(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1. 実施形態について]
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る車線逸脱警報装置の制御装置を説明する。なお、名称も機能も同一の部品には同一の符号を付してあり、これにより、それぞれについての詳細を繰り返さずに説明する。
【0012】
[1.1 車線逸脱警報装置について]
図1は、本実施形態に係る制御装置である電子制御ユニット20が組み込まれた車線逸脱警報装置10を搭載した車両50の一例を示す概略構成図である。
【0013】
先ず、
図1を参照して車線逸脱警報装置10について説明する。車線逸脱警報装置10は、トラック等の車両50(大型車両)に搭載されるもので、CCDカメラ11と、電子制御ユニット(以下、単に「ECU」という)20と、音響警報を行うスピーカ30と、表示警報を行う表示装置31と、を備えている。
【0014】
[1.1.1 CCDカメラについて]
CCDカメラ11は、車両50のキャブCAの前部に設けられている。CCDカメラ11は、車両50の走行車線LAを区分する路面上の白線や黄線等の車線境界線WLを撮像するとともに、撮像した画像をECU20に送出する。なお、車線境界線を検出する手段としては、CCDカメラ11に限定されず、他の公知の撮像装置、例えば、CMOSイメージセンサ等を適用してもよい。
【0015】
[1.1.2 ECU(制御装置)について]
ECU20は、車両50の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備えて構成されている。なお、ECU20は、本実施形態に係る車線逸脱警報装置の制御装置の一例でもある。従って、以下の説明では、ECU20を本実施形態に係る車線逸脱警報装置の制御装置として説明する。
【0016】
図2に示すように、ECU20は、画像処理部21と、境界線検出部22と、逸脱判定部23と、検知部24と、警報制御部25と、を一部の機能要素として備えている。これら各機能要素は、一体のハードウェアであるECU20に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0017】
画像処理部21は、CCDカメラ11から受け取った画像データにエッジ抽出等の画像処理を施すことで、走行車線LAを区分する白線や黄線等を認識するための車線境界線画像を生成する。
【0018】
境界線検出部22は、画像処理部21において得られた画像を処理して車線境界線WLを検出する。
【0019】
逸脱判定部23は、車両50が走行車線LAから、検出された車線境界線WLの外側に逸脱したか否かを判定する。また、逸脱判定部23は、車両50が走行車線LAから、検出された車線境界線WLの外側に逸脱するか否かを予測することもできる。
【0020】
検知部24は、車両50における主ブレーキ(図示省略)のON状態からOFF状態への切り換えを検知する。具体的には、検知部24は、車両50に設けられたフットブレーキセンサ(図示省略)の出力に基づいて、上記主ブレーキのON状態からOFF状態への切り換えを検知する。フットブレーキセンサは、従来から知られている各種フットブレーキセンサと同様である。このためフットブレーキセンサに関する説明は省略する。
【0021】
また、検知部24は、主ブレーキのON状態・OFF状態を検知することもできる。
【0022】
検知部24は上述の検知を所定間隔で繰り返し実行する。なお、検知部24がフットブレーキセンサの出力を取得する方法は特に限定されない。検知部24は能動的にフットブレーキセンサの出力を取得してもよいし、受動的にフットブレーキセンサの出力を受け取ってもよい。
【0023】
検知部24は上記切り換えを検知した場合には、上記切り換えを検知したことを示す信号を警報制御部25に送出する。また、検知部24は、検知した補助ブレーキのON状態・OFF状態に関する情報を警報制御部25に送出してもよい。なお、警報制御部25は、検知部24の検知結果を能動的に取得してもよい。このように、検知部24と警報制御部25との間での、検知部24の検知結果に関する情報の受け渡し方法は特に限定されない。
【0024】
警報制御部25は、逸脱判定部23により車両50が走行車線LAから逸脱したと判定されたときに警報制御部25から車線逸脱警報を出力させる。また、警報制御部25は、逸脱判定部23により車両50が走行車線LAから逸脱すると予測されたときに警報制御部25から車線逸脱警報を出力させてもよい。
【0025】
警報制御部25からの車線逸脱警報とは、警報部であるスピーカ30による音響警報および警報部である表示装置31による表示警報(例えば、文字・ランプなど)が出力される。車線逸脱警報は、音響警報および表示警報に限定されず、例えば、ステアリングホイールを振動させるような警報トルクであってもよい。
【0026】
一方、警報制御部25は、検知部24が主ブレーキのON状態からOFF状態への切り換えを検知した場合に、車線逸脱警報の出力を抑止するように制御する(以下、このような制御を「警報抑止制御」という)。警報制御部25は、例えば、上記切り換えから所定時間が経過するまで(以下、「警報抑止時間」という)上記抑止を行う。以下、車線逸脱警報の出力が抑止されている状態を警報抑止状態という。
【0027】
従って、検知部24が上記切り換えを検知した場合には、車両50が走行車線LAから逸脱したと逸脱判定部23が判定したとしても、警報抑止時間内は車線逸脱警報が出力されない。これにより、運転者が煩わしさを感じるような警報が低減される。
【0028】
ただし、警報抑止状態(つまり、警報抑止時間内)であっても、逸脱判定部23が、車両50の逸脱の程度が所定範囲(例えば、後述する警報閾値D
THよりも大きい値の警報閾値)を超えていると判定した場合には、警報制御部25は車線逸脱警報を出力するように制御してもよい。このような構成によれば、警報が必要な可能性の高い逸脱に対して警報を出力することができる。
【0029】
また、警報抑止状態(つまり、警報抑止時間内)で、検知部24が主ブレーキのON状態からOFF状態への新たな切り換えを検知した場合には、警報制御部25は車線逸脱警報の出力を抑止する時間(つまり、警報抑止時間)を延長できる。例えば、警報制御部25は、上記新たな切り換えから上記所定時間が経過するまで、警報の出力を抑止するように制御する。
【0030】
また、警報制御部25は、検知部24が上記切り換えを検知した場合に、逸脱判定部23が車両50の逸脱の判定に使用する警報閾値D
THを、上記切り換えから所定時間が経過するまで、通常よりも逸脱の判定が緩くなる値に変更してもよい。換言すれば、警報制御部25は、車線が逸脱したと通常よりも判定されにくくなる(つまり、車線逸脱警報が通常よりも出力されにくくなる)値に警報閾値D
THを変更してもよい。
【0031】
上述の変更は逸脱判定部23の逸脱判定方法に合わせて調整できる。例えば、逸脱判定部23が車両50の逸脱の有無を判定する場合には、警報閾値D
THは走行車線LAからの逸脱距離として設定されるため、警報閾値D
THを通常よりも大きい値に設定する。
【0032】
上述のように警報閾値D
THが変更された状態で車両50が逸脱したと判定された場合には、逸脱の程度が所定範囲を超えていると判断してもよい。この場合には、警報抑止時間内であっても、警報制御部25は車線逸脱警報を出力するように制御してもよい。この構成によれば、警報が必要な可能性の高い逸脱に対して警報を出力することができる。
【0033】
また、警報制御部25は、検知部24が補助ブレーキのON状態を検知している間は、車線逸脱警報を出力しないように制御してもよい。
【0034】
なお、所定時間は、予め設定された固定値に限定されず、例えば、運転状況(例えば、道路状況・車速など)との関係で適宜設定されてもよい。運転状況の一例として車両50がカーブを走行中の場合には、車両50がカーブを抜け出すまで(
図7Aの状態から
図7Cの状態となるまで)にかかる時間を所定時間としてもよい。あるいは、運転状況の別例として車両50が工事区間を走行中の場合(図示省略)には、車両50が工事区間を抜け出すまでにかかる時間を所定時間としてもよい。
【0035】
[1.2 制御動作について]
次に、上述のような車線逸脱警報装置10が行う車線逸脱警報の制御動作、および、警報抑止制御の動作について説明する。
図3は、車線逸脱警報装置10が行う車線逸脱警報の制御動作を説明するフローチャートである。
【0036】
また、
図4は、車線逸脱警報装置10が行う警報抑止制御の動作を説明するフローチャートである。なお、車線逸脱警報の制御動作および警報抑止制御の動作は、ECU20において一定周期で繰り返し実行される。
【0037】
また、
図5、6は、車両の走行場面に関する2つの例を説明する概略図である。以下の説明では、
図3、4のフローチャートによる制御動作例を、
図5、6に示す第1、2の走行場面例に当てはめて説明する。
【0038】
最初に、
図5に示す第1の走行場面例における制御動作について説明する。第1の走行場面例では、両側の車線境界線の特定が可能な状況で、車両が直線的な走行車線内を走行している。つまり、第1の走行場面例は、通常の走行状態である。
【0039】
図3に示すフローチャートでは、ステップS101で、境界線検出部22によって車線境界線WLの検出を行い、制御処理は次のステップS102に移行する。
【0040】
ステップS101から移行したステップS102では、車線境界線WLの検出が成功したか否かの判定が行われる。
【0041】
走行場面によっては両側の車線境界線WLの特定が困難な場面もある。この場合には、境界線検出部22によって車両50の両側の車線境界線WLが検出できない(ステップS102において“NO”)として、車線逸脱警報の制御処理は終了される。
【0042】
すなわち、両側の車線境界線WLが検出されない場合は、後述する車線逸脱条件が成立したか否かを判定する処理(ステップS105)がスキップされる。この結果、車線逸脱警報は出力されない。
【0043】
図5に示す第1の走行場面例は両側の車線境界線の特定が可能な状況で、車両が走行車線内を走行している。この場合、ステップS102において、境界線検出部22によって両側の車線境界線WLが検出できる(ステップS102において“YES”)ので、制御処理はステップS102からステップS103に移行する。
【0044】
ステップS102から移行したステップS103では、境界線検出部22によって検出した両側の車線境界線WLまでの離間距離が算出される。ここで、車両50に対して左側の車線境界線WLまでの離間距離D
Lが算出され、車両50に対して右側の車線境界線WLまでの離間距離D
Rが算出され、制御処理はステップS104に移行する。
【0045】
ステップS103から移行したステップS104では、検出した両側の車線境界線WLまでの離間距離D
L、D
Rを、逸脱判定部23にあらかじめ格納されている警報閾値D
THと比較する。
【0046】
具体的には、ステップS104において、離間距離D
Lまたは離間距離D
Rが警報閾値D
THより大きい場合には車線逸脱条件が成立していると判定される。一方、離間距離D
Lまたは離間距離D
Rが警報閾値D
THより小さい場合には車線逸脱条件が不成立であると判定される。
【0047】
離間距離D
Lが警報閾値D
THより大きい場合には、車両50が
図5の左側の車線境界線WLの外側へ逸脱していると判定される。一方、離間距離D
Rが警報閾値D
THより大きい場合には、車両50が
図5の右側の車線境界線WLの外側へ逸脱していると判定される。
【0048】
そして、制御処理はステップS104からステップS105に移行する。なお、警報閾値D
THは、好ましくはユーザ操作による設定変更が可能であり、例えば0.0〜0.15[m]の範囲内で変更可能である。
【0049】
ステップS104から移行したステップS105では、逸脱判定部23によって車線逸脱条件が成立しているか否かが判定される。ここで、
図5に示す第1の走行場面例では、車線逸脱条件は成立していない(ステップS105において“NO”)ので、制御処理は終了となる。この場合、車線逸脱警報は発せられない。
【0050】
次に、
図6に示す第2の走行場面例における制御動作例について説明する。第2の走行場面例では、両側の車線境界線WLの特定が可能な状況の中で、車両50が片側(右側)の車線境界線WLの外側へ逸脱を始めている。
【0051】
この場合、制御処理が、ステップS101からステップS105に進むところまでは、第1の走行場面例と同様である。
【0052】
図6に示す第2の走行場面例では、離間距離D
Rが警報閾値D
THより大きい。このため、ステップS104における比較結果は車線逸脱条件を満たしている。したがって、ステップS105では、車線逸脱条件が成立していると判定される(ステップS105において“YES”)。よって、制御処理はステップS106に移行する。
【0053】
ステップS105から移行したステップS106では、警報制御部25によって、車線逸脱警報の出力処理を行うか否かが判定される。すなわち、本実施形態の車線逸脱警報の制御動作では、ステップS105で車線逸脱条件が成立していると判定された場合でも、無条件で車線逸脱警報の出力処理が行われるわけではない。
【0054】
ここで、ステップS106で行われる判定について説明する。ステップS106において警報制御部25は、警報抑止制御により警報抑止状態となっているか否かを判定する。
【0055】
以下、
図4を参照して警報抑止制御について説明する。
図4は警報抑止制御の制御動作の一例を示すフローチャートである。本実施形態の場合、警報抑止制御は、車線逸脱警報の制御動作とは別のフローにより実施される。ただし、警報抑止制御は、
図3に示す車線逸脱警報の制御動作の一部として実施されてもよい。
【0056】
先ず、
図4に示す警報抑止制御の概要について説明する。警報抑止制御とは、検知部24が主ブレーキのON状態からOFF状態への切り換えを検知した場合に、警報制御部25が上記切り換えから所定時間が経過するまで車線逸脱警報の出力を抑止する制御である。
【0057】
具体的には、先ず、ステップS201において、検知部24は主ブレーキに設けられたブレーキセンサ(本実施形態の場合、フットブレーキセンサ)の出力情報を取得する。
【0058】
ステップS201から移行したS202では、取得したブレーキセンサの出力情報に基づいて、検知部24は、主ブレーキのON状態からOFF状態への切り換えを検知する。上記切り換えの検知方法は特に限定されない。
【0059】
ステップS202から移行したS203では、検知部24が上記切り換えを検知したか否かが判定される。
【0060】
ステップS203において、上記切り換えが検知されていないと判定された場合(ステップS203において“NO”)には、警報抑止制御は終了となる。この場合に、検知部24は、上記切り換えが検知されていないことを示す情報を警報制御部25に送出してもよい。
【0061】
ステップS203において、上記切り換えが検知されたと判定された場合(ステップS203において“YES”)には、ステップS204に移行する。
【0062】
ステップS203から移行したS204では、上記切り換えが検知されたことを示す情報が、検知部24から警報制御部25に送出される。
【0063】
上記切り換えが検知されたことを示す情報を受け取ると、ステップS205において、警報制御部25は、上記切り換えから所定時間が経過するまで車線逸脱警報の出力を抑止するように制御する。この制御により、上記切り換えから所定時間が経過するまで車線逸脱警報の出力が抑止される警報抑止状態となる。
【0064】
ステップS205において、すでに警報抑止状態である場合には、警報制御部25は、警報抑止状態を延長してもよい。すなわち、警報制御部25は、最新の上記切り換えから上記所定時間が経過するまで車線逸脱警報を出力しないように制御してもよい。
【0065】
以上のような警報抑止制御の動作は、ECU20において一定周期で繰り返し実行される。そして、警報抑止制御により警報抑止状態となっているか否かに関する情報は、一定周期で更新される。
【0066】
以上のような警報抑止制御の結果に基づいて、
図3のステップS106では、警報制御部25によって、車線逸脱警報の出力処理を行うか否かが判定される。具体的には、ステップS106において、警報抑止状態である場合には、車線逸脱警報を出力しない(つまり、ステップS106において“NO”)と判定される。この場合には、車線逸脱警報の制御処理は終了される。
【0067】
一方、ステップS106において、警報抑止状態ではない場合には、車線逸脱警報を出力する(つまり、ステップS106において“YES”)と判定される。この場合には、制御処理はステップS107に移行する。
【0068】
ステップS106から移行したS107では、車線逸脱警報が警報制御部25から出力される。そして、スピーカ30による音響警報および表示装置31による表示警報(例えば、文字・ランプなど)が出力される。
【0069】
[1.3 本実施形態の作用・効果について]
以下、本実施形態の作用・効果について説明する。先ず、運転者が主ブレーキをON状態からOFF状態に切り換えた状況では、運転者は意思を持って車両を操作していると考えられるため、車両50が走行車線LAから逸脱した場合でも警報が不要な状況が多い。これに対して本実施形態では、検知部24が主ブレーキのON状態からOFF状態への切り換えを検知した場合に、上記切り換えから所定時間が経過するまで車線逸脱警報の出力が抑止される。これにより運転者が煩わしさを感じるような警報の回数が低減される。なお、運転者が主ブレーキをON状態からOFF状態に切り換えた直後は、運転者が意思を持って減速した直後であるため、警報が抑止されても不安全になりにくい。
【0070】
[1.4 付記]
本実施形態では、ブレーキが主ブレーキである場合について説明した。ただし、ブレーキは主ブレーキに限定されず、例えば、トラックなどの大型車両に搭載された補助ブレーキであってもよい。補助ブレーキとしては、例えば、排気ブレーキ、圧縮圧解放ブレーキまたはリターダなどの各種補助ブレーキが挙げられる。ブレーキが補助ブレーキの場合には、上述の説明中の主ブレーキを補助ブレーキに読み換えればよい。