(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に由来する繰り返し単位(A1)に対する前記ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a2)に由来する繰り返し単位(A2)のモル比(A2/A1)が0.1〜0.5である、請求項1〜3のいずれかに記載のプライマー組成物。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に由来する繰り返し単位(A1)に対する前記アミノ基含有重合性モノマー(a3)に由来する繰り返し単位(A3)のモル比(A3/A1)が0.03〜0.3である、請求項1〜4のいずれかに記載のプライマー組成物。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に由来する繰り返し単位(A1)に対する前記アルコキシシリル基含有重合性モノマー(a4)に由来する繰り返し単位(A4)のモル比(A4/A1)が0.01〜0.1である、請求項1〜5のいずれかに記載のプライマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルまたはメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
[プライマー組成物]
本発明のプライマー組成物は、(メタ)アクリル粒子を含有する(メタ)アクリル系エマルジョンを含有するプライマー組成物である。
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子は、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(a)を重合させて得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)からなる粒子である。
また、本発明においては、上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に由来する繰り返し単位(A1)と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有重合性モノマー(a2)に由来する繰り返し単位(A2)と、アミノ基を有するアミノ基含有重合性モノマー(a3)に由来する繰り返し単位(A3)と、アルコキシシリル基を有するアルコキシシリル基含有重合性モノマー(a4)に由来する繰り返し単位(A4)とを有し、かつ、上記アミノ基含有重合性モノマー(a3)が有する上記アミノ基がリン酸類およびホスホン酸類からなる群から選択される少なくとも一種の酸成分でイオン化されている、ポリマーである。
更に、本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子の含有量は、組成物の総質量に対して15質量%以上60質量%以下である。
【0011】
このような本発明のプライマー組成物は、無機系硬質素材等の被着体(例えば、モルタルなど)との接着性、特に、耐水接着性が良好となる。
これは、詳細には明らかではないが、(メタ)アクリル粒子を構成している(メタ)アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に由来する繰り返し単位(A1)と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有重合性モノマー(a2)に由来する繰り返し単位(A2)と、アミノ基を有するアミノ基含有重合性モノマー(a3)に由来する繰り返し単位(A3)と、アルコキシシリル基を有するアルコキシシリル基含有重合性モノマー(a4)に由来する繰り返し単位(A4)とを有し、かつ、上記アミノ基含有重合性モノマー(a3)が有する上記アミノ基がリン酸類などの所定の酸成分でイオン化されていることにより、(メタ)アクリル系エマルジョンがカチオン性となり、無機系硬質素材(特にモルタル)との親和性が向上したためと考えられる。
以下、本発明のプライマー組成物が含有する各成分について詳述する。
【0012】
〔(メタ)アクリル系エマルジョン〕
本発明のプライマー組成物が含有する(メタ)アクリル系エマルジョンは、分散質としての(メタ)アクリル粒子と、分散媒とを含有するエマルジョンである。
ここで、分散質である(メタ)アクリル粒子の相は、液相であっても固相であってもよい。すなわち、一般的には、液相である分散媒に液相である分散質が分散した系を「エマルジョン」といい、液相である分散媒に固相である分散質が分散した系を「サスペンション」というが、本発明においては、「エマルジョン」は「サスペンション」を含む概念とする。
また、分散媒は水系溶媒であれば特に制限されない。水系溶媒としては、例えば、水;水に可溶な有機溶媒を水に混合した混合溶媒;などが挙げられる。上記有機溶媒としては、例えば、アルコール;メチルエチルケトン(MEK)のようなケトンが挙げられる。
【0013】
<(メタ)アクリル粒子>
上記(メタ)アクリル粒子は、(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマー(a)を重合させて得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)からなる粒子である。
(メタ)アクリル粒子の形状は、粒状であれば特に制限されない。
また、(メタ)アクリル粒子の平均粒子径は、例えば、0.01〜0.6μmとすることができる。なお、平均粒子径は、粒度径分布測定機(Nanotrac UPA−EX150、日機装社製)を用いて測定することができる。
【0014】
上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に由来する繰り返し単位(A1)と、ヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有重合性モノマー(a2)に由来する繰り返し単位(A2)と、アミノ基を有するアミノ基含有重合性モノマー(a3)に由来する繰り返し単位(A3)と、アルコキシシリル基を有するアルコキシシリル基含有重合性モノマー(a4)に由来する繰り返し単位(A4)とを有し、かつ、上記アミノ基含有重合性モノマー(a3)が有する上記アミノ基がリン酸類およびホスホン酸類からなる群から選択される少なくとも一種の酸成分でイオン化されている、自己乳化型のポリマーである。
以下、各繰り返し単位を構成する各モノマーについて詳述する。
【0015】
〈(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)〉
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)は、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルである。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)において、エステル結合に結合するアルキル基(脂肪族炭化水素基)は特に制限されない。直鎖状、分岐状若しくは環状のいずれか、又はこれらの組合せであってもよい。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)としては、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらのうち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0017】
本発明においては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b1)としては、上記で例示したものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
2種以上を併用する際の組み合わせとしては、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」とも略す。)とアクリル酸−2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」とも略す。)との組合せが好ましい。
ここで、アクリル酸−2−エチルヘキシルに対するメタクリル酸メチルのモル比(MMA/2EHA)が、1.470〜2.310であることが好ましく、1.650〜2.030がより好ましい。
【0018】
〈ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a2)〉
ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a2)は、ヒドロキシ基と重合性官能基としての(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。
ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a2)1分子が有するヒドロキシ基は、1個又は複数とすることができる。上記ヒドロキシ基は1個であることが好ましい。
ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a2)1分子が有する(メタ)アクリロイル基は、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基であってもよい。
ヒドロキシ基と(メタ)アクリロイル基とは有機基(例えば、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基)を介して結合することが好ましい態様の1つとして挙げられる。有機基(ヘテロ原子、炭化水素基)は特に制限されない。
【0019】
ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a2)としては、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(以下、「HEMA」とも略す。)が好ましい。
【0020】
本発明においては、ウレタン防水材との耐水接着力がより向上する理由から、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に由来する繰り返し単位(A1)に対する上記ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a2)に由来する繰り返し単位(A2)のモル比(A2/A1)が0.1〜0.5を満たしていることが好ましく、0.10〜0.30を満たしていることがより好ましい。
そのため、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に対する上記ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a2)のモル比(a2/a1)についても、0.1〜0.5であることが好ましく、0.10〜0.30であることがより好ましい。
【0021】
〈アミノ基含有重合性モノマー(a3)〉
アミノ基含有重合性モノマー(a3)は、アミノ基と重合性官能基としての(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。
ここで、アミノ基とは、第1級のアミノ基(−NH
2)、第2級のアミノ基(−NHR)、および、第3級のアミノ基(−NR
2)のいずれであってもよいが、第3級のアミノ基であることが好ましい。
【0022】
アミノ基含有重合性モノマー(a3)としては、具体的には、例えば、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(以下、「DMAEMA」とも略す。)、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(以下、「DEAEMA」とも略す。)が好ましい。
【0023】
本発明においては、エマルジョンの貯蔵安定性が向上する理由から、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に由来する繰り返し単位(A1)に対する上記アミノ基含有重合性モノマー(a3)に由来する繰り返し単位(A3)のモル比(A3/A1)が0.03〜0.3を満たしていることが好ましく、0.05〜0.20を満たしていることがより好ましい。
そのため、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に対する上記アミノ基含有重合性モノマー(a3)のモル比(a3/a1)についても、0.03〜0.3であることが好ましく、0.05〜0.20であることがより好ましい。
【0024】
〈アルコキシシリル基含有重合性モノマー(a4)〉
アルコキシシリル基含有重合性モノマー(a4)は、アルコキシシリル基と重合性官能基としての(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。
【0025】
アルコキシシリル基含有重合性モノマー(a4)としては、具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランが好ましく用いられる。
【0026】
本発明においては、無機系硬質素材との耐水接着力がより向上し、エマルジョンの貯蔵安定性が良好となる理由から、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に由来する繰り返し単位(A1)に対する上記アルコキシシリル基含有重合性モノマー(a4)に由来する繰り返し単位(A4)のモル比(A4/A1)が0.01〜0.1を満たしていることが好ましく、0.03〜0.07を満たしていることがより好ましい。
そのため、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)に対する上記アルコキシシリル基含有重合性モノマー(a4)のモル比(a4/a1)についても、0.01〜0.1であることが好ましく、0.03〜0.07であることがより好ましい。
【0027】
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、上述したモノマー(a1)〜(a4)に由来する繰り返し単位(A1)〜(A4)以外に、他のモノマー、すなわち、エチレン性不飽和結合を有する化合物に由来する繰り返し単位を有していてもよい。
上記エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、オレフィン;スチレンのようなビニル性芳香族炭化水素化合物;などが挙げられる。
なお、上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、カルボキシ基を含む繰り返し単位を有していないことが好ましい。
【0028】
上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、アミノ基含有重合性モノマー(a3)に由来する繰り返し単位(A3)において、アミノ基がリン酸類およびホスホン酸類からなる群から選択される少なくとも一種の酸成分でイオン化されている、自己乳化型のポリマーである。
【0029】
リン酸類としては、具体的には、例えば、リン酸(H
3PO
4)、亜リン酸等の無機リン酸;ポリリン酸、ピロリン酸等のリン酸重合体;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム等の無機リン酸塩;モノメチルリン酸、ジメチルリン酸、トリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリフェニルリン酸等のリン酸エステル類;等が挙げられる。
ホスホン酸類としては、具体的には、例えば、アミノメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸(C
6H
7O
3P)などが挙げられる。
これらのうち、リン酸類が好ましく、リン酸がより好ましい。
【0030】
本発明においては、上述した酸成分の含有量は、上記アミノ基含有重合性モノマー(a3)に対するモル比で0.2〜1.3となる範囲であることが好ましく、0.5〜1.0となる範囲であることがより好ましい。
【0031】
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、耐水接着性がより良好となる理由から、10,000以上が好ましく、10,000〜100,000がより好ましい。
なお、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で表される重量平均分子量である。
【0032】
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子を構成する(メタ)アクリル系ポリマー(A)の調製方法は特に限定されず、例えば、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)、ヒドロキシ基含有重合性モノマー(a2)、アミノ基含有重合性モノマー(a3)およびアルコキシシリル基含有重合性モノマー(a4)を、AIBN(2,2′−アゾビスイソブチロニトリル)のような重合開始剤の存在下で重合させることによって製造することができる。
【0033】
本発明においては、上記(メタ)アクリル粒子の含有量は、プライマー組成物の総質量に対して15質量%以上60質量%以下であり、30質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
【0034】
〔酸成分〕
本発明のプライマー組成物は、上記(メタ)アクリル系ポリマー(A)のアミノ基のイオン化に用いられる酸成分の一部が、組成物中に遊離して含有していてもよい。
【0035】
〔添加剤〕
本発明のプライマー組成物は、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、上述した(メタ)アクリル系エマルジョン以外のエマルジョン、充填剤、顔料、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、難燃剤、触媒、消泡剤、増粘剤、分散剤、有機溶剤などが挙げられる。
【0036】
〔固形分〕
本発明のプライマー組成物は、固形分が15質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが更に好ましい。
【0037】
〔製造方法〕
本発明のプライマー組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上述した(メタ)アクリル系エマルジョンおよび酸成分、ならびに、任意成分を混合する方法が挙げられる。
【0038】
〔用途〕
本発明のプライマー組成物は、下地と防水材とを密着させるプライマー組成物として使用することができる。
防水材としては、例えば、シリコーン系、変成シリコーン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、ポリイソブチレン系防水材が挙げられる。なかでも、ウレタン防水材、特に、建築用ウレタン防水材に好適に用いることができる。
また、下地としては、例えば、無機系硬質素材が挙げられ、具体的には、モルタル、ガラス、シリコーンハードコート、セラミック、コンクリート、磁器、金属などが挙げられる。
【0039】
〔使用方法〕
本発明のプライマー組成物を用いて下地と防水材とを密着させる方法としては、例えば、まず、本発明のプライマー組成物を下地に塗布し、20〜28℃の条件下で乾燥させる。本発明のプライマー組成物から形成されるプライマー層は、その中に水が残留していても、下地と防水材との密着性に優れるので、本発明のプライマー組成物を使用する場合、その乾燥時間を短くすることができる。また、プライマーの乾燥時間は25〜40分とすることができる。
次に、乾燥後の下地の上に、防水材を設ける。防水材が液状である場合は防水材を上記乾燥後の下地の上に流し込み、防水材がシート状である場合はシートを上記乾燥後の下地の上に敷いて、その後、25℃、45%RHの条件下で3〜5日間養生させることによって、下地と防水材とを密着させることができる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
〔(メタ)アクリル系ポリマーの調製〕
下記表1に示す、酸成分および塩基成分以外の各成分を同表に示す量(モル比)で有機溶媒(MEK)中に添加し、撹拌機で混合しながら80℃の条件下でラジカル重合させ、反応開始から5時間後に重合を停止し、(メタ)アクリル系ポリマーを調製した。
【0042】
下記表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
<モノマー(a1)>
・MMA:メチルメタクリレート(分子量:100.1)
・2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(分子量:184.3)
<モノマー(a2)>
・HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(分子量:130.1)
<モノマー(a3)>
・DMAEMA:2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(分子量:157.2)
・DEAEMA:2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(分子量:185.3)
<モノマー(a4)>
・KBE−502:γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(分子量:260.4、信越化学工業社製)
<他のモノマー>
・MMA:メチルメタクリレート
<酸成分>
・H
3PO
4:リン酸(分子量:98.0)
・C
6H
7O
3P:フェニルホスホン酸(分子量:158.1)
・CH
3COOH:酢酸(分子量:60.1)
<塩基成分>
・TEA:トリエチルアミン
<重合開始剤>
・AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(分子量:164.2)
【0043】
〔実施例1〜7および比較例1〜5〕
上記のとおり調製された各(メタ)アクリル系ポリマーと、下記表1中の酸成分または塩基成分とを同表に示す量(モル比)で混合し、プライマー組成物を調製した。
ここで、プライマー組成物を調製する際、組成物全体に対する(メタ)アクリル粒子の含有量(質量%)が30質量%となるように、組成物に適宜蒸留水を添加した。
【0044】
〔評価〕
<試験片の調製>
各プライマー組成物を、被着体であるモルタル(縦50mm×横50mm、パルテック社製)上に、刷毛を用いて、50g/m
2の膜厚となるように塗布し、25℃で3時間乾燥させてプライマー層とした。次に、上記プライマー層の上にウレタン防水材(商品名ハマタイト アーバンルーフ NX、横浜ゴム株式会社製、ウレタン防水材)を厚さ3mmとなるように流し込み、25℃、45%相対湿度の条件下で3日間ウレタン防水材を硬化させ、試験片を得た。
【0045】
<常態試験(接着性)>
試験片のウレタン防水材の端部を手でつかみ、23℃の条件下で、試験片からウレタン防水材を180℃の角度で剥離する常態剥離試験を行った。
上記常態剥離試験の結果を下記の評価基準で評価した。結果を下記表1に示す。
試験後の接着界面の破壊形態が全てプライマーの凝集破壊(CF100)であった場合、接着性に非常に優れると評価してこれを「A」と表示した。なお「CF」の後の数値は、接着が破壊した面積全体に対する凝集破壊(CF)が占める面積の百分率である(以下同様)。
破壊形態がCF80以上100未満であった場合、接着性にやや優れると評価してこれを「B」と表示した。
破壊形態がCF60以上80未満であった場合、接着性がやや劣ると評価してこれを「C」と表示した。
【0046】
<耐水試験(耐水接着性)>
試験片を25℃の水に1週間浸漬させた後、水中から取り出した。
次いで、試験片のウレタン防水材の端部を手でつかみ、23℃の条件下で、試験片からウレタン防水材を180℃の角度で剥離する耐水剥離試験を行った。
上記耐水剥離試験の結果を下記の評価基準で評価した。結果を下記表1に示す。
耐水試験後の接着界面の破壊形態が全てプライマーの凝集破壊(CF100)であった場合、耐水性に非常に優れると評価してこれを「A」と表示した。なお「CF」の後の数値は、接着が破壊した面積全体に対する凝集破壊(CF)が占める面積の百分率である(以下同様)。
破壊形態がCF80以上100未満であった場合、耐水性にやや優れると評価してこれを「B」と表示した。
破壊形態がCF60以上80未満であった場合、耐水性がやや劣ると評価してこれを「C」と表示した。
ウレタン防水材が耐水性評価用試験片から容易に剥がれた、又は、破壊形態がCF60未満であった場合、耐水性が悪いと評価してこれを「D」と表示した。
【0047】
【表1】
【0048】
上記表1に示す結果から明らかなように、酸成分として、リン酸類またはホスホン酸類を用いない場合、耐水接着性が劣ることが分かった(比較例1および2)。
また、ヒドロキシ基含有重合性モノマーを用いずに(メタ)アクリル系ポリマーを調製した場合は、接着性および耐水接着性がいずれも劣ることが分かった(比較例3)。
また、アルコキシシリル基含有重合性モノマーを用いずに(メタ)アクリル系ポリマーを調製した場合は、耐水接着性が劣ることが分かった(比較例4)。
また、酸成分に代えて、塩基成分を用いて自己乳化型とした(メタ)アクリル系ポリマーを調製した場合は、耐水接着性が劣ることが分かった(比較例5)。
【0049】
これに対し、(メタ)アクリロイル基を有する所定の重合性モノマーを重合させ、所定の酸成分を用いて自己乳化型とした(メタ)アクリル系ポリマーからなる(メタ)アクリル粒子を含有する(メタ)アクリル系エマルジョンを配合したプライマー組成物は、接着性および耐水接着性がいずれも良好となることが分かった(実施例1〜7)。