特許第6834894号(P6834894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834894
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】管ガラス製造装置及び管ガラス製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/04 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
   C03B17/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-197054(P2017-197054)
(22)【出願日】2017年10月10日
(65)【公開番号】特開2019-69879(P2019-69879A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真史
(72)【発明者】
【氏名】室園 龍三
(72)【発明者】
【氏名】西村 康宏
【審査官】 大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−044123(JP,A)
【文献】 特開2013−023433(JP,A)
【文献】 特開2006−321713(JP,A)
【文献】 特開2002−321934(JP,A)
【文献】 特表2015−530347(JP,A)
【文献】 特開2005−114645(JP,A)
【文献】 特開2016−041650(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/022293(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/00− 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを供給する供給部と、前記供給部から溶融ガラスが供給されながら上下方向の軸線周りに回転する成形体とを備え、回転中の前記成形体から溶融ガラスを流下させることによって管ガラスを製造する管ガラス製造装置であって、
前記成形体は、内周縁と外周縁の間で溶融ガラスを受ける受皿部を一つ又は上下方向に間隔を置いて複数備え、
一つ又は複数の前記受皿部のそれぞれは、前記内周縁から前記外周縁に移行するに従って漸次低くなるように傾斜した円すい状をなすと共に、前記外周縁から溶融ガラスを流下するように構成されており、
最上段の前記受皿部から順に、それぞれの前記受皿部の前記内周縁と前記外周縁の間の斜辺長さをL(mm),L(mm),…,L(mm)、それぞれの前記受皿部の水平面に対する傾斜角度をα(°),α(°),…,α(°)とした場合に、
/α+L/α+…+L/α≧2 (nは1以上の整数)
なる関係を満たすことを特徴とする管ガラス製造装置。
【請求項2】
最上段の前記受皿部が、L/α≧2なる関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の管ガラス製造装置。
【請求項3】
最上段の前記受皿部の傾斜角度αが、15°以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の管ガラス製造装置。
【請求項4】
前記成形体が、前記外周縁の下方位置で前記外周縁から流下した溶融ガラスを案内する筒状の側面部を備え、
前記側面部が、下方に向かって漸次縮径する絞り部を一つ又は上下方向に間隔を置いて複数備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の管ガラス製造装置。
【請求項5】
最下段の前記絞り部の垂直面に対する傾斜角度が、15°以下であることを特徴とする請求項4に記載の管ガラス製造装置。
【請求項6】
上下方向の軸線周りに回転している成形体に、供給部から溶融ガラスを供給し、前記成形体から溶融ガラスを流下させることにより管ガラスを製造する管ガラス製造方法であって、
前記成形体は、溶融ガラスを受ける受皿部を一つ又は上下方向に間隔を置いて複数備え、
一つ又は複数の前記受皿部のそれぞれは、内周縁から外周縁に移行するに従って漸次低くなるように傾斜した円すい状をなし、
最上段の前記受皿部から順に、それぞれの前記受皿部の前記内周縁と前記外周縁の間の斜辺長さをL(mm),L(mm),…,L(mm)、水平面に対する傾斜角度をα(°),α(°),…,α(°)とした場合に、
/α+L/α+…+L/α≧2 (nは1以上の整数)
なる関係を満たし、
溶融ガラスを一つ又は複数の前記受皿部のそれぞれの前記内周縁と前記外周縁の間で受けると共に、溶融ガラスをそれぞれの前記外周縁から流下する工程を含むことを特徴とする管ガラス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管ガラス製造装置及び管ガラス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光灯などに使用される管ガラスを製造する方法として、例えば特許文献1には、上下方向の軸線周りに回転している成形体に供給部から溶融ガラスを供給すると共に、その供給した溶融ガラスを成形体から流下させることで管ガラスを製造することが開示されている。
【0003】
同文献では、成形体は、回転中に供給された溶融ガラスを受ける上面を備えており、上面の外周縁から溶融ガラスを流下する構成とされている。このような構成にすれば、成形体の交換時間を短縮すると共に管ガラスを大径化することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−44123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示の製造方法において、管ガラスの外径や厚みなどの品質の向上を図るには、成形体を流下する溶融ガラスの厚み変動を可及的に低減することが重要となる。
【0006】
しかしながら、成形体に供給されるまでの温度変動などにより供給される溶融ガラスの粘度などが変化し、単位時間当たりに成形体に供給される溶融ガラスの供給量が変動する場合がある。このように溶融ガラスの供給量が変動すると、成形体上において溶融ガラスの厚みに変動が生じやすくなる。
【0007】
本発明は、成形体上における溶融ガラスの厚み変動を可及的に低減し、高品質の管ガラスを製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、溶融ガラスを供給する供給部と、供給部から溶融ガラスが供給されながら上下方向の軸線周りに回転する成形体とを備え、回転中の成形体から溶融ガラスを流下させることによって管ガラスを製造する管ガラス製造装置であって、成形体は、内周縁と外周縁の間で溶融ガラスを受ける受皿部を一つ又は上下方向に間隔を置いて複数備え、一つ又は複数の受皿部のそれぞれは、内周縁から外周縁に移行するに従って漸次低くなるように傾斜した円すい状をなすと共に、外周縁から溶融ガラスを流下するように構成されており、最上段の受皿部から順に、それぞれの受皿部の内周縁と外周縁の間の斜辺長さをL(mm),L(mm),…,L(mm)、それぞれの受皿部の水平面に対する傾斜角度をα(°),α(°),…,α(°)とした場合に、
/α+L/α+…+L/α≧2…(1)
なる関係を満たすことを特徴とする。ただし、Lは上からn段目(最下段)の受皿部の斜辺長さ、αは上からn段目(最下段)の受皿部の傾斜角度である。nは1以上の整数であり、受皿部を一つのみ設ける場合(n=1の場合)、すなわち、最上段の受皿部のみを設ける場合も含まれる。このような構成によれば、一つ又は複数の受皿部のそれぞれにおいて、斜辺(母線)長さと傾斜角度の関係が最適化される。詳細には、上記の式(1)の関係を満たすと、受皿部の傾斜角度が大きくなって外周縁側への溶融ガラスの移動速度が速くなっても、その移動速度に応じて受皿部の斜辺長さも十分大きくなる。従って、受皿部上における溶融ガラスの滞在時間を十分に確保できるため、溶融ガラスの単位時間当たりの供給量に変動が生じても、溶融ガラスが受皿部を移動する過程でその厚みが均される。
【0009】
上記の構成において、最上段の受皿部が、
/α≧2…(2)
なる関係を満たすことが好ましい。最上段の受皿部において、溶融ガラスの温度が高く粘度も低いため、溶融ガラスの厚みを均す効果が最も高い。従って、最上段の受皿部で、上記の式(2)を満たすことが、溶融ガラスの厚み変動を低減する上でも好ましい。
【0010】
上記の構成において、最上段の受皿部の傾斜角度αが、15°以下であることが好ましい。このようにすれば、最上段の受皿部の傾斜角度が非常に小さくなることから、受皿部上における溶融ガラスの移動速度が十分遅くなる。従って、最上段の受皿部における溶融ガラスの厚みを均す効果がより高くなる。
【0011】
上記の構成において、成形体が、外周縁の下方位置で外周縁から流下した溶融ガラスを案内する筒状の側面部を備え、側面部が、下端部において、下方に向かって漸次縮径する絞り部を一つ又は上下方向に間隔を置いて複数備えていることが好ましい。このようにすれば、受皿部で溶融ガラスの厚みを均した後、所定の直径まで溶融ガラスを絞ることができるので、受皿部の外周縁の直径よりも小さい様々な直径のガラス管を製造しやすくなる。
【0012】
この場合、最下段の絞り部の垂直面に対する傾斜角度が、15°以下であることが好ましい。最下段の絞り部では、溶融ガラスが下方へ流下する際に成形体の直径が小さくなりガラスの厚みが増すことになる。そのため、最下段の絞り部の垂直面に対する傾斜角度が大きすぎると、絞り部における急激なガラス厚みの変化によって、溶融ガラスの流れが乱れるおそれがある。このような現象が生じると、溶融ガラスの厚み変動を生じさせる要因の一つとなり得る。従って、最下段の絞り部の傾斜角度は上記数値範囲とし、最下段の絞り部における溶融ガラスの急激な流れ方向の変化を抑制することが好ましい。
【0013】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、上下方向の軸線周りに回転している成形体に、供給部から溶融ガラスを供給し、成形体から溶融ガラスを流下させることにより管ガラスを製造する管ガラス製造方法であって、成形体は、溶融ガラスを受ける受皿部を一つ又は上下方向に間隔を置いて複数備え、一つ又は複数の受皿部のそれぞれは、内周縁から外周縁に移行するに従って漸次低くなるように傾斜した円すい状をなし、上記の式(1)を同様に満たし、溶融ガラスを一つ又は複数の受皿部のそれぞれの内周縁と外周縁の間で受けると共に、溶融ガラスをそれぞれの外周縁から流下する工程を含むことを特徴とする。このような構成によれば、既に述べた対応する構成と同様の作用効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のような本発明によれば、成形体上における溶融ガラスの厚み変動を可及的に低減し、高品質の管ガラスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一実施形態に係る管ガラス製造装置を示す正面図である。
図2】(A)が成形炉の縦断面図、(B)が成形炉の横断面図である。
図3】成形体の縦断面図である。
図4】成形体の変形例を示す縦断面図である。
図5】第二実施形態に係る管ガラス製造装置の成形体の縦断面図である。
図6】実施例における溶融ガラスの流量の時間変動を示す図である。
図7】実施例で用いた成形体を示す正面図であって、(A)が実施例1の成形体、(B)が実施例2の成形体、(C)が実施例3の成形体、(D)が実施例4の成形体、(E)が実施例5の成形体である。
図8】実施例における溶融ガラスの厚みの時間変動の測定結果を示す図であって、(A)が実施例1の結果、(B)が実施例2の結果、(C)が実施例3の結果、(D)が実施例4の結果、(E)が実施例5の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0017】
(第一実施形態)
図1に示すように、第一実施形態に係る管ガラス製造装置1は、例えば蛍光灯等に使用される管ガラスを製造するものであって、溶解槽2と、供給管3と、成形炉4とを備えている。
【0018】
溶解槽2は、溶融ガラスGmを生成及び貯留する。
【0019】
供給管3は、溶解槽2から溶融ガラスGmを成形炉4内に供給する供給部である。本実施形態では、供給管3は、白金等の導電性金属で形成されている。
【0020】
成形炉4は、その内部に、供給管3から溶融ガラスGmを供給されながら上下方向の軸線J周りに回転する成形体5を有する。
【0021】
成形体5は、管ガラスを連続的に成形する成形手段であり、成形体5は、その外表面に沿って溶融ガラスGmを流下させて管ガラスを連続的に成形する。成形体5は、不図示の駆動装置によって回転駆動される。回転中の成形体5から流下する溶融ガラスGmは、成形体5の下方位置において不図示の管引き装置によって下方に牽引される。
【0022】
管ガラス製造装置1は、供給管3を加熱する第一加熱手段6を備えている。第一加熱手段6は、供給管3に接続された電極であり、供給管3を通電加熱する。これにより、供給管3内を流れる溶融ガラスGmの粘度を調整する。
【0023】
勿論、第一加熱手段6は、これに限定されず、例えば供給管3の周囲に配置したヒータ等であってもよい。
【0024】
供給管3から成形体5に供給される溶融ガラスGmの温度は、溶融ガラスGmの組成にもよるが、例えば1000℃〜1300℃である。
【0025】
供給管3から成形体5に供給される溶融ガラスGmの粘度は、100Pa・s〜2000Pa・sであることが好ましく、500Pa・s〜1000Pa・sであることが特に好ましい。
【0026】
溶融ガラスGmのガラス組成は、例えば、質量%で、SiO 60〜80%、B 0〜20%、Al 0〜15%、NaO 0〜10%、KO 0〜10%、LiO 0〜5%、CaO 0〜5%、BaO 0〜10%、SrO 0〜5%を含有する。
【0027】
管ガラス製造装置1は、成形炉4内を加熱する第二加熱手段7を備えている。第二加熱手段7は、成形体5の外周側に配置され、成形炉4内を加熱することにより、成形体5を流下する溶融ガラスGmを加熱する。これにより、成形体5を流下する溶融ガラスGmの粘度を調整する。
【0028】
図2(A)及び(B)に示すように、本実施形態では、第二加熱手段7は、均熱板7a(耐火物)と、均熱板7aを外周側から加熱するヒータ7bとを備えている。
【0029】
均熱板7aは、成形炉4の周壁を構成する。均熱板7aは、成形体5の周方向に沿って複数配設されており、成形体5の周方向では、同一の温度となるように構成されている。
【0030】
図3に示すように、成形体5は、スリーブ部8と、スリーブ部8を下側から支持するメタルチップ9とを備えている。スリーブ部8は、例えば耐火物で構成され、本体部8aと、本体部8aの上端から上方に延びる軸部8bとを備えている。スリーブ部8は、その内部に軸線J方向に沿って延びる孔を有し、孔内には、例えば白金等の金属管10が配設されている。金属管10の上端は、不図示のエアコンプレッサに接続されている。金属管10の下端には、メタルチップ9が連結されている。メタルチップ9は、例えば白金等の金属で構成されている。メタルチップ9には、軸線J方向に沿った貫通孔9aが形成されており、貫通孔9aは、金属管10の内部に連通している。
【0031】
スリーブ部8の軸部8bと、スリーブ部8内の金属管10は、上方で、不図示の駆動装置から回転駆動力を付与され、これによって、スリーブ部8とメタルチップ9は、同期して回転する。
【0032】
成形体5の回転速度は、例えば、3rpm〜15rpmである。
【0033】
図3に示すように、成形体5は、スリーブ部8の本体部8aの上端部に受皿部11を備えている。本実施形態では、受皿部11が最上段の受皿部となる。受皿部11は、内周縁11aから外周縁11bに移行するに従って漸次低くなるように傾斜した円すい状をなす。受皿部11は、内周縁11aと外周縁11bとの間で、回転中に供給管3から供給された溶融ガラスGmを受けると共に、受けた溶融ガラスGmを外周縁11bから流下させるように構成されている。
【0034】
本実施形態では、供給管3は、受皿部11の内周縁11a近傍の一個所に、溶融ガラスGmを落下供給するようになっている。
【0035】
受皿部11の内周縁11aと外周縁11bの間の斜辺長さをL(mm)、受皿部11の水平面に対する傾斜角度をα(°)とした場合に、L/α≧2なる関係が成立する。L/αは5以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。αは15°以下であることが好ましく、10°以下であることがより好ましい。ここで、αの値が大きくなれば、受皿部11の外周縁11b側に向かう溶融ガラスGmの流下速度が速くなり、Lの値が大きくなれば、外周縁11bまでの距離が長くなって受皿部11の面積が大きくなる。そのため、上記の関係式を満たせば、受皿部11の外周縁11bに向かう溶融ガラスGmの流れ速度に対して受皿部11の面積が適切に大きくなり、受皿部11における溶融ガラスGmの滞在時間が十分に長くなる。従って、溶融ガラスGmの単位時間当たりの供給量が変動しても、溶融ガラスGmが受皿部11上を十分な時間を掛けて移動する過程でその厚みが均される。換言すれば、溶融ガラスGmが厚み変動を生じたまま外周縁11bから流下するという事態を抑制することができる。
【0036】
なお、省スペース化等を考慮した場合、L/αは15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。また、α>0であるが、αが小さすぎると、溶融ガラスGmの流れ速度が遅くなりすぎ、受皿部11上で溶融ガラスGmが失透するおそれがある。従って、αは2°以上であることが好ましく、5°以上であることがより好ましい。
【0037】
成形体5は、スリーブ部8の本体部8a及びメタルチップ9の外周面で構成される筒状の側面部12を有する。側面部12には、回転中に外周縁11bから流下した溶融ガラスGmが流下する。本実施形態では、側面部12は、外周縁11bに接続する第一均一径部12aと、第一均一径部12aの下端に接続する第一絞り部12bと、第一絞り部12bの下端に接続する第二均一径部12cと、第二均一径部12cの下端に接続する第二絞り部12dとを備えている。第一及び第二均一径部12a,12cは、軸方向で径が均一な円筒状の部位である。第二均一径部12cは、第一均一径部12aに比較して径が小さい。第一及び第二絞り部12b,12dは、下方に向かって漸次縮径する逆円すい状の部位である。本実施形態では、第二絞り部12dは、メタルチップ9の外周面を含む、最下段の絞り部となる。最下段の絞り部の垂直面に対する傾斜角、すなわち、第二絞り部12dの垂直面に対する傾斜角度βは、20°以下であることが好ましく、15°以下であることがより好ましい。一方、第一絞り部12bの垂直面に対する傾斜角度βは、例えば傾斜角度βよりも大きくてもよく、22°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましく、17°以下であることが更に好ましく、15°以下であることがより特に好ましい。
【0038】
勿論、成形体5の形状は、受皿部11がL/α≧2なる関係を満たしていれば、図3で説明した形状に限定されるものではない。例えば、図3で説明した形状において、側面部12の第二均一径部12cと第二絞り部12dとを省略してもよい。すなわち、図4(A)に示すように、側面部12が、均一径部と絞り部とを一つずつ備えた構成であってもよい。また、例えば、成形体5は、図4(B)に示すように、側面部12が絞り部を有さずに、側面部12が均一径部だけで構成されてもよく、図4(C)に示すように、側面部12を有さなくてもよい。ここで、これら図4(A)〜(C)に例示した成形体5においても、L/α≧2なる関係を満たす。更に、図4(A)に例示した成形体5では、最下段の絞り部に対応する傾斜角度βは15°以下であることが好ましい。
【0039】
次に、図1及び図3に基づいて管ガラス製造装置1による管ガラスの製造方法について説明する。
【0040】
予め、溶解槽2でガラス原料から溶融ガラスGmを生成して貯留しておく。また、第一加熱手段6で供給管3を所定の温度に加熱すると共に、第二加熱手段7で成形炉4内を所定の温度に加熱しておく。そして、エアコンプレッサを起動して、金属管10内にエアを供給する。金属管10内に供給されたエアは、貫通孔9aを経由してメタルチップ9の下端から下方へ噴出する。
【0041】
次に、不図示の駆動装置によって、成形体5を上下方向の軸線J周りに回転させる。そして、溶解槽2から供給管3に溶融ガラスGmを供給し、供給管3の供給口から成形体5の受皿部11に溶融ガラスGmを供給する。すると、溶融ガラスGmは、成形体5の受皿部11に受けられ、受皿部11の外周縁11bから流下する。詳細には、供給管3から供給された溶融ガラスGmは、溶融状態の一本の帯状(線状)ガラスを形成する。その帯状ガラスは、成形体5の回転によって受皿部11上で巻き取られる。この過程で帯状ガラスが互いに重なりながら受皿部11全体に放射状に広がり、外周縁11bから流下する。その後、外周縁11bから流下した溶融ガラスGmは、成形体5の側面部12を流下する。
【0042】
成形体5の側面部12の下端から流下した溶融ガラスGmは管状となり、溶融状態の管ガラスとなる。この際、成形体5のメタルチップ9の下端から噴出するエアにより溶融ガラスGmは安定して管状となる。この溶融状態の管ガラスが、徐々に固化しつつ、その下流側で不図示の管引き装置によって下方向に牽引される。この際、管引き装置は、管ガラスを軸線J周りに回転させながら牽引してもよい。これによって、管ガラスが製造される。製造された管ガラスは所定長さに切断される。この切断方法は、特に限定されるものでは無いが、例えば、カッター等で切り欠きを形成し、折り割り切断してもよい。
【0043】
製造された管ガラスは、外径や厚みの精度がよい高品質な管ガラスであって、例えば、直径が1mm〜150mmで、ガラスの厚みが0.2mm〜3.0mmである。
【0044】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係る管ガラス製造装置について説明する。なお、第二実施形態では、第一実施形態と同一の構成には同一の符号を付すと共に、詳しい説明を省略する場合がある。
【0045】
第二実施形態に係る管ガラス製造装置については、第一実施形態と異なり、図5(A)及び図5(B)に示すように、成形体が、上下方向に間隔を置いて複数の受皿部を備えている。図5(A)では、成形体が2つの受皿部を有し、図5(B)では、成形体が3つの受皿部を有する。
【0046】
詳述すれば、図5(A)では、成形体21は、第一受皿部22と、第二受皿部23と、第一受皿部22と第二受皿部23との間に設けられた第一側面部24と、第二受皿部23の下方に設けられた第二側面部25とを備えている。
【0047】
第一受皿部22は、円すい状をなし、内周縁22aと外周縁22bとの間で回転中に供給管3から供給された溶融ガラスGmを受けると共に、受けた溶融ガラスGmを外周縁22bから流下させるように構成されている。供給管3は、最上段に位置する第一受皿部22にのみ溶融ガラスGmを直接供給する。
【0048】
第二受皿部23は、円すい状をなし、内周縁23aと外周縁23bとの間で回転中に成形体21を流下する溶融ガラスGmをその途中で受けると共に、受けた溶融ガラスGmを外周縁23bから再び流下させるように構成されている。
【0049】
第一側面部24は、第一受皿部22の外周縁22bに接続する第一均一径部24aと、第一均一径部24aの下端に接続する第一絞り部24bとを備えている。第一絞り部24bの下端には、第二受皿部23が接続されている。
【0050】
第二側面部25は、第二受皿部23の外周縁23bに接続する第二均一径部25aと、第二均一径部25aの下端に接続する第二絞り部25bとを備えている。第二絞り部25bは、メタルチップ9の外周面を含む。第一均一径部24aと第二均一径部25aとは、径が異なっていてもよいが、本実施形態では同径である。
【0051】
また、図5(B)に示すように、成形体21は、第一受皿部26と、第二受皿部27と、第三受皿部28と、第一受皿部26と第二受皿部27との間に設けられた第一側面部29と、第二受皿部27と第三受皿部28との間に設けられた第二側面部30と、第三受皿部28の下方に設けられた第三側面部31とを備えている。
【0052】
第一受皿部26は、円すい状をなし、内周縁26aと外周縁26bとの間で回転中に供給管3から供給された溶融ガラスGmを受けると共に、受けた溶融ガラスGmを外周縁26bから流下させるように構成されている。供給管3は、最上段に位置する第一受皿部26にのみ溶融ガラスGmを直接供給する。
【0053】
第二受皿部27は、円すい状をなし、内周縁27aと外周縁27bとの間で回転中に成形体21を流下する溶融ガラスGmをその途中で受けると共に、受けた溶融ガラスGmを外周縁27bから再び流下させるように構成されている。なお、第三受皿部28も第二受皿部27と同様の構成である。
【0054】
第一側面部29は、第一受皿部26の外周縁26bに接続する第一均一径部29aを備えている。第一均一径部29aの下端には、第二受皿部27が接続されている。
【0055】
第二側面部30は、第二受皿部27の外周縁27bに接続する第二均一径部30aを備えている。第二均一径部30aの下端には、第三受皿部28が接続されている。
【0056】
第三側面部31は、第三受皿部28の外周縁28bに接続する第三均一径部31aと、第三均一径部31aの下端に接続する絞り部31bとを備えている。ここで、第一均一径部29aより第二均一径部30aが大径であり、第二均一径部30aより第三均一径部31aが大径である。
【0057】
図5(A)及び(B)に示すように、複数の受皿部を設ける場合、各受皿部は次の関係式を満たす。すなわち、最上段の受皿部からn段目(最下段)の受皿部まで順に、それぞれの受皿部の内周縁と外周縁の間の斜辺長さをL(mm),L(mm),…,L(mm)、水平面に対する傾斜角度をα(°),α(°),…,α(°)とした場合に、L/α+L/α+…+L/α≧2(好ましくは5)なる関係を満たす。具体的には、図5(A)のようにn=2の場合、第一受皿部22が一段目(最上段)の受皿部、第二受皿部23が二段目(最下段)の受皿部となり、L/α+L/α≧2なる関係を満たす。一方、図5(B)のようにn=3の場合、第一受皿部26が一段目(最上段)の受皿部、第二受皿部27が二段目の受皿部、第三受皿部28が三段目(最下段)の受皿部となり、L/α+L/α+L/α≧2なる関係を満たす。
【0058】
ここで、最上段の第一受皿部22,26において、溶融ガラスGmの温度が高く粘度も低いため、溶融ガラスGmの厚みを均す効果が最も高い。従って、第一受皿部22,26で、L/α≧2なる関係を満たすことが、溶融ガラスGmの厚み変動を低減する上でも好ましい。
【0059】
また、最下段の絞り部の垂直面に対する傾斜角度、すなわち、図5(A)の第二絞り部25bの垂直面に対する傾斜角度β及び図5(B)の絞り部31bの垂直面に対する傾斜角度βは、それぞれ15°以下であることが好ましい。一方、図5(A)の第一絞り部24bの垂直面に対する傾斜角度βは、特に限定されるものではなく、例えば傾斜角度βよりも大きくてもよいし、小さくてもよい。図5(A)の傾斜角度βは、20°以下であることが好ましく、15°以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0060】
模型実験により成形体に沿って流下する溶融ガラスの流れを模擬し、成形体の受皿部に対する溶融ガラスの供給流量の変動により生じる溶融ガラスの厚み変動を成形体の形状によって抑制できるか否かを確認した。なお、溶融ガラスの厚み変動は、成形体の側面部下部で溶融ガラスの厚みをレーザー式変位センサで計測することで確認した。
【0061】
実験に用いた各実施例の成形体形状の条件を表1に示す。また各実施例に共通する実験条件を表2に示す。なお、表2における溶融ガラスの密度・粘度・流量は、供給管先端の供給口における値とする。また、供給管の供給口における溶融ガラスの流量の時間変動は、図6に示す通りである。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
各実施例の成形体の側面部下部における溶融ガラスの厚みの時間変動の測定結果を図8(A)〜(E)に示す。同図に示すように、各実施例では、L/αが2以上であるため、溶融ガラスの厚み変動が±0.3mm程度に抑制されている。特に、図8(E)に示すように、L/αが6以上である実施例5において、溶融ガラスの厚み変動が±0.1mm程度の非常に小さい値に抑制されている。ここで、実施例1、2及び4は、受皿部の形状は同一であり、側面部の形状が異なるが、溶融ガラスの厚み変動に大きな差は見受けられなかった。これに対し、受皿部の形状を大きく変更した実施例5において、溶融ガラスの厚み変動が最も小さくなるという結果を得た。従って、溶融ガラスの厚み変動を低減する上では成形体の受皿部の形状が重要であり、L/αが2以上であることが好ましく、L/αが5以上であることがより好ましいことが認識できる。
【0065】
なお、実験結果を省略しているが、L/αが2未満となると、溶融ガラスの厚み変動が±0.3mmよりも大きくなる傾向にある。
【0066】
また、上記の実施例では、受皿部を一つだけ設けた場合を例示しているが、上下方向に間隔を置いて複数設ける場合も同様である。すなわち、一つの受皿部で溶融ガラスの厚み変動を吸収していたものを、複数の受皿部で溶融ガラスの厚み変動を分割して吸収することになる。従って、複数の受皿部全体で上記実施例に例示した一つの受皿部と同様の効果を得るためには、L/α+L/α+…+L/α≧2なる関係を満たせばよいことが認識できる。
【0067】
本発明は、上記実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0068】
例えば、図5(A)及び(B)に示したように、上下方向に間隔を置いて複数の受皿部を設ける場合、各受皿部に対応する位置に供給管などの供給部をそれぞれ設け、各受皿部に対して溶融ガラスを供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 管ガラス製造装置
2 溶解槽
3 供給管
4 成形炉
5 成形体
8 スリーブ部
9 メタルチップ
10 金属管
11 受皿部
21 成形体
22,23,26,27,28 受皿部
Gm 溶融ガラス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8