(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834661
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】スパンドレルパネル
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20210215BHJP
E04B 9/04 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
E04F13/08 A
E04B9/04 E
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-58809(P2017-58809)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-162555(P2018-162555A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2020年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115934
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 雅也
(72)【発明者】
【氏名】輪湖 潤一
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−102734(JP,A)
【文献】
特開2014−105569(JP,A)
【文献】
実開昭56−034938(JP,U)
【文献】
実開昭56−049824(JP,U)
【文献】
特開平01−163343(JP,A)
【文献】
特開昭62−133246(JP,A)
【文献】
特開2005−120583(JP,A)
【文献】
特開平06−212770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
E04B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧部と、前記化粧部の一端部に形成された係合部と、前記化粧部の他端部に形成された受部とを有し、金属製の押出型材の前記化粧部と係合部に対応する表面に合成樹脂製の被覆層が積層形成されたスパンドレルパネルであって、
前記係合部は、隣り合うスパンドレルパネルの受部に挿嵌して複数のスパンドレルパネルを係合するように形成され、
前記係合部は、前記押出型材に前記被覆層の端部小口面を隠蔽する樹脂止めリブが設けられていることを特徴とする、スパンドレルパネル。
【請求項2】
前記被覆層は、木粉を含有する合成樹脂で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のスパンドレルパネル。
【請求項3】
前記樹脂止めリブは、前記係合部の先端に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスパンドレルパネル。
【請求項4】
前記樹脂止めリブは、前記係合部に設けられている被覆層の厚みと同じ高さ寸法に構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載のスパンドレルパネル。
【請求項5】
前記係合部の裏面及び前記受部の表面側に突設され、互いに前記受部及び係合部に当接して、前記受部内での前記係合部の高さ位置を決定する、高さ調整リブを備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載のスパンドレルパネル。
【請求項6】
前記高さ調整リブは、前記係合部及び受部の先端に設けられていることを特徴とする、請求項5に記載のスパンドレルパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパンドレルパネルに関し、特に、金属製押出型材の表面に被覆層が積層形成されたスパンドレルパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の天井、外壁、内壁等にスパンドレルパネルが使用されており、例えば、特許文献1(特開平10−102734号公報)には、天片の端部に外方へ突設した係止片と、前記係止片を受け入れる係合部とを備え、係止片を隣り合うスパンドレルパネルの係合部に挿入して複数をつなぎ合わせる構造を有するスパンドレルパネルが開示されている。
【0003】
こうしたスパンドレルパネルは、押出型材で形成することも一般的に行われており、特許文献2(特開2014−105569号公報)には、押出機によって押出成形されたアルミ押出型材を、所定の長さに切断したスパンドレルパネルが開示されている。
【0004】
また、押出成型体としては、アルミニウムなどの金属からなる押出型材と、当該押出型材と一体押出成型により押出型材の表面に被覆される被覆層とを有し、該被覆層として熱可塑性合成樹脂に木粉を含有した複合被覆材を用いた一体押出成型体が広く知られている。これらの一体押出成型体は、建築用部材などにも使用されており、この構成の押出成型体をスパンドレルパネルにも適用可能である。
【0005】
一体押出成型体を用いてスパンドレルパネルを形成した場合、金属製押出型材の片面側にのみ被覆層を設けることになり、表面側の装飾性を向上させることができる。このような押出型材の表面に被覆層を積層形成したスパンドレルパネルは、一体押出成型以外の方法でも製造することができ、装飾性を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−102734号公報
【特許文献2】特開2014−105569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、押出型材の片面側に被覆層を設けたスパンドレルパネルは、長期の保管または使用、寒熱の繰り返し、水との接触などの要因により被覆層の接着性が低下し、被覆層が押出型材から剥離しやすくなるという問題を有していた。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、金属製押出型材の表面に設けられた被覆層の端部からの剥離を防止することができるスパンドレルパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成のスパンドレルパネルを提供する。
【0010】
本発明の第1態様によれば、化粧部と、前記化粧部の一端部に形成された係合部と、前記化粧部の他端部に形成された受部とを有し、金属製の押出型材の前記化粧部と係合部に対応する表面に合成樹脂製の被覆層が積層形成されたスパンドレルパネルであって、
前記係合部は、隣り合うスパンドレルパネルの受部に挿嵌して複数のスパンドレルパネルを係合するように形成され、
前記係合部は、前記押出型材に前記被覆層の端部小口面を隠蔽する樹脂止めリブが設けられていることを特徴とする、スパンドレルパネルを提供する。
【0011】
本発明の第2態様によれば、前記被覆層は、木粉を含有する合成樹脂で構成されていることを特徴とする、第1態様のスパンドレルパネルを提供する。
【0012】
本発明の第3態様によれば、前記樹脂止めリブは、前記係合部の先端に設けられていることを特徴とする、第1又は第2態様のスパンドレルパネルを提供する。
【0013】
本発明の第4態様によれば、前記樹脂止めリブは、前記係合部に設けられている被覆層の厚みと同じ高さ寸法に構成されていることを特徴とする、第1から第3態様のいずれか1つのスパンドレルパネルを提供する。
【0014】
本発明の第5態様によれば、前記係合部の裏面及び前記受部の表面側に突設され、互いに前記受部及び係合部に当接して、前記受部内での前記係合部の高さ位置を決定する、高さ調整リブを備えることを特徴とする、第1から第4態様のいずれか1つのスパンドレルパネルを提供する。
【0015】
本発明の第6態様によれば、前記高さ調整リブは、前記係合部及び受部の先端に設けられていることを特徴とする、第5態様のスパンドレルパネルを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、化粧部と係合部との表面に被覆層が設けられているため、使用時に外部に露出する面の装飾性を向上させることができ、係合部にも被覆層が設けられているため、隣り合うスパンドレルパネルの隙間から下地の押出型材が視認されることがない。また、係合部の表面に被覆層の小口面を隠蔽する樹脂止めリブが設けられているため、被覆層の設置が容易であり、被覆層の端面が保護されるので、被覆層の小口面が使用時に擦過されたり、使用時の経年劣化などによる被覆層の剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るスパンドレルパネルの使用例を示す図である。
【
図2】
図1のスパンドレルパネルの構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1のスパンドレルパネルの構成を示す断面図である。
【
図4】
図3の係合部近傍の構成を示す部分拡大断面図である。
【
図5】
図3の受部近傍の構成を示す部分拡大断面図である。
【
図6】
図1のスパンドレルパネルの係合部と受部とが連結した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態にかかるスパンドレルパネルの係合部近傍の構成を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るスパンドレルパネルについて、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係るスパンドレルパネル1の使用例を示す図である。本実施形態に係るスパンドレルパネル1は、上方から支持されている天井下地材30に取り付けて使用される。
【0020】
スパンドレルパネル1は、天井下地材30の下面(取付面30a)にビス31によって取り付けられている。このスパンドレルパネル1は、
図1に示すように、端部が互いに重合するように配設されており、天井下地材30の下面が露出しないように覆っている。
【0021】
スパンドレルパネル1は、アルミニウム製の押出型材2の表面の一部に被覆層3を積層形成したものであり、化粧部11と、前記化粧部11の一端部に形成された係合部12と、前記化粧部11の他端部に形成された受部13と、を有している。
【0022】
押出型材2はアルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス、亜鉛メッキ鋼、銅等の金属からなるものであり、建築用部材として必要な軽量性及び加工容易性の観点から好ましくアルミニウムまたはアルミニウム合金が好適である。
【0023】
被覆層3は、
図3に示すように、化粧部11と係合部12との表面に設けられている。被覆層3は、一体押出成型により形成されることが好ましい。
【0024】
被覆層3は少なくともベース樹脂および木粉を含有する樹脂層が好ましく用いられる。ベース樹脂はポリオレフィン系樹脂が好適に使用できる。ポリオレフィン系樹脂は1種類または2種類以上のα−オレフィンをモノマーとして含有する単独重合体または共重合体である。α−オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ヘキセンのような炭素原子数2〜8、好ましくは2〜6のα−オレフィンが挙げられる。好ましいα−オレフィンは、エチレン、プロピレンである。ポリオレフィン系樹脂はモノマーとしてα−オレフィン以外の他のモノマーを含有してもよい。そのような他のモノマーとして、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーが挙げられる。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂の具体例として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。好ましいポリオレフィン系樹脂はポリオレフィン、特にポリエチレン、ポリプロピレンである。
【0026】
ポリオレフィン系樹脂は、従来から公知の方法、例えば、懸濁重合法、溶液重合法等によって製造できるし、または市販品として入手することもできる。特にポリオレフィン系樹脂としてのポリオレフィンは、廃棄されたポリオレフィン製品由来の再生品を利用することもできる。不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂の市販品として、例えば、ユーメックス1010(三洋化成工業社製)等が使用できる。
【0027】
本実施形態においては、ベース樹脂にポリオレフィン系樹脂以外の他の樹脂が含有されることを妨げるものではない。他の樹脂として、例えば、アクリルニトリルブタジエンスチレン樹脂が挙げられる。
【0028】
木粉は、スギ、ヒノキ、ベイツガ等の木材、ならびにそのような木材の端材および廃材を粉砕したもの、おが屑等が好適に用いられ、その粒径は10〜500メッシュのものを用いることができるが、より好適なのは60〜100メッシュ程度である。木粉として端材および廃材を粉砕したものを用いると、環境負荷が低減されるので好ましい。
【0029】
木粉の含有量はポリオレフィン系樹脂100重量部に対して5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部である。
【0030】
被覆層3は単層型であってもよいが、2層以上の多層型であってもよい。多層型被覆層は前記した範囲内の被覆層が2層以上で一体成形されればよい。
【0031】
被覆層3の厚みは、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、接着性、外観性、生産性の観点から好ましくは0.7〜5mmである。木質感および被覆層の接着性のさらなる向上の観点から、被覆層の厚みは1〜3mm、特に1.5〜2.5mmが好ましい。被覆層が多層型の場合、それらの合計厚みが上記範囲内であればよい。
【0032】
なお、押出型材2と被覆層の間に両者間の密着性を向上させるために接着層を設けてもよい。
【0033】
化粧部11は、
図2、
図3に示すように、水平部11aと水平部の裏面側に設けられた2つの脚片11bとを有している。
【0034】
水平部11aは、取付面30aに対して平行な面を形成している。本実施形態においては、水平部11aは、押出型材2の表面に被覆層3が積層されて構成されており、上述のように被覆層に含まれる木粉により、木目様の外観を有する平板状に構成されている。
【0035】
化粧部11の裏面設けられた脚片11bは、係合部12と受部13との中間部に対称形状で一対が設けられている。この一対の脚片11bは互いに平行に設けられており、押出型材2の水平11aに相当する部分と略均等な肉厚で形成されている。
【0036】
化粧部11を構成する押出型材2の両端部には、
図4,
図5にそれぞれ示すように、被覆層3との剥離を防止するために、鈎状溝2a,2bが形成されており、被覆層3が当該溝に充填されることで,当該部位における押出型材2の表面から被覆層3が剥離することが防止される。
【0037】
係合部12及び受部13は、
図1に示すように、それぞれ隣り合うスパンドレルパネル1の受部13及び係合部12と係合するように形成されている。具体的には、化粧部11の端部から突出するように形成された係合部12の突出片12aが受部13の凹溝13aに挿入することで、係合部12が受部13に挿嵌され、隣り合うスパンドレルパネル1が連結されるように形成されている。
【0038】
係合部12の突出片12aは、押出型材2の鈎状溝2aの下端に連続して設けられた押出型材2の突出部2cの表面に、被覆層3が積層した構成となっている。被覆層3は、係合部12と化粧部11にわたって連続して形成されている。
【0039】
突出部2cは、鈎状溝2aの下端から内側及び外側に延在し、内側に伸びる基端側が下方に折り曲げられ、使用時に取付面30aと接する支持脚2dとなっている。支持脚2dは、脚片11bの下端と同じ高さレベルに設けられている。
【0040】
突出部2cの先端側は、T字状に構成され先端リブ14を有している。
図4において先端リブ14の突出部2cよりも上側部分は、突出部2cの上面に積層されている被覆層3の小口面3aを被覆し、被覆層3の剥離を防止する樹脂止めリブ2eとなっている。
【0041】
樹脂止めリブ2eは、突出部2cから被覆層3の厚み寸法と略等しい高さ寸法を有する。すなわち、突出片12aの表面側は、被覆層3と樹脂止めリブ2eの上端とが略同じ高さレベルとなるように構成される。
【0042】
一方、先端リブ14の突出部2cよりも下側部分は、係合部12及び受部13の連結時に、突出片12aと平板部13bとの間にビス止め用隙間15を形成可能な高さ調整リブ2fとなっている(
図6参照)。すなわち、突出部2cの先端側に形成された先端リブ14は、樹脂止めリブ2eと高さ調整リブ2fとが一体的に構成されている。
【0043】
受部13は、
図2及び
図5に示すように天井下地材30の取付面30aと接する平板部13bを備えている。スパンドレルパネル1を天井下地材30に固定する際には、この平板部13bにビス31を打ち込んで固定する。
【0044】
このとき、前述した脚片11bは、
図3に示すように化粧部11から取付面30aに接する脚片11bの高さと、化粧部11から取付面30aに接する受部13の平板部13bの高さとが同じ高さで設けられているため、取付面30aと接するようになっている。これにより、脚片11bによって取付姿勢が安定するように形成されている。
【0045】
平板部13bの先端は、
図5に示すように上側に折り曲げられ、係合部12及び受部13の接合時に、突出片12aと平板部13bとの間にビス止め用隙間15を形成可能な高さ調整リブ2gとなっている(
図6参照)。
【0046】
本実施形態に係るスパンドレルパネル1は、化粧部11及び係合部12の表面に被覆層3が設けられているため、使用時に外部に露出する表面の装飾性を高めることができる。すなわち、
図6に示すように、2つの隣り合うスパンドレルパネル1の隙間16からは、係合部12が視認されることとなるが当該部分に被覆層3を設けることにより、係合部12の下地である押出型材2を隠蔽することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態にかかるスパンドレルパネルによれば、係合部12の表面を被覆する被覆層3の先端側の小口面3aを隠蔽する樹脂止めリブ2eにより、当該先端位置における被覆層3の剥離を防止することができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、係合部12の表面を被覆する被覆層3は、隙間16からの視認できる範囲で設けられていればよく、係合部12の先端まで設ける必要はない。このため、樹脂止めリブ2eは、押出型材2の突出部2cの先端に設ける必要はなく、例えば、
図7に示すように、中間部分に設けることもできる。この構成により、係合部12の先端側厚み寸法が薄くなり、受部13の凹溝13aに差し込みやすくすることができる。
【0049】
また、上記実施形態では、化粧部11は、段差のない平板状の構成としたが、凹凸模様を設けてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 スパンドレルパネル
2 押出型材
2a,2b 鈎状溝
2c 突出部
2d 支持脚
2e 樹脂止めリブ
2f,2g 高さ調整リブ
3 被覆層
11 化粧部
11a 水平部
11b 脚片
12 係合部
12a 突出片
13 受部
13a 凹溝
13b 平板部
14 先端リブ
15 ビス止め用隙間
30 天井下地材
30a 取付面
31 ビス