしては、上記特定共重合体以外のスチレンブタジエンゴム(SBR)を用いることが好ましい。
【0072】
1.3)ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度
本発明においては、このようなジエン系ゴムの平均ガラス転移温度(平均Tg)は、−50℃以上であり、好ましくは−50℃以上−10℃以下であり、より好ましくは−50℃以上−20℃以下であり、さらに好ましくは−50℃以上−30℃以下である。
ここで、平均ガラス転移温度とは、各ジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)に各ジエン系ゴムの質量分率を乗じた合計(ガラス転移温度の加重平均値)であり、すべてのジエン系ゴムの質量分率の合計を1とする。
なお、本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものとする。また、ジエン系ゴムが油展品であるときは、油展成分(オイル)を含まない状態におけるジエン系ゴムのガラス転移温度とする。
【0073】
2.シリカ
本発明のタイヤ用ゴム組成物に含有されるシリカは特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
【0074】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、上記シリカの含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して30〜80質量部である。
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物をタイヤにしたときの転がり抵抗性能及びウェットグリップ性能をさらに向上させられることから、上記シリカの含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは40〜80質量部であり、より好ましくは50〜80質量部であり、さらに好ましくは60〜80質量部である。
シリカの含有量が30質量部未満ではウェットグリップ性能が不十分となり、80質量部超では転がり抵抗性能が不十分となる。
【0075】
上記シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
3.シランカップリング剤
本発明のタイヤ用ゴム組成物に含有されるシランカップリング剤は特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシランカップリング剤を用いることができる。
【0077】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、上記シランカップリング剤の含有量は、上記シリカの含有量に対して、2〜20質量%である。
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物をタイヤにしたときの転がり抵抗性能及びウェットグリップ性能をさらに向上させられることから、上記シランカップリング剤の含有量は、上記シリカの含有量に対して、好ましくは2〜15質量%であり、より好ましくは5〜15質量%であり、さらに好ましくは5〜10質量%である。
シランカップリング剤の含有量が、上記シリカの含有量に対して、2質量%未満では転がり抵抗性能及びウェットグリップ性能が不十分となり、20質量%超では耐摩耗性能及び機械的強度が不十分となる。
【0078】
上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの1種又は2種以上を事前にオリゴマー化させたものを用いてもよい。
【0079】
また、上記以外のシランカップリング剤としては、具体的には、例えば、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−[エトキシビス(3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタコサン−1−イルオキシ)シリル]−1−プロパンチオールなどのメルカプト系シランカップリング剤;3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランなどのチオカルボキシレート系シランカップリング剤;3−チオシアネートプロピルトリエトキシシランなどのチオシアネート系シランカップリング剤;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの1種又は2種以上を事前にオリゴマー化させたものを用いてもよい。
【0080】
これらのうち、補強性改善効果の観点から、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及び/又はビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用することが好ましく、具体的には、例えば、Si69[ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド;エボニック・デグッサ社製]、Si75[ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド;エボニック・デグッサ社製]等が挙げられる。
【0081】
4.芳香族変性テルペン樹脂
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、さらに、芳香族変性テルペン樹脂を含有することが好ましい。
上記芳香族変性テルペン樹脂の軟化点は、50℃〜150℃であり、好ましくは100℃〜150℃であり、より好ましくは100℃〜130℃であり、さらに好ましくは110℃〜130℃である。ここで、軟化点は、JIS K 7206:2016「プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)の求め方」に準拠して測定したビカット軟化点である。
また、上記芳香族変性テルペン樹脂の含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは1〜20質量部であり、さらに好ましくは3〜20質量部であり、いっそう好ましくは3〜15質量部である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記所定の芳香族変性テルペン樹脂を配合することにより、ウェットグリップ性能をさらに向上することができる。これは、上記芳香族変性テルペン樹脂が、上記シリカの分散性をさらに良好にするとともに、上記シリカと上記ジエン系ゴムとの相溶性をいっそう向上させることによるものと考えらえる。
【0082】
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、具体的には、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン又はリモネンなどのテルペンと、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン又はインデンなどの芳香族化合物とを重合させて得られる芳香族変性テルペン樹脂が挙げられる。
【0083】
5.ジエン系ゴム、シリカ、シランカップリング剤及び上記芳香族変性テルペン樹脂以外の添加剤
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、上記ジエン系ゴム及び上記シリカ以外の添加剤を含有することができる。
上記添加剤としては、例えば、上記シリカ以外の充填剤(例えば、カーボンブラックなど)、アルキルアルコキシシラン、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、接着用樹脂、素練り促進剤、老化防止剤、ワックス、加工助剤、アロマオイル、液状ポリマー、上記芳香族変性テルペン樹脂以外のテルペン系樹脂、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、及び加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤が挙げられる。
【0084】
6.タイヤ用ゴム組成物の製造方法
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明のタイヤ用ゴム組成物が硫黄又は加硫促進剤を含有する場合は、硫黄及び加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは40〜160℃)で混合し、冷却してから、硫黄又は加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、従来公知の加硫又は架橋条件で加硫又は架橋することができる。
【0085】
7.タイヤ用ゴム組成物の用途
本発明のタイヤ用ゴム組成物は空気入りタイヤの製造に用いられる。なかでも、空気入りタイヤのキャップトレッドに好適に用いられる。
【0086】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて製造した空気入りタイヤである。なかでも、本発明のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに使用した空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明の空気入りタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0087】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5及びビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
また、タイヤトレッド部3は、アンダートレッド9及びその外側に配置されたキャップトレッド10から構成される。
【0088】
本発明の空気入りタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
[芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の合成]
(合成例1)末端未変性SBR(SBR−1)
n−BuLi(関東化学社製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),18mL,28.8mmol)、バリウムビス(2−エチルヘキソキシド)(Ba(OCH
2CH(C
2H
5)CH
2CH
2CH
2CH
3)
2)(ストレム・ケミカルズ社製:1M(トルエン/ヘキサン溶液)7.5mL)、トリオクチルアルミニウム(アルドリッチ社製:25質量%(ヘキサン溶液),45mL)及びシクロヘキサン(関東化学社製:10mL)を用いて調製された開始剤溶液(上述した特定開始剤に相当)のうち、60mLを、1,3−ブタジエン(696g,12867mmol)とスチレン(関東化学社製:300g,2883mmol)と4−tert−ブチルピロカテコール(4.79g,28.8mmol)の混合物のシクロヘキサン(4.24kg)溶液に加えて、60℃で14時間攪拌した。室温に冷却後、メタノール(関東化学社製:3.44g)を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)(876g;Mn=166,000;Mw=295,000;Mw/Mn=1.8)を88%の収率で得た。なお、IR分析によって、ビニル/トランス/シス=3/61/36と見積もられた。また、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量)は31質量%、ガラス転移温度は−84℃であった。
【0091】
(合成例2)環状シラザン末端変性SBR(SBR−2)
n−BuLi(関東化学社製:1.60mol/L(ヘキサン溶液),18mL,28.8mmol)、バリウムビス(2−エチルヘキソキシド)(Ba(OCH
2CH(C
2H
5)CH
2CH
2CH
2CH
3)
2)(ストレム・ケミカルズ社製:1M(トルエン/ヘキサン溶液)7.5mL)、トリオクチルアルミニウム(アルドリッチ社製:25質量%(ヘキサン溶液),45mL)及びシクロヘキサン(関東化学社製:10mL)を用いて調製された開始剤溶液(上述した特定開始剤に相当)のうち、60mLを、1,3−ブタジエン(708g,13098mmol)とスチレン(関東化学社製:300g,2883mmol)と4−tert−ブチルピロカテコール(4.79g,28.8mmol)の混合物のシクロヘキサン(4.24kg)溶液に加えて、60℃で14時間攪拌した。室温に冷却後、N−トリメチルシリル−1,1−ジメトキシ−2−アザシラシクロペンタン(15.5g)及びリチウムジイソプロピルアミド(アルドリッチ社製(2M溶液):10mL)のシクロヘキサン(10mL)混合溶液を投入し、重合を停止した。得られた溶液を取り出し、減圧下で濃縮した。その濃縮溶液をメタノール(5L)に流し込み、メタノール不溶成分を分離した。その結果、末端が環状シラザンで変性されたスチレン−ブタジエン共重合体(環状シラザン末端変性SBR)(920g;Mn=418,000;Mw=668,000;Mw/Mn=1.6)を91%の収率で得た。なお、IR分析によって、ビニル/トランス/シス=4/65/31と見積もられた。また、芳香族ビニル含有量(スチレンに由来する繰り返し単位の含有量)は29質量%、ガラス転移温度は−85℃であった。
【0092】
[標準例1、2、実施例1〜5、比較例1〜7]
〈ゴム組成物の調製〉
下記第1表に示される成分を、下記第1表に示される割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記第1表に示される成分のうち硫黄及び加硫促進剤を除く成分を、80℃のバンバリーミキサーで5分間混合した。次に、ロールを用いて、硫黄及び加硫促進剤を混合し、ゴム組成物(未加硫)を得た。
【0093】
〈加硫ゴムシートの作製〉
得られた各ゴム組成物(未加硫)を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で15分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
【0094】
〈平均ガラス転移温度、引張強度、破断伸び、転がり抵抗性能、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能の評価〉
《平均ガラス転移温度》
ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度(平均Tg)を、タイヤ用ゴム組成物に配合した各ゴムのガラス転移温度(Tg)に各ゴム成分の質量分率をそれぞれ掛け合わせて足し合わせることにより算出した。ここで、各ゴムのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で測定し、中点法にて算出したものである。
【0095】
《引張強度、破断伸び》
上述のとおり作製した加硫ゴムシートについて、JIS K 6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度100℃、引張り速度500mm/分の条件で引張強度及び破断伸びを評価した。
結果を第1表に示す(「引張強度」の欄及び「破断伸び」の欄)。
結果は、標準例1の引張強度及び破断伸びをそれぞれ100とする指数で表した。指数が大きいほど、タイヤにしたときの機械的強度が良好となる。
【0096】
《転がり抵抗性能》
得られた各加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)により、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件で、損失正接(tanδ(60℃))を測定した。
結果を下記第1表に示す(「転がり抵抗性能」の欄)。
結果は、標準例1のtanδ(60℃)を100とする指数で表した。指数が小さいほど、タイヤにしたときの転がり抵抗性能が良好となる。
【0097】
《ウェットグリップ性能》
得られた各加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)により、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度0℃の条件で、損失正接(tanδ(0℃))を測定した。
結果を下記第1表に示す(「ウェットグリップ性能」の欄)。
結果は、標準例1のtanδ(0℃)を100とする指数で表した。指数が大きいほど、タイヤにしたときのウェットグリップ性能が良好となる。
【0098】
《耐摩耗性能》
上述のとおり作製した加硫ゴムシートについて、JIS K 6264−1、2:2005「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−耐摩耗性の求め方−第1部:ガイド」に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所製)を用いて、温度20℃、スリップ率50%の条件で摩耗減量を測定した。
結果を下記第1表に示す(「耐摩耗性能」の欄)。
結果は、標準例1の摩耗量を100として、次式により指数化したものを表した。指数が大きいほど摩耗量が小さく、タイヤにしたときの耐摩耗性能が良好となる。
耐摩耗性能(指数)=(標準例1の摩耗量/試料の摩耗量)×100
【0099】
【表1】
【0100】
〈ジエン系ゴム〉
《特定共重合体》
SBR−1: 合成例1で合成した末端未変性スチレン−ブタジエン共重合体(芳香族ビニル含有量31質量%;ビニル/トランス/シス=3/61/36;ガラス転移温度−84℃)
SBR−2: 合成例2で合成した環状シラザン末端変性スチレン−ブタジエン共重合体(芳香族ビニル含有量29質量%;ビニル/トランス/シス=4/65/31;ガラス転移温度−85℃)
【0101】
《特定共重合体以外のジエン系ゴム》
SBR−3: 溶液重合スチレンブタジエンゴム(タフデン1000,旭化成ケミカルズ社製;芳香族ビニル含有量18質量%;ビニル/トランス/シス=13/52/35;ガラス転移温度−72℃)
SBR−4: ヒドロキシ末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(ニポールNS612,日本ゼオン社製;芳香族ビニル含有量15質量%;ガラス転移温度−60℃)
SBR−5: 変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(タフデンE580,旭化成社製;芳香族ビニル含有量35.5質量%;ガラス転移温度−32℃)(油展品(油展量:37.5質量部))
なお、第1表中、SBR−5の含有量について、油展ゴムのゴム成分の正味を括弧内に示す。
BR−1: ポリブタジエンゴム(ニポールBR1220,日本ゼオン社製;ガラス転移温度−105℃)
【0102】
〈シリカ〉
シリカ−1: Zeosil 1165MP(ローディア社製)
〈シランカップリング剤〉
カップリング剤−1: Si69(エボニック・デグッサ社製)
〈芳香族変性テルペン樹脂〉
テルペン樹脂−1: YSレジン TO−125(ヤスハラケミカル社製;軟化点125±5℃)
【0103】
〈添加剤〉
カーボンブラック: ショウブラックN339(キャボット社製)
酸化亜鉛: 酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
ステアリン酸: ビーズステアリン酸(日油社製)
アロマオイル: エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
硫黄: 金華印油入微粉末硫黄(鶴見化学工業社製;硫黄含有割合95.24質量%)
なお、第1表中、硫黄の含有量は、上記金華印油入微粉末硫黄の正味の硫黄量で表す。
加硫促進剤CZ: ノクセラーCZ−G(大内新興化学工業社製)
加硫促進剤DPG: ソクシールD−G(住友化学社製)
【0104】
[結果の説明]
(標準例1、実施例1及び2、並びに比較例1及び2)
実施例1及び2は、特定共重合体(SBR−1又はSBR−2)をジエン系ゴム中に20質量%含有する例である。
また、比較例1及び2は、特定共重合体に代えて、特定共重合体に該当しないスチレンブタジエンゴム(SBR−3又はSBR−4)をジエン系ゴム中に20質量%含有する例である。
また、標準例1は、特定共重合体に代えて、ブタジエンゴム(BR−1)をジエン系ゴム中に20質量%含有する例である。
実施例1と標準例1とを対比すると、実施例1は、標準例1に比べ、タイヤにしたときの引張強度、破断伸び、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能が優れ、転がり抵抗性能は同等であった。
実施例2と標準例1とを対比すると、実施例2は、標準例1に比べ、タイヤにしたときの引張強度、破断伸び、転がり抵抗性能、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能がすべて優れていた。
比較例1と標準例1とを対比すると、比較例1は、標準例1に比べ、タイヤにしたときのウェットグリップ性能が優れるものの、引張強度、破断伸び、転がり抵抗性能及び耐摩耗性能は、いずれも劣っていた。
比較例2と標準例1とを対比すると、比較例2は、標準例1に比べ、タイヤにしたときの引張強度、破断伸び及びウェットグリップ性能が優れるものの、転がり抵抗性能は同程度であり、耐摩耗性能は劣っていた。
比較例1と実施例1とを対比すると、比較例1は、実施例1に比べ、引張強度、破断伸び、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能が劣り、なかでも、引張強度、破断伸び及び耐摩耗性能が特に劣っていた。
比較例2と実施例2とを対比すると、比較例2は、実施例2に比べ、引張強度、転がり抵抗性能、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能が劣り、なかでも、引張強度及び耐摩耗性能が特に劣っていた。
【0105】
(実施例1、並びに比較例6及び7)
実施例1は、特定共重合体(SBR−1)をジエン系ゴム中に10質量%以上50質量%以下(20質量%)含有する例である。
また、比較例6は、特定共重合体(SBR−1)をジエン系ゴム中に10質量%未満(5質量%)含有する例である。
また、比較例7は、特定共重合体(SBR−1)をジエン系ゴム中に50質量%超(70質量%)含有する例である。
比較例6と実施例1とを対比すると、比較例1は、実施例1に比べ、引張強度、破断伸び、転がり抵抗性能、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能のすべてが劣り、なかでも、耐摩耗性能及び引張強度が特に劣っていた。
比較例7と実施例1とを対比すると、比較例7は、実施例1に比べ、引張強度、破断伸び、転がり抵抗性能及びウェットグリップ性能が劣り、なかでも、ウェットグリップ性能及び引張強度が特に劣っていた。
これらのことから、ジエン系ゴム中の特定共重合体の含有量が10質量%未満であると、タイヤ用ゴム組成物をタイヤにしたときの耐摩耗性能が不十分となり、50質量部超であると、タイヤ用ゴム組成物をタイヤにしたときのウェットグリップ性能が不十分となることがわかる。さらに、タイヤ用ゴム組成物をタイヤにしたときの機械的強度(引張強度)は、ジエン系ゴム中の特定共重合体の含有量が10質量%未満でも50質量部超でも、不十分となることがわかる。
【0106】
(実施例1及び比較例5)
実施例1は、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−50℃以上(−36℃)の例である。
比較例5は、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−50℃未満(−52℃)の例である。
比較例5と実施例1とを対比すると、比較例5は、実施例1に比べ、引張強度、破断伸び及びウェットグリップ性能が劣り、なかでも、ウェットグリップ性能及び引張強度が特に劣っていた。
このことから、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−50℃未満であると、タイヤにしたときのウェットグリップ性能が不十分となることがわかる。
【0107】
(実施例1及び3、並びに比較例3及び4)
実施例1及び3は、ジエン系ゴム100質量部に対してシリカを30質量部以上80質量部以下(80質量部又は40質量部)含有する例である。
また、比較例3及び4は、ジエン系ゴム100質量部に対してシリカを30質量部未満(20質量部)又は80質量部超(100質量部)含有する例である。
比較例3と実施例1及び3とを対比すると、比較例3は実施例1及び3に比べ、転がり抵抗性能が優れるものの、引張強度、破断伸び、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能が劣り、なかでも、ウェットグリップ性能が特に劣っていた。
比較例4と実施例1及び3とを対比すると、比較例4は実施例1及び3に比べ、転がり抵抗性能が優れるものの、引張強度、破断伸び、転がり抵抗性能、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能が劣り、なかでも、転がり抵抗性能が特に劣っていた。
これらのことから、タイヤ用ゴム組成物中のシリカの含有量がジエン系ゴム100質量部に対して30質量部未満ではウェットグリップ性能が不十分となり、80質量部超では転がり抵抗性能が不十分となることがわかる。
【0108】
(実施例1及び2、並びに実施例4及び5)
実施例1は、特定共重合体として末端未変性スチレンブタジエンゴム(SBR−1)を含有する例である。
また、実施例2は、特定共重合体として環状シラザン末端変性スチレンブタジエンゴム(SBR−2)を含有する例である。
実施例2と実施例1とを対比すると、実施例2は、実施例1に比べ、引張強度、転がり抵抗性能、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能が向上しており、なかでも、転がり抵抗性能が特に向上していた。
実施例4は、特定共重合体として末端未変性スチレンブタジエンゴム(SBR−1)を含有する例である。
また、実施例5は、特定共重合体として環状シラザン末端変性スチレンブタジエンゴム(SBR−2)を含有する例である。
実施例5と実施例4とを対比すると、実施例5は、実施例4に比べ、引張強度、転がり抵抗性能、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性能が向上しており、なかでも、転がり抵抗性能が特に向上していた。
これらのことから、特定共重合体として末端変性したものを用いると、転がり抵抗性能がさらに向上することがわかる。