(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作モード切替条件は、前記産業車両の走行に関する遠隔操作及び前記操作対象物の遠隔操作の双方が行われていない状況において前記切替操作が行われることである請求項6に記載の産業車両用遠隔操作システム。
前記遠隔操作制御部は、前記操作モードが前記操作対象物モードに設定されている場合に前記遠隔操作装置に対して前記操作対象物用操作が行われることに基づいて、前記フォークを上下方向に移動させるリフト動作、前記フォークを前後方向に移動させるリーチ動作、又は、前記フォークを傾斜させるチルト動作のいずれかが行われるように前記フォークを遠隔操作する請求項10に記載の産業車両用遠隔操作システム。
車両通信部及び操作対象物を有する産業車両の前記車両通信部と無線通信を行うリモート通信部を備えた遠隔操作装置を用いて前記産業車両を遠隔操作するための産業車両用遠隔操作プログラムであって、
前記遠隔操作装置又は前記産業車両を、
前記遠隔操作装置を用いた前記産業車両の遠隔操作を行う操作モードとして、前記産業車両の走行に関する遠隔操作を行い且つ前記操作対象物の遠隔操作を規制する走行モード、又は、前記操作対象物の遠隔操作を行い且つ前記産業車両の走行に関する遠隔操作を規制する操作対象物モードを設定する操作モード設定部と、
前記操作モードが前記走行モードに設定されている場合に前記遠隔操作装置に対して走行用操作が行われることに基づいて前記産業車両の走行に関する遠隔操作を行う一方、前記操作モードが前記操作対象物モードに設定されている場合に前記遠隔操作装置に対して前記走行用操作とは異なる操作対象物用操作が行われることに基づいて前記操作対象物に関する遠隔操作を行う遠隔操作制御部として機能させ、
前記遠隔操作制御部は、前記操作モードが前記走行モードに設定されている場合に前記操作対象物用操作によって前記産業車両の走行が行われないように規制し、前記操作モードが前記操作対象物モードに設定されている場合に前記走行用操作によって前記操作対象物が動作しないように規制することを特徴とする産業車両用遠隔操作プログラム。
車両通信部及び操作対象物を有する産業車両の前記車両通信部と無線通信を行うリモート通信部を備えた遠隔操作装置を用いて前記産業車両を遠隔操作する産業車両用遠隔操作方法であって、
前記遠隔操作装置又は前記産業車両が、前記遠隔操作装置を用いた前記産業車両の遠隔操作を行う操作モードとして、前記産業車両の走行に関する遠隔操作を行い且つ前記操作対象物の遠隔操作を規制する走行モード、又は、前記操作対象物の遠隔操作を行い且つ前記産業車両の走行に関する遠隔操作を規制する操作対象物モードを設定する操作モード設定ステップと、
前記遠隔操作装置又は前記産業車両が、前記操作モードが前記走行モードに設定されている場合に前記遠隔操作装置に対して走行用操作が行われることに基づいて前記産業車両の走行に関する遠隔操作を行う一方、前記操作モードが前記操作対象物モードに設定されている場合に前記遠隔操作装置に対して前記走行用操作とは異なる操作対象物用操作が行われることに基づいて前記操作対象物に関する遠隔操作を行う遠隔操作制御ステップと、
を備え、
前記遠隔操作制御ステップは、前記操作モードが前記走行モードに設定されている場合に前記操作対象物用操作によって前記産業車両の走行が行われないように規制し、前記操作モードが前記操作対象物モードに設定されている場合に前記走行用操作によって前記操作対象物が動作しないように規制することを特徴とする産業車両用遠隔操作方法。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、産業車両用遠隔操作システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、産業車両用遠隔操作システム10は、産業車両としてのフォークリフト20と、フォークリフト20を遠隔操作するのに用いられる遠隔操作装置30と、を備えている。
【0043】
フォークリフト20は、車輪21と、荷物の積み上げ又は積み降ろしを行う荷役装置としてのフォーク22と、を備えている。本実施形態のフォークリフト20は、運転者が着座して操縦することが可能に構成されている。フォーク22は、リフト動作、リーチ動作及びチルト動作が可能に構成されている。
【0044】
なお、フォークリフト20は、例えばエンジンが搭載されたエンジンタイプであってもよいし、蓄電装置及び電動モータが搭載されたEVタイプであってもよいし、燃料電池及び電動モータが搭載されたFCVタイプであってもよい。また、フォークリフト20は、例えばエンジンと蓄電装置と電動モータとを有するHVタイプでもよい。
【0045】
図2に示すように、フォークリフト20は、走行アクチュエータ23と、荷役アクチュエータ24と、これら走行アクチュエータ23及び荷役アクチュエータ24を制御する車両CPU25と、車両メモリ26と、車両状態検知部27と、を備えている。
【0046】
走行アクチュエータ23は、フォークリフト20の走行に用いられるものであり、具体的には車輪21を回転駆動させるとともに、操舵角(進行方向)を変更する。なお、例えばフォークリフト20がエンジンタイプであれば、走行アクチュエータ23はエンジン及びステアリング装置等であり、例えばフォークリフト20がEVタイプであれば、走行アクチュエータ23は車輪21を回転駆動させる電動モータ及びステアリング装置等である。
【0047】
荷役アクチュエータ24は、走行とは異なる動作に用いられるものであり、詳細にはフォーク22を駆動させるものである。例えば、荷役アクチュエータ24は、フォーク22を上下方向に移動させるリフト動作を行うリフト駆動部24aと、フォーク22を前後方向に移動させるリーチ動作を行うリーチ駆動部24bと、フォーク22を傾けるチルト動作を行うチルト駆動部24cと、を有している。本実施形態では、フォーク22が、走行とは異なる動作を行う操作対象物である。
【0048】
車両状態検知部27は、フォークリフト20の状態を検知するものである。車両状態検知部27は、例えば現在のフォークリフト20の走行態様及びフォーク22の動作態様を検知するとともに、フォークリフト20の異常の有無を検知し、その検知結果である走行情報、動作情報及び異常情報が設定された検知信号を車両CPU25に向けて出力する。
【0049】
なお、走行情報は、例えばフォークリフト20の走行速度、加速度及び操舵角に関する情報を含む。換言すれば、本実施形態の車両状態検知部27は、フォークリフト20の走行態様として、少なくともフォークリフト20の走行速度、加速度及び操舵角を検知している。また、動作情報は、上下方向におけるフォーク22の位置(リフト位置)及びリフト動作中の場合にはその動作速度に関する情報と、前後方向におけるフォーク22の位置(リーチ位置)及びリーチ動作中の場合にはその動作速度に関する情報と、鉛直方向に対するフォーク22の傾斜角度及びチルト動作中の場合にはその動作速度に関する情報とを含む。換言すれば、本実施形態における車両状態検知部27が検知するフォークリフト20の動作態様には、リフト動作、リーチ動作及びチルト動作が含まれている。
【0050】
また、フォークリフト20の異常とは、例えば、走行アクチュエータ23又は荷役アクチュエータ24の異常や、車輪21の異常等がある。但し、フォークリフト20の異常は、これに限られず任意であり、例えばフォークリフト20が蓄電装置を有する構成においては、蓄電装置の異常等を含んでもよい。
【0051】
車両CPU25は、フォークリフト20に設けられているステアリング装置や各種操作レバーが操作されることに基づいて、車両メモリ26に記憶されている各種プログラムを読み出し実行することによって、走行アクチュエータ23及び荷役アクチュエータ24を制御する。つまり、本実施形態のフォークリフト20は、遠隔操作装置30を用いずに、フォークリフト20に設けられているステアリング装置や各種操作レバーにより運転することも可能となっている。また、車両CPU25は、車両状態検知部27から入力される検知信号に基づいて、フォークリフト20の現在の状態を把握する。車両CPU25は、車両ECUとも車両MPUとも言える。
【0052】
遠隔操作装置30は、通信機能を有する操作端末である。遠隔操作装置30は、例えばスマートフォン又はタブレット端末といった汎用品である。但し、これに限られず、遠隔操作装置30は、携帯電話やヴァーチャルリアリティ端末などでもよいし、遠隔操作のための専用品であってもよい。
【0053】
図1に示すように、本実施形態では、遠隔操作装置30は、一方を長手方向とし他方を短手方向とする矩形板状である。遠隔操作装置30は、遠隔操作を行う場合、当該遠隔操作装置30の長手方向の両端部のうち一方の端部が右手によって把持され、他方の端部が左手によって把持された状態で用いられる。つまり、遠隔操作装置30は遠隔操作を行う際には横向きに両手で把持されることを想定している。
【0054】
図2に示すように、遠隔操作装置30は、タッチパネル31と、タッチセンサ32と、リモートCPU33と、リモートメモリ34と、姿勢検知部35と、を備えている。
図1に示すように、タッチパネル31は、遠隔操作装置30の一方の板面に形成されている。タッチパネル31は長手方向及び短手方向を有する矩形状であり、タッチパネル31の長手方向は遠隔操作装置30の長手方向と一致している。タッチパネル31は、所望の画像を表示させることが可能に構成されている。
【0055】
ちなみに、遠隔操作装置30が横向きに把持された場合、タッチパネル31の短手方向は操作者から見て上下方向又は前後方向であり、タッチパネル31の長手方向は操作者から見て左右方向である。
【0056】
なお、以降の説明において、タッチパネル31を視認できるように遠隔操作装置30が横向きに把持された場合において、操作者から見てタッチパネル31の上端側(
図5〜
図8における紙面上方向)を上方とし、操作者から見て下端側(
図5〜
図8における紙面下方向)を下方とする。
【0057】
タッチセンサ32は、遠隔操作装置30に対する操作の一種である、タッチパネル31に対する入力操作(詳細にはタッチ操作やスライド操作)を検知するものである。詳細には、タッチセンサ32は、タッチパネル31に対して指が接触しているか否かを検知するとともに、指の接触が検知された場合にはその位置を検知する。そして、タッチセンサ32は、検知結果をリモートCPU33に出力する。これにより、リモートCPU33は、タッチパネル31に対する入力操作を把握できる。なお、タッチセンサ32の具体的な構成は任意であるが、例えば静電容量の変化に基づいて検出する静電容量式センサや圧力センサ等がある。
【0058】
ちなみに、本実施形態のタッチセンサ32は、タッチパネル31に対して複数の入力操作が行われている場合には、各入力操作をそれぞれ個別に検知する。例えば、タッチパネル31に対して左手の指と右手の指の双方が接触している場合には、左手の指の接触位置及び右手の指の接触位置の双方を個別に検知し、その検知結果をリモートCPU33に出力する。
【0059】
姿勢検知部35は、遠隔操作装置30の姿勢を検知するものである。姿勢検知部35は、例えば3軸の加速度センサと3軸のジャイロセンサとを含み、これらのセンサから得られる情報に基づいて、遠隔操作装置30の向き及びその変化を検知する。
【0060】
例えば、
図1に示すように、遠隔操作装置30の長手方向の両端部が操作者によって把持されている場合においては、姿勢検知部35は、遠隔操作装置30の中心を通り当該遠隔操作装置30の厚さ方向に延びた第1中心線M1を第1回転軸とする回転操作(以降、単に「第1回転操作」という。)を検知する。更に姿勢検知部35は、遠隔操作装置30の中心を通り当該遠隔操作装置30の長手方向に延びた第2中心線M2を第2回転軸とする回転操作(以降、単に「第2回転操作」という。)を検知する。第1中心線M1(第1回転軸)と第2中心線M2(第2回転軸)とは互いに直交している。
【0061】
第1回転操作方向は、遠隔操作装置30の厚さ方向を回転軸とする遠隔操作装置30の回転方向であり、第2回転操作方向は、遠隔操作装置30の長手方向を回転軸とする遠隔操作装置30の回転方向である。換言すれば、姿勢検知部35は、第1回転操作方向における遠隔操作装置30の回転位置の変化、及び、第2回転操作方向における遠隔操作装置30の回転位置の変化を検知するものである。
【0062】
姿勢検知部35は、第1回転操作及び第2回転操作の少なくとも一方が行われているか否か、及び、両回転操作の少なくとも一方が行われている場合には当該回転操作の態様を検知し、その検知結果をリモートCPU33に出力する。これにより、リモートCPU33は、遠隔操作装置30に対する操作の一種である第1回転操作及び第2回転操作を把握できる。
【0063】
なお、回転操作の態様とは、例えば回転操作の角速度の変化具合である。詳細には、姿勢検知部35は、回転操作の態様として角加速度を検知する。これにより、遠隔操作装置30(詳細にはリモートCPU33)は、回転操作の有無に加えて角加速度も把握できる。
【0064】
リモートCPU33は、リモートメモリ34に記憶されている各種プログラムを用いて各種処理を実行するものである。詳細には、リモートメモリ34には、タッチパネル31の画像制御に関するプログラムが記憶されており、リモートCPU33は、当該プログラムを読み出し実行することによってタッチパネル31の表示制御を行う。また、リモートCPU33は、タッチセンサ32及び姿勢検知部35から入力される信号に基づいて、遠隔操作装置30に対する各種操作を把握する。本実施形態では、リモートCPU33が、タッチパネル31の表示制御を行う「表示制御部」といえる。
【0065】
図2に示すように、フォークリフト20と遠隔操作装置30とは通信可能に構成されている。詳細には、フォークリフト20は、車両通信部28を有しており、遠隔操作装置30は、車両通信部28と通信可能なリモート通信部36を有している。
【0066】
車両通信部28及びリモート通信部36は、例えば無線通信を行う通信インターフェースである。リモート通信部36は、通信範囲内にペアリング(登録)済みのフォークリフト20が存在する場合には、当該フォークリフト20の車両通信部28との通信接続を確立する。これにより、遠隔操作装置30とフォークリフト20との間で信号のやり取りが可能となる。
【0067】
本実施形態では、車両通信部28及びリモート通信部36間の通信形式は、Wi−Fi(換言すればIEEE802.11規格の無線LAN)である。両通信部28,36は、パケット通信によって信号の送受信を行う。
【0068】
なお、Wi−Fiには、IEEE802.11aやIEEE802.11ac等といった複数の規格が存在するが、車両通信部28及びリモート通信部36間の通信形式は、上記複数の規格のうちいずれでもよい。また、両通信部28,36の信号の送受信は、パケット通信に限られず任意である。
【0069】
更に、車両通信部28とリモート通信部36との間の通信形式については、Wi−Fiに限られず、任意であり、例えばBluetooth(登録商標)及びZigbee(登録商標)等であってもよい。
【0070】
リモートCPU33は、リモート通信部36と電気的に接続されている。リモートCPU33は、リモート通信部36を用いて、遠隔操作に関する各種情報が設定された遠隔操作信号SG1を車両通信部28に向けて送信することにより、フォークリフト20を遠隔操作する。遠隔操作信号SG1は、無線通信用の規格に対応する信号であり、本実施形態ではWi−Fi規格に対応したパケット通信信号である。
【0071】
図3に示すように、遠隔操作信号SG1は、遠隔操作に関する情報として、走行操作に関する走行操作情報D1と、荷役操作に関する荷役操作情報D2とを含む。
走行操作情報D1は、例えばフォークリフト20の走行速度が設定された走行速度情報Dvと、フォークリフト20の加速度が設定された加速度情報Dαと、フォークリフト20の操舵角が設定された操舵角情報Dθと、を有している。
【0072】
荷役操作情報D2は、例えばリフト動作のストローク量が設定されたリフト情報Dfaと、リーチ動作のストローク量が設定されたリーチ情報Dfbと、チルト動作の傾斜角度が設定されたチルト情報Dfcと、を有している。
【0073】
図2に示すように、フォークリフト20は、遠隔操作信号SG1を、車内通信用規格に対応した制御信号SGaに変換する信号変換部29を備えている。信号変換部29は、車両通信部28及び車両CPU25に電気的に接続されており、車両通信部28によって受信された遠隔操作信号SG1を、車両CPU25が認識可能な制御信号SGaに変換し、当該制御信号SGaを車両CPU25に向けて出力する。制御信号SGaには、遠隔操作信号SG1の走行操作情報D1及び荷役操作情報D2が設定されている。
【0074】
なお、本実施形態では、フォークリフト20の具体的な車内通信用規格はCAN規格である。すなわち、本実施形態では、制御信号SGaはCAN信号である。但し、これに限られず、具体的な車内通信用規格は任意である。
【0075】
車両CPU25は、信号変換部29から制御信号SGaが入力された場合には、車両メモリ26に記憶されている遠隔操作実行プログラムを読み出し且つ当該遠隔操作実行プログラムを実行することにより、当該制御信号SGaに対応した態様でフォークリフト20(詳細には両アクチュエータ23,24)を駆動させる。これにより、遠隔操作信号SG1に設定された走行操作情報D1及び荷役操作情報D2に対応したフォークリフト20の遠隔操作が行われる。
【0076】
例えば、走行操作情報D1の各情報Dv,Dαが「0」以外の数値であり且つ荷役操作情報D2の各情報Dfa,Dfb,Dfcが「0」又は「null」である遠隔操作信号SG1がリモート通信部36から送信されたとする。この場合、車両CPU25は、走行アクチュエータ23を制御することにより、走行速度情報Dvに設定されている走行速度となるように加速度情報Dαに設定されている加速度で加減速を行うとともに、操舵角情報Dθに設定されている操舵角となるようにフォークリフト20の操舵角を変更する。
【0077】
また、例えばリフト情報Dfaが「0」以外の数値であり且つその他の情報が「0」又は「null」である遠隔操作信号SG1がリモート通信部36から送信された場合には、車両CPU25は、リフト情報Dfaに設定されている数値のストローク量だけフォーク22が上下方向に移動するように荷役アクチュエータ24を制御する。
【0078】
なお、リフト情報Dfaは、例えば正(+)又は負(−)の値を取り得る数値情報である。車両CPU25は、リフト情報Dfaが正の値である場合には、荷役アクチュエータ24(詳細にはリフト駆動部24a)を制御してリフト情報Dfaに設定されている数値のストローク量だけフォーク22を上方へ移動させる。一方、車両CPU25は、リフト情報Dfaが負の値である場合には、荷役アクチュエータ24(詳細にはリフト駆動部24a)を制御してリフト情報Dfaに設定されている数値のストローク量だけフォーク22を下方へ移動させる。
【0079】
同様に、リーチ情報Dfbは、正(+)又は負(−)の値を取り得る数値情報である。車両CPU25は、リーチ情報Dfbが正の値である場合には荷役アクチュエータ24(詳細にはリーチ駆動部24b)を制御してリーチ情報Dfbに設定されている数値のストローク量だけフォーク22を前方へ移動させる。一方、車両CPU25は、リーチ情報Dfbが負の値である場合には荷役アクチュエータ24(詳細にはリーチ駆動部24b)を制御してリーチ情報Dfbに設定されている数値のストローク量だけフォーク22を後方へ移動させる。
【0080】
チルト情報Dfcは、正(+)又は負(−)の値を取り得る数値情報である。車両CPU25は、チルト情報Dfcが正の値である場合には荷役アクチュエータ24(詳細にはチルト駆動部24c)を制御してチルト情報Dfcに設定されている数値の傾斜角度だけフォーク22を前方へ傾斜させる。一方、車両CPU25は、チルト情報Dfcが負の値である場合には荷役アクチュエータ24(詳細にはチルト駆動部24c)を制御してチルト情報Dfcに設定されている数値の傾斜角度だけフォーク22を後方へ傾斜させる。
【0081】
すなわち、車両通信部28が少なくとも走行速度情報Dvに「0」以外の数値が設定されている遠隔操作信号SG1を受信した場合には、車両CPU25は走行アクチュエータ23を制御する。一方、車両通信部28が荷役操作情報D2の少なくとも1つに「0」以外の数値が設定されている遠隔操作信号SG1を受信した場合には、車両CPU25は荷役アクチュエータ24を制御する。
【0082】
以上のことから、遠隔操作装置30及びフォークリフト20(詳細には両通信部28,36)が通信可能な範囲内に配置されている場合には、リモート通信部36から送信される遠隔操作信号SG1に基づいて、フォークリフト20の遠隔操作が行われる。
【0083】
ここで、遠隔操作装置30を用いてフォークリフト20(産業車両)の遠隔操作が行われる構成においては、操作者がフォークリフト20に乗車する必要がないため、利便性の向上を図ることができる。一方、ハンドル等を用いた通常の運転とは異なる操作体系となるため、遠隔操作装置30の誤操作に起因するフォークリフト20の誤動作が生じる場合があり得る。
【0084】
これに対して、本産業車両用遠隔操作システム10は、誤操作を抑制するように構成されている。以下では、この点を踏まえつつ、遠隔操作装置30を用いたフォークリフト20の遠隔操作制御に係る構成について説明する。
【0085】
図2に示すように、リモートメモリ34には、遠隔操作信号SG1の送信処理を含むフォークリフト20の遠隔操作に関する各種処理を実行するための遠隔操作プログラム40が記憶されている。遠隔操作プログラム40は、フォークリフト20の遠隔操作を行うためのアプリケーションプログラムである。遠隔操作プログラム40は、遠隔操作を制御する遠隔操作制御処理を実行するための遠隔操作制御処理実行プログラム41を含む。遠隔操作プログラム40が「産業車両用遠隔操作プログラム」に対応する。
【0086】
リモートCPU33は、遠隔操作起動条件が成立した場合には、遠隔操作プログラム40(遠隔操作アプリケーション)を起動させる。
本実施形態では、遠隔操作起動条件は遠隔操作装置30に対して起動操作が行われることである。起動操作とは、例えばタッチパネル31に遠隔操作アイコンが表示されている構成においては、当該遠隔操作アイコンに対する入力操作(タッチ操作)である。
【0087】
但し、遠隔操作起動条件は、これに限られず任意であり、例えば遠隔操作装置30のリモート通信部36とフォークリフト20の車両通信部28との通信接続が確立したことでもよいし、両通信部28,36間の通信接続が確立した条件下において起動操作が行われることでもよい。すなわち、遠隔操作起動条件において、操作者の操作は必須ではない。
【0088】
リモートCPU33は、遠隔操作プログラム40の起動に伴い、まずリモート通信部36と通信可能な範囲内に通信接続が可能なフォークリフト20をサーチし、当該フォークリフト20が存在する場合には当該フォークリフト20の車両通信部28と通信接続を確立する。
【0089】
その後、リモートCPU33は、タッチパネル31に操作画像G10を表示させる。操作画像G10は、遠隔操作プログラム40に記憶されている。リモートCPU33は、基本的には、遠隔操作プログラム40の起動中、常時操作画像G10を表示させる。
【0090】
ここで、
図4に示すように、本実施形態では、産業車両用遠隔操作システム10(詳細にはリモートCPU33)は、遠隔操作装置30を用いたフォークリフト20の遠隔操作を行う操作モードとして、走行モードと荷役モードとを有している。リモートCPU33は、遠隔操作プログラム40の起動に伴い、操作モードを、走行モード又は荷役モードに設定する。荷役モードが「操作対象物モード」に対応する。
【0091】
走行モード及び荷役モードについて説明する。
走行モードとは、フォークリフト20の走行に関する遠隔操作を行う一方、フォーク22の遠隔操作を規制する操作モードである。走行モードでは、走行アクチュエータ23が操作対象となっている一方、荷役アクチュエータ24は操作対象となっておらず、当該荷役アクチュエータ24は駆動しないように規制されている。
【0092】
荷役モードとは、フォーク22の遠隔操作を行う一方、フォークリフト20の走行に関する遠隔操作を規制する操作モードである。荷役モードでは、荷役アクチュエータ24が操作対象となっている一方、走行アクチュエータ23は操作対象となっておらず、当該走行アクチュエータ23は駆動しないように規制されている。
【0093】
荷役モードには、複数種類のモードが設定されている。詳細には、荷役モードは、リフトモード、リーチモード、及びチルトモードを有している。
リフトモードは、フォーク22のリフト動作に関する遠隔操作を行う一方、その他の動作であるリーチ動作及びチルト動作に関する遠隔操作を規制する荷役モードである。
【0094】
リーチモードは、フォーク22のリーチ動作に関する遠隔操作を行う一方、その他の動作であるリフト動作及びチルト動作に関する遠隔操作を規制する荷役モードである。
チルトモードは、フォーク22のチルト動作に関する遠隔操作を行う一方、その他の動作であるリフト動作及びリーチ動作に関する遠隔操作を規制する荷役モードである。
【0095】
すなわち、本実施形態では、種類が異なる動作ごとに荷役モードがそれぞれ設定されている。
本実施形態では、リフト動作、リーチ動作、チルト動作のうちいずれかが「第1動作」に対応し、当該「第1動作」に対応する荷役モードが「第1動作モード」に対応する。また、リフト動作、リーチ動作、チルト動作のうち「第1動作」に対応する動作とは異なる動作が「第2動作」に対応し、当該「第2動作」に対応する荷役モードが「第2動作モード」に対応する。例えば、リフト動作が「第1動作」に対応し、リーチ動作が「第2動作」に対応する場合、リフトモードが「第1動作モード」に対応し、リーチモードが「第2動作モード」に対応する。
【0096】
次に、遠隔操作プログラム40の起動に伴いタッチパネル31に表示される操作画像G10について
図5〜
図8を用いて説明する。なお、説明の便宜上、
図5〜
図8は、遠隔操作装置30の長手方向が水平方向と一致している状態とする。
【0097】
図5〜
図8に示すように、操作画像G10はタッチパネル31の全面に表示されている。タッチパネル31が長手方向及び短手方向を有する形状(詳細には矩形状)であることに対応させて、操作画像G10は、長手方向及び短手方向を有する形状(詳細には矩形状)である。
【0098】
本実施形態では、複数の操作モードが設定されていることに対応させて、複数の操作画像G10が設定されている。詳細には、操作画像G10は、走行モードに対応した走行モード画像G11と、リフトモードに対応したリフトモード画像G12と、リーチモードに対応したリーチモード画像G13と、チルトモードに対応したチルトモード画像G14とを含む。リモートCPU33は、操作モードに対応した操作画像G10を表示させるように構成されている。
【0099】
図5に示すように、走行モード画像G11には、走行用操作領域A1と、走行用操作領域A1とは異なる位置に設けられた走行モード設定領域(走行モードアイコン)A3及び荷役モード設定領域(荷役モードアイコン)A4とが表示されている。
【0100】
走行用操作領域A1は、操作画像G10における長手方向の両端部のうち一方の端部側に配置されている。走行用操作領域A1は、両手で遠隔操作装置30を把持した場合に、左手の指(例えば親指)が自然と配置される位置に設けられている。走行用操作領域A1内には、フォークリフト20の画像と、フォークリフト20の進行方向を示唆するタッチパネル31の短手方向に延びた矢印の画像とが表示されている。また、走行用操作領域A1内には中央線Lが表示されている。
【0101】
かかる構成によれば、操作者としては、指などを用いて前進を示唆する側(詳細には走行モード設定領域A3側)へ向けてスライド操作することによりフォークリフト20が前進し、それとは反対側(詳細には後退を示唆する側)へスライド操作することによりフォークリフト20が後退することを直感的に理解できる。
【0102】
なお、スライド操作とは、タッチパネル31に対して入力操作(換言すればタッチ操作)が行われている状態を維持しつつ当該入力操作が行われる位置が移動する一連の入力操作である。
【0103】
走行モード設定領域A3は、走行モード画像G11内において、走行用操作領域A1に対してタッチパネル31の短手方向に離間した位置に設けられている。すなわち、走行モード設定領域A3と走行用操作領域A1とは短手方向に配列されている。走行モード設定領域A3内には、走行モードであることを示す画像、本実施形態では「走行」という文字が表示されている。また、走行モード画像G11において、走行モード設定領域A3は、荷役モード設定領域A4よりも強調表示されている。
【0104】
荷役モード設定領域A4は、走行用操作領域A1に対してタッチパネル31の長手方向に離間した位置に配置されている。荷役モード設定領域A4は、走行モード画像G11の中央部に配置されている。
【0105】
荷役モード設定領域A4は、リフトモードに設定するのに用いられるリフトモード設定領域A4aと、リーチモードに設定するのに用いられるリーチモード設定領域A4bと、チルトモードに設定するのに用いられるチルトモード設定領域A4cとを有している。リフトモード設定領域A4a、リーチモード設定領域A4b及びチルトモード設定領域A4cは、タッチパネル31の短手方向に離間して配列されている。すなわち、走行用操作領域A1と走行モード設定領域A3と各モード設定領域A4a〜A4cとは、互いに異なる位置に配置されており、互いに重ならないように離間している。リフトモード設定領域A4a、リーチモード設定領域A4b及びチルトモード設定領域A4cはそれぞれリフトモードアイコン、リーチモードアイコン及びチルトモードアイコンとも言える。
【0106】
リフトモード設定領域A4a内には、リフトモードであることを示す画像、本実施形態では「リフト」という文字が表示されている。リーチモード設定領域A4b内には、リーチモードであることを示す画像、本実施形態では「リーチ」という文字が表示されている。チルトモード設定領域A4c内には、チルトモードであることを示す画像、本実施形態では「チルト」という文字が表示されている。
【0107】
なお、各モード設定領域A3,A4a〜A4c内にて表示される画像は、対応するモードが認識可能であれば任意であり、例えば文字に代えて、各モードに対応する動作を模式的に示す画像等が表示される構成でもよい。
【0108】
図6に示すように、リフトモード画像G12には、リフト操作説明画像Gf1と、リフト操作説明画像Gf1とは異なる位置に設けられた走行モード設定領域(走行モードアイコン)A3及び荷役モード設定領域(荷役モードアイコン)A4とが表示されている。
【0109】
リフト操作説明画像Gf1は、リフトモード画像G12の長手方向の両端部よりも中央部寄りの位置に配置されている。リフト操作説明画像Gf1には、タッチパネル31の長手方向に延びる中央線Lfが表示されている。
【0110】
リフト操作説明画像Gf1には、中央線Lfよりも上方の位置に、下方へのリフト動作である下降動作を示すフォークリフト20の画像及び遠隔操作装置30の傾倒操作を示唆する画像が表示されている。これにより、下降動作と遠隔操作装置30の傾倒操作とが連動していることが理解できる。傾倒操作とは奥側傾斜操作又は前方傾斜操作とも言える。
【0111】
リフト操作説明画像Gf1には、中央線Lfよりも下方の位置に、上方へのリフト動作である上昇動作を示すフォークリフト20の画像及び遠隔操作装置30の起立操作を示唆する画像が表示されている。これにより、上昇動作と遠隔操作装置30の起立操作とが連動していることが理解できる。起立操作とは、手前側傾斜操作又は後方傾斜操作とも言える。
【0112】
リフトモード画像G12では、リフト操作説明画像Gf1と走行モード設定領域A3と荷役モード設定領域A4とは、互いに異なる位置に配置されており、互いに重ならないように離間している。走行モード設定領域A3と荷役モード設定領域A4とは、互いに離間した状態でタッチパネル31の長手方向に配列されている。荷役モード設定領域A4の各モード設定領域A4a〜A4cは、タッチパネル31の長手方向に離間して配列されている。リフトモード画像G12では、リフトモード設定領域A4aが強調表示されている。
【0113】
図7に示すように、リーチモード画像G13には、中央線Lfが表示されたリーチ操作説明画像Gf2と、走行モード設定領域A3と、荷役モード設定領域A4とが表示されている。リーチ操作説明画像Gf2、走行モード設定領域A3及び荷役モード設定領域A4の位置関係は、リフトモード画像G12と同様であるため、詳細な説明を省略する。なお、リーチモード画像G13では、リーチモード設定領域A4bが強調表示されている。
【0114】
リーチ操作説明画像Gf2には、中央線Lfよりも上方の位置に、前方へのリーチ動作を示すフォークリフト20の画像及び遠隔操作装置30の傾倒操作を示唆する画像が表示されている。これにより、前方へのリーチ動作と遠隔操作装置30の傾倒操作とが連動していることが理解できる。
【0115】
リーチ操作説明画像Gf2には、中央線Lfよりも下方の位置に、後方へのリーチ動作を示すフォークリフト20の画像及び遠隔操作装置30の起立操作を示唆する画像が表示されている。これにより、後方へのリーチ動作と遠隔操作装置30の起立操作とが連動していることが理解できる。
【0116】
図8に示すように、チルトモード画像G14には、中央線Lfが表示されたチルト操作説明画像Gf3と、走行モード設定領域A3と、荷役モード設定領域A4とが表示されている。チルト操作説明画像Gf3、走行モード設定領域A3及び荷役モード設定領域A4の位置関係は、リフトモード画像G12と同様であるため、詳細な説明を省略する。なお、チルトモード画像G14では、チルトモード設定領域A4cが強調表示されている。
【0117】
チルト操作説明画像Gf3には、中央線Lfよりも上方の位置に、前方傾斜のチルト動作を示すフォークリフト20の画像及び遠隔操作装置30の傾倒操作を示唆する画像が表示されている。これにより、前方傾斜のチルト動作と遠隔操作装置30の傾倒操作とが連動していることが理解できる。
【0118】
チルト操作説明画像Gf3には、中央線Lfよりも下方の位置に、後方傾斜のチルト動作を示すフォークリフト20の画像及び遠隔操作装置30の起立操作を示唆する画像が表示されている。これにより、後方傾斜のチルト動作と遠隔操作装置30の起立操作とが連動していることが理解できる。
【0119】
ここで、遠隔操作プログラム40には、操作モードを特定するための操作モード特定情報が記憶された操作モード記憶部42が設けられている(
図2参照)。リモートCPU33は、操作モード記憶部42に記憶されている操作モード特定情報に基づいて、現在設定されている操作モードを把握できる。
【0120】
リモートCPU33は、遠隔操作プログラム40の起動に伴い、操作モード特定情報に基づいて、現在設定されている操作モードを把握し、当該操作モードに対応した操作画像G10を表示させる。例えば、現在設定されている操作モードが走行モードである場合には、リモートCPU33は、遠隔操作プログラム40の起動に伴い、最初に操作画像G10として、走行モード画像G11を表示させる。
【0121】
なお、遠隔操作プログラム40の起動時に最初に設定される操作モードは、任意であり、例えば予め定められた操作モード(例えば走行モード)でもよいし、前回の遠隔操作プログラム40の終了時に設定されていた操作モードでもよい。
【0122】
続いて、リモートCPU33は、遠隔操作制御処理実行プログラム41を読み出し、遠隔操作制御処理を遠隔操作プログラム40の起動中に定期的に実行することにより、遠隔操作装置30に対する操作者の操作に対応した遠隔操作信号SG1の送信制御を行う。これにより、遠隔操作装置30を用いたフォークリフト20の遠隔操作が制御される。
【0123】
以下、遠隔操作制御処理について
図9〜
図14を用いて説明する。なお、
図12においては、走行に関する遠隔操作が行われる前のフォークリフト20の初期位置を二点鎖線で模式的に示す。
【0124】
図9に示すように、リモートCPU33は、まずステップS101にて、操作モード記憶部42に記憶されている操作モード特定情報に基づいて現在設定されている操作モードを把握する。
【0125】
その後、リモートCPU33は、ステップS102にて、ステップS101にて把握された操作モードが走行モードであるか否かを判定する。
リモートCPU33は、操作モードが走行モードである場合には、走行の遠隔操作に対応した制御を行う一方、フォーク22の遠隔操作を規制する処理を実行する。なお、操作モードが走行モードである場合、タッチパネル31には走行モード画像G11が表示されている。
【0126】
詳細には、リモートCPU33は、まずステップS103にて、タッチセンサ32の検知結果又は姿勢検知部35の検知結果に基づいて、走行用操作が行われているか否かを判定する。
【0127】
本実施形態では、走行用操作とは、タッチパネル31に対する入力操作の一種である速度設定操作である。ステップS103では、リモートCPU33は、タッチセンサ32の検知結果に基づいて、速度設定操作が行われているか否かを判定する。
【0128】
速度設定操作とは、例えば走行用操作領域A1内に対する入力操作を契機とするタッチパネル31への入力操作であって、詳細には走行用操作領域A1内に対する入力操作を開始条件(契機)とするスライド操作である。換言すれば、速度設定操作は、走行用操作領域A1内に対する入力操作である開始操作と、当該開始操作から継続されるタッチパネル31への入力操作である継続操作とから構成される一連の入力操作である。本実施形態では、走行用操作領域A1が「特定領域」に対応する。
【0129】
本実施形態では、継続操作は、走行用操作領域A1内外に関わらず、開始操作から継続され且つ入力操作位置が開始操作の位置から連続しているタッチパネル31への入力操作である。このため、最初に走行用操作領域A1内にタッチ操作を行い、タッチしている状態を維持しつつ当該タッチ位置(換言すれば入力操作位置)が走行用操作領域A1外にはみ出してもよい。このため、速度設定操作は、最初にタッチした位置である開始位置P10から、走行用操作領域A1内の任意の位置まで指がスライド移動した場合も含むとともに、開始位置P10から走行用操作領域A1外の任意の位置まで指がスライド移動した場合も含む。
【0130】
なお、速度設定操作が行われているか否かを判定する具体的な処理構成は任意であるが、一例としては以下の構成が考えられる。
例えば、リモートCPU33は、開始操作が行われていない場合には、タッチセンサ32の検知結果に基づいて、開始操作が行われているか否かを判定する。リモートCPU33は、開始操作が行われていると判定した場合には、当該開始操作が行われている位置である開始位置P10を記憶させる。
【0131】
その後、リモートCPU33は、タッチセンサ32によって検知されるタッチ位置が当該開始位置P10から連続的に変化しているか否かを判定し、連続的に変化している場合には速度設定操作が行われていると判定する一方、連続的に変化していない場合には速度設定操作が行われていないと判定する。
【0132】
連続的に変化しているか否かの判定処理としては、例えば、リモートCPU33は、タッチ位置を把握し、今回把握されたタッチ位置が、前回の遠隔操作制御処理において速度設定操作が行われていると判定する契機となったタッチ位置に対して規定範囲内にあるか否かを判定してもよい。この場合、リモートCPU33は、今回把握されたタッチ位置が規定範囲内にある場合には、連続的に変化していると判定する一方、タッチパネル31に対する入力操作が検知されない、又は、今回把握されたタッチ位置が規定範囲外にある場合には、連続的に変化していないと判定してもよい。
【0133】
図9に示すように、リモートCPU33は、走行用操作(詳細には速度設定操作)が行われていると判定した場合には、ステップS104に進み、速度設定操作の操作態様に基づいて、遠隔操作信号SG1の走行速度情報Dv及び加速度情報Dαの設定を行う。詳細には、リモートCPU33は、速度設定操作の開始位置P10と現在位置との相対位置に対応した数値情報を、走行速度情報Dv及び加速度情報Dαに設定する。なお、速度設定操作の現在位置とは、現在継続操作が行われている位置(継続操作位置)とも言える。
【0134】
例えば、リモートCPU33は、速度設定操作の開始位置P10と現在位置とがタッチパネル31の短手方向にズレていない場合には、走行速度情報Dv及び加速度情報Dαに、停止に係る数値情報である「0」を設定する。
【0135】
一方、リモートCPU33は、速度設定操作の開始位置P10と現在位置とがタッチパネル31の短手方向にズレている場合には、走行速度情報Dv及び加速度情報Dαに、タッチパネル31の短手方向における両位置間の距離Yに対応した「0」以外の数値情報を設定する。
【0136】
例えば、
図10及び
図11に示すように、速度設定操作の現在位置が開始位置P10よりも上方、詳細にはタッチパネル31の短手方向の一端側(走行モード設定領域A3側)に配置されている場合、リモートCPU33は、走行速度情報Dvに、前進に対応した数値情報(例えば正の数値情報)を設定する。一方、リモートCPU33は、速度設定操作の現在位置が開始位置P10よりも下方、詳細にはタッチパネル31の短手方向の他端側に配置されている場合には、走行速度情報Dvに後退に対応した数値情報、例えば負の数値情報を設定する。つまり、リモートCPU33は、開始位置P10からのスライド操作方向に基づいて前進か後退かを決定する。
【0137】
また、本実施形態では、リモートCPU33は、距離Yが大きくなるほど、フォークリフト20の走行速度が大きくなるように走行速度情報Dvの数値情報を設定し、走行速度情報Dvの数値情報に対応させて加速度情報Dαの数値情報を設定する。
【0138】
例えば、
図10に示すように、速度設定操作の現在位置が開始位置P10から第1所定位置P11まで移動した場合、リモートCPU33は、タッチパネル31の短手方向における開始位置P10及び第1所定位置P11間の第1距離Y1に対応した第1走行速度v1を走行操作情報D1に設定する。そして、リモートCPU33は、第1走行速度v1に対応した第1加速度α1を加速度情報Dαに設定する。
【0139】
また、
図11に示すように、速度設定操作の現在位置が開始位置P10から第2所定位置P12まで移動した場合、リモートCPU33は、タッチパネル31の短手方向における開始位置P10及び第2所定位置P12間の第2距離Y2に対応した第2走行速度v2を走行操作情報D1に設定する。そして、リモートCPU33は、第2走行速度v2に対応した第2加速度α2を加速度情報Dαに設定する。
【0140】
ここで、第2所定位置P12は、第1所定位置P11よりも、開始位置P10からタッチパネル31の短手方向に離れた位置である。このため、第2距離Y2は第1距離Y1よりも大きくなる。したがって、第2走行速度v2は第1走行速度v1よりも大きい。
【0141】
リモートCPU33は、走行操作情報D1及び加速度情報Dαの設定が終了した後は、ステップS105にて、姿勢検知部35の検知結果に基づいて、第1回転操作の操作態様としての第1回転操作角度θmを把握する。
【0142】
第1回転操作角度θmは、第1回転操作方向における基準位置からの変化量である。詳細には、リモートCPU33は、姿勢検知部35の検知結果に基づいて、第1回転操作方向における遠隔操作装置30の現在の回転位置を把握し、基準位置からの現在の回転位置の変化角度を第1回転操作角度θmとして把握する。
【0143】
例えば、
図5に示すように、遠隔操作装置30の長手方向が水平方向と一致している状態を基準位置とする。この場合、
図10に示すように、操作者から見て、基準位置から左回りに第1操作角θm1だけ第1回転操作が行われた場合には、リモートCPU33は、正の値であって絶対値が第1操作角θm1の第1回転操作角度θmを把握する。
【0144】
一方、
図11に示すように、操作者から見て、基準位置から右回りに第2操作角θm2だけ第1回転操作が行われた場合には、リモートCPU33は、負の値であって絶対値が第2操作角θm2の第1回転操作角度θmを把握する。
【0145】
これにより、第1回転操作角度θmの正負に基づいて回転方向を特定でき、第1回転操作角度θmの絶対値に基づいて回転量を特定できる。
なお、リモートCPU33は、第1回転操作方向における遠隔操作装置30の回転位置が基準位置から変化していない場合には、第1回転操作角度θmとして「0」を把握する。
【0146】
ちなみに、基準位置は、遠隔操作装置30の長手方向が水平方向に一致している状態に限られず任意である。また、基準位置は、固定位置であってもよいし可変位置であってもよい。
【0147】
図9に示すように、リモートCPU33は、ステップS105の処理の実行後は、ステップS106にて、第1回転操作角度θmに基づいて遠隔操作信号SG1の操舵角情報Dθの設定を行う。詳細には、リモートCPU33は、操舵角情報Dθに、第1回転操作角度θmに対応した数値情報を設定する。なお、本実施形態では、操舵角情報Dθに設定される数値情報は、第1回転操作角度θmと同一であるが、これに限られず、例えば第1回転操作角度θmから所定の補正処理を行った数値情報であってもよい。
【0148】
続くステップS107では、リモートCPU33は、荷役用操作の有無に関わらず、荷役操作情報D2に、停止に対応した数値情報である「0」を設定する。これにより、フォーク22の動作が規制される。なお、本実施形態の荷役用操作は第2回転操作であるが、これについては後述する。
【0149】
その後、リモートCPU33は、ステップS108にて、リモート通信部36を用いて、ステップS104及びステップS106にて設定された走行操作情報D1と、ステップS107にて設定された荷役操作情報D2とを有する遠隔操作信号SG1を送信する処理を実行して本遠隔操作制御処理を終了する。
【0150】
上記遠隔操作信号SG1が車両通信部28によって受信された場合、信号変換部29によって上記遠隔操作信号SG1が制御信号SGaに変換され、車両CPU25に入力される。車両CPU25は、上記制御信号SGaに基づいて走行アクチュエータ23を制御する。これにより、フォークリフト20の走行に関する遠隔操作が行われる。
【0151】
例えば、
図10に示すような速度設定操作及び第1回転操作が行われた場合、
図12に示すように、フォークリフト20は、左方向に第1操舵角θf1だけ曲がった状態で、第1走行速度v1となるように第1加速度α1で加速する。第1操舵角θf1は、第1操作角θm1が大きくなるほど大きく設定される。なお、第1操舵角θf1は、第1操作角θm1と対応していればよく、同一でもよいし異なっていてもよい。
【0152】
また、
図11に示すような速度設定操作及び第1回転操作が行われた場合、
図12に示すように、フォークリフト20は、右方向に第2操舵角θf2だけ曲がった状態で、第2走行速度v2となるように第2加速度α2で加速する。第2操舵角θf2は、第2操作角θm2が大きくなるほど大きく設定される。なお、第2操舵角θf2は、第2操作角θm2と対応していればよく、同一でもよいし異なっていてもよい。
【0153】
ちなみに、フォークリフト20の走行態様は、走行用操作としての速度設定操作の操作態様及び第1回転操作の操作態様に依存する一方、その他の操作(例えば荷役用操作)の操作態様には依存しない。すなわち、リモートCPU33は、走行モード時では、荷役用操作の操作態様に関わらず、フォークリフト20の走行態様を決定している。このため、リモートCPU33は、走行モード時には、走行用操作に基づいて走行に関する遠隔操作を行う一方、荷役用操作によってフォークリフト20の走行が行われないように規制していると言える。
【0154】
図9に示すように、リモートCPU33は、走行用操作(詳細には速度設定操作)がないと判定する場合には、ステップS109に進み、荷役モードへの切替操作が行われているか否かを判定する。詳細には、リモートCPU33は、タッチセンサ32の検知結果に基づいて、荷役モード設定領域A4への入力操作の有無を判定する。
【0155】
リモートCPU33は、荷役モード設定領域A4の各モード設定領域A4a〜A4cのいずれにも入力操作がない場合にはそのまま本遠隔操作制御処理を終了する。
一方、リモートCPU33は、各モード設定領域A4a〜A4cのいずれかに対する入力操作がある場合には、荷役モードへの切替操作が行われたとして、ステップS110にて操作モードの切替処理を実行する。詳細には、リモートCPU33は、操作モードを走行モードから荷役モードに切り替える。より具体的には、リモートCPU33は、操作モード記憶部42に記憶されている操作モード特定情報を、荷役モードに対応した情報に更新する。
【0156】
ここで、本実施形態では、荷役モードは複数存在している。ステップS110では、リモートCPU33は、操作モードを、今回の切替操作に対応する荷役モードに設定する。
例えば、今回の切替操作(ステップS109を肯定判定する契機となった入力操作)がリフトモード設定領域A4aに対する入力操作であった場合には、リモートCPU33は、操作モードを走行モードからリフトモードに移行させる。
【0157】
同様に、リモートCPU33は、今回の切替操作がリーチモード設定領域A4bに対する入力操作であった場合には、操作モードを走行モードからリーチモードに移行させ、今回の切替操作がチルトモード設定領域A4cに対する入力操作であった場合には、操作モードを走行モードからチルトモードに移行させる。
【0158】
その後、リモートCPU33は、ステップS111にて、操作画像G10の切替処理を実行して、本遠隔操作制御処理を終了する。詳細には、リモートCPU33は、操作画像G10を、切替後の操作モードに対応した画像、換言すれば今回の切替操作に対応する荷役モードに対応した画像に変更する。例えば、今回の切替操作がリフトモード設定領域A4aに対する入力操作であった場合には、リモートCPU33は、リフトモード画像G12を表示させる。
【0159】
かかる構成によれば、操作モードが走行モードであって走行用操作が行われていない状況において荷役モード設定領域A4への入力操作が行われた場合には、操作モードが走行モードから荷役モードに移行する。一方、操作モードが走行モードであって走行用操作が行われている場合には、荷役モード設定領域A4への入力操作が行われている場合であっても、走行モードから荷役モードへの切り替えは行われない。
【0160】
ちなみに、走行モード時に走行用操作が行われていない場合とは、走行に関する遠隔操作が行われていない場合である。となると、本実施形態において、操作モード切替条件の一種である走行モードから荷役モードへの切替条件は、走行に関する遠隔操作が行われていない状況において荷役モード設定領域A4への入力操作という切替操作が行われることと言える。
【0161】
なお、既に説明したとおり、走行用操作領域A1と荷役モード設定領域A4とは互いに異なる位置に配置されている。このため、走行用操作領域A1内に対する入力操作を契機とする速度設定操作と、荷役モード設定領域A4に対する入力操作とは別の操作である。そして、荷役モード設定領域A4に対する入力操作は、操舵角を決定付ける第1回転操作及び荷役用操作としての第2回転操作とは異なる操作である。
【0162】
以上のことから、走行モードから荷役モードへの切り替えの契機となる切替操作である荷役モード設定領域A4への入力操作は、走行用操作、操舵角を決定付ける操作、及び荷役用操作のいずれとも異なる操作であると言える。
【0163】
図9に示すように、リモートCPU33は、操作モードが荷役モードである場合、詳細には操作モードがリフトモード、リーチモード又はチルトモードのいずれかである場合には、ステップS102を否定判定し、ステップS112に進み、荷役モード対応処理を実行して、本遠隔操作制御処理を終了する。
【0164】
図13及び
図14を用いて荷役モード対応処理について説明する。なお、
図14においては、図示の都合上、遠隔操作装置30を実際よりも大きく、且つ、フォークリフト20を実際よりも小さく示す。
【0165】
図13に示すように、リモートCPU33は、まずステップS201にて、走行用操作とは異なる荷役用操作が行われているか否かを判定する。本実施形態では、荷役用操作が「操作対象物用操作」に対応する。
【0166】
本実施形態における荷役用操作とは第2回転操作である。リモートCPU33は、姿勢検知部35の検知結果に基づいて、第2回転操作方向における基準位置からの遠隔操作装置30の位置変化の有無を判定する。
【0167】
より具体的には、リモートCPU33は、姿勢検知部35の検知結果に基づいて第2回転操作方向における現在の遠隔操作装置30の回転位置を把握する。そして、リモートCPU33は、第2回転操作方向における現在の回転位置が基準位置からズレている場合、又は、ズレ量が閾値量以上である場合には第2回転操作が行われていると判定する。一方、リモートCPU33は、第2回転操作方向における現在の回転位置が基準位置と一致している場合、又は、両位置がズレている場合であってもそのズレ量が閾値量未満である場合には第2回転操作が行われていないと判定する。
【0168】
ここで、第2回転操作方向における遠隔操作装置30の基準位置は、任意であるが、例えば水平方向に対して基準角度(90度を含む)だけ傾いた回転位置で固定されていてもよい。
【0169】
また、第2回転操作方向における遠隔操作装置30の基準位置は、操作者が適宜設定できるように変更可能に構成されていてもよい。例えば、リモートCPU33は、走行モードから荷役モードへの切替操作が行われた場合に、当該切替操作が行われた時の第2回転操作方向の回転位置を基準位置として設定してもよい。
【0170】
また、例えば、リモートCPU33は、走行モードから荷役モードへの切替処理(ステップS110)の実行後、ステップS111の処理の実行前に、基準位置の設定処理を実行してもよい。当該基準位置の設定処理では、リモートCPU33は、操作者の基準設定操作によって第2回転操作方向の基準位置を設定する。例えば、リモートCPU33は、タッチ操作が行われた時点における第2回転操作方向の遠隔操作装置30の回転位置が基準位置に設定される旨をタッチパネル31に表示させることにより、遠隔操作装置30を基準位置に設定したい回転位置に合わせること、及び、その状態でタッチ操作を行うことを促す。そして、リモートCPU33は、タッチパネル31に対してタッチ操作が行われたことに基づいて、その時点における第2回転操作方向の遠隔操作装置30の回転位置を基準位置に設定してもよい。
【0171】
リモートCPU33は、荷役用操作が行われている場合には、ステップS202に進み、基準位置と現在の回転位置とに基づいて、第2回転操作方向における基準位置からの変化角度である第2回転操作角度θnを把握する。
【0172】
第2回転操作角度θnは、例えば正又は負の数値情報である。詳細には、
図14に示すように、通常、操作者は、操作画像G10を視認するために、タッチパネル31がある表面と対向する状態で遠隔操作装置30を把持することが想定される。
【0173】
ここで、仮に
図14に示す第2回転操作方向の遠隔操作装置30の回転位置を基準位置とすると、リモートCPU33は、上記基準位置から所定回りに第3操作角θn1だけ第2回転操作が行われた場合には、正の値であって絶対値が第3操作角θn1の第2回転操作角度θnを把握する。一方、リモートCPU33は、基準位置から上記所定回りとは反対回りに第4操作角θn2だけ第2回転操作が行われた場合には、負の値であって絶対値が第4操作角θn2の第2回転操作角度θnを把握する。
【0174】
ちなみに、上記のようにタッチパネル31が操作者に向くように遠隔操作装置30が把持されている場合、所定回りの第2回転操作は、遠隔操作装置30を起立させる起立操作とも言え、所定回りとは反対回りの第2回転操作は、遠隔操作装置30を傾倒させる傾倒操作とも言える。
【0175】
また、所定回りの第2回転操作は、操作者から見て、奥側から手前側への回動操作であり、所定回りとは反対回りの第2回転操作は、操作者から見て、手前側から奥側への回動操作とも言える。詳細には、例えば遠隔操作装置30が横向きの状態で両手によって把持されているとする。かかる状況において所定回りの第2回転操作が行われた場合、操作者から見て、タッチパネル31の上端側の部分が奥側から手前側に向けて回動する一方、所定回りとは反対回りの第2回転操作が行われた場合、操作者から見て、タッチパネル31の上端側の部分が手前側から奥側に向けて回動する。
【0176】
なお、第2回転操作方向における遠隔操作装置30の回転位置が基準位置から変化していない場合には、第2回転操作角度θnは「0」となる。この点に着目すれば、ステップS201の処理は、第2回転操作角度θnが「0」、又は、第2回転操作角度θnの絶対値が閾値量以上であるか否かを判定する処理とも言える。
【0177】
図13に示すように、リモートCPU33は、ステップS202の処理の実行後は、ステップS203にて、操作モード特定情報に基づいて、現在設定されている荷役モードがリフトモード、リーチモード、チルトモードのいずれであるかを把握する。
【0178】
その後、リモートCPU33は、ステップS204にて、遠隔操作信号SG1の荷役操作情報D2の設定を行う。詳細には、リモートCPU33は、現在設定されている荷役モードに対応した情報に、第2回転操作角度θnに対応した数値情報を設定し、その他の荷役操作情報D2に、停止に対応した数値情報である「0」を設定する。これにより、現在設定されている荷役モードに対応する動作以外の動作が行われないように規制される。
【0179】
例えば、リモートCPU33は、現在設定されている荷役モードがリフトモードである場合にはリフト情報Dfaに第2回転操作角度θnに対応した数値情報を設定し、リーチ情報Dfb及びチルト情報Dfcに「0」を設定する。
【0180】
一例としては、リモートCPU33は、第2回転操作角度θnが正である場合には、リフト情報Dfaに上昇のリフト動作に対応した数値情報(例えば正の値)を設定し、第2回転操作角度θnが負である場合には、リフト情報Dfaに下降のリフト動作に対応した数値情報(例えば負の値)を設定する。また、リモートCPU33は、第2回転操作角度θnの絶対値が大きくなるほどリフト動作のストローク量が大きくなるようにリフト情報Dfaの数値情報を設定する。
【0181】
同様に、リモートCPU33は、現在設定されている荷役モードがリーチモードである場合にはリーチ情報Dfbに第2回転操作角度θnに対応した数値情報を設定し、リフト情報Dfa及びチルト情報Dfcに「0」を設定する。
【0182】
一例としては、リモートCPU33は、第2回転操作角度θnが正である場合には、リーチ情報Dfbに後方移動のリーチ動作に対応した数値情報(例えば負の値)を設定し、第2回転操作角度θnが負である場合には、リーチ情報Dfbに前方移動のリーチ動作に対応した数値情報(例えば正の値)を設定する。また、リモートCPU33は、第2回転操作角度θnの絶対値が大きくなるほどリーチ動作のストローク量が大きくなるようにリーチ情報Dfbの数値情報を設定する。
【0183】
また、リモートCPU33は、現在設定されている荷役モードがチルトモードである場合にはチルト情報Dfcに第2回転操作角度θnに対応した数値情報を設定し、リフト情報Dfa及びリーチ情報Dfbに「0」を設定する。
【0184】
一例としては、リモートCPU33は、第2回転操作角度θnが正である場合には、チルト情報Dfcに後方傾斜のチルト動作に対応した数値情報(例えば負の値)を設定し、第2回転操作角度θnが負である場合には、チルト情報Dfcに前方傾斜のチルト動作に対応した数値情報(例えば正の値)を設定する。また、リモートCPU33は、第2回転操作角度θnの絶対値が大きくなるほど傾斜角度が大きくなるようにチルト情報Dfcの数値情報を設定する。
【0185】
続くステップS205では、リモートCPU33は、走行用操作の有無に関わらず、走行操作情報D1に、停止に対応した数値情報である「0」を設定する。これにより、フォークリフト20の走行が規制される。
【0186】
その後、リモートCPU33は、ステップS206にて、リモート通信部36を用いて、ステップS204にて設定された荷役操作情報D2と、ステップS205にて設定された走行操作情報D1とを有する遠隔操作信号SG1を送信する処理を実行して本荷役モード対応処理を終了する。
【0187】
上記遠隔操作信号SG1が車両通信部28によって受信された場合、信号変換部29によって上記遠隔操作信号SG1が制御信号SGaに変換され、車両CPU25に入力される。車両CPU25は、上記制御信号SGaに基づいて荷役アクチュエータ24を制御する。これにより、フォーク22の遠隔操作が行われる。
【0188】
例えば、
図14の実線に示すように、荷役モードがリフトモードである状況において所定回りに第3操作角θn1だけ第2回転操作が行われた場合には、フォーク22が第3操作角θn1に対応するストローク量だけ上昇する。一方、
図14の破線に示すように、荷役モードがリフトモードである状況において所定回りとは反対回りに第4操作角θn2だけ第2回転操作が行われた場合には、フォーク22が第4操作角θn2に対応するストローク量だけ下降する。
【0189】
換言すれば、操作者がタッチパネル31と対向している状態で遠隔操作装置30を把持している状況において、遠隔操作装置30に対して傾倒操作が行われることによってフォーク22の下降動作が行われ、遠隔操作装置30に対して起立操作が行われることによってフォーク22の上昇動作が行われると言える。このように遠隔操作装置30の操作感覚とフォーク22のリフト動作方向とが関連付けられている。
【0190】
なお、リーチモード及びチルトモードについても、対応する動作が異なる点を除き、同様である。
すなわち、リーチモード時は、遠隔操作装置30に対して傾倒操作が行われることによってフォーク22の前方へのリーチ動作が行われ、遠隔操作装置30に対して起立操作が行われることによってフォーク22の後方へのリーチ動作が行われる。このように遠隔操作装置30の操作感覚とフォーク22のリーチ動作方向とが関連付けられている。
【0191】
また、チルトモード時は、遠隔操作装置30に対して傾倒操作が行われることによって前方傾斜のチルト動作が行われ、遠隔操作装置30に対して起立操作が行われることによって後方傾斜のチルト動作が行われる。このように遠隔操作装置30の操作感覚とフォーク22のチルト動作方向とが関連付けられている。
【0192】
ちなみに、フォーク22の動作態様は、荷役用操作としての第2回転操作の操作態様に依存する一方、その他の操作(例えば走行用操作及び第1回転操作)の操作態様には依存しない。すなわち、リモートCPU33は、荷役モード時では、走行用操作の操作態様に関わらず、フォーク22の動作態様を決定している。このため、リモートCPU33は、荷役モード時には、荷役用操作に基づいてフォーク22の遠隔操作を行う一方、走行用操作によってフォーク22が動作しないように規制していると言える。
【0193】
図13に示すように、リモートCPU33は、荷役用操作(詳細には第2回転操作)が行われていないと判定する場合には、ステップS201を否定判定して、ステップS207に進み、走行モードへの切替操作が行われているか否かを判定する。詳細には、リモートCPU33は、タッチセンサ32の検知結果に基づいて、走行モード設定領域A3への入力操作の有無を判定する。
【0194】
リモートCPU33は、走行モード設定領域A3に対する入力操作がある場合には、走行モードへの切替操作が行われたとして、ステップS208にて操作モードの切替処理を実行する。詳細には、リモートCPU33は、操作モードを荷役モードから走行モードに切り替える。より具体的には、リモートCPU33は、操作モード記憶部42に記憶されている操作モード特定情報を、走行モードに対応した情報に更新する。
【0195】
その後、リモートCPU33は、ステップS209にて、操作画像G10の切替処理を実行する。詳細には、リモートCPU33は、操作画像G10を、走行モード画像G11に変更する。そして、リモートCPU33は、荷役モード対応処理を終了する。
【0196】
かかる構成によれば、操作モードが荷役モードであって荷役用操作が行われていない状況において走行モード設定領域A3への入力操作が行われた場合には、操作モードが荷役モードから走行モードに移行する。一方、操作モードが荷役モードであって荷役用操作が行われている場合には、走行モード設定領域A3への入力操作が行われている場合であっても、荷役モードから走行モードへの切り替えは行われない。
【0197】
ちなみに、荷役モード時に荷役用操作が行われていない場合とは、フォーク22の遠隔操作が行われていない場合である。となると、本実施形態において、操作モード切替条件の一種である荷役モードから走行モードへの切替条件は、フォーク22の遠隔操作が行われていない状況において走行モード設定領域A3への入力操作という切替操作が行われることと言える。
【0198】
なお、既に説明したとおり、走行用操作領域A1と走行モード設定領域A3とは互いに異なる位置に配置されている。このため、走行用操作領域A1内に対する入力操作を契機とする速度設定操作と、走行モード設定領域A3に対する入力操作とは別の操作である。そして、走行モード設定領域A3に対する入力操作は、操舵角を決定付ける第1回転操作、及び、荷役用操作としての第2回転操作とは異なる操作である。
【0199】
以上のことから、荷役モードから走行モードへの切り替えの契機となる切替操作である走行モード設定領域A3への入力操作は、走行用操作、操舵角を決定付ける操作、及び荷役用操作のいずれとも異なる操作であると言える。
【0200】
リモートCPU33は、走行モード設定領域A3への入力操作が行われていない場合には、ステップS210にて、荷役モードを変更するための荷役モード変更操作が行われているか否かを判定する。
【0201】
荷役モード変更操作とは、現在設定されている荷役モードとは異なる荷役モードに対応するモード設定領域への入力操作である。例えば、現在設定されている荷役モードがリフトモードである場合には、荷役モード変更操作とは、リーチモード設定領域A4b又はチルトモード設定領域A4cに対する入力操作である。
【0202】
リモートCPU33は、荷役モード変更操作が行われていない場合にはそのまま荷役モード対応処理を終了する。
一方、リモートCPU33は、荷役モード変更操作が行われている場合には、ステップS211に進み、今回行われた荷役モード変更操作に対応した荷役モードに変更する荷役モード変更処理を実行する。
【0203】
詳細には、リモートCPU33は、今回の荷役モード変更操作(ステップS210を肯定判定する契機となった入力操作)がリーチモード設定領域A4bに対する入力操作であった場合には、操作モードをリーチモードに変更する。
【0204】
同様に、リモートCPU33は、今回の荷役モード変更操作がリフトモード設定領域A4aに対する入力操作であった場合には、操作モードをリフトモードに変更し、今回の荷役モード変更操作がチルトモード設定領域A4cに対する入力操作であった場合には、操作モードをチルトモードに変更する。
【0205】
なお、ステップS110、S208,S211の処理が「操作モード設定ステップ」に対応し、これらの処理を実行するリモートCPU33が「操作モード設定部」に対応する。また、ステップS104〜S108及びステップS202〜S206の処理を実行するリモートCPU33が「遠隔操作制御部」に対応する。
【0206】
その後、リモートCPU33は、ステップS212にて、操作画像G10を、今回変更された荷役モードに対応した操作画像G10に変更して、本荷役モード対応処理を終了する。
【0207】
かかる構成によれば、操作モードが荷役モードであって荷役用操作が行われていない状況において荷役モード変更操作が行われた場合には、荷役モードが変更される。一方、操作モードが荷役モードであって荷役用操作が行われている場合には、荷役モード変更操作が行われた場合であっても、荷役モードは変更されない。
【0208】
ちなみに、荷役モード時に荷役用操作が行われていない場合とは、フォーク22の遠隔操作が行われていない場合である。となると、本実施形態において、荷役モード同士の切替条件は、フォーク22の遠隔操作が行われていない状況において荷役モード変更操作が行われることと言える。
【0209】
なお、既に説明したとおり、荷役モード設定領域A4は、走行用操作領域A1及び走行モード設定領域A3とは互いに異なる位置に配置されている。このため、荷役モード設定領域A4に対する入力操作は、走行用操作領域A1内に対する入力操作を契機とする速度設定操作や、走行モード設定領域A3に対する入力操作とは別の操作である。
【0210】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)産業車両用遠隔操作システム10は、車両通信部28及び操作対象物としてのフォーク22を有するフォークリフト20と、車両通信部28と無線通信を行うリモート通信部36を有し、フォークリフト20を遠隔操作するのに用いられる遠隔操作装置30と、を備えている。遠隔操作装置30のリモートCPU33は、フォークリフト20の遠隔操作を行う操作モードとして、走行モード又は荷役モードを設定する。走行モードは、走行に関する遠隔操作を行う一方、フォーク22の遠隔操作を規制する操作モードであり、荷役モードは、フォーク22の遠隔操作を行う一方、走行に関する遠隔操作を規制する操作モードである。
【0211】
かかる構成において、リモートCPU33は、走行モード時には、走行用操作が行われることに基づいて走行に関する遠隔操作を行う一方、走行用操作とは異なる荷役用操作によってフォークリフト20の走行が行われないように規制している。また、リモートCPU33は、荷役モード時には、荷役用操作が行われることに基づいてフォーク22の遠隔操作を行う一方、走行用操作によってフォーク22が動作しないように規制している。
【0212】
かかる構成によれば、走行モード時にフォーク22の遠隔操作が規制されており、荷役モード時に走行に関する遠隔操作が規制されているため、走行の遠隔操作とフォーク22の遠隔操作とが同時に行われることを回避できる。これにより、走行とフォーク22との2つの遠隔操作を同時に行おうとして誤った操作が行われることを抑制でき、それを通じてフォークリフト20の誤動作を抑制できる。
【0213】
ここで、操作モードとして走行モードと荷役モードとが設定されている構成においては、操作者は操作モードを誤認した状態で遠隔操作装置30に対して操作を行う場合があり得る。
【0214】
これに対して、本実施形態によれば、走行用操作と荷役用操作とが異なっており、走行モード時には荷役用操作に基づくフォークリフト20の走行が規制され且つ荷役モード時には走行用操作に基づくフォーク22の動作が規制されているため、操作モードの誤認に起因したフォークリフト20の誤動作を抑制できる。
【0215】
詳述すると、仮に走行モード時における走行に関する遠隔操作と、荷役モード時におけるフォーク22の遠隔操作とが、遠隔操作装置30に対する共通の操作によって実現できるとする。この場合、仮に操作モードが荷役モードであるにも関わらず、操作者が走行モードであると誤認した状態で、上記共通の操作が行われると、操作者が意図していないフォーク22の遠隔操作が行われてしまう。
【0216】
これに対して、本実施形態によれば、仮に上記のように操作モードが荷役モードであるにも関わらず、走行モードであると誤認して走行用操作が行われた場合には、走行及びフォーク22双方の遠隔操作が行われない。これにより、操作モードの誤認に起因するフォークリフト20の誤動作を抑制できる。
【0217】
(2)遠隔操作装置30は、第1回転軸を中心とする第1回転操作、及び、第1回転軸と直交する第2回転軸を中心とする第2回転操作の双方を検知する姿勢検知部35を備えている。リモートCPU33は、走行モード時に走行用操作が行われることに基づいて、第1回転操作の操作態様に基づいてフォークリフト20の操舵角の遠隔操作を行う。荷役用操作は、第2回転操作を含む。
【0218】
かかる構成によれば、走行モード時に第1回転操作を行うことにより、操舵角を制御できる。ここで、仮に荷役モードである状況において操作者が走行モードであると誤認している場合、操作者は、操舵角の遠隔操作を行おうとして第1回転操作を行うことが想定される。この場合、第1回転操作と荷役用操作とは、回転軸が直交する種類が異なる操作であるため、フォーク22の遠隔操作は行われない。したがって、操作モードの誤認に基づくフォークリフト20の誤動作を抑制できる。
【0219】
(3)遠隔操作装置30は板状である。第1回転軸としての第1中心線M1は、遠隔操作装置30の厚さ方向に延びており、第2回転軸としての第2中心線M2は、上記厚さ方向と直交する方向に延びている。
【0220】
かかる構成によれば、遠隔操作装置30が板状である場合、操作者は、遠隔操作装置30の板面が対向する状態で遠隔操作装置30を把持することが想定される。この場合、第1回転操作は、操作者から見て、遠隔操作装置30を右回り又は左回りに回転させることに相当する。これにより、操作者としては、遠隔操作装置30を把持した状態で左回り又は右回りに回転させることにより、操舵角を制御できる。したがって、ハンドルを操作するような感覚でフォークリフト20の操舵角を制御でき、操作性の向上を図ることができる。
【0221】
(4)遠隔操作装置30は、長手方向及び短手方向を有する板状である。この場合、操作者としては、遠隔操作装置30の長手方向の両端部を把持することが想定される。かかる構成において、第2中心線M2は、遠隔操作装置30の長手方向に延びている。これにより、遠隔操作装置30の長手方向の両端部を把持している操作者としては、手前側から奥側に向けて遠隔操作装置30を傾倒させたり、奥側から手前側に向けて遠隔操作装置30を起立させたりすることにより、フォーク22の遠隔操作を行うことができる。
【0222】
(5)遠隔操作装置30は、タッチパネル31と、タッチパネル31に対する入力操作を検知するタッチセンサ32とを有している。リモートCPU33は、走行モード時に、走行用操作としてタッチパネル31に対する入力操作の一種である速度設定操作が行われることに基づいて、速度設定操作の操作態様に対応した走行速度、及び、第1回転操作の操作態様に対応した操舵角でフォークリフト20が走行するようにフォークリフト20の遠隔操作を行う。
【0223】
かかる構成によれば、タッチパネル31に対する入力操作である速度設定操作と第1回転操作とによってフォークリフト20の走行態様を制御できる。これにより、同時に回転軸が異なる2種類の回転操作を行うことなく、フォークリフト20の走行態様を制御できるため、操作性の向上及び誤操作の抑制を図ることができる。
【0224】
詳述すると、仮に第1回転操作によって操舵角が制御され、第2回転操作によって走行速度が制御される構成において所望の走行態様を実現するためには、遠隔操作装置30を2つの回転軸で同時に回転させる必要が生じ得る。この場合、遠隔操作装置30を、捻るように回転させることとなり、無理な体勢となったり、十分な回転操作を行うことができなくなったりする不都合が生じ得る。
【0225】
これに対して、本実施形態によれば、走行速度を決定付ける操作としてタッチパネル31に対する入力操作が採用されているため、上記不都合を抑制できる。特に、タッチパネル31に対する入力操作は、第1回転操作を行いながら行うことができる。また、タッチパネル31に対する入力操作及び第1回転操作において、一方の操作によって他方の操作が阻害されるといったことは生じにくい。これにより、操作性の向上を図ることができる。
【0226】
(6)速度設定操作とは、走行用操作領域A1内に対する入力操作を契機とするタッチパネル31への入力操作である。詳細には、速度設定操作とは、走行用操作領域A1内に対する入力操作を開始条件(契機)とし、その後入力操作位置を変更するという一連の入力操作であるスライド操作である。換言すれば、速度設定操作は、走行用操作領域A1内に対する入力操作である開始操作と、当該開始操作から継続されるタッチパネル31への入力操作である継続操作とから構成される一連の入力操作である。
【0227】
リモートCPU33は、走行モード時において、スライド操作方向に基づいて、フォークリフト20の前進/後退を決定する。詳細には、リモートCPU33は、最初に入力操作が行われた開始位置P10から上方に向かうスライド操作が行われた場合には、フォークリフト20を前進させる一方、開始位置P10から下方に向かうスライド操作が行われた場合には、フォークリフト20を後退させる。これにより、操作性の更なる向上を図ることができる。
【0228】
詳述すると、フォークリフト20の前進/後退を決定する構成としては、例えば走行用操作領域A1内のうち中央線Lよりも上方部分に入力操作が行われると前進し、走行用操作領域A1内のうち中央線Lよりも下方部分に入力操作が行われると後退する構成が考えられる。この場合、フォークリフト20を前進させるためには、最初に、走行用操作領域A1内のうち中央線Lよりも上方部分に対して入力操作を行う必要がある。したがって、フォークリフト20を前進させるためには、最初に走行用操作領域A1のうち中央線Lよりも下方部分ではなく上方部分に狙って入力操作を行う必要があり、操作性の低下が懸念される。また、操作者としては、フォークリフト20ではなく、操作画像G10を見ながら入力操作を行うことになり易く、安全性の低下が懸念される。
【0229】
これに対して、本実施形態では、スライド操作方向によってフォークリフト20の前進/後退が決定されるため、スライド操作における最初の入力操作位置(開始位置P10)は走行用操作領域A1内であればよい。例えば、走行用操作領域A1内のうち中央線Lよりも下方の部分に開始操作が行われた場合であっても上方に向けてスライド操作することによってフォークリフト20を前進させることができる。これにより、上記のように速度設定操作の最初の入力操作位置を厳密に調整する必要がなく、操作性を高めることができる。
【0230】
(7)リモートCPU33は、速度設定操作の操作態様として速度設定操作の開始位置P10(換言すれば開始操作位置)と現在位置(換言すれば継続操作位置)との相対位置に基づいて、フォークリフト20の走行速度を決定する。かかる構成によれば、スライド操作の操作量に応じて、走行速度を異ならせることができ、それを通じて直感的な操作が可能となる。
【0231】
ここで、例えば開始位置P10ではなく、予め定められた規定位置と速度設定操作の現在位置との相対位置に基づいて走行速度が決まる場合、速度設定操作の操作態様が制限されてしまうため、走行速度の調整が制限される場合があり得る。例えば、規定位置が中央線Lに設定されている場合、タッチパネル31の短手方向における規定位置から速度設定操作の現在位置までの距離は、中央線Lからタッチパネル31の上端までの距離に制限される。
【0232】
これに対して、本実施形態によれば、開始位置P10を自由に設定できることにより、スライド操作が可能な範囲を調整できる。例えば、
図11に示すように、開始位置P10を中央線Lよりも下方にすることにより、タッチパネル31の短手方向における開始位置P10と速度設定操作の現在位置との距離Yを、中央線Lからタッチパネル31の上端までの距離よりも長くできる。これにより、走行速度を、より精密に調整したり、設定可能な速度幅をより大きくしたりすることが可能となる。
【0233】
(8)リモートCPU33は、操作モード切替条件が成立した場合には、操作モードを切り替える。操作モード切替条件は、遠隔操作装置30に対して、走行用操作及び荷役用操作の双方とは異なる切替操作が行われることを含む。
【0234】
かかる構成によれば、切替操作を含む操作モード切替条件の成立に基づいて操作モードの切り替えが行われる。これにより、操作者としては、必要に応じて切替操作を行うことにより、操作モードを切り替えることができ、所望の遠隔操作を行うことができる。
【0235】
特に、切替操作は、走行用操作及び荷役用操作とは異なる操作であるため、操作モードを切り替えようとして誤って走行用操作や荷役用操作が行われた場合であっても、操作モードは切り替わらない。また、走行やフォーク22に関する遠隔操作を行おうとして誤って切替操作が行われた場合であっても、走行やフォーク22に関する遠隔操作は行われない。これにより、誤操作によるフォークリフト20の誤動作や操作モードの切り替えを抑制できる。
【0236】
(9)操作モード切替条件は、走行及びフォーク22の双方の遠隔操作が行われていない状況において切替操作が行われることである。かかる構成によれば、走行及びフォーク22の双方の遠隔操作中には、操作モードの切り替えが行われない。これにより、遠隔操作中に操作モードが切り替わることに起因してフォークリフト20が意図しない動作をすることを抑制できる。
【0237】
(10)リモートCPU33は、走行用操作領域A1とは別に、走行モード設定領域A3及び荷役モード設定領域A4が区画された操作画像G10を表示させる。走行モード設定領域A3及び荷役モード設定領域A4は、走行用操作領域A1とは離間した位置に配置されている。切替操作は、走行モード設定領域A3又は荷役モード設定領域A4に対する入力操作である。
【0238】
かかる構成によれば、タッチパネル31の走行用操作領域A1とは異なる位置に対する入力操作によって操作モードを切り替えることができる。特に、走行モード設定領域A3及び荷役モード設定領域A4は、走行用操作領域A1に対して離間しているため、例えば走行用操作(速度設定操作)を行おうとして切替操作が行われたり、切替操作を行おうとして走行用操作が行われたりしにくい。これにより、誤操作を抑制できる。
【0239】
(11)走行用操作領域A1、走行モード設定領域A3、及び、荷役モード設定領域A4はそれぞれ異なる位置に配置されている。リモートCPU33は、操作モードが走行モードであって走行用操作が行われていない状況において切替操作として荷役モード設定領域A4に対する入力操作が行われたことに基づいて、操作モードを走行モードから荷役モードへ切り替える。リモートCPU33は、操作モードが荷役モードであって荷役用操作が行われていない状況において切替操作として走行モード設定領域A3に対する入力操作が行われたことに基づいて、操作モードを荷役モードから走行モードへ切り替える。
【0240】
かかる構成によれば、切替先の操作モードに対応する領域に対して入力操作を行うことにより、操作モードを切り替えることができる。これにより、所望の操作モードにできる。
【0241】
ここで、例えば、切替操作として、共通の切替領域に対する入力操作を採用し、リモートCPU33は、上記共通の切替領域に対する入力操作が行われる度に、操作モードを切り替えることも考えられる。この場合、仮に操作モードが荷役モードであるにも関わらず、操作者が走行モードであると誤認した状態で荷役モードに切り替えようとして、上記共通の切替領域に対する入力操作が行われると、操作モードが走行モードに切り替わったのにも関わらず、操作者は荷役モードであると誤認したままとなる。
【0242】
これに対して、本実施形態によれば、仮に操作モードが荷役モードであるにも関わらず、操作者が走行モードであると誤認した状態で荷役モードに切り替えようとして荷役モード設定領域A4に対して入力操作を行うと、操作モードは走行モードに切り替わることなく荷役モードに維持される。これにより、操作者の誤認した状態を解消できる。
【0243】
(12)リモートCPU33は、操作モードが荷役モードである場合に荷役用操作が行われることに基づいて、リフト動作、リーチ動作又はチルト動作のいずれかが行われるようにフォーク22を遠隔操作する。これにより、荷役用操作によって、リフト動作、リーチ動作又はチルト動作を行わせることができる。
【0244】
(13)フォーク22は、複数種類の動作(詳細にはリフト動作、リーチ動作、チルト動作)を行うことができる。本実施形態の産業車両用遠隔操作システム10は、複数種類の動作に対応させて、複数種類の荷役モードを有している。リモートCPU33は、複数種類の荷役モードのうちいずれかが設定されている場合には、荷役用操作に基づいて、現在設定されている荷役モードに対応する動作の遠隔操作を行う一方、現在設定されている荷役モードに対応する動作以外の動作が行われないように規制する。例えば、リモートCPU33は、リフトモードが設定されている場合には荷役用操作が行われることに基づいてリフト動作が行われるようにフォーク22の遠隔操作を行う一方、リーチ動作及びチルト動作を規制する。
【0245】
かかる構成によれば、フォーク22において、2種類の動作が同時に行われることが規制されているため、操作の単純化を図ることができる。これにより、複雑な操作を回避でき、フォーク22の誤動作を抑制できる。
【0246】
(14)リモートCPU33は、複数種類の荷役モードのうち第1の荷役モードとしてのリフトモードである場合には、荷役用操作としての第2回転操作に基づいてリフト動作が行われるようにフォーク22の遠隔操作を行う。また、リモートCPU33は、複数種類の荷役モードのうち第2の荷役モードとしてのリーチモードである場合には、第2回転操作に基づいてリーチ動作が行われるようにフォーク22の遠隔操作を行う。すなわち、各荷役モードにおいて、フォーク22の動作を行わせる操作は共通している。
【0247】
かかる構成によれば、荷役モードを変更することにより、共通の操作によって種類の異なるフォーク22の動作を行わせることができる。これにより、操作の簡略化を図ることができる。
【0248】
(15)リモートCPU33は、フォーク22の遠隔操作が行われていない状況下において荷役モード変更操作が行われることに基づいて、荷役モードを変更する。これにより、フォーク22にて所望の動作を行わせることができる。また、フォーク22の遠隔操作が行われている状況下では荷役モード変更操作が行われた場合であっても、荷役モードは変更されない。これにより、フォーク22がある種類の動作を行っている状態から突然別の種類の動作に変更されることを抑制できる。
【0249】
(16)荷役モード設定領域A4は、荷役モードの一種であるリフトモードに設定するためのリフトモード設定領域A4aと、荷役モードの一種であるリーチモードに設定するためのリーチモード設定領域A4bと、荷役モードの一種であるチルトモードに設定するためのチルトモード設定領域A4cとを含む。荷役モード変更操作とは、現在設定されている荷役モードとは異なる荷役モードに対応するモード設定領域への入力操作である。
【0250】
かかる構成によれば、所望の動作に対応したモード設定領域に対して入力操作を行うことにより、所望の動作に対応した荷役モードに変更できる。
ここで、例えば、荷役モード変更操作として、共通の荷役モード変更領域に対する入力操作を採用し、リモートCPU33は、上記共通の荷役モード変更領域に対する入力操作が行われる度に、荷役モードを順次切り替えることも考えられる。この場合、仮に現在の荷役モードがリーチモードであるにも関わらず、操作者がリフトモードであると誤認した状態でリーチモードに切り替えようとして、上記荷役モード変更領域に対する入力操作が行われると、荷役モードがリフトモード又はチルトモードに切り替わったのにも関わらず、操作者はリーチモードであると誤認したままとなる。
【0251】
これに対して、本実施形態によれば、仮に現在の荷役モードがリーチモードであるにも関わらず、操作者がリフトモードであると誤認した状態でリーチモードに切り替えようとして、リーチモード設定領域A4bに対する入力操作が行われると、荷役モードはリーチモードに維持される。これにより、操作者の誤認した状態を解消できる。
【0252】
(17)リモートCPU33は、リフトモードである場合には、リフト動作及び第2回転操作を示唆するリフト操作説明画像Gf1を表示させる。リモートCPU33は、リーチモードである場合には、リーチ動作及び第2回転操作を示唆するリーチ操作説明画像Gf2を表示させ、チルトモードである場合には、チルト動作及び第2回転操作を示唆するチルト操作説明画像Gf3を表示させる。かかる構成によれば、タッチパネル31に表示される画像に基づいて、現在設定されている荷役モード及び実行可能なフォーク22の動作と、行うべき操作とを理解できる。
【0253】
(18)遠隔操作装置30は、スマートフォン又はタブレット端末である。かかる構成によれば、既存の汎用品を用いてフォークリフト20の遠隔操作を実現できる。
(19)遠隔操作装置30を用いてフォークリフト20を遠隔操作するための遠隔操作プログラム40は、リモートCPU33にて遠隔操作制御処理を実行させる遠隔操作制御処理実行プログラム41を含む。遠隔操作制御処理は、操作モードとして、走行モード又は荷役モードを設定する処理を含む。遠隔操作制御処理は、走行モード時には、走行用操作が行われることに基づいて走行に関する遠隔操作を行う一方、走行用操作とは異なる荷役用操作によってフォークリフト20の走行が行われないように規制する処理を含む。更に、遠隔操作制御処理は、荷役モード時には、荷役用操作が行われることに基づいてフォーク22の遠隔操作を行う一方、走行用操作によってフォーク22が動作しないように規制している処理を含む。これにより、(1)等の作用効果を奏する。
【0254】
(20)本実施形態におけるフォークリフト20の遠隔操作方法は、操作モードとして、走行モード又は荷役モードを設定する操作モード設定ステップ(ステップS110,S208,S211等)を含む。また、上記遠隔操作方法は、走行モード時には、走行用操作が行われることに基づいて走行に関する遠隔操作を行う一方、走行用操作とは異なる荷役用操作によってフォークリフト20の走行が行われないように規制するステップS104〜S108を含む。更に、上記遠隔操作方法は、荷役モード時には、荷役用操作が行われることに基づいてフォーク22の遠隔操作を行う一方、走行用操作によってフォーク22が動作しないように規制しているステップS202〜S206を含む。これにより、(1)等の作用効果を奏する。なお、ステップS104〜S108及びステップS202〜S206が「遠隔操作制御ステップ」に対応する。
【0255】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 走行用操作は、速度設定操作のみに限られない。また、操舵角を決定付ける操作は第1回転操作に限られない。
【0256】
例えば、
図15に示すように、走行モード画像G21には、第1領域A11及び第2領域A12が設けられていてもよい。
第1領域A11及び第2領域A12は、タッチパネル31の長手方向に離間して対向配置されている。第1領域A11及び第2領域A12は、タッチパネル31の中央部よりも長手方向の両端部側に配置されている。
【0257】
第1領域A11は、走行モード画像G21における長手方向の両端部のうち第1端部側に配置されており、例えば両手で遠隔操作装置30を把持した場合に、左手の指(例えば親指)が自然と配置される位置に設けられている。第1領域A11内には、タッチパネル31の短手方向に対向配置された前進アイコンIc1及び後退アイコンIc2が表示されている。
【0258】
第2領域A12は、走行モード画像G21における長手方向の両端部のうち第1端部とは反対側の第2端部側に配置されており、例えば両手で遠隔操作装置30を把持した場合に、右手の指(例えば親指)が自然と配置される位置に設けられている。第2領域A12内には、タッチパネル31の長手方向に対向配置された左アイコンIc3及び右アイコンIc4が表示されている。
【0259】
なお、走行モード画像G21には、第1領域A11及び第2領域A12とは異なる位置に、走行モード設定領域A3及び荷役モード設定領域A4の各モード設定領域A4a〜A4cが設けられている。これら各モード設定領域A3,A4a〜A4cは、両領域A11,A12に対してタッチパネル31の短手方向にズレた位置に配置されており、タッチパネル31の長手方向に互いに離間して配列されている。
【0260】
かかる構成においては、走行用操作は、第1領域A11内に対する入力操作を契機とする第1スライド操作と、第2領域A12内に対する入力操作を契機とする第2スライド操作との双方であるとよい。
【0261】
この場合、リモートCPU33は、上記実施形態と同様に、第1スライド操作の操作態様に基づいて前進/後退を決定するとともに走行速度を制御する。詳細には、リモートCPU33は、第1スライド操作の開始位置である第1開始位置P21からの上下のスライド操作方向に基づいて前進/後退を決定し、第1開始位置P21と第1スライド操作の現在位置との短手方向の距離に基づいて走行速度を決定する。
【0262】
また、リモートCPU33は、第1回転操作の操作態様ではなく、第2スライド操作の操作態様に基づいて、フォークリフト20の操舵角を制御してもよい。例えば、リモートCPU33は、第2スライド操作の開始位置である第2開始位置P22からの左右のスライド操作方向に基づいて右旋回か左旋回かを決定する。そして、リモートCPU33は、タッチパネル31の長手方向における第2開始位置P22と第2スライド操作の現在位置との距離に基づいて操舵角の大きさを決定する。例えば、第2開始位置P22から右方向に第2スライド操作が行われた場合、リモートCPU33は、右旋回に対応する操舵角を設定し、且つ、タッチパネル31の長手方向における第2開始位置P22と第2スライド操作の現在位置との距離が大きいほど操舵角の絶対値を大きく設定する。
【0263】
すなわち、本実施形態では、操作モードが走行モードである場合、第1領域A11側(左手)の操作によって前進又は後退が決定されるとともに速度制御が行われ、第2領域A12側(右手)の操作によって操舵角制御が行われる。これにより、遠隔操作装置30に対して第1回転操作を行うことなくフォークリフト20の走行に関する遠隔操作を行うことができる。
【0264】
かかる構成においては、荷役用操作として、第1回転操作及び第2回転操作の少なくとも一方を採用してもよい。詳細には、リモートCPU33は、第1回転操作及び第2回転操作の少なくとも一方が行われている場合にはステップS201を肯定判定する一方、第1回転操作及び第2回転操作の双方が行われていない場合にはステップS201を否定判定してもよい。この場合であっても、走行用操作、操舵角を制御する操作、及び荷役用操作は、互いに異なっている。
【0265】
かかる構成においては、リモートCPU33は、第1動作モード時(例えばリフトモード時)に、第2回転操作ではなく第1回転操作が行われたことに基づいて、第1動作(例えばリフト動作)が実行されるようにフォーク22の遠隔操作を行ってもよい。また、リモートCPU33は、第2動作モード時(例えばリーチモード時)に、第1回転操作ではなく第2回転操作が行われたことに基づいて、第2動作(例えばリーチ動作)が実行されるようにフォーク22の遠隔操作を行ってもよい。すなわち、フォーク22が複数種類の動作を実行可能な構成においては、複数種類のフォーク22の動作に対応させて、複数種類の操作を割り当ててもよい。これにより、例えば荷役モードがリフトモードであるのにも関わらず、操作者がリーチモードであると誤認して第2回転操作が行われた場合には、リフト動作及びリーチ動作の双方が実行されない。これにより、荷役モードの誤認に起因するフォーク22の誤動作を抑制できる。
【0266】
なお、第1スライド操作は、第1領域A11内に対する入力操作の後、第1領域A11外にはみ出してもよいし、第1領域A11内に限定されてもよい。すなわち、リモートCPU33は、第1スライド操作の現在位置が第1領域A11外になった場合に、速度設定操作が継続されていると判定してもよいし、速度設定操作が終了したと判定してもよい。第2スライド操作についても同様である。但し、スライド操作が可能な範囲の広さを考慮すれば、第1領域A11外にはみ出すのを許容する構成の方が好ましい。
【0267】
○ 実施形態では、荷役モードは複数種類設定されていたが、これに限られず、1種類のみでもよい。また、産業車両用遠隔操作システム10は、複数種類のフォーク22の動作を同時に実行可能に構成されていてもよい。
【0268】
上記別例について
図16を用いて詳細に説明する。
例えば、
図16に示すように、操作モードが荷役モードである場合に設定される荷役モード画像G22には、互いに異なる位置に配置された第1動作用操作領域A21と第2動作用操作領域A22とが設けられていてもよい。両動作用操作領域A21,A22は、走行モードに設定される走行用操作領域A1とは異なる位置に配置されている。例えば、走行用操作領域A1、第1動作用操作領域A21、及び第2動作用操作領域A22は、タッチパネル31の長手方向に離間して配列されている。
【0269】
第1動作用操作領域A21は、第1動作(例えばリフト動作)を行うための操作領域であり、当該第1動作用操作領域A21内には、タッチパネル31の短手方向に対向配置された上昇アイコンIc11及び下降アイコンIc12が表示されている。
【0270】
第2動作用操作領域A22は、第2動作(例えばリーチ動作)を行うための操作領域であり、当該第2動作用操作領域A22内には、タッチパネル31の短手方向に対向配置された前方アイコンIc13及び後方アイコンIc14が表示されている。
【0271】
また、本別例の荷役モード画像G22には、走行モード設定領域(走行モードアイコン)A23及び荷役モード設定領域(荷役モードアイコン)A24が設けられている。走行モード設定領域A23及び荷役モード設定領域A24は、各操作領域A1,A21,A22とは異なる位置に配置されており、例えば第1動作用操作領域A21に対してタッチパネル31の短手方向の両側に配置されている。なお、本別例における荷役モード設定領域A24は1つのみである。
【0272】
かかる構成においては、荷役用操作は、第1動作用操作領域A21内に対する入力操作を契機となる第1動作用スライド操作、第2動作用操作領域A22内に対する入力操作を契機となる第2動作用スライド操作、及び、第2回転操作を含んでもよい。換言すれば、荷役用操作は、実施形態のように単一の操作であってもよいし、複数の操作を含むものであってもよい。
【0273】
詳細には、リモートCPU33は、第1動作用スライド操作、第2動作用スライド操作及び第2回転操作の少なくとも一方が行われている場合には、荷役用操作が行われているとして、ステップS201を肯定判定する。一方、リモートCPU33は、第1動作用スライド操作、第2動作用スライド操作及び第2回転操作のいずれもが行われていない場合には、荷役用操作が行われていないとして、ステップS201を否定判定してもよい。
【0274】
かかる構成によれば、走行用操作の一部である速度設定操作で用いられる走行用操作領域A1と、両動作用操作領域A21,A22とはそれぞれ異なる位置に配置されているため、これらの操作領域A1,A21,A22内に対する入力操作はそれぞれ別の操作であるといえる。このため、走行用操作、操舵角を制御する操作、及び荷役用操作は互いに異なっているといえる。
【0275】
この場合、リモートCPU33は、第1動作用スライド操作の操作態様に基づいて、第1動作の動作態様を決定してもよい。例えば、リモートCPU33は、第1動作用スライド操作の開始位置である第1動作用開始位置P31からの上下のスライド操作方向に基づいて、上昇か下降かを決定してもよい。そして、リモートCPU33は、タッチパネル31の短手方向における第1動作用開始位置P31と第1動作用スライド操作の現在位置との距離に基づいてリフト動作のストローク量を決定してもよい。例えば、第1動作用開始位置P31から上方に向けて第1動作用スライド操作が行われた場合、リモートCPU33は、上昇のリフト動作であって、上記距離が大きくなるほど当該上昇のリフト動作のストローク量が大きくなるようにフォーク22の遠隔操作を行ってもよい。
【0276】
また、リモートCPU33は、第2動作用スライド操作の操作態様に基づいて、第2動作の動作態様を決定してもよい。例えば、リモートCPU33は、第2動作用スライド操作の開始位置である第2動作用開始位置P32からの上下のスライド操作方向に基づいて、前方移動のリーチ動作か後方移動のリーチ動作かを決定してもよい。そして、リモートCPU33は、タッチパネル31の短手方向における第2動作用開始位置P32と第2動作用スライド操作の現在位置との距離に基づいてリーチ動作のストローク量を決定してもよい。例えば、第2動作用開始位置P32から下方に向けて第2動作用スライド操作が行われた場合、リモートCPU33は、後方移動のリーチ動作であって、上記距離が大きくなるほど当該後方移動のリーチ動作のストローク量が大きくなるようにフォーク22の遠隔操作を行ってもよい。
【0277】
また、リモートCPU33は、第2回転操作の操作態様に基づいて、第3動作としてのチルト動作の動作態様を決定してもよい。
かかる構成によれば、リフト動作、リーチ動作及びチルト動作を同時に行わせることができる。これにより、例えばチルト動作を行いながらリフト動作を行う等といった、より自由度が高い遠隔操作を行うことができる。
【0278】
また、両動作用スライド操作及び第2回転操作はそれぞれ異なる操作である。すなわち、複数種類のフォーク22の動作を実行させる遠隔操作装置30に対する操作として、互いに異なる複数の操作が対応付けられて設定されている。これにより、複数の荷役モードにおいて共通の操作でフォーク22の遠隔操作が実行できることによる不都合、例えば荷役モードを誤認した状態で上記共通の操作を行うことに起因して意図しない動作が行われることを抑制できる。
【0279】
なお、第1動作用スライド操作は、第1スライド操作と同様に、第1動作用操作領域A21内に対する入力操作の後、第1動作用操作領域A21外にはみ出してもよいし、第1動作用操作領域A21内に限定されてもよい。第2動作用スライド操作についても同様である。
【0280】
○ 姿勢検知部35は、遠隔操作装置30の中心を通りタッチパネル31の短手方向に延びた回転軸を中心とする第3回転操作を検知するものでもよい。この場合、リモートCPU33は、走行モード時には第3回転操作の操作態様に基づいて操舵角の制御を行ってもよいし、荷役用操作として第2回転操作及び第3回転操作の少なくとも一方を採用してもよい。
【0281】
○ 遠隔操作装置30は、当該遠隔操作装置30が姿勢を維持しつつ鉛直方向に移動する上下操作を検知する上下操作検知部を有し、荷役用操作として上下操作が採用されてもよい。例えば、リモートCPU33は、ステップS201では、上下操作検知部の検知結果に基づいて、上下操作が行われているか否かを判定し、上下操作が行われていると判定した場合には当該ステップS201を肯定判定してもよい。かかる構成においては、リモートCPU33は、上下操作の操作方向に基づいてリフト動作等の方向(上昇/下降)を決定し、上下操作の操作量に基づいてリフト動作のストローク量を決定してもよい。
【0282】
○ 荷役用操作として、タッチパネル31の走行用操作領域A1及び各モード設定領域A3,A4とは異なる領域に対する入力操作を採用してもよい。この場合、リモートCPU33は、荷役モード時に上記荷役用操作が行われたことに基づいて、第2回転操作の操作態様である第2回転操作角度θnに対応させてフォーク22の遠隔操作を行ってもよい。すなわち、フォーク22の遠隔操作を行う契機となる荷役用操作と、フォーク22の遠隔操作態様(動作態様)を決定付ける操作とは同一でもよいし異なっていてもよい。
【0283】
なお、上記別例においては、リモートCPU33は、第2回転操作方向の基準位置として、上記荷役用操作が行われた時における遠隔操作装置30の第2回転操作方向の回転位置を設定してもよい。
【0284】
○ 走行用操作は、第1回転操作及び速度設定操作の少なくとも一方でもよい。すなわち、第1回転操作は走行用操作の一部でもよい。この場合、リモートCPU33は、ステップS103では、速度設定操作、及び、第1回転操作方向における基準位置からの位置変化の少なくとも一方があった場合には、走行用操作が行われたとして、ステップS103を肯定判定してもよい。
【0285】
○ リモートCPU33は、第1回転操作角度θmの把握に用いられる第1回転操作方向における遠隔操作装置30の基準位置を変更可能に構成されていてもよい。
遠隔操作装置30を用いてフォークリフト20の遠隔操作を行う構成においては、操作者がフォークリフト20に乗車する必要がないため、操作者の姿勢の自由度が高い。このため、操作者としては、自由な体勢でフォークリフト20の遠隔操作を行うことができる。したがって、例えば死角や重要な箇所を覗き込みながらフォークリフト20の遠隔操作を行うことができる。
【0286】
上記のように操作体勢に様々なバリエーションが考えられる構成においては、操作体勢に応じて第1回転操作が可能な範囲が変更されたり、制限されたりする場合があり得る。このような使用条件下で仮に基準位置が固定されていると、操作体勢によっては、基準位置からの第1回転操作が可能な範囲を十分に確保することができなかったり、所望の操舵角に対して基準位置からの第1回転操作が可能な範囲が足りなかったり、所望の操舵角になるように第1回転操作しようとして無理な体勢となったりする不都合が生じ得る。
【0287】
この点、上記のように、基準位置が変更可能であれば、所望の基準位置に設定できる。これにより、操作可能範囲が限られた条件下であっても、所望の操舵角にすることができ、操作性の向上を図ることができる。
【0288】
○ リモートCPU33は、例えば、速度設定操作の開始時(換言すれば開始操作が行われた時)の第1回転操作方向における遠隔操作装置30の回転位置を基準位置として設定してもよい。かかる構成によれば、速度設定操作が行われることによって、基準位置が設定される。これにより、速度設定操作とは別に基準位置を設定するための操作を行う必要がないため、操作の簡略化を図ることができる。
【0289】
また、本別例によれば、速度設定操作が行われる度に基準位置が設定されるため、走行用操作ごとに基準位置を変更できる。したがって、例えば、ある走行用操作に基づく走行の遠隔操作を行った後に、体勢を変更して、再度別の走行用操作に基づく走行の遠隔操作を行う場合に、体勢の変更に対応させて基準位置を変更できる。よって、変更した体勢に対応した走行の遠隔操作を行うことができる。
【0290】
○ 速度設定操作の操作態様として、開始位置P10と現在位置との相対位置に代えて、現在位置そのものを採用してもよい。例えば、リモートCPU33は、走行モード時において、走行用操作領域A1内のうち中央線Lよりも上方部分に対して入力操作が行われている場合には前進に対応した走行操作情報D1を設定する一方、走行用操作領域A1内のうち中央線Lよりも下方部分に対して入力操作が行われている場合には後退に対応した走行操作情報D1を設定してもよい。また、リモートCPU33は、中央線Lから速度設定操作が行われている現在位置までの距離に基づいて、走行速度を決定してもよい。
【0291】
○ 操作画像G10の具体的なレイアウトについては任意であり、必要に応じて適宜変更してもよい。例えば、走行用操作領域A1は右手側に配置されていてもよい。また、走行用操作領域A1内の画像や各操作説明画像Gf1〜Gf3の具体的な表示内容についても任意である。
【0292】
○ 速度設定操作は、最初に走行用操作領域A1に対する入力操作が行われた後は、走行用操作領域A1外にはみ出してもよい構成であったが、これに限られず、走行用操作領域A1内に限定されてもよい。但し、スライド操作が可能な範囲の広さを考慮すれば、走行用操作領域A1外にはみ出すのを許容する方が好ましい。
【0293】
○ 実施形態では、タッチパネル31の短手方向における速度設定操作の開始位置P10と現在位置との距離Yが大きくなるほど、走行速度が大きくなる構成であったが、これに限られない。フォークリフト20の走行態様は、速度設定操作の開始位置P10と現在位置との相対位置に応じて制御されればよく、その具体的な設定態様については任意である。
【0294】
○ リモートCPU33は、タッチパネル31の長手方向における開始位置P10からのスライド操作方向及び当該長手方向における速度設定操作の開始位置P10と現在位置との距離に基づいて操舵角を決定してもよい。この場合、リモートCPU33は、第1回転操作に基づいて操舵角を決定しなくてもよい。
【0295】
○ リモートCPU33は、走行又はフォーク22の遠隔操作中であっても、切替操作が行われることに基づいて、操作モードを切り替える構成でもよい。つまり、操作モード切替条件において、走行又はフォーク22の遠隔操作が行われていないことは必須ではない。
【0296】
○ 荷役モード設定領域A4は単一のアイコンでもよい。この場合、リモートCPU33は、上記アイコンに対する入力操作が行われる度に、例えば走行モード→リフトモード→リーチモード→チルトモード→走行モード→…の順番で順次切り替える構成でもよい。
【0297】
○ リモートCPU33は、走行モード及び荷役モードとは別の第3の操作モードを設定可能でもよい。換言すれば、リモートCPU33は、操作モードとして、少なくとも走行モード又は荷役モードを設定することができればよく、第3の操作モードを設定できるように構成されていてもよい。
【0298】
○ 切替操作は、各モード設定領域A3,A4に対する入力操作に限られず任意であり、例えば遠隔操作装置30に操作モードの切替用ボタンが設けられている場合には当該切替用ボタンを操作することでもよいし、他の操作でもよい。
【0299】
○ 実施形態では、リモートCPU33は、走行用操作又は荷役用操作と、切替操作とが同時に行われた場合には、操作モードの切り替えよりも、走行又はフォーク22の遠隔操作を優先的に実行する構成であったが、これに限られず、逆でもよい。また、リモートCPU33は、走行用操作又は荷役用操作と、切替操作とが同時に行われた場合には、走行又はフォーク22の遠隔操作、及び、操作モードの切り替えの双方を実行しない構成でもよい。
【0300】
○ 遠隔操作装置30の形状は、板状に限られず任意である。
○ タッチパネル31を省略してもよい。この場合、リモートCPU33は、遠隔操作装置30に設けられた操作ボタン等に対する操作態様で走行速度等を制御してもよい。
【0301】
○ 遠隔操作信号SG1では、操作対象以外の情報については「0」が設定される構成であったが、これに限られず、例えば「null」であってもよい。
○ 産業車両は、フォークリフト20に限られず、操作対象物を有するものであれば任意であり、例えば無人搬送車などであってもよい。また、操作対象物は、フォーク22に限られず任意である。操作対象物は、フォーク22のように複数種類の動作を行うものに限られず、1種類の動作を行うものであってもよい。
【0302】
○ 両通信部28,36間の通信方式は、無線通信に限られず有線通信でもよい。
○ 姿勢検知部35は、遠隔操作装置30の厚さ方向が鉛直方向と交差又は直交している状態において第1回転操作を検知する一方、遠隔操作装置30の厚さ方向が鉛直方向と一致している状態では第1回転操作を検知しないものであってもよい。通常、タッチパネル31を視認するべく両手で遠隔操作装置30を把持した場合には、自ずと遠隔操作装置30の厚さ方向が鉛直方向と交差又は直交している状態となり易い。このため、遠隔操作装置30の厚さ方向が鉛直方向と一致している状態において第1回転操作が検知されなくても、問題が生じにくい。
【0303】
○ リモートCPU33が、タッチパネル31の表示制御と、フォークリフト20の遠隔操作制御との双方を実行する構成であったが、これに限られず、リモートCPU33とは別に、タッチパネル31の表示制御を行う別の制御部(CPU)が設けられていてもよい。要は、遠隔操作装置30が全体として表示制御と遠隔操作制御とを実行するように構成されていればよい。
【0304】
○
図17に示すように、遠隔操作プログラム40は、車両メモリ26に記憶されていてもよい。この場合、リモートCPU33は、遠隔操作装置30に対する各種操作に関する情報(例えば遠隔操作装置30の姿勢やタッチパネル31に対する入力操作位置に関する情報)が設定された操作信号を車両通信部28に向けて定期的に送信する。車両CPU25は、上記操作信号に基づいて遠隔操作制御処理を実行することにより、遠隔操作態様や操作モードを決定し、各アクチュエータ23,24を制御したり、決定された操作モード情報が設定された信号を遠隔操作装置30に向けて送信することにより遠隔操作装置30を制御したりしてもよい。かかる構成においては、車両CPU25が「操作モード設定部」及び「遠隔操作制御部」に対応する。
【0305】
○ 実施形態と各別例とを適宜組み合わせてもよい。
次に、上記実施形態及び各別例から把握できる技術的思想又は好適な一例について以下に記載する。
【0306】
(イ)車両通信部、及び、種類の異なる第1動作と第2動作とを行う操作対象物を有する産業車両と、前記車両通信部と無線通信を行うリモート通信部を有し、前記産業車両を遠隔操作するのに用いられる遠隔操作装置と、前記遠隔操作装置を用いた前記操作対象物の遠隔操作を行う操作対象物モードとして、前記第1動作に関する遠隔操作を行い且つ前記第2動作に関する遠隔操作を規制する第1動作モード、又は、前記第2動作に関する遠隔操作を行い且つ前記第1動作に関する遠隔操作を規制する第2動作モードを設定する操作対象物モード設定部と、前記操作対象物モードが前記第1動作モードに設定されている場合に前記遠隔操作装置に対して操作対象物用操作が行われたことに基づいて、前記操作対象物が前記第1動作を行うように前記操作対象物の遠隔操作を行う一方、前記操作対象物モードが前記第2動作モードに設定されている場合に前記遠隔操作装置に対して前記操作対象物用操作が行われたことに基づいて、前記操作対象物が前記第2動作を行うように前記操作対象物の遠隔操作を行う遠隔操作制御部と、を備え、前記操作対象物モードが前記第1動作モードに設定されている場合に前記操作対象物が前記第1動作を行う契機となる前記操作対象物用操作と、前記操作対象物モードが前記第2動作モードに設定されている場合に前記操作対象物が前記第2動作を行う契機となる前記操作対象物用操作とは共通していることを特徴とする産業車両用遠隔操作システム。
【0307】
なお、(イ)は「産業車両用遠隔操作システム」であったが、(イ)が示す主要な技術的思想は、「産業車両用遠隔操作システム」に限られず、「遠隔操作装置」、「産業車両用遠隔操作プログラム」及び「産業車両用遠隔操作方法」に対しても適用できる。
【0308】
上記(イ)に対応する課題は以下のとおりである。
遠隔操作装置を用いて産業車両が遠隔操作される構成においては、操作の複雑化が懸念される。特に、種類の異なる第1動作及び第2動作を実行可能な操作対象物を有する産業車両においては、走行に関する遠隔操作とは別に、第1動作に関する遠隔操作及び第2動作に関する遠隔操作を実行することが想定される。このため、操作が複雑なものとなり易く、その結果、遠隔操作装置の誤操作が懸念される。したがって、(イ)の目的は操作の複雑化を抑制できる産業車両用遠隔操作システム、遠隔操作装置、産業車両用遠隔操作プログラム、産業車両用遠隔操作方法及び産業車両を提供することである。