特許第6834645号(P6834645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834645
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】防水コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
   H01R13/52 301E
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-55346(P2017-55346)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-160315(P2018-160315A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前岨 宏芳
(72)【発明者】
【氏名】一尾 敏文
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−504847(JP,A)
【文献】 特開2013−062056(JP,A)
【文献】 特開平06−349541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末部に接続された端子金具が内部に収容されるとともに後方に開口する筒状部が後部に設けられているハウジングと、
前記筒状部に嵌め入れられ、前記筒状部の内側を通って後方に引き出される前記電線の外周面に液密状に密着するとともに前記筒状部の内周面に液密状に密着するゴム栓と、
前記ゴム栓の後側に取り付けられて前記ゴム栓の離脱を防ぐゴム栓ホルダと、を有し、
前記ゴム栓ホルダは、前記ゴム栓の後面と対向する後壁と、前記筒状部の後端部の外周面に被さる周壁と、を有し、
前記ハウジング及び前記ゴム栓ホルダは、互いに前後方向に係止して前記ゴム栓ホルダの離脱を防ぐロック構造を有し、
前記ゴム栓は、同ゴム栓の外周面に突設されて前記筒状部の最も後端に位置する面と前記ゴム栓ホルダの後壁との間に配される鍔部と、前記ゴム栓ホルダの後壁に形成された貫通孔に嵌合する嵌合部と、を有し、
前記鍔部は、前方に突出して前記筒状部の後端部に当接する突条部を有し、
前記周壁は、前記後壁から前方に突出し、前記鍔部の外周面及び前記筒状部の外周面に直接面しており、
前記筒状部の後端部と前記突条部との当接面の少なくとも一方に、前記前後方向に対して傾斜した傾斜面が形成されている防水コネクタ。
【請求項2】
前記傾斜面が、前記筒状部の後端部に形成され、前記筒状部の後端部のうち外周側の縁に沿って設けられている請求項1に記載の防水コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタ内部への水の浸入が防止される防水コネクタが知られている。例えば下記特許文献1に記載の防水コネクタは、ハウジングの後部に設けられた筒状部にゴム栓が嵌め込まれている。ゴム栓は、筒状部の内側を通って後方に引き出されている電線の外周面に液密状に密着するとともに、筒状部の内周面に液密状に密着する。ゴム栓の後側には、ゴム栓の離脱を防ぐゴム栓ホルダが取り付けられている。ゴム栓ホルダは、ゴム栓の後面と対向する後壁と、ハウジングの外面に突設された係止突起に係止可能な弾性係止片とを備えている。係止突起と弾性係止片とが前後方向(ゴム栓ホルダの離脱方向)に係止することにより、ゴム栓ホルダの離脱が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−28073公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構成では、筒状部の後端部とゴム栓ホルダの後壁との間に隙間が生じる虞があり、この隙間に水がたまると、毛細管現象でコネクタ内部に水が引き込まれる懸念が生じる。このような懸念が生じることは、防水コネクタの防水性を高める上で望ましくない。
【0005】
そこで、ゴム栓に、筒状部の後端部とゴム栓ホルダの後壁との間に挟み込まれる部分(挟持部と称する)を設けることが考えられる。ゴム栓の外周面に挟持部を突出して設けることにより、この挟持部が筒状部の後端部とゴム栓ホルダの後壁とに挟み込まれて、両者に弾性的に密着し、筒状部の後端部とゴム栓ホルダの後壁との間の隙間は塞がれると思われる。
【0006】
しかしながら、このような構成では、挟持部の弾発力によって、ゴム栓ホルダの後壁が後向き(離脱方向)に押圧された状態になる。ゴム栓ホルダが過度の力で離脱方向に押圧されると、係止突起と弾性係止片との係止面に過度の力が作用し続けることになるので望ましくない。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ゴム栓ホルダが過度の力で離脱方向に押圧されることを防ぎつつ、防水性を高めることが可能な防水コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の防水コネクタは、電線の端末部に接続された端子金具が内部に収容されるとともに後方に開口する筒状部が後部に設けられているハウジングと、前記筒状部に嵌め入れられ、前記筒状部の内側を通って後方に引き出される前記電線の外周面に液密状に密着するとともに前記筒状部の内周面に液密状に密着するゴム栓と、前記ゴム栓の後側に取り付けられて前記ゴム栓の離脱を防ぐゴム栓ホルダと、を有し、前記ゴム栓ホルダは、前記ゴム栓の後面と対向する後壁を有し、前記ハウジング及び前記ゴム栓ホルダは、互いに前後方向に係止して前記ゴム栓ホルダの離脱を防ぐロック構造を有し、前記ゴム栓は、同ゴム栓の外周面に突設されて前記筒状部の後端部と前記ゴム栓ホルダの後壁との間に配される鍔部を有し、前記鍔部は、前方に突出して前記筒状部の後端部に当接する突条部を有し、前記筒状部の後端部と前記突条部との当接面の少なくとも一方に、前記前後方向に対して傾斜した傾斜面が形成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鍔部及び突条部によって、筒状部の後端部とゴム栓ホルダの後壁との間の隙間が塞がれるから、防水性を高めることができる。また、筒状部の後端部と突条部との当接面の少なくとも一方に形成された傾斜面によって、鍔部及び突条部の弾発力が前後方向に対して交差する方向に分散されるので、ゴム栓ホルダが過度の力で離脱方向に押圧されることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施例におけるコネクタであって、相手側コネクタとの正規嵌合状態を示す断面図
図2】コネクタを示す分解斜視図
図3】ハウジングを示す斜視図
図4】ゴム栓を示す斜視図
図5】前方から見たコネクタを示す斜視図
図6】後方から見たコネクタを示す斜視図
図7】コネクタを示す平面図
図8】コネクタを示す底面図
図9】コネクタを示す側面図
図10】コネクタを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
本発明の防水コネクタは、前記傾斜面が、前記筒状部の後端部に形成され、前記筒状部の後端部のうち外周側の縁に沿って設けられているものとしてもよい。このような構成によれば、傾斜面に当接した突条部が外側へ逃げることができる。
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した一実施例について、図1図10を参照しつつ詳細に説明する。
本実施例における防水コネクタ(以後、単にコネクタCと称する)は、シールドケーブル(電線)10の端末部に接続されるシールドコネクタである。コネクタCは、例えば電気自動車やハイブリット自動車などの車両に搭載される通信用のコネクタであり、バックモニタカメラなどの車載カメラモジュールに設けられた相手側コネクタ80と接続される。
【0013】
以下、各構成部材において、両コネクタC,80における嵌合面側(コネクタCにおいては図1の左側、相手側コネクタ80においては図1の右側)をそれぞれ前方とし、また、図1の上側(両コネクタC,80のロック構造が設けられている側)を上方、下側を下方として説明する。
【0014】
シールドケーブル10は、高速通信が可能なケーブルであって、信号線としての複数の電線11と、電線11を一括して包囲するシールド部材12と、シールド部材12の外周を覆う絶縁性のシース13とを有している。シールド部材12としては、例えば金属素線を編み込んだ編組部材や、アルミ箔等の金属箔を用いることができる。
【0015】
コネクタCは、シールドケーブル10の端末部に接続されたシールド端子(端子金具)20が内部に収容されるハウジング30を備えている。
シールド端子20は、コネクタCと相手側コネクタ80との正規嵌合時に、後述する相手側シールド端子83のタブ部84が挿入されて接続される雌型の端子金具である。シールド端子20は、各電線11の端末部に接続された内導体21と、内導体21を収容する誘電体22と、誘電体22の外面を覆う外導体23とを備えている(図2参照)。内導体21は、半田付けにより各電線11の端末部に固着されている。誘電体22は、絶縁性の合成樹脂材により形成され、複数の内導体21を収容可能とされている。内導体21は、上下方向に複数段(本実施例では2段)にわけて配され、各段に複数(本実施例では3個)が並べられている。外導体23は、導電性の金属板であって、誘電体22の上面側を覆う上側シェル24と、下面側を覆う下側シェル25とを有している。上側シェル24と下側シェル25とは上下方向に合体される。外導体23の後端部は、シールドケーブル10の端末部において露出されたシールド部材12の外周面に沿って圧着されている。
【0016】
ハウジング30は、絶縁性の合成樹脂製であって、シールド端子20が収容される端子収容部31と、端子収容部31の外周を包囲する外筒部32とを備えている。端子収容部31と外筒部32との間の空間は、相手側コネクタ80のフード部82が嵌合される嵌合空間33とされている。端子収容部31と外筒部32とは繋ぎ部34によって一体に連結されている。嵌合空間33の奥端部には、相手側コネクタ80とコネクタCとの嵌合部を液密状にシールするゴムリング35が嵌着されている。
【0017】
端子収容部31には、シールド端子20に係止してシールド端子20を抜け止めする端子係止部36が設けられている。端子係止部36は、前端が自由端の片持ち状をなし、シールド端子20の外導体23に係止する。
【0018】
ハウジング30の上面には、相手側コネクタ80とコネクタCとを正規の嵌合状態にロックするロックアーム37が設けられている。また、ロックアーム37の両側には、一対の保護壁38が立ち上がっている。保護壁38は、繋ぎ部34よりも後側に突出して設けられ、ロックアーム37の後端までを覆っている。
【0019】
ハウジング30の後部には、端子収容部31に連なって後方に開口した円筒形状をなす筒状部39が設けられている。筒状部39は、端子収容部31から後側に引き出されているシールドケーブル10を包囲する。
【0020】
筒状部39の内側には、ゴム栓50が収容されている。筒状部39の内周面のうちゴム栓50が密着する部分は凹凸のない円弧面とされている(図3参照)。また、筒状部39の外周面の後端部(一対の保護壁38よりも後側の部分)は、後述するゴム栓ホルダ60の周壁62が被さる部分とされている。
【0021】
ハウジング30には、後述するゴム栓ホルダ60の離脱を防ぐロック構造を構成するロック突起41が設けられている(図10参照)。ロック突起41は、筒状部39の外周面に突設されている。ロック突起41は、筒状部39の幅方向(径方向)の両側に一対が設けられている。一対のロック突起41は、筒状部39の中心軸を基準に対称とされている。
【0022】
ロック突起41の前面は、ゴム栓ホルダ60のロック片66が係止するハウジング側係止面42とされている。ハウジング側係止面42は、前後方向に対して直交する切り立った面とされている。ロック突起41の後面は、ロック片66の乗り上がりを誘導する誘導面43とされている。誘導面43は、ロック突起41の後端から前方に向かって次第に突出寸法が増すように傾斜している。
【0023】
ハウジング30の後端部(筒状部39の後端部)には、前後方向に対して傾斜した傾斜面(以後、ハウジング側傾斜面44と称する)が形成されている。ハウジング側傾斜面44については、後ほど詳しく説明する。
【0024】
コネクタCは、筒状部39に嵌め入れられるゴム栓50を有している。ゴム栓50は、シリコンゴムなどのゴム製であって、筒状部39の内側を通って後方に引き出されるシールドケーブル10の外周面に液密状に密着するとともに筒状部39の内周面に液密状に密着する。ゴム栓50は、全体としてシールドケーブル10の外形に沿った円筒形状をなし、ゴム栓50の略中心部には、シールドケーブル10が挿通される挿通孔51が形成されている。挿通孔51の内周面は、ゴム栓50の全長に渡り略同形の円形状をなしている。
【0025】
ゴム栓50は、ハウジング30の筒状部39に嵌合する本体部52と、後述するゴム栓ホルダ60の貫通孔63に嵌合する嵌合部53とを備えている。
本体部52の外周面には、複数の外周リップ部54が突設されている。外周リップ部54は、筒状部39の内周面に弾性的に密着する。また、本体部52の内周面には、複数の内周リップ部55が突設されている。内周リップ部55は、シールドケーブル10の外周面に弾性的に密着する。
【0026】
嵌合部53は、ゴム栓ホルダ60の貫通孔63に整合した円筒状をなしている。嵌合部53の外径寸法は、本体部52の外径寸法よりも一回り小さくされている。嵌合部53は、後述するゴム栓ホルダ60の貫通孔63を貫通して後壁61よりも後側に突出する。
【0027】
本体部52と嵌合部53との間には、筒状部39の後端部とゴム栓ホルダ60の後壁61との間に配される鍔部56が設けられている。鍔部56については、後ほど詳しく説明する。
【0028】
コネクタCは、ゴム栓50の後側に取り付けられてゴム栓50の離脱を防ぐゴム栓ホルダ60を有している。ゴム栓ホルダ60は、合成樹脂製であって、全体として筒状部39に被さるキャップ状をなしている。
【0029】
ゴム栓ホルダ60は、ゴム栓50の後面(鍔部56の後面)と対向する後壁61と、筒状部39の外周面を覆う周壁62とを備えている。後壁61は、円環状をなし、中心部には、シールドケーブル10を遊挿状態で通す貫通孔63が形成されている。後壁61は、前後方向に対して直交する壁面を有し、鍔部56の後面を覆っている。
【0030】
周壁62は、後壁61の外周縁から前方に突出している。周壁62は、筒状部39の後端部に外嵌可能な円筒状をなし、概ね筒状部39の全周を覆う。周壁62は、筒状部39の上面側を覆う上面壁64と(図7参照)、筒状部39の下面側を覆う下面壁65とを有している(図8参照)。上面壁64は、保護壁38の後端近傍まで覆っている。下面壁65は、上面壁64よりも後壁61からの突出寸法が大きくされ、外筒部32の後端近傍まで覆っている。下面壁65には、筒状部39の外周面に突設されたリブ46が差し込まれる溝65Aが、前後方向に細長い形状で形成されている。
【0031】
ゴム栓ホルダ60には、ゴム栓ホルダ60の離脱を防ぐロック構造を構成するロック片66が設けられている(図9参照)。ロック片66は、前端が自由端である片持ち状をなし、ハウジング30のロック突起41に対応した位置(ゴム栓ホルダ60の幅方向における両端)に一対が設けられている。ロック片66は、上面壁64と下面壁65との間に設けられ、後壁61から前方へ突出している。ロック片66の内面は、図2に示すように、筒状部39の外周面に沿う円弧面とされている。
【0032】
ロック片66は、前後方向に長い一対のアーム部67を有し、一対のアーム部67の前端部に、ロック突起41に係止するロック部68が渡されている。ロック部68の後面は、図10に示すように、ハウジング側係止面42に係止するホルダ側係止面69とされている。ホルダ側係止面69は、前後方向に対して直交する面とされている。
【0033】
さて、ゴム栓50は、図10に示すように、同ゴム栓50の外周面に突設された鍔部56と、鍔部56から前方に突出して筒状部39の後端部に当接する突条部57とを有している。鍔部56は、ゴム栓50の前後方向における中心よりも後側に寄った位置に設けられている。鍔部56は、ゴム栓50の外周面からゴム栓50の軸方向に対して直交方向に突出し、ゴム栓50の軸方向に対して直交する板面を有している。
【0034】
鍔部56は、ゴム栓50の全周に連続して設けられ、ゴム栓50の外周面からの突出寸法は全周において一定とされている。鍔部56は、外周リップ部54よりも外側に突出している。鍔部56は、鍔部56の厚さ寸法(前後方向の寸法)は、全周において一定とされている。
【0035】
突条部57は、鍔部56の前面に突設されている。突条部57は、鍔部56の全周に連続して設けられ、正面から見ると全周が閉じた円環状をなしている。突条部57は、鍔部56の外周縁に沿って設けられている。突条部57は、鍔部56の突出方向(ゴム栓50の径方向)における略半分の領域に形成されている。なお、鍔部56の後面は、凹凸の無い平坦な面とされている。
【0036】
筒状部39の後端部と突条部57との当接面には、図10に示すように、前後方向に対して傾斜したハウジング側傾斜面44及びゴム栓側傾斜面58が形成されている。
【0037】
ハウジング側傾斜面44は、筒状部39の後端部のうち外周側の縁に沿って設けられている。ハウジング側傾斜面44は、筒状部39の外周縁に沿って全周にわたり連続している。ハウジング側傾斜面44は、後端から前方に向かって次第に筒状部39の外径寸法が大きくなるように傾斜し、言い換えると、ハウジング側傾斜面44に後方から当接した突条部57を前方に向かって外側に滑らせるような傾斜をなしている。ハウジング側傾斜面44の幅寸法(筒状部39の径方向における寸法)は、全周にわたり一定とされている。なお、筒状部39の後端部の内周縁には、前方に向かって内径寸法が小さくなるように傾斜したテーパ部45が形成されている。
【0038】
ゴム栓側傾斜面58は、突条部57のうち径方向の内側の面(内周面)に形成されている。ゴム栓側傾斜面58は、突条部57の内周面に沿って全周にわたり連続している。ゴム栓側傾斜面58は、ハウジング側傾斜面44と同じ向きで傾斜し、言い換えると、後端から前方に向かって次第に突条部57の内径寸法が大きくなるように傾斜している。ゴム栓側傾斜面58とハウジング側傾斜面44とは傾斜角が同等とされている。ゴム栓側傾斜面58の幅寸法(ゴム栓50の径方向における寸法)は、ハウジング側傾斜面44の幅寸法よりも大きくされている。言い換えると、ハウジング側傾斜面44の前後方向の寸法よりもゴム栓側傾斜面58の前後方向の寸法が大きくされている。なお、突条部57の外周面は、鍔部56の径方向における端に位置し、ゴム栓50の軸方向に平行な面とされている。
【0039】
相手側コネクタ80は、コネクタCと同様の構成を有するシールドコネクタである。相手側コネクタ80は、コネクタCと同様に、相手側シールドケーブル86の端末部に接続された相手側シールド端子83が内部に収容される相手側ハウジング81を有し、相手側ハウジング81の後部には、後方に開口する筒状部89が設けられている。
【0040】
相手側シールド端子83は、前方に突出するタブ部84を有する雄型の端子金具である。相手側ハウジング81の前部には、前方に開口してコネクタCの嵌合空間33に嵌合するフード部82が設けられている。相手側ハウジング81の上面には、ロックアーム37が係止するロック受け部85が突設されている。
【0041】
筒状部89には、相手側シールドケーブル86の外周面に液密状に密着するとともに筒状部89の内周面に液密状に密着する相手側ゴム栓87が嵌め入れられ、相手側ゴム栓87の後側には、相手側ゴム栓87の離脱を防ぐ相手側ゴム栓ホルダ88が取り付けられている。相手側ハウジング81及び相手側ゴム栓ホルダ88は、コネクタCと同様、互いに前後方向に係止して相手側ゴム栓ホルダ88の離脱を防ぐロック構造を有している。
【0042】
相手側ゴム栓87は、同ゴム栓87の外周面に突設されて筒状部89の後端部と相手側ゴム栓ホルダ88の後壁88Aとの間に配される鍔部87Aを有し、鍔部87Aは、前方に突出して筒状部89の後端部に当接する突条部87Bを有している。筒状部89の後端部と突条部87Bとの当接面には、前後方向に対して傾斜したハウジング側傾斜面89A及びゴム栓側傾斜面87Cが形成されている。
【0043】
なお、相手側コネクタ80の相手側シールドケーブル86、相手側シールド端子83、相手側ハウジング81、相手側ゴム栓87及び相手側ゴム栓ホルダ88は、それぞれコネクタCのシールドケーブル10、シールド端子20、ハウジング30、ゴム栓50及びゴム栓ホルダ60と、基本構造が同一であるから詳細な説明は省略する。
【0044】
次に、本実施例におけるコネクタCの組み立て作業の一例を説明する。
まず、ゴム栓50及びゴム栓ホルダ60をシールドケーブル10に先通しする。ゴム栓50及びゴム栓ホルダ60を、シールドケーブル10の端末部から後方に離れた位置に配置する。
【0045】
次に、シールドケーブル10の端末部にシールド端子20を接続する。内導体21を誘電体22に収容し、各電線11の端末部において露出した導体を内導体21に半田付けする。その後、誘電体22の外周に外導体23を組み付け、シールド部材12に接続する。
【0046】
次に、シールド端子20をハウジング30に収容する。ハウジング30の端子収容部31に後方からシールド端子20を挿入すると、端子係止部36がシールド端子20に係止し、シールド端子20が抜け止めされる。
【0047】
次いで、ゴム栓50を筒状部39に嵌め入れる。シールドケーブル10に沿ってゴム栓50を移動し、本体部52を筒状部39に押し込む。外周リップ部54が弾性的に潰れて筒状部39の内周面に密着するとともに、内周リップ部55が弾性的に潰れてシールドケーブル10の外周面に密着する。鍔部56は、筒状部39の後端部に近接し、突条部57は、ハウジング側傾斜面44に被さってゴム栓側傾斜面58がハウジング側傾斜面44に沿う。
【0048】
次に、ゴム栓ホルダ60を筒状部39に嵌め付ける。シールドケーブル10に沿ってゴム栓ホルダ60を移動し、ロック片66をロック突起41に位置合わせして、ゴム栓ホルダ60の周壁62を筒状部39に外嵌し押し込む。ロック片66のロック部68がロック突起41の誘導面43の傾斜に誘導され、ロック片66が外側に弾性撓みし、やがてロック部68がロック突起41を乗り越えてロック片66が弾性復帰する。ロック部68とロック突起41とが、互いに前後方向に係止し、ゴム栓ホルダ60の離脱が防止される。
【0049】
ロック部68がロック突起41を乗り越える際には、ゴム栓ホルダ60の後壁61がゴム栓50の後面(鍔部56の後面)を押圧し、鍔部56及び突条部57が前後方向に弾性収縮し、ロック部68がロック突起41を乗り越えた後には、ゴム栓ホルダ60は、鍔部56及び突条部57の弾性復元力で若干後退する。このとき、筒状部39の後端部とゴム栓ホルダ60の後壁61との間の間隔は広がるけれども、鍔部56及び突条部57が隙間を塞いだ状態になっている。この状態では、突条部57のゴム栓側傾斜面58と筒状部39のハウジング側傾斜面89Aとが当接し、この当接面において前後方向の力が斜め方向(前後方向に対して交差する方向)に分散されている。また、突条部57はハウジング側傾斜面44に沿って若干外側に変位している。
以上により、コネクタCの組み立て作業が完了する。
【0050】
次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
本実施例のコネクタCは、シールドケーブル10の端末部に接続されたシールド端子20が内部に収容されるとともに後方に開口する筒状部39が後部に設けられているハウジング30を有し、筒状部39には、筒状部39の内側を通って後方に引き出されるシールドケーブル10の外周面に液密状に密着するとともに筒状部39の内周面に液密状に密着するゴム栓50が嵌め入れられ、ゴム栓50の後側には、ゴム栓50の離脱を防ぐゴム栓ホルダ60が取り付けられている。ゴム栓ホルダ60は、ゴム栓50の後面と対向する後壁61を有し、ハウジング30及びゴム栓ホルダ60は、互いに前後方向に係止してゴム栓ホルダ60の離脱を防ぐロック突起41及びロック片66を有し、ゴム栓50は、同ゴム栓50の外周面に突設されて筒状部39の後端部とゴム栓ホルダ60の後壁61との間に配される鍔部56を有し、鍔部56は、前方に突出して筒状部39の後端部に当接する突条部57を有している。筒状部39の後端部と突条部57との当接面には、前後方向に対して傾斜したハウジング側傾斜面44及びゴム栓側傾斜面58が形成されている。
【0051】
この構成によれば、鍔部56及び突条部57によって、ゴム栓50の後端部とゴム栓ホルダ60の後壁61との間の隙間が塞がれるから、防水性を高めることができる。また、筒状部39の後端部と突条部57との当接面に形成されたハウジング側傾斜面44及びゴム栓側傾斜面58の傾斜によって、鍔部56及び突条部57の弾発力が前後方向(ゴム栓ホルダ60の離脱方向と平行な方向)に対して交差する方向に分散されるので、ゴム栓ホルダ60が過度の力で離脱方向に押圧されることを防ぐことができる。
【0052】
また、ハウジング側傾斜面44が、筒状部39の後端部のうち外周側の縁に沿って設けられている。この構成によれば、ハウジング側傾斜面44に当接した突条部57が、筒状部39の外側へ逃げることができる。
【0053】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、突条部57が、鍔部56の外周縁に沿って設けられているが、これに限らず、突条部を、鍔部の中間部または内周縁に沿って設けてもよい。
(2)上記実施例では、コネクタCがシールドケーブル10の端末に接続されたシールドコネクタである場合を例示したが、これに限らず、コネクタは、シースで覆われていない複数の電線の束の端末に接続されたものであってもよい。このような場合には、ゴム栓は、複数の挿通孔が形成されたものとなる。
(3)上記実施例では、コネクタCがシールドケーブル10の端末に接続されたシールドコネクタである場合を例示したが、これに限らず、コネクタは、シールドのない非シールドケーブルの端末に接続されたものであってもよい。
(4)上記実施例では、コネクタCの内部にシールド端子20が収容される場合を例示したが、これに限らず、コネクタは、シールドのない端子金具が収容されるものでもよい。
(5)上記実施例では、筒状部39の後端部と突条部57との当接面の両方にハウジング側傾斜面44及びゴム栓側傾斜面58が設けられているが、これに限らず、筒状部の後端部と突条部との当接面のいずれか一方のみに傾斜面を形成してもよい。
(6)上記実施例では、ゴム栓ホルダ60の離脱を防ぐロック構造として、ロック突起41及びロック片66を例示したが、これに限らず、ロック構造は、互いに前後方向に係止するものであれば、他の構造に変更することができる。
【符号の説明】
【0054】
C…コネクタ(防水コネクタ)
10…シールドケーブル(電線)
20…シールド端子(端子金具)
30…ハウジング
39…筒状部
41…ロック突起(ロック構造)
44…ハウジング側傾斜面(傾斜面)
50…ゴム栓
56…鍔部
57…突条部
58…ゴム栓側傾斜面(傾斜面)
60…ゴム栓ホルダ
61…後壁
66…ロック片(ロック構造)
図1
図2
図3
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図10