(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834772
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】温水装置
(51)【国際特許分類】
F23D 14/02 20060101AFI20210215BHJP
F24H 1/14 20060101ALI20210215BHJP
F24H 9/18 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
F23D14/02 A
F24H1/14 B
F24H9/18 302A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-100699(P2017-100699)
(22)【出願日】2017年5月22日
(65)【公開番号】特開2018-194276(P2018-194276A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】三浦 敬一
【審査官】
堀川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−78542(JP,A)
【文献】
実公昭53−50907(JP,Y1)
【文献】
特開平7−167582(JP,A)
【文献】
特開昭58−193039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/00
F24H 1/00
F24H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼用空気を供給するファンと、前記ファンに接続されて内部のチャンバーに混合気が形成されるチャンバーケースと、前記チャンバーから供給される混合気を燃焼させる逆燃式のバーナと、このバーナで発生した燃焼ガスがケース内部に供給されて湯水を加熱する熱交換器と、前記チャンバーケースの周縁フランジと前記ケースの周縁フランジの間に装着されたパッキンとを備えた温水装置において、
前記バーナは前記ケース内に配置されて、前記バーナに設けられた外周フランジが前記ケースの内部壁面に固定されていることを特徴とする温水装置。
【請求項2】
前記熱交換器のケースの内部壁面には、前記バーナの外周フランジを下側から保持可能な保持フランジが設けられ、前記バーナの外周フランジが前記ケースの内部壁面又は前記保持フランジにろう付けにより固定されていることを特徴とする請求項1に記載の温水装置。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記ケースの内部を横断するように設けられた複数の伝熱管と、前記複数の伝熱管が挿通される複数の伝熱フィンと、前記ケースを冷却する複数の冷却管とを備え、前記複数の冷却管の少なくとも一部が、前記バーナよりも前記チャンバー寄りの位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆燃式の温水装置に関し、バーナを熱交換器のケース内に配置してバーナから前記ケースへ放熱させることで、バーナからチャンバーケース及び混合ガスシール用パッキンへの伝熱量を大幅に低減したものに関する。
【背景技術】
【0002】
図12、
図13に示すように、従来の全一次タイプの逆燃式の温水装置100は、燃焼用空気を供給するファン(図示略)と、このファンに接続されて内部のチャンバー101aに混合気が形成されるチャンバーケース101と、チャンバーケース101のフランジ部101bのパッキン溝101cに装着された混合ガスシール用パッキン102と、チャンバー101aから供給される混合気を燃焼させる逆燃式バーナ103と、バーナ103で発生した燃焼ガスが供給されて湯水を加熱する熱交換器105と、バーナ10 3のフランジ部103aと熱交換器105のケース105aのフランジ部105bとの間に装着された排ガスシール用のパッキン104とを備えている。チャンバーケース101の頂部には、複数の放熱用フィン101dが形成されている。
【0003】
特許文献1に記載の燃焼装置においては、バーナボディ(チャンバーケース)のフランジ部と燃焼筐(熱交換器のケース)のフランジ部との間に、燃焼板(バーナ)のフランジ部をパッキンと共に挟着してボルトで締結する構造が採用されている。
【0004】
特許文献2に記載のガスボイラーにおいては、ガス供給チャンバーのチャンバーケースのフランジ部と熱交換器のケースのフランジ部との間に、バーナのフランジ部をパッキンと共に挟着して固定した構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−223710号公報
【特許文献2】特表2016−503484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12、
図13に示す逆燃式の温水装置100においては、内部のチャンバー101aに混合気が形成されるチャンバーケース101のフランジ部101bと、バーナ103のフランジ部103aの間に、混合ガスシール用パッキン102とパッキン押え板102aとが挟着され、バーナ103のフランジ部103aと熱交換器105のケース105aのフランジ部105bとの間に排ガスシール用パッキン104が挟着され、それらが複数のビスにより締結されている。
【0007】
それ故、バーナからの伝熱によりバーナのフランジ部が過度に加熱されることになり、
混合ガスシール用パッキンとして耐熱グレードの高い材料製の高価なものを使用する必要があった。そして、バーナのフランジ部へ伝熱した熱は、チャンバーケース及びチャンバーケースの外面側に形成した複数の放熱フィンから大気中へ放出するため、その熱を湯水の加熱に有効活用できなかった。
【0008】
特許文献1,2の装置においても、チャンバーケースのフランジ部と熱交換器のケースのフランジ部との間に、バーナのフランジ部を混合気シール用のパッキンと共に挟着して固定した構造が採用されているため、上記と同様に、バーナからそのフランジ部へ多量のの伝熱が発生し、上記と同様の問題があった。
【0009】
本発明の目的は、逆燃式バーナを熱交換器のケース内に配置し、バーナの周縁フランジから熱交換器のケースへ伝熱させるようにした温水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の温水装置は、燃焼用空気を供給するファンと、前記ファンに接続されて内部のチャンバーに混合気が形成されるチャンバーケースと、前記チャンバーから供給される混合気を燃焼させる逆燃式のバーナと、このバーナで発生した燃焼ガスがケース内部に供給されて湯水を加熱する熱交換器と、前記チャンバーケースの周縁フランジと前記ケースの周縁フランジの間に装着されたパッキンとを備えた温水装置において、前記バーナは前記ケース内に配置されて、前記バーナに設けられた外周フランジが前記ケースの内部壁面に固定されていることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、バーナは熱交換器のケース内に配置されて、バーナの外周フランジが前記ケースの内部壁面に固定されているため、バーナの外周フランジに伝熱した熱は熱交換器のケースから伝熱管や冷却管やフィンを介して湯水に伝熱し、湯水の加熱に有効活用することができる。
【0012】
しかも、バーナの外周フランジが過度に加熱されないため、混合気シール用パッキンを耐熱グレードを下げた材料で安価に製作することができる。
【0013】
請求項2の温水装置は、請求項1の発明において、前記熱交換器のケースの内部壁面には、前記バーナの外周フランジを下側から保持可能な保持フランジが設けられ、前記バーナの外周フランジが前記ケースの内部壁面又は前記保持フランジにろう付けにより固定されていることを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、前記バーナの外周フランジが前記ケースの内部壁面又は前記保持フランジにろう付けにより固定されているため、前記バーナの外周フランジを前記ケースの内部壁面に簡単な構造で支持させることができる。
【0015】
請求項3の温水装置は、請求項1又は2の発明において、前記熱交換器は、前記ケースの内部を横断するように設けられた複数の伝熱管と、前記複数の伝熱管が挿通される複数の伝熱フィンと、前記ケースを冷却する複数の冷却管とを備え、前記複数の冷却管の少なくとも一部が、前記バーナよりも前記チャンバー寄りの位置に配置されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、バーナの外周フランジから熱交換器のケースに伝熱した熱がケースの上方へ伝熱したとしても、前記冷却管の少なくとも一部が、前記バーナよりも前記チャンバー寄りの位置に配置されているため、上記の伝熱した熱は冷却管内の湯水に確実に吸収される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のような種々の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る温水装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づいて説明する。
図1〜
図7に示すように、全一次タイプの逆燃式の温水装置1は、燃焼用空気を供給するファン2と、内部にチャンバー3が形成されるチャンバーケース4と、このチャンバーケース4の下方に配設された逆燃式のバーナ5と、チャンバーケース4の下方に配設された顕熱回収用の熱交換器6と、混合気シール用のパッキン7等を備えている。尚、
図1におけるF、L、Rを前方、左方、右方として説明する。
【0019】
ファン2は、例えばターボファンからなり、チャンバーケース4の上側に配設され、ファン2の吹出し口2aがチャンバーケース4のファン接続口4aに接続されている。チャンバーケース4はアルミニウム合金製のもので、内部に混合気が形成されるチャンバー3を有すると共に頂部にファン接続口4aを有する。ファン2には燃料ガスを供給するベンチュリ2bが付設され、チャンバー3内に燃焼用空気と燃料ガスとからなる混合気が形成される。
【0020】
チャンバーケース4の上面部には、3つの放熱フィン4bが形成されているが、これらは省略可能である。チャンバーケース4の周縁部には周縁フランジ4cが形成され、この周縁フランジ4cにはその下面に開口するパッキン溝が凹設され、そのパッキン溝に混合気シール用のパッキン7が装着されている(
図8、
図9参照)。
【0021】
図2、
図3、
図5、
図7に示すように、逆燃式のバーナ5は、多数の小孔を全面に形成したステンレス製の整流板8と、この整流板8の下面に重ね合せたセラミック繊維製の耐熱マット9と、これら整流板8と耐熱マット9の外周部を支持する鋼板製の支持枠体10とで、平面視矩形状に形成されている。整流板8と耐熱マット9は、前後方向の中央部分がもっとも低くなるように部分円筒状に緩く湾曲している。尚、バーナ5の形状や素材は上記に限定されない。
【0022】
バーナ5の支持枠体10はその外周部に水平枠状の外周フランジ10aを有し、この外周フランジ10aには、その外縁部を鉛直下方へ屈曲してなる小幅の取付けフランジ10bが形成されている。バーナ5は、熱交換器6のケース11内のうちのケース11の上端から所定距離低い位置に配設され、外縁部の取付けフランジ10bをケース11の内部壁面にろう付けすることによりケース11の内部に固定されている。前記ケース11内においてバーナ5の下側には燃焼空間22が形成されている(
図7参照)。
【0023】
図2、
図5、
図7に示すように、顕熱回収用の熱交換器6は、直方体状の矩形筒状のステンレス板製のケース11と、このケース11の上端部に形成され且つチャンバーケース4の周縁フランジ4cに複数のビスで固定される周縁フランジ11aと、ケース11内の下部に左右方向向きに配設された8本の伝熱管12と、これら伝熱管12が貫通しこれら伝熱管12にろう付けされた複数のフィン13と、ケース11の前側板と後側板の上部と中段部に付設された3本の冷却管14と、ケース11の右側板の外面や左側板の外面に形成された複数の通路形成部15と、湯水導入口18a及び湯水導出口18bと、点火プラグ19及びフレームロッド20等を備えている。
【0024】
バーナ5の外周フランジ10aは、最上段の冷却管14の直下に対応する位置に配設され、最上段の冷却管14は、バーナ5の外周フランジ10aよりもチャンバー3寄りの位置にあり、バーナ5の取付けフランジ10bが冷却管14の直下においてケース11の内部壁面にろう付けにて接合されているため、バーナ5の外周フランジ10aをケース11及び冷却管14により冷却する冷却性能を高めることができる。
【0025】
以上説明した温水装置1の作用、効果について説明する。
バーナ5は熱交換器6のケース11内に配置されて、バーナ5の外周フランジ10aがケース11の内部壁面に固定されているため、バーナ5の外周フランジ10aに伝熱した熱は熱交換器6のケース11から伝熱管12や冷却管14やフィン13を介して湯水に伝熱するため、湯水の加熱に有効活用することができる。
【0026】
しかも、バーナ5の外周フランジ10aが過度に加熱されないため、混合気シール用パッキン7を耐熱グレードを下げた材料で安価に製作することができる。また、チャンバーケース4への伝熱量が少なくなると混合気の温度上昇が抑制され、その結果として排ガス中のNOX値の低減も可能となる。
しかも、バーナ5をケース11にろう付けしているので、バーナ5の外周フランジ10aと熱交換器6のケース11の周縁フランジ11a間に排気ガスシール用のパッキンを装着する必要がなくなり、排気ガスシール用パッキンを省略することができる。
さらに、チャンバーケース4の上面部に形成する放熱用フィン4bの数を非常に少なくしたり、省略したりすることが可能になる。
【0027】
バーナ5の外周フランジ10aの外縁部の取付けフランジ10bがケース11の内部壁面にろう付けにより固定されているため、バーナ5の外周フランジ10aをケース11の内部壁面に簡単な構造で支持させることができる。
【0028】
熱交換器6は、ケース11の内部を横断するように設けられた複数の伝熱管12と、複数の伝熱管12が挿通される複数の伝熱フィン13と、ケース11を冷却する複数の冷却管14とを備え、複数の冷却管14の少なくとも一部が、バーナ5よりもチャンバー3寄りの位置に配置されているため、バーナ5の外周フランジ10aから熱交換器6のケース11に伝熱した熱がケース11の上方へ伝熱したとしても、冷却管14の少なくとも一部が、バーナ5よりもチャンバー3寄りの位置に配置されているため、上記の伝熱した熱は冷却管14内の湯水に確実に吸収される。
【0029】
尚、熱交換器6のケース11内におけるバーナ5の上側空間は、チャンバー3として活用できるので、チャンバーケース4を偏平化することができ、例えば、ファン2を縦向きに配置するなど、取付け自由度も増える。
【0030】
次に、前記実施形態を部分的に変更した例について説明する。
図10、
図11に示すように、バーナ5の外周フランジ10aの取付けフランジ10bが省略され、その取付けフランジ10bを外周フランジ10aから分断したような断面アングル状の保持フランジ10fが熱交換器5のケース11の内部壁面にろう付けにて固定され、バーナ5の外周フランジ10cが保持フランジ10fの上端面にろう付けにて固定される。
【0031】
この構成によれば、保持フランジ10fをケース11の内部壁面にろう付けする作業が簡単化するうえ、外周フランジ10cを保持フランジ10fの上端面にろう付けする作業が簡単化する。但し、バーナ5の外周フランジ10cの先端をケース11の内部壁面に直接ろう付けしてもよい。
【0032】
バーナ5の外周フランジ10a,10cの、ケース11の内部壁面への固定構造は、ろう付けが好ましいが、ろう付けが必須の構造ではない。例えば、取付けフランジ10bをケース11の内部壁面に嵌合させて固定する構造でもよい。また、外周フランジ10cを保持フランジ10fに締結部材を用いて固定する構造でもよい。
【0033】
前記実施形態の温水装置に潜熱回収用熱交換器を設ける場合もある。その他、当業者ならば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような種々の変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0034】
1 温水装置
2 ファン
3 チャンバー
4 チャンバーケース
4c 周縁フランジ
5 バーナ
6 熱交換器
7 パッキン
10a,10c 外周フランジ
10b 取付けフランジ
10f 保持フランジ
11 ケース
11a 周縁フランジ
12 伝熱管
13 フィン
14 冷却管