(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のタブ積層体の端面及び前記第2のタブ積層体の端面が互いに対向配置された状態で、前記第1のタブ積層体の端面及び前記第2のタブ積層体の端面のそれぞれに前記エネルギービームを照射する、請求項2に記載の電極組立体の製造方法。
前記第1のタブ積層体の端面及び前記第2のタブ積層体の端面が、前記複数のタブ積層体の搬送方向に沿って配列される、請求項2又は3に記載の電極組立体の製造方法。
前記タブ積層体の端面において前記タブ積層体の積層方向に直交する方向における前記溶接部の最大長さが、前記タブ積層体の積層方向と前記タブ積層体の積層方向に直交する前記方向との両方に直交する方向から見たときに、前記タブ積層体の積層方向における前記溶接部と前記タブ積層体とが重なる部分の最大長さよりも大きい、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電極組立体の製造方法。
前記タブ積層体の積層方向を含み前記タブ積層体の端面に直交する前記タブ積層体の断面において、前記タブ積層体の積層方向に直交する方向における前記溶接部の最大溶接深さが2mm未満である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電極組立体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記方法では、集電タブの積層方向に沿って延在する端面に直交する方向にYAGレーザー又は電子ビームが照射されている。例えば正極集電タブの端面にYAGレーザー又は電子ビームを照射する場合、正極集電タブの端面に対向する物体(例えば負極集電タブ等)が存在すると、当該物体がYAGレーザー又は電子ビームを遮蔽してしまう。そのため、電極組立体の設計自由度は低い。
【0005】
本発明の一側面は、設計自由度の高い電極組立体の製造方法及び電極組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電極組立体の製造方法は、タブを含む電極を有する電極組立体の製造方法であって、積層された前記タブを有するタブ積層体を準備する工程と、前記タブ積層体の積層方向に沿って延在する前記タブ積層体の端面にエネルギービームを照射することによって、前記タブ積層体の端面から内側に溶接部を形成する工程と、を含み、前記溶接部を形成する工程では、前記タブ積層体の積層方向に直交すると共に前記タブ積層体の端面と交差する平面に前記エネルギービームの照射方向を投影した方向が、前記平面において、前記タブ積層体の端面及び前記タブ積層体の端面の法線方向の両方に対して傾斜している。
【0007】
この電極組立体の製造方法では、例えばタブ積層体の端面に対向する物体が存在する場合であっても、エネルギービームが当該物体に遮蔽されないようにエネルギービームの照射方向を調整できる。そのため、電極組立体の設計自由度が高い。
【0008】
前記タブ積層体を準備する工程では、複数のタブ積層体を準備し、前記溶接部を形成する工程では、前記複数のタブ積層体のうちの第1のタブ積層体の端面と、前記複数のタブ積層体のうちの第2のタブ積層体の端面とのそれぞれに前記エネルギービームを照射してもよい。さらに、前記第1のタブ積層体の端面及び前記第2のタブ積層体の端面が互いに対向配置された状態で、前記第1のタブ積層体の端面及び前記第2のタブ積層体の端面のそれぞれに前記エネルギービームを照射してもよい。
【0009】
この場合、第1及び第2のタブ積層体のいずれか一方の端面にエネルギービームを照射する際に、他方のタブ積層体がエネルギービームを遮蔽しないようにエネルギービームの照射装置を配置し易くなる。
【0010】
前記第1のタブ積層体の端面及び前記第2のタブ積層体の端面が、前記複数のタブ積層体の搬送方向に沿って配列されてもよい。
【0011】
この場合、複数のタブ積層体を搬送することによって、第1のタブ積層体の端面及び第2のタブ積層体の端面にエネルギービームを照射することができる。そのため、電極組立体の生産性が向上する。
【0012】
前記タブ積層体が、前記タブ積層体を挟んで互いに反対側に配置された複数の端面を有しており、前記溶接部を形成する工程では、前記複数の端面のそれぞれに前記エネルギービームを照射してもよい。
【0013】
これにより、1つの端面において積層されたタブ間に未溶接部が生じた場合であっても、反対側に配置された別の端面において積層されたタブ間に未溶接部が生じにくい。
【0014】
前記複数の端面が、前記タブ積層体の搬送方向に沿って配列されてもよい。
【0015】
この場合、タブ積層体を搬送することによって、複数の端面にエネルギービームを照射することができる。そのため、電極組立体の生産性が向上する。
【0016】
前記電極組立体が複数の電極を備え、前記複数の電極のそれぞれが、本体と前記本体の一端から突出する前記タブとを含み、前記電極組立体が、積層された複数の本体を有する電極本体を更に備え、前記溶接部を形成する工程では、前記電極本体と前記溶接部との間に配置された遮蔽部材が、前記タブ積層体の端面によって反射された前記エネルギービームを遮蔽してもよい。
【0017】
この場合、タブ積層体の端面によって反射されたエネルギービームが電極本体にダメージを与えることが抑制される。
【0018】
前記タブ積層体が、前記タブ積層体の積層方向において導電部材と集電体との間に配置され、前記タブ積層体の積層方向における前記導電部材の厚みは、前記タブ積層体の積層方向における前記集電体の厚みよりも小さくてもよい。
【0019】
この場合、導電部材の厚みが比較的小さくなるので、導電部材の熱容量とタブの熱容量との差を小さくできる。
【0020】
前記タブ積層体の端面において前記タブ積層体の積層方向に直交する方向における前記溶接部の最大長さが、前記タブ積層体の積層方向と前記タブ積層体の積層方向に直交する前記方向との両方に直交する方向から見たときに、前記タブ積層体の積層方向における前記溶接部と前記タブ積層体とが重なる部分の最大長さよりも大きくてもよい。
【0021】
この場合、溶接部の機械的強度が高まるので、例えば組立作業又は外力により電極組立体に応力が生じても溶接部が破壊され難い。また、タブ積層体の端面において、タブ積層体の積層方向に直交する方向に溶接部を大きくすることができる。その結果、溶接部の熱拡散性が向上するので、エネルギービームの照射に起因するスパッタ粒子の発生を抑制できる。
【0022】
前記タブ積層体の積層方向を含み前記タブ積層体の端面に直交する前記タブ積層体の断面において、前記タブ積層体の積層方向に直交する方向における前記溶接部の最大溶接深さが2mm未満であってもよい。
【0023】
この場合、エネルギービームの照射に起因するスパッタ粒子の発生を抑制できる。
【0024】
前記タブ積層体の端面の法線方向から見て、前記溶接部が、曲線を含む外形形状を有してもよい。
【0025】
この場合、溶接部の外形形状の曲線部分において応力が集中し難いので、溶接部が剥離し難い。
【0026】
本発明の一側面に係る電極組立体は、タブを含む電極を備える電極組立体であって、積層された前記タブを有するタブ積層体を備え、前記タブ積層体が、前記タブ積層体の積層方向に沿って延在する前記タブ積層体の端面から内側に位置する溶接部を有し、前記タブ積層体の積層方向に直交すると共に前記タブ積層体の端面と交差する前記タブ積層体の断面において、前記溶接部の境界線は、前記タブ積層体の端面及び前記タブ積層体の端面の法線方向の両方に対して傾斜した方向に延びている。
【0027】
この電極組立体は、所望の方向に延びる境界線を有する溶接部を備える。境界線の方向は、例えばエネルギービームによって溶接部を形成する場合に、エネルギービームの照射方向を調整することによって制御される。その際、例えばタブ積層体の端面に対向する物体が存在する場合であっても、エネルギービームが当該物体に遮蔽されないようにエネルギービームの照射方向を調整できる。そのため、電極組立体の設計自由度が高い。
【0028】
前記タブ積層体が、前記タブ積層体の積層方向において導電部材と集電体との間に配置され、前記タブ積層体の積層方向における前記導電部材の厚みは、前記タブ積層体の積層方向における前記集電体の厚みよりも小さくてもよい。
【0029】
この場合、導電部材の厚みが比較的小さくなるので、導電部材の熱容量とタブの熱容量との差を小さくできる。
【0030】
前記タブ積層体の端面において前記タブ積層体の積層方向に直交する方向における前記溶接部の最大長さが、前記タブ積層体の積層方向と前記タブ積層体の積層方向に直交する前記方向との両方に直交する方向から見たときに、前記タブ積層体の積層方向における前記溶接部と前記タブ積層体とが重なる部分の最大長さよりも大きくてもよい。
【0031】
この場合、タブ積層体の端面において、タブ積層体の積層方向に交差する方向に溶接部が広がる。その結果、溶接部において電流が積層方向に流れる際に、積層されたタブ間の電気抵抗値を低減できる。
【0032】
前記タブ積層体の積層方向を含み前記タブ積層体の端面に直交する前記タブ積層体の断面において、前記タブ積層体の積層方向に直交する方向における前記溶接部の最大溶接深さが2mm未満であってもよい。
【0033】
前記タブ積層体の端面の法線方向から見て、前記溶接部が、曲線を含む外形形状を有してもよい。
【0034】
この場合、溶接部の外形形状の曲線部分において応力が集中し難いので、溶接部が剥離し難い。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一側面によれば、設計自由度の高い電極組立体の製造方法及び電極組立体が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図面には、必要に応じてXYZ直交座標系が示されている。Z軸方向は例えば鉛直方向、X軸方向及びY方向は例えば水平方向である。
【0038】
図1は、第1実施形態に係る電極組立体を備える蓄電装置の分解斜視図である。
図2は、
図1のII−II線に沿った蓄電装置の断面図である。
図1及び
図2に示される蓄電装置1は、例えばリチウムイオン二次電池といった非水電解質二次電池又は電気二重層キャパシタである。
【0039】
図1及び
図2に示されるように、蓄電装置1は、例えば略直方体形状をなす中空のケース2と、ケース2内に収容された電極組立体3とを備えている。ケース2は、例えばアルミニウム等の金属によって形成されている。ケース2は、一方側において開口した本体部2aと、本体部2aの開口を塞ぐ蓋部2bとを有している。ケース2の内壁面上には、絶縁フィルム(図示せず)が設けられる。ケース2の内部には、例えば非水系(有機溶媒系)の電解液が注液されている。電極組立体3では、後述する正極11の正極活物質層15、負極12の負極活物質層18、及びセパレータ13が多孔質をなしており、その空孔内に、電解液が含浸されている。ケース2の蓋部2bには、正極端子5と負極端子6とが互いに離間して配置されている。正極端子5は、絶縁リング7を介してケース2に固定され、負極端子6は、絶縁リング8を介してケース2に固定されている。
【0040】
電極組立体3は、積層型の電極組立体である。電極組立体3は、複数の正極11(電極)と、複数の負極12(電極)と、正極11と負極12との間に配置された袋状のセパレータ13とによって構成されている。セパレータ13内には、例えば正極11が収容されている。セパレータ13内に正極11が収容された状態で、複数の正極11と複数の負極12とがセパレータ13を介して交互に積層されている。
【0041】
正極11は、例えばアルミニウム箔からなる金属箔14と、金属箔14の両面に形成された正極活物質層15と、を有している。正極11の金属箔14は、矩形状の本体14aと、本体14aの一端から突出する矩形状のタブ14bと、を含む。正極活物質層15は、正極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。正極活物質層15は、本体14aの両面において、少なくとも本体14aの中央部分に正極活物質が担持されて形成されている。
【0042】
正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。ここでは、一例として、タブ14bには、正極活物質が担持されていない。ただし、タブ14bにおける本体14a側の基端部分には、活物質が担持されている場合もある。
【0043】
タブ14bは、本体14aの上縁部から上方に延び、集電板16(集電体)を介して正極端子5に接続されている。集電板16はタブ14bと正極端子5との間に配置されている。集電板16は、例えば、正極11の金属箔14と同一の材料から矩形平板状に構成される。積層された複数のタブ14bは、集電板16と、集電板16よりも薄い保護板23(導電部材)との間に配置される(
図3参照)。保護板23は、例えば、正極11の金属箔14と同一の材料から矩形平板状に構成される。
【0044】
負極12は、例えば銅箔からなる金属箔17と、金属箔17の両面に形成された負極活物質層18と、を有している。負極12の金属箔17は、正極11の金属箔14と同様に、矩形状の本体17aと、本体17aの一端部から突出する矩形状のタブ17bと、を含む。負極活物質層18は、本体17aの両面において、少なくとも本体17aの中央部分に負極活物質が担持されて形成されている。負極活物質層18は、負極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。
【0045】
負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。ここでは、一例として、タブ17bには、負極活物質が担持されていない。ただし、タブ17bにおける本体17a側の基端部分には、活物質が担持されている場合もある。
【0046】
タブ17bは、本体17aの上縁部から上方に延び、集電板19(集電体)を介して負極端子6に接続されている。集電板19はタブ17bと負極端子6との間に配置されている。集電板19は、例えば、負極12の金属箔17と同一の材料から矩形平板状に構成される。積層された複数のタブ17bは、集電板19と、集電板19よりも薄い保護板27(導電部材)との間に配置される(
図3参照)。保護板27は、例えば、負極12の金属箔17と同一の材料から矩形平板状に構成される。
【0047】
セパレータ13は、正極11を収容している。セパレータ13は、正極11及び負極12の積層方向からみて矩形状である。セパレータ13は、例えば、一対の長尺シート状のセパレータ部材を互いに溶着して袋状に形成される。セパレータ13の材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。
【0048】
図3は、第1実施形態に係る電極組立体の斜視図である。
図4は、
図3のIV−IV線に沿った電極組立体の断面図である。
図3に示される電極組立体3は、セパレータ13を介して互いに積層された複数の正極11及び複数の負極12を含む。複数の正極11のそれぞれは、XY平面に延在する本体14aと、本体14aの一端からX軸方向に突出するタブ14bとを含む。複数の負極12のそれぞれは、XY平面に延在する本体17aと、本体17aの一端からX軸方向に突出するタブ17bとを含む。本体14a,17aは、互いに積層されて電極本体42,44をそれぞれ構成する。すなわち、電極組立体3は、Z軸方向に積層された複数の本体14aを有する電極本体42と、Z軸方向に積層された複数の本体17aを有する電極本体44とを備える。タブ14b,17bは、互いに積層されてタブ積層体21,25をそれぞれ構成する。すなわち、電極組立体3は、Z軸方向に積層された複数のタブ14bを有するタブ積層体21と、Z軸方向に積層された複数のタブ17bを有するタブ積層体25とを備える。タブ積層体21,25は、Y軸方向において、互いに離間して配列される。
【0049】
タブ積層体21は、タブ積層体21の積層方向(Z軸方向)に沿って延在するタブ積層体21の端面21a,21b,21cを備える。端面21a,21bは、タブ積層体21を挟む面であり、端面21cは端面21a,21bを繋ぐ面である。すなわち、端面21a,21bは、タブ積層体21を挟んで互いに反対側に配置されている。端面21a,21bは、XZ平面に沿う面である。端面21cは、タブ積層体21の先端に向かうに連れてタブ積層体21の厚みが小さくなるようにXY平面に対して傾斜した面である。
【0050】
タブ積層体21は、Z軸方向において、集電板16と保護板23との間に配置される。すなわち、タブ積層体21は、Z軸方向において集電板16上に配置される。保護板23は、Z軸方向においてタブ積層体21上に配置される。保護板23は、集電板16と接触しておらず、保護板23と集電板16とは、タブ積層体21を積層方向に挟んで離間している。タブ積層体21は保護板23よりも厚く、集電板16はタブ積層体21よりも厚い。保護板23の厚みは、タブ14bの厚みよりも大きく、集電板16の厚みよりも小さい。電極組立体3は、保護板23及び集電板16を備えなくてもよい。
【0051】
集電板16のY軸方向における長さは、タブ積層体21のY軸方向における長さ(端面21a,21b間の距離)よりも大きくなっている。Y軸方向において、集電板16のY軸方向における外側端部の位置は、本体14aのY軸方向における端部の位置と一致している。保護板23のY軸方向における長さは、タブ積層体21のY軸方向における長さと略同じである。
【0052】
タブ積層体21は、タブ積層体21の端面21a,21bからそれぞれ内側に位置する溶接部Wを有する。タブ積層体21の端面21a,21bにおいてタブ積層体21の積層方向に直交する方向(例えばX軸方向)における溶接部Wの最大長さW2は、タブ積層体21の積層方向(例えばZ軸方向)とタブ積層体21の積層方向に直交する方向(例えばX軸方向)との両方に直交する方向(例えばY軸方向)から見たときに、タブ積層体21の積層方向(例えばZ軸方向)における溶接部Wとタブ積層体21とが重なる部分の最大長さW1よりも大きい(
図3参照)。溶接部Wは、端面21a,21bに隣接する集電板16及び保護板23の内部まで延びている。端面21a,21bにおいて、溶接部WのX軸方向における長さは、保護板23のX軸方向における長さと略等しいか、又は保護板23のX軸方向における長さよりも短いことが好ましい。これにより、タブ積層体21のタブ14bがX軸方向において位置ずれした場合(例えば公差による位置ずれがある場合)であっても安定して溶接部Wを形成することができる。なお、溶接部WのX軸方向における長さが保護板23のX軸方向における長さと略等しい場合、位置ずれにより溶接部WがX軸方向において保護板23の外側にはみ出す可能性がある。また、溶接部WのX軸方向における長さが保護板23のX軸方向における長さよりも長い場合、溶接部WがX軸方向において保護板23の外側にはみ出す。それらの場合であっても、溶接部Wを形成することは可能である。
【0053】
図4に示されるように、タブ積層体21の積層方向(Z軸方向)に直交すると共にタブ積層体21の端面21a,21bと交差するタブ積層体21の断面(例えばXY断面)において、溶接部Wの境界線Waは、タブ積層体21の端面21a,21b及びタブ積層体21の端面21a,21bの法線方向(例えばY軸方向)の両方に対して傾斜した方向に延びている。境界線Waは、タブ積層体21の先端から電極本体42に向かう方向に延びてもよい。例えば、溶接部Wは2つの境界線Waを有しており、後述するエネルギービームB(
図6参照)の照射によりエネルギービームBの周囲に形成される溶融池の形状に応じて、溶接部Wの外面から内側に向かうに連れて2つの境界線Waの間隔が狭くなっている。溶接池は、エネルギービームBの照射方向において、エネルギービームBの照射対象物の表面から内側に向けて先細るように形成される。
【0054】
同様に、タブ積層体25は、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)に沿って延在するタブ積層体25の端面25a,25b,25cを備える。端面25a,25bは、タブ積層体25を挟む面であり、端面25cは端面25a,25bを繋ぐ面である。すなわち、端面25a,25bは、タブ積層体25を挟んで互いに反対側に配置されている。端面25a,25bは、XZ平面に沿う面である。端面25cは、タブ積層体25の先端に向かうに連れてタブ積層体25の厚みが小さくなるようにXY平面に対して傾斜した面である。
【0055】
タブ積層体25は、Z軸方向において、集電板19と保護板27との間に配置される。すなわち、タブ積層体25は、Z軸方向において集電板19上に配置される。保護板27は、Z軸方向においてタブ積層体25上に配置される。保護板27は、集電板19と接触しておらず、保護板27と集電板19とは、タブ積層体25を積層方向に挟んで離間している。タブ積層体25は保護板27よりも厚く、集電板19はタブ積層体25よりも厚い。保護板27の厚みは、タブ17bの厚みよりも大きく、集電板19の厚みよりも小さい。電極組立体3は、保護板27及び集電板19を備えなくてもよい。
【0056】
集電板19のY軸方向における長さは、タブ積層体25のY軸方向における長さ(端面25a,25b間の距離)よりも大きくなっている。Y軸方向において、集電板19のY軸方向における外側端部の位置は、本体17aのY軸方向における端部の位置と一致している。保護板27のY軸方向における長さは、タブ積層体25のY軸方向における長さと略同じである。
【0057】
タブ積層体25は、タブ積層体25の端面25a,25bからそれぞれ内側に位置する溶接部Wを有する。タブ積層体25の端面25bは、タブ積層体21の端面21bと対向している。よって、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bは、Y軸方向に沿って配列される。タブ積層体25の端面25a,25bにおいてタブ積層体25の積層方向に直交する方向(例えばX軸方向)における溶接部Wの最大長さW2は、タブ積層体25の積層方向(例えばZ軸方向)とタブ積層体25の積層方向に直交する方向(例えばX軸方向)との両方に直交する方向(例えばY軸方向)から見たときに、タブ積層体25の積層方向(例えばZ軸方向)における溶接部Wとタブ積層体25とが重なる部分の最大長さW1よりも大きい(
図3参照)。溶接部Wは、端面25a,25bに隣接する集電板19及び保護板27の内部まで延びている。端面25a,25bにおいて、溶接部WのX軸方向における長さは、保護板27のX軸方向における長さと略等しいか、又は保護板27のX軸方向における長さよりも短いことが好ましい。これにより、タブ積層体25のタブ17bがX軸方向において位置ずれした場合(例えば公差による位置ずれがある場合)であっても安定して溶接部Wを形成することができる。なお、溶接部WのX軸方向における長さが保護板27のX軸方向における長さと略等しい場合、位置ずれにより溶接部WがX軸方向において保護板27の外側にはみ出す可能性がある。また、溶接部WのX軸方向における長さが保護板27のX軸方向における長さよりも長い場合、溶接部WがX軸方向において保護板27の外側にはみ出す。それらの場合であっても、溶接部Wを形成することは可能である。
【0058】
図4に示されるように、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)に直交すると共にタブ積層体25の端面25a,25bと交差するタブ積層体25の断面(例えばXY断面)において、溶接部Wの境界線Waは、タブ積層体25の端面25a,25b及びタブ積層体25の端面25a,25bの法線方向(例えばY軸方向)の両方に対して傾斜した方向に延びている。境界線Waは、タブ積層体25の先端から電極本体44に向かう方向に延びてもよい。例えば、溶接部Wは2つの境界線Waを有しており、後述するエネルギービームB(
図6参照)の照射によりエネルギービームBの周囲に形成される溶融池の形状に応じて、溶接部Wの外面から内側に向かうに連れて2つの境界線Waの間隔が狭くなっている。溶接池は、エネルギービームBの照射方向において、エネルギービームBの照射対象物の表面から内側に向けて先細るように形成される。
【0059】
第1実施形態の電極組立体3では、タブ積層体21,25のXY断面において、溶接部Wの境界線Waが、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25b及びタブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bの法線方向の両方に対して傾斜した方向に延びている。境界線Waの延びる方向は、例えば、上述のように、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bに照射されるエネルギービームBの照射方向によって制御される。
【0060】
第1実施形態の電極組立体3は、所望の方向に延びる境界線Waを有する溶接部Wを備える。境界線Waの延びる方向は、例えばエネルギービームBによって溶接部Wを形成する場合に、エネルギービームBの照射方向を調整することによって制御される。その際、例えばタブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bに対向する物体が存在する場合であっても、エネルギービームBが当該物体に遮蔽されないようにエネルギービームBの照射方向を調整できる。そのため、電極組立体3の設計自由度が高い。
【0061】
また、電極組立体3は積層型の電極組立体であるので、巻回型の電極組立体に比べて個々の電極(正極11及び負極12)がそれぞれ独立に動くことが可能である。よって、積層型の電極組立体では、巻回型の電極組立体に比べて、正極11の本体14a及び負極12の本体17aがX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方において位置ずれする可能性がある。さらに、本体14a,17aの位置ずれに加えて、タブ14b,17bもX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方において位置ずれする可能性がある。したがって、XY平面におけるタブ14b,17bの位置ずれの最大値が大きくなる可能性がある。そのような場合であっても、電極組立体3ではタブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bに溶接部Wが形成されているので、複数のタブ14b,17b間に未溶接部が生じにくい。また、容量の大きな電池の電極組立体3のタブ積層体21,25は比較的厚くなり、タブ積層体21,25の厚さに応じて溶接に必要なエネルギーも大きくなる。その場合、エネルギービームBの照射による溶接を行うと、消耗品である溶接電極を用いる抵抗溶接に比べて、溶接装置のランニングコストを低減できる。
【0062】
電極組立体3が保護板23,27を備えていると、保護板23,27を介して複数のタブ14b,17bが押圧されるため複数のタブ14b,17b間に隙間が生じ難くなる。よって、溶接を行う際に溶接部Wにボイドが発生し難い。
【0063】
タブ積層体21の積層方向を含みタブ積層体21の端面21a,21bに直交するタブ積層体21の断面(例えばYZ断面)において、タブ積層体21の積層方向に直交する方向における溶接部Wの最大溶接深さWdは、2mm未満であってもよいし、1.5mm以下であってもよいし、1.2mm以下であってもよいし、0.1mm超であってもよいし、0.3mm以上であってもよい。同様に、タブ積層体25の積層方向を含みタブ積層体25の端面25a,25bに直交するタブ積層体25の断面(例えばYZ断面)において、タブ積層体25の積層方向に直交する方向における溶接部Wの最大溶接深さWdは2mm未満であってもよいし、1.5mm以下であってもよいし、1.2mm以下であってもよいし、0.1mm超であってもよいし、0.3mm以上であってもよい。最大溶接深さWdを2mm未満とすると、例えばエネルギービームBの照射に起因するスパッタ粒子の発生を抑制できる。特に、最大溶接深さWdを1.2mm以下とすると、スパッタ粒子の発生が顕著に抑制される(
図15参照)。
【0064】
タブ積層体21の積層方向に直交するタブ積層体21の断面(例えばXY断面)において、溶接部Wの最大面積は、例えば4〜40mm
2である。同様に、タブ積層体25の積層方向に直交するタブ積層体25の断面(例えばXY断面)において、溶接部Wの最大面積は、例えば4〜40mm
2である。溶接部Wの最大面積を4mm
2以上とすると、溶接部Wの電気抵抗値を十分に低減できる。
【0065】
上述のように、電極組立体3において、タブ積層体21の端面21a,21bにおいてタブ積層体21の積層方向に直交する方向(例えばX軸方向)における溶接部Wの最大長さW2は、タブ積層体21の積層方向(例えばZ軸方向)とタブ積層体21の積層方向に直交する方向(例えばX軸方向)との両方に直交する方向(例えばY軸方向)から見たときに、タブ積層体21の積層方向(例えばZ軸方向)における溶接部Wとタブ積層体21とが重なる部分の最大長さW1よりも大きい(
図3参照)。よって、タブ積層体21の端面21a,21bにおいて、タブ積層体21の積層方向に交差する方向に溶接部Wが広がる。その結果、溶接部Wにおいて電流が積層方向に流れる際に、複数のタブ14b間の電気抵抗値を低減できる。同様に、タブ積層体25の端面25a,25bにおいてタブ積層体25の積層方向に直交する方向(例えばX軸方向)における溶接部Wの最大長さW2は、タブ積層体25の積層方向(例えばZ軸方向)とタブ積層体25の積層方向に直交する方向(例えばX軸方向)との両方に直交する方向(例えばY軸方向)から見たときに、タブ積層体25の積層方向(例えばZ軸方向)における溶接部Wとタブ積層体25とが重なる部分の最大長さW1よりも大きい。よって、タブ積層体25の端面25a,25bにおいて、タブ積層体25の積層方向に交差する方向に溶接部Wが広がる。その結果、溶接部Wにおいて電流が積層方向に流れる際に、複数のタブ17b間の電気抵抗値を低減できる。
【0066】
タブ積層体21が、タブ積層体21の積層方向において保護板23と集電板16との間に配置され、タブ積層体21の積層方向における保護板23の厚みは、タブ積層体21の積層方向における集電板16の厚みよりも小さくてもよい。この場合、保護板23の厚みが比較的小さくなるので、保護板23の熱容量とタブ14bの熱容量との差を小さくできる。よって、保護板23とタブ14bとの接触箇所における溶接部Wの品質が向上する。タブ積層体21の積層方向における保護板23の厚みは、タブ積層体21の積層方向におけるタブ14bの厚みよりも大きくてもよい。
【0067】
保護板23の厚みは、0.1〜0.5mmであってもよいし、0.1〜0.2mmであってもよい。保護板23の厚みが0.1mm未満であると、保護板23がタブ14bを押圧する力が小さくなるので、溶接時にタブ14bが動き易くなる傾向にある。保護板23の厚みが0.5mm超であると、溶接時に保護板23を溶融させるためのエネルギーが大きくなる傾向にある。エネルギーを大きくするためにエネルギービームBの出力を上げると、エネルギービームBの照射に起因するスパッタ粒子が発生し易くなる。タブ14bの厚みは、例えば5〜30μmである。タブ積層体21の厚みは例えば0.3〜2.4mmであってもよいし、0.6〜1.0mmであってもよい。
【0068】
同様に、タブ積層体25が、タブ積層体25の積層方向において保護板27と集電板19との間に配置され、タブ積層体25の積層方向における保護板27の厚みは、タブ積層体25の積層方向における集電板19の厚みよりも小さくてもよい。この場合、保護板27の厚みが比較的小さくなるので、保護板27の熱容量とタブ17bの熱容量との差を小さくできる。よって、保護板27とタブ17bとの接触箇所における溶接部Wの品質が向上する。タブ積層体25の積層方向における保護板27の厚みは、タブ積層体25の積層方向におけるタブ17bの厚みよりも大きくてもよい。
【0069】
保護板27の厚みは、例えば0.1〜0.5mmであってもよいし、0.1〜0.2mmであってもよい。保護板27の厚みが0.1mm未満であると、保護板27がタブ17bを押圧する力が小さくなるので、溶接時にタブ17bが動き易くなる傾向にある。保護板27の厚みが0.5mm超であると、溶接時に保護板27を溶融させるためのエネルギーが大きくなる傾向にある。エネルギーを大きくするためにエネルギービームBの出力を上げると、エネルギービームBの照射に起因するスパッタ粒子が発生し易くなる。タブ17bの厚みは、例えば5〜30μmである。タブ積層体25の厚みは例えば0.3〜2.4mmであってもよいし、0.6〜1.0mmであってもよい。
【0070】
図5〜
図9は、第1実施形態に係る電極組立体の製造方法の一工程を示す図である。
図3に示される電極組立体3は、例えば以下の方法により製造される。
【0071】
(タブ積層体の準備工程)
まず、
図5に示されるように、複数のタブ積層体21,25を準備する。
図5(A)はZ軸方向から見たタブ積層体21,25を示す図であり、
図5(B)はY軸方向から見たタブ積層体25を示す図である。例えば、まず、集電板16,19上にそれぞれタブ14b,17bを積層することによりタブ積層体21,25を形成する。その後、タブ積層体21,25上にそれぞれ保護板23,27を載置する。タブ積層体21,25は、例えば治具により保護板23,27を介して押圧されるが、押圧されなくてもよい。
【0072】
(溶接部の形成工程)
次に、
図6に示されるように、タブ積層体25(第1のタブ積層体)の端面25aにエネルギービームBを照射する。
図6(A)はZ軸方向から見たタブ積層体21,25を示す図であり、
図6(B)はY軸方向から見たタブ積層体25を示す図である。エネルギービームBは、照射装置30からタブ積層体25の端面25aに向けて照射される。照射装置30は、例えばレンズ及びガルバノミラーを含むスキャナヘッドである。スキャナヘッドにはファイバを介してビーム発生装置が接続される。照射装置30は、例えばプリズム等の屈折式又は回折光学素子(DOE:diffractive optical element)等の回折系の光学系から構成されてもよい。
【0073】
タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)に直交すると共にタブ積層体25の端面25aと交差する平面(例えばXY平面)にエネルギービームBの照射方向を投影した方向Jは、当該平面(例えばXY平面)において、タブ積層体25の端面25a及びタブ積層体25の端面25aの法線方向(例えばY軸方向)の両方に対して傾斜している。エネルギービームBは、タブ積層体25の先端から電極本体44に向かう方向に照射されてもよい。この場合、エネルギービームBが電極本体44に遮蔽されることを抑制できる。エネルギービームBの照射方向は、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)に直交すると共にタブ積層体25の端面25aと交差する平面(例えばXY平面)内の方向であってもよいし、当該平面(例えばXY平面)に交差する方向であってもよい。XY平面において、タブ積層体25の端面25aと方向Jとのなす角度のうち小さい方の角度θは、5〜85°であってもよく、10〜80°であってもよく、45〜75°であってもよい。エネルギービームBは、溶接を行うことができる高エネルギービームである。エネルギービームBは、例えばレーザービーム又は電子ビームである。エネルギービームBの照射は、ノズル32から供給される不活性ガスGの雰囲気中で行われる。
【0074】
エネルギービームBは、例えば治具により集電板19及び保護板27を介してタブ積層体25をZ軸方向に押圧した状態でタブ積層体25の端面25aに照射される。
【0075】
集電板16,19、タブ積層体21,25及び保護板23,27を含むワークは、例えばベルトコンベア等の搬送ステージ40上に載置され、エネルギービームBの照射位置までY軸方向に搬送される。
【0076】
エネルギービームBは、タブ積層体25の端面25aにおいて、Z軸方向に交差する方向(X軸方向)に沿って走査される。第1実施形態では、エネルギービームBをZ軸方向に変位させながらX軸方向に沿って走査する。例えば、エネルギービームBをZ軸方向に往復変位(ウォブリング)させながらX軸方向に沿って走査する。エネルギービームBの照射スポットのZ軸方向における変位量は、タブ積層体25の厚みよりも大きい。エネルギービームBの照射スポットは、タブ積層体25の端面25aにおいて、X軸方向に沿った軸線H1上の位置P1から位置P2まで移動する。例えば、位置P1,P2は、Z軸方向においてタブ積層体25の端面25aの中心に位置する。エネルギービームBは、例えば、タブ積層体25の端面25aにおいてX軸方向に沿って中心点を移動させ、当該中心点を中心にXZ平面においてエネルギービームBの照射スポットを回転させながら走査される。回転の直径がタブ積層体25の厚みよりも大きいと、タブ積層体25の端面25a、集電板19及び保護板27を全体的に溶接できるため好ましい。
【0077】
上述のようにエネルギービームBを照射することによって、
図7に示されるように、タブ積層体25の端面25aから内側に溶接部Wが形成される。
図7(A)はZ軸方向から見たタブ積層体21,25を示す図であり、
図7(B)はY軸方向から見たタブ積層体25を示す図である。タブ積層体25のXY断面において、溶接部Wの境界線Waは、タブ積層体25の端面25a及びタブ積層体25の端面25aの法線方向の両方に対して傾斜した方向に延びている。タブ積層体25の端面25aにおいてタブ積層体25の積層方向に直交する方向(例えばX軸方向)における溶接部Wの最大長さW2は、タブ積層体25の積層方向(例えばZ軸方向)とタブ積層体25の積層方向に直交する方向(例えばX軸方向)との両方に直交する方向(例えばY軸方向)から見たときに、タブ積層体25の積層方向(例えばZ軸方向)における溶接部Wとタブ積層体25とが重なる部分の最大長さW1よりも大きい。なお、最大長さW1はZ軸方向における溶接部Wの最大長さより小さい。
【0078】
続いて、
図8に示されるように、タブ積層体21(第2のタブ積層体)の端面21bにも同様にエネルギービームBを照射する。すなわち、タブ積層体21の積層方向(Z軸方向)に直交すると共にタブ積層体21の端面21bと交差する平面(例えばXY平面)にエネルギービームBの照射方向を投影した方向Jは、当該平面(例えばXY平面)において、タブ積層体21の端面21b及びタブ積層体21の端面21bの法線方向(例えばY軸方向)の両方に対して傾斜している。XY平面において、タブ積層体21の端面21bと方向Jとのなす角度のうち小さい方の角度θは、5〜85°であってもよく、10〜80°であってもよく、45〜75°であってもよい。これにより、
図9に示されるように、タブ積層体21の端面21bから内側にも溶接部Wが形成される。
【0079】
エネルギービームBは、タブ積層体25の端面25bとタブ積層体21の端面21bとが互いに対向配置された状態で、端面21bに照射される。タブ積層体21,25の先端間のY軸方向における距離をL1、端面21bにおけるエネルギービームBの照射位置とタブ積層体25の先端との間のX軸方向における距離をL2とした場合に、tanθ≦L1/L2であってもよい。この場合、端面21bに照射されるエネルギービームBが、端面21bに対向配置されたタブ積層体25に遮蔽されることを抑制できる。タブ積層体21,25の突出方向がX軸方向に沿っている場合、θ≦25°が好ましい。
【0080】
エネルギービームBを照射する際に、電極本体42,44と溶接部Wとの間に配置された遮蔽部材50が、タブ積層体21の端面21bによって反射されたエネルギービームBを遮蔽してもよい。遮蔽部材50は、端面21bによって反射されたエネルギービームBを反射する反射体であってもよいし、端面21bによって反射されたエネルギービームBを吸収する吸収体であってもよい。遮蔽部材50が配置された状態で、タブ積層体21の端面21bにエネルギービームBを照射すると、端面21bによって反射されたエネルギービームBが電極本体42,44にダメージを与えることが抑制される。
【0081】
続いて、タブ積層体21の端面21bと同様に、タブ積層体25の端面25bにエネルギービームBを照射することにより、タブ積層体25の端面25bから内側に溶接部Wを形成する(
図4参照)。エネルギービームBは、タブ積層体25の端面25bとタブ積層体21の端面21bとが互いに対向配置された状態で、端面25bに照射される。タブ積層体21,25の先端間のY軸方向における距離をL1、端面25bにおけるエネルギービームBの照射位置とタブ積層体21の先端との間のX軸方向における距離をL2とした場合に、tanθ≦L1/L2であってもよい。この場合、端面25bに照射されるエネルギービームBが、端面25bに対向配置されたタブ積層体21に遮蔽されることを抑制できる。また、エネルギービームBを端面25bに照射する際に、電極本体42,44と溶接部Wとの間に遮蔽部材50を配置することによって、タブ積層体25の端面25bによって反射されたエネルギービームBを遮蔽してもよい。この場合、タブ積層体25の端面25bによって反射されたエネルギービームBが電極本体42,44にダメージを与えることが抑制される。エネルギービームBが赤外線のレーザー光であると、銅を含むタブ17bによって反射されるエネルギービームBの反射率は、アルミニウムを含むタブ14bによって反射されるエネルギービームBの反射率に比べて高くなる。そのような場合に、遮蔽部材50は特に有効である。その後、タブ積層体25の端面25bと同様に、タブ積層体21の端面21aにエネルギービームBを照射することにより、タブ積層体21の端面21aから内側に溶接部Wを形成する(
図4参照)。遮蔽部材50は、端面25a,21aにエネルギービームBを照射する際に使用されてもよい。この場合、端面25a,21aによって反射されたエネルギービームBが電極本体42,44にダメージを与えることが抑制される。
【0082】
エネルギービームBの照射の際、タブ積層体21,25を含むワークは、搬送ステージ40によって、エネルギービームBの照射位置までY軸方向に搬送される。第1の照射装置30を用いて、タブ積層体21,25の端面21a,25bにエネルギービームBを照射し、第2の照射装置30を用いて、タブ積層体21,25の端面21b,25aにエネルギービームBを照射してもよい。また、1つの照射装置30をモータ等の駆動装置により移動させてエネルギービームBの照射方向を変えることによって、端面25a,21b,25b,21aにエネルギービームBを順に照射してもよい。
【0083】
上記工程を経ることによって、電極組立体3が製造される。その後、タブ積層体21,25を折り曲げた電極組立体3をケース2内に収容し、蓄電装置1を製造することができる。
【0084】
以上説明したように、第1実施形態の電極組立体の製造方法では、例えばタブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bに対向する物体が存在する場合であっても、エネルギービームBが当該物体に遮蔽されないようにエネルギービームBの照射方向を調整できる。そのため、例えばタブ積層体21,25の端面21b,25bに溶接部Wが位置するように電極組立体3を設計できるので、電極組立体3の設計自由度が高い。
【0085】
図8に示されるように、タブ積層体25の端面25bとタブ積層体21の端面21bとが互いに対向配置された状態で、エネルギービームBを端面21bに照射する場合、タブ積層体25がエネルギービームBを遮蔽しないようにエネルギービームBの照射装置30を配置し易くなる。一方、Y軸方向にエネルギービームを照射する場合、タブ積層体25の端面25bとタブ積層体21の端面21bとの間の距離が狭いため、比較的大きな装置であるエネルギービームの照射装置を端面25bと端面21bとの間に配置することは難しい。同様に、エネルギービームBを端面25bに照射する場合、タブ積層体21がエネルギービームBを遮蔽しないようにエネルギービームBの照射装置30を配置し易くなる。
【0086】
また、本実施形態では、
図8に示されるように、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bがタブ積層体21,25の搬送方向(Y軸方向)に沿って配列される。この場合、Y軸方向にタブ積層体21,25を搬送することによって、端面21a,21b,25a,25bにエネルギービームBを照射することができる。そのため、電極組立体3の生産性が向上する。例えば、まず、端面25a,21bにエネルギービームBを順に照射することができる。続いて、端面25b,21aにエネルギービームBを順に照射することができる。
【0087】
タブ積層体25の端面25a,25bのそれぞれにエネルギービームBを照射することによって溶接部Wを形成する場合、互いに反対側に配置された2つの端面25a,25bにおいて共に複数のタブ17b間に未溶接部が生じる状況が生じにくい。特に互いに反対側に配置された2つの端面25a,25bに溶接部Wを形成できた場合、タブ17b間に剥離を起こさせる応力が掛かったとしても、応力に対する耐性が強い。よって、タブ積層体25の端面25cに溶接部Wを形成する必要がない。そのため、タブ積層体25の端面25cを含む先端部をYZ平面に沿って切断する工程が不要になるので、電極組立体3の生産性が向上する。あるいは、端面25cを含む先端部を切断せずに端面25cを溶接するならば、積層厚さが場所ごとに異なるタブ積層体25に対して溶接を行うことになる。その場合、溶接に必要なエネルギーを場所ごとに変える必要があるが、端面25cを溶接しなければそのような必要もない。タブ積層体21についても同様に、互いに反対側に配置された2つの端面21a,21bにおいて共に複数のタブ14b間に未溶接部が生じる状況が生じにくい。よって、タブ積層体21の端面21cに溶接部Wを形成する必要がない。
【0088】
タブ積層体21の端面21a,21bにおいてタブ積層体21の積層方向に直交する方向における溶接部Wの最大長さW2が、タブ積層体21の積層方向(例えばZ軸方向)とタブ積層体21の積層方向に直交する方向(例えばX軸方向)との両方に直交する方向(例えばY軸方向)から見たときに、タブ積層体21の積層方向(例えばZ軸方向)における溶接部Wとタブ積層体21とが重なる部分の最大長さW1よりも大きい。同様に、タブ積層体25の端面25a,25bにおいてタブ積層体25の積層方向に直交する方向における溶接部Wの最大長さW2が、タブ積層体25の積層方向(例えばZ軸方向)とタブ積層体25の積層方向に直交する方向(例えばX軸方向)との両方に直交する方向(例えばY軸方向)から見たときに、タブ積層体25の積層方向(例えばZ軸方向)における溶接部Wとタブ積層体25とが重なる部分の最大長さW1よりも大きい。このような場合、溶接部Wの機械的強度が高まるので、例えば組立作業又は外力により電極組立体3に応力が生じても溶接部Wが破壊され難い。また、タブ積層体21の端面21a,21bにおいて、タブ積層体21の積層方向に直交する方向に溶接部Wを大きくすることができる。同様に、タブ積層体25の端面25a,25bにおいて、タブ積層体25の積層方向に直交する方向に溶接部Wを大きくすることができる。その結果、溶接部Wの熱拡散性が向上するので、エネルギービームBの照射に起因するスパッタ粒子の発生を抑制できる。
【0089】
図10〜
図11は、第2実施形態に係る電極組立体の製造方法の一工程を示す図である。
図10(A)及び
図11(A)はX軸方向から見たタブ積層体21,25を示す図であり、
図10(B)及び
図11(B)はZ軸方向から見たタブ積層体21,25を示す図である。第2実施形態では、タブ積層体21,25の端面21c,25cにそれぞれ溶接部Wが形成されること以外は第1実施形態と同様に電極組立体3を製造することができる。
【0090】
タブ積層体25の端面25cは、タブ積層体25の先端に位置しており、YZ平面に沿う面である。端面25cは、タブ積層体25の先端を切断することによって形成されてもよいし、異なる長さのタブ17bを用いてタブ17bを積層することによって形成されてもよい。
【0091】
図10に示されるように、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)に直交すると共にタブ積層体25の端面25cと交差する平面(例えばXY平面)にエネルギービームBの照射方向を投影した方向Jは、当該平面(例えばXY平面)において、タブ積層体25の端面25c及びタブ積層体25の端面25cの法線方向(例えばX軸方向)の両方に対して傾斜している。エネルギービームBは、端面25cにおいて、Z軸方向に変位(ウォブリング)させながらY軸方向に沿って走査される。エネルギービームBの照射スポットは、端面25cにおいて、Y軸方向に沿った軸線H1上の位置P4から位置P5まで移動する。例えば、位置P4,P5は、Z軸方向において端面25cの中心に位置する。エネルギービームBは、例えば、端面25cにおいてY軸方向に沿って中心点を移動させ、当該中心点を中心にYZ平面においてエネルギービームBの照射スポットを回転させながら走査される。
【0092】
図11に示されるように、エネルギービームBの照射により、タブ積層体25の端面25cから内側に溶接部Wが形成される。溶接部Wの境界線Waは、タブ積層体25のXY断面において、端面25c及び端面25cの法線方向(例えばX軸方向)の両方に対して傾斜した方向に延びている。
【0093】
同様に、エネルギービームBをタブ積層体21の端面21cに照射することによって、タブ積層体21の端面21cにも溶接部Wが形成される。溶接部Wの境界線Waは、タブ積層体21のXY断面において、端面21c及び端面21cの法線方向(例えばX軸方向)の両方に対して傾斜した方向に延びている。
【0094】
第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、第2実施形態では、タブ積層体25の端面25a,25bに加えて端面25cにも溶接部Wが形成されるので、タブ17b間の電気抵抗値を低減することができる。同様に、端面21cにも溶接部Wを形成することによって、タブ14b間の電気抵抗値も低減することができる。タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bに溶接部Wが形成されず、タブ積層体21,25の端面21c,25cにのみ溶接部Wが形成されてもよい。
【0095】
図12〜
図13は、第3実施形態に係る電極組立体の製造方法の一工程を示す図である。
図12(A)及び
図13(A)はX軸方向から見たタブ積層体25を示す図であり、
図12(B)及び
図13(B)はZ軸方向から見たタブ積層体25を示す図である。第3実施形態では、積層型の電極組立体3に代えて巻回型の電極組立体3を製造すること以外は第1実施形態と同様に電極組立体3を製造することができる。
【0096】
巻回型の電極組立体3は、積層型の電極組立体3と同様に、タブ積層体21,25を備える。タブ積層体21,25はX軸方向において互いに反対側に配置される。タブ積層体25では、タブ17bが、X軸方向の軸を中心に巻回された後、Z軸方向に圧縮されている。そのため、タブ積層体25は、Z軸方向に積層されたタブ17bを有する。具体的には、タブ17bにおける複数の部分がZ軸方向に積層される。溶接部Wは、積層されたタブ17b同士を接続する。具体的には、溶接部Wによって、タブ17bにおける複数の部分同士が接続される。巻回型の電極組立体3において、タブ積層体25は端面25a,25bを備えておらず、先端に位置する端面25cのみを備えている。同様に、タブ積層体21は端面21a,21bを備えておらず、先端に位置する端面21cのみを備えている。
【0097】
図12に示されるように、第3実施形態と同様に、タブ積層体25の端面25cにエネルギービームBが照射される。
【0098】
図13に示されるように、エネルギービームBの照射により、タブ積層体25の端面25cから内側に溶接部Wが形成される。溶接部Wの境界線Waは、タブ積層体25のXY断面において、端面25c及び端面25cの法線方向(例えばX軸方向)の両方に対して傾斜した方向に延びている。
【0099】
同様に、エネルギービームBをタブ積層体21の端面21cに照射することによって、タブ積層体21の端面21cにも溶接部Wが形成される。溶接部Wの境界線Waは、タブ積層体21のXY断面において、端面21c及び端面21cの法線方向(例えばX軸方向)の両方に対して傾斜した方向に延びている。
【0100】
第3実施形態では、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0101】
図14は、変形例に係る溶接部を有する電極組立体の一部を示す図である。
図14(A)は、第1変形例に係る溶接部Wを有する、Y軸方向から見たタブ積層体25を示す図である。
図14(B)は、第2変形例に係る溶接部Wを有する、Y軸方向から見たタブ積層体25を示す図である。第1及び第2変形例では、タブ積層体25の端面25aの法線方向から見て、溶接部Wが、曲線を含む外形形状を有している。そのため、溶接部Wの外形形状の曲線部分において応力が集中し難いので、溶接部Wが剥離し難い。溶接部Wは、曲線によって囲まれる外形形状を有してもよいし、曲線及び直線によって囲まれる外形形状を有してもよい。溶接部Wの外形形状は、応力が集中し易い角部(直線同士が交差する部分)を含んでいない。
【0102】
第1変形例に係る溶接部Wの外形形状は例えば楕円形の一部を含む。
図14(A)に示されるように、タブ積層体25の端面25aにおいてタブ積層体25の積層方向に直交する方向(X軸方向)における溶接部Wの最大長さW2は、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)とタブ積層体25の積層方向に直交する方向(X軸方向)との両方に直交する方向(Y軸方向)から見たときに、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)における溶接部Wとタブ積層体25とが重なる部分の最大長さW1よりも大きい。
【0103】
第2変形例に係る溶接部Wの外形形状は例えば円形の一部を含む。
図14(B)に示されるように、タブ積層体25の端面25aにおいてタブ積層体25の積層方向に直交する方向(X軸方向)における溶接部Wの最大長さW2は、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)とタブ積層体25の積層方向に直交する方向(X軸方向)との両方に直交する方向(Y軸方向)から見たときに、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)における溶接部Wとタブ積層体25とが重なる部分の最大長さW1よりも大きい。最大長さW2は、最大長さW1以下であってもよい。
【0104】
タブ積層体25の端面25b及びタブ積層体21の端面21a,21bのうち少なくとも1つにおいても、溶接部Wが、第1変形例又は第2変形例に係る溶接部Wと同じ形状を有してもよい。
【0105】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記各実施形態の構成要素は任意に組み合わされ得る。
【0106】
以下、実施例に基づいて本発明がより具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0107】
(実施例1)
溶接部Wの最大溶接深さWdが0.1mmとなるように溶接部Wを形成した。
【0108】
(実施例2)
溶接部Wの最大溶接深さWdを0.3mmとしたこと以外は実施例1と同様にして溶接部Wを形成した。
【0109】
(実施例3)
溶接部Wの最大溶接深さWdを1.2mmとしたこと以外は実施例1と同様にして溶接部Wを形成した。溶接部Wの形成に用いたレーザーの出力は1500W、走査速度は24.9mm/secであった。
【0110】
(実施例4)
溶接部Wの最大溶接深さWdを1.5mmとしたこと以外は実施例1と同様にして溶接部Wを形成した。溶接部Wの形成に用いたレーザーの出力は1500W、走査速度は8.3mm/secであった。
【0111】
(実施例5)
溶接部Wの最大溶接深さWdを2mmとしたこと以外は実施例1と同様にして溶接部Wを形成した。
【0112】
(評価結果)
実施例1〜5の評価結果を
図15に示す。レーザービームをタブ積層体の端面に照射している様子を撮像し、得られた映像からレーザービームの照射に起因するスパッタ粒子の数をカウントした。実施例4〜5では、スパッタ粒子の数が、実施例1〜3に比べて顕著に増えた。また、溶接部Wの電気抵抗値を測定した。
図15に示される表中のAは良好な結果が得られたことを示し、BはAよりは良好でない結果が得られたことを示す。実施例2〜4では、実施例1及び5に比べて良好な結果が得られた。
図15の評価結果によれば、溶接部Wの最大溶接深さWdが0.3〜1.5mmであると、スパッタ粒子の数が少なくなった。さらに最大溶接深さWdが0.3〜1.2mmであると、スパッタ粒子の数が顕著に少なくなり、かつ、溶接部Wの電気抵抗値が良好な値となった。