(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記メタクリル樹脂(A)を含む層と前記熱可塑性樹脂(B)を含む層の合計厚みに対する前記熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚みの割合が5〜50%の範囲である請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような状況から、偏光子保護フィルムに好適に使用される、密着性、延伸性、光学等方性、機械強度を併せ持ち、連続生産性に優れた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の特性を満たす熱可塑性樹脂積層体を延伸することにより、連続生産性、密着性、延伸性、光学等方性、機械強度を併せ持つフィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。本発明は、以下の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムを提供するものである。
【0011】
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味するものとする。
【0012】
[1] メタクリル樹脂(A)を含む層の少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂(B)を含む層を有する熱可塑性樹脂積層延伸フィルムであって、前記メタクリル樹脂(A)中の全構成単位の90モル%以上がメタクリル酸メチルであり、前記熱可塑性樹脂(B)の固有複屈折が−0.005〜0.005であり、前記メタクリル樹脂(A)のガラス転移温度TgA(℃)と前記熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度TgB(℃)とが式:5℃<(TgB−TgA)<50℃を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂積層延伸フィルム。
[2] 面内レタデーションReが0.0〜3.0nmであり、かつ厚み方向レタデーションRthが−10.0〜10.0nmの範囲である[1]に記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルム。
[3] 前記熱可塑性樹脂(B)が下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、下記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とを含み、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合が前記熱可塑性樹脂(B)中の全構成単位の合計に対して90〜100モル%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)とのモル比が55:45〜85:15である[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルム。
【化1】
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1〜16の炭化水素基である。)
【化2】
(式中、R3は水素原子またはメチル基であり、R4はシクロヘキシル基または炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシクロヘキシル基である。)
[4] 前記一般式(1)のR1及びR2がメチル基である[3]に記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルム。
[5] 前記一般式(2)のR4がシクロヘキシル基である[3]または[4]に記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルム。
[6] 前記メタクリル樹脂(A)を含む層の両面に前記熱可塑性樹脂(B)を含む層を有する[1]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルム。
[7] 前記延伸が、二軸延伸である[1]〜[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルム。
[8] 少なくとも1つの延伸方向への延伸倍率が1.1〜3.0倍である[1]〜[7]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルム。
[9] 全体の厚さが10〜1000μmである[1]〜[8]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルム。
[10] 前記メタクリル樹脂(A)を含む層と前記熱可塑性樹脂(B)を含む層の合計厚みに対する前記熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚みの割合が5〜50%の範囲である[1]〜[9]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルム。
[11] 前記熱可塑性樹脂(B)を含む層が紫外線吸収剤、抗酸化剤、抗着色剤、抗帯電剤、離型剤、滑剤、染料、及び顔料からなる群より選ばれるいずれか一つ以上を含む[1]〜[10]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルム。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムを含む光学フィルム。
[13] [12]に記載の光学フィルムを含む偏光子保護フィルム。
[14] [1]〜[11]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの製造方法であって、TgB+25(℃)〜TgB+65(℃)の範囲の延伸加工温度で延伸する工程を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により得られる熱可塑性樹脂積層延伸フィルムは、密着性、延伸性、光学等方性、機械強度を有しているため、偏光子保護フィルム等の光学用途に好適に使用することが出来る。さらに本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムは、紫外線吸収剤等の低分子添加剤を添加しても、製膜時にブリードアウトによるロール汚れを生じることが少ないか無いため、連続生産性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で本発明について詳細に説明する。本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムは、メタクリル樹脂(A)を含む層の少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂(B)を含む層が積層されてなる熱可塑性樹脂積層延伸フィルムである。該延伸フィルムは、前記メタクリル樹脂(A)中の全構成単位の90モル%以上がメタクリル酸メチルであり、前記熱可塑性樹脂(B)の固有複屈折が−0.005〜0.005であり、前記メタクリル樹脂(A)のガラス転移温度TgA(℃)と前記熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度TgB(℃)とが式:5℃<(TgB−TgA)<50℃を満たす熱可塑性樹脂積層体を延伸することによって製造することができる。なお、本発明におけるガラス転移温度とは、示差走査熱量測定装置を用い、試料10mg、昇温速度10℃/分で測定し、セカンドヒーティングでの中点法で算出したときの温度である。
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムに用いるメタクリル樹脂(A)は、メタクリル樹脂(A)中の全構成単位の90モル%以上がメタクリル酸メチルであることを特徴とする。好ましくは、メタクリル樹脂(A)中の全構成単位の95〜100モル%がメタクリル酸メチルである。上記のメタクリル樹脂(A)を用いることにより、本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムは、透明性に優れたものになる。
【0016】
本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムに用いるメタクリル樹脂(A)を含む層には、メタクリル樹脂(A)の他に、透明性や光学等方性を損なわない範囲で他の樹脂およびゴム粒子をブレンドすることが出来る。他の樹脂の例としては、例えば、ポリスチレン、メタクリル酸メチル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、マレイミド変性アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリルゴム粒子等が挙げられる。具体的には、レジスファイR−100(電気化学工業(株)製)、XIRAN SZ15170(Polyscope社製)等が挙げられる。
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムに用いる熱可塑性樹脂(B)は、固有複屈折が−0.005〜0.005であり、前記メタクリル樹脂(A)のガラス転移温度TgA(℃)と前記熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度TgB(℃)とが式:5℃<(TgB−TgA)<50℃を満たす熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂(B)の固有複屈折が−0.005より小さい、もしくは0.005より大きい場合、延伸加工時に熱可塑性樹脂(B)を含む層で複屈折が発現してしまうため、好ましくない。また、熱可塑性樹脂(B)の光弾性係数は−1.0×10
−11〜1.0×10
−11m
2/Nの範囲であるとより好ましい。熱可塑性樹脂(B)の光弾性係数が−1.0×10
−11m
2/Nより小さい、もしくは1.0×10
−11m
2/Nより大きい場合、延伸加工時に熱可塑性樹脂(B)を含む層で複屈折が発現しやすくなったり、外部応力による位相差変化が大きくなるため、用途によっては実用的ではない場合がある。また、(TgB−TgA)が5℃以下であると、得られる延伸フィルムに十分な耐熱性が付与されないうえ、延伸加工温度を低くしなければならず、メタクリル樹脂(A)を含む層での複屈折発現の抑制効果が乏しいため、好ましくない。また、(TgB−TgA)が50℃以上であると、延伸加工温度を過剰に高くしなければならず、メタクリル樹脂(A)を含む層の配向度が上がりにくく、十分な機械物性が得られにくいため、実用的ではない。熱可塑性樹脂(B)の固有複屈折が−0.005〜0.005であり、前記メタクリル樹脂(A)のガラス転移温度TgA(℃)と前記熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度TgB(℃)とが式:5℃<(TgB−TgA)<50℃を満たすことにより、延伸加工時の延伸加工温度を熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度TgB(℃)以上であり、TgB+25(℃)〜TgB+65(℃)の範囲で延伸可能になる。そして、メタクリル樹脂(A)を含む層での配向度および応力を低減することで、メタクリル樹脂(A)を含む層での複屈折発現が抑制されるため、得られる延伸フィルムは耐熱性、光学等方性、機械強度に優れたものになる。上記を満たす熱可塑性樹脂の例としては、例えば、ビニル共重合樹脂(B1)、メタクリル酸や無水マレイン酸の構成単位によって耐熱性を向上させた耐熱メタクリル樹脂、ラクトン環構造とスチレン構成単位とを含有するアクリル系共重合体(例えば特許文献1に記載)、環状ポリオレフィン樹脂、メチルメタクリレート−フェニルマレイミド−シクロヘキシルマレイミド共重合体、グルタルイミド構成単位を有するアクリル系共重合体を含有する樹脂組成物等が挙げられるが、メタクリル樹脂(A)を含む層との密着性に優れ、吸水・吸湿時の寸法変化も小さい点から、ビニル共重合樹脂(B1)が最も好ましい。以下ではビニル共重合樹脂(B1)について詳述する。
【0018】
本発明における熱可塑性樹脂(B)として好適に用いられるビニル共重合樹脂(B1)は、下記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(a)と、下記一般式(2’)で示される芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(b’)とを含む熱可塑性樹脂であって、その構成単位(a)と構成単位(b’)の合計に対する構成単位(a)の割合が55〜85モル%であるビニル共重合樹脂(B1’)において、芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(b’)中の芳香族二重結合の70%以上を水素化して得られる熱可塑性樹脂である。すなわち、ビニル共重合樹脂(B1’)は、ビニル共重合樹脂(B1)の芳香族二重結合を水素化する前の熱可塑性樹脂である。
【化3】
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1〜16の炭化水素基である。)
【化4】
(式中、R3は水素原子またはメチル基であり、R4’はフェニル基または炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するフェニル基である。)
ビニル共重合樹脂(B1)において、前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と、前記一般式(2)で表される脂肪族ビニル構成単位(b)とのモル比は、55:45〜85:15の範囲が好ましく、60:40〜80:20の範囲であるとより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と脂肪族ビニル構成単位(b)との合計に対する(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)のモル比が55%未満であると、メタクリル樹脂(A)を含む層との密着性が低くなるので実用的ではない。また、該モル比が85%を超えると、得られる延伸フィルムの吸水・吸湿時の寸法変化が大きくなるうえ、フィルム面の精度悪化が生じる場合があり、好ましくない。
前記(メタ)アクリル酸エステル構成単位(a)と前記脂肪族ビニル構成単位(b)との合計割合は、前記熱可塑性樹脂(B)中の全構成単位の合計に対して90〜100モル%が好ましく、95〜100モル%がより好ましい。
【0019】
ビニル共重合樹脂(B1’)を構成する前記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位(a)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数1〜16の炭化水素基である。構成単位(a)が複数存在する場合、複数存在するR1、R2はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、R2がメチル基、エチル基、ブチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、およびイソボルニル基から選ばれる少なくとも1種である(メタ)アクリル酸エステルモノマーであることが好ましく、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類が挙げられる。構成単位(a)は、より好ましくは、メタアクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルから選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位である。ビニル共重合樹脂(B1’)の構成単位(a)をメタアクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルから選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位とすることで、本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムに用いるビニル共重合樹脂(B1)は透明性に優れたものになる。
【0020】
前記一般式(2’)で表される芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(b’)において、R3は水素原子又はメチル基であり、R4’はフェニル基又は炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するフェニル基である。構成単位(b’)が複数存在する場合、複数存在するR3、R4’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。前記芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α―メチルスチレン、o―メチルスチレン及びp―メチルスチレンから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。より好ましくは、R3が水素原子、R4’がフェニル基である、スチレン由来の構成単位である。構成単位(b’)をスチレン由来の構成単位とすることで、本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムに用いるビニル共重合樹脂(B)は、吸水・吸湿時の寸法安定性に優れたものになる。
【0021】
本発明における熱可塑性樹脂(B)として好適に用いられるビニル共重合樹脂(B1)は、後述する方法により、ビニル共重合樹脂(B1’)の芳香族ビニルモノマー由来の構成単位(b’)中の全芳香族二重結合の70%以上を水素化することにより得られる。ビニル共重合樹脂(B1)は、構成単位(b’)におけるR4’(フェニル基または炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するフェニル基)のフェニル基の芳香族二重結合の一部が水添された構成単位を含んでよく、R4’がフェニル基である構成単位(すなわちフェニル基の芳香族二重結合が水素化していない構成単位)を含んでもよい。R4’のフェニル基の芳香族二重結合の一部が水添された構成単位としては、具体的には、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、α―メチルシクロヘキサン、α―メチルシクロヘキセン、α―メチルシクロヘキサジエン、o―メチルシクロヘキサン、o―メチルシクロヘキセン、o―メチルシクロヘキサジエン、p―メチルシクロヘキサン、p―メチルシクロヘキセン、p―メチルシクロヘキサジエンに由来する構成単位が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種の構成単位を含んでもよい。中でも、シクロヘキサンおよびα―メチルシクロヘキサンから選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を含むことが好ましい。
【0022】
本発明における熱可塑性樹脂(B)として好適に用いられるビニル共重合樹脂(B1)の水素化する前のビニル共重合樹脂(B1’)は、前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、芳香族ビニルモノマーとを重合することにより製造することが出来る。重合には、公知の方法を用いることが出来るが、例えば、塊状重合法、溶液重合法などにより製造することが出来る。塊状重合法は、上記モノマー及び重合開始剤を含むモノマー組成物を完全混合槽に連続的に供給し、100〜180℃で連続重合する方法等により行われる。上記モノマー組成物は、必要に応じて連鎖移動剤を含んでもよい。
【0023】
重合開始剤は特に限定されないが、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過酸化ベンゾイル、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0024】
連鎖移動剤は必要に応じて使用し、例えば、α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
【0025】
溶液重合法に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、イソ酪酸メチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒を挙げることが出来る。
【0026】
本発明における熱可塑性樹脂(B)として好適に用いられるビニル共重合樹脂(B1)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと芳香族ビニルモノマーを重合してビニル共重合樹脂(B1’)を得た後に、該ビニル共重合樹脂(B1’) における芳香族ビニルモノマー由来の構成単位中の芳香族二重結合の70%以上を水素化して得られる。上記水素化反応に用いられる溶媒は、前記の重合溶媒と同じであっても異なっていてもよい。例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、イソ酪酸メチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒を挙げることが出来る。
【0027】
水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることが出来る。例えば、水素圧力3〜30MPa、反応温度60〜250℃でバッチ式あるいは連続流通式で行うことが出来る。温度を60℃以上とすることにより反応時間がかかり過ぎることがなく、また250℃以下とすることにより分子鎖の切断やエステル部位の水素化を起こすことが少ない。
【0028】
水素化反応に用いられる触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ルテニウム、ロジウム等の金属又はそれら金属の酸化物あるいは塩あるいは錯体化合物を、カーボン、アルミナ、シリカ、シリカ・アルミナ、珪藻土等の多孔性担体に担持した固体触媒等が挙げられる。
【0029】
本発明における熱可塑性樹脂(B)として好適に用いられるビニル共重合樹脂(B1)は、前記ビニル共重合樹脂(B1’)において、芳香族ビニルモノマー由来の構成単位中の芳香族二重結合の70%以上を水素化して得られたものである。即ち、芳香族ビニルモノマー由来の構成単位中に残存する芳香族二重結合の割合は30%以下である。30%を超える範囲であるとビニル共重合樹脂(B1)の透明性が低下し、その結果、本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの透明性が低下する場合がある。上記芳香族ビニルモノマー由来の構成単位中に残存する芳香族二重結合の割合は、好ましくは10%未満の範囲であり、より好ましくは5%未満の範囲である。また、ビニル共重合樹脂(B1)は、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、難燃剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、染顔料等の、一般に用いられる添加剤を含んでも良い。
【0030】
ビニル共重合樹脂(B1)の重量平均分子量は、特に制限はないが、強度及び成形性の観点から、40,000〜500,000であることが好ましく、50,000〜300,000であることがより好ましい。上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0031】
ビニル共重合樹脂(B1)のガラス転移温度は110〜160℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは120〜145℃である。ビニル共重合樹脂(B1)のガラス転移温度が110℃未満であると、本発明で提供される熱可塑性樹脂積層延伸フィルムが高温環境あるいは高湿環境において寸法変化や反りを生じる場合がある。また、ビニル共重合樹脂(B1)のガラス転移温度が160℃を超えると、延伸加工時に延伸加工温度を180℃以上にしなければならないため、メタクリル樹脂(A)を含む層の配向度が上がりにくく、十分な機械物性を得られない場合がある。
【0032】
本発明における熱可塑性樹脂(B)として好適に用いられるビニル共重合樹脂(B1)を含む層には、ビニル共重合樹脂(B1)の他に、透明性を損なわない範囲で他の樹脂をブレンドすることが出来る。他の樹脂の例としては、例えば、ポリスチレン、メタクリル酸メチル−スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリエステル等が挙げられる。具体的には、商品名:エスチレンMS200(新日鉄住金化学(株)製)、レジスファイR−100(電気化学工業(株)製)、XIRAN SZ15170(Polyscope社製)、トーヨースチロールT080(東洋スチレン(株)製)等が挙げられる。また、ビニル共重合樹脂(B1)は、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、難燃剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、染顔料等の、一般に用いられる各種の添加剤を含んでも良い。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムは、メタクリル樹脂(A)を含む層の少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂(B)を含む層が積層されてなる多層延伸フィルムであって、前記メタクリル樹脂(A)中の全構成単位の90モル%以上がメタクリル酸メチルであり、前記熱可塑性樹脂(B)の固有複屈折が−0.005〜0.005であり、前記メタクリル樹脂(A)のガラス転移温度TgA(℃)と前記熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度TgB(℃)とが式:5℃<(TgB−TgA)<50℃を満たすことを特徴とする。上記式を満たすことで、延伸加工温度を熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度TgB(℃)以上であり、TgB+25(℃)〜TgB+65(℃)の範囲で延伸可能になるため、延伸加工によるメタクリル樹脂(A)を含む層での複屈折発現が抑制され、本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムは光学等方性に優れたものになる。より好ましくは10℃<(TgB−TgA)<40℃であり、さらに好ましくは12℃<(TgB−TgA)<36℃である。(TgB-TgA)が5℃より低いと本発明の効果が得られにくく、50℃よりも高いと、延伸加工温度の許容幅が狭くなるため、実用上好ましくない。
以下、メタクリル樹脂(A)を含む層を「メタクリル樹脂(A)層」と呼び、熱可塑性樹脂(B)を含む層を「熱可塑性樹脂(B)層」と呼ぶことがある。層構成の例としては、例えば、メタクリル樹脂(A)層/熱可塑性樹脂(B)層の2種2層、熱可塑性樹脂(B)層/メタクリル樹脂(A)層/熱可塑性樹脂(B)層の2種3層のような層構成が例示出来るが、得られる熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの耐熱性、機械強度、吸水・吸湿時の寸法変化やフィルム面精度の悪化の点から、熱可塑性樹脂(B)層/メタクリル樹脂(A)層/熱可塑性樹脂(B)層の2種3層の構成が好ましい。上記のようにメタクリル樹脂(A)層の少なくとも一方の面に、熱可塑性樹脂(B)層を積層とすることで、本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムは耐熱性、光学等方性、機械強度に優れたものになる。
【0034】
本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムのメタクリル樹脂(A)層および/または熱可塑性樹脂(B)層は、紫外線吸収剤を含有しても良い。多量の紫外線吸収剤を添加する必要がある場合には、熱可塑性樹脂(B)層/メタクリル樹脂(A)層/熱可塑性樹脂(B)層の2種3層の層構成とし、メタクリル樹脂(A)層のみに紫外線吸収剤を添加するのが好ましい。上記のように熱可塑性樹脂(B)層/メタクリル樹脂(A)層/熱可塑性樹脂(B)層の2種3層の層構成とし、メタクリル樹脂(A)層のみに紫外線吸収剤を添加することで、製膜時に紫外線吸収剤のブリードアウトによるロール汚れが発生することなく、連続生産性に優れたものになる。添加する紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等のヒンダードアミン系紫外線吸収剤、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。混合の方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法等を用いることが出来る。
【0035】
また、本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムのメタクリル樹脂(A)層および/または熱可塑性樹脂(B)層には紫外線吸収剤以外の各種添加剤を混合して使用することが出来る。紫外線吸収剤以外の添加剤の例としては、例えば、抗酸化剤や抗着色剤、抗帯電剤、離型剤、滑剤、染料、顔料等が挙げられる。混合の方法は特に限定されず、全量コンパウンドする方法、マスターバッチをドライブレンドする方法、全量ドライブレンドする方法等を用いることが出来る。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの製造方法としては、公知の多色射出成形法、フィルムインサート法、溶融押出法、押出ラミネート法、熱プレス法、溶液流延法等により成形した熱可塑性樹脂積層体を延伸フィルム用の原反フィルム(以降、単に「原反」と呼ぶ)とすることが出来る。生産性の観点から、特に溶融押出法が好適に用いられる。溶融押出法が用いられる場合には、中間体としての面状成形体として、原反を取り出さずに、連続的に延伸工程に供されることがある。この場合、本発明ではフィルムが実質的に延伸される直前の状態を原反と定義する。
【0037】
溶融押出法による原反の作製について更に詳述する。本発明に用いる熱可塑性透明樹脂の原反は公知の溶融押出法である、Tダイ押出法、インフレーション法等を用いることが出来るが、厚みムラの少ない原反を得るという点から、Tダイ押出法を選択することが望ましい。樹脂を溶融させる装置としては一般的に用いられる押出機を使用すればよく、単軸押出機でも多軸押出機でもよい。押出機は一つ以上のベント有していても良く、ベントを減圧にして溶融している樹脂から水分や低分子物質等を除去しても良い。また、押出機の先端あるいは下流側には必要に応じて金網フィルターや焼結フィルター、ギヤポンプ等を設けても良い。樹脂を積層させる方法としては、フィードブロック法やマルチマニホールド法等の公知の方法を用いることが出来る。Tダイには、コートハンガーダイ、フィッシュテールダイ、スタックプレートダイ等の種類があり、いずれを選択することも出来る。
【0038】
押出時の樹脂温度は200〜300℃が好ましい。200℃未満では樹脂の流動性が不足し、転写ロール表面の形状が転写されないため、平滑性に乏しいものとなってしまう。一方300℃を超えると、樹脂が分解し、外観不良、着色、耐熱変形性の低下、臭気による作業環境の悪化等の原因となるので好ましくない。より好ましくは押出時の樹脂温度が220〜280℃である。押出温度が上記範囲にある場合、得られる原反の光学等方性や平滑性、透明性は優れたものになる。
【0039】
Tダイから押出された溶融樹脂の冷却方法は従来公知の方法を用いることが出来るが、一般的には冷却ロールにて冷却する。本発明に使用するメタクリル樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)は実質的に非晶性の樹脂であるため、冷却ロールの温度は幅広く設定することが可能である。光学等方性の光学フィルムを得るには、冷却ロールの温度は熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度の上下30℃とするのが好ましく、さらに好ましくは熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度の上下20℃とする。光学等方性の高い原反を得るには実質的に延伸されることが無いよう、装置に応じて吐出速度と引き取り速度と冷却ロールの温度をコントロールすることが好ましい。
【0040】
本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムは原反を延伸加工することで得られる。延伸加工によって、機械的強度が高まり、割れや破断を生じにくく、ハンドリング性に優れた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムを得ることが出来る。延伸方法は特に限定されず、公知の方法を用いることが出来る。例えば、自由端一軸延伸法や固定端一軸延伸法等の一軸延伸、同時二軸延伸法や逐次二軸延伸法等の二軸延伸が挙げられる。機械強度のムラを抑制しうる点で、二軸延伸が好ましい。
【0041】
二軸延伸を行う場合、延伸方向への延伸倍率は1.1〜3.0倍の範囲であるのが好ましく、1.2〜2.0倍であるのがより好ましい。1.2〜2.0倍の範囲内であると、機械強度の向上効果が高い。1.1〜3.0倍の範囲外であると、機械強度の向上効果を十分に得られない場合がある。また、二軸方向それぞれの延伸倍率は等倍であっても良く、倍率が異なっていても良い。延伸加工温度は、通常、熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度TgB(℃)以上であり、TgB+25(℃)〜TgB+65(℃)の範囲であるのが好ましく、TgB+30(℃)〜TgB+60(℃)であるのがより好ましい。延伸加工温度がTgB+25(℃)よりも低いと、フィルムに破断が生じる場合があるうえ、メタクリル樹脂(A)を含む層での複屈折発現を抑えることが出来ないため、好ましくない。また、TgB+65(℃)よりも高いと、樹脂の流動により外観が悪化する場合があるうえ、メタクリル樹脂(A)を含む層の配向度が上がりにくく十分な機械物性が得られないため、実用的ではない。延伸方向への延伸速度は、0.1〜3.0m/minの範囲であることが好ましい。0.1m/minよりも遅いと、延伸強度が高くなりにくいうえ、十分な延伸倍率を得るために時間がかかり、生産性の点でも十分でない。3.0m/minよりも速いと、フィルムに破断や偏肉が生じる場合がある。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの厚みは、10〜1000μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜200μmである。10μm未満では、押出成形で製造する場合、厚み精度不良が発生することが多く、延伸加工時に破断等が起きやすいため、生産不具合の発生確率が高くなる。また、1000μmを超えると、延伸加工に時間がかかるうえ、機械物性の向上効果が小さく、現実的ではない。本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの厚さは、原反製膜時に製膜速度、Tダイの吐出口厚み、ロール間隙等を調整したり、延伸加工時に延伸倍率を調節したりすることにより、調整出来る。
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムにおけるメタクリル樹脂(A)を含む層と熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚みの合計に対する熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚みの割合は5〜50%の範囲であることが好ましい。熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚みが5%未満であると、得られる熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの吸水・吸湿時の寸法変化が大きくなるうえ、吸水・吸湿時に熱可塑性樹脂(B)を含む層の機械強度がメタクリル樹脂(A)を含む層の寸法変化に耐えきれず、熱可塑性樹脂(B)を含む層にクラックを生じてしまう場合がある。また、熱可塑性樹脂(B)を含む層の厚みが50%を超えると、寸法変化抑制効果が小さいうえ、熱可塑性樹脂(B)層/メタクリル樹脂(A)層/熱可塑性樹脂(B)層の2種3層の層構成でメタクリル樹脂(A)を含む層のみに紫外線吸収剤を添加する場合、UVカット性はメタクリル樹脂(A)を含む層の厚みムラの影響を受けやすく、得られる熱可塑性樹脂積層延伸フィルムのUVカット性を制御しにくい場合がある。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムには、その片面または両面にハードコート処理、反射防止処理、防汚処理、帯電防止処理、耐候性処理および防眩処理のいずれか一つ以上を施すことが出来る。それらの処理の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることが出来る。例えば、熱硬化性あるいは光硬化性皮膜を塗布する方法、反射低減塗料を塗布する方法、誘電体薄膜を蒸着する方法、帯電防止塗料を塗布する方法等が挙げられる。コーティング剤は公知のものを用いることが出来、例えば、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂等の有機系コーティング剤、シラン化合物等のシリコン系コーティング剤、金属酸化物等の無機系コーティング剤、有機無機ハイブリッド系コーティング剤が挙げられる。
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの面内レタデーションReは0.0〜3.0の範囲であることが好ましく、0.0〜1.0であることがより好ましい。また、本発明の熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの厚み方向レタデーションRthは−10.0〜10.0の範囲であることが好ましく、−6.0〜6.0であることがより好ましい。ReおよびRthは、フィルム面内の主屈折率nx、ny(ただし、nx>ny)および厚み方向の主屈折率nzを測定し、下記式により算出できる。
Re=(nx−ny)×d (d:フィルム厚み)
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例および比較例により何ら制限されるものではない。実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの評価は以下のように行った。
【0047】
<共重合体の水素化率>
以下の合成例にて得られた熱可塑性樹脂について、水素化反応前後のUVスペクトル測定における260nmの吸収の減少率により求めた。水素化反応前の樹脂の濃度C1における吸光度A1、水素化反応後の樹脂の濃度C2における吸光度A2から、以下の式より算出した。
水素化率=100×[1−(A2×C1)/(A1×C2)]
【0048】
<固有複屈折値>
以下の合成例にて得られた熱可塑性樹脂について、分子軌道法によって、構成単位それぞれの結合単位における誘電分極差を計算し、その体積平均として下記ローレンツ−ローレンツの式によって固有複屈折値を算出した。
Δn
0=2/9π×(n
2+2)
2/n×ΔP・d・N/M
(Δn
0:固有複屈折値、ΔP:分子鎖軸方向の誘電分極率と分子鎖軸に直角方向の誘電分極率との差、n:屈折率、d:密度、N:アボガドロ数、M:分子量)
【0049】
<連続生産性評価>
以下の実施例、比較例の原反フィルムの作製において、連続で6時間成形した後に鏡面ロール表面を目視で観察し、鏡面ロール表面に添加剤のブリードアウトに由来する汚れが生じていなかったものを合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。
【0050】
<厚み>
以下の実施例、比較例にて得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムについて、デジタルマイクロメーター(ソニーマグネスケール(株)製:M−30)を用いて測定し、取得した熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの測定点10点の平均をフィルムの厚みとした。
【0051】
<延伸性評価>
以下の実施例、比較例にて得られた原反フィルムについて、試験片を110mm×110mmに切り出し、固定端同時二軸延伸機にて、所定の延伸温度、予熱時間40秒、延伸速度を300mm/分、延伸倍率を縦1.85倍、横1.85倍として、二軸延伸を行い、延伸加工時に破断や偏肉を生じない枚数が10枚中9枚以上のものを合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。
【0052】
<密着性評価>
以下の実施例、比較例にて得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムについて、試験片を100mm×300mmに切り出し、試験片を直径80mmの円筒に長辺が円周方向となるように押し付け、積層樹脂の界面の剥離の有無を評価した。剥離の生じる枚数が10枚中2枚以下のものを合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。
【0053】
<光学等方性>
以下の実施例、比較例にて得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムについて、分光エリプソメータ(日本分光(株)製:M−220)にて、測定波長590nmで遅相軸を検出し、3次元屈折率測定モード(あおり角−8〜8°)で、フィルム面内の主屈折率nx、ny(ただし、nx>ny)および厚み方向の主屈折率nzを測定し、下記式により、面内レタデーションReおよび厚み方向レタデーションRthを算出した。面内レタデーションReが0.0〜3.0nmのものを合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。また、厚み方向レタデーションRthが−10.0〜10.0nmのものを合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。
Re=(nx−ny)×d (d:フィルム厚み)
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
【0054】
<機械強度(耐折性)>
以下の実施例、比較例にて得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムについて、JIS P 8115に準拠し、MIT型耐折疲労試験機((株)東洋精機製作所製)により、折り曲げ角度を中心から左右に135°、荷重500g、180回/分の速度で破断するまでの折り曲げ回数を測定した。破断するまでの折り曲げ回数が50回以上であるものを合格(○)とし、それ以外を不合格(×)とした。
【0055】
合成例1〔ビニル共重合樹脂(B1)の製造〕
精製したメタクリル酸メチル(三菱ガス化学社製)77.0モル%と、精製したスチレン(和光純薬工業社製)23.0モル%と、重合開始剤としてt−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(アルケマ吉富社製、商品名:ルペロックス575)0.002モル%からなるモノマー組成物を、ヘリカルリボン翼付き10L完全混合槽に1kg/hで連続的に供給し、平均滞留時間2.5時間、重合温度150℃で連続重合を行った。重合槽の液面が一定となるよう底部から連続的に抜き出し、脱溶剤装置に導入してペレット状のビニル共重合樹脂(B1’)を得た。
得られたビニル共重合樹脂(B1’)をイソ酪酸メチル(関東化学社製)に溶解し、10重量%イソ酪酸メチル溶液を調製した。1000mLオートクレーブ装置に(B1’)の10重量%イソ酪酸メチル溶液を500重量部、10重量%Pd/C(NEケムキャット社製)を1重量部仕込み、水素圧9MPa、200℃で15時間保持してベンゼン環部位を水素化した。フィルターにより触媒を除去し、脱溶剤装置に導入してペレット状のビニル共重合樹脂(B1)を得た。
1H−NMRによる測定の結果、メタクリル酸メチル構成単位の割合は75モル%であり、また、波長260nmにおける吸光度測定の結果、ベンゼン環部位の水素化反応率は99%であった。得られたビニル共重合樹脂(B1)のガラス転移温度は120℃であった。また、得られたビニル共重合樹脂(B1)の固有複屈折は−0.0003であった。
【0056】
合成例2〔ビニル共重合樹脂(B2)の製造〕
合成例1で使用したメタクリル酸メチルの使用量を62.0モル%とし、またスチレンの使用量を38.0モル%とした以外は、合成例1と同様にしてビニル共重合樹脂(B2)を得た。
1H−NMRによる測定の結果、メタクリル酸メチル構成単位の割合は60モル%であり、波長260nmにおける吸光度測定の結果、ベンゼン環部位の水素化反応率は99%であった。得られたビニル共重合樹脂(B2)のガラス転移温度は120℃であった。また、得られたビニル共重合樹脂(B2)の固有複屈折は+0.0021であった。
【0057】
合成例3〔ビニル共重合樹脂(B3)の製造〕
合成例1で使用したメタクリル酸メチルの使用量を32.000モル%とし、またスチレンの使用量を68.0モル%とした以外は、合成例1と同様にしてビニル共重合樹脂(B3)を得た。
1H−NMRによる測定の結果、メタクリル酸メチル構成単位の割合は30モル%であり、波長260nmにおける吸光度測定の結果、ベンゼン環部位の水素化反応率は99%であった。得られたビニル共重合樹脂(B3)のガラス転移温度は123℃であった。また、得られたビニル共重合樹脂(B3)の固有複屈折は+0.0073であった。
【0058】
合成例4〔ビニル共重合樹脂(B4)の製造〕
合成例1でベンゼン環部位の水素化反応時間を5時間とした以外は、合成例1と同様にしてビニル共重合樹脂(B4)を得た。
1H−NMRによる測定の結果、メタクリル酸メチル構成単位の割合は75モル%であり、波長260nmにおける吸光度測定の結果、ベンゼン環部位の水素化反応率は82%であった。得られたビニル共重合樹脂(B4)のガラス転移温度は116℃であった。また、得られたビニル共重合樹脂(B4)の固有複屈折は−0.0055であった。
【0059】
製造例1〔メタクリル樹脂(A1)の製造〕
メタクリル酸メチル(住友化学(株)製スミペックスMG5(固有複屈折:−0.0043、ガラス転移温度:105℃))100重量部と、1.2重量部のトリアジン系紫外線吸収剤((株)ADEKA製アデカスタブLA−F70)を、軸径30mmの二軸押出機に連続導入し、シリンダ温度250℃、吐出速度25kg/hの条件で押し出し、メタクリル酸メチルに紫外線吸収剤を添加したメタクリル樹脂(A1)を得た。
【0060】
実施例1〔樹脂(B1)/樹脂(A1)/樹脂(B1)、層比1:3:1、延伸温度150℃〕
軸径32mmの単軸押出機と、軸径65mmの単軸押出機と、全押出機に連結されたフィードブロックと、フィードブロックに連結されたTダイとを有する多層押出装置を用いて積層体を成形した。軸径32mmの単軸押出機に合成例1で得たビニル共重合樹脂(B1)を連続的に導入し、シリンダ温度250℃、吐出速度24.0kg/hの条件で押し出した。また軸径65mmの単軸押出機に製造例1で得たメタクリル樹脂(A1)を連続的に導入し、シリンダ温度250℃、吐出速度36.0kg/hで押し出した。全押出機に連結されたフィードブロックは2種3層の分配ピンを備え、温度250℃としてメタクリル樹脂(A1)とビニル共重合樹脂(B1)を導入し積層した。その先に連結された温度250℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から温度110℃、95℃、90℃とした3本の鏡面ロールで冷却し、メタクリル樹脂(A1)の両側にビニル共重合樹脂(B1)を積層した原反を得た。得られた原反の厚みは140μmであり、連続成形時にロール汚れの発生は無かった。得られた原反を固定端同時二軸延伸機にて、二軸延伸した。延伸温度はビニル共重合樹脂(B1)のガラス転移温度より30℃高い150℃とし、予熱時間は十分に設け、延伸速度を300mm/分、延伸倍率を縦1.85倍、横1.85倍として、熱可塑性樹脂積層延伸フィルムを作製した。得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの厚みは40μm、各層の厚みは中央付近で(B1)/(A1)/(B1)=8μm/24μm/8μmであり、ビニル共重合樹脂(B1)とメタクリル樹脂(A1)の合計厚みに対するビニル共重合樹脂(B1)の厚みの割合は40%であった。また、メタクリル樹脂(A1)とビニル共重合樹脂(B1)のガラス転移温度の差は15℃であった。連続生産性評価、密着性評価、延伸性評価、光学等方性評価、機械強度評価の結果はいずれも良好であり、総合判定は合格(○)であった。
【0061】
実施例2〔樹脂(B1)/樹脂(A1)/樹脂(B1)、層比1:3:1、延伸温度160℃〕
実施例1の延伸温度を160℃とした以外は、実施例1と同様にしてメタクリル樹脂(A1)の両側にビニル共重合樹脂(B1)を積層して延伸した熱可塑性樹脂積層延伸フィルムを得た。原反の連続成形時に、ロール汚れの発生は無かった。得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの厚みは40μm、各層の厚みは中央付近で(B1)/(A1)/(B1)=8μm/24μm/8μmであり、ビニル共重合樹脂(B1)とメタクリル樹脂(A1)の合計厚みに対するビニル共重合樹脂(B1)の厚みの割合は40%であった。また、メタクリル樹脂(A1)とビニル共重合樹脂(B1)のガラス転移温度の差は15℃であった。連続生産性評価、密着性評価、延伸性評価、光学等方性評価、機械強度評価の結果はいずれも良好であり、総合判定は合格(○)であった。
【0062】
実施例3〔樹脂(B1)/樹脂(A1)/樹脂(B1)、層比1:3:1、延伸温度170℃〕
実施例1の延伸温度を170℃とした以外は、実施例1と同様にしてメタクリル樹脂(A1)の両側にビニル共重合樹脂(B1)を積層して延伸した熱可塑性樹脂積層延伸フィルムを得た。原反の連続成形時に、ロール汚れの発生は無かった。得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの厚みは40μm、各層の厚みは中央付近で(B1)/(A1)/(B1)=8μm/24μm/8μmであり、ビニル共重合樹脂(B1)とメタクリル樹脂(A1)の合計厚みに対するビニル共重合樹脂(B1)の厚みの割合は40%であった。また、メタクリル樹脂(A1)とビニル共重合樹脂(B1)のガラス転移温度の差は15℃であった。連続生産性評価、密着性評価、延伸性評価、光学等方性評価、機械強度評価の結果はいずれも良好であり、総合判定は合格(○)であった。
【0063】
実施例4〔樹脂(B1)/樹脂(A1)/樹脂(B1)、層比1:4:1、延伸温度160℃〕
実施例2の軸径32mmの単軸押出機の吐出速度を20.0kg/hの条件で押し出した。また軸径65mmの単軸押出機の吐出速度40.0kg/hとした以外は、実施例2と同様にしてメタクリル樹脂(A1)の両側にビニル共重合樹脂(B1)を積層して延伸した熱可塑性樹脂積層延伸フィルムを得た。原反の連続成形時に、ロール汚れの発生は無かった。得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの厚みは40μm、各層の厚みは中央付近で(B1)/(A1)/(B1)=6.5μm/27μm/6.5μmであり、ビニル共重合樹脂(B1)とメタクリル樹脂(A1)の合計厚みに対するビニル共重合樹脂(B1)の厚みの割合は33%であった。また、メタクリル樹脂(A1)とビニル共重合樹脂(B1)のガラス転移温度の差は15℃であった。連続生産性評価、密着性評価、延伸性評価、光学等方性評価、機械強度評価の結果はいずれも良好であり、総合判定は合格(○)であった。
【0064】
実施例5〔樹脂(B1)/樹脂(A1)/樹脂(B1)、層比1:5:1、延伸温度160℃〕
実施例2の軸径32mmの単軸押出機の吐出速度を17.0kg/hの条件で押し出した。また軸径65mmの単軸押出機の吐出速度43.0kg/hとした以外は、実施例2と同様にしてメタクリル樹脂(A1)の両側にビニル共重合樹脂(B1)を積層して延伸した熱可塑性樹脂積層延伸フィルムを得た。原反の連続成形時に、ロール汚れの発生は無かった。得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの厚みは40μm、各層の厚みは中央付近で(B1)/(A1)/(B1)=5.5μm/29μm/5.5μmであり、ビニル共重合樹脂(B1)とメタクリル樹脂(A1)の合計厚みに対するビニル共重合樹脂(B1)の厚みの割合は28%であった。また、メタクリル樹脂(A1)とビニル共重合樹脂(B1)のガラス転移温度の差は15℃であった。連続生産性評価、密着性評価、延伸性評価、光学等方性評価、機械強度評価の結果はいずれも良好であり、総合判定は合格(○)であった。
【0065】
実施例6〔樹脂(B2)/樹脂(A1)/樹脂(B2)、層比1:3:1、延伸温度160℃〕
実施例2で使用したビニル共重合樹脂(B1)の代わりに合成例2で得たビニル共重合樹脂(B2)を導入した以外は、実施例2と同様にしてメタクリル樹脂(A1)の両側にビニル共重合樹脂(B2)を積層して延伸した熱可塑性樹脂積層延伸フィルムを得た。原反の連続成形時に、ロール汚れの発生は無かった。得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの厚みは40μm、各層の厚みは中央付近で(B2)/(A1)/(B2)=8μm/24μm/8μmであり、ビニル共重合樹脂(B2)とメタクリル樹脂(A1)の合計厚みに対するビニル共重合樹脂(B2)の厚みの割合は40%であった。また、メタクリル樹脂(A1)とビニル共重合樹脂(B2)のガラス転移温度の差は15℃であった。連続生産性評価、密着性評価、延伸性評価、光学等方性評価、機械強度評価の結果はいずれも良好であり、総合判定は合格(○)であった。
【0066】
比較例1〔樹脂(B1)/樹脂(A1)/樹脂(B1)、層比1:3:1、延伸温度130℃〕
実施例1の延伸温度を130℃とした以外は、実施例1と同様にしてメタクリル樹脂(A1)の両側にビニル共重合樹脂(B1)を積層した原反を得た。得られた原反の厚みは140μmであり、連続成形時にロール汚れの発生は無かった。また、メタクリル樹脂(A1)とビニル共重合樹脂(B1)のガラス転移温度の差は15℃であった。連続生産性評価及び密着性評価の結果は良好であったものの、延伸性評価が不良であるため延伸フィルムを取得することが出来ず、その他の評価は実施出来なかった。総合判定は不合格(×)であった。
【0067】
比較例2〔樹脂(B3)/樹脂(A1)/樹脂(B3)、層比1:3:1、延伸温度160℃〕
実施例2で使用したビニル共重合樹脂(B1)の代わりに合成例3で得たビニル共重合樹脂(B3)を導入した以外は、実施例2と同様にしてメタクリル樹脂(A1)の両側にビニル共重合樹脂(B3)を積層して延伸した熱可塑性樹脂積層延伸フィルムを得た。原反の連続成形時に、ロール汚れの発生は無かった。得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの厚みは40μm、各層の厚みは中央付近で(B3)/(A1)/(B3)=8μm/24μm/8μmであり、ビニル共重合樹脂(B3)とメタクリル樹脂(A1)の合計厚みに対するビニル共重合樹脂(B3)の厚みの割合は40%であった。また、メタクリル樹脂(A1)とビニル共重合樹脂(B3)のガラス転移温度の差は18℃であった。連続生産性評価、光学等方性評価の結果は良好であったものの、延伸性評価、密着性評価が不良であり、その他の評価は実施出来なかった。総合判定は不合格(×)であった。
【0068】
比較例3〔樹脂(B4)/樹脂(A1)/樹脂(B4)、層比1:3:1、延伸温度160℃〕
実施例2で使用したビニル共重合樹脂(B1)の代わりにビニル共重合樹脂(B4)を導入した以外は、実施例2と同様にしてメタクリル樹脂(A1)の両側にビニル共重合樹脂(B4)を積層して延伸した熱可塑性樹脂積層延伸フィルムを得た。原反の連続成形時に、ロール汚れの発生は無かった。得られた熱可塑性樹脂積層延伸フィルムの厚みは40μm、各層の厚みは中央付近で(B4)/(A1)/(B4)=8μm/24μm/8μmであり、ビニル共重合樹脂(B4)とメタクリル樹脂(A1)の合計厚みに対するビニル共重合樹脂(B4)の厚みの割合は40%であった。また、メタクリル樹脂(A1)とビニル共重合樹脂(B4)のガラス転移温度の差は11℃であった。連続生産性評価、密着性評価、延伸性評価、機械強度評価の結果はいずれも良好であったものの、光学等方性評価は不良であり、総合判定は不合格(×)であった。
【0069】
比較例4〔樹脂(A1)、延伸温度150℃〕
軸径65mmの単軸押出機と、押出機に連結されたTダイとを有する単層押出装置を用いて単層体を成形した。単軸押出機に製造例1で得たメタクリル樹脂(A1)を連続的に導入し、シリンダ温度250℃、吐出速度50.0kg/hで押し出した。その先に連結された温度250℃のTダイでシート状に押し出し、上流側から温度90℃、82℃、105℃とした3本の鏡面ロールで冷却し、メタクリル樹脂(A1)の原反を得た。得られた原反の厚みは140μmであった。原反の連続成形時に、ロール汚れが発生した。得られた原反を固定端同時二軸延伸機にて、二軸延伸した。メタクリル樹脂(A1)のガラス転移温度より45℃高い150℃とし、予熱時間は十分に設け、延伸速度を300mm/分、延伸倍率を縦1.85倍、横1.85倍として、メタクリル樹脂(A1)延伸フィルムを作製した。得られたメタクリル樹脂(A1)延伸フィルムの厚みは40μmであった。延伸性評価、機械強度評価はいずれも良好であったものの、連続生産性評価、光学等方性評価は不良であり、総合判定は不合格(×)であった。
【0070】
比較例5〔樹脂(A1)、延伸温度160℃〕
比較例4の延伸温度を160℃とした以外は、比較例4と同様にしてメタクリル樹脂(A1)の原反を得た。原反の連続成形時に、ロール汚れが発生した。得られた原反の厚みは140μmであった。連続生産性評価、延伸性評価は不良であるため延伸フィルムを取得することが出来ず、その他の評価は実施出来なかった。総合判定は不合格(×)であった。
【0071】
【表1】