(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記下地層における前記有機高分子は、ポリオール類、有機シラン化合物、水系ポリウレタン樹脂、及び、前記ポリオール類と前記有機シラン化合物との反応生成物の少なくとも一つを含む、請求項10又は11に記載の積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、場合により図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態を説明する。なお、各図面において、同一または同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0037】
<積層フィルム>
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の積層フィルムの模式断面図である。積層フィルム100は、フィルム状の樹脂基材10、並びに、樹脂基材10の一方面上に、樹脂基材10側から下地層20及び被覆層30をこの順に有する。
【0038】
樹脂基材10は、樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリスチレンフィルム;66−ナイロン等のポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム、並びに、ポリアクリロニトリルフィルム、及びポリイミドフィルム等のエンジニアリングプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0039】
上記樹脂フィルムの一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂基材10は、同種のものを複数積層することによって構成されてもよい。樹脂フィルムは、延伸及び未延伸のどちらであってもよい。少なくとも一つの延伸フィルムと少なくとも一つの未延伸フィルムとが積層されているものであってもよい。樹脂基材10は、二軸方向に任意に延伸されたフィルムを有することによって、機械強度及び寸法安定性を向上することができる。
【0040】
上述の樹脂基材10は、酸素バリア性を一層向上させる観点から、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを含有することが好ましい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、プロピレン単体のみからなるホモポリマー、主モノマーであるプロピレンと、プロピレンとは異なる少量のコモノマーがランダムに共重合し均質的な相をなすランダムコポリマー、又は、主モノマーであるプロピレンと上記コモノマーがブロック的に共重合したりゴム状に重合したりすることによって不均質な相をなすブロックコポリマー等の少なくとも一種がフィルム状に加工されたものであってもよい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いる場合、位相差測定法による面配向係数ΔPが、0.005〜0.020の範囲であることが特に好ましい。基材の凝集力により、表層剥離を防ぐことができる。なお面配向係数は、例えば二軸延伸及びその後の熱固定の条件によって調整することができる。
【0041】
樹脂基材10は、ホモポリマーで構成される層(フィルム)、ランダムコポリマーで構成される層(フィルム)及びブロックコポリマーで構成される層(フィルム)から選ばれる一種を備えていてもよく、二種以上が積層されたものを備えていてもよい。また、同種のフィルムが複数積層されたものであってもよい。
【0042】
樹脂基材10の厚さは、特に制限されず、例えば、3〜200μmであってもよく、6〜30μmであってもよい。厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。樹脂基材10は、フィラー、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、及び酸化防止剤等から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含有してもよい。樹脂基材10の表面は、薬品処理、溶剤処理、コロナ処理、プラズマ処理、及びオゾン処理から選ばれる少なくとも一つの処理が施されていてもよい。
【0043】
下地層20は、樹脂基材10と被覆層30との間に設けられる。樹脂基材10がフィラーを含有することによって表面に凹凸を有する場合、又はうねりを有する場合に、下地層20を設けることによって、樹脂基材10と被覆層30との間の密着性を向上させることができる。
【0044】
下地層20は、有機高分子を主成分として含有する層であり、プライマー層と呼ばれることもある。下地層20を設けることによって、積層フィルム100のラミネート強度を高くすることができる。
【0045】
下地層20における有機高分子の含有量は、例えば70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。有機高分子としては、高分子末端に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール類、シランカップリング剤又はその加水分解物のような有機シラン化合物、上記ポリオール類と、イソシアネート化合物との2液反応によって得られる反応生成物(水系ポリウレタン樹脂)、及び、上記ポリオール類とシランカップリング剤との反応生成物等が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0046】
ポリオール類としては、例えば、アクリルポリオール、ポリビニルアセタール、ポリスチルポリオール、及びポリウレタンポリオール等から選択される少なくとも一種が挙げられる。アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるものであってもよく、アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られるものであってもよい。アクリル酸誘導体モノマーとしては、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。アクリル酸誘導体モノマーと共重合させるモノマーとしては、スチレン等が挙げられる。
【0047】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。有機シラン化合物は、これらのシランカップリング剤の加水分解物であってもよい。有機シラン化合物は、上述のシランカップリング剤及びその加水分解物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。下地層20がシランカップリング剤又はその加水分解物を含有する場合、これらは、被覆層30に含まれるものと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
イソシアネート化合物は、ポリオールと反応して生じるウレタン結合により樹脂基材10と被覆層30との密着性を高める作用を有する。すなわち、イソシアネート化合物は、架橋剤又は硬化剤として機能する。イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類、これらの重合体、及びこれらの誘導体が挙げられる。上述のイソシアネート化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0049】
下地層20は、ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリイミド、メラミン、フェノール、及び有機変性コロイダルシリカのような無機シリカから選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。下地層20の厚さは、特に制限されず、例えば、0.005〜5μmであってもよい。厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。
【0050】
下地層20は、有機溶媒中に上述の成分を任意の割合で配合して混合液を調製し、樹脂基材10の一方面上に調製した混合液を用いて形成することができる。混合液は、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤;フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤;レベリング剤;流動調整剤;触媒;架橋反応促進剤;充填剤等を含有してもよい。
【0051】
混合液は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、又はシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式、或いは、ロールコート、ナイフエッジコート、又はグラビアコートなどの周知の塗布方式を用いて樹脂基材10の上にコーティングすることができる。コーティング後、例えば50〜200℃に加熱し、乾燥及び/又は硬化することによって、下地層20を形成することができる。
【0052】
被覆層30は、水溶性高分子、シランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方、金属アルコキシド及びその加水分解物の少なくとも一方、並びに無機層状化合物を含む。被覆層30は、無機層状化合物を含有することから、酸素バリア性に優れる。被覆層30における無機層状化合物の含有量は、例えば2〜10質量%である。積層フィルム100が、被覆層30を備えることによって、酸素透過度を低減することができる。これによって、積層フィルム100を用いて形成される包装袋の内容物の劣化を十分に抑制することができる。
【0053】
水溶性高分子は、特に限定されず、例えばポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等のアルコール系、及びアクリルポリオール系等の高分子が挙げられる。酸素ガスバリア性を一層向上させる観点から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系の高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子の数平均分子量は、例えば、40000〜180000である。下地層20がポリオール類を含有する場合、当該ポリオール類と、被覆層30に含まれる水溶性高分子は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0054】
ポリビニルアルコール系の水溶性高分子は、例えばポリ酢酸ビニルをけん化(部分けん化も含む)して得ることができる。この水溶性高分子は、酢酸基が数十%残存しているものであってもよく、酢酸基が数%しか残存していないものであってもよい。
【0055】
被覆層30における水溶性高分子の含有量は、例えば、15〜50質量%である。被覆層30における水溶性高分子の含有量の下限は、酸素透過度を一層低減する観点から20質量%であってもよい。被覆層30における水溶性高分子の含有量の上限は、酸素透過度を一層低減する観点から45質量%であってもよい。
【0056】
被覆層30に含まれる金属アルコキシド並びにその加水分解物としては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC
2H
5)
4]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC
3H
7)
3]等の一般式M(OR)
nで表されるもの、並びにその加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0057】
被覆層30における金属アルコキシド及びその加水分解物の合計含有量は、例えば、40〜70質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、被覆層30における金属アルコキシド及びその加水分解物の合計含有量の下限は50質量%であってもよい。同様の観点から、被覆層30における金属アルコキシド及びその加水分解物の合計含有量の上限は65質量%であってもよい。
【0058】
被覆層30に含まれるシランカップリング剤及びその加水分解物としては、有機官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。そのようなシランカップリング剤及びその加水分解物としては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプリピルメチルジメトキシシラン、及びこれらの加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0059】
シランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方は、有機官能基として、エポキシ基を有するものを用いることが好ましい。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ―グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤及びその加水分解物は、ビニル基、アミノ基、メタクリル基又はウレイル基のように、エポキシ基とは異なる有機官能基を有していてもよい。
【0060】
有機官能基を有するシランカップリング剤及びその加水分解物は、その有機官能基と水溶性高分子の水酸基との相互作用によって、被覆層30の酸素バリア性と、下地層20との接着性を一層向上することができる。特に、シランカップリング剤及びその加水分解物のエポキシ基とポリビニルアルコールの水酸基とは、相互作用によって、酸素バリア性と下地層20との接着性に特に優れる被覆層30を形成することができる。
【0061】
被覆層30におけるシランカップリング剤及びその加水分解物の合計含有量は、例えば、1〜15質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、被覆層30におけるシランカップリング剤及びその加水分解物の合計含有量の下限は2質量%であってもよい。同様の観点から、被覆層30におけるシランカップリング剤及びその加水分解物の合計含有量の上限は12質量%であってもよい。
【0062】
ラミネート強度を一層高くするとともに酸素透過度を一層低減する観点から、被覆層30におけるシランカップリング剤及びその加水分解物の合計含有量の下限は3質量%であってもよい。被覆層30におけるシランカップリング剤及びその加水分解物の合計含有量の上限は10質量%であってもよい。
【0063】
被覆層30に含まれる無機層状化合物は、層状構造を有する結晶性の無機化合物である。無機層状化合物としては、例えば、カオリナイト族、スメクタイト族、又はマイカ族等に代表される粘土鉱物が挙げられる。被覆層30は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。無機層状化合物の粒径は、例えば0.1〜10μmである。無機層状化合物のアスペスト比は、例えば50〜5000である。
【0064】
無機層状化合物のうち、層状構造の層間に水溶性高分子又は金属アルコキシドが入り込むことによって、層間が拡大した複合被膜とする観点から、スメクタイト族の粘土鉱物が好ましい。スメクタイト族の粘土鉱物の具体例としては、
モンモリロナイト、ヘクトライト、及びサポナイト等が挙げられる。これらの中でも、混合液の安定性及び塗工性等の観点から、モンモリロナイトであることがより好ましい。
【0065】
被覆層30における無機層状化合物の含有量は、優れた酸素バリア性と高いラミネート強度を両立させる観点から、例えば2〜10質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、被覆層30における無機層状化合物の含有量の下限は2.5質量%であってもよく、3質量%であってもよい。ラミネート強度及び/又は水蒸気バリア性を高くする観点から、被覆層30における無機層状化合物の含有量の上限は8質量%であってもよく、5質量%であってもよい。
【0066】
被覆層30の厚さは、特に制限されず、例えば、0.01〜50μmであってもよい。厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。上述の成分を含有する被覆層30は、下地層20の組成が変わっても、積層フィルム100のラミネート強度のばらつきを低減することができる。このため、下地層20の材料選択の自由度が高くなり、積層フィルムの仕様選定を容易に行うことができる。また、積層フィルム100のラミネート強度を安定的に高くすることができるため、金属酸化物からなる蒸着薄膜層を備えなくても、優れた密封性が要求される包装袋に好適に用いることができる。これらの観点から、下地層20と被覆層30とは直接接触していることが好ましい。
【0067】
被覆層30は、水又は有機溶媒中に上述の成分を任意の割合で配合して混合液を調製し、下地層20の表面上に調製した混合液を塗布して乾燥し、硬化させて形成することができる。混合液は、被覆層30の物性を大きく損なわない範囲で、その他の成分を含有してよい。そのような成分としては、分散剤、安定化剤、粘度調整剤及び着色剤等が挙げられる。
【0068】
混合液は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、又はシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式、或いは、ロールコート、ナイフエッジコート、又はグラビアコートなどの周知の塗布方式を用いて下地層20の上にコーティングすることができる。コーティング後、例えば100℃程度に加熱し、乾燥及び/又は硬化することによって、被覆層30を形成することができる。
【0069】
積層フィルム100は、酸素バリア性に優れる。すなわち、無機酸化物等からなる蒸着薄膜層を有していなくても、優れた酸素バリア性を確保することができる。このため、積層フィルム100は、無機酸化物等からなる蒸着薄膜層を有するものに比べて、低い製造コストで製造することができる。このような積層フィルム100は、それほど高い水蒸気バリア性を必要としない用途に特に有用である。例えば、水分を含有する内容物を保管する包装袋を構成する積層フィルムとして、特に好適に用いることができる。
【0070】
図2は、第1実施形態の変形例に係る積層フィルムの模式断面図である。積層フィルム101は、樹脂基材10と、樹脂基材10の一方面上に被覆層30とを有する。すなわち、積層フィルム101は、下地層20を備えておらず、樹脂基材10と被覆層30とが直接接している点で、積層フィルム100と異なる。積層フィルム101のその他の構成は、積層フィルム100と同様である。
【0071】
積層フィルム101は、酸素バリア性に優れる。すなわち、無機酸化物等からなる蒸着薄膜層及び下地層を有していなくても、優れた酸素バリア性を確保することができる。このため、積層フィルム
101は、無機酸化物等からなる蒸着薄膜層を有するものに比べて、低い製造コストで製造することができる。このような積層フィルム101は、それほど高い水蒸気バリア性を必要としない用途に特に有用である。例えば、水分を含有する内容物を保管する包装袋を構成する積層フィルムとして、特に好適に用いることができる。
【0072】
図3は、第1実施形態の別の変形例に係る積層フィルムの模式断面図である。積層フィルム102は、樹脂基材10、並びに、樹脂基材10の一方面上に、樹脂基材10側から下地層20、無機酸化物等からなる蒸着薄膜層45及び被覆層30をこの順に備える。すなわち、積層フィルム102は、下地層20と被覆層30との間に蒸着薄膜層45を備える点で、積層フィルム100と異なる。積層フィルム102のその他の構成は、積層フィルム100と同様である。
【0073】
積層フィルム102は、蒸着薄膜層45を備えるため、優れた酸素バリア性と優れた水蒸気バリア性を兼ね備える。このため、酸素バリア性のみならず、水蒸気バリア性にも優れることが求められる用途に特に有用である。例えば、水分を殆ど含有しない内容物を保管する包装袋を構成する積層フィルムとして、特に好適に用いることができる。
【0074】
蒸着薄膜層45は、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素及び酸化マグネシウムを含む。これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。蒸着薄膜層45の厚さは、例えば5〜100nmである。厚さが5nm未満であると、優れた水蒸気バリア性が損なわれ易くなる傾向にある。一方、厚さが100nmを超えると、折り曲げ又は引っ張りなどの外力によって、蒸着薄膜層45に亀裂が生じ易くなる傾向にある。蒸着薄膜層45は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はプラズマ気相成長法(CVD)等によって形成することができる。
【0075】
上述の積層フィルム100,101,102は、いずれも、優れた酸素バリア性を有する。JIS K7126−2:2006に準拠して、mocon法(等圧法)によって測定される酸素透過度は、例えば、3ml/m
2/日以下であってもよく、2.5ml/m
2/日以下であってもよい。また例えば、2ml/m
2/日以下であってもよく、1.5ml/m
2/日以下であってもよい。なお、本明細書における酸素透過度は、大気圧下、30℃、70%RHの条件で測定される値である。
【0076】
上述の積層フィルム100,101,102は、優れた水蒸気バリア性を有していてもよい。JIS K 7129:2008に準拠して、mocon法(等圧法)によって測定される水蒸気透過度は、例えば、2g/m
2/日以下であってもよく、1.5g/m
2/日以下であってもよい。なお、本明細書における水蒸気透過度は、大気圧下、40℃、90%RHの条件で測定される値である。
【0077】
積層フィルム100,101,102のラミネート強度は、JIS Z 0238:1998に準拠して、テンシロン型万能材料試験機を用いてT型剥離法(クロスヘッドスピード:300mm/分)で測定することができる。積層フィルム100のラミネート強度は、例えば2N/15mm以上である
【0078】
積層フィルム100,101,102における被覆層30は、無機層状化合物を含有する混合液を用いて形成することができる。無機層状化合物を含有する混合液をコーティングすると、被覆層30の表面には、積層フィルム100,101,102の機能を損なわない程度の凹凸が形成される。これによって、被覆層30の表面積が大きくなり、被覆層30の形成時に、混合液の乾燥を十分に速く行うことができる。このように、被覆層30が無機層状化合物を含有することによって、積層フィルム100,101,102の生産性を高くすることができる。このような観点から、被覆層30の表面におけるR
sm(粗さ曲線要素の平均長さ)は、200μm未満であってもよく、150μm未満であってもよい。Rsmが小さいほど、混合液の乾燥が速くなり、積層フィルムの生産性を高くすることができる。R
smは、非接触表面・層断面形状計測器(株式会社菱化システム,VertScan[登録商標])を用い、任意に選択された測定長1.885mmの範囲において測定される値である。
【0079】
被覆層30の表面において、0.01μm以上の高さを有するピークの数は、ピークの数は200以上であってもよく、300以上であってもよい。このように高いピーク数を有することによって、被覆層30の形成時に、混合液の乾燥を促進することができる。したがって、積層フィルム100,101,102の生産性を一層高くすることができる。当該ピークの数は、上記非接触表面・層断面形状計測器を用いて観察される断面において、任意に選択された2.5mm
2の面積範囲内において0.01μm以上の高さを有する突起数をカウントすることによって求めることができる。
【0080】
積層フィルム100,101,102は、透明又は半透明であってもよい。本明細書における「半透明」とは、可視光を照射したときに、可視光の一部が透過しないことを意味している。積層フィルム100,101,102は、可視光の一部を透過しなくてもよく、可視光をある程度散乱してもよい。
【0081】
積層フィルム100,101,102は、被覆層30の上にヒートシール層を備えていてもよい。ヒートシール層は、包装袋を形成する際の接着部として機能する。ヒートシール層の構成成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸
エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂等が挙げられる。ヒートシール層の厚さは、例えば15〜200μmである。なお、用途に応じて、樹脂基材10の他方面上(被覆層30側とは反対側の面上)にヒートシール層を設けてもよい。
【0082】
ヒートシール層の形成方法としては、上述の樹脂からなるフィルムを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法、無溶剤接着剤を用いて貼り合わせるノンソルベントドライラミネート法、及び、上述した樹脂を加熱溶融させ、カーテン状に押し出し、貼り合わせるエキストルージョンラミネート法等が挙げられる。
【0083】
ヒートシール層と被覆層30との間には、例えば、延伸ナイロン、延伸ポリエステル、及び延伸ポリプロピレン等の少なくとも一つを含む緩和層を設けてもよい。また、被覆層30の上には、必要に応じて、印刷層を積層したり、接着剤を介して複数の樹脂層を積層したりしてもよい。また、樹脂基材10の他方面上にも、印刷層又はヒートシール層を設けてもよく、接着剤を用いて複数の樹脂層を設けてもよい。
【0085】
図4は、第2実施形態の積層フィルムの模式断面図である。積層フィルム300は、フィルム状の樹脂基材10A、並びに、樹脂基材10Aの一方面上に、樹脂基材10A側から下地層20及び蒸着薄膜層50をこの順に備える。すなわち、樹脂基材10
Aと蒸着薄膜層50との間には下地層20が設けられている。
【0086】
樹脂基材10Aは、二軸延伸ポリプロピ
レンフィルムを有する。樹脂基材10Aが二軸延伸ポリプロピレンフィルムを有することによって、酸素バリア性及び水蒸気バリア性等のガスバリア性を向上することができる。二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、プロピレン単体のみからなるホモポリマー、主モノマーであるプロピレンと、プロピレンとは異なる少量のコモノマーがランダムに共重合し均質的な相をなすランダムコポリマー、又は、主モノマーであるプロピレンと上記コモノマーがブロック的に共重合したりゴム状に重合したりすることによって不均質な相を形成するブロックコポリマー等の少なくとも一種がフィルム状に加工されたものであってもよい。二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いる場合、位相差測定法による面配向係数ΔPが、0.005〜0.020の範囲であることが特に好ましい。基材の凝集力により、表層剥離を防ぐことができる。なお面配向係数は、例えば二軸延伸及びその後の熱固定の条件によって調整することができる。
【0087】
樹脂基材10Aは、ホモポリマーで構成される層(フィルム)、ランダムコポリマーで構成される層(フィルム)及びブロックコポリマーで構成される層(フィルム)から選ばれる一種を備えていてもよく、二種以上が積層されたものを備えていてもよい。また、同種のフィルムが複数積層されたものであってもよい。
【0088】
樹脂基材10Aは、二軸延伸ポリプロピ
レンフィルムに他の樹脂フィルムが積層されたものであってもよい。樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム;ポリスチレンフィルム;66−ナイロン等のポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム、並びに、ポリアクリロニトリルフィルム、及びポリイミドフィルム等のエンジニアリングプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0089】
樹脂基材10Aの厚さは、特に制限されず、例えば、3〜200μmであってもよく、6〜30μmであってもよい。厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。樹脂基材10Aは、フィラー、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、及び酸化防止剤等から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含有してもよい。樹脂基材10Aの表面は、薬品処理、溶剤処理、コロナ処理、プラズマ処理、及びオゾン処理から選ばれる少なくとも一つの処理が施されていてもよい。
【0090】
下地層20は、樹脂基材10Aと蒸着薄膜層50との間に設けられる。樹脂基材10Aがフィラーを含有して表面に凹凸を有したり、うねりを有したりしていても、下地層20を設けることによって、樹脂基材10Aと蒸着薄膜層50との間の密着性を向上させることができる。
【0091】
下地層20は、有機高分子を主成分として含有する層であり、プライマー層と呼ばれることもある。下地層20における有機高分子の含有量は、例えば70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。有機高分子としては、高分子末端に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール類、シランカップリング剤又はその加水分解物のような有機シラン化合物、上記ポリオール類とイソシアネート化合物との2液反応によって得られる反応生成物(水系ポリウレタン樹脂)、及び、上記ポリオール類とシランカップリング剤との反応生成物等が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0092】
ポリオール類としては、例えば、アクリルポリオール、ポリビニルアセタール、ポリスチルポリオール、及びポリウレタンポリオール等から選択される少なくとも一種が挙げられる。アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるものであってもよく、アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られるものであってもよい。アクリル酸誘導体モノマーとしては、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。アクリル酸誘導体モノマーと共重合させるモノマーとしては、スチレン等が挙げられる。
【0093】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。有機シラン化合物は、これらのシランカップリング剤の加水分解物であってもよい。有機シラン化合物は、上述のシランカップリング剤及びその加水分解物の1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0094】
イソシアネート化合物は、ポリオールと反応して生じるウレタン結合により樹脂基材10Aと蒸着薄膜層50との密着性を高める作用を有する。すなわち、イソシアネート化合物は、架橋剤又は硬化剤として機能する。イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類、これらの重合体、及びこれらの誘導体が挙げられる。上述のイソシアネート化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0095】
下地層20は、ポリエチレンイミン及びその誘導体、ポリオレフィン系エマルジョン、ポリイミド、メラミン、フェノール、及び有機変性コロイダルシリカのような無機シリカから選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0096】
下地層20の厚さは、特に制限されず、例えば、0.005〜5μmであってもよい。厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。
【0097】
下地層20は、有機溶媒中に上述の各成分を任意の割合で配合して混合液を調製し、樹脂基材10Aの一方面上に調製した混合液を用いて形成することができる。混合液は、上述の有機高分子に加えて、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤;フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤;レベリング剤;流動調整剤;触媒;架橋反応促進剤;充填剤等を含有してもよい。
【0098】
混合液は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、又はシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式、或いは、ロールコート、ナイフエッジコート、又はグラビアコートなどの周知の塗布方式を用いて樹脂基材10Aの上にコーティングすることができる。コーティング後、例えば50〜200℃に加熱し、乾燥及び/又は硬化することによって、下地層20を形成することができる。
【0099】
蒸着薄膜層50は、酸化ケイ素[SiO
x,(xは約2である)]を含む。蒸着薄膜層50の厚さは、例えば5〜100nmである。このような厚みの蒸着薄膜層50を有する積層フィルム
300は、一層優れた水蒸気バリア性と、高い柔軟性及び透明性を兼ね備える。蒸着薄膜層50は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、又はプラズマ気相成長法(CVD)等によって、下地層20の上に形成することができる。
【0100】
積層フィルム300は、ガスバリア性に優れる樹脂基材10Aの上に、酸化ケイ素を含む蒸着薄膜層50を備える。酸化ケイ素を含む蒸着薄膜層50は、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムなど、酸化ケイ素とは異なる酸化物を含む蒸着薄膜層に比べて、水蒸気バリア性に優れる。この蒸着薄膜層50と樹脂基材10Aとの間には、下地層20を有することから、蒸着薄膜層50と樹脂基材10Aは密着性に優れる。このように、水蒸気バリア性に優れる蒸着薄膜層50と樹脂基材10Aを有することと、これらの密着性が良好であることの相乗効果によって、積層フィルム300は十分に優れた水蒸気バリア性を有する。このため、積層フィルム300は、高い水蒸気バリア性が求められる用途において特に有用である。例えば、積層フィルム300を包装袋に用いることによって、包装袋の内容物の劣化を十分に抑制することができる。
【0101】
図5は、第2実施形態の変形例に係る積層フィルムの模式断面図である。積層フィルム301は、樹脂基材10Aと、樹脂基材10Aの一方面上に、下地層20と、蒸着薄膜層50と、被覆層40とをこの順で有する。すなわち、積層フィルム301は、蒸着薄膜層50の下地層20側とは反対側に、被覆層40を備える点で積層フィルム300と異なる。積層フィルム301のその他の構成は、積層フィルム300と同様である。
【0102】
被覆層40は、例えば、水溶性高分子、シランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方、金属アルコキシド及びその加水分解物の少なくとも一方、並びに無機層状化合物を含む層である。被覆層40における無機層状化合物の含有量は、例えば、2〜10質量%である。被覆層40は、水蒸気バリア性と酸素バリア性に優れる。これによって、積層フィルム301を用いて形成される包装袋の内容物の劣化を十分に抑制することができる。
【0103】
水溶性高分子は、特に限定されず、例えばポリビニルアルコール系、デンプン・メチルセルロース・カルボキシメチルセルロース等のアルコール系、及びアクリルポリオール系等の高分子が挙げられる。酸素ガスバリア性を一層向上させる観点から、水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系の高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子の数平均分子量は、例えば、40000〜180000である。
【0104】
ポリビニルアルコール系の水溶性高分子は、例えばポリ酢酸ビニルをけん化(部分けん化も含む)して得ることができる。この水溶性高分子は、酢酸基が数十%残存しているものであってもよく、酢酸基が数%しか残存していないものであってもよい。
【0105】
被覆層40における水溶性高分子の含有量は、例えば、15〜50質量%である。被覆層40における水溶性高分子の含有量の下限は、水蒸気透過度と酸素透過度を一層低減する観点から20質量%であってもよい。被覆層40における水溶性高分子の含有量の上限は、水蒸気透過度と酸素透過度を一層低減する観点から45質量%であってもよい。
【0106】
被覆層40に含まれる金属アルコキシド並びにその加水分解物としては、例えば、テトラエトキシシラン[Si(OC
2H
5)
4]及びトリイソプロポキシアルミニウム[Al(OC
3H
7)
3]等の一般式M(OR)
nで表されるもの、並びにその加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0107】
被覆層40における金属アルコキシド及びその加水分解物の合計含有量は、例えば、40〜70質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、被覆層40における金属アルコキシド及びその加水分解物の合計含有量の下限は50質量%であってもよい。同様の観点から、被覆層40における金属アルコキシド及びその加水分解物の合計含有量の上限は65質量%であってもよい。
【0108】
被覆層40に含まれるシランカップリング剤及びその加水分解物としては、有機官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。そのようなシランカップリング剤としては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプリピルメチルジメトキシシラン及び、これらの加水分解物が挙げられる。これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。被覆層40に含まれるシランカップリング剤は、下地層20に含まれるシランカップリング剤と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0109】
シランカップリング剤及びその加水分解物の少なくとも一方は、有機官能基として、エポキシ基を有するものを用いることが好ましい。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、γ―グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、及びβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤及びその加水分解物は、ビニル基、アミノ基、メタクリル基又はウレイル基のように、エポキシ基とは異なる有機官能基を有していてもよい。
【0110】
有機官能基を有するシランカップリング剤及びその加水分解物は、その有機官能基と水溶性高分子の水酸基との相互作用によって、被覆層40の酸素バリア性を一層向上することができる。特に、シランカップリング剤及びその加水分解物のエポキシ基とポリビニルアルコールの水酸基とは、相互作用によって、酸素バリア性に特に優れる被覆層40を形成することができる。
【0111】
被覆層40におけるシランカップリング剤及びその加水分解物の合計含有量は、例えば、1〜15質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、被覆層40におけるシランカップリング剤及びその加水分解物の合計含有量の下限は2質量%であってもよい。同様の観点から、被覆層40におけるシランカップリング剤及びその加水分解物の合計含有量の上限は12質量%であってもよい。
【0112】
被覆層40に含まれる無機層状化合物は、層状構造を有する結晶性の無機化合物である。無機層状化合物としては、例えば、カオリナイト族、スメクタイト族、又はマイカ族等に代表される粘土鉱物が挙げられる。被覆層40は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。無機層状化合物の粒径は、例えば0.1〜10μmである。無機層状化合物のアスペスト比は、例えば50〜5000である。
【0113】
無機層状化合物のうち、層状構造の層間に水溶性高分子又は金属アルコキシドが入り込むことによって、層間が拡大した複合被膜とする観点から、スメクタイト族の粘土鉱物が好ましい。スメクタイト族の粘土鉱物の具体例としては、モンモ
リロナイト、ヘクトライト、及びサポナイト等が挙げられる。これらの中でも、混合液の安定性及び塗工性等の観点から、モンモリロナイトであることがより好ましい。
【0114】
被覆層40における無機層状化合物の含有量は、2〜10質量%である。酸素透過度を一層低減する観点から、被覆層40における無機層状化合物の含有量の下限は2.5質量%であってもよく、3質量%であってもよい。水蒸気バリア性を高くする観点から、被覆層40における無機層状化合物の含有量の上限は8質量%であってもよく、5質量%であってもよい。
【0115】
被覆層40の厚さは、特に制限されず、例えば、0.01〜50μmであってもよい。厚さは、用途又は求められる特性に応じて調整してもよい。
【0116】
被覆層40は、水又は有機溶媒中に上述の成分を任意の割合で配合して混合液を調製し、蒸着薄膜層50の表面上に調製した混合液を用いて形成することができる。混合液は、被覆層40の物性を大きく損なわない範囲で、その他の成分を含有してよい。そのような成分としては、分散剤、安定化剤、粘度調整剤及び着色剤等が挙げられる。
【0117】
混合液は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、又はシルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式、或いは、ロールコート、ナイフエッジコート、又はグラビアコートなどの周知の塗布方式を用いて蒸着薄膜層50の上にコーティングすることができる。コーティング後、例えば100℃程度に加熱し、乾燥及び/又は硬化することによって、被覆層40を形成することができる。
【0118】
積層フィルム301は、被覆層40を備えることから、一層優れた水蒸気バリア性を有するとともに、酸素バリア性にも優れる。したがって、積層フィルム
301は、例えば食品の包装用途において、賞味期限を長くできる点で極めて有用である。また、建装材用途において、湿気によるドア材等の歪みを抑制できる点で極めて有用である。
【0119】
上述の積層フィルム300,301は、いずれも、優れた水蒸気バリア性を有する。JIS K 7129:2008に準拠して、mocon法(等圧法)によって測定される水蒸気透過度は、例えば、2g/m
2/日以下であってもよく、1.5g/m
2/日以下であってもよい。なお、本明細書における水蒸気透過度は、大気圧下、40℃、90%RHの条件で測定される値である。
【0120】
積層フィルム300,301は、優れた水蒸気バリア性に加えて、優れた酸素バリア性を有していてもよい。JIS K7126−2:2006に準拠して、mocon法(等圧法)によって測定される酸素透過度は、例えば、1ml/m
2/日以下であってもよく、0.5ml/m
2/日以下であってもよい。なお、本明細書における酸素透過度は、大気圧下、30℃、70%RHの条件で測定される値である。
【0121】
積層フィルム300,301のラミネート強度は、JIS Z 0238:1998に準拠して、テンシロン型万能材料試験機を用いてT型剥離法(クロスヘッドスピード:300mm/分)で測定することができる。積層フィルム300,301のラミネート強度は、例えば2N/15mm以上である。
【0122】
積層フィルム300,301は、透明又は半透明であってもよい。本明細書における「半透明」とは、可視光を照射したときに、可視光の一部が透過しないことを意味している。積層フィルム300,301は、可視光の一部を透過しなくてもよく、可視光をある程度散乱してもよい。
【0123】
積層フィルム300は、蒸着薄膜層50の上にヒートシール層を備えていてもよい。積層フィルム301は、被覆層40の上にヒートシール層を備えていてもよい。ヒートシール層は、包装袋を形成する際の接着部として機能する。ヒートシール層の構成成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸
エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂等が挙げられる。ヒートシール層の厚さは、例えば15〜200μmである。なお、用途に応じて、樹脂基材10Aの他方面上(蒸着薄膜層50側又は被覆層40側とは反対側の面上)にヒートシール層を設けてもよい。
【0124】
ヒートシール層の形成方法としては、上述の樹脂からなるフィルムを、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて貼り合わせるドライラミネート法、無溶剤接着剤を用いて貼り合わせるノンソルベントドライラミネート法、及び、上述した樹脂を加熱溶融させ、カーテン状に押し出し、貼り合わせるエキストルージョンラミネート法等が挙げられる。
【0125】
ヒートシール層と蒸着薄膜層50又は被覆層40との間には、例えば、延伸ナイロン、延伸ポリエステル、及び延伸ポリプロピレン等の少なくとも一つを含む緩和層を設けてもよい。また、蒸着薄膜層50又は被覆層40の上には、必要に応じて、印刷層を積層したり、接着剤を介して複数の樹脂層を積層したりしてもよい。また、樹脂基材10Aの他方面上にも、印刷層又はヒートシール層を設けてもよく、接着剤を用いて複数の樹脂層を設けてもよい。
【0126】
<包装袋>
図6は、積層フィルムを用いて形成される包装袋の一実施形態を示す平面図である。包装袋200は、略矩形の一対の積層フィルム100(300)の周縁を貼り合わせてなるシール部211と、シール部211によって一対の積層フィルム100,100の間に形成される収容部218とを備える。すなわち、包装袋200は、側端部214、下端部216及び上端部217がシール部211によってシールされている。包装袋200は、シール部211に包囲された非シール部(シート部)215に、食料品等の被包装物が収容される収容部218を備える。収容部218には、食料品等の被包装物が封入される。なお、下端部216のシール部211は、被包装物を収容部218に充填した後にシールしてもよい。
【0127】
一対の積層フィルム100(300)は、被覆層30(蒸着薄膜層50)同士が対向するように重ね合わせられている。一対の積層フィルム100(300)は、接着剤によってシール部211において互いに接着されていてもよい。一対の積層フィルム100(300)は、被覆層30(蒸着薄膜層50)上にそれぞれ設けられたヒートシール層同士を接着することによって、シール部211を構成してもよい。
【0128】
積層フィルム100(300)は、酸素ガスバリア性又は水蒸気バリア性に優れるため、収容部218に収容される被包装物が酸素又は水蒸気バリア性によって劣化することを十分に抑制することができる。包装袋200は、積層フィルム100に変えて、積層フィルム101又は積層フィルム102を備えていてもよい。包装袋200は、積層フィルム300に変えて、積層フィルム301を備えていてもよい。この場合も、収容部218に収容される被包装物が酸素又は水蒸気によって劣化することを十分に抑制することができる。積層フィルム100(101,102)の樹脂基材10及び被覆層30の上には任意の層を設けてもよい。積層フィルム300(301)の樹脂基材10A及び蒸着薄膜層50(被覆層40)の上には、任意の層を設けてもよい。
【0129】
積層フィルム100(300)を用いて包装袋200を製造する手順を以下に説明する。一対の積層フィルム100(300)を準備する。積層フィルム100の場合、積層フィルム100の被覆層30同士、又は被覆層30上に設けられたヒートシール層同士を対向させ、再封止手段230となる例えばファスナーテープを挟んだ状態で、被覆層30同士、又はヒートシール層同士を接着する。積層フィルム300の場合、積層フィルム300の蒸着薄膜層50同士、又は蒸着薄膜層50上に設けられたヒートシール層同士を対向させ、再封止手段230となる例えばファスナーテープを挟んだ状態で、蒸着薄膜層50同士、又はヒートシール層同士を接着する。これによって、上端部217及び側端部214,214に対応する位置にシール部211を形成して、シール部211でコの字状に包囲された非シール部215を形成する。
【0130】
シール部211を形成した後、開封手段220を形成してもよい。例えば、側端部214,214には、傷痕群からなる易開封加工部224,224を形成する。易開封加工部224は、傷痕群に限定されず、V字状、U字状又はI字状等のノッチであってもよい。また、上端部217と再封止手段230との間の積層フィルム100(300)の表面部には、易開封加工部224からの切り開きの軌道となるハーフカット線221を形成してもよい。ハーフカット線221は、レーザーを用いて形成することができる。開封手段220の形成後に、シール部211を切断すると共に化粧裁ちをして個々の包装袋に分割する。
【0131】
次に、未シール状態にある下端部216から被包装物を充填する。その後、下端部216において積層フィルム100(300)同士を接着して、下端部216にもシール部211を形成する。このようにして、包装袋200を製造することができる。ハーフカット線は貼り合わせた一対の積層フィルム100(300)を所定の幅にスリットする前に形成してもよい。積層フィルム100(300)に変えて積層フィルム101,102(301)を用いる場合も同様にして包装袋200を製造することができる。
【0132】
包装袋200は、非シール部215の上端側に、包装袋200の側端部214,214及びその間を横断するように切り開いて開封するための開封手段220と、開封手段220よりも下側に、開封手段220によって開封した後に収容部218を再封止する再封止手段230とを備える。再封止手段230は、開封と密封とを繰り返して行うことが可能な公知の構造を適宜採用することができる。例えば、帯状の突起部と帯状の溝部が嵌合することによって繰り返し密封することが可能な合成樹脂製のファスナーであってもよく、粘着シールであってもよい。
【0133】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、積層フィルム100(101,102)は、樹脂基材10と下地層20との間、下地層20と被覆層30又は蒸着薄膜層45との間、或いは被覆層30と蒸着薄膜層45との間に、積層フィルムの機能を大きく損なわない範囲で、任意の層又は薄膜を備えていてもよい。積層フィルム300(301)は、樹脂基材10と下地層20との間、下地層20と蒸着薄膜層50との間、又は蒸着薄膜層50と被覆層40との間に、積層フィルムの機能を大きく損なわない範囲で、任意の層又は薄膜を備えていてもよい。包装袋200の形状は、四方袋に限定されるものではない。例えば、二方袋、三方袋又は合掌袋でもよいし、底テープを付加したスタンディングパウチ形状であってもよい。
【実施例】
【0134】
実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0135】
(実施例1−1)
下地層形成用の混合液として、希釈溶剤(酢酸エチル)に、γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン、アクリルポリオール、脂肪族系キシレンジイソシアネートを11:53:37の質量比で配合して、混合液A(固形分:2質量%)を調製した。樹脂基材として準備した二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一方面上に、混合液Aをグラビアコート法によって塗布した。塗布後、乾燥して二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一方面上に下地層を形成した。なお、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ホモポリマータイプのポリプロピレンフィルムと、コポリマータイプのポリプロピレンフィルムとから構成される市販品(AJプラスト製、商品名:PJ201、厚さ:20μm、面配向係数:0.011)を用いた。
【0136】
水に、ポリビニルアルコール(PVA,数平均分子量:75000)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、及び、モンモリロナイト(Mon.)の4成分を、表1に示す質量比で配合して、混合液Bを調製した。下地層の上に、グラビアコート法によって、混合液Bを塗布した。塗布後、加熱して乾燥し、下地層の上に被覆層を形成した。このようにして、実施例1−1の積層フィルムを作製した。積層フィルムの下地層の厚みは約60〜70nmであり、被覆層の厚みは約0.4〜0.6μmであった。
【0137】
積層フィルムの被覆層の表面のR
sm(粗さ曲線要素の平均長さ)を、非接触表面・層断面形状計測器(株式会社菱化システム,VertScan[登録商標])を用いて測定した。R
smは、x方向に沿って任意に選択された測定長1.885mmの範囲において測定された値である。R
smは、表1に示すとおりであった。表1のピークの数は、任意に選択された2.5mm
2の面積範囲内において0.01μm以上の高さを有する突起数をカウントすることによって求めた。
【0138】
積層フィルムの被覆層に、未延伸ポリプロピレンフィルムを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせて、評価用フィルムを作製した。得られた評価用フィルムの酸素透過率を、酸素透過率測定装置(MOCON社製、装置名:OXTRAN 2/21)を用いて測定した。測定雰囲気は、30℃、70%RHとした。測定結果は表1に示すとおりであった。
【0139】
(実施例1−2〜
1−7、参考例1−8、比較例1−1)
混合液Bにおける、ポリビニルアルコール、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及び、モンモリロナイトの質量比を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして積層フィルムを形成した。そして、実施例1−1と同様にして積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表1に示すとおりであった。
図7は、実施例1−3の被覆層の表面のx方向における凹凸を示すグラフの一例である。
図8は、
参考例1−8の積層フィルムの表面のx方向における凹凸を示すグラフの一例である。
【0140】
【表1】
【0141】
表1に示すとおり、実施例1−1〜
1−7の積層フィルムは、優れた酸素バリア性を有することが確認された。一方、無機層状化合物の含有量が少ない
参考例1−8は、他の実施例よりも酸素透過度が高かった。無機層状化合物の含有量が同一の場合、シランカップリング剤を含有する被覆層を有する積層フィルムの方が、シランカップリング剤を含有しない被覆層を有する積層フィルムよりも酸素透過度が低かった。シランカップリング剤を含有していない比較例1−1の積層フィルムは、実施例の積層フィルムよりも酸素透過度が高かった。
【0142】
(実施例1−9)
下地層形成用の混合液として、水系ポリウレタン樹脂エマルション(三井武田ケミカル社製、商品名:WS5000)を準備した。これを混合液Aの代わりに用いたこと以外は、実施例1−2と同様にして積層フィルムを形成した。そして、実施例1−2と同様にして、積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表2に示すとおりであった。
【0143】
(実施例1−10)
樹脂基材として、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:U1、厚さ:20μm、面配向係数:0.012)を準備した。これを、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの代わりに用いたこと以外は、実施例1−9と同様にして積層フィルムを形成した。そして、実施例1−9と同様にして、積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表2に示すとおりであった。
【0144】
(比較例1−2)
下地層形成用の混合液として、水系ポリウレタン樹脂エマルション(三井武田ケミカル社製、商品名:WS5000)を準備した。これを混合液Aの代わりに用いたこと以外は、比較例
1−1と同様にして積層フィルムを形成した。そして、比較例1−1と同様にして積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表2に示すとおりであった。
【0145】
【表2】
【0146】
表2に示すとおり、実施例1−1〜
1−7及び参考例1−8から、樹脂基材又は下地層の組成を変更した実施例1−9,1−10の積層フィルムも、優れた酸化バリア性を有することが確認された。一方、シランカップリング剤を含有していない比較例1−2では、酸素透過度が高かった。
【0147】
(実施例1−11)
樹脂基材として、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(AJプラスト製、商品名:VPH2011、厚さ:20μm、面配向係数:0.011)を準備した。この一方面上に、混合液Aをグラビアコート法によって塗布した。塗布後、乾燥して二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一方面上に下地層を形成した。電子線加熱方式による真空蒸着装置において、金属アルミニウムを蒸発させるとともに酸素ガスを導入して、下地層の上に厚さ20nmの酸化アルミニウムからなる蒸着薄膜層を形成した。
【0148】
蒸着薄膜層の上に、実施例1−1と同様に、グラビアコート法によって混合液Bを塗布した。塗布後、乾燥して蒸着薄膜層の上に被覆層を形成した。このようにして、実施例1−11の積層フィルムを作製した。積層フィルムの下地層の厚みは約60〜70nmであり、被覆層の厚みは約0.4〜0.6μmであった。実施例1−1と同様にして積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表3に示すとおりであった。
【0149】
(実施例1−12)
金属アルミニウムに代えて、金属珪素、一酸化珪素及び二酸化珪素の2種以上を含む混合材料を蒸発させて、下地層の上に厚さ20μmの酸化ケイ素からなる蒸着薄膜層を形成したこと以外は、実施例1−11と同様にして積層フィルムを形成した。そして、実施例1−11と同様にして積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表3に示すとおりであった。
【0150】
(実施例1−13)
下地層形成用の混合液として、希釈溶剤(酢酸エチル)に、γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン、アクリルポリオール、脂肪族系キシレンジイソシアネートを11:53:37の質量比で配合して、混合液D(固形分:5質量%)を調製した。混合液Aに代えて、混合液Dを用いたこと以外は、実施例1−12と同様にして積層フィルムを形成した。積層フィルムの下地層の厚みは約140〜150nmであった。そして、実施例1−12と同様にして積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表3に示すとおりであった。
【0151】
【表3】
【0152】
表3に示すとおり、蒸着薄膜層を設けた実施例1−11〜1−13の積層フィルムも、優れた酸素バリア性を有することが確認された。
【0153】
(
参考例2−1)
下地層形成用の混合液として、希釈溶剤(酢酸エチル)に、γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン、アクリルポリオール、脂肪族系キシレンジイソシアネートを11:53:37の質量比で配合して、混合液A(固形分:2質量%)を調製した。樹脂基材として準備した二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一方面上に、混合液Aをグラビアコート法によって塗布した。塗布後、乾燥して二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一方面上に下地層を形成した。なお、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ホモポリマータイプのポリプロピレンフィルムと、コポリマータイプのポリプロピレンフィルムとから構成される市販品(AJプラスト製、商品名:PJ201、厚さ:20μm、面配向係数:0.011)を用いた。
【0154】
水に、ポリビニルアルコール(PVA,数平均分子量:75000)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、及び、モンモリロナイト(Mon.)の4成分を、表4に示す質量比で配合して、混合液Bを調製した。下地層の上に、グラビアコート法によって、混合液Bを塗布した。塗布後、加熱して乾燥し、下地層の上に被覆層を形成した。このようにして、
参考例2−1の積層フィルムを作製した。積層フィルムの下地層の厚みは約60〜70nmであり、被覆層の厚みは約0.4〜0.6μmであった。
【0155】
積層フィルムの被覆層に、未延伸ポリプロピレンフィルムを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせて、評価用フィルムを作製した。得られた評価用フィルムの酸素透過率を、酸素透過率測定装置(MOCON社製、装置名:OXTRAN 2/21)を用いて測定した。測定雰囲気は、30℃、70%RHとした。測定結果は表
4に示すとおりであった。
【0156】
上述の評価用フィルムのラミネート強度を測定した。具体的には、JIS Z 0238:1998に準拠して、引張試験機(株式会社 エー・アンド・デイ製、商品名:テンシロン万能材料試験機)を用いてT型剥離法(クロスヘッドスピード:300mm/分)でラミネート強度を測定した。測定結果は表
4に示すとおりであった。
【0157】
(実施例2−2〜2−5、比較例2−1)
混合液Bにおける、ポリビニルアルコール、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及び、モンモリロナイトの質量比を表4に示すように変更したこと以外は、
参考例2−1と同様にして積層フィルムを形成した。そして、
参考例2−1と同様にして積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表4に示すとおりであった。
【0158】
(実施例2−6)
下地層形成用の混合液として、水系ポリウレタン樹脂エマルション(三井武田ケミカル社製、商品名:WS5000)を準備した。これを混合液Aの代わりに用いたこと以外は、実施例
2−3と同様にして積層フィルムを形成した。そして、実施例2−3と同様にして、積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表4に示すとおりであった。
【0159】
(実施例2−7)
樹脂基材として、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:U1、厚さ:20μm、面配向係数:0.012)を準備した。樹脂基材としてこれを用いたこと以外は、実施例2−6と同様にして積層フィルムを形成した。そして、実施例2−6と同様にして、積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表4に示すとおりであった。
【0160】
(比較例2−2)
下地層形成用の混合液として、水系ポリウレタン樹脂エマルション(三井武田ケミカル社製、商品名:WS5000)を準備した。これを混合液Aの代わりに用いたこと以外は、比較例2−1と同様にして積層フィルムを形成した。そして、比較例2−1と同様にして、積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表
4に示すとおりであった。
【0161】
(比較例2−3)
樹脂基材として、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:U1、厚さ:20μm、面配向係数:0.012)を準備した。これを用いたこと以外は、比較例2−2と同様にして積層フィルムを形成した。そして、比較例2−2と同様にして、積層フィルムの評価を行った。これらの結果は表
4に示すとおりであった。
【0162】
【表4】
【0163】
表4に示すとおり、
参考例2−1,実施例2−
2〜2−7の積層フィルムは、安定的に高いラミネート強度を有していた。被覆層の組成が同一であり、下地層の組成が異なる実施例2−3と実施例2−6,2−7とを対比すると、ラミネート強度の差異は0.5N/15mmであった。このことから、実施例の積層フィルムは、ラミネート強度が下地層の組成に殆ど依存せず、ラミネート強度のばらつきを低減できることが確認された。したがって、下地層の材料選択の自由度を高くすることができる。
【0164】
これに対し、被覆層がシランカップリング剤を含有していない比較例2−1〜2−3の場合、被覆層の組成が同一であり、下地層の組成が異なる比較例2−1と比較例2−2,2−3とを対比すると、ラミネート強度の差異は1.4〜1.7N/15mmであった。このことから、比較例の積層フィルムは、下地層の組成が変わるとラミネート強度が大きくばらつくことが確認された。すなわち、積層フィルムのラミネート強度が下地層の組成に大きく依存することが確認された。なお、実施例2−2〜2−7の積層フィルムは、酸素バリア性にも十分に優れることが確認された。
【0165】
(
参考例3−1)
下地層形成用の混合液として、希釈溶剤(酢酸エチル)に、γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン、アクリルポリオール、脂肪族系キシレンジイソシアネートを11:53:37の質量比で配合して、混合液A(固形分:2質量%)を調製した。樹脂基材として準備した二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一方面上に、混合液Aをグラビアコート法によって塗布した。塗布後、乾燥して二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一方面上に下地層aを形成した。下地層aの厚みは約60〜70nmであった。なお、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ホモポリマータイプのポリプロピレンフィルムと、コポリマータイプのポリプロピレンフィルムとから構成される市販品(AJプラスト製、商品名:PJ201、厚さ:20μm、面配向係数:0.011)を用いた。
【0166】
電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属珪素、一酸化珪素、及び二酸化珪素の2種以上を含む混合材料を蒸発させて、下地層aの上に厚さ20nmの酸化ケイ素からなる蒸着薄膜層を形成した。これによって、
参考例3−1の積層フィルムを作製した。
【0167】
作製した積層フィルムの蒸着薄膜層に、未延伸ポリプロピレンフィルムを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせて、評価用フィルムを作製した。得られた評価用フィルムの水蒸気透過度を、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、装置名:PERMARTRAN 3/31)を用いて測定した。測定雰囲気は、40℃、90%RHとした。測定結果は表
5に示すとおりであった。また、評価用フィルムの酸素透過度を、酸素透過率測定装置(MOCON社製、装置名:OXTRAN 2/21)を用いて測定した。測定雰囲気は、30℃、70%RHとした。評価結果は表5に示すとおりであった。
【0168】
(
参考例3−2)
下地層形成用の混合液として、希釈溶剤(酢酸エチル)に、γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン、アクリルポリオール、脂肪族系キシレンジイソシアネートを11:53:37の質量比で配合して、混合液B(固形分:5質量%)を調製した。混合液Aに代えて、混合液Bを用いたこと以外は、実施例3−1と同様にして積層フィルムを形成した。下地層bの厚みは約140〜150nmであった。そして、
参考例3−1と同様にして積層フィルムの評価を行った。評価結果は表5に示すとおりであった。
【0169】
(実施例3−3)
水に、ポリビニルアルコール(PVA,数平均分子量:75000)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、及び、モンモリロナイト(Mon.)の4成分を、35:5:57:3の質量比で配合して、混合液Cを調製した。
参考例3−1で作製した積層フィルムの蒸着薄膜層の上に、グラビアコート法によって、混合液Cを塗布した。塗布後、加熱して乾燥し、蒸着薄膜層の上に被覆層を形成した。このようにして、実施例3−3の積層フィルムを作製した。被覆層の厚みは約0.4〜0.6μmであった。そして、
参考例3−1と同様にして積層フィルムの評価を行った。評価結果は表5に示すとおりであった。
【0170】
(実施例3−4)
参考例3−1で作製した積層フィルムに代えて、
参考例3−2の積層フィルムを用いたこと以外は、実施例3−3と同様にして、蒸着薄膜層の上に被覆層を形成した。このようにして、実施例3−4の積層フィルムを作製した。被覆層の厚みは約0.4〜0.6μmであった。そして、実施例3−1と同様にして積層フィルムの評価を行った。評価結果は表
5に示すとおりであった。
【0171】
(比較例3−1)
樹脂基材として、
参考例3−1と同じ二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ:20μm)を準備した。この樹脂基材の一方面上に、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、金属アルミニウムを蒸発させるとともに酸素ガスを導入して、樹脂基材の上に厚さ20nmの酸化アルミニウムからなる蒸着薄膜層を形成した。これを比較例3−1の積層フィルムとした。そして、
参考例3−1と同様にして積層フィルムの評価を行った。評価結果は表5に示すとおりであった。
【0172】
(比較例3−2)
酸化ケイ素からなる蒸着薄膜層に代えて、下地層aの上に厚さ20nmの酸化アルミニウムからなる蒸着薄膜層を形成したこと以外は、
参考例3−1と同様にして積層フィルムを作製した。そして、
参考例3−1と同様にして積層フィルムの評価を行った。評価結果は表5に示すとおりであった。
【0173】
(比較例3−3)
参考例3−1で作製した積層フィルムに代えて、比較例3−2の積層フィルムを用いたこと以外は、実施例3−3と同様にして、積層フィルムを作製した。このようにして、比較例3−3の積層フィルムを作製した。被覆層の厚みは約0.4〜0.6μmであった。そして、
参考例3−1と同様にして積層フィルムの評価を行った。評価結果は表5に示すとおりであった。
【0174】
(比較例3−4)
下地層aを形成しなかったこと以外は、
参考例3−1と同様にして積層フィルムを作製した。これを比較例3−4の積層フィルムとした。そして、
参考例3−1と同様にして積層フィルムの評価を行った。評価結果は表5に示すとおりであった。
【0175】
【表5】
【0176】
表5に示すとおり、下地層を介して、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと酸化ケイ素を含む蒸着薄膜層とが積層された、
参考例3−1,3−2、実施例3−
3,3−4の積層フィルムは、水蒸気透過度が十分に低かった。また、蒸着薄膜層を覆う被覆層を有する実施例3−3,3−4の積層フィルムは、水蒸気透過度と酸素透過度の両方を十分に低くできることが確認された。一方、酸化ケイ素を含む蒸着薄膜層を有しない比較例3−1〜3−3、及び下地層を有しない比較例3−4の積層フィルムは、水蒸気透過度がいずれの実施例よりも高かった。