特許第6835030号(P6835030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6835030熱膨張性シート、熱膨張性シートの製造方法及び造形物の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835030
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】熱膨張性シート、熱膨張性シートの製造方法及び造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20210215BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20210215BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   B32B7/023
   B32B27/20 A
   B41M3/06 C
   B41M3/06 F
【請求項の数】18
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2018-87431(P2018-87431)
(22)【出願日】2018年4月27日
(65)【公開番号】特開2019-188774(P2019-188774A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雄史
(72)【発明者】
【氏名】本柳 吉宗
(72)【発明者】
【氏名】三井 郷史
【審査官】 石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−125829(JP,A)
【文献】 特開2014−168851(JP,A)
【文献】 特開2018−043446(JP,A)
【文献】 特開2018−024231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B41M 1/00−3/18、7/00−9/04
C08J 9/00−9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記熱膨張層上と前記基材の他方の面上との少なくともいずれか一方に設けられ、カラー調整剤を含むカラー調整層を更に備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体が色味を呈し、
記カラー調整層は、前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように前記カラー調整剤を含む
ことを特徴とする熱膨張性シート。
【請求項2】
前記カラー調整層は、前記熱膨張層上に設けられ、
前記カラー調整層は、前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられた前記熱膨張層の第1の領域と、前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられていない前記熱膨張層の第2の領域との間の前記色差ΔEが、6.5以下になるように前記カラー調整剤を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱膨張性シート。
【請求項3】
前記カラー調整層は、前記基材の他方の面上に設けられ、
前記カラー調整層は、前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられた前記基材の他方の面の第1の領域と、前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられていない前記基材の他方の面の第2の領域との間の前記色差ΔEが6.5以下になるように前記カラー調整剤を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱膨張性シート。
【請求項4】
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記熱膨張層上に設けられ、カラー調整剤を含む第1のインク受容層を更に備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体が色味を呈し、
前記第1のインク受容層は、前記熱変換層が当該第1のインク受容層上に設けられた第1の領域と当該第1のインク受容層上に前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように前記カラー調整剤を含む
ことを特徴とする熱膨張性シート。
【請求項5】
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記熱膨張層は、更にカラー調整剤を含み、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体が色味を呈し、
前記熱膨張層は、前記熱変換層が当該熱膨張層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が当該熱膨張層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように前記カラー調整剤を含む
ことを特徴とする熱膨張性シート。
【請求項6】
前記熱膨張層は、前記熱膨張性材料を含む複数の層を備え、
前記複数の層は、最も前記基材から離れた位置に存在する層を有し、少なくとも該層が前記カラー調整剤を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の熱膨張性シート。
【請求項7】
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記基材は、カラー調整剤を更に含み、
前記カラー調整剤は、蛍光増白剤であり、
前記基材は、前記熱変換層が前記基材の他方の面上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が前記基材の他方の面上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように前記カラー調整剤を含む
ことを特徴とする熱膨張性シート。
【請求項8】
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記基材の他方の面に設けられ、カラー調整剤を含む第2のインク受容層を更に備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体が色味を呈し、
前記第2のインク受容層は、前記熱変換層が当該第2のインク受容層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が当該第2のインク受容層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含む
ことを特徴とする熱膨張性シート。
【請求項9】
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記熱膨張層上と前記基材の他方の面上との少なくともいずれか一方に、カラー調整剤を含むカラー調整層を形成するカラー調整層形成工程を更に備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体が色味を呈し、
記カラー調整層は、前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含む
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
【請求項10】
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記熱膨張層上に、カラー調整剤を含む第1のインク受容層を形成する第1のインク受容層形成工程を更に備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体に色味を呈し、
前記第1のインク受容層形成工程では、前記熱変換層が前記第1のインク受容層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が前記第1のインク受容層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含ませる、
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
【請求項11】
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記熱膨張層形成工程において、前記熱膨張性材料に加え、カラー調整剤を含有させて前記熱膨張層を形成し、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体に色味を呈し、
前記熱膨張層形成工程では、前記熱変換層が前記熱膨張層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が前記熱膨張層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含ませる、
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
【請求項12】
前記熱膨張層形成工程では、前記熱膨張性材料を含む複数の層を形成し、
前記複数の層は、最も前記基材から離れた位置に存在する層を有し、少なくとも該層に前記カラー調整剤を含有させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱膨張性シートの製造方法。
【請求項13】
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記基材が、カラー調整剤を含み
前記カラー調整剤は、蛍光増白剤であり、
記熱変換層が前記基材の他方の面上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が前記基材の他方の面上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含ませる、
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
【請求項14】
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記基材の他方の面上に、カラー調整剤を含む第2のインク受容層を形成する第2のインク受容層形成工程を更に備え
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体に色味を呈し、
前記第2のインク受容層形成工程では、前記熱変換層が前記第2のインク受容層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が前記第2のインク受容層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含ませる、
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
【請求項15】
熱膨張性シートの熱膨張層の少なくとも一部を、電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層を用いて膨張させることによる造形物の製造方法であって、
前記熱膨張性シートの第1の面と第2の面との少なくともいずれか一方に、カラー調整剤を含むカラー調整層を形成するカラー調整層形成工程を備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体に色味を呈し、
記カラー調整層は、前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含む
ことを特徴とする造形物の製造方法。
【請求項16】
前記カラー調整層は、前記熱膨張性シートの第1の面上に設けられ、
前記カラー調整層は、前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられていない第2の領域との間の前記色差ΔEが、6.5以下になるように前記カラー調整剤を含む、
ことを特徴とする請求項15に記載の造形物の製造方法。
【請求項17】
前記カラー調整層は、前記熱膨張性シートの第2の面上に設けられ、
前記カラー調整層は、前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられていない第2の領域との間の前記色差ΔEが、6.5以下になるように前記カラー調整剤を含む、
ことを特徴とする請求項15又は16に記載の造形物の製造方法。
【請求項18】
前記熱変換層に前記電磁波を照射し、当該熱変換層に対応する前記熱膨張層を膨張させる照射工程を備える、
ことを特徴とする請求項15乃至17のいずれか一項に記載の造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性シート、熱膨張性シートの製造方法及び造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材シートの一方の面上に、吸収した熱量に応じて発泡し膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を形成した熱膨張性シートが知られている。この熱膨張性シート上に光を熱に変換する層を形成し、この層に光を照射することで、熱膨張層を部分的又は全体的に膨張させることができる。また、光を熱に変換する層の形状を変化させることで、熱膨張性シート上に立体的な形状を形成する方法も知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−28660号公報
【特許文献2】特開2001−150812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、光を熱に変換する層(熱変換層)の上にカラー印刷を行わず、熱膨張層の隆起によって造形物を形成する場合、熱変換層の色味がそのまま現れてしまうという問題がある。
【0005】
このため、熱変換層を視認しにくくし、熱変換層の色味が造形物の外観に影響を与えることを低減させることが求められていた。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、熱変換層の色味による影響を低減することが可能な熱膨張性シート、熱膨張性シートの製造方法及び造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の態様の熱膨張性シートは、
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記熱膨張層の上と前記基材の他方の面上との少なくともいずれか一方に設けられ、カラー調整剤を含むカラー調整層を更に備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体が色味を呈し、
記カラー調整層は、前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように前記カラー調整剤を含む
ことを特徴とする。
本発明に係る第2の態様の熱膨張性シートは、
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記熱膨張層上に設けられ、カラー調整剤を含む第1のインク受容層を更に備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体が色味を呈し、
前記第1のインク受容層は、前記熱変換層が当該第1のインク受容層上に設けられた第1の領域と当該第1のインク受容層上に前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように前記カラー調整剤を含む、
ことを特徴とする。
本発明に係る第3の態様の熱膨張性シートは、
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記熱膨張層は、更にカラー調整剤を含み、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体が色味を呈し、
前記熱膨張層は、前記熱変換層が当該熱膨張層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が当該熱膨張層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように前記カラー調整剤を含む、
ことを特徴とする。
本発明に係る第4の態様の熱膨張性シートは、
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記基材は、カラー調整剤を更に含み、
前記カラー調整剤は、蛍光増白剤であり、
前記基材は、前記熱変換層が前記基材の他方の面上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が前記基材の他方の面上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように前記カラー調整剤を含む、
ことを特徴とする。
本発明に係る第5の態様の熱膨張性シートは、
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記基材の他方の面に設けられ、カラー調整剤を含む第2のインク受容層を更に備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体が色味を呈し、
前記第2のインク受容層は、前記熱変換層が当該第2のインク受容層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が当該第2のインク受容層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含む、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る第1の態様の熱膨張性シートの製造方法は、
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記熱膨張層上と前記基材の他方の面上との少なくともいずれか一方に、カラー調整剤を含むカラー調整層を形成するカラー調整層形成工程を更に備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体が色味を呈し、
記カラー調整層は、前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含む
ことを特徴とする。
本発明に係る第2の態様の熱膨張性シートの製造方法は、
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記熱膨張層上に、カラー調整剤を含む第1のインク受容層を形成する第1のインク受容層形成工程を更に備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体に色味を呈し、
前記第1のインク受容層形成工程では、前記熱変換層が前記第1のインク受容層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が前記第1のインク受容層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含ませる、
ことを特徴とする。
本発明に係る第3の態様の熱膨張性シートの製造方法は、
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記熱膨張層形成工程において、前記熱膨張性材料に加え、カラー調整剤を含有させて前記熱膨張層を形成し、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体に色味を呈し、
前記熱膨張層形成工程では、前記熱変換層が前記熱膨張層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が前記熱膨張層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含ませる、
ことを特徴とする。
本発明に係る第4の態様の熱膨張性シートの製造方法は、
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記基材が、カラー調整剤を含み、
前記カラー調整剤は、蛍光増白剤であり、
前記熱変換層が前記基材の他方の面上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が前記基材の他方の面上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含ませる、
ことを特徴とする。
本発明に係る第5の態様の熱膨張性シートの製造方法は、
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記基材の他方の面上に、カラー調整剤を含む第2のインク受容層を形成する第2のインク受容層形成工程を更に備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体に色味を呈し、
前記第2のインク受容層形成工程では、前記熱変換層が前記第2のインク受容層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が前記第2のインク受容層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含ませる、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る造形物の製造方法は、
熱膨張性シートの熱膨張層の少なくとも一部を、電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層を用いて膨張させることによる造形物の製造方法であって、
前記熱膨張性シートの第1の面と第2の面との少なくともいずれか一方に、カラー調整剤を含むカラー調整層を形成するカラー調整層形成工程を備え、
前記カラー調整剤は、染料系又は顔料系の着色剤であり、当該着色剤自体に色味を呈し、
記カラー調整層は、前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられた第1の領域と前記熱変換層が当該カラー調整層上に設けられていない第2の領域との間におけるL*a*b*表色系を用いて算出される色差ΔEが6.5以下になるように、前記カラー調整剤を含む
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱変換層の色味による影響を低減することが可能な熱膨張性シート、熱膨張性シートの製造方法及び造形物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る熱膨張性シートを模式的に示す断面図である。
図2】各材料の吸光率の分布、太陽光強度スペクトル及びハロゲンランプの分光分布を示す図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、色差を測定する領域を説明する図である。
図4図4(a)〜図4(c)は、実施形態1に係る熱膨張性シートの製造方法を模式的に説明する断面図である。
図5】オフセット印刷装置を説明する図である。
図6】膨張装置を説明する図である。
図7】フレキソ印刷装置を説明する図である。
図8】実施形態1に係る造形物製造処理を示すフローチャートである。
図9】実施形態1に係る造形物製造処理を説明するための断面図である。
図10】実施形態2に係る熱膨張性シートを模式的に示す断面図である。
図11図11(a)〜図11(c)は、実施形態2に係る熱膨張性シートの製造方法を模式的に説明する断面図である。
図12】実施形態3に係る熱膨張性シートを模式的に示す断面図である。
図13図13(a)及び図13(b)は、実施形態3に係る熱膨張性シートの製造方法を模式的に説明する断面図である。
図14図14(a)〜図14(c)は、その他の実施形態に係る熱膨張性シートを模式的に示す断面図である。
図15】実施形態4に係る熱膨張性シートを模式的に示す断面図である。
図16】実施形態4に係る造形物製造処理を示すフローチャートである。
図17】実施形態5に係る熱膨張性シートを模式的に示す断面図である。
図18図18(a)及び図18(b)は、実施形態5に係る熱膨張性シート製造方法を模式的に示す断面図である。
図19図19(a)〜図19(c)は、実施形態5に係る造形システムの概要を示す図である。
図20】実施形態5に係る造形物製造処理を示すフローチャートである。
図21図21(a)〜図21(e)は、実施形態5に係る造形物製造処理を説明するための断面図である。
図22図22(a)〜図22(c)は、その他の実施形態に係る熱膨張性シートを模式的に示す断面図である。
図23】実施形態6に係る熱膨張性シートを模式的に示す断面図である。
図24】実施形態6に係る造形物製造処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る熱膨張性シート、熱膨張性シートの製造方法、造形物の製造方法及び造形システムについて、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
本明細書において、「造形物」は、単純な形状、幾何学形状、文字、装飾等、形状を広く含む。ここで、装飾とは、視覚及び/又は触覚を通じて美感を想起させるものである。また、「造形(又は造型)」は、単に造形物を形成することに限らず、装飾を加える加飾、装飾を形成する造飾のような概念をも含む。更に装飾性のある造形物とは、加飾又は造飾の結果として形成される造形物を示す。
【0014】
<実施形態1>
(熱膨張性シート11)
本実施形態に係る熱膨張性シート11は、図1に模式的に示すように、基材21と、熱膨張層22と、カラー調整層23と、を備える。また、詳細に後述するように、熱膨張性シート11は、図5等に概要を示す印刷装置及び膨張装置を用いることによって熱膨張性シート11の熱膨張層22の少なくとも一部が膨張する。また、熱膨張層22の少なくとも一部が隆起することにより、その表面に凸若しくは凹凸が形成される。本実施形態では、このような凸若しくは凹凸の高さ、凸若しくは凹凸の形成される位置等を組み合わせることにより、造形物を表現することができる。
【0015】
基材21は、熱膨張層22等を支持するシート状の部材である。基材21の一方の面(表面、図1では上面)上には、熱膨張層22が形成される。基材21としては、上質紙等の紙、又はポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂からなるシート(フィルムを含む)を使用する。紙としては、上質紙に限らず、一般に使用されている任意の紙を使用することができる。また、樹脂としては、PETに限らず、任意の樹脂を使用可能である。樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂等から選択される材料を挙げることができる。また、基材21は、熱膨張層22が全体的又は部分的に発泡により膨張した時に、基材21の反対側(図1に示す下側)に隆起しない程度の強度を備える。また、基材21は、熱膨張層22が膨張した際に、しわを生じたり、大きく波打ったりする等、シートとしての形態が損なわれることがない程度の強度を備える。加えて、基材21は、熱膨張層22を発泡させる際の加熱に耐える程度の耐熱性を有する。基材21は伸縮性を有してもよい。更には、基材21は、熱膨張層22の膨張に伴い変形し、熱膨張層22の膨張後は変形後の形状を維持してもよい。
【0016】
熱膨張層22は、基材21の一方の面(図1では、上面)上に形成される。熱膨張層22は、加熱の程度(例えば、加熱温度、加熱時間)に応じた大きさに膨張する層であって、バインダ中に熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル、マイクロパウダー)が分散配置されている。また、詳細に後述するように、本実施形態では、熱膨張性シート11の上面(表面)に、及び/又は熱膨張性シート11の下面(裏面)に、電磁波を熱に変換する電磁波熱変換層(以下、単に熱変換層又は変換層と称する)を形成し、電磁波を照射することで、熱変換層を発熱させる。熱変換層は、電磁波の照射により、熱を帯びるため、帯熱層とも呼べる。熱膨張性シート11の表面及び/又は裏面に設けられた熱変換層で生じた熱が、熱膨張層22へと伝達することにより、熱膨張層中の熱膨張性材料が発泡し、膨張する。熱変換層は、熱変換層が設けられていない他の領域と比較し、電磁波を速やかに熱へと変換する。このため熱変換層の近傍の領域のみを選択的に加熱することができ、熱膨張層22の特定の領域のみを選択的に膨張させることができる。
【0017】
また、熱膨張層22は、1つの層からなる場合に限られない。熱膨張層22は、熱膨張性材料を含む複数の層を備え、これらの層が重ね合わされることによって構成されてもよい。
【0018】
熱膨張層22のバインダとしては、エチレン酢酸ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー等の任意の熱可塑性樹脂を用いる。また、熱膨張性マイクロカプセルは、プロパン、ブタン、その他の低沸点気化性物質を、熱可塑性樹脂の殻内に含むものである。殻は、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、あるいは、それらの共重合体等の熱可塑性樹脂から形成される。例えば、熱膨張性マイクロカプセルの平均粒径は、約5〜50μmである。このマイクロカプセルを熱膨張開始温度以上に加熱すると、樹脂からなる殻が軟化し、内包されている低沸点気化性物質が気化し、その圧力によって殻がバルーン状に膨張する。用いるマイクロカプセルの特性にもよるが、マイクロカプセルの粒径は膨張前の粒径の5倍程度に膨張する。なお、マイクロカプセルの粒径には、ばらつきがあり、全てのマイクロカプセルが同じ粒径を有するものではない。
【0019】
カラー調整層(第1のカラー調整層)23は、カラー調整剤を含む層である。また、カラー調整層23は、熱膨張層22の上に設けられる。カラー調整剤は、色味を呈する材料であり、着色剤(顔料、染料)等を含む。着色剤としては、色味を呈するものであれば、一般に顔料、染料として用いられている材料以外のものを使用してもよい。カラー調整層23は、カラー調整剤によって色味を呈する。また、後述するように、カラー調整層23の一部又は全部の上には、熱変換層及び/又はカラーインク層が設けられる。本実施形態のカラー調整層23は、カラー調整層23の上に設けられる熱変換層を視認しにくくする機能を有する。このため、カラー調整層23は、熱変換層が視認されにくいよう、熱変換層の色味と同じ又はほぼ同じ色に着色されている。なお、カラー調整層23は、熱膨張層22の全体を覆って形成されてもよく、造形物が形成される又は形成される可能性のある領域にだけ設けられてもよい。また、カラー調整層23は、造形物が形成されることのない領域、例えば印刷が施される可能性がない余白には形成されなくともよい。
【0020】
カラー調整剤としては、任意の着色剤(顔料等)を用いることができる。カラー用の顔料としては、これに限るものではないが、C.I.ピグメントイエロー(Pigment Yellow)1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、87、93、94、95、97、98、100、101、104、108、109、C.I.ピグメントオレンジ(Pigment Orange)16、36、38、C.I.ピグメントレッド(Pigment Red)1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、63:2、64:1、81、101(べんがら)144、146、185、C.I.ピグメントバイオレット(Pigment Violet)19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー(Pigment Blue)1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、18、60、C.I.ピグメントグリーン(Pigment Green)1、4、7、8、10、17、18、36等が挙げられる。白の顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられ、黒の顔料としては、カーボンブラック等が挙げられる。
【0021】
なお、説明の便宜上、明細書中では、カラー調整層23について、「層」という言葉を用いている。印刷方式、インクの種類によって、カラー調整層23の一部が熱膨張層22に入り込むなどし、カラー調整層23は、層としての明確な境界を有しない場合もある。本明細書におけるカラー調整層23は、インク等を使用し熱膨張層22上に形成される限りにおいて、そのような明確な境界を有しない形態をも含む。
【0022】
ここで、カラー調整層23の色味は、熱変換層の色味によって決定される。具体的には、熱変換層は、電磁波熱変換材料を含むインク(以下、発泡インクと称する)を用いて形成される。電磁波熱変換材料(熱変換材料)は、電磁波を熱に変換可能な材料であり、一例としては、カーボン、赤外線吸収剤である。また、赤外線吸収剤としては、これに限るものではないが、無機赤外線吸収材料を使用することができる。無機赤外線吸収材料としては、例えば、六ホウ化金属化合物又は酸化タングステン系化合物が好ましい。図2に示すように、六ホウ化ランタン(LaB)又はセシウム酸化タングステンは、近赤外領域で吸収率が高く(透過率が低く)、かつ可視光領域の透過率が高い。従って、六ホウ化ランタン(LaB)又はセシウム酸化タングステンを熱変換材料として用いると、熱変換層の色味が抑えられ、好適である。なお、上記の材料は、いずれかを単独で用いてもよく、2つ以上の異なる材料を併用してもよい。
【0023】
なお、発泡インクは、電磁波熱変換材料を含む、水性インク、油性インク、紫外線硬化インク等の任意のインクである。発泡インクは、後述するように、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、又はインクジェットプリンタのような電子印刷等から選択される任意の印刷方式を用いて、熱膨張性シート11の上に印刷される。熱膨張性シート11上に印刷する際に用いる印刷技術に応じて、発泡インクを、水性、油性等のいずれとするかがが決定される。また、発泡インクは、各印刷方式に応じ、電磁波熱変換材料以外の材料の造膜成分(樹脂)、溶剤、補助剤等を任意の割合で含む。
【0024】
本実施形態においては、カラー調整層23を設けることにより、熱膨張性シート11とその表面に設けられたインク層30(熱変換層に相当)との色差を、カラー調整層23を備えない従来の構成と比較し、低減させることができる。結果として、従来例と比較して、熱変換層を視認しにくくすることができる。
【0025】
色差の比較は、具体的に以下の様に行う。図3(a)に示すように、発泡インクを用いて熱膨張性シート11上に発泡インクからなるインク層30(表側変換層81に相当)を形成する。そして、インク層30が形成された領域A(第1の領域)と、インク層30を備えない領域B(第2の領域)との色とを、熱膨張性シート11の上方(図3(a)に示す上の方向)から観察して比較する。この際、図3(a)における領域Aと領域Bとの色差は、カラー調整層23を備えない図3(b)に示す従来例における領域A’と領域B’との色差と比較して低減する。これにより、発泡インクからなるインク層30が視認しにくくなり、インク層30(熱変換層)が造形物の色味に影響を与えることを抑制することができる。なお、従来例と本実施形態の熱膨張性シート11とでは、カラー調整層23以外の条件(基材、熱膨張層の材料、厚さ、発泡インク層の濃度等)は同一として比較する。このため、領域A’の色は基材21の上面の色に相当する。
【0026】
また、領域Aと領域Bとの間の色差としては、L*a*b*表色系(Lab表色系)を使用することができる。具体的には、印刷が施されていない熱膨張性シート11の表面(領域A)と、熱膨張性シートの表面に印刷された発泡インク層(熱変換層81)上の色とを色彩計を用いてL*、a*及びb*の数値を測定する。次に測定されたL*、a*及びb*の数値から色差ΔE*(ΔE)を算出する。この色差ΔEが、カラー調整層を備えない従来の熱膨張性シートにおける色差ΔEと比較し、低減される。換言すると、領域Aと領域Bとの間の色差ΔEが、領域A’と領域B’との間の色差ΔEと比較し小さければよい。
【0027】
更には、領域Aと領域Bとの間の色差ΔEは、6.5〜13.0の範囲に含まれる、又はこれらの範囲を下回ると好適である(ΔEが13.0以下である)。ここで、色差ΔEの範囲6.5〜13.0は、C級許容差と呼ばれ、マンセル色票などの1歩度に相当する色差である。更に、領域Aと領域Bとの間の色差ΔEが3.2〜6.5の範囲に含まれる、又はこれらの範囲を下回ると好適である(ΔEが6.5以下である)。ここで、色差ΔEの範囲3.2〜6.5は、B級許容差と呼ばれ、印象レベルでは同じ色ととらえる範囲である。また、領域Aと領域Bとの間の色差ΔEが1.6〜3.2の範囲に含まれる、又はこれらの範囲を下回ると更に好適である(ΔEが3.2以下である)。ここで、ΔEの範囲1.6〜3.2は、A級許容差と呼ばれ、色の離間比較ではほとんど気付かれないレベルの色差であり、一般的には同じ色と思われているレベルであるためである。加えて、色差ΔEが、0.8〜1.6の範囲に含まれるか、これらの範囲を下回ると更に好適である。ΔEの範囲0.8〜1.6は、AA級許容差と呼ばれ、色の隣接比較でわずかに色差が感じられるレベルであるためである。
【0028】
後述するように熱変換層中に含まれる熱変換材料の量により、熱膨張層22が隆起する高さが異なる。このため、熱変換層をインクを用いて形成する場合は、隆起させる高さに応じ、様々な濃度で印刷される。この場合、全ての濃度で形成された熱変換層において、色差が上記の数値範囲に入るか下回ることが好適である。しかし、例えば、80%以下、70%以下といった、特定の濃度以下で印刷された熱変換層が、上記の色差の基準を満たすとしてもよい。
【0029】
熱変換材料としてセシウム酸化タングステンを含む発泡インクを用いて熱変換層を形成する場合を例に挙げると、セシウム酸化タングステンは、図2に示す吸光率の分布から示されるように、青色の色味を呈するため、熱変換層に含まれるセシウム酸化タングステンの量にもよるが、熱変換層は青みがかった色を呈する。この場合、カラー調整層23は、熱変換層と同様の色味を呈する青系の着色剤(染料又は顔料)カラー調整剤を含む。具体的に、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKで表すと、シアンCの色が他と比較して強く表れる。従って、カラー調整剤として、シアン系の着色剤を用いると好適である。なお、カラー調整剤は1種類に限らず複数種類を同時に使用してもよい。
【0030】
一例として、紫外線硬化型の白色インク中に、セシウム酸化タングステンを総重量に対し10重量%で混合させたインクを調製した。このインクを基材と熱膨張層とを備える熱膨張性シート上に刷毛により1回塗布をし、インク層(熱変換層)を形成した。このインク層のCMKYの各色の濃度を、イグザクト反射分光濃度計(サカタインクスエンジニアリング社製)を用いて測定したところ、シアン(C)が0.03、マゼンタ(M)が0.01、イエロー(Y)が0.01、ブラック(K)が0.02であった。従って、この例の場合では、カラー調整層23としては、特に色味の強いシアン系の着色剤をカラー調整剤として使用してもよい。更に、シアンに加え、イエロー、マゼンタ又はブラックのいずれか又は全ての着色剤をカラー調整層23中に混合させてもよい。また、これらを混合させる比率を調整し、インク層30(熱変換層)の色味と近いものとしてもよい。
【0031】
また、後述するように、カラー調整層23は、オフセット印刷装置等の印刷装置を用いて形成してもよい。この場合、カラー調整剤を含むカラー調整層23を形成するためのインクを調製し、そのインクを用いて形成してもよい。また、カラー調整層23のCMKYの値を設定し、一般に使用されているオフセット印刷用のカラーインク(CMKY)を用いてカラー調整層を形成してもよい。なお、図3(a)に示す領域Aと領域Bとの間の色差が従来例と比較して低減していれば、カラー調整層の色彩は任意であり、熱変換層の色彩と同じであっても、異なっていてもよい。従って、CMKYのインクによってカラー調整層を形成する場合、使用する色の数も任意であり、熱変換層の色味に近い1色を使用してもよく、2色以上を使用してもよい。上記のセシウム酸化タングステンを例に挙げると、他と比較的強く現れるシアンのみを使用してカラー調整層23を形成してもよく、マゼンタ、イエロー、ブラックのいずれか又は全てを使用してカラー調整層23を形成してもよい。
【0032】
また、赤外線吸収剤としてLaBを含む発泡インクを用いて熱変換層を形成する場合、図2に示す吸光率の分布から示されるように、LaBは、緑がかった青色のような色を呈する。従って、熱変換層も緑がかった青色のような色を呈する。この場合、カラー調整層23は、熱変換層と同様の色味を呈するカラー調整剤を含む。例えば、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKで表すと、LaBを用いたインクでは、イエロー系、シアン系の色が他と比較して強く表れる。このため、例えば、イエロー系の着色剤及び/又はシアン系の着色剤(染料又は顔料)を含むインクを用いて、カラー調整層23を形成する。カラー調整剤は1種類のみに限らず複数種類を同時に使用してもよく、複数種類のインクを用いてカラー調整層23を形成し、カラー調整層23を緑色に着色させてもよい。この場合も、上述したように任意の印刷装置を用いて、カラー調整層23を形成することができる。
【0033】
このように、本実施形態の熱膨張性シート11は、カラー調整層23を設けることにより、熱膨張性シート11とその表面に設けられたインク層30(表側変換層81に相当)との色差を、カラー調整層23を備えない従来の構成と比較し、低減させることができる。
【0034】
(熱膨張性シートの製造方法)
次に、熱膨張性シート11の製造方法を図4(a)〜図4(c)を用いて説明する。
【0035】
まず、基材21を準備する(図4(a))。基材21としては、例えばロール紙を使用する。また、以下に示す製造方法はロール式に限らず、枚葉式で行うことも可能である。
【0036】
次に、熱可塑性樹脂等からなるバインダと熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル)とを用い、公知の分散装置等を用いて、熱膨張層22を形成するための塗布液を調製する。続いて、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の公知の塗布装置を用いて、塗布液を基材21の一方の面上に塗布する。続いて、塗膜を乾燥させ、図4(b)に示すように熱膨張層22を形成する。なお、目標とする熱膨張層22の厚みを得るため、塗布液の塗布及び乾燥を複数回行ってもよい。また、この他の方法によって熱膨張層22を形成してもよい。
【0037】
続いて、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷装置を用いて、熱膨張層22の上にカラー調整層23を形成する。カラー調整剤として、いずれの材料を用いるか、また調整剤を添加する濃度などは、発泡インクで用いられる赤外線吸収剤の材料、発泡インクが印刷される濃度などから決定される。
【0038】
オフセット印刷を例に挙げると、オフセット印刷装置40は、図5に示すように、版胴41と、ブランケット42と、インクローラ43と、水ローラ44と、圧胴45と、を備える。
【0039】
版胴41は、その表面に画線部と非画線部とを備える刷版を有する。画線部は親油性(撥水性)であり、非画線部は親水性である。画線部と非画線部とは、例えば、フォトリソグラフィを利用して形成される。具体的には、親水性の支持体上に親油性の感光層を設け、画線部のみが露出するマスク(ネガフィルム)を介して感光層を露光させる。続いて、非画線部の感光層を除去することにより、画線部に親油性の感光層のみが残存する。なお、刷版の製造方法は任意であり、フィルムを介さずに、直接刷版上に印刷するデータをレーザー等を使用して焼き付けて製造することも可能である。
【0040】
版胴41には、水ローラ44によって湿し水が供給される。湿し水は、版胴上の刷版の非画線部(親水性)のみに乗る。また、版胴41にはインクローラ43によって、インクが供給される。インクは水が乗っている非画線部には乗らず、インクは、刷版の画線部(親油性)上にのみ付着する。
【0041】
ブランケット42は、例えばゴム筒から形成される。ブランケット42には、版胴41上に付着したインクが転写される。また、ブランケット42と対向する位置に、圧胴45が設置されている。更に、ブランケット42上のインクは、ブランケット42と熱膨張性シート11の表面との接触により熱膨張性シート11上に転写される。
【0042】
具体的には、調整画像データとして、発泡インクの色味から、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの各カラーの値を事前に決定する。印刷装置は、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKに対応するオフセット印刷装置40を備えている。シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの各オフセット印刷装置40は、指定された調整画像データに従って、熱膨張性シート11の表面に、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの画像を印刷する。その結果、図10(a)に示すように熱膨張性シート11の表面にカラー調整層23が形成される。
【0043】
なお、カラー調整層23は、CMYKの各色の値を設定することによって形成される構成には限られない。例えば、着色剤を用いてカラー調整層23を形成するためのインクを調製し、このインクを使用してカラー調整層23を形成してもよい。着色剤は1種類のみ使用してもよく、複数種類を使用してもよい。この場合は、1回の印刷でカラー調整層23を形成することができる。
【0044】
続いて、ロール状の基材21を用いた場合、必要であれば裁断を行って熱膨張性シート11を得る。
【0045】
以上の工程により、熱膨張性シート11が製造される。
【0046】
(造形物の製造方法)
次に、本実施形態の造形物の製造方法について図面を用いて説明する。本実施形態では、熱膨張性シート11の熱膨張層22の少なくとも一部を膨張させることにより、熱膨張性シート11の表面に造形物が製造される。以下の造形物の製造方法では、ロール状に巻かれた熱膨張性シート11を使用する場合(ロール式)を例に挙げて説明するが、枚葉式であってもよい。
【0047】
まず、本実施形態の造形物の製造方法は、図5に示すオフセット印刷装置40、図6に示す膨張装置50及び図7に示すフレキソ印刷装置60を用いる。
【0048】
膨張装置50は、照射部51、反射板52、温度センサ53及び冷却部54を備え、これらは筐体55内に収められている。熱膨張性シート11は、膨張装置50の下を搬送される。
【0049】
照射部51は、ランプヒータ、例えばハロゲンランプを備えており、熱膨張性シート11に対して、近赤外領域(波長750〜1400nm)、可視光領域(波長380〜750nm)、又は、中赤外領域(波長1400〜4000nm)の電磁波(光)を照射する。熱変換材料を含む発泡インクによる表側変換層81が印刷された熱膨張性シート11に電磁波を照射すると、表側変換層81が印刷された部分では、表側変換層81が印刷されていない部分に比べて、より効率良く電磁波が熱に変換される。そのため、熱膨張性シート11のうちの表側変換層81が印刷された部分が主に加熱され、膨張を開始する温度に達すると熱膨張性材料が膨張する。なお、照射部51はハロゲンランプに限られず、電磁波を照射可能であれば、他の構成を採ることも可能である。また、電磁波の波長も上記の範囲に限定されるものではない。
【0050】
反射板52は、照射部51から照射された電磁波を受ける被照射体であって、ランプヒータから照射された電磁波を熱膨張性シート11に向けて反射する機構である。反射板52は、照射部51の上側を覆うように配置されており、照射部(ランプヒータ)51から上側に向けて照射された電磁波を下側に向けて反射する。反射板52によって、ランプヒータから照射された電磁波を効率良く熱膨張性シート11に照射することができる。
【0051】
温度センサ53は、熱電対、サーミスタ等であって、反射板52の温度を測定する測定手段として機能する。温度センサ53は、照射部51が電磁波を照射している際に、反射板52の温度を測定する。反射板52は照射部51から照射される電磁波を受けるため、照射部51が照射している電磁波の強さ、すなわち電磁波のエネルギーの大きさに応じて変化する。そのため、反射板52の温度は、照射部51が照射している電磁波の強さの指標として用いることもできる。
【0052】
冷却部54は、反射板52の上側に設けられており、膨張装置50の内部を冷却する冷却手段として機能する。冷却部54は、少なくとも1つの給気ファンを備えており、膨張装置50の外部から照射部51へと空気を送ることによって、照射部51を冷却する。
【0053】
膨張装置50において、熱膨張性シート11は、ロールから取り出され、図示しない搬送ローラによって搬送されながら、照射部51によって照射される電磁波を受ける。その結果、熱膨張性シート11に設けられた表側変換層81が熱を帯びる。この熱が基材21及び熱膨張層22へと伝達する。基材21は、この熱によって軟化し、熱膨張層22の少なくとも一部は膨張する。熱膨張層22の膨張後、熱膨張性シート11は巻き取られる。
【0054】
フレキソ印刷装置60は、図7に示すように、ゴム又は合成樹脂からなる刷版を備える版胴61と、アニロックスロール62と、圧胴63とを備える。アニロックスロール62は、クロムメッキロール、セラミックロール等であり、その表面に複数のセル(凹み)を備える。アニロックスロール62へは、ファウンテンロール、ドクターチャンバー等の公知の方法によってインクが供給される。また、アニロックスロール62表面のセル中に入り込んだインクは、版胴61へと転移される。続いて、被印刷体(熱膨張性シート11)は、版胴61と圧胴63との間を搬送され、版胴61と圧胴63との間で熱膨張性シート11へとインクが転移され、印刷が施される。
【0055】
また、図7では、1色刷りの構成を例に挙げているが、フレキソ印刷装置60は多色刷りであってもよい。この場合は、用いる色のインク(例えば、CMKY)毎に版胴61とアニロックスロール62とを備える。なお、圧胴63は、用いる色毎に設けられてもよく、複数の版胴61に対し1つの圧胴63が備えられていてもよい。
【0056】
また、熱変換層を印刷する場合は、図7に示すフレキソ印刷装置60において、アニロックスロール62へ供給するインクを、発泡インクとする。なお、本実施形態では、電磁波を照射することにより熱変換層を発熱させる。このため、カラー画像を印刷するためのブラック(K)のインク中にカーボンが含まれると、カーボンが電磁波を吸収して発熱する可能性があるため、ブラック(K)のインクにはカーボンが含まれていないことが好ましい。
【0057】
次に、図8に示すフローチャート及び図9(a)〜図9(e)に示す熱膨張性シート11の断面図を参照して、熱膨張性シート11に造形物を製造する処理の流れを説明する。
【0058】
第1に、熱膨張性シート11を準備する。カラーインク層82を形成するためのカラー画像データ、熱膨張性シート11の表面において発泡及び膨張させる部分を示す表側発泡データ(表側変換層81に対応)と、熱膨張性シート11の裏面において発泡及び膨張させる部分を示す裏側発泡データ(裏側変換層83に対応)とは、事前に決定しておく。次に、オフセット印刷装置40を用いて、熱膨張性シート11の表面に表側変換層81を印刷する(ステップS1)。表側変換層81は、電磁波熱変換材料を含む発泡インク、例えばセシウム酸化タングステン又はLaB6を含む発泡インクで形成された層である。オフセット印刷装置40は、指定された表側発泡データに従って、熱膨張性シート11の表面に発泡インクを用いて印刷を行う。その結果、図9(a)に示すように、熱膨張性シート11の表面に表側変換層81が形成される。なお、表側変換層81を濃く印刷すると発熱量が増えるため、熱膨張層22が高く膨張する。従って、表側変換層81の濃淡の制御により、熱膨張層22の変形高さを制御することもできる。
【0059】
第2に、表側変換層81が印刷された熱膨張性シート11を、表面が上側を向くように膨張装置50内へ搬送する。膨張装置50では、搬送された熱膨張性シート11へ照射部51によって電磁波を照射する(ステップS2)。具体的に説明すると、膨張装置50では、照射部51によって熱膨張性シート11の表面に電磁波を照射する。熱膨張性シート11の表面に印刷された表側変換層81に含まれる熱変換材料は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、表側変換層81が発熱し、生じた熱が熱膨張層22に伝達し、熱膨張性材料が発泡、膨張する。その結果、図9(b)に示すように、熱膨張性シート11の熱膨張層22のうちの表側変換層81が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
【0060】
第3に、熱膨張性シート11をその表面が上に向いた状態でフレキソ印刷装置60へと搬送し、フレキソ印刷装置60を用いて熱膨張性シート11の表面にカラー画像(カラーインク層82)を印刷する(ステップS3)。ここで、本実施形態では、カラー印刷を施す段階で、熱膨張層22の少なくとも一部が膨張し、凸部が形成される。この凸部の形状に応じて、いずれの印刷方式の装置を用いるかを決定する。具体的には、フレキソ印刷装置60は、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKに対応する刷胴、アニロックスロール等を備える。フレキソ印刷装置60は、指定されたカラー画像データに従って、熱膨張性シート11の表面に、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの画像を印刷する。その結果、図9(c)に示すようにカラーインク層82が形成される。
【0061】
第4に、フレキソ印刷装置60を用いて、熱膨張性シート11の裏面に裏側変換層83を印刷する(ステップS4)。裏側変換層83は、電磁波熱変換材料を含む発泡インクで形成された層である。フレキソ印刷装置60は、指定された発泡データに従って、熱膨張性シート11の裏面に印刷を施す。その結果、図9(d)に示すように、熱膨張性シート11の裏面に裏側変換層83が形成される。裏側変換層83を印刷する場合も、シートの凹凸形状に応じて適切な印刷装置を選択する。裏側変換層83を濃く印刷すると発熱量が増えるため、裏側変換層83の濃淡の制御により、変形高さを制御することもできる。
【0062】
第5に、裏側変換層83が印刷された熱膨張性シート11を、裏面が上側を向くように膨張装置50へと搬送する。膨張装置50では、搬送された熱膨張性シート11へ照射部51によって電磁波を照射する(ステップS5)。具体的に説明すると、膨張装置50では、照射部51によって熱膨張性シート11の裏面に電磁波を照射する。熱膨張性シート11の裏面に印刷された裏側変換層83に含まれる熱変換材料は、照射された電磁波を吸収することによって発熱する。その結果、裏側変換層83が発熱する。更に、裏側変換層83で生じた熱が熱膨張層22に伝達し、熱膨張性材料が発泡、膨張する。その結果、図9(e)に示すように、熱膨張性シート11の熱膨張層22のうちの裏側変換層83が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
【0063】
以上のような手順によって、熱膨張性シート11上に造形物が形成される。
【0064】
本実施形態では、濃淡画像(表面発泡データ、裏面発泡データ)の濃淡の制御、電磁波の制御等により、熱膨張性材料の膨張量を制御し、熱膨張層22の隆起する高さを制御し、熱膨張性シート11の表面を所望の形状に隆起させることができる。ここで、電磁波の制御は、膨張装置50において熱膨張性シート11に電磁波を照射して膨張させる際、熱膨張性シート11を所望の高さに膨張させるために、熱膨張性シート11が単位面積当たりに受けるエネルギー量を制御することをいう。
【0065】
本実施形態においては、カラー調整層23を設けることにより、熱膨張性シート11とその表面に設けられた表側変換層81との色差を、カラー調整層23を備えない従来の構成と比較し、低減させることができる。これにより、表側変換層81を視認しにくくすることができ、熱膨張性シート11上に形成される造形物の外観に表側変換層81の色味によって与えられる影響を低減させることができる。
【0066】
<実施形態2>
以下、実施形態2に係る熱膨張性シート12について、図を用いて説明する。本実施形態に係る熱膨張性シート12が、実施形態1に示す熱膨張性シート11と異なるのは、基材21の下面にも第2のカラー調整層24を備える点にある。
【0067】
(熱膨張性シート12)
熱膨張性シート12は、図10に模式的に示すように、基材21と、熱膨張層22と、カラー調整層23と、第2のカラー調整層24と、を備える。
【0068】
第2のカラー調整層24は、図10に示すように、基材21の下面に設けられる。第2のカラー調整層24は、カラー調整層23と同様であり、カラー調整剤を含む層である。カラー調整剤は、色味を呈する材料であり、着色剤(顔料、染料)等を含む。カラー調整層23は、カラー調整剤によって着色されている。第2のカラー調整層24も、カラー調整層(第1のカラー調整層)23と同様であり、基材21の下面に形成される裏側変換層83を視認しにくくする機能を有する。このため、第2のカラー調整層24は、裏側変換層83の色味と類似する色に着色されている。第2のカラー調整層24は、基材21の下面の全体を覆って設けられる。なお、第2のカラー調整層24は、基材21の下面において印刷される可能性のある領域に設けられていればよく、余白のような印刷が施されない領域には形成されなくともよい。
【0069】
第2のカラー調整層24の色味も、カラー調整層23と同様に裏側変換層83の色味に近い色とされる。第2のカラー調整層24を備えることにより、熱膨張性シート12の裏面と裏側変換層83との色差を低減することができる。具体的には、実施形態1で説明したように、図3(a)及び図3(b)と同様に、熱膨張性シート12の下面(基材21の下面)において同様の比較を行う。具体的には、第2のカラー調整層24の色(裏側変換層が設けられていない領域に相当)と裏側変換層83との色差と、第2のカラー調整層24が設けられている基材21の下面(図3(b)に示す領域B’に相当する)と、基材21の下面に直接裏側変換層83を設けた場合における裏側変換層83の色との間の色差を比較する。第2のカラー調整層24の色と裏側変換層83との色差とは、基材21の下面と基材21上に設けられた裏側変換層83との色差と比較して低減する。これにより、熱膨張性シート12の裏側においても、発泡インクからなる裏側変換層83が視認しにくくなる。
【0070】
また、本実施形態でも、色差としては、L*a*b*表色系(Lab表色系)を使用することができる。具体的には、裏側変換層83が形成された領域と、裏側変換層83を備えない領域との色差ΔEは、第2のカラー調整層24を備えない従来例(基材21の下面に裏側変換層83を形成した場合に相当する)における色差ΔEと比較して、低減する。また、色差ΔEは、従来例と比較して低減していればよいが、色差ΔEが13.0以下であると好適であり、色差ΔEが6.5以下であると更に好適である。加えて、色差ΔEが3.2以下であると好適であり、色差ΔEが1.6以下であると更に好適である。
【0071】
(熱膨張性シート12の製造方法)
次に、熱膨張性シート12の製造方法を図11(a)〜図11(c)を用いて説明する。
【0072】
まず、基材21を準備する(図11(a))。基材21としては、例えばロール紙を使用する。また、以下に示す製造方法はロール式に限らず、枚葉式で行うことも可能である。
【0073】
次に、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷装置を用いて、基材21の裏面(図11(a)に示す下面に相当)に第2のカラー調整層24を形成する。カラー調整剤として、いずれの材料を用いるか、また調整剤を添加する濃度などは、発泡インクで用いられる赤外線吸収剤の材料、発泡インクが印刷される濃度などから決定される。
【0074】
具体的には、第2のカラー調整層24を形成する調整画像データとして、発泡インクの色味から、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの各カラーの値を事前に決定する。シアンC、マゼンタM、イエローY又はブラックKのうち、熱変換層の色味に近い1色を使用してもよく、2色若しくは3色を使用してもよい。指定された調整画像データに従って、熱膨張性シート12の裏面に、オフセット印刷装置40を用いて、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの少なくともいずれか1つの画像を印刷する。その結果、図11(a)に示すように基材21の裏面に第2のカラー調整層24が形成される。なお、着色剤を用いて第2のカラー調整層24を形成するために調製されたインクを使用して第2のカラー調整層24を形成してもよい。
【0075】
次に、基材21の表面(図11(b)に示す上面)に実施形態1と同様に熱膨張層22を形成し、更に熱膨張層22上にカラー調整層23を形成する(図11(c))。ロール状の基材21を用いた場合は、必要であれば裁断を行って熱膨張性シート12を得る。
【0076】
以上の工程により、熱膨張性シート12が製造される。
また、本実施形態でも実施形態1と同様の製造方法により、熱膨張性シート12に造形物が形成される。
【0077】
本実施形態においては、熱膨張性シート12の裏面に第2のカラー調整層24を設ける。これにより、熱膨張性シート12とその裏面に設けられた裏側変換層83との色差を、第2のカラー調整層24を備えない従来の構成と比較して低減させることができる。特に、熱膨張性シート12に造形物が形成され、熱膨張性シート12の裏面が視認される場合に、裏側変換層83を視認されにくくすることができるという効果が得られる。
【0078】
なお、上述した実施形態では、熱膨張性シート12は、カラー調整層23と、第2のカラー調整層24とを備える構成を例に挙げているが、熱膨張性シート12は第2のカラー調整層24のみを有してもよい。
【0079】
<実施形態3>
以下、実施形態3に係る熱膨張性シート13について、図を用いて説明する。本実施形態に係る熱膨張性シート13が、実施形態1に示す熱膨張性シート11等と異なるのは、熱膨張層25がカラー調整剤を含み、熱膨張層25自身が色味を呈する点にある。実施形態1等と共通する部分については詳細な説明を省略する。
【0080】
熱膨張性シート13は、図12に示すように、基材21と熱膨張層25とを備える。本実施形態では、基材21は実施形態1と同様である。
【0081】
熱膨張層25は、バインダ中に熱膨張性材料が分散された層であり、基材21上に設けられる。バインダ及び熱膨張性材料は、実施形態1と同様である。本実施形態では、熱膨張層25は、更にカラー調整剤を含む。これにより、熱膨張層25が着色され、本実施形態では、熱膨張層25は実施形態1のカラー調整層23の機能も有する。
【0082】
本実施形態の熱膨張層25の色味も、実施形態1のカラー調整層23と同様に表側変換層81の色味によって決定される。図3(a)及び図3(b)と同様にして、表側変換層81が形成された領域A(第1の領域)と、表側変換層81を備えない領域B(第2の領域)との色を比較する。この際、これらの領域間の色差は、カラー調整剤以外は熱膨張層25と同様の構成を採る熱膨張層と、この熱膨張層上に表側変換層81を形成した場合における、熱膨張層とこの熱膨張層上に設けられた表側変換層との間の色差と比較して、低減する。これにより、熱膨張性シート13の表側において、発泡インクからなる表側変換層81が視認しにくくなる。
【0083】
また、色差としては、実施形態1と同様に、Lab表色系を使用することができる。具体的には、表側変換層81が形成された領域と、表側変換層81を備えない領域との色差ΔEは、本実施形態の熱膨張層25を備えない従来例における色差ΔEと比較して、低減する。ここで、熱膨張層25を備えない従来例とは、熱膨張層25がカラー調整剤を含まない場合に相当する。また、色差ΔEは、従来例と比較して低減していればよいが、色差ΔEが13.0以下であると好適であり、色差ΔEが6.5以下であると更に好適である。加えて、色差ΔEが3.2以下であると好適であり、色差ΔEが1.6以下であると更に好適である。
【0084】
(熱膨張性シート13の製造方法)
次に、熱膨張性シート13の製造方法を図13(a)〜図13(b)を用いて説明する。
【0085】
まず、基材21を準備する(図13(a))。基材21としては、例えばロール紙を使用する。また、以下に示す製造方法はロール式に限らず、枚葉式で行うことも可能である。
【0086】
次に、熱可塑性樹脂等からなるバインダと熱膨張性材料(熱膨張性マイクロカプセル)とを用い、公知の分散装置等を用いて、熱膨張層25を形成するための塗布液を調製する。ここで、本実施形態では、塗布液中にカラー調整剤を混入させることで熱膨張層25を着色する。カラー調整剤として、いずれの材料を用いるか、また調整剤を添加する濃度などは、発泡インクで用いられる赤外線吸収剤の材料、発泡インクが印刷される濃度などから決定される。
【0087】
続いて、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の公知の塗布装置を用いて、塗布液を基材21の一方の面上に塗布する。続いて、塗膜を乾燥させ、図13(b)に示すように熱膨張層25を形成する。なお、目標とする熱膨張層25の厚みを得るため、塗布液の塗布及び乾燥を複数回行ってもよい。また、この他の方法によって熱膨張層25を形成してもよい。本実施形態では、熱膨張層25中にカラー調整剤が含まれるため、熱膨張層を形成する工程とカラー調整層を形成する工程とが同時に施される。
【0088】
続いて、ロール状の基材21を用いた場合、必要であれば裁断を行って熱膨張性シート13を得る。
以上の工程により、熱膨張性シート13が製造される。
【0089】
また、本実施形態でも、実施形態1に示す造形物の製造方法と同様の方法により、熱膨張性シート13上に造形物が製造される。
【0090】
本実施形態では、熱膨張性シート13の熱膨張層25に、実施形態1に示すカラー調整層23の機能を持たせることができる。これにより、熱膨張層25上に設けられる表側変換層81を視認しにくくすることができる。また、熱膨張性シート13上に形成される造形物の外観に表側変換層81の色味によって与えられる影響を低減させることができる。
【0091】
(その他の実施形態)
熱膨張層25は、1層のみを有する場合に限らず、複数の層を有することもできる。多数の層のうち、1つ又は複数の層にカラー調整層の機能を持たせることも可能である。この場合、視認しやすい表側に位置する1つ又は複数の層を着色することが好適である。換言すると、基材21から最も離れた1つの層に着色剤を含有させる。更にこの層に隣接する1つ又は複数の層にもカラー調整剤を含有させてもよい。
【0092】
例えば、図14(a)に示すように、熱膨張性シート13は、基材21と、熱膨張層25とを備える。熱膨張層25は、基材21上に設けられた層25aと、層25a上に設けられた25bとを備える。変形例1の熱膨張層では、層25bだけがカラー調整剤を含み、層25bだけが着色されている。また、熱膨張層25は以下のように形成される。熱膨張層25を形成する際に、熱膨張層25を形成するための塗布液として、カラー調整剤を含まない塗布液と、カラー調整剤を含む塗布液とを調製する。カラー調整剤を含まない塗布液を基材21上に塗布し、乾燥させることで層25aを形成する。続いて、カラー調整剤を含む塗布液を層25aの上に塗布し、乾燥させることで層25bを形成する。これにより熱膨張層25を形成する。
【0093】
また、熱膨張層25を構成する複数の層の間では、バインダに対し熱膨張性材料が分散される割合は、それぞれ異なっていてもよい。例えば、熱膨張層25を構成する層25a,25bでは、層25aにおいてバインダに対し熱膨張性材料が分散される割合は、層25bにおけるバインダに対し熱膨張性材料が分散される割合として低くされてもよい。
【0094】
熱膨張層25では、図14(a)に示すように、視認しやすい表側に位置する層25bに着色剤を存在させることができる。これにより、層25aによって、表側変換層81が視認されにくくなる。加えて、基材21に近い層25aへ着色剤を存在させることが避けられる。従って、熱膨張層25全体に着色剤を含有させる場合と比較し、視認しやすい部分にのみ着色剤を含有させることができる。これにより、熱膨張層25全体からみて、カラー調整剤の添加量を低減させることもできる。また、カラー調整剤によってバインダに対する熱膨張性材料の混合割合が低下することを防ぐという効果も有する。
【0095】
更に、熱膨張性シート13は、図14(b)に示すように、実施形態2に示すような第2のカラー調整層24を更に備えてもよい。この場合、熱膨張性シート13は、基材21の下面に第2のカラー調整層24を備える。第2のカラー調整層24の色、製造方法等は実施形態2と同様である。
【0096】
加えて、熱膨張性シート13は、図14(c)に示すように、基材26をカラー調整剤によって着色させてもよい。この場合、基材26が第2のカラー調整層24の機能を有する。カラー調整剤として、いずれの材料を用いるか、カラー調整剤を添加する濃度などは、発泡インクで用いられる赤外線吸収剤の材料、発泡インクが印刷される濃度などから決定される。
【0097】
なお、図14(c)に示す熱膨張性シート13では、基材26に含有されるカラー調整剤は、着色剤であってもよく、蛍光増白剤であってもよい。特に基材26として紙を使用する場合、カラー調整剤は蛍光増白剤であってもよい。一般に紙には白さを増すために、蛍光増白剤が添加されている。蛍光増白剤は、青色の光を発するため、これにより黄色みを消し、より白く見せることができる。この蛍光増白剤の添加割合を増加させることにより、基材26に青色の色味を持たせることができる。
【0098】
<実施形態4>
以下、実施形態4に係る熱膨張性シート及び造形物の製造方法について、図面を用いて説明する。本実施形態で用いる熱膨張性シート14が上述した各実施形態の熱膨張性シート11等と異なるのは、造形物を製造する際に熱膨張性シート14にカラー調整層23を形成する点にある。上述した実施形態と共通する部分については、詳細な説明を省略する。
【0099】
本実施形態で用いる熱膨張性シート14は、図15に示すように、基材21と、熱膨張層22とを備える。基材21と熱膨張層22は、実施形態1と同様である。以下に詳述するように、熱膨張性シート14の表側の面(一方の面、第1の面)上にカラー調整層23が形成される。本実施形態のカラー調整層23は、実施形態1のカラー調整層23と同様であり、その上に設けられる表側変換層81との色差をカラー調整層23を備えない従来の構成と比較し、低減させることができる。
【0100】
(造形物の製造方法)
次に、図16に示すフローチャートを参照して、本実施形態に係る造形物の製造方法を説明する。
【0101】
第1に、基材21を準備し、熱膨張層22上にカラー調整層23を形成する(ステップS41)。ここで、カラー調整層23を形成するための調整画像データは、実施形態1と同様にして事前に決定しておく。カラーインク層82を形成するためのカラー画像データ、熱膨張性シート14の表面において発泡及び膨張させる部分を示す表側発泡データ(表側変換層81に対応)と、熱膨張性シート14の裏面において発泡及び膨張させる部分を示す発泡データ(裏側変換層83に対応)とは、事前に決定しておく。熱膨張性シート14をその表面が上に向いた状態で印刷装置へと搬送し、熱膨張性シート14の表面に、カラー調整層23を印刷する。印刷装置としては、オフセット印刷装置等、任意の印刷装置を用いる。また、カラー調整層23を印刷する領域は、任意であり、熱膨張層22全体を覆うように形成してもよく、一部のみであってもよい。
【0102】
具体的には、調整画像データとして、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの各カラーの値が事前に決定されている。オフセット印刷装置40は、指定された調整画像データに従って、熱膨張性シート14の表面に、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの画像を印刷する。その結果、熱膨張性シート14の表面にカラー調整層23が形成される。なお、着色剤を用いてカラー調整層を形成するためのインクを調製し、このインクを使用してカラー調整層23を形成してもよい。この場合は、1回の印刷でカラー調整層23が形成される。
【0103】
第2に、オフセット印刷装置40を用いて、熱膨張性シート14の表面(カラー調整層23上)に表側変換層81を印刷する(ステップS42)。オフセット印刷装置40は、指定された表側発泡データに従って、熱膨張性シート14の表面に発泡インクを用いて印刷を行う。その結果、熱膨張性シート14の表面に表側変換層81が形成される。
【0104】
第3に、表側変換層81が印刷された熱膨張性シート14を、表面が上側を向くように膨張装置50へと搬送する。膨張装置50では、搬送された熱膨張性シート14へ照射部51によって電磁波を照射する(ステップS43)。これにより、表側変換層81が発熱し、生じた熱が熱膨張層22に伝達し、熱膨張性材料が発泡、膨張する。その結果、熱膨張性シート14の熱膨張層22のうちの表側変換層81が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
【0105】
第4に、熱膨張性シート14をその表面が上に向いた状態でフレキソ印刷装置60へと搬送し、熱膨張性シート14の表面にカラー画像(カラーインク層82)を印刷する(ステップS44)。フレキソ印刷装置60は、指定されたカラー画像データに従って、熱膨張性シート14の表面に、シアンC、マゼンタM、イエローY及びブラックKの画像を印刷する。その結果、カラーインク層82が形成される。
【0106】
第5に、フレキソ印刷装置60を用いて、熱膨張性シート14の裏面に裏側変換層83を印刷する(ステップS45)。フレキソ印刷装置60は、指定された発泡データに従って、熱膨張性シート14の裏面に印刷を施す。その結果、熱膨張性シート14の裏面に裏側変換層83が形成される。
【0107】
第6に、裏側変換層83が印刷された熱膨張性シート14を、裏面が上側を向くように膨張装置50へと搬送する。膨張装置50では、搬送された熱膨張性シート14へ照射部51によって電磁波を照射する(ステップS46)。その結果、裏側変換層83で生じた熱が熱膨張層22に伝達し、熱膨張性材料が発泡、膨張する。その結果、熱膨張性シート14の熱膨張層22のうちの裏側変換層83が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
【0108】
以上のような手順によって、熱膨張性シート14上に造形物が形成される。
【0109】
本実施形態によれば、カラー調整層23を設けることにより、熱膨張性シート14とその表面に設けられた表側変換層81との色差を、カラー調整層23を備えない従来の構成と比較し、低減させることができる。また、カラー調整層23を形成する工程を造形物の製造時に行うことができる。これにより、カラー調整層23を備えない従来の熱膨張性シートにもカラー調整層23を形成することができる。特に、事前にカラー調整層が形成されていないため、熱膨張性シート上に形成する造形物、形成する熱変換層の色味等によって、カラー調整層23の色味を変更することができる。
【0110】
上述した造形物の製造方法において、各ステップを実施する順は、図に示す順番に限られない。例えば、カラー調整層23、表側変換層81、カラーインク層82及び裏側変換層83を全て印刷した後に、膨張装置を用いた膨張工程(ステップS43、S46)を行ってもよい。
【0111】
更に、実施形態2に示す熱膨張性シート12のように、熱膨張性シート12の裏面に第2のカラー調整層24を形成してもよい。この場合、熱膨張性シートの裏側の面(他方の面、第2の面)上に第2のカラー調整層24を形成する工程を加える。第2のカラー調整層24の工程は、ステップS41と同様の方法で行う。なお、第2のカラー調整層24を形成する工程は任意のタイミングで行ってよい。例えば、カラー調整層23を形成する工程(ステップS41)の前後であってもよく、表側変換層81を形成する工程(ステップS42)の後であってもよい。
【0112】
<実施形態5>
以下、実施形態5に係る熱膨張性シート、熱膨張性シートの製造方法及び造形物の製造方法について、図面を用いて説明する。本実施形態で用いる熱膨張性シート15が上述した各実施形態の熱膨張性シート11等と異なるのは、熱膨張層22上にインクを受容し定着させるためのインク受容層を備える点にある。上述した実施形態と共通する部分については、詳細な説明を省略する。
【0113】
(熱膨張性シート15)
熱膨張性シート15は、図17に示すように、基材21と、熱膨張層22と、インク受容層(第1のインク受容層)27と、を備える。基材21及び熱膨張層22とは、実施形態1と同様である。
【0114】
インク受容層(第1のインク受容層)27は、熱膨張層22上に形成される。インク受容層27は、印刷工程で使用されるインク、例えば、インクジェットプリンタの水性インクを受容し、定着させる層である。インク受容層27は、印刷工程で使用されるインクに応じて、通常使用されている材料により形成される。空隙を利用してインクを受容するタイプでは、インク受容層27は、例えば多孔質シリカを用いて形成される。インクを膨潤させて受容するタイプでは、インク受容層27は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等から選択される樹脂を用いて形成される。
【0115】
また、本実施形態のインク受容層27は、カラー調整剤を含み、実施形態1等に示すカラー調整層23の機能を果たす。カラー調整剤の材料、添加される割合等は、他の実施形態と同様であり、熱変換層の色味によって決定される。また、この場合のインク受容層27は、実施形態1のカラー調整層23と同様の機能を有し、その上に設けられる表側変換層81との色差を、従来の構成と比較して低減させることができる。ここで、本実施形態において従来の構成とは、カラー調整剤を含まないインク受容層27(カラー調整剤以外は同じ構成を採るインク受容層)上に表側変換層81を形成した場合に相当する。
【0116】
(熱膨張性シート15の製造方法)
次に、熱膨張性シート15の製造方法を図18(a)〜図18(b)を用いて説明する。
【0117】
まず、実施形態1と同様にして基材21を準備し、図18(a)に示すように、基材21上に熱膨張層22を形成する。
【0118】
次に、インク受容層27を構成する材料、例えば多孔質シリカ等を用いて塗布液を調製する。この際、塗布液中にカラー調整剤を含有させる。続いて、この塗布液を、バーコータ、ローラーコータ、スプレーコータ等の方式による公知の塗布装置を用いて、熱膨張層22上に塗布する。なお、目標とするインク受容層27の厚みを得るため、塗布液の塗布及び乾燥を複数回行ってもよい。続いて、塗膜を乾燥させ、図18(b)に示すように、インク受容層27を形成する。本実施形態では、インク受容層27中にカラー調整剤が含有されているため、インク受容層の形成工程とカラー調整層の形成工程とは同時に施される。
【0119】
続いて、ロール状の基材21を用いた場合、必要であれば裁断を行って熱膨張性シート15を得る。
以上の工程により、熱膨張性シート15が製造される。
【0120】
(造形システム)
次に、図19(a)〜図19(c)を参照して、熱膨張性シート15に造形物を製造するための造形システム120について説明する。図19(a)〜図19(c)は、造形システム120の構成例を示す。また、図19(a)は、造形システム120の正面図である。図19(b)は、天板122を閉じた状態における造形システム120の平面図である。図19(c)は、天板122を開いた状態における造形システム120の平面図である。図19(a)〜(c)において、X方向は、印刷ユニット140と膨張ユニット150とが並ぶ方向に相当し、Y方向は、印刷ユニット140及び膨張ユニット150における熱膨張性シート15の搬送方向に相当し、Z方向は、鉛直方向に相当する。X方向とY方向とZ方向とは、互いに直交する。
【0121】
造形システム120は、制御ユニット130と、印刷ユニット140と、膨張ユニット150と、表示ユニット160と、を備える。制御ユニット130、印刷ユニット140、膨張ユニット150は、それぞれ図19(a)に示すようにフレーム121内に載置される。具体的に、フレーム121は、一対の略矩形状の側面板121aと、側面板121aの間に設けられた連結ビーム121bとを備え、側面板121aの上方に天板122が渡されている。また、側面板121aの間に渡された連結ビーム121bの上に印刷ユニット140及び膨張ユニット150がX方向に並んで設置され、連結ビーム121bの下に制御ユニット130が固定されている。表示ユニット160は天板122内に、天板122の上面と高さが一致するように埋設されている。
【0122】
(制御ユニット)
制御ユニット130は、印刷ユニット140、膨張ユニット150及び表示ユニット160を制御する。また、制御ユニット130は、印刷ユニット140、膨張ユニット150、及び表示ユニット160に電源を供給する。制御ユニット130は、CPU(Central Processing Unit)等を備える制御部と、フラッシュメモリ等を備える記憶部と、通信部と、記録媒体駆動部と、を備える(いずれも図示せず)。これら各部は、信号を伝達するためのバスによって接続されている。
【0123】
(印刷ユニット)
印刷ユニット140は、熱膨張性シート15の表面及び/又は裏面に印刷を行う。本実施形態では印刷ユニット140は、インクを微滴化し、被印刷媒体に対して直接に吹き付ける方式で画像を印刷するインクジェットプリンタである。印刷ユニット140では、任意のインクを使用することができ、例えば水性インクを使用することができる。
【0124】
また、図19(c)に示すように、印刷ユニット140は、熱膨張性シート15を搬入するための搬入部140aと、熱膨張性シート15を搬出するための搬出部140bと、を備える。印刷ユニット140は、搬入部140aから搬入された熱膨張性シート15の表面及び/又は裏面に指示された画像を印刷し、画像が印刷された熱膨張性シート15を搬出部140bから搬出する。
【0125】
印刷ユニット140は、制御ユニット130から画像データを取得し、取得した画像データに基づいて印刷を実行する。具体的に説明すると、印刷ユニット140は、画像データとして、カラー画像データと表面発泡データと裏面発泡データとを取得する。カラー画像データは、熱膨張性シート15の表面に印刷するカラー画像を示すデータである。印刷ユニット140は、印刷ヘッド(図示せず)に、シアン、マゼンタ及びイエローの各インクを熱膨張性シート15に向けて噴射させて、カラー画像を印刷する。
【0126】
表面発泡データは、熱膨張性シート15の表面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである。また、裏面発泡データは、熱膨張性シート15の裏面において発泡及び膨張させる部分を示すデータである。印刷ユニット140は、印刷ヘッド42に、発泡インクを熱膨張性シート15に向けて噴射させて、表面発泡データ又は裏面発泡データに対応する濃淡画像(濃淡パターン)を印刷する。
【0127】
(膨張ユニット)
膨張ユニット150は、熱膨張性シート15の表面及び/又は裏面に電磁波を照射し、熱膨張層の少なくとも一部を膨張させる。膨張ユニット150は、図19(c)に示すように、熱膨張性シート15を搬入するための搬入部150aと、熱膨張性シート15を搬出するための搬出部150bと、を備える。膨張ユニット150は、搬入部150aから搬入された熱膨張性シート15の表面及び/又は裏面に電磁波を照射し、熱膨張層の少なくとも一部を膨張させ、熱膨張層が膨張された熱膨張性シート15を搬出部150bから搬出する。
【0128】
膨張ユニット150は、搬送ローラ対と、搬送モータと、照射部と、を備える(いずれも図示せず)。照射部は、電磁波を照射する機構であって、搬送ローラ対によって搬送される熱膨張性シート15に電磁波を照射する照射手段として機能する。また、照射部は、ランプヒータと、反射板と、温度センサと、冷却部と、を備える(いずれも図示せず)。膨張ユニット150は、図6に示す膨張装置50と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0129】
搬入部150aは、熱膨張性シート15を搬入するための機構である。ユーザは、熱膨張性シート15の表面に電磁波を照射して膨張させる場合には、熱膨張性シート15を、その表面を上側に向けて搬入部150aにセットする。また、ユーザは、熱膨張性シート15の裏面に電磁波を照射して膨張させる場合には、熱膨張性シート15を、その裏面を上側に向けて搬入部150aにセットする。搬入部150aに設置された熱膨張性シート15は、搬送ガイド(図示せず)によってガイドされながら、搬送ローラ対によって筐体の内部に搬送される。
【0130】
(表示ユニット)
表示ユニット160は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置と、表示装置に画像を表示させる表示駆動回路と、を備える。表示ユニット160は、例えば図19(b)に示すように、印刷ユニット140によって熱膨張性シート15に印刷される画像を表示する(例えば、図19(b)に示す星)。また、表示ユニット160は、必要に応じて、印刷ユニット140又は膨張ユニット150の現在の状態を示す情報を表示する。
【0131】
なお、図示していないが、造形システム120は、ユーザによって操作される操作ユニットを備えていても良い。操作ユニットは、ボタン、スイッチ、ダイヤル等を備え、印刷ユニット140又は膨張ユニット150に対する操作を受け付ける。或いは、表示ユニット160は、表示装置と操作装置とが重ねられたタッチパネル又はタッチスクリーンを備えていてもよい。
【0132】
(造形物の製造方法)
次に、図20に示すフローチャート及び図21(a)〜図21(e)に示す熱膨張性シート15の断面図を参照して、造形システム120によって熱膨張性シート15上に造形物を製造する処理の流れを説明する。
【0133】
第1に、ユーザは、造形物が製造される前の熱膨張性シート15を準備し、表示ユニット160を介して、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを指定する。そして、熱膨張性シート15を、その表面を上側に向けて印刷ユニット140に挿入する。印刷ユニット140は、挿入された熱膨張性シート15の表面に熱変換層(表側変換層81)を印刷する(ステップS51)。印刷ユニット140は、指定された表面発泡データに従って、熱膨張性シート15の表面に、発泡インクを吐出する。その結果、図21(a)に示すように、インク受容層27上に表側変換層81が形成される。なお、理解を容易とするため、インク受容層27上に表側変換層81が形成されているように図示しているが、実際には発泡インクはインク受容層27中に受容されている。
【0134】
第2に、ユーザは、表側変換層81が印刷された熱膨張性シート15を、その表面を上側に向けて膨張ユニット150に挿入する。膨張ユニット150は、挿入された熱膨張性シート15へ表面から電磁波を照射する(ステップS52)。その結果、表側変換層81が発熱し、図21(b)に示すように、熱膨張性シート15の熱膨張層22のうちの表側変換層81が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
【0135】
第3に、熱膨張層22の一部が膨張した熱膨張性シート15を、その表面を上側に向けて印刷ユニット140に挿入する。印刷ユニット140は、挿入された熱膨張性シート15の表面にカラー画像(カラーインク層82)を印刷する(ステップS53)。具体的には、印刷ユニット140は、指定されたカラー画像データに従って、熱膨張性シート15の表面に、シアン、マゼンタ及びイエローの各インクを吐出する。その結果、図21(c)に示すように、インク受容層27上にカラーインク層82が形成される。なお、理解を容易とするため、インク受容層27上にカラーインク層82が形成されているように図示しているが、実際にはカラーインクはインク受容層27中に受容されている。
【0136】
第4に、カラーインク層82の形成後、カラーインク層82を乾燥させる(ステップS54)。例えば、ユーザは、カラーインク層82が印刷された熱膨張性シート15を、その裏面を上側に向けて膨張ユニット150に挿入し、膨張ユニット150は、挿入された熱膨張性シート15を裏面から加熱し、熱膨張性シート15の表面に形成されたカラーインク層82を乾燥させる。なお、ステップS54は省略することも可能である。
【0137】
第5に、ユーザは、カラーインク層82が印刷された熱膨張性シート15を、その裏面を上側に向けて印刷ユニット140に挿入する。印刷ユニット140は、挿入された熱膨張性シート15の裏面に熱変換層(裏側変換層83)を印刷する(ステップS55)。印刷ユニット140は、指定された裏面発泡データに従って、熱膨張性シート15の裏面に、発泡インクを吐出する。その結果、図21(d)に示すように、基材21の裏面に裏側変換層83が形成される。
【0138】
第6に、ユーザは、裏側変換層83が印刷された熱膨張性シート15を、その裏面を上側に向けて膨張ユニット150に挿入する。膨張ユニット150は、挿入された熱膨張性シート15へ裏面から電磁波を照射して加熱する(ステップS56)。その結果、図21(e)に示すように、熱膨張性シート15の熱膨張層22のうち、裏側変換層83が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
【0139】
以上のような手順によって、熱膨張性シート15上に造形物が形成される。
【0140】
本実施形態の熱膨張性シート15では、インク受容層27を着色することにより、インク受容層27を実施形態1に示すカラー調整層23として機能させる。これにより、熱膨張性シート15上に設けられる熱変換層81を視認しにくくすることができる。これにより、熱膨張性シート15上に形成される造形物の外観に表側変換層81の色味によって与えられる影響を低減させることができる。
【0141】
なお、本実施形態の熱膨張性シート15は、上述した各実施形態の特徴を更に備えてもよい。例えば、熱膨張性シート15は、実施形態2に示すような第2のカラー調整層24を基材21の裏面に備えてもよい。
【0142】
加えて、特に基材21が樹脂フィルムである場合、図22(a)に示すように、基材21の裏面に更に第2のインク受容層28を備えてもよい。第2のインク受容層28は、インク受容層27と同様の材料を用いて形成される。なお、第2のインク受容層28は、カラー調整剤を含むことは必須ではない。しかし、第2のインク受容層28が、第1のインク受容層27と同様にカラー調整剤を含み、実施形態2のような第2のカラー調整層24として機能してもよい。この場合、第2のインク受容層28上に設けられる裏側変換層83との色差を従来の構成と比較し、低減させることができる。ここで、従来の構成とは、カラー調整剤を含まない第2のインク受容層28(カラー調整剤以外は同じ構成を採るインク受容層)上に裏側変換層83を形成した場合に相当する。
【0143】
また、熱膨張性シート15は、カラー調整層として機能する第2のインク受容層28のみを備える構成であってもよい。加えて、熱膨張性シート15は、カラー調整層として機能する第2のインク受容層28と本実施形態の第1のインク受容層27とを備える構成に限られず、第1のインク受容層27の代わりに上述した実施形態1に示すカラー調整層23、実施形態3等に示す熱膨張層25と組み合わせることも可能である。
【0144】
加えて、熱膨張性シート15は、図22(b)に示すように、上述した熱膨張層25のように複数の層25a,25bを備えてもよい。熱膨張性シート15では、インク受容層27が着色されているため、層25bはカラー調整剤を含んでいても、含まなくともよい。
【0145】
更に、熱膨張性シート15では、図22(c)に示すように、上述した基材26のように基材26そのものがカラー調整剤を含むことも可能である。
【0146】
<実施形態6>
以下、実施形態6に係る造形物の製造方法について、図面を用いて説明する。本実施形態6に係る造形物の製造方法が、上述した各実施形態と異なるのは、実施形態4と同様に造形システムによって造形物を製造する際にカラー調整層を形成する点にある。上述した各実施形態と共通する部分には、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0147】
本実施形態で用いる熱膨張性シート16を図23に示す。熱膨張性シート16は、図23に示されるように、基材21と、熱膨張層22と、第3のインク受容層29とを備える。基材21及び熱膨張層22は、実施形態1と同様である。また、第3のインク受容層29は、インク受容層27について説明した材料と同様の材料を用いて形成される。以下に詳述するように、熱膨張性シート16の表側の面(一方の面、第1の面)上にカラー調整層が形成される。本実施形態のカラー調整層23は、実施形態1のカラー調整層23と同様であり、その上に設けられる表側変換層81との色差をカラー調整層23を備えない従来の構成と比較し、低減させることができる。
【0148】
本実施形態では、第3のインク受容層29は、造形物を製造する際にカラー調整層を形成するため、カラー調整剤を含んでいなくともよい。第3のインク受容層29がカラー調整層としての機能の一部を持つ場合は、第3のインク受容層29は、カラー調整剤を含んでもよい。
【0149】
(造形物の製造方法)
次に、図24に示すフローチャートを参照して、造形システム120によって熱膨張性シート16上に造形物を製造する処理の流れを説明する。なお、ステップS62〜ステップS67は上述した実施形態5と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0150】
第1に、ユーザは、造形物が製造される前の熱膨張性シート16を準備し、表示ユニット160を介して、カラー画像データ、表面発泡データ及び裏面発泡データを指定する。カラー調整層を印刷するためのカラー調整データは、用いる発泡インクに応じ、予め設定されている。そして、熱膨張性シート16を、その表面を上側に向けて印刷ユニット140に挿入する。印刷ユニット140は、予め設定されているカラー調整データに基づき、挿入された熱膨張性シート16の表面にカラー調整層を印刷する(ステップS61)。
【0151】
ここで、ステップS61で形成されるカラー調整層は、熱膨張性シート16の表面全体に形成されても、造形物が形成される可能性のある領域のみに形成されてもよい。
【0152】
第2に、ユーザは、熱膨張性シート16を、その表面を上側に向けて印刷ユニット140に挿入する。印刷ユニット140は、挿入された熱膨張性シート16の表面に、表面発泡データに従って発泡インクを吐出し、表側変換層81を印刷する(ステップS62)。
【0153】
第3に、ユーザは、表側変換層81が印刷された熱膨張性シート16を、その表面を上側に向けて膨張ユニット150に挿入する。膨張ユニット150は、挿入された熱膨張性シート16へ表面から電磁波を照射する(ステップS63)。その結果、表側変換層81が発熱し、熱膨張性シート16の熱膨張層22のうちの表側変換層81が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
【0154】
第4に、熱膨張層22の一部が膨張した熱膨張性シート16を、その表面を上側に向けて印刷ユニット140に挿入する。印刷ユニット140は、挿入された熱膨張性シート15の表面に、指定されたカラー画像データに従って、カラー画像(カラーインク層82)を印刷する(ステップS64)。その結果、熱膨張性シート16の表面にカラーインク層82が形成される。
【0155】
第5に、カラーインク層82の形成後、カラーインク層82を乾燥させる(ステップS65)。なお、ステップS65は省略することも可能である。
【0156】
第6に、ユーザは、カラーインク層82が印刷された熱膨張性シート16を、その裏面を上側に向けて印刷ユニット140に挿入する。印刷ユニット140は、挿入された熱膨張性シート16の裏面に、指定された裏面発泡データに従って発泡インクを吐出し、熱変換層(裏側変換層83)を印刷する(ステップS66)。
【0157】
第7に、ユーザは、裏側変換層83が印刷された熱膨張性シート16を、その裏面を上側に向けて膨張ユニット150に挿入する。膨張ユニット150は、挿入された熱膨張性シート16へ裏面から電磁波を照射して加熱する(ステップS67)。その結果、熱膨張性シート16の熱膨張層22のうち、裏側変換層83が印刷された領域が膨張し、盛り上がる。
【0158】
以上のような手順によって、熱膨張性シート16の表面上にカラー調整層を形成すると共に造形物を形成することができる。
【0159】
なお、本実施形態でも、上述した実施形態2と同様に基材21の裏面に第2のカラー調整層24を備えてもよい。第2のカラー調整層24は実施形態2のように事前に形成されていてもよく、基材そのものが着色されていてもよい。また、第2のカラー調整層24を形成する工程を加えることも可能である。なお、第2のカラー調整層24を形成する工程は任意のタイミングで行ってよい。例えば、カラー調整層を形成する工程(ステップS61)の前又は後であってもよく、表側変換層81を形成する工程(ステップS62)の後であってもよい。
【0160】
加えて、本実施形態でも特に基材21が樹脂フィルムである場合、基材21の裏面に更に第4のインク受容層を備えてもよい。第4のインク受容層は、インク受容層27等と同様の材料を用いて形成される。また、第4のインク受容層は、カラー調整剤を含むことは必須ではないが、カラー調整剤を含有させ、第4のインク受容層を実施形態2のような第2のカラー調整層24として機能させてもよい。また、第4のインク受容層に、本実施形態の第3のインク受容層と同様に、造形物を製造する際に、カラー調整層を形成することも可能である。
【0161】
本実施形態では、造形物の製造時にカラー調整層を印刷することにより、カラー調整層上に設けられる熱変換層を視認しにくくすることができる。特に本実施形態では、事前にカラーインク層を形成していない熱膨張性シートを用いても、ユーザの元でカラー調整層を形成することができるという利点がある。
【0162】
また、第3のインク受容層29にもカラー調整剤を含ませておき、カラー調整層としての機能を持たせてもよい。この場合、熱変換層の印刷濃度が濃い場合等の必要に応じ、造形物を製造する際に付加的にカラー調整層を形成することも可能である。
【0163】
なお、本実施形態も上述した各実施形態と任意に組み合わせることが可能である。例えば、熱膨張性シート16は、実施形態3で示した熱膨張層25と同様に、複数の層25a,25bを備え、表側に位置する層25bがカラー調整剤を含んでもよい。この場合は、熱膨張層22と第3のインク受容層29上に設けられるカラー調整層とで、色味を呈し、熱変換層を目立ちにくくすることができる。また、本実施形態の熱膨張性シート16でも、実施形態2のように基材21の下面に第2のカラー調整層24を備えてもよく、実施形態3で示した基材26のように基材26自体がカラー調整層として機能してもよい。
【0164】
また、上述した造形システム120の印刷ユニット140において、水性インク以外のインクを用いる場合(例えば紫外線硬化型インク)、インク受容層27を省略することが可能である。この場合、熱膨張性シート16としては基材21と熱膨張層22を備え、熱膨張層22上にカラー調整層、熱変換層等の印刷が施される。また、図24に示すフローチャートの乾燥工程(ステップS65)を省略することも可能である。また、本実施形態において水性インク以外のインクを用いる場合も、熱膨張性シート16は、その他の実施形態と組み合わせることも可能である。例えば、熱膨張層25と同様に、複数の層25a,25bを備え、表側に位置する層25bがカラー調整剤を含んでもよい。更には、実施形態2のように基材21の下面に第2のカラー調整層24を備えてもよく、実施形態3で示した基材26のように基材26自体がカラー調整層として機能してもよい。
【0165】
また、本実施形態で用いる発泡インクは、赤外線吸収剤の他に、赤外線吸収剤の色味の補色にあたる着色剤を含んでもよい。例えば、セシウム酸化タングステンを用いた場合、熱変換層は青みがかった色となる。この場合、CMYKでは、他と比較しシアンの濃度が高い。上述した例では、シアン(C)が0.03、マゼンタ(M)が0.01、イエロー(Y)が0.01、ブラック(K)が0.02であった。従って、発泡インクは、補色であるマゼンタ(M)及びイエロー(Y)の着色剤を更に含む。発泡インクが補色にあたる着色剤を含むことによって、熱変換層の色味が無彩色に近づき、明度が低下するため、熱変換層が更に視認されにくくなる。
【0166】
また、上述した各実施形態は、明細書中で言及したものに限られず、任意に組み合わせることが可能である。例えば、実施形態1及び実施形態4のようにカラー調整層を含む実施形態に、実施形態3のように熱膨張層を着色する構成を組み合わせることも可能である。この場合、カラー調整層と熱膨張層との色味によって、表側変換層を視認しにくくすることができる。同様に実施形態2と実施形態3の変形例2とを組み合わせることも可能である。また、実施形態1のようにカラー調整層23を備える熱膨張性シート11上に、実施形態4を組み合わせ、造形物を製造する際に更にカラー調整層を形成してもよい。第2のカラー調整層24を備える実施形態2又は実施形態3に実施形態4を組み合わせることも可能である。
【0167】
また、造形物の製造方法において、各ステップを実行する順番は、任意に変更することが可能である。例えば、図8に示すフローチャートにおいて、ステップS4及びステップS5を先に行い、その後でステップS1〜S3を実行することも可能である。また、ステップS1とステップS3の順を入れ替え、先にカラーインク層を形成し、その後に表側変換層を形成することも可能である。
【0168】
加えて、ステップS1とステップS3とを同じタイミングで形成することも可能である。例えば、オフセット印刷装置が、CMYKの各色に加え、発泡インクを備え、各色を熱膨張シート上に印刷すると共に、発泡インクによっても印刷を施し、同時にカラーインク層と表側変換層とを印刷してもよい。
【0169】
また、表側変換層の形成工程(ステップS1)と膨張工程(ステップS2)とは、連続して行われる必要はなく、この間にその他の工程を実施することも可能である。例えば、表側変換層を形成し(ステップS1)と裏側変換層とを形成した(ステップS5)後に、膨張工程(ステップS2)等を施してもよい。
【0170】
本実施形態では、表面、裏面、上面、及び下面等の表現は、説明の便宜上使用しているものであり、熱膨張性シートが使用される向き、使用方法等を限定するものではない。従って、熱膨張性シートの使い方によっては、裏と説明している面が、表であることもある。逆も同様である。
【0171】
また、実施形態5及び6において説明した造形システムでは、印刷ユニットとしてインクジェットプリンタを用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限られず、他の印刷装置としてもよい。また、用いる熱膨張性シートに応じて、水性インク以外の紫外線硬化インクなどを使用することも可能である。
【0172】
なお、各実施形態において用いられている図は、いずれも各実施形態を説明するためのものである。従って、熱膨張性シートの各層の厚みは任意であって、図に示されているような比率で形成されると限定して解釈されることを意図するものではない。例えば、図1では基材21は熱膨張層22とほぼ同じ厚みに図示されているが、基材21が熱膨張層22より薄くされる構成、又は熱膨張層22より厚く形成される構成を排除するものではない。他の層についても同様である。
【0173】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記熱膨張層上と前記基材の他方の面上との少なくともいずれか一方に設けられ、カラー調整剤を含むカラー調整層を更に備え、
前記熱変換層が前記カラー調整層上に設けられた場合に、前記カラー調整層は、前記熱変換層が設けられた第1の領域と前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間の色味の違いを視認されにくくする、
ことを特徴とする熱膨張性シート。
[付記2]
前記第1の領域と前記第2の領域との間の色差は、
前記カラー調整層が設けられる前記熱膨張層又は前記基材の他方の面上に前記熱変換層を形成した場合における、前記熱膨張層又は前記基材の他方の面と前記熱変換層との間の色差と比較して小さい、
ことを特徴とする付記1に記載の熱膨張性シート。
[付記3]
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記熱膨張層上に設けられ、カラー調整剤を含む第1のインク受容層を更に備え、
前記第1のインク受容層は、前記熱変換層が前記第1のインク受容層上に設けられた場合に、前記熱変換層が設けられた第1の領域と前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間の色味の違いを視認されにくくするカラー調整層として機能する、
ことを特徴とする熱膨張性シート。
[付記4]
前記第1の領域と前記第2の領域との間の色差は、
前記カラー調整層以外は前記第1のインク受容層と同じ構成を採るインク受容層上に前記熱変換層を形成した場合における、該インク受容層と前記熱変換層との間の色差と比較して小さい、
ことを特徴とする付記3に記載の熱膨張性シート。
[付記5]
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記熱膨張層は、更にカラー調整剤を含み、
前記熱膨張層は、前記熱変換層が前記熱膨張層上に設けられた場合に、前記熱変換層が設けられた第1の領域と前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間の色味の違いを視認されにくくするカラー調整層として機能する、
ことを特徴とする熱膨張性シート。
[付記6]
前記第1の領域と前記第2の領域との間の色差は、
前記カラー調整剤以外は同様の構成を採る熱膨張層上に前記熱変換層を形成した場合における、該熱膨張層と前記熱変換層との間の色差と比較して小さい、
ことを特徴とする付記5に記載の熱膨張性シート。
[付記7]
前記熱膨張層は、前記熱膨張性材料を含む複数の層を備え、
前記複数の層は、最も前記基材から離れた位置に存在する層を有し、少なくとも該層が前記カラー調整剤を含む、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の熱膨張性シート。
[付記8]
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記基材は、カラー調整剤を更に含み、
前記基材は、前記熱変換層が前記基材の他方の面上に設けられた場合に、前記熱変換層が設けられた第1の領域と前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間の色味の違いを視認されにくくするカラー調整層として機能する、
ことを特徴とする熱膨張性シート。
[付記9]
前記第1の領域と前記第2の領域との間の色差は、
前記カラー調整剤以外は前記基材と同様の構成を採る基材上に前記熱変換層を形成した場合における、該基材と前記熱変換層との間の色差と比較して小さい、
ことを特徴とする付記8に記載の熱膨張性シート。
[付記10]
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含み、基材の一方の面に設けられた熱膨張層を備える熱膨張性シートであって、
前記基材の他方の面に設けられ、カラー調整剤を含む第2のインク受容層を更に備え、
前記第2のインク受容層は、前記熱変換層が前記第2のインク受容層上に設けられた場合に、前記熱変換層が設けられた第1の領域と前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間の色味の違いを視認されにくくするカラー調整層として機能する、
ことを特徴とする熱膨張性シート。
[付記11]
前記第1の領域と前記第2の領域との間の色差は、
前記カラー調整剤以外は前記第2のインク受容層と同じ構成を採るインク受容層上に前記熱変換層を形成した場合における、該インク受容層と前記熱変換層との間の色差と比較して小さい、
ことを特徴とする付記10に記載の熱膨張性シート。
[付記12]
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記熱膨張層上と前記基材の他方の面上との少なくともいずれか一方に、カラー調整剤を含むカラー調整層を形成するカラー調整層形成工程を更に備え、
前記熱変換層が前記カラー調整層上に設けられた場合に、前記カラー調整層は、前記熱変換層が設けられた第1の領域と前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間の色味の違いを視認されにくくする、
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
[付記13]
前記第1の領域と前記第2の領域との間の色差を、
前記カラー調整層が設けられる前記熱膨張層又は前記基材の他方の面上に前記熱変換層を形成した場合における、前記熱膨張層又は前記基材の他方の面と前記熱変換層との間の色差と比較して小さくする、
ことを特徴とする付記12に記載の熱膨張性シートの製造方法。
[付記14]
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記熱膨張層上に、カラー調整剤を含む第1のインク受容層を形成する第1のインク受容層形成工程を更に備え、
前記熱変換層が前記第1のインク受容層上に設けられた場合に、前記熱変換層が設けられた第1の領域と前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間の色味の違いを視認されにくくするカラー調整層として、前記第1のインク受容層を機能させる、
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
[付記15]
前記第1の領域と前記第2の領域との間の色差を、
前記カラー調整剤以外は前記第1のインク受容層と同様の構成を採るインク受容層上に前記熱変換層を形成した場合における、該インク受容層と前記熱変換層との間の色差と比較して小さくする、
ことを特徴とする付記14に記載の熱膨張性シートの製造方法。
[付記16]
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記熱膨張層形成工程において、前記熱膨張性材料に加え、カラー調整剤を含有させて前記熱膨張層を形成し、
前記熱変換層が前記熱膨張層上に設けられた場合に、前記熱変換層が設けられた第1の領域と前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間の色味の違いを視認されにくくするカラー調整層として、前記熱膨張層を機能させる、
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
[付記17]
前記第1の領域と前記第2の領域との間の色差を、
前記カラー調整剤以外は前記熱膨張層と同様の構成を採る熱膨張層上に前記熱変換層を形成した場合における、該熱膨張層と前記熱変換層との間の色差と比較して小さくする、
ことを特徴とする付記16に記載の熱膨張性シートの製造方法。
[付記18]
前記熱膨張層形成工程では、前記熱膨張性材料を含む複数の層を形成し、
前記複数の層は、最も前記基材から離れた位置に存在する層を有し、少なくとも該層に前記カラー調整剤を含有させる、
ことを特徴とする付記16又は17に記載の熱膨張性シートの製造方法。
[付記19]
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記基材が、カラー調整剤を含み、
前記熱変換層が前記基材の他方の面上に設けられた場合に、前記熱変換層が設けられた第1の領域と前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間の色味の違いを視認されにくくするカラー調整層として、前記基材を機能させる、
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
[付記20]
前記第1の領域と前記第2の領域との間の色差を、
前記カラー調整剤以外は前記基材と同様の構成を採る基材上に前記熱膨張層を形成した場合における、該基材と前記熱変換層との間の色差と比較して小さくする、
ことを特徴とする付記19に記載の熱膨張性シートの製造方法。
[付記21]
電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層から生じた熱を吸収した量に応じて膨張する熱膨張性材料を含む熱膨張層を基材の一方の面上に形成する熱膨張層形成工程を有する熱膨張性シートの製造方法であって、
前記基材の他方の面上に、カラー調整剤を含む第2のインク受容層を形成する第2のインク受容層形成工程を更に備え、
前記熱変換層が前記第2のインク受容層上に設けられた場合に、前記熱変換層が設けられた第1の領域と前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間の色味の違いを視認されにくくするカラー調整層として、前記第2のインク受容層を機能させる、
ことを特徴とする熱膨張性シートの製造方法。
[付記22]
前記第1の領域と前記第2の領域との間の色差を、
前記カラー調整剤以外は前記第2のインク受容層と同様の構成を採るインク受容層上に前記熱変換層を形成した場合における、該インク受容層と前記熱変換層との間の色差と比較して小さくする、
ことを特徴とする付記21に記載の熱膨張性シートの製造方法。
[付記23]
熱膨張性シートの熱膨張層の少なくとも一部を、電磁波を熱に変換する熱変換材料を含む熱変換層を用いて膨張させることによる造形物の製造方法であって、
前記熱膨張性シートの第1の面と第2の面との少なくともいずれか一方に、カラー調整剤を含むカラー調整層形成工程を備え、
前記熱変換層が前記カラー調整層上に設けられた場合に、前記カラー調整層は、前記熱変換層が設けられた第1の領域と前記熱変換層が設けられていない第2の領域との間の色味の違いを視認されにくくする、
ことを特徴とする造形物の製造方法。
[付記24]
前記第1の領域と前記第2の領域との間の色差を、
前記カラー調整層が形成される前記熱膨張性シートの第1の面又は第2の面に前記熱変換層を形成した場合における、前記熱膨張性シートの第1の面又は第2の面と前記熱変換層との間の色差と比較して小さくする、
ことを特徴とする付記23に記載の造形物の製造方法。
【符号の説明】
【0174】
11,12,13,14,15,16,17…熱膨張性シート、21,26…基材、22,25…熱膨張層、25a,25b…層、23…カラー調整層(第1のカラー調整層)、24…第2のカラー調整層、27…インク受容層(第1のインク受容層)、28…第2のインク受容層、29…第3のインク受容層、30…インク層、40…オフセット印刷装置、41…版胴、42…ブランケット、43…インクローラ、44…水ローラ、45…圧胴、50…膨張装置、51…照射部、52…反射板、53…温度センサ、54…冷却部、55…筐体、60…フレキソ印刷装置、61…版胴、62…アニロックスロール、63…圧胴、81…表側変換層、82…カラーインク層、83…裏側変換層、120…造形システム、121…フレーム、121a…側面板、121b…連結ビーム、122…天板、130…制御ユニット、140…印刷ユニット、140a,150a…搬入部、140b,150b…搬出部、150…膨張ユニット、160…表示ユニット、
図1
図2
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図6
図7
図8
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図10
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