(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一本以上の光ファイバ心線を含む光ファイバユニットと、一本以上の電線と、前記光ファイバユニットおよび前記電線の外周を一括して被覆する外被と、を備える光電気複合ケーブルの製造方法であって、
前記光ファイバ心線を走行させて、当該光ファイバ心線の周囲を覆うように樹脂テープを巻き回して前記光ファイバユニットを形成し、当該光ファイバユニットに張力を掛けながら次工程へ連続的に走行させるユニット形成工程と、
前記ユニット形成工程から連続的に走行されてきた前記光ファイバユニットの周囲に前記電線を撚り付けて前記電線が撚り付けられた前記光ファイバユニットを張力を掛けながら走行させる前記次工程としての撚り付け工程と、を含み、
前記ユニット形成工程における前記光ファイバユニットにかかる張力が、前記撚り付け工程における前記電線が撚り付けられた前記光ファイバユニットにかかる張力よりも高い、光電気複合ケーブルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の実施形態の説明)
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
本発明の一態様に係る光電気複合ケーブルは、
(1)光ファイバユニットと、一本以上の電線と、前記光ファイバユニットおよび前記電線の外周を一括して被覆する外被と、を備え、
前記光ファイバユニットは、一本以上の光ファイバ心線と、当該光ファイバ心線の周囲を覆うように巻き回された樹脂テープからなる筒体、とを備え、
前記電線は、前記筒体の外側に配置され、
前記樹脂テープは、前記光ファイバ心線に対して、ルー
ズに巻回されている。
上記構成によれば、光ファイバ心線の周囲を覆うように巻き回された樹脂テープからなる筒体の外側に電線が配置されていることにより、チューブを用いずに光ファイバ心線と電線との離間を図る構造となっている。押出成形によってチューブを形成しなくてもよいので、光電気複合ケーブルの製造コストを抑えることができる。また、樹脂テープがルー
ズに巻かれていると、端末加工の際に光ファイバ心線を数mm程度出し入れすることができ、ケーブル端末におけるコネクタの取り付け作業等を効率良く行うことができる。
【0011】
(2)前記光ファイバユニットは、前記筒体の内部に配置された抗張力性を有する線状体を備えてもよい。
上記構成によれば、光ファイバユニット中に抗張力性を有する線状体を備えることにより、光電気複合ケーブル全体の抗張力性を確保できる。
【0012】
(3)前記樹脂テープは、ポリエチレンテレフタレートで形成されていてもよい。
上記構成によれば、ポリエチレンテレフタレートで形成された樹脂テープは、光ファイバユニットを構成するものとして十分な強度を有している上、通信ケーブルの構成材料として一般的に使用される材料であるため、安価に入手可能である。
【0013】
(4)前記樹脂テープの厚さは、50μm以上500μm以下であってもよい。
上記構成によれば、ポリエチレンテレフタレートで形成された樹脂テープの厚さを50μm以上とすることで、光電気複合ケーブル中から光ファイバ心線を取り出す際に樹脂テープの剛性により光ファイバ心線が自然に解けるため作業性がよい。また、製造中にある程度の張力をかけても樹脂テープが破断することがなく、安定した製造が可能になる。さらに500μm以下とすることで、光ファイバ周囲に巻き回す際に過大な張力をかけずに円筒形に成形することができるため、安定した製造が可能になる。
【0014】
(5)前記電線が、前記光ファイバユニットの周囲に撚り返し有りで撚り付けられていてもよい。
上記構成によれば、電線を撚り返し有りで集合することで、電線に捩り歪が残留しないため、光電気複合ケーブルを柔軟に曲げられるようになる。
【0015】
(6)前記電線が、前記光ファイバユニットの周囲に撚り返し無しで撚り付けられていてもよい。
上記構成によれば、電線を撚り返し無しで集合することで、電線が外に広がろうとする。このため、光ファイバユニットの周囲に隙間ができて樹脂テープが広がる。そうすると、光ファイバユニット中の空間に余裕ができて、光ファイバ心線を出し入れしやすくなるため、端末でのコネクタ付け作業が容易になる。
【0016】
(7)前記電線が、前記光ファイバユニットの周囲にストレートに配置されていてもよい。
上記構成によれば、電線をストレートに集合することで、集合設備をケージ回転型にする必要がなくなる。これにより設備コストを安くできる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る光電気複合ケーブルの製造方法は、
(8)一本以上の光ファイバ心線を含む光ファイバユニットと、一本以上の電線と、前記光ファイバユニットおよび前記電線の外周を一括して被覆する外被と、を備える光電気複合ケーブルの製造方法であって、
前記光ファイバ心線を走行させて、当該光ファイバ心線の周囲を覆うように樹脂テープを巻き回して前記光ファイバユニットを形成し、当該光ファイバユニットに張力を掛けながら次工程へ連続的に走行させるユニット形成工程と、
前記ユニット形成工程から連続的に走行されてきた前記光ファイバユニットの周囲に前記電線を撚り付けて前記電線が撚り付けられた前記光ファイバユニットを張力を掛けながら走行させる前記次工程としての撚り付け工程と、を含み、
前記ユニット形成工程における前記光ファイバユニットにかかる張力が、前記撚り付け工程における前記電線が撚り付けられた前記光ファイバユニットにかかる張力よりも高い。
上記方法によれば、樹脂テープを光ファイバ心線に巻き回し前記樹脂テープの外側に電線を撚り付けることにより、チューブを用いずに光ファイバ心線と電線との離間を図る構造にすることができる。押出成形によってチューブを形成する工程を必要としないので、光電気複合ケーブルの製造コストを抑えることができる。ユニット形成工程において光ファイバ心線に樹脂テープを巻き付けて光ファイバユニットを形成する際には、樹脂テープに適切な張力をかけることにより、ピッチや重なり幅を一定にして巻き付けることができる。その後、撚り付け工程において電線が撚り付けられた光ファイバユニットにかかる張力をユニット形成工程における光ファイバユニットにかかる張力よりも低くする。これにより、樹脂テープの巻きが緩み、樹脂テープ内の空間に余裕が生じるので、適度にルー
ズな状態が実現できる。このように樹脂テープがルー
ズに巻かれると、端末加工の際に光ファイバ心線を数mm程度出し入れすることができ、ケーブル端末におけるコネクタの取り付け作業等を効率良く行うことができる。
【0018】
(本発明の実施形態の詳細)
本発明の実施形態に係る光電気複合ケーブルおよび光電気複合ケーブルの製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
以下の実施形態の説明において、平行とは厳密な意味での平行を意味するものではなく、平行とみなされる範囲であれば本発明の効果を奏する範囲で幅を持つ意味である。また、等間隔とは、厳密な意味での等間隔を意味するものではなく、等間隔とみなされる範囲であれば本発明の効果を奏する範囲で幅を持つ意味である。
【0020】
図1は、光電気複合ケーブルの一例を示す図である。
図1に示すように、光電気複合ケーブル1は、光ファイバユニット2と、一本以上の電線3(本例では四本)と、介在4と、押え巻きテープ5と、外被6とを備えている。
【0021】
光ファイバユニット2は、断面視において光電気複合ケーブル1の中心部分を通るように、光電気複合ケーブル1の中心軸に沿って配置されている。光ファイバユニット2は、一本以上の光ファイバ心線21(本例では四本)と、光ファイバ心線21の周囲を覆うように設けられた抗張力繊維22(線条体の一例)と、抗張力繊維22の周囲を覆うように巻き回された巻き回しテープ23とを有している。
【0022】
光ファイバ心線21としては、例えばコアおよびクラッドがガラスからなる全石英ファイバ、あるいはコアがガラス、クラッドが樹脂からなるハードプラスチッククラッドファイバ等が用いられる。
【0023】
抗張力繊維22は、光ファイバ心線21の外周に、光ファイバ心線21に沿って配置されている。抗張力繊維22としては、例えばケブラ(Kevlar:登録商標)等の抗張力性を有するアラミド繊維が用いられる。用いられる抗張力繊維22の量としては、例えば1000デニール以上10000デニール以下である。
【0024】
巻き回しテープ23は、抗張力繊維22と四本の電線3との間に、抗張力繊維22を覆うように筒体状に巻き回されている。巻き回しテープ23は、筒体の内側に配置される四本の光ファイバ心線21に対してルー
ズに巻き回されている。「ルー
ズに巻き回されている」とは、四本の光ファイバ心線21同士を接するように集合させ、かつその周囲に抗張力繊維22を密集させた状態とした場合に、密集させた状態の抗張力繊維22の外周の径よりも筒体状の巻き回しテープ23の内径の方が大きくなるように巻き回されていることを意味する。
【0025】
巻き回しテープ23がルー
ズに巻き回しされているため、筒体の内側に配置されている四本の光ファイバ心線21は、抗張力繊維22に覆われながらも各々が筒体内で独立して移動することが可能な状態となっている。巻き回しテープ23としては、耐熱性や耐摩耗性に優れた例えばポリエチレンテレフタレートテープ等の樹脂テープが用いられる。巻き回しテープ23の厚さは、50μm以上500μm以下である。
【0026】
巻き回しテープ23を設けることで、光ファイバ心線21が複数の電線3の間に挟まることにより生じ得る伝送損失の増加を抑制することが可能となる。また、電線3との接触により光ファイバ心線21に微小な曲げが発生して伝送損失が増加することを防止することができる。
【0027】
電線3は、筒体状の巻き回しテープ23の外側、すなわち光ファイバユニット2の外側に配置されている。各々の電線3は、断面視において光ファイバユニット2の周方向へ等間隔となるように配置されている。電線3には、例えば導体を外被で覆った絶縁線と、絶縁線の外周を覆うシールド層と、保護被膜とを有する同軸線を用いることができる。また、同軸線の他にも、例えば給電線やグランド線として、導体を外被で覆った絶縁線を用いることができる。
【0028】
介在4は、電線3と同様、光ファイバユニット2の外側に配置されている。介在4は、間隔を空けて配置されている電線3の間に配置されている。介在4としては、例えば低収縮処理が施されたポリプロピレンからなるPPヤーン等が用いられる。
【0029】
押え巻きテープ5は、電線3および介在4の外側に配置され、電線3、介在4、および光ファイバユニット2を押え巻きする。押え巻きテープ5としては、巻き回しテープ23と同様のテープを用いることができる。
【0030】
外被6は、押え巻きテープ5の外周を覆うように、すなわち光ファイバユニット2および電線3の外周を一括して被覆するように設けられている。外被6としては、例えばポリ塩化ビニルやポリオレフィン系樹脂等が用いられる。外被6の厚さは0.3mm以上1.5mm以下である。
【0031】
図2は、光ファイバ心線21に対する巻き回しテープ23の巻き方の一例を示す。
図2に示すように、巻き回しテープ23は、光ファイバ心線21および抗張力繊維22の周囲を覆うように螺旋状に巻き回されている。ここで、「周囲を覆う」とは、巻き回しテープ23が巻き回された際に、巻き回しテープ23の内側に配置された光ファイバ心線21および抗張力繊維22が外部から見えないように隙間なく覆うことを含む意味である。また、「周囲を覆う」とは、
図2の矢印Aで示す部分のように、巻き回しテープ23を巻くピッチのばらつきにより巻き回しテープ23同士が重ならずに僅かな隙間が生じ、内側に配置された光ファイバ心線21および抗張力繊維22が外部から見えるように覆うことを含んでもよい。
【0032】
図3は、光ファイバユニット2の外側に配置される電線3の一例を示す斜視図である。
図3に示すように、四本の電線3は、光ファイバユニット2の周囲に撚り付けられた状態で配置されている。各々の電線3は、電線間の距離が等間隔に保たれた状態で撚り付けられている。
【0033】
電線3は、例えば光ファイバユニット2に対して撚り返し有りの状態で撚り付けられている。ここで、「撚り返し有り」とは、各々の電線3が電線3の長手方向に対して捻じれを伴って光ファイバユニット2の周囲に撚り付けられることを意味する。「捻じれを伴って」とは、電線3が光ファイバユニット2の周囲に撚り付けられた際、光ファイバユニット2の外周面と接している電線3の接点の軌跡が、
図4の破線21aで示すように、真っすぐにした電線3の外周上に螺旋を描く線となるような撚り付け方のことを意味する。
【0034】
電線3は、例えば光ファイバユニット2に対して撚り返し無しの状態で撚り付けられてもよい。ここで、「撚り返し無し」とは、各々の電線3が電線3の長手方向に対して捻じれを伴わずに光ファイバユニット2の周囲に撚り付けられることを意味する。「捻じれを伴わずに」とは、電線3が光ファイバユニット2の周囲に撚り付けられた際、光ファイバユニット2の外周面と接している電線3の接点の軌跡が、
図5の破線21bで示すように、真っすぐにした電線3の外周上に中心軸と平行な一本の直線を描く線となるような撚り付け方のことを意味する。
【0035】
四本の電線3は、
図6に示すように、光ファイバユニット2の周囲にストレートな状態で配置されていてもよい。各々の電線3は、光ファイバユニット2の長手方向に沿って、すなわち光ファイバユニット2の中心軸と電線3の中心軸とが平行になるように配置される。また、各々の電線3は、光ファイバユニット2の周囲に電線間の距離が等間隔となるように配置される。
【0036】
以上のような光電気複合ケーブル1によれば、光ファイバ心線21の周囲を覆うように巻き回された巻き回しテープ23からなる筒体の外側に電線3を配置させることで、樹脂チューブを用いずに光ファイバ心線21と電線3とを離間させることができる。このため、押出成形によって樹脂チューブを形成しなくてもよいので、光電気複合ケーブルの製造コストを抑えることができる。
【0037】
光電気複合ケーブルは、そのケーブル端末に、回路基板、光電変換素子、レンズ部品などを内蔵するコネクタを取り付けて、機器と接続されて通信するコネクタ付きケーブルを構成する場合がある。このとき、ケーブル端末からレンズ部品等までの距離はコネクタ付きケーブルの設計で決まっている。
【0038】
例えば、
図7に示すような構成を有する従来の光電気複合ケーブル100の場合、光ファイバ心線101は、押え巻きテープ102によって光ファイバ心線101と押え巻きテープ102とが密着された状態でユニット化されている。このため、従来の光電気複合ケーブル100を用いてコネクタ付きケーブルを構成する場合は、ケーブル端末からレンズ部品等までの距離に相当する長さL(通常数mm〜10mm程度)だけ外被103や押え巻きテープ102を除去して、光ファイバ心線101を露出させる。そして、この長さLの露出した光ファイバ心線101にレンズ部品等を取り付ける。このとき、光ファイバ心線101が露出した部分が短いため、コネクタが内蔵するレンズ部品等の取り付け作業がしにくい。
【0039】
これに対して、本実施形態の光電気複合ケーブル1を用いてコネクタ付きケーブルを構成する場合は、
図8に示す一連の作業工程に示すように作業することにより、光電気複合ケーブル1をコネクタに取り付ける作業の効率を向上させることが可能になる。
【0040】
まず、
図8の工程1に示すように、光電気複合ケーブル1において上記長さL分だけ外被6や巻き回しテープ23を除去して光ファイバ心線21を露出させる。
次に、
図8の工程2に示すように、光電気複合ケーブル1をループ状にする。上述したように光ファイバ心線21は、巻き回しテープ23が筒体状にルー
ズに巻き回され、筒体内で独立して移動することが可能な状態でユニット化されている。このため、
図8の工程3に示すように、ルー
ズに巻き回された筒体状の巻き回しテープ23内で光ファイバ心線21がループの内側に寄って、その分だけ光ファイバ心線21の露出されている部分を長さLよりも数mm程度長く引き出すことができる。
【0041】
次に、
図8の工程3の状態で、引き出した光ファイバ心線21にレンズ部品等10を取り付ける。光ファイバ心線21が露出されている部分が長さLよりも数mm程度長くなるので、レンズ部品等10の取り付け作業が容易になる。その後、
図8の工程4に示すように、光ファイバ心線21を押し込んで露出された部分の長さを元の長さLに戻す。そして、
図8の工程5に示すように、ループ状にした光電気複合ケーブル1を元に戻す。
【0042】
以上のようにして、コネクタが内蔵するレンズ部品等10への取り付け作業を効率良く行うことができる。なお、
図7,
図8においては、抗張力繊維および電線は省略されている。
【0043】
このように、本実施形態の光電気複合ケーブル1によれば、光電気複合ケーブル1の製造コストを抑えつつ、ケーブル端末におけるコネクタの取り付け作業等を効率良く行うことができる。
【0044】
また、光ファイバユニット2中に抗張力繊維22を備えることにより、光電気複合ケーブル1全体の高い抗張力性を確保することができる。抗張力性を有する抗張力繊維22は、光電気複合ケーブル1に対してストレートに配置する必要があるが、光ファイバユニット2中に具備することで、ストレートな配置が可能になる。なお、抗張力繊維22を螺旋状に撚り合わせると、張力が掛かった際に抗張力繊維22に撚り締りが起こり、光ファイバ心線21が損傷する虞れがある。また、光電気複合ケーブル1の縁辺部にストレートに配置することも可能であるが、この場合には光電気複合ケーブル1の曲げ剛性が大きくなったり、異方性が生じたりして取扱い性が良くない場合がある。
【0045】
また、巻き回しテープ23は、ポリエチレンテレフタレートで形成されているので、光ファイバユニット2を構成する部材として十分な強度を有するとともに、通信ケーブルの構成材料として一般的に使用される材料であるため、安価に入手することができる。
【0046】
また、ポリエチレンテレフタレートで形成された巻き回しテープ23の厚さを50μm以上とすることで、光電気複合ケーブル1中から光ファイバ心線21を取り出す際に巻き回しテープ23の剛性により光ファイバ心線21が自然に解けるため作業性がよい。また、製造中にある程度の張力を掛けても巻き回しテープ23が破断することがなく、安定した製造が可能になる。さらに、厚さを500μm以下とすることで、光ファイバ心線21の周囲に巻き回す際に過大な張力を掛けずに筒体に成形することができるため、安定した製造が可能になる。
【0047】
また、電線3を撚り返し有りで撚り付けることにより、撚り付けられた電線3に捩り歪が残留しないため、光電気複合ケーブル1を柔軟に曲げることができる。
【0048】
また、電線3を撚り返し無しで撚り付ける場合には、電線3が撚り付けられた状態から外に広がろうとする。このため、光ファイバユニット2の周囲に隙間ができ筒体状の巻き回しテープ23が広がる。これにより、光ファイバユニット2の内部空間に余裕ができて、光ファイバ心線21を出し入れしやすくなるため、ケーブル端末でのコネクタ付け作業が容易になる。
【0049】
また、電線3をストレートに配置させる場合には、製造時において、電線3を光ファイバユニット2の周囲に集合させる集合設備をケージ回転型にする必要がなくなる。このため、設備コストを低減させることができる。
【0050】
次に、光電気複合ケーブル1の製造方法について説明する。
光電気複合ケーブル1は、例えば
図9に示すような製造装置7を用いて製造することができる。
製造装置7は、光ファイバユニット2を形成するユニット形成部70と、光ファイバユニット2に電線3を撚り付ける撚り付け部80とを備えている。
【0051】
ユニット形成部70は、ファイバサプライ71と、抗張力繊維サプライ72と、ダンサローラ73と、集合目板74と、テープサプライ75と、ミッドホイールキャプスタン76とを有している。
【0052】
ファイバサプライ71は、ボビンから光ファイバ心線21を送り出す。抗張力繊維サプライ72は、ボビンから抗張力繊維22を送り出す。ダンサローラ73は、上記送り出された光ファイバ心線21および抗張力繊維22に所定の張力を掛けて撓みを除去する。集合目板74は、光ファイバ心線21と抗張力繊維22とを所定の位置に配置させる。テープサプライ75は、光ファイバ心線21および抗張力繊維22の周囲に巻き回す巻き回しテープ23を送り出す。ミッドホイールキャプスタン76は、形成された光ファイバユニット2を撚り付け部80に向けて送り出す。
【0053】
撚り付け部80は、ケージ81と、集合目板82と、テープサプライ83と、ダンサローラ84と、巻取りドラム85とを有している。
ケージ81は、ボビンに巻回されている電線3を送り出す電線サプライ86と、ボビンに巻回されている介在4を送り出す介在サプライ87とが装備されている。集合目板82は、光ファイバユニット2に対して電線3と介在4とを所定の位置に配置させる。テープサプライ83は、電線3、介在4、および光ファイバユニット2の周囲に巻かれる押え巻きテープ5を送り出す。ダンサローラ84は、押え巻きテープ5が巻かれた状態の光ファイバユニット2に所定の張力を掛けて撓みを除去する。巻取りドラム85は、押え巻きテープ5が巻かれた状態の光ファイバユニット2を巻き取る。
【0054】
ユニット形成部70における巻き回しテープ23の巻き付け点Bにおいて光ファイバユニット2に掛かる張力は、光ファイバ心線21および抗張力繊維22に各ダンサローラ73から印加されるサプライ張力と、巻き回しテープ23のサプライ張力における長手方向成分との合計である。そして、この合計張力は、ミッドホイールキャプスタン76によって支えられている。
【0055】
撚り付け部80における押え巻きテープ5の巻き付け点Cにおいて押え巻きテープ5が巻かれた状態の光ファイバユニット2に掛かる張力は、ダンサローラ84によって印加される張力と、電線3および介在4のサプライ張力と、押え巻きテープ5のサプライ張力における長手方向成分との合計である。この合計張力は、ダンサローラ84によって支えられている。
【0056】
撚り付け部80におけるケージ81、電線サプライ86、および介在サプライ87の構成は、光ファイバユニット2の周囲に配置される電線3および介在4の撚り付け方によって例えば
図10〜
図12のような構成となる。
【0057】
例えば電線3および介在4が光ファイバユニット2の周囲に撚り返し有りの状態で撚り付けられる場合、ケージ81、電線サプライ86、および介在サプライ87の構成は、例えば
図10に示すような構成となる。
図10は、ケージ81を
図9におけるミッドホイールキャプスタン76側から見た図である。
【0058】
ケージ81の中心部分には光ファイバユニット2が通過する通過孔88が形成されている。ケージ81には通過孔88を中心として、電線サプライ86のボビン86aと介在サプライ87のボビン87aとがそれぞれの回転軸86b、87bを平行にして配置されている。ボビン86aは回転軸86bを中心として回転して電線3を送り出す。ボビン87aは回転軸87bを中心として回転して介在4を送り出す。ケージ81は、通過孔88(光ファイバユニット2)を中心として矢印Dの方向へ回転する。
【0059】
光電気複合ケーブル1の製造時において、全てのボビン(ボビン86a,ボビン87a)がケージ81の回転に伴って、光ファイバユニット2を中心としてその位置が回転する。これにより、電線3或いは介在4の送り出し位置が回転しながらそれぞれ電線3或いは介在4を送り出していくので、光ファイバユニット2の周囲に電線3および介在4が撚り付けられていく(
図3参照)。回転軸86b、87bは
図10のように全てが平行に配置されており、ケージ81の回転によってボビン86a,87aの位置が変わっても回転軸86b、87bの向きは変わらない。よって、光ファイバユニット2に撚り付けられた電線3および介在4は、長手方向に捻じれを伴った撚り返し有りの状態となる(
図4参照)。
【0060】
また、例えば電線3および介在4が光ファイバユニット2の周囲に撚り返し無しの状態で撚り付けられる場合、ケージ81、電線サプライ86、および介在サプライ87の構成は、例えば
図11に示すような構成となる。
図11も上記同様にケージ81をミッドホイールキャプスタン76側から見た図である。
【0061】
ケージ81にはボビン86aとボビン87aとが通過孔88を中心として、ボビン86aの回転軸86bとボビン87aの回転軸87bとが円周状となるように配置されている。ボビン86aは回転軸86bを中心として回転して電線3を送り出す。ボビン87aは回転軸87bを中心として回転して介在4を送り出す。ケージ81は、通過孔88(光ファイバユニット2)を中心として矢印Eの方向へ回転する。
【0062】
光電気複合ケーブル1の製造時において、全てのボビン(ボビン86a,ボビン87a)がケージ81の回転に伴って、光ファイバユニット2を中心としてその位置が回転する。これにより、電線3或いは介在4の送り出し位置が回転しながらそれぞれ電線3或いは介在4を送り出していくので、光ファイバユニット2の周囲に電線3および介在4が撚り付けられていく(
図3参照)。回転軸86b、87bは
図11のように円周状となるように配置されており、ケージ81の回転によってボビン86a,87aの位置が変わると、回転軸86b、87bの向きが変わる。よって、光ファイバユニット2に撚り付けられた電線3および介在4は、長手方向に捻じれがない撚り返し無しの状態(
図5参照)となる。
【0063】
また、例えば電線3および介在4が光ファイバユニット2の周囲にストレートな状態で配置される場合、ケージ81、電線サプライ86、および介在サプライ87の構成は、例えば
図12に示すような構成となる。
図12も上記同様にケージ81をミッドホイールキャプスタン76側から見た図である。
【0064】
ケージ81には上記
図10と同様に、ボビン86aとボビン87aとがそれぞれの回転軸86bと87bとを平行にして配置されている。ボビン86aは回転軸86bを中心として回転して電線3を送り出す。ボビン87aは回転軸87bを中心として回転して介在4を送り出す。一方、ケージ81は回転しない。
【0065】
光電気複合ケーブル1の製造時において、全てのボビン(ボビン86a,ボビン87a)は、位置を変えずに電線3或いは介在4をそれぞれ送り出す。これにより、光ファイバユニット2の周囲にストレートな状態(
図6参照)で電線3および介在4が配置される。
【0066】
このような構成の製造装置7により光電気複合ケーブル1は以下のように製造される。
先ず、ファイバサプライ71から光ファイバ心線21が送り出されるとともに、抗張力繊維サプライ72から抗張力繊維22が送り出される。各ダンサローラ73で所定の張力を掛けながら光ファイバ心線21および抗張力繊維22が走行される。集合目板74で光ファイバ心線21および抗張力繊維22が所定の位置に配列され、配列された光ファイバ心線21および抗張力繊維22の周囲が巻き回しテープ23によって筒体状にルー
ズに覆われ光ファイバユニット2が形成される。形成された光ファイバユニット2に対しミッドホイールキャプスタン76によって所定の張力T1が掛けられながら次工程へ連続的に走行される(以上、ユニット形成工程の一例)。
【0067】
続いて、上記ユニット形成工程から連続的に走行されてきた光ファイバユニット2の周囲に、ケージ81の電線サプライ86から送り出された電線3と介在サプライ87から送り出された介在4とが撚り付けられる。集合目板82で光ファイバユニット2に対する電線3および介在4が所定の位置に配列され、配列された光ファイバユニット2、電線3、および介在4の周囲に押え巻きテープ5が巻かれる。押え巻きテープ5が巻かれた状態の光ファイバユニット2に対しダンサローラ84によって所定の張力T2が掛けられながら走行される。押え巻きテープ5が巻かれた状態の光ファイバユニット2は、巻取りドラム85によって巻き取られる(以上、撚り付け工程の一例)。
【0068】
上記の場合、巻き回しテープ23の巻き付け点B(
図9参照)における光ファイバユニット2に掛かる張力T1は、押え巻きテープ5の巻き付け点C(
図9参照)における押え巻きテープ5が巻かれた状態の光ファイバユニット2に掛かる張力T2よりも高くなるように設定される。
【0069】
以上のような光電気複合ケーブルの製造方法によれば、巻き回しテープ23を光ファイバ心線21および抗張力繊維22の周囲に巻き回し、巻き回しテープ23の外側に電線3を撚り付ける。これにより、チューブを用いずに光ファイバ心線21と電線3との離間を図る構造にすることができる。このため、押出成形によってチューブを形成する別の工程を必要としないので、光電気複合ケーブル1の製造コストを抑えることができる。
【0070】
また、ユニット形成工程において光ファイバ心線21に巻き回しテープ23を巻き回して光ファイバユニット2を形成する際には、巻き回しテープ23に適切な張力T1を掛けることにより、巻き回しテープ23のピッチや重なり幅を一定にして巻き回すことができる。その後、撚り付け工程において電線3が撚り付けられた光ファイバユニット2に掛かる張力T2をユニット形成工程において光ファイバユニット2に掛かる張力T1よりも低くする。これにより、巻き回しテープ23の巻きが緩み、巻き回しテープ23内の空間に余裕が生じるので、適度にルー
ズな状態が実現できる。このように巻き回しテープ23がルー
ズに巻かれると、例えばケーブルの端末加工の際に光ファイバ心線21を光ファイバユニット2から数mm程度出し入れすることができ、ケーブル端末におけるコネクタの取り付け作業等を効率良く行うことができる。
【0071】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。