(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補強部は、前記軸部の外周面であって、前記鍵の押圧に応じて前記軸受部の荷重を受ける第5の領域と前記回動軸を介して対向する領域の少なくとも一部から、回動軸方向において前記軸受部の外側に位置することを特徴とする請求項9に記載の鍵盤装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態における鍵盤装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率(各構成間の比率、縦横高さ方向の比率等)は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。また、以下の説明において、「回動する」は相対的な動作を意味する。例えば、「部材Aが部材Bに対して回動する」とは、固定された部材Aに対して部材Bが回動してもよく、逆に固定された部材Bに対して部材Aが回動してもよく、両者がともに回動してもよい。
【0020】
以下の説明で用いる方向(回動方向Rおよびヨーイング方向Y)について定義する。回動方向Rは、ハンマアセンブリ200の延びる方向(演奏者から見た手前から奥側方向)を軸として回動する方向に対応する。ヨーイング方向Yは、ハンマアセンブリ200を上方から見たときに左右方向に曲がる方向である。ハンマアセンブリ200のヨーイング方向Yの移動はスケール方向Sに曲がる(反る)ことに相当する。なお、ハンマアセンブリ200の回動方向Rおよびヨーイング方向Yは、鍵100の回動方向Rおよびヨーイング方向Yと同じである。
【0021】
<第1実施形態>
[鍵盤装置の構成]
図1は、第1実施形態における鍵盤装置の構成を示す図である。鍵盤装置1は、この例では、電子ピアノなどユーザ(演奏者)の押鍵に応じて発音する電子鍵盤楽器である。なお、鍵盤装置1は、外部の音源装置を制御するための制御データ(例えば、MIDI)を、押鍵に応じて出力する鍵盤型のコントローラであってもよい。この場合には、鍵盤装置1は、音源装置を有していなくてもよい。
【0022】
鍵盤装置1は、鍵盤アセンブリ10を備える。鍵盤アセンブリ10は、白鍵100wおよび黒鍵100bを含む。複数の白鍵100wと黒鍵100bとが並んで配列されている。鍵100の数は、N個であり、この例では88個である。この配列された方向をスケール方向という。白鍵100wおよび黒鍵100bを特に区別せずに説明できる場合には、鍵100という場合がある。以下の説明においても、符号の最後に「w」を付した場合には、白鍵に対応する構成であることを意味している。また、符号の最後に「b」を付した場合には、黒鍵に対応する構成であることを意味している。
【0023】
鍵盤アセンブリ10の一部は、筐体90の内部に存在している。鍵盤装置1を上方から見た場合において、鍵盤アセンブリ10のうち筐体90に覆われている部分を非外観部NVといい、筐体90から露出してユーザから視認できる部分を外観部PVという。すなわち、外観部PVは、鍵100の一部であって、ユーザによって演奏操作が可能な領域を示す。以下、鍵100のうち外観部PVによって露出されている部分を鍵本体部という場合がある。
【0024】
筐体90内部には、音源装置70およびスピーカ80が配置されている。音源装置70は、鍵100の押下に伴って音波形信号を生成する。スピーカ80は、音源装置70において生成された音波形信号を外部の空間に出力する。なお、鍵盤装置1は、音量をコントロールするためのスライダ、音色を切り替えるためのスイッチ、様々な情報を表示するディスプレイなどが備えられていてもよい。
【0025】
なお、本明細書における説明において、上、下、左、右、手前および奥などの方向は、演奏するときの演奏者から鍵盤装置1を見た場合の方向を示している。そのため、例えば、非外観部NVは、外観部PVよりも奥側に位置している、と表現することができる。また、鍵前端側(鍵前方側)、鍵後端側(鍵後方側)のように、鍵100を基準として方向を示す場合もある。この場合、鍵前端側は鍵100に対して演奏者から見た手前側を示す。鍵後端側は鍵100に対して演奏者から見た奥側を示す。この定義によれば、黒鍵100bのうち、黒鍵100bの鍵本体部の前端から後端までが、白鍵100wよりも上方に突出した部分である、と表現することができる。
【0026】
図2は、第1実施形態における音源装置の構成を示すブロック図である。音源装置70は、信号変換部710、音源部730および出力部750を備える。センサ300は、各鍵100に対応して設けられ、鍵の操作を検出し、検出した内容に応じた信号を出力する。この例では、センサ300は、3段階の押鍵量に応じて信号を出力する。この信号の間隔に応じて押鍵速度が検出可能である。
【0027】
信号変換部710は、センサ300(88の鍵100に対応したセンサ300−1、300−2、・・・、300−88)の出力信号を取得し、各鍵100における操作状態に応じた操作信号を生成して出力する。この例では、操作信号はMIDI形式の信号である。そのため、押鍵操作に応じて、信号変換部710はノートオンを出力する。このとき、88個の鍵100のいずれが操作されたかを示すキーナンバ、および押鍵速度に対応するベロシティについてもノートオンに対応付けて出力される。一方、離鍵操作に応じて、信号変換部710はキーナンバとノートオフとを対応付けて出力する。信号変換部710には、ペダル等の他の操作に応じた信号が入力され、操作信号に反映されてもよい。
【0028】
音源部730は、信号変換部710から出力された操作信号に基づいて、音波形信号を生成する。出力部750は、音源部730によって生成された音波形信号を出力する。この音波形信号は、例えば、スピーカ80または音波形信号出力端子などに出力される。
【0029】
[鍵盤アセンブリの構成]
図3は、第1実施形態における筐体内部の構成を側面から見た場合の説明図である。
図3に示すように、筐体90の内部において、鍵盤アセンブリ10およびスピーカ80が配置されている。スピーカ80は、鍵盤アセンブリ10の奥側に配置されている。このスピーカ80は、押鍵に応じた音を筐体90の上方および下方に向けて出力するように配置されている。下方に出力される音は、筐体90の下面側から外部に進む。一方、上方に出力される音は筐体90の内部から鍵盤アセンブリ10の内部の空間を通過して、外観部PVにおける鍵100の隣接間の隙間または鍵100と筐体90との隙間から外部に進む。
【0030】
鍵盤アセンブリ10の構成について、
図3を用いて説明する。鍵盤アセンブリ10は、上述した鍵100の他に、接続部180、ハンマアセンブリ200およびフレーム500を含む。鍵盤アセンブリ10は、ほとんどの構成が射出成形などによって製造された樹脂製の構造体である。フレーム500は、筐体90に固定されている。接続部180は、フレーム500に対して回動可能に鍵100を接続する。接続部180は、板状可撓性部材181、鍵側支持部183および棒状可撓性部材185を備える。板状可撓性部材181は、鍵100の後端から延在している。鍵側支持部183は、板状可撓性部材181の後端から延在している。棒状可撓性部材185が、鍵側支持部183およびフレーム500のフレーム側支持部585によって支持されている。すなわち、鍵100とフレーム500との間に、棒状可撓性部材185が配置されている。棒状可撓性部材185が曲がることによって、鍵100がフレーム500に対して回動することができる。棒状可撓性部材185は、鍵側支持部183とフレーム側支持部585とに対して、着脱可能に構成されている。なお、棒状可撓性部材185は、鍵側支持部183とフレーム側支持部585と一体となって、または接着等により、着脱できない構成であってもよい。
【0031】
鍵100は、前端鍵ガイド151および側面鍵ガイド153を備える。前端鍵ガイド151は、フレーム500の前端フレームガイド511を覆った状態で摺動可能に接触している。前端鍵ガイド151は、その上部と下部のスケール方向の両側において、前端フレームガイド511と接触している。側面鍵ガイド153は、スケール方向の両側において側面フレームガイド513と摺動可能に接触している。この例では、側面鍵ガイド153は、鍵100の側面のうち非外観部NVに対応する領域に配置され、接続部180(板状可撓性部材181)よりも鍵前端側に存在するが、外観部PVに対応する領域に配置されてもよい。
【0032】
ハンマアセンブリ200は、フレーム500に対して回動可能に取り付けられている。このときハンマアセンブリ200の軸受部220は、フレーム500の軸部520を軸受部220によって支持し、軸部520は軸受部220と摺動可能に接触する。ハンマアセンブリ200の前端部210は、鍵100におけるハンマ支持部120の内部空間において概ね前後方向に摺動可能に接触する。この摺動部分、すなわち前端部210とハンマ支持部120とが接触する部分は、外観部PV(鍵本体部の後端よりも前方)における鍵100の下方に位置する。なお、軸部520および軸受部220の接続箇所(回動機構)の構成は後で詳しく説明する。
【0033】
ハンマアセンブリ200は、回動軸よりも奥側において、金属製の錘部230が配置されている。通常時(押鍵していないとき)には、錘部230が下側ストッパ410に載置された状態であり、ハンマアセンブリ200の前端部210が、鍵100を押し戻している。押鍵されると、錘部230が上方に移動し、上側ストッパ430に衝突する。ハンマアセンブリ200は、この錘部230によって、押鍵に対して加重を与える。下側ストッパ410および上側ストッパ430は、緩衝材等(不織布、弾性体等)で形成されている。
【0034】
ハンマ支持部120および前端部210の下方には、フレーム500にセンサ300が取り付けられている。押鍵により前端部210の下面側がセンサ300を変形すると、センサ300は検出信号を出力する。センサ300は、上述したように、各鍵100に対応して設けられている。
【0035】
[ハンマアセンブリの回動機構の構成]
図4および
図5は、本発明の一実施形態におけるハンマアセンブリ200の軸受部220と軸部520の部分拡大図である。
図4は、軸受部220が軸部520に取り付けられた状態を軸部520の軸方向から示す図である。
図5(A)は、軸受部220のみを示す分解斜視図である。
図5(B)は、軸部520のみを示す分解斜視図である。回動機構900は、ハンマアセンブリ200の回動軸である軸部520、および軸部520を支持する軸受部220を含む。ここで、軸部520は補強部530を有する。なお、軸部520および補強部530の構成は後で詳しく説明する。ハンマアセンブリ200は軸受部220、接続部250、ボディ部260、および軸ストッパ部280を有する。軸受部220は、軸部520を中心として回動する方向(回動方向)において、回動軸の軸方向(スケール方向)に異なる厚さを有する軸受部220W(第1の受部)と軸受部220N(第2の受部)を含む。下記の説明において、固定された軸部520に対して軸受部220が回動する構成について説明する。ただし、説明の便宜上、軸部520がハンマアセンブリ200(軸受部220)に対して移動すると表現する場合がある。以下の実施形態は固定された軸受部220に対して軸部520が回動する構成に適用することもできる。
【0036】
軸受部220は、回動軸620を中心として回動する。この例では、回動軸620は軸部520の略中心に存在する。軸受部220には開口部630が設けられている。この開口部630の内側の領域に軸部520を支持する。ここで、開口部630の回動軸の軸方向(スケール方向)にみた断面形状は円弧であり、軸部520の回動軸の軸方向(スケール方向)にみた断面形状は円形である。開口部630と軸部520の断面形状は略同一の半径を有し、開口部630の内周面は軸部520の外周面と接触する。さらに開口部630の開口端602、612間の幅は、軸部520の直径よりも小さい。つまり、回動機構900は、軸部520と軸受部220とが回動可能に嵌合するスナップフィット構造である。換言すると、軸受部220は軸部520をスナップフィットで支持する。これによって軸部520が脱落することを防ぐことができる。また、軸受部220は、回動軸620を中心として安定して回動することができる。しかしながらこれに限定されず、軸受部220の回動軸620は、軸部520の略中心からずれていてもよい。
【0037】
しかしながらこれに限定されず、回動機構900は、軸部520と軸受部220とがスナップフィットする構造でなくてもよい。例えば、開口部630の断面形状の半径は軸部520の断面形状の半径より大きくてもよく、開口部630の開口端602、612間の幅は、軸部520の断面形状の直径よりも大きくてもよい。また、軸部520の断面形状は円形状ではなくてもよく、開口部630の断面形状は円弧ではなくてもよい。例えば、軸部520の断面形状は、半円形、扇形、凹部を有する円形状、多角形などであってもよい。この場合、開口部630の内周面は、軸部520の外周面と接していない領域があってもよい。換言すると、開口部630の内周面と、軸部520の外周面とは、回動時に荷重がかかる領域において一時的に接していればよい。軸部520に対する軸受部220の回動範囲において、開口部630の内周面が軸部520の外周面と接触する領域のスケール方向にみた断面形状は、湾曲形状であることが好ましい。回動時に荷重がかかる領域において、開口部630の内周面と軸部520の外周面との断面形状は円弧であることがより好ましい。さらに、軸部520の外周面は、回動軸620を中心とする円弧の一部であってもよい。開口部630の内周面が軸部520の外周面と接触する領域の断面形状が各々湾曲形状であることで、軸部520に対して軸受部220が滑らかに回動することができ、軸部520への応力の集中を緩和することができ、軸部520の強度および剛性を向上させることができる。
【0038】
開口部630の内周面にはさらに溝部222が設けられていてもよい。溝部222において、軸受部220は軸部520の外周面と接していない。溝部222はグリス溜めとして利用することができる。さらに、溝部222が設けられていることで、軸部520および軸受部220の接触面接を小さくすることができ、軸部520および軸受部220の回動動作における摩擦力を小さくすることができる。しかしながらこれに限定されず、溝部222はなくてもよい。
【0039】
軸受部220は可撓性を有する。軸受部220が可撓することで開口端602、612間の幅が広がる。開口端612のみが移動するように軸受部220が可撓してもよいし、開口端602、612の両方が移動するように軸受部220が可撓してもよい。ここで、開口端612付近における軸受部220の可撓方向は、軸部520と開口端612付近の軸受部220との接点の法線方向である。
【0040】
軸ストッパ部280は、開口部630に対面する位置に軸部520から離隔して配置されている。軸ストッパ部280は接続部250およびボディ部260を介して軸受部220に固定されている。接続部250はボディ部260に対して軸受部220とは反対側に設けられている。接続部250はボディ部260からボディ部260の下方に延びている。軸ストッパ部280は接続部250の下端に結合されており、接続部250から軸受部220に向かって延びている。軸ストッパ部280は、軸受部220が軸部520から脱離しようとしたときに軸部520と接触することで、軸受部220が軸部520から脱離することを防止することができる。
【0041】
軸ストッパ部280は可撓性を有しており、ボディ部260に近づく方向に可撓してもよいし、ボディ部260に近づく方向およびボディ部260から遠ざかる方向に可撓してもよい。さらに軸ストッパ部280は、軸受部220が軸部520から脱離する方向(つまり、軸部520から軸ストッパ部280に向かう方向)への可撓が抑制された構造である。つまり、軸ストッパ部280は、相対的に軸部520が軸受部220から外れる方向に移動したとき、軸ストッパ部280と軸部520との接点における法線方向(軸ストッパ部280の延長方向)への軸ストッパ部280の可撓が抑制された構造である。
【0042】
図4において、軸部520は、軸部520の外周面に補強部530を有する。補強部530は、軸部520の外周面から、軸部520が軸受部220から荷重を受ける方向に突出する。補強部530は、軸部520の外周面であって、軸部520に対する軸受部220の回動範囲において、軸部520が軸受部220から荷重を受ける方向の範囲内に位置する。ここで軸部520が軸受部220から受ける荷重の方向とは、軸受部220が軸部520に荷重をかける方向を示し、軸部520に対する軸受部220の回動範囲において変化する。
【0043】
図5(B)において、軸受部220が軸部520の外周面に接触可能な領域を第1の領域1000という。すなわち、軸部520に対する軸受部220の回動範囲において、軸受部220Wが回動軸方向の幅t1で接触可能な領域1000aと軸受部220Nが回動軸方向の幅t2で接触可能な領域1000bとを足した領域のことをいう。軸部520の第1の領域1000には、回動に応じた荷重がかかる。このとき軸受部220が軸部520に荷重をかける方向は、第1の領域の法線方向(回動軸620に向かう方向)である。軸部520の外周面であって、軸部520に対する軸受部220の回動範囲において、軸受部220が接触可能な第1の領域1000と回動軸620を介して対向する領域のうち第1の領域を含まない領域を第2の領域という。第2領域は、軸部520に対する軸受部220の回動範囲において軸に軸受部220が接触しない領域である。本実施形態において、第2領域には補強部530が位置する。補強部530は、軸部520の外周面に接続され、軸部520の軸径より外側の範囲まで突出する凸部である。補強部530は、第2の領域の少なくとも一部から、回動軸方向において軸受部220の外側に位置する。このような位置に補強部530を配置することで、軸部520の強度および剛性を改善することができ、回動機構の耐久性を向上することができる。
【0044】
荷重を受ける方向は、離鍵時(押鍵していない状態)にハンマアセンブリや鍵等の部材の自重によって受ける荷重と押鍵時のフルストローク時に前端部210から受ける鍵を押し下げようとする力と後端部が上側ストッパ430によって止められることで受ける反力の双方から受ける力の方向がある。また、押鍵途中においては、前端部210が受ける押鍵する力とハンマアセンブリの錘側の重さによる慣性力を受ける。このため、ハンマアセンブリ200には荷重がかかり、軸受部220を介して軸部520に荷重をかける。
図5(A)に示すように、本実施形態において、軸受部220は回動軸620を中心として回動する方向(回動方向)において、回動軸の軸方向(スケール方向)に異なる厚さを有する軸受部220W(第1の受部)と軸受部220N(第2の受部)を含む。軸部520に特に大きい荷重をかける領域の軸受部220W(第1の受部)は、他の領域の軸受部220N(第2の受部)より回動軸方向(スケール方向)の厚さが大きい。すなわち軸受部220Wの厚さt1は、軸受部220Nの厚さt2より大きい。軸部520に大きい荷重をかける領域の軸受部220Wの厚さt1が大きいことで、軸受部220Wの強度および剛性を改善することができ、回動機構の耐久性を向上することができる。
【0045】
図5(B)に示すように、軸受部220Wと軸受部220Nとは、回動方向において異なる位置で軸部520と接触する。軸受部220Wは回動軸方向の幅t1の範囲で軸部520の領域1000aと接触し、軸受部220Nは回動軸方向の幅t2の範囲で軸部520の領域1000bと接触する。また、回動軸方向において、軸受部220Wの両端の間に軸受部220Nの両端が位置する。軸部520に対する軸受部220Wの回動範囲において、軸受部220Wが軸部520の外周面に接触可能な領域を第3の領域1000aという。すなわち、第3の領域1000aは、第1の領域1000の一部である。軸部520の第3の領域1000aには、回動に応じた荷重がかかる。このとき軸受部220Wが軸部520に荷重をかける方向は、第3の領域1000aの法線方向(回動軸620に向かう方向)である。軸部520の外周面であって、軸部520に対する軸受部220Wの回動範囲において、軸受部220Wが接触可能な第3の領域1000aと回動軸620を介して対向する領域のうち第1の領域1000を含まない領域を第4の領域という。すなわち、第4の領域は、第2の領域の一部である。本実施形態において、第4の領域には補強部530が位置する。補強部530は、第4の領域の少なくとも一部から、回動軸方向において軸受部220Wの外側に位置する。このような位置に補強部530を配置することで、軸部520の強度および剛性をさらに改善することができ、回動機構の耐久性をさらに向上することができる。例えば、
図4において、軸部520は、軸受部220Wから、紙面における上下方向(D3方向、以降、荷重方向ともいう)に荷重を受ける。補強部530は、軸部520の外周面からD3方向に突出している。
【0046】
鍵の押離動作に応じて、軸受部220は軸部520に対して回動する。
図6を用いて、鍵の押離動作に応じた軸部520に対する軸受部220Wの動きと、軸部520が受ける荷重の範囲を説明する。
図6は、本発明の一実施形態におけるハンマアセンブリ200の軸受部220と軸部520の部分拡大図である。
図6(A)は、レスト位置の軸受部220と軸部520の位置関係を示す。レスト位置(離鍵時、押鍵していない状態)における軸受部220Wが軸部520に接触する範囲は、a1−a1’の間である。鍵の押鍵動作に応じて、軸受部220Wが軸部520に接触する範囲は、a1−a1’からa2−a2’に、時計回りに変化する。
図6(B)は、エンド位置の軸受部220と軸部520の位置関係を示す。エンド位置(最後まで押鍵した状態)における軸受部220Wが軸部520に接触する範囲は、a2−a2’の間である。鍵の離鍵動作に応じて、軸受部220Wが軸部520に接触する範囲は、a1−a1’からa2−a2’に、反時計回りに変化する。すなわち、軸部520に対する軸受部220Wの回動範囲において、軸受部220Wが軸部520と接触可能な第3の領域はa1−a2’の間である。軸部520の第3の領域には、回動に応じた荷重がかかる。このとき軸受部220Wが軸部520に荷重をかける方向は、第3の領域の法線方向(回動軸620に向かう方向)である。軸受部220Wが軸部520と接触可能な第3の領域はa1−a2’の間と、回動軸620を介して対向する領域であるa3−a3’の間のうち軸受部220Wが接触しない第4の領域の範囲内で補強部530は突出することができる。
【0047】
図7は、本発明の一実施形態における回動機構の断面図である。
図7(A)に示す断面図は、
図4(A)のA−A’断面をD1方向から見た図である。
図7(B)に示す断面図は、
図7(A)のB−B’断面を
図3および
図4と同じ方向(D2方向)から見た図である。
図7(C)に示す断面図は、
図7(A)のC−C’断面を
図3および
図4と同じ方向(D2方向)から見た図である。
図7では軸部520および軸受部220を示す。軸受部220は、軸部520の接触面226を支持する。換言すると、軸部520は接触面226において、軸受部220と接触する。また、回動軸方向において、軸受部220Wの両端の間に軸受部220Nの両端が位置する。
【0048】
図7(A)において、軸部520は、軸部520の外周面の少なくとも軸受部の幅が大きい側220Wの両端の位置を支えるように軸受部の幅が狭い側220N側において突出する補強部530を有する。すなわち、軸部520が軸受部220から受ける荷重方向に突出する補強部530を有する。補強部530は、軸部520に対する軸受部220Wの回動範囲において、軸部520に荷重がかかる領域の軸方向における境界部cおよびdから荷重方向(D3方向)に突出する。換言すると、補強部530は、軸部520に対する軸受部220Wの回動範囲において、軸受部220Wの開口部630の内周面が接触面226に荷重をかける領域(cからdの間であって軸受部220W側、第3の領域1000a)と回動軸620を介して対向する領域のうち軸受部220が接触する領域を含まない領域(cからdの間であって軸受部220N側、第4の領域)の一部から、軸方向において軸受部220Wの外側にかけて位置する。補強部530は、軸部520の外周面に接続され、軸部520の軸径より外側の範囲まで突出する凸部である。
【0049】
例えば、
図7(A)において、軸部520は軸受部220から紙面における上下方向(D3方向)に荷重を受ける。軸部520は、軸受部220の幅が大きい側220Wの両端部220E近傍から、荷重を受ける領域の軸方向における境界部cおよびdにおいて特に強い応力を受ける。補強部530は、軸部520の軸受部220Nが接触する側の外周面からD3方向に突出する。ここで荷重を受ける領域の軸方向における境界部cおよびdを含むD2方向に直交する面を仮想面とする。この例では、軸受部220の幅が大きい側220Wの両端部220EがD2方向に直交する面上にある。このため、軸受部220の幅が大きい側220Wの両端部220Eは、それぞれ仮想面上に位置する。補強部530は、仮想面において軸部520と接続する。補強部530は、仮想面と交差する。すなわち、補強部530は、軸受部220の幅が大きい側220Wの両端部220Eを含む回動軸に対して垂直な仮想面を含む位置に突出することで、上述の強い応力に対応する。
【0050】
図7(B)は、軸受部220の中心部における軸方向のB−B‘断面を示す図である。軸受部220は、開口部630の内側の領域に軸部520を支持する。軸受部220の軸方向中心部において、軸受部220(軸受部220Wおよび軸受部220N)の開口部630の内周面は、軸受部220の軸方向端部220Eよりも、軸部520の外周面と広い領域(軸中心から見た角度の範囲)で接触する。一方、
図7(C)は、軸受部220の端部における軸方向のC−C‘断面を示す図である。軸受部220Wの軸方向端部220Eにおいて、軸受部220(軸受部220W)の開口部630の内周面は、主に軸部520に荷重をかける領域で軸部520と接触する。軸部520が軸受部220から荷重を受ける領域の回動軸620を介して対向する領域には、軸部520に接続する補強部530が位置する。このような構成をとることで、軸部520に対する軸受部220の回動を妨げることなく、軸部520に補強部530を配置することができる。軸部520は、軸受部220から特に強い応力を受ける荷重を受ける領域の境界部cにおいて、荷重方向(D3方向)に補強部530を位置することができる。
【0051】
図7(A)においては、軸受部220が軸部520に荷重をかける領域の境界部cおよびdから荷重方向(D3方向)に突出する補強部530を各々設けた。しかしながらこれに限定されず、補強部530の数は、軸部520に対する軸受部220の回動を妨げない限りいくつであってもよい。補強部530の各々の形状は、軸方向の中心(B−B’)を基準として対称であってもよい。
図4〜
図7において、補強部530の各々の形状は、矩形平板形状である。しかしながらこれに限定されず、補強部530の形状は、軸部520に対する軸受部220の回動を妨げず、安定して軸部520に接続するかぎりどのような形状であってもよい。例えば、多角、円弧の平板形状であってもよく、多角柱、円柱、球状などであってもよい。また、
図7(C)に示すように、補強部530は、軸部520の径の1/3程度の厚さTとしているが、この厚さも所望のものとしてよい。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る回動機構900によると、上述の補強部530を有することで、軸部520の強度および剛性を改善することができ、回動機構の耐久性を向上することができる。
【0053】
[鍵盤アセンブリの動作]
図8は、本発明の一実施形態における鍵(白鍵)を押下したときの鍵アセンブリの動作を説明する図である。
図8(A)は、鍵100がレスト位置(押鍵していない状態)にある場合の図である。
図8(B)は、鍵100がエンド位置(最後まで押鍵した状態)にある場合の図である。鍵100が押下されると、棒状可撓性部材185が回動中心となって曲がる。このとき、棒状可撓性部材185は、鍵の前方(手前方向)への曲げ変形が生じているが、側面鍵ガイド153による前後方向の移動の規制によって、鍵100は前方に移動するのではなく回動するようになる。そして、ハンマ支持部120が前端部210を押し下げることで、ハンマアセンブリ200が軸部520を中心に回動する。錘部230が上側ストッパ430に衝突することによって、ハンマアセンブリ200の回動が止まり、鍵100がエンド位置に達する。また、センサ300が前端部210によって押しつぶされると、センサ300は、押しつぶされた量(押鍵量)に応じた複数の段階で、検出信号を出力する。
【0054】
一方、離鍵すると、錘部230が下方に移動して、ハンマアセンブリ200が回動し、鍵100が上方に回動する。錘部230が下側ストッパ410に接触することで、ハンマアセンブリ200の回動が止まり、鍵100がレスト位置に戻る。本実施形態における鍵盤装置1は、上述の通り、接続部180において押鍵および離鍵による鍵100の回動をする。
【0055】
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態における回動機構900とは異なる構成の回動機構900Aについて説明する。
図9は、本発明の一実施形態における回動機構の断面図である。第2実施形態の回動機構900Aでは、軸受部220Aの形状が第1実施形態の軸受部220と相違する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様である部分は、前の説明と同じ番号を付すことで繰り返しの説明は省略する。
【0056】
図9は、本発明の一実施形態における回動機構の断面図である。
図9(A)に示す断面図は、本実施形態における回動機構900Aの鍵長手方向にみた断面を示す図である。
図9(B)に示す断面図は、
図9(A)のB−B’断面をD2方向から見た図である。
図9(C)に示す断面図は、
図9(A)のC−C’断面をD2方向から見た図である。
図9では軸部520および軸受部220Aを示す。
【0057】
図9(A)において、軸受部220AWには凹部224が設けられている。凹部224は、軸受部220AWの開口部630の内周面に位置する。換言すると、軸受部220AWは、軸部520を支持する面に凹部224を有する。凹部224において、軸受部220AWは軸部520の外周面と接していない。このため、軸受部220AWが凹部224を有することで、軸部520と軸受部220Aとの接触領域が小さくなり、軸部520に対して軸受部220Aが回動するときの摩擦を軽減することができる。また、軸受部220Aは凹部224を有することで、主に軸受部220AWから軸部520に荷重をかける領域が軸受部両側の軸部520との接触する部分226に集中する。凹部224の位置はこれに限定されず、凹部224は、軸部520を介して対向する軸受部220AN側の接触面226にも設けられていてもよい。
【0058】
図9(A)において、凹部224は、軸受部220AWの軸方向中央に1つ位置する。このため、軸受部220AWの開口部630の内周面が軸部520に接する接触面226は、軸受部220AWの軸方向両端に位置する。換言すると、軸受部220AWは軸方向において少なくとも異なる2点で軸部520と接触する。このため、軸受部220AWと軸部520の接触領域が少なくても、軸受部220AWはヨーイング方向およびローリング方向の移動が規制された安定した回動をすることができる。しかしながらこれに限定されず、凹部224の数、形状、および位置は軸部520に対する軸受部220Aの回動を妨げない限りいくつであってもよい。
【0059】
図9(A)において、軸部520は、軸部520の外周面の少なくとも軸受部の幅が大きい側220AWの両端の位置を支えるように軸受部の幅が狭い側220N側において突出する補強部530を有する。すなわち、軸部520が軸受部220Aから受ける荷重方向に突出する補強部530を有する。補強部530は、軸部520に対する軸受部220AWの回動範囲において、軸部520に荷重がかかる領域の軸方向において軸受部220AWの外側境界部cおよびdから荷重方向(D3方向)に突出する。換言すると、補強部530は、軸部520に対する軸受部220AWの回動範囲において、軸受部220AWの開口部630の内周面が接触面226に荷重をかける領域(cおよびdを含む軸受部220W側の接触面226、第3の領域)と回動軸620を介して対向する領域のうち軸受部220Aが接触する領域を含まない領域(軸受部220N側、第4の領域)と、第4の領域から軸方向において軸受部220AWの外側にかけて位置する。補強部530は、軸部520の外周面に接続され、軸部520の軸方向における接触面226の範囲を含む長さLにおいて軸径より外側の範囲まで突出する凸部である。
【0060】
例えば、
図9(A)において、軸部520は軸受部220Aから紙面における上下方向(D3方向)に荷重を受ける。軸部520は、軸受部220AWから荷重を受ける領域の軸方向において軸受部220AWの外側境界部cおよびdに特に強い応力を受ける。補強部530は、軸部520の軸受部220ANが接触する側の外周面からD3方向に突出することができる。
【0061】
図9(B)は、軸受部220Aの中心部における軸方向のB−B’断面を示す図である。軸受部220Aは、開口部630の内側の領域に軸部520を支持する。軸受部220Aの軸方向中心部において、軸受部220AWの開口部630の内周面には、凹部224が位置する。このため軸方向中心部において、軸受部220AWは軸部520に接触していない。一方、
図9(C)は、軸受部220Aの端部における軸方向のC−C’断面を示す図である。軸受部220AWの軸方向端部(C側、D側)において、軸受部220A(軸受部220AW)の開口部630の内周面は、主に軸部520に荷重をかける領域で軸部520と接触する。軸部520が軸受部220AWから荷重を受ける領域の回動軸620を介して対向する領域には、軸部520に接続する補強部530が位置する。このような構成をとることで、軸部520に対する軸受部220Aの回動を妨げることなく、軸部520に補強部530を配置することができる。軸部520は、軸受部220AWから特に強い応力を受ける荷重を受ける領域の境界部cにおいて、荷重方向(D3方向)に補強部530を位置することができる。
【0062】
図9(A)においては、軸受部220Aが軸部520に荷重をかける領域の境界部cおよびdから荷重方向(D3方向)に突出する補強部530を各々設けた。しかしながらこれに限定されず、補強部530の数、形状、厚さ、および位置は、軸部520に対する軸受部220Aの回動を妨げない限り任意の構成をとることができる。
【0063】
以上のように、本実施形態に係る回動機構900Aによると、軸部520の延長方向D2において、少なくとも異なる2点で軸受部220Aが軸部520を支持することで、軸受部220Aのヨーイング方向およびローリング方向の移動を規制することができる。また上述の凹部224を有することで、軸受部220Aは軸部520との接触面接を小さくすることができ、軸部520および軸受部220Aの回動動作における摩擦力を小さくすることができる。さらに、上述の補強部530を有することで、軸部520の強度および剛性を改善することができ、回動機構の耐久性を向上することができる。
【0064】
<第3実施形態>
第3実施形態では、第1実施形態における回動機構900とは異なる構成の回動機構900Bについて説明する。
図10は、本発明の一実施形態における回動機構の断面図である。第3実施形態の回動機構900Bでは、補強部530Bの形状が第1実施形態の補強部530と相違する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と同様である部分は、同じ番号を付して繰り返しの説明は省略する。
【0065】
図10は、本発明の一実施形態における回動機構の断面図である。
図10(A)に示す断面図は、本実施形態における回動機構900Bの鍵長手方向にみた断面を示す図である。
図10(B)に示す断面図は、
図10(A)のB−B’断面をD2方向から見た図である。
図10(C)に示す断面図は、
図10(A)のC−C’断面をD2方向から見た図である。
図10では軸部520および軸受部220Bを示す。
【0066】
図10(A)において、軸部520は、軸部520の外周面の少なくとも軸受部の幅が大きい側220BWの両端の位置を支えるように軸受部の幅が狭い側220BN側において突出する補強部530Bを有する。すなわち、軸部520が軸受部220Bから受ける荷重方向に突出する補強部530Bを有する。補強部530Bは、軸部520に対する軸受部220BWの回動範囲において、軸部520に荷重がかかる領域と、その領域の軸方向における境界部cおよびdから荷重方向(D3方向)に突出する。換言すると、補強部530Bは、軸部520に対する軸受部220BWの回動範囲において、軸受部220BWの開口部の内周面が接触面226に荷重をかける領域(cからdの間であって軸受部220BW側、第3の領域)と回動軸620を介して対向する領のうち軸受部220Bが接触する領域を含まない領域域(cからdの間であって軸受部220N側、第4の領域)と、第4の領域から軸方向において軸受部220BWの外側にかけて位置する。補強部530Bは、軸部520の外周面に接続され、軸部520の軸径より外側の範囲まで突出する凸部である。
【0067】
例えば、
図10(A)において、軸部520は軸受部220Bから紙面の上下方向(D3方向)に荷重を受ける。軸部520は、軸受部220Bの幅が大きい側220BWの両端部220BE近傍から、荷重を受ける領域の軸方向における境界部cおよびdに特に強い応力を受ける。補強部530Bは、軸部520の軸受部220BNが接触する側の外周面からD3方向に突出することができる。補強部530Bは、軸部520の中心から軸方向に離れるに従って徐々に大きな突出量となる。すなわち、斜面530BSが軸受部の幅が狭い側530BNと当接するように形成されている。一方、軸受部の幅が狭い側220BNは、その中央部が最も突出して軸方向に離れるにしたがって薄くなることで、斜面530BSに倣う面となっている。
【0068】
補強部530Bは、軸方向の中心(B−B’)で軸受部220BN側の外周面において存在しない。この例では、軸受部220Bの回動軸620は、軸部520の略中心に存在する。補強部530Bをこのように構成することで、軸受部220Bの軸方向における位置決めをすることができる。しかしながらこれに限定されず、補強部530Bの数、形状、厚さ、および位置は軸部520に対する軸受部220Bの回動を妨げない限りいくつであってもよい。また、軸受部220Bの回動軸620は、軸部520の略中心からずれていてもよい。
【0069】
図10(B)は、軸受部220Bの中心部における軸方向のB−B’断面を示す図である。軸受部220Bは、開口部630の内側の領域に軸部520を支持する。軸受部220Bの軸方向中心部において、軸受部220B(軸受部220BWおよび軸受部220BN)の開口部630の内周面は、軸受部220の軸方向端部220BEよりも、軸部520の外周面と広い領域(軸中心から見た角度の範囲)で接触する。さらに
図10(A)に示すように、軸受部220BNは、補強部530Bが形成する斜面530BSと接してもよい。すなわち、軸受部220BNは、補強部530Bに対する軸受部220Bの回動範囲において、軸方向中心(B’)から軸方向端部(C’またはD’)の方向に厚みが薄くなる。換言すると、軸受部220Bは、補強部530Bに対する軸受部220Bの回動範囲において、軸方向中心(B’)から軸方向端部(C’ またはD’)の方向に開口部が大きい。一方、
図10(C)は、軸受部220Bの端部における軸方向のC−C’断面を示す図である。軸受部220BWの軸方向端部220BEにおいて、軸受部220B(軸受部220BW)の開口部630の内周面は、主に軸部520に荷重をかける領域で軸部520と接触する。軸部520が軸受部220Bから荷重を受ける領域の回動軸620を介して対向する領域には、軸部520に接続する補強部530Bが位置する。このような構成をとることで、軸部520に対する軸受部220Bの回動を妨げることなく、軸部520に補強部530Bを配置することができる。軸部520は、軸受部220BWから特に強い応力を受ける荷重を受ける領域の境界部cにおいて、荷重方向(D3方向)に補強部530Bを位置することができる。
【0070】
図10(A)においては、軸受部220Bが軸部520に荷重をかける領域と、その領域の境界部cおよびdから荷重方向(D3方向)に突出する補強部530Bを設けた。しかしながらこれに限定されず、補強部530Bの数、形状、および位置は、軸部520に対する軸受部220Bの回動を妨げない限り任意の構成をとることができる。補強部530Bの各々の形状は、軸方向の中心(B−B’)を基準として対称であってもよい。
図10において、補強部530Bの形状は、軸受部220Bの軸方向端部において軸方向中央部より突出した三角形平板形状である。しかしながらこれに限定されず、補強部530Bの形状は、軸部520に対する軸受部220Bの回動を妨げず、安定して軸部520に接続するかぎりどのような形状であってもよい。例えば、
図11に示すように、補強部530Cは円弧の平板形状であってもよく、この場合、軸受部220CNは円弧であってもよい。また、補強部530は多角柱、円柱、球状などであってもよい。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る回動機構900Bによると、上述の補強部530Bを有することで、軸受部220Bの軸方向における位置決めをすることができる。また上述の補強部530Bを有することで、軸部520の強度および剛性をさらに改善することができ、回動機構の耐久性をさらに向上することができる。
【0072】
<第4実施形態>
第4実施形態では、第1実施形態における回動機構900とは異なる構成の回動機構900Dについて説明する。
図12は、本発明の一実施形態における回動機構の断面図である。第4実施形態の回動機構900Dでは、補強部530Dの形状が第1実施形態の補強部530と相違する。なお、第4実施形態では、第1実施形態と同様である部分は同じ番号を付して繰り返しの説明は省略する。
【0073】
図12は、本発明の一実施形態における回動機構の断面図である。
図12(A)に示す断面図は、本実施形態における回動機構900Dの鍵長手方向にみた断面を示す図である。
図12(B)に示す断面図は、
図12(A)の軸方向におけるB−B’断面をD2方向から見た図である。
図12(C)に示す断面図は、
図12(A)の軸方向におけるC−C’断面をD2方向から見た図である。
図12では軸部520および軸受部220Dを示す。
【0074】
図12(A)において、軸部520は、軸部520の外周面の少なくとも軸受部の幅が大きい側220DWの両端の位置を支えるように、軸受部の幅が大きい側220DWおよび軸受部の幅が狭い側220DN側において突出する補強部530Dを有する。すなわち、軸部520が軸受部220Dから受ける荷重方向および荷重方向とは反対側の方向に突出する補強部530Dを有する。補強部530Dは、軸部520に対する軸受部220Dの回動範囲において、軸部520に荷重がかかる領域と、その領域の軸方向における境界部cおよびdから荷重方向(D3方向)および荷重方向とは反対側の方向(D3逆方向)に突出する。換言すると、補強部530Dは、軸部520に対する軸受部220Dの回動範囲において、軸受部220Dの開口部の内周面が軸部520に荷重をかける領域(cからdの間であって軸受部220DW側、第3の領域)と、第3の領域と回動軸620を介して対向する領域のうち軸受部220が接触する領域を含まない領域(cからdの間であって軸受部220DN側、第4の領域)とから各々軸方向において軸受部220DWの外側にかけて位置する。補強部530Dは、軸部520の外周面に各々接続され、軸部520の軸径より外側の範囲まで各々突出する凸部である。
【0075】
例えば、
図12(A)において、軸部520は軸受部220Dから紙面における上下方向(D3方向)に荷重を受ける。軸部520は、軸受部220Dの幅が大きい側220DWの両端部220DE近傍から、荷重を受ける領域の軸方向における境界部cおよびdに特に強い応力を受ける。補強部530Dは、軸部520の軸受部220DNが接触する側の外周面からD3方向に突出することができる。さらに補強部530Dは、軸部520の軸受部220DWが接触する側の外周面からD3逆方向に突出することができる。この例では、軸受部220Dの回動軸620は、軸部520の略中心に存在する。しかしながらこれに限定されず、軸受部220Dの回動軸620は、軸部520の略中心からずれていてもよい。
【0076】
図12(B)は、軸受部220Dの中心部における軸方向のB−B’断面を示す図である。軸受部220Dは、開口部630の内側の領域に軸部520を支持する。軸受部220Dの軸方向中心部において、軸受部220D(軸受部220DWおよび軸受部220DN)の開口部630の内周面は、補強部530Dのみと接触する。すなわち、軸受部220Dは、補強部530Dに対する軸受部220Dの回動範囲において、補強部530Dのみと接触し、軸部520とは接触しない。
図12(C)は、軸受部220Dの端部における軸方向のC−C‘断面を示す図である。軸受部220Dの軸方向端部220DEにおいて、軸受部220D(軸受部220DW)の開口部630の内周面は、軸部520に荷重をかける領域側(C側)で補強部530Dと接触する。軸部520が軸受部220Dから荷重を受ける領域の回動軸620を介して対向する領域(C’側)には、軸部520に接続する補強部530Dが位置する。このような構成をとることで、軸部520に対する軸受部220Dの回動を妨げることなく、軸部520に補強部530Dを配置することができる。軸部520は、軸受部220Dから特に強い応力を受ける荷重を受ける領域の境界部cにおいて、荷重方向(D3方向)および荷重方向とは反対側の方向(D3逆方向)に補強部530Dを位置することができる。
【0077】
図12(A)においては、軸受部220Dが軸部520に荷重をかける領域と、その領域の境界部cおよびdから荷重方向(D3方向)および荷重方向とは反対側の方向(D3逆方向)に突出する補強部530Dを各々設けた。しかしながらこれに限定されず、補強部530Dの数、形状、および位置は、軸部520に対する軸受部220Dの回動を妨げない限り任意の構成をとることができる。補強部530Dの各々の形状は、軸方向を基準として対称であってもよい。
図12において、補強部530Dの形状は、軸受部220Dの軸方向において同じ高さを有する矩形平板形状である。しかしながらこれに限定されず、補強部530Dの数、形状、および位置は、軸部520に対する軸受部220Dの回動を妨げず、安定して軸部520に接続するかぎりどのような形状であってもよい。例えば、
図13に示すように、補強部530Eは軸受部220EWと220ENの両側に突出させ、各々円弧の平板形状であってもよく、この場合、軸受部220EWと220ENは補強部の円弧に沿った曲率の円弧であってもよい。また、補強部530は多角柱、円柱、球状などであってもよい。
【0078】
以上のように、本実施形態に係る回動機構900Dによると、上述の補強部530Dを有することで、軸部520の強度および剛性をさらに改善することができ、回動機構の耐久性をさらに向上することができる。
【0079】
<第5実施形態>
第5実施形態では、第1実施形態における回動機構900とは異なる構成の回動機構900Fについて説明する。
図14は、本発明の一実施形態における回動機構の断面図である。第5実施形態の回動機構900Fでは、補強部530Fの形状、および補強部530Fが軸支持部540Fと接続する点で第1実施形態と相違する。なお、第5実施形態では、第1実施形態と同様である部分は同じ番号を付して繰り返しの説明は省略する。
【0080】
図14は、本発明の一実施形態における回動機構の断面図である。
図14(A)に示す断面図は、本実施形態における回動機構900Fの鍵長手方向にみた断面を示す図である。
図14(B)に示す断面図は、
図14(A)の軸方向におけるB−B’断面をD2方向から見た図である。
図14(C)に示す断面図は、
図14(A)の軸方向におけるC−C’断面をD2方向から見た図である。
図14では軸部520および軸受部220を示す。
【0081】
図14(A)において、軸部520は、軸部520の外周面の少なくとも軸受部の幅が大きい側220FWの両端の位置を支えるように軸受部の幅が狭い側220FN側において突出する補強部530Fを有する。すなわち、軸部520が軸受部220Fから受ける荷重方向に突出する補強部530Fを有する。補強部530Fは、軸部520に対する軸受部220FWの回動範囲において、軸部520に荷重がかかる領域の軸方向における境界部cおよびdから荷重方向(D3方向)に突出する。換言すると、補強部530Fは、軸部520に対する軸受部220FWの回動範囲において、軸受部220FWの開口部の内周面が接触面226に荷重をかける領域(cからdの間であって軸受部220FW側、第3の領域)と回動軸620を介して対向する領域(cからdの間であって軸受部220FN側、第4の領域)の一部から、軸方向において軸受部220FWの外側にかけて位置する。補強部530Fは、軸部520の外周面に接続され、軸部520の軸径より外側の範囲まで突出する凸部である。軸部520は、軸方向端部において軸支持部540Fと接続する。さらに補強部530Fは、軸方向端部において、軸支持部540Fと接続する。
【0082】
例えば、
図14(A)において、軸部520は軸受部220から紙面における上下方向(D3方向)に荷重を受ける。軸部520は、軸受部220の幅が大きい側220FWの両端部220FE近傍から、荷重を受ける領域の軸方向における境界部cおよびdに特に強い応力を受ける。補強部530Fは、軸部520の軸受部220FNが接触する側の外周面からDD3方向に突出することができる。この例では、軸受部220の回動軸620は、軸部520の略中心に存在する。しかしながらこれに限定されず、軸受部220の回動軸620は、軸部520の略中心からずれていてもよい。
【0083】
図14(B)は、軸受部220の中心部における軸方向のB−B’断面を示す図である。軸受部220は、開口部630の内側の領域に軸部520を支持する。軸受部220の軸方向中心部において、軸受部220(軸受部220FWおよび軸受部220FN)の開口部630の内周面は、軸受部220の軸方向端部220FEよりも、軸部520の外周面と広い領域(軸中心から見た角度の範囲)で接触する。一方、
図14(C)は、軸受部220の端部における軸方向のC−C’断面を示す図である。軸受部220Wの軸方向端部220Eにおいて、軸受部220(軸受部220FW)の開口部630の内周面は、主に軸部520に荷重をかける領域で軸部520と接触する。軸部520が軸受部220から荷重を受ける領域の回動軸620を介して対向する領域には、軸部520に接続する補強部530Fが位置する。このような構成をとることで、軸部520に対する軸受部220の回動を妨げることなく、軸部520に補強部530Fを配置することができる。軸部520は、軸受部220から特に強い応力を受ける荷重を受ける領域の境界部cにおいて、荷重方向(D3方向)に補強部530Fを位置することができる。
【0084】
図14(A)においては、軸受部220が軸部520に荷重をかける領域の境界部cおよびdから荷重方向(D3方向)に突出する補強部530Fを各々設けた。さらに補強部530Fは、軸方向端部において軸支持部540Fと接続する。しかしながらこれに限定されず、補強部530Fの数は、軸部520に対する軸受部220の回動を妨げない限りいくつであってもよい。補強部530Fの各々の形状は、軸方向の中心(B−B’)を基準として対称であってもよい。
図14において、補強部530Fの各々の形状は、三角形平板形状である。しかしながらこれに限定されず、補強部530Fの形状は、軸部520に対する軸受部220の回動を妨げず、安定して軸部520および軸支持部540Fに接続するかぎりどのような形状であってもよい。例えば、多角、円弧の平板形状であってもよく、多角柱、円柱、球状などであってもよい。補強部530Fが軸支持部540Fに接続する構成は、本発明の他の実施形態においても適宜適用することができる。
【0085】
以上のように、本実施形態に係る回動機構900Fによると、上述の補強部530Fが軸支持部540Fに接続する構成を有することで、軸部520の強度および剛性をさらに改善することができ、回動機構の耐久性をさらに向上することができる。
【0086】
上述した実施形態では、ハンマアセンブリを適用した鍵盤装置の例として電子ピアノを示した。一方、上記実施形態のハンマアセンブリは、アコースティックピアノ(グランドピアノやアップライトピアノなど)の回動機構に適用することもできる。例えば、アップライトピアノにおいて、回動部品と当該回動部品を回動自在に軸支する支持部とを有する回動機構に上記実施形態の開口機構を適用することができる。この場合、発音機構は、ハンマ、弦に対応する。上記実施形態の回動機構はピアノ以外の回動部品に適用することもできる。
【0087】
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。