特許第6834942号(P6834942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6834942-ポリエチレン系フィルム 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834942
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】ポリエチレン系フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20210215BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   C08J5/18CES
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-508346(P2017-508346)
(86)(22)【出願日】2016年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2016058930
(87)【国際公開番号】WO2016152836
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-64722(P2015-64722)
(32)【優先日】2015年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸松 稚登
(72)【発明者】
【氏名】大木 祐和
(72)【発明者】
【氏名】松田 明
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−096198(JP,A)
【文献】 特開2002−241716(JP,A)
【文献】 特開2011−098739(JP,A)
【文献】 特開2008−162160(JP,A)
【文献】 特開2009−096154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片方の面において、フィルムの流れ方向における算術平均粗さRa(MD)[μm]と流れ方向と直角方向の算術平均粗さRa(TD)[μm]の比の値が下記式(1)を満たし(繊維状の毛が起毛しているものを除く。)、
前記式(1)を満たす面の三次元算術平均粗さSRaは0.05μm以上0.25μm以下であり、
前記式(1)を満たす面の組成はポリエチレン系樹脂75〜97重量%、ポリプロピレン系樹脂25〜3重量%を含み、
前記ポリプロピレン系樹脂はASTM D−1238(230℃、21.18N)において測定したメルトフローレート(MFR)が0.6〜1.7g/10分であることを特徴とするポリエチレン系フィルム。
(1) 1.2≦Ra(TD)/Ra(MD)≦3.6
Ra(MD):フィルムの流れ方向に測定した算術平均粗さ
Ra(TD):フィルムの流れ方向に直角方向に測定した算術平均粗さ
【請求項2】
少なくともシール層(A層)、中間層(B層)、ラミネート層(C層)の3層を含むポリエチレン系フィルムであって、A層の面のフィルムの流れ方向及び流れ方向と直角方向の算術平均粗さRa[μm]の値が下記式(1)を満たし、
前記式(1)を満たす面の三次元算術平均粗さSRaは0.05μm以上0.25μm以下であり、
前記式(1)を満たす面を有する層の組成はポリエチレン系樹脂75〜97重量%、ポリプロピレン系樹脂25〜3重量%を含み、
前記ポリプロピレン系樹脂はASTM D−1238(230℃、21.18N)において測定したメルトフローレート(MFR)が0.6〜1.7g/10分であることを特徴とするポリエチレン系フィルム。
(1) 1.2≦Ra(TD)/Ra(MD)≦3.6
Ra(MD):フィルムの流れ方向に測定した算術平均粗さ
Ra(TD):フィルムの流れ方向に直角方向に測定した算術平均粗さ
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂が直鎖状低密度ポリエチレンである請求項1または2に記載のポリエチレン系フィルム。
【請求項4】
前記ポリエチレン系フィルムをPETフィルムとラミネートした場合、120℃におけるヒートシールした後のヒートシール強度が、30N/15mm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン系フィルム。
【請求項5】
ブロッキング強度が60mN/20mm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のポリエチレン系フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系フィルムに関する。更に詳しくは、耐ブロッキング性、低温でのヒートシール性に優れ、なおかつロールから巻出した直後でも良好な滑り性を示す、ポリエチレン系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、利便性、省資源、環境に対する負荷低減などによりフィルムを用いた包装または容器が広い分野で使用されてきている。フィルムは従来の成形容器、成形物に比べ、軽量、廃棄処理が容易、低コストが利点である。
【0003】
シーラント材は、通常、シーラント材より低温熱接着性の劣る二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸エステルフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等の基材とラミネートして使用されるのが一般的であるが、ラミネート加工後に保管した後にシーラント材と基材の間でブロッキングが生じて、製袋加工のためのラミネートフィルムの巻き戻しがしにくい場合があったり、製袋加工時に袋の内面となるシーラント材同士にブロッキングが生じ、食品を充填しにくい場合があった。
それを改善する目的ででんぷん等の粉を振ってはシーラント材と基材とのブロッキングやシーラント材同士のブロッキングを回避する方策が知られている。
しかし、これはフィルム加工装置周辺を汚染するばかりか、包装食品の外観を著しく悪化させる、あるいはシーラント材に付着した粉末が食品とともに直接包装体内に混入するといったような衛生性等の問題を生じていた。
【0004】
上記問題を解決するために、ヒートシール性を有するポリエチレン系樹脂フィルムにおいて、ヒートシール性と耐ブロッキング性のバランスが取れている積層ポリエチレン系無延伸フィルムが開示されている(例えば、特許文献1等参照。)。
しかしながら、フィルムロールの巻き出す際のポリエチレン系フィルム同士の耐ブロッキング性をさらに改善することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4779822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち本発明の目的は、フィルムロール状態から巻き出す際の耐ブロッキング性や基材とラミネートした後のシーラント同士の耐ブロッキング性がより良好であり、透明性と低温でも良好なヒートシール性をも兼ね備えるポリエチレン系フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕算術平均粗さ(Ra(TD)[μm])
少なくとも片方の面において、フィルムの流れ方向の算術平均傾斜角(Ra(MD)[μm])と流れ方向と直角方向の算術平均粗さ(Ra(TD)[μm])の値が下記式(1)を満たすことを特徴とするポリエチレン系フィルム。
(1) 1.2≦Ra(TD)/Ra(MD)≦3.6
Ra(MD):フィルムの流れ方向に測定した算術平均粗さ[μm]
Ra(TD):フィルムの流れ方向に直角方向に測定した算術平均粗さ[μm]
〔2〕
少なくともシール層(A層)、中間層(B層)、ラミネート層(C層)の3層を含むポリエチレン系フィルムであって、A層の面のフィルムの流れ方向の算術平均粗さ(Ra(MD)[μm]と流れ方向と直角方向の算術平均粗さ(Ra(TD)[μm])の値が下記式(1)を満たすことを特徴とするポリエチレン系フィルム。
(1) 1.2≦Ra(TD)/Ra(MD)≦3.6
Ra(MD):フィルムの流れ方向に測定した算術平均粗さ
Ra(TD):フィルムの流れ方向に直角方向に測定した算術平均粗さ
〔3〕
前記式(1)を満たす面を有する層を構成する樹脂組成物全体に対して、ポリエチレン系樹脂75〜97重量%、ポリプロピレン系樹脂25〜3重量%を含む請求項1あるいは2のいずれかに記載のポリエチレン系フィルム。
〔4〕
前記ポリエチレン系樹脂が直鎖状低密度ポリエチレンである請求項3に記載のポリエチレン系フィルム。
〔5〕
前記ポリプロピレン系樹脂がASTM D−1238(230℃、21.18N)において測定したメルトフローレート(MFR)が0.6〜3.0g/10分である請求項3あるいは4のいずれかに記載のポリエチレン系フィルム。
〔6〕
120℃でヒートシールした後のヒートシール強度が、25N/15mm以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエチレン系フィルム。
〔7〕
ブロッキング強度が60mN/20mm以下である請求項1〜6のいずれかに記載のポリエチレン系フィルム。
【0008】
本発明は、上記態様をとることにより、フィルムロール状態から巻き出す際のブロッキングが改善されている。これは、上記態様をとることにより、フィルム同士を重ねた時の接触面積が著しく減少していることに起因しており、ポリエチレン系フィルムのロールを巻き出した直後のポリエチレン系フィルムの滑り性が非常に良好であるという特性にもその特徴が発現している。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリエチレン系フィルムは、単体で巻き取った場合でも、ロールブロッキングせず、更に巻出し直後でも良好な滑り性を示し、低温で良好なヒートシール性を示す。また、ラミネート加工した後でも、滑り性の悪化が少なく、充填時の口開き性が良好であるとともに、加工ロスも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の評価方法に係るブロッキング強度の測定法方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のフィルムの少なくとも片面のフィルムの流れ方向の算術平均粗さ(Ra(MD)[μm])と流れ方向と直角方向の算術平均粗さ(Ra(TD)[μm])から計算されるRa(TD)/Ra(MD)の下限は好ましくは1.2であり、より好ましくは1.3であり、さらに好ましくは1.4である。Ra(TD)/Ra(MD)が1.2未満であるとロール状態や製袋後にブロッキングが発生することがある。
Ra(TD)/Ra(MD)の上限は好ましくは3.0であり、より好ましくは2.7であり、さらに好ましくは2.5である。Ra(TD)/Ra(MD)が3.0を超えると透明性が悪化することがある。
Ra(MD):フィルムの流れ方向に測定した算術平均粗さ
Ra(TD):フィルムの流れ方向に直角方向に測定した算術平均粗さ
【0013】
算術平均粗さ(Ra(MD)〔μm〕)及び算術平均粗さ(Ra(TD)[μm])の測定は下記のように行った。
まず形状測定レーザマイクロスコープ(キーエンス製・型式VK−9700)を用い、フィルムのシール層(A層)側の任意の場所において画像を撮影した(倍率50倍)。
次いで、この画像を粗さ解析ソフト(キーエンス製・VK Analyzer)を用いて、線粗さ(線粗さ)を測定した。
表面粗さ(線粗さ)はJIS−B0601に基づいて測定し、カットオフはλc=0.08mmを用い、MD方向に解析長200μm、TD方向に解析間隔3.3μmとして、n=60本測定した。それぞれの表面粗さ(線粗さ)曲線をJIS0601:2001方式にて測定ピッチ0.01μmとして、算術平均粗さを算出し、平均して算術平均粗さRa(MD)とした。
算術平均粗さ(Ra(TD)[μm])も同様に、TD方向に解析長200μm、MD方向に解析間隔3.3μmとした。
【0014】
Ra(MD)の上限は、0.9が好ましく、0.7がより好ましい。Ra(MD)下限は、0.2が好ましく、0.4がより好ましい。Ra(TD)の上限は、1.4が好ましく、1.2がより好ましい。Ra(TD)下限は、0.6が好ましく、0.8がより好ましい。
【0015】
本発明は、上記式(1)の範囲とすることにより、フィルム表面は洗濯板のようにMD方向に畝状の凹凸が全体に存在し、そのところどころにさらに突起の山が突き出しているような形状となる。これによって、フィルムを重ねた時の接触面積が著しく減少し、ブロッキングを防止することができるだけでなく、滑り性が良好となることを見出した。
ここで言うブロッキングとは、フィルムをロールの状態から巻き戻す際に、フィルムの裏面と表面の接触した部分がスムーズに剥離しない現象を意味する。
【0016】
また、従来の方法のようにアンチブロッキング剤と有機系潤滑剤を添加して、フィルム表面に突起を形成して接触面積を減らし、突起以外の部分には有機系潤滑剤で表面を覆うことで滑りやすくしようとしても、ロールの状態ではアンチブロッキング剤の存在しない部分のフィルムの表面同士が密着するためにフィルム表面に有機滑剤がブリードアウトしにくくなることも見出した。
【0017】
特許文献1で開示されているようにポリエチレン系フィルムにある程度の量の有機滑剤等を添加してフィルムの滑り性を向上させようとしても、フィルムをロール状態で保管されている間はフィルム表面へのブリードアウト量が少なく、更にはロールからフィルムを巻き出す際にも表層の有機滑剤が内部に入り込むため、実質的にポリエチレン系フィルムの表面には十分な有機滑剤が存在せず、その結果滑り性は満足できるものではないことがわかった。
フィルムがロール状態で保管されていると、フィルム表面同士が密着し、有機系潤滑剤のブリードアウトの阻害が起こると考えられる。しかも、接触する面の両方が同じ樹脂組成であるとその効果が大きくなる。本発明では、シール層にポリプロピレン樹脂を添加しており、ロールの状態では接触する面同士の樹脂組成が若干異なる。このため、表層同士の密着が起こりにくく、従ってシール層内の有機系潤滑剤がシール層表層に滞在しやすいのであると推測する。
【0018】
上記(1)式の範囲とする方法は以下の通りである。
例えば、メルトフローレート(MFR)の異なる2種以上の原料樹脂、例えばポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂をブレンドして溶融させると、互いの樹脂は細かく分散し、均一に混ぜられた状態になる。この時、それぞれの樹脂が相溶性の高い樹脂同士であればお互いに溶け合ったかのように振る舞い、相溶性が悪ければそれぞれの樹脂が完全に分離し、またそれぞれの樹脂の粒径が大きくなる。
それぞれの樹脂のメルトフローレート(MFR)が異なり、かつそれぞれが特定の範囲のメルトフローレート(MFR)であると、微分散状態をつくることが可能である。
さらに、例えば、押出機内で微分散状態となったポリプロピレン系樹脂は、Tダイから冷却ロール上に引取られる際のドラフトで引き伸ばされ、フィルムの流れ方向(MD)方向に畝のある微細な凹凸となる。
【0019】
本発明では、ポリエチレン系樹脂にポリプロピレン系樹脂を添加しても、意外にも低温シール性を損なうことなく、滑り性を向上させることがわかった。
【0020】
使用するポリエチレン系樹脂としては、例えばエチレン・α−オレフィン共重合体、高圧法ポリエチレンから選ばれる1種又は2種以上を混合したものが挙げられる。上記エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数4〜18のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンとしてはブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂より得られるフィルムは、優れたヒートシール強度、シール直後、シーラント樹脂が溶融状態でもシール強度があり、内容物充填時の圧力衝撃にもシール部が剥離しない性質(ホットタック性)、包装時にシール部に内容物である液体、粘体物、粉末などが付着してもシール性が低下しにくく、安全に密着シールができる性質(夾雑物シール性)、耐衝撃性を有し、該ポリエチレン系樹脂は、これらの特性を阻害しない範囲で、他の樹脂、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体等を混合して使用してもよい。
中でも、本発明に用いるポリエチレン系樹脂としては、製膜性、製膜品の物性及び機能性等の点から、メルトフローレート(以下、MFRと記すことがある。)は2.5〜4.5g/分程度が好ましい。ここでMFRは、ASTM D1238に準拠して測定した。又該ポリエチレン系樹脂は、自体既知の方法で合成される。
【0021】
本発明においては、配合に用いる原料ポリエチレン樹脂の密度範囲は特に限定されないが、900〜970kg/m3が好ましく、905〜965kg/m3がより好ましく、910〜960kg/m3がさらに好ましい。密度が900kg/m3以上ポリエチレン樹脂は、それ自身のハンドリング性が良い。また、密度が970kg/m以下のポリエチレン樹脂は、重合が容易である。
【0022】
配合に用いるポリエチレン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は2.0〜3.5が好ましい。2.2〜3.3がより好ましく、2.4〜3.1がさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が2.0以上のポリエチレン系樹脂を用いると、溶融した時の樹脂の流動特性によるネックイン等が発生しにくく、フィルム製造における安定生産が容易になり、フィルムの厚み斑等の低減に繋がる。また分子量分布が3.5以下のポリエチレン樹脂を用いると、高分子量体が原因のフィシュアイの生成が少なくなる。
【0023】
使用するポリプロピレン系樹脂はポリプロピレン系ランダム共重合体であることが好ましく、多量(約85重量%以上)のプロピレンと少量(約15重量%以下)のα−オレフィンとのランダム共重合体(ポリプロピレン−αオレフィンランダム共重合体)であることがより好ましい。かかるポリプロピレンランダム共重合体を得る際のα−オレフィンモノマーとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を用いることができるが、生産性の面からエチレン、ブテン−1を用いるのが特に好ましい。また、共重合に用いるα−オレフィンは、少なくとも1種以上であれば良く、必要に応じて、2種類以上を混合して用いることができる。
【0024】
ポリプロピレン系樹脂の密度の下限は好ましくは870kg/cm3であり、より好ましくは885kg/cm3である。上記未満であるとポリプロピレンが全く相溶せず、フィルムが白化してしまうとことがある。シール層に添加するポリプロピレン系樹脂の密度の上限は好ましくは920kg/cm3であり、より好ましくは900kg/cm3である。920kg/cm3以下であるとポリプロピレンがポリエチレン樹脂と完全に相溶しにくく、シール層表層に凹凸が発現しやすい。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)の下限は好ましくは0.6g/10分であり、より好ましくは1.0g/10分であり、さらに好ましくは1.2g/10分である。0.6g/10分以上であるとポリプロピレンとポリエチレン樹脂の相溶性が良くなり、フィルムが白化しにくい。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートの上限は好ましくは3.0g/10分であり、より好ましくは2.0g/10分であり、さらに好ましくは1.7g/10分である。上記を超えるとポリプロピレンがポリエチレン樹脂と完全に相溶してしまいシール層表層に凹凸が発現しないことがある。
【0026】
ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン樹脂との混合物全体に対するポリプロピレン系樹脂添加量の下限は好ましくは3重量%であり、より好ましくは8重量%であり、さらに好ましくは10重量%である。3重量%以上であるとブロッキングが起こりにくく、巻出し直後の滑り性が悪化しにくい。シール層のポリプロピレン系樹脂添加量の上限は好ましくは25重量%であり、より好ましくは15重量%であるが、25重量%以下であると低温シール性が良くなる。
【0027】
特許第4411960号公報においては、ポリプロピレン樹脂に高密度ポリエチレン樹脂を2.0重量%加えているが、ポリプロピレン系樹脂が、ベースとしてのポリエチレン系樹脂に2重量%添加するだけでは上記のようにシール層表層に凹凸は発現しない。
【0028】
本発明においては、アンチブロッキング剤を含んでよい。アンチブロッキング剤は1種類でもよいが、2種類以上の粒径や形状が異なる無機粒子を配合した方が、フィルム表面の凹凸においても、複雑な突起が形成され、より高度なブロッキング防止効果を得ることができる。
【0029】
本発明においては、アンチブロッキング剤として、無機粒子を添加することが好ましい。該対応により、低温シール性を維持し、高度なブロッキング防止効果を付与することができる。その理由として、無機粒子を配合することで、フィルム表面に突起が形成されるため、フィルムの接触面積が減り、その結果、ブロッキング防止効果が得られると推測される。
【0030】
本発明において、アンチブロッキング剤として使用する無機粒子の組成や組合せは限定されないが、シリカやゼオライト、珪藻土やタルク等が使用できる。好ましくはシリカとゼオライトを混合して使用すると良い。更に表面が無孔状で粒度分布の狭いものが好ましい。その理由として、表面が多孔状の場合、無機粒子に吸着した水分の影響で、フィルムが発泡し外観が悪くなることがある。
表面形状を複雑にする目的で、それぞれの粒径を異なるものとし、役割を分担させると良い。また、粒度分布が広いと、フィルムの製造において、無機粒子がTダイのリップ部に堆積し、生産性を阻害することがある。
【0031】
アンチブロッキング剤の粒径の下限は好ましくは3μmである。上記以上であるとブロッキングが改善されやすい。
アンチブロッキング剤の粒径の上限は好ましくは20μmであり、より好ましくは16μmである。上記以下であるとフィルムの透明性が保たれやすい。
【0032】
アンチブロッキング剤の合計濃度の下限は好ましくは0.1重量%であり、より好ましくは0.5重量%であり、さらに好ましくは0.8重量%である。0.1重量%以上であると滑り性が得られやすい。
アンチブロッキング剤の合計濃度の上限は好ましくは5重量%であり、より好ましくは3重量%であり、さらに好ましくは2重量%である。5重量%以下であると滑りすぎず、巻きズレの原因となりにくい。
【0033】
前記式(1)を満たすフィルム面の三次元算術平均粗さSRaの下限は好ましくは0.05μmであり、より好ましくは0.08μmであり、さらに好ましくは、0.10μmである。0.05μm以上であるとロール状態や製袋後にブロッキングしにくい。
三次元算術平均粗さSRaの上限は好ましくは0.25μmであり、より好ましくは0.2μmである。0.25μm以下であると耐ブロッキングに対する表面粗さ増加の効果が大きくなる。
【0034】
本発明においては、有機系潤滑剤を添加することが好ましい。積層フィルムの滑性やブロッキング防止効果が向上し、フィルムの取り扱い性がよくなる。その理由として、有機滑剤がブリードアウトし、フィルム表面に存在することで、滑剤効果や離型効果が発現したものと考える。更に、有機系潤滑剤は常温以上の融点を持つものを添加することが好ましい。有機系潤滑剤は、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルが挙げられる。具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドなどである。これらは単独で用いても構わないが、2種類以上を併用することで過酷な環境下においても滑性やブロッキング防止効果を維持することができるので好ましい。
【0035】
シール層(A層)の有機系潤滑剤のアミド基濃度の下限は好ましくは600重量ppmであり、より好ましくは800重量ppmである。600重量ppm以上であると滑り性が得やすい。有機系滑剤のアミド基濃度の上限は好ましくは2000重量ppmであり、より好ましくは1500重量ppmである。2000重量ppm以下であると滑りすぎず巻きズレの原因となりにくい。
【0036】
本発明のポリエチレン系フィルムには、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて任意の層に適量の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤、滑剤、造核剤、着色剤、その他の添加剤及び無機質充填剤等を配合することができる。
【0037】
ポリエチレン系樹脂には酸化防止剤を配合することが好ましく、フェノール系やホスファイト系の併用、もしくは一分子中にフェノール系とホスファイト系の骨格を有したものを単独使用しても構わない。
【0038】
フィルム厚みの下限は好ましくは10μmであり、より好ましくは30μmであり、さらに好ましくは35μmである。10μm以上であると腰が弱すぎず加工やすい。フィルム厚みの上限は好ましくは100μmであり、より好ましくは50μmであり、さらに好ましくは40μmである。100μm以下であると腰が強すぎず加工しやすい。
【0039】
本発明のポリエチレン系フィルムの成形方法は、特に限定するものではなく、例えばインフレーション方式、Tダイ方式が使用できるが、透明性を高めるため、ドラフトのかけ易さからTダイ方式が好ましい。インフレーション方式は冷却媒体が空気であるのに対し、Tダイ方式は冷却ロールを用いるため、冷却速度を高くするには有利な製造方法である。
【0040】
溶融成形されたフィルムはロールとして巻き取るのが好ましい。巻取り長は特に限定されないが、上限として好ましくは8000mである。8000m以下であると重量が増加しすぎず、ハンドリングが容易である。下限として好ましくは100mである。100m以下であると、加工の効率が低下しない。
【0041】
(積層フィルム)
本発明のポリエチレン系フィルムは、少なくともシール層(A層)、中間層(B層)、ラミネート層(C層)をこの順序で含む構成としても良い。最外層はそれぞれA層、C層である。このときシール層(A層)の面が下記式(1)式を満たすことが必要である。
(1) 1.2≦Ra(TD)/Ra(MD)≦3.6
Ra(MD):フィルムの流れ方向に測定した算術平均粗さ
Ra(TD):フィルムの流れ方向に垂直に測定した算術平均粗さ
【0042】
本発明のフィルムのシール層(A層)に用いる樹脂は下記のとおりである。
使用するポリエチレン系樹脂としては、例えばエチレン・α−オレフィン共重合体、高圧法ポリエチレンから選ばれる1種又は2種以上を混合したものが挙げられる。上記エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数4〜18のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンとしてはブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂より得られるフィルムは、優れたヒートシール強度、ホットタック性、夾雑物シール性、耐衝撃性を有し、該ポリエチレン系樹脂は、これらの特性を阻害しない範囲で、他の樹脂、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体等を混合して使用してもよい。
中でも、本発明に用いるポリエチレン系樹脂としては、製膜性、製膜品の物性及び機能性等の点から、メルトフローレート(以下、MFRと記すことがある。)は2.5〜4.5g/分程度が好ましい。ここでMFRは、ASTM D−1238(230℃、21.18Nに準拠して測定した。又該ポリエチレン系樹脂は、自体既知の方法で合成される。
【0043】
本発明においては、配合に用いる原料ポリエチレン樹脂の密度範囲は905〜965kg/m3がより好ましく、910〜960kg/m3がさらに好ましい。密度が900kg/m3より小さいポリエチレン樹脂は、それ自身のハンドリング性が悪くなる。また、密度が970kg/m3より大きいポリエチレン樹脂は、重合が困難であるため入手が困難であり、不都合である。
【0044】
配合に用いるポリエチレン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は2.0〜3.5が好ましい。2.2〜3.3がより好ましく、2.4〜3.1がさらに好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が2.0以上のポリエチレン系樹脂を用いると、溶融した時の樹脂の流動特性によるネックイン等が発生しにくく、フィルム製造における安定生産が容易になり、フィルムの厚み斑等の低減に繋がる。また分子量分布が3.5以下のポリエチレン樹脂を用いると、高分子量体が原因のフィシュアイの生成が低減する。
【0045】
使用するポリプロピレン系樹脂はポリプロピレン系ランダム共重合体であることが好ましく、多量(約85重量%以上)のプロピレンと少量(約15重量%以下)のα−オレフィンとのランダム共重合体(ポリプロピレン−αオレフィンランダム共重合体)がより好ましい。かかるポリプロピレンランダム共重合体を得る際のα−オレフィンモノマーとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を用いることができるが、生産性の面からエチレン、ブテン−1を用いるのが特に好ましい。また、共重合に用いるα−オレフィンは、少なくとも1種以上であれば良く、必要に応じて、2種類以上を混合して用いることができる。
【0046】
ポリプロピレン系樹脂の密度の下限は好ましくは870kg/cm3であり、より好ましくは885kg/cm3である。870kg/cm3以上であるとポリプロピレンがポリエチレン樹脂と相溶しやすく、フィルムが白化しにくい。シール層に添加するポリプロピレン系樹脂の密度の上限は好ましくは920kg/cm3であり、より好ましくは900kg/cm3である。920kg/cm3以下であるとポリプロピレンがポリエチレン樹脂に完全に相溶しにくく、シール層表層に凹凸が発現しやすい。
【0047】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)の下限は好ましくは0.6g/10分であり、より好ましくは1.0g/10分であり、さらに好ましくは1.2g/10分である。0.6g/10分以上であるとポリプロピレンのポリエチレン樹脂との相溶性が良く、フィルムが白化しにくい。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートの上限は好ましくは3.0g/10分であり、より好ましくは2.0g/10分であり、さらに好ましくは1.7g/10分である。3.0g/10分以下であるとポリプロピレンがポリエチレン樹脂に完全に相溶しにくく、シール層表層に凹凸が発現しやすい。
【0048】
ポリエチレン系樹脂との混合物全体に対するポリプロピレン系樹脂添加量の下限は好ましくは3重量%であり、より好ましくは8重量%であり、さらに好ましくは10重量%である。3重量%以上であるとブロッキングが起きにくく、巻出し直後の滑り性が得やすい。シール層のポリプロピレン系樹脂添加量の上限は好ましくは25重量%であり、より好ましくは15重量%であるが、25重量%以下であると低温シール性が得やすい。
【0049】
本発明においては、アンチブロッキング剤を含んでよい。アンチブロッキング剤は1種類でもよいが、2種類以上の粒径や形状が異なる無機粒子を配合した方が、フィルム表面の凹凸においても、複雑な突起が形成され、より高度なブロッキング防止効果を得ることができる。
【0050】
本発明においては、アンチブロッキング剤として、無機粒子を添加することが好ましい。該対応により、低温シール性を維持し、高度なブロッキング防止効果を付与することができる。その理由として、無機粒子を配合することで、フィルム表面に突起が形成されるため、フィルムの接触面積が減り、その結果、ブロッキング防止効果が得られると推測される。
【0051】
本発明において、アンチブロッキング剤として使用する無機粒子の組成や組合せは限定されないが、シリカやゼオライト、珪藻土やタルク等が使用できる。好ましくはシリカとゼオライトを混合して使用すると良い。更に表面が無孔状で粒度分布の狭いものが好ましい。その理由は、表面が無孔状の場合、水分が無機粒子に吸着しにくく、フィルムが発泡しにくく外観が保持される。
表面形状を複雑にする目的で、それぞれの粒径を異なるものとし、役割を分担させると良い。また、粒度分布が狭いと、フィルムの製造において、無機粒子がTダイのリップ部に堆積しにくく、生産性を上げることができる。
【0052】
アンチブロッキング剤の粒径の下限は好ましくは3μmである。3μm以上であるとブロッキングが低減しやすい。
アンチブロッキング剤の粒径の上限は好ましくは20μmであり、より好ましくは16μmである。20μm以下であるとフィルムの透明性が保持しやすい。
【0053】
アンチブロッキング剤の合計濃度の下限は好ましくは0.1重量%であり、より好ましくは0.5重量%であり、さらに好ましくは0.8重量%である。0.1重量%以上であると滑り性が得やすい。
アンチブロッキング剤の合計濃度の上限は好ましくは5重量%であり、より好ましくは3重量%であり、さらに好ましくは2重量%である。5重量%以下であると滑りすぎず巻きズレの原因となりにくい。
【0054】
中間層(B層)及びラミネート層(C層)に使用するポリエチレン系樹脂としては、例えばエチレン・α−オレフィン共重合体、高圧法ポリエチレンから選ばれる1種又は2種以上を混合したものが挙げられる。上記エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数4〜18のα−オレフィンとの共重合体であり、α−オレフィンとしてはブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂より得られるフィルムは、優れたヒートシール強度、ホットタック性、夾雑物シール性、耐衝撃性を有し、該ポリエチレン系樹脂は、これらの特性を阻害しない範囲で、他の樹脂、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体等を混合して使用してもよい。
ラミネート層(C層)の役割は二軸延伸エステルフィルム等の基材フィルムと貼り合せた際に十分な接着力を有することである。
中間層(B層)の役割は基材と積層されたフィルムを袋状に加工し、内容物を入れて使用した際に、ハンドリングに差支え無い腰感と、破れにくさを有することである。
【0055】
本発明のフィルムのシール層(A層)のフィルム全体の厚みに対する比率の下限は好ましくは10%であり、より好ましくは15%であり、さらに好ましくは18重量%である。10%以上であるとシール強度が十分となる。
シール層比率の上限は好ましくは40%であり、より好ましくは30%であり、さらに好ましくは25%である。40%以下であるとコストが高くならない。
【0056】
本発明のフィルムのラミネート層(C層)のフィルム全体の厚みに対する比率の下限は好ましくは5%であり、より好ましくは16%である。5%以上であるとシール層や中間層に添加されているアンチブロッキング剤がラミネート層を押し上げることなく、基材フィルムとの貼り合せ界面に気泡が発生しにくい。ラミネート層比率の上限は好ましくは50%であり、より好ましくは32%である。50%以下であるとフィルムの腰が強すぎず加工しやすい。
【0057】
この場合において、前記フィルムの各層のポリエチレン樹脂の平均密度がシーラント層(A層)≦基材層(B層)≦ラミネート層(C層)であることが好ましい。配合されている有機系潤滑剤は密度の高い層へは移動しにくいため、ラミネート後の滑り性を維持するために効果的である。
【0058】
本発明のフィルムの中間層(B層)の密度の下限は好ましくは920kg/m3であり、より好ましくは925kg/m3であり、さらに好ましくは930kg/m3である。920kg/m3以上であると腰が強く、加工しやすい。
中間層(B層)の密度の上限は好ましくは960kg/m3であり、より好ましくは940kg/m3であり、さらに好ましくは935kg/m3である。
【0059】
本発明のフィルムの中間層(B層)に上述の有機系潤滑剤を使用してもよく、有機系潤滑剤の下限は好ましくは600重量ppmであり、より好ましくは800重量ppmである。600重量ppm以上であると滑り性が得やすい。
中間層のエルカ酸アミド等の有機系潤滑剤濃度の上限は好ましくは2000重量ppmであり、より好ましくは1500重量ppmである。2000重量ppm以上であると滑りすぎず巻きズレの原因となりにくい。
【0060】
本発明のフィルムの中間層(B層)に回収樹脂を10〜30質量%配合してもよい。
【0061】
本発明においては、以上に記述したポリエチレン系フィルムのラミネート層(C層)面にコロナ処理等の活性線処理を行うのが好ましい。該対応によりラミネート強度が向上する。
【0062】
本発明のフィルムのラミネート層(C層)の濡れ張力の下限は好ましくは30Nであり、より好ましくは40Nである。30N以上であると二軸延伸ナイロン(ONy)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム等の基材と貼り合せたときのラミネート強度が十分に得られやすい。
濡れ張力の上限は好ましくは55Nであり、より好ましくは50Nである。55N以下であると有機系潤滑剤のラミネート層(C層)表面への移行量が大きくなく、ラミネート接着強度が維持されやすい。
フィルム表面に同じ高さの突起を持ったフィルムよりも、フィルム表面に異なる高さの突起を持ったフィルムが、耐ブロッキング性に優れる。なお、上述の無機粒子を必要に応じて、ラミネート層(C層)や中間層(B層)に配合してもよい。
【0063】
(フィルム特性)
ブロッキング強度の上限は好ましくは60mN/20mmであり、より好ましくは50mN/20mmであり、さらに好ましくは40mN/20mmである。60mN/20mm以下であると、巻き出し直後の滑り性が良好となりやすい。
【0064】
本発明のポリエチレン系フィルムのヘイズの下限は好ましくは3%であり、より好ましくは5%であり、さらに好ましくは7%である。3%以上であるとブロッキングが起こりにくい。
ヘイズの上限は好ましくは15%であり、より好ましくは12%であり、さらに好ましくは10%である。15%以下であると内容物の視認がし易い。
【0065】
本発明のポリエチレン系フィルムのフィルム単体のシール強度の下限は好ましくは5N/15mmであり、より好ましくは6N/15mmである。5N/15mm以上であると製袋後に破袋しにくい。
フィルム単体のシール強度の上限は好ましくは12N/15mmであり、より好ましくは10N/15mmである。12N/15mm以下であると製袋後に袋が開封しやすい。
【0066】
本発明のポリエチレン系フィルムをPETラミネートしたフィルムのヒートシール開始温度の下限は好ましくは90℃であり、より好ましくは100℃である。90℃以上であるとシール以外の熱で融着しにくい。
ヒートシール開始温度の上限は好ましくは120℃であり、より好ましくは115℃である。120℃以下であるとシールに必要な熱が大きくない。
ヒートシール開始温度は、ヒートシール温度を80℃から順にあげていき、ヒートシール強度が4.9N/15mmとなる最も低い温度をいう。
【0067】
PETフィルムとラミネートしたフィルムの120℃におけるヒートシール強度の下限は好ましくは30N/15mmであり、より好ましくは35N/15mmである。30N/15mm以上であると製袋後に袋が破れにくい。
PETフィルムとラミネートしたフィルムの120℃におけるヒートシール強度の上限は好ましくは60N/15mmであり、より好ましくは50N/15mmである。60N/15mm以下であると製袋後に袋が開封しやすい。
【0068】
本発明のポリエチレン系フィルム単体の静摩擦係数の下限は好ましくは0.05であり、より好ましくは0.08であり、さらに好ましくはである。0.05以上であると巻取りの際にフィルムが滑りすぎず巻きズレの原因となりにくい。
単体の静摩擦係数の上限は好ましくは0.20であり、より好ましくは0.15であり、更に好ましくは0.10である。0.20以下であると加工時のロスが少なくなる。
【0069】
本発明のポリエチレン系フィルムの巻出し直後に測定した静摩擦係数の下限は好ましくは0.05であり、より好ましくは0.08である。0.05以下であると巻取りの際にフィルムが滑りすぎず巻きズレの原因となりにくい。
巻出し直後に測定した静摩擦係数の上限は好ましくは0.25であり、より好ましくは0.18であり、さらに好ましくは0.10である。0.25以下である加工時のロスが少なくなる。
【0070】
本発明のポリエチレン系フィルムのラミネート後の静摩擦係数の下限は好ましくは0.05であり、より好ましくは0.08である。0.05以上であると巻取りの際にフィルムが滑りすぎず巻きズレの原因となりにくい。
ラミネート後の静摩擦係数の上限は好ましくは0.20であり、より好ましくは0.15である。0.20以下であると製袋後の口開き性が良く、加工時のロスが少ない。
【0071】
本発明のポリエチレン系フィルムのヤング率(MD)の下限は好ましくは100MPaであり、より好ましくは200MPaである。100MPa以上であると腰が弱すぎず加工しやすい。ヤング率(MD)の上限は好ましくは800MPaであり、より好ましくは600MPaである。
【0072】
本発明のポリエチレン系フィルムのヤング率(TD)の下限は好ましくは100MPaであり、より好ましくは200MPaである。100MPa以上であると腰が弱すぎず加工しやすい。
ヤング率(TD)の上限は好ましくは1000MPaであり、より好ましくは600MPaである。
【実施例】
【0073】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。なお、各実施例で得られた特性は以下の方法により測定、評価した。
【0074】
(1)樹脂密度
JIS K7112:1999年に準じて密度を評価した。
【0075】
(2)メルトフローレート(MFR)
ASTM D−1238に基づき230℃、荷重21.18Nで測定を行った。
【0076】
(3)算術平均粗さ(Ra(MD)〔μm〕)及び算術平均粗さ(Ra(TD)[μm])
まず形状測定レーザマイクロスコープ(キーエンス製・型式VK−9700)を用いて、フィルムのシール層(A層)側の任意の場所において画像を撮影した(倍率50倍)。
次いで、この画像を、粗さ解析ソフト(キーエンス製・VK Analyzer)を用いて、線粗さ(線粗さ)を測定した。
表面粗さ(線粗さ)はJIS−B0601に基づいて測定し、カットオフはλc=0.08mmを用い、MD方向に解析長200μm、TD方向に解析間隔3.3μmとして、n=60本測定した。それぞれの表面粗さ(線粗さ)曲線をJIS0601:2001方式にて測定ピッチ0.01μmとして、算術平均粗さを算出し、平均して算術平均粗さRa(MD)とした。
算術平均粗さ(Ra(TD)[μm])も同様に、TD方向に解析長200μm、MD方向に解析間隔3.3μmとした。
【0077】
(4)フィルムのブロッキング強度
ブロッキング強度の測定方法は以下の通りである。フィルムの流れ方向に150mm、流れ方向と垂直方向に20mmのサイズにカットしたサンプル1をフィルムのラミネート層(C層)とシール層(A層)を重ね合わせて縦160mm、横30mmの清潔なガラス板で挟み、上から20kgの荷重をかけて60℃雰囲気下で20時間放置した。その後、荷重とガラス板を取り外し、23度、65%Rhの雰囲気に1時間放置した。図1に示すように、重ね合わせたフィルムを流れ方向に対し30mm剥離し、その間にφ5mm、長さ50mmのアルミ棒2を挟んだ。島津製作所製オートグラフ(AG−I)3にて、アルミ棒を貼付されている側に100mm/分で引張り、その時の荷重を測定した。
【0078】
(5)フィルムロールからの巻き出し性(ブロッキングの評価)
◎:何の抵抗もなく巻き出すことができる
○:巻き出す際フィルム同士が剥がれる音が聞こえる
×:巻き出す時に抵抗がある
【0079】
(6)フィルムの静摩擦係数
フィルムのシール層(A層)側同士を重ね合わせ、万能引張試験機STM−T−50BP(東洋ボールドウィン製)を用い、JIS K7125に準じて測定した。サンプルは以下の3種の方法において、MD方向に200mm、TD方向に80mmの大きさで切り出し、測定を行った。
(巻き出し直後)
実施例・比較例で得られたロール状のフィルムから巻出し後30分経過の時点での静摩擦係数を測定する場合は、ロール状のフィルムの表層5m以上を引出した部分においてサンプルを採取した。最外層のフィルムを使用すると、保管時のフィルム同士の密着が弱く、正しく測定できないことがある。
上記サンプル採取後40分経過時点での、有機系潤滑剤がフィルム表面にブリードアウトした状態でシール層(A層)側同士を行った。
(PETフィルムラミネート後)
実施例・比較例で得られたドライラミネートフィルムのシール層(A層)側同士を重ね合わせ測定した。
【0080】
(7)三次元表面粗さ(SRa)
三次元表面粗さSRaは接触式表面粗さ(小坂研究所製・型式ET4000A)を用い、3cm×3cm四方のフィルム片から任意に測定面1mm×0.2mmの個所の表面粗さを測定し、三次元表面粗さ(SRa)を求めた。
【0081】
(8)ヒートシール強度
ヒートシール条件および強度測定条件は次の通りである。すなわち、実施例・比較例で得られたラミネートフィルムのポリエチレンフィルム同士を重ね合せ、0.1MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅10mm、ヒートシール温度120℃でヒートシールした後、23℃で放冷した。120℃でヒートシールされたフィルムからヒートシールバーの方向と直角方向に幅15mm、長さ70mmの試験片を切り取り、各試験片について、クロスヘッドスピード200mm/分でヒートシール部を剥離した際の剥離強度を測定した。
【0082】
(9)ヒートシール開始温度
ヒートシール開始温度は、上記(8)の方法でヒートシール強度の測定を行う際に、ヒートシール温度を80℃から順にあげていき、ヒートシール強度が4.9N/15mmとなる最も低い温度とした。
【0083】
(10)ヘイズ
ヘイズメーターNDH3000(日本電色工業製)により、JIS K7136に準じて測定した。
【0084】
(実施例1)
(シーラントフィルムの作製)
(シール層(A層)のポリエチレン系組成物)
樹脂密度915kg/m3、MFR3.5g/10分のポリエチレン樹脂(ダウケミカル社製 ELITE(登録商標)5220G)90重量%に対し、樹脂密度890kg/m3、MFR1.4g/10分のポリプロピレン樹脂(住友化学社製、ノーブレン(登録商標)S131)を10重量%混合した。また、アンチブロッキング剤として、粒径10μmの非結晶性シリカ1.17重量%と粒径4μmのゼオライトを前記樹脂の合計量に対して0.49重量%、有機系潤滑剤としてエルカ酸アミドを1000ppm添加した。添加剤はそれぞれポリエチレン樹脂のマスターバッチとして混合した。
【0085】
(中間層(B層)のポリエチレン系組成物)
樹脂密度930kg/m3のポリエチレン樹脂(住友化学社製、スミカセン(登録商標)FV407)68重量%、樹脂密度962kg/m3のプライムポリマー社製ポリエチレン樹脂(モアテック(登録商標)0408G)12重量%、回収原料を20重量%、を混合した。有機滑剤としてエルカ酸アミドを1000ppm添加した。添加剤はポリエチレン樹脂のマスターバッチとして混合した。
【0086】
(ラミネート層(C層)のポリエチレン系組成物)
樹脂密度930kg/m3のポリエチレン樹脂(住友化学社製、スミカセンFV407)80重量%と樹脂密度962kg/m3かつ分子量分布2.8のポリエチレン樹脂(プライムポリマー社製、モアテック0408G)20重量%を混合した。
【0087】
B層用ポリエチレン系樹脂組成物をスクリュー直径90mmの3ステージ型単軸押出し機で、A層用およびC層用のポリエチレン系樹脂組成物をそれぞれ直径45mmおよび直径60mmの3ステージ型単軸押出し機を使用し、巾800mmでプレランドを2段階にし、かつ溶融樹脂の流れが均一になるように段差部分の形状を曲線状としてダイス内の流れが均一になるように設計した3層タイプのTスロット型ダイにA層/B層/C層の順になるよう導入し、ダイスの出口温度を221℃で押出した。リップギャップは1.6mmとした。ダイスから出てきた溶融樹脂シートを38℃の冷却ロールで冷却し、A層/B層/C層の構成で層厚みが8/23/6(μm)よりなるポリエチレン系積層フィルムを得た。
また上記押出し機への供給用サイロやホッパーも窒素ガス置換をした。冷却ロールでの冷却に際しては、エアーノズルで冷却ロール上のフィルムの両端を固定し、エアーナイフで溶融樹脂シートの全幅を冷却ロールへ押さえつけ、同時に真空チャンバーを作用させ溶融樹脂シートと冷却ロールの間への空気の巻き込みを防止した。エアーノズルは、両端ともフィルム進行方向に直列に設置した。またエアーナイフの風向きは押出されたシートの進行方向に対して40度とした。
また、真空チャンバーの吸引口の方向を押出されたシートの進行方向に合わせた。更に、ダイス周りはシートで囲い、溶融樹脂シートに風が当たらないようした。C層の表層にコロナ処理を施した。製膜速度は19m/分で実施した。製膜したフィルムは耳部分をトリミングし、ロール状態にして巻き取った。フィルム構成を表1に、得られたフィルムの物性結果を表2に示す。
【0088】
(ドライラミネートフィルムの作製)
本発明にかかるフィルムと基材フィルム(東洋紡製二軸延伸ポリエステルフィルム、E5100、厚み12μm)とを、エステル系ドライラミネート用接着剤(DICグラフィックス社製、LX500)32.4質量部、硬化剤として(DICグラフィックス社製、KR90S)2.2質量部、及び酢酸エチル65.4質量部を混合して得られたエステル系接着剤を使用し、接着剤の塗布量が3.0g/mとなるようドライラミネートした。積層したラミネートフィルムを40℃に保ち、3日間エージングを行い、ドライラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムの物性結果を表2に示す。
【0089】
(実施例2)
実施例1において、シール層(A層)におけるポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂の混合比を、ポリプロピレン樹脂を15重量%、ポリエチレン樹脂を85重量%とした以外は同様の方法においてシーラントフィルムを得た。
【0090】
(実施例3)
実施例1において、シール層(A層)におけるポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂の混合比を、ポリプロピレン樹脂を3重量%、ポリエチレン樹脂を97重量%とした以外は同様の方法においてシーラントフィルムを得た。
【0091】
(実施例4)
実施例1において、シール層(A層)に添加するエルカ酸アミド濃度を800ppmとした以外は、同様の方法においてシーラントフィルムを得た。
【0092】
(実施例5)
実施例1において、シール層(A層)/中間層(B層)/ラミネート層(C層)の厚みを6.5/18.5/5.0μm(合計30μm)とした以外は同様の方法においてシーラントフィルムを得た。
【0093】
(実施例6)
実施例1において、シール層(A層)に添加するシリカ濃度を0.58重量%とした以外は同様の方法においてシーラントフィルムを得た。
【0094】
(実施例7)
実施例1において、シール層(A層)に添加するゼオライトの濃度を0.25重量%とした以外は同様の方法においてシーラントフィルムを得た。
【0095】
(実施例8)
実施例1において、シール層(A層)におけるポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂の混合比を、ポリプロピレン樹脂を3重量%、ポリエチレン樹脂を97重量%とし、シール層(A層)にシリカを添加しなかった以外は同様の方法においてシーラントフィルムを得た。
上記実施例1〜8のフィルムはいずれも、フィルムロールからの巻き出しの際にブロッキングが抑えられ、製袋加工がスムーズに行えた。また製袋後の開封性も良好であり、食品充填もスムーズに行えた。
【0096】
(比較例1)
実施例1において、シール層(A層)におけるポリプロピレン樹脂を添加せず、ポリエチレン樹脂100重量%とした以外は実施例1と同様にして、シーラントフィルムを得た。しかし、フィルムの凹凸が少なくなり、巻出し直後の滑り性が得られなかった。
【0097】
(比較例2)
実施例1において、シール層(A)におけるポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂の混合比を、ポリプロピレン樹脂を30重量%、ポリエチレン樹脂を70重量%とした以外は実施例1と同様にして、シーラントフィルムを得た。しかし、シール強度が悪化する結果となった。
【0098】
(比較例3)
実施例1において、シール層(A)において使用するポリプロピレン樹脂(住友化学社製、ノーブレンS131)の代わりに、ポリプロピレン樹脂(住友化学社製、ノーブレンS131)を220℃で溶融した後に再度ペレット化し、そのメルトフローレート(MFR)を3.2g/10分まで上昇させたポリプロピレン樹脂を使用した以外は実施例1同様にして、シーラントフィルムを得た。
しかしポリプロピレン樹脂はポリエチレン樹脂に完全に相溶してしまい、フィルムの凹凸が小さくなり、巻出し直後の滑り性が得られなかった。
【0099】
(比較例4)
実施例1において、シール層(A)において使用するポリプロピレン樹脂(住友化学社製、ノーブレンS131)の代わりに、ポリプロピレン樹脂(住友化学社製、ノーブレンD101、樹脂密度900kg/m3、MFR0.5g/10分)に変更した以外は実施例1と同様にして、シーラントフィルムを得ようとした。
しかしポリプロピレン樹脂はポリエチレン樹脂に全く相溶せず、フィルムを得ることができなかった。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0104】
フィルムロール状態から巻き出す際のブロッキングや基材とラミネートした後のシーラント同士の耐ブロッキング性がより良好であるため、加工時のロスを低減させることができ、産業上大きく貢献できる。

図1