(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記廃液貯蔵部における前記試料及び前記試薬の前記余剰分と前記封止液との前記界面と、前記複数の収容部と、の最短距離が2mm以上離れている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の解析装置。
前記試料及び前記試薬の前記余剰分が前記封止液上に重層された状態となるように前記界面を形成して前記廃液貯蔵部に貯蔵されるように、前記廃液貯蔵部が前記流路の垂直方向に配置された、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の解析装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る解析キットにおける解析デバイスの模式的な断面図である。
図2は、解析デバイスに試料と試薬の混合液が注入された状態を示す模式図である。
図3は、解析デバイスに封止液が注入された状態を示す模式図である。
【0020】
図1から
図3までに示すように、本実施形態に係る解析キット1は、解析デバイス2と、ビーズ14と、試薬15と、封止液17とを備えている。なお、本実施形態に係る解析キット1において、ビーズ14を含むことは必須ではない。例えば、本実施形態に係る解析キット1は、ビーズ14を介して測定対象物質を検出してもよく、ビーズ14を含まない場合には、ビーズ14を介さずに解析キット1中に導入された測定対象物質を直接分析してもよい。
本実施形態に係る解析キット1によって解析される対象物は、例えば核酸などの試料である。一例として、本実施形態に係る解析キット1は、核酸を定量するために利用可能である。
解析デバイス2は、基体部3とカバー部7とを備えている。
基体部3は、基板4と、基板4上に形成された微小孔アレイ層5とを備えている。
【0021】
基板4は、例えば略一様な厚さの板状の形状を有している。基板4は、実質的に透明な材料から構成される。基板4の材質としては、例えば樹脂やガラス等を適用することができる。具体的には、基板4は、ポリスチレンやポリプロピレンから形成されていてもよい。また、基板4は、解析デバイス2を搬送する装置や作業者の手作業による取扱い時に破損しない程度の剛性を持っていればよい。
【0022】
微小孔アレイ層5は、複数の貫通孔が配列されて形成されている層である。微小孔アレイ層5の層厚は例えば3μmである。微小孔アレイ層5と微小孔アレイ層5と向かい合うカバー部7との間には、例えば100μmの間隔が空けられている。
【0023】
微小孔アレイ層5の材質は、樹脂やガラス等であってよい。微小孔アレイ層5の材料として、封止液となじみの良い(封止液と親和性の高い)疎水性の樹脂が採用されてもよい。なお、微小孔アレイ層5の材質は、基板4の材質と同じでもよいし、基板4の材質と異なっていてもよい。また、微小孔アレイ層5は基板4と同じ材料で一体化されていてもよい。また、微小孔アレイ層5は基板4と同じ材料で一体成型されていてもよい。
樹脂から形成された微小孔アレイ層5の材質の例としては、シクロオレフィンポリマーや、シクロオレフィンコポリマー、シリコン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、アモルファスフッ素樹脂などが挙げられる。なお、微小孔アレイ層5の例として示されたこれらの材質はあくまでも例であり、微小孔アレイ層5の材質はこれらには限られない。
なお、本実施形態における疎水性とは、接触角試験における疎水性材料とフッ素系オイル(製品名FC−40、本実施形態に係る疎水性評価の標準溶液)との接触角が25°以下の範囲にあることと定義される。好ましくは、フッ素系オイルとの接触角が10°以下である。
なお、本実施形態において微小孔アレイ層5に使用される材質とフッ素系オイルとの接触角の一例としては、疎水性樹脂であるシクロオレフィンポリマー(COP)のフッ素系オイルとの接触角は10°程度である。
なお、接触角試験には、液滴法を用いた。
【0024】
基板4上に微小孔アレイ層5を形成する方法としては、基板4に微小孔アレイ層5を直接形成してもよいし、微小孔アレイ層5を形成した部材を、接着又は溶着する等の手段で基板4に固定してもよい。たとえば、微小孔アレイ層5は、微小孔アレイ層5の材料となる部材を基板4上に積層し、この部材の一部を基板4が露出するまでパターニングすること等によって形成されている。より具体的な例として、微小孔アレイ層5は、基板4上に積層された疎水性膜のベタパターンに対してエッチング、エンボス形成、又は切削等の加工によりパターニングが施されることによって、形成される。
このパターニングによって、微小孔アレイ層5が除去されて基板4が露出した部分が底面6aとなり、基板4が露出した部分を囲む微小孔アレイ層5が側面となる複数の収容部6が微小孔アレイ層5に形成される。
【0025】
収容部6は、例えば開口部の形状が楕円形であれば、例えば長径が7μm、短径が3.5μmである。収容部6の深さは、例えば3μmである。これにより、収容部6は、断面が楕円の中空の柱状に形成されている。なお、収容部6の開口形状は特に限定されない。
【0026】
複数の収容部6同士の中心線間の距離(ピッチ)は、各収容部6の長径よりも大きければよい。なお、ここでいう収容部6の中心線とは、収容部6の開口部の中心を通る、収容部6の深さ方向と平行な線のことをいう。
各収容部6の間隔(隙間)の大きさは、各収容部6において独立してシグナル検出ができる分解能に応じて設定される。
各収容部6は微小孔アレイ層5に対して三角格子状を有するように配列されている。
なお、各収容部6の配列方法は特に限定されない。微小孔アレイ層5に形成された貫通孔と、基板4の表面とによって、基板4を底面6aとする有底筒状の微小な収容部6が形成されている。
【0027】
収容部6の容積は、適宜設定されてよい。収容部6の容積が小さい場合には、シグナル検出可能となるまでの反応時間が短い。収容部6の容積は、一例として100ピコリットル又は100ピコリットル以下とすることができる。収容部6の容積は、具体的には、シグナルを飽和させて十分なシグナルを発生させるのに必要な時間を短縮する目的がある場合には、解析対象の分子が1つの収容部6に1つ以下となる液量に基づいて設定される。
【0028】
なお、微小孔アレイ層5は着色されていてもよい。微小孔アレイ層5が着色されていると、収容部6内で蛍光、発光、吸光度等の光の測定をする場合に、測定対象となる収容部6に近接する他の収容部6からの光の影響が軽減される。
【0029】
微小孔アレイ層5によって形成された収容部6は、収容部6の上部に疎水性部分を有し、疎水性部分よりも収容部6の底面6aに近い位置に着色部分を有してもよい。このような構成とすることにより、基板4側から蛍光を測定する際の自家蛍光やノイズを低減し、蛍光シグナルの取得が容易になる。また、収容部6の底面6aに近い位置に着色部分を有することで、顕微鏡で観察する際に、収容部6の底面6aに近い位置が透明である場合と比較して、収容部6の透過性箇所と光の透過性が変わるため、微小孔アレイ層5の収容部6にピントを合わせることが容易となる。収容部6の着色部分は、例えば金属蒸着や、フォトレジストで形成されていてもよい。
【0030】
また、微小孔アレイ層5が基板4と一体成型される場合は、基板4にエッチング、エンボス形成、又は切削等の加工が施されることによって、微小孔アレイ層5に、収容部6に相当する部分が形成される。
【0031】
また、微小孔アレイ層5は、疎水部と親水部とを有していてもよい。たとえば、微小孔アレイ層5における収容部6の内周面となる部分が親水性となるように形成され、微小孔アレイ層5における他の部分が疎水性となるように形成されていてもよい。この場合、水性の試料16及び試薬15を用いるとともに油性の封止液17を用いる場合に、流路9に試料16及び試薬15が付着しにくい。
【0032】
また、微小孔アレイ層5とカバー部7との間に各種の液体を流す際に液体が流路9内に入り易いように、微小孔アレイ層5が親水処理されていてもよい。例えば酸素プラズマ処理やオゾン水処理などの方法から親水処理の方法を適宜選択することができる。さらに、油性の封止液17を送液した後に試薬15及び試料16による液滴を収容部6内に形成し易くするために、微小孔アレイ層5が封止液17の送液時に撥水性になるようにしてもよい。例えば、微小孔アレイ層5をあらかじめ撥水性の材料や撥水剤を添加した材料で作製した後、親水性膜を塗布するような構成にしておくことができる。たとえば、親水性膜の形成は、リソグラフィーや印刷などの方法から選ぶことができる。撥水性の微小孔アレイ層5に親水性膜が塗布されている場合には、はじめに試料16及び試薬15の混合液を流路9へ送液する際は、微小孔アレイ層5の表面が親水性なので流路9内に液体を保持し易くなり、試料16と試薬15との混合液に親水性膜または親水性膜に含有される親水性物質が溶解すると撥水性の微小アレイ層が暴露することとなり、油性の封止液17の送液に適した状態となる。
【0033】
また、基板4の表面が親水性であり、微小孔アレイ層5が疎水性であってもよい。この場合、収容部6の底面6aをなす基板4の表面に試料16と試薬15の混合液が保持されやすくなる。
【0034】
また、親水性の基板4の外面に疎水性の表面処理を行った後に基板4をパターニングして複数の収容部6を形成することによっても、収容部6に水性の液体が保持されやすくなるように疎水部及び親水部を形成することができる。
【0035】
カバー部7は、微小孔アレイ層5との間に隙間を有して基体部に接合されている。カバー部7は、複数の収容部6の開口部を覆うように、収容部6の開口部から離れた位置に配置されている。
【0036】
カバー部7には、自家蛍光を低減するために、顔料等の添加剤が加えられていてもよい。本実施形態に係る解析デバイス2は、蛍光や燐光を検出するために利用されるので、カバー部7は、自家蛍光を実質的に有しないことが好ましい。カバー部7を射出成型等で形成する場合、自家蛍光を低減するために樹脂中に分散する顔料だけでなく、樹脂中に溶解する各種染料も有色成分として用いることが可能である。染料は各種染料法より例示できる。
具体的には、直接染料、塩基性染料、カチオン染料、酸性染料、媒染染料、酸性媒染染料、硫化染料、建染染料、ナフトール染料、分散染料、反応染料などが挙げられる。特に、樹脂を染色する場合には、分散染料が選択されてよい。
【0037】
カバー部7と基体部3とは、スペーサ13を介して接続されている。これにより、カバー部7と基体部3とスペーサ13との間に生じる空間が流路9となる。スペーサ13の材質は特に制限されないが、例えばシリコーンゴム、アクリル発泡体から形成される芯材フィルムの両面にアクリル系粘着剤が積層された両面粘着テープ、接着剤を積層するなどして一定の厚みを有するものを適宜選択してスペーサ13として利用できる。また、スペーサ13の材質は、樹脂、金属、紙、ガラス等の無機物、等であってもよい。
【0038】
スペーサ13は、送液される液体と反応しにくい部材を適宜選択できる。さらに、送液される液体が流路9内に導入され易くするため、スペーサ13の一部に親水性の材料が使用されていたり、親水性の処理が施されていたりしてもよい。例えば、カバー部7と微小孔アレイ層5は疎水性で、スペーサ13の両面粘着テープだけを親水性にすることができる。
【0039】
カバー部7は、流路9への入口8及び流路9からの出口10を構成する貫通孔部を有している。また、カバー部7は、入口8と連通する液体注入部11と、出口10と連通する廃液貯蔵部12とを有している。
【0040】
液体注入部11は、試料16と試薬15との混合液や、封止液17等を流路9の入口8から流路9内へ送液するために、流路9の入口8に連通する容器形状を有している。また、液体注入部11の内面は、流路9の入口8から離れるに従って漸次口径が大きくなるようにテーパ形状を有する。なお、液体注入部11の内面形状は、試料16と試薬15との混合液や封止液17等の液体を分注するピペットチップやノズル等の先端形状に基づいて、ピペットチップやノズル等が液体注入部11の内面に密着しやすいように形成されていてもよい。また、液体注入部11は、試料16と試薬15との混合液や、封止液17等を送液するためのシリンジに接続できるようになっていてもよい。
【0041】
廃液貯蔵部12は、流路9の出口10に接続されている。廃液貯蔵部12の容積は、流路9の容積よりも大きい。このため、流路9から試料16及び試薬15を全て押し出すように解析デバイス2内に封止液17を注入しても、廃液貯蔵部12から試料16及び試薬15があふれない。廃液貯蔵部12と収容部6との最短距離L1は、流路9に沿って2mm以上離れている。本実施形態では、複数の収容部6において流路9の出口10(流路9と廃液貯蔵部12との境界)に最も近い位置にある収容部6と、流路9の出口10との最短距離(直線距離)が2mm以上に構成されている。なお、流路9が屈曲している場合には、廃液貯蔵部12と収容部6との最短距離は、流路9の屈曲状態に対応して屈曲して測った距離であってもよい。
【0042】
廃液貯蔵部12の容積は、試料16及び試薬15の混合液のうち収容部6に入らなかった余剰分と、封止液17の一部とを収容可能な容積となるように構成されている。たとえば、廃液貯蔵部12の容積は、例えば100〜1000μLであり、好ましくは150〜500μLであり、更に好ましくは200〜300μLである。
【0043】
廃液貯蔵部12は、例えば、検出試薬15などの廃液量が少ない廃液用構造と、封止液17など廃液量が多い廃液用構造との2種類を有していてもよい。または、前記2種類の廃液用構造は2重構造であってもよい。廃液量が少ない廃液用構造は、流路9の出口10の構造をV字型にするなどによって、少量の廃液を貯蔵可能な形状とされていてもよい。
【0044】
廃液貯蔵部12には、廃液が漏れ出さないように蓋が設けられていてもよい。蓋となる構造物は例えばプラスチックや金属からなっていてもよい。また、蓋となる構造物は、フィルムなどのシールであってもよい。また、蓋となる構造物は、ポリウレタンやポリビニルアルコールなどのスポンジや、アミノ樹脂やメラミン樹脂などの熱硬化性樹脂から構成され、後から加熱することで廃液貯蔵部12に蓋をすることができるようになっていてもよい。廃液貯蔵部12に吸収剤が配され、廃液を吸収させることができるようになっていてもよい。
なお、
図1〜
図3においては、廃液貯蔵部12が流路の垂直方向に位置する(流路9の上方に位置する)例を示したが、廃液貯蔵部12が流路の水平方向に位置していてもよい。すなわち、
図1〜
図3における解析デバイス2の側面に廃液貯蔵部12が設けられていてもよい。廃液貯蔵部12が流路の水平方向に配置された場合、微小孔アレイに格納されなかった試料は、観察面方向(水平方向)へ移動させることもできる。
廃液貯蔵部12を流路の水平方向に配置するように構成した場合には、解析デバイス2を平たくすることができる(厚みを薄くすることができる)ため、持ち運びに優れ、装置との干渉も少なくすることができる。
なお、廃液貯蔵部の配置は、流路の垂直方向、流路の水平方向に限られず、試料の解析、検出を妨げない範囲においては、流路の斜め上、流路の斜め下等に配置されていてもよく、本実施形態の例示に限定されない。
【0045】
本実施形態に係る解析デバイス2は、このように基体部3とカバー部7とが接合されていることによって、複数の収容部6と、流路9と、液体注入部11と、廃液貯蔵部12と、を有する。
【0046】
ビーズ14は、解析対象物と結合可能であるとともに、試料16及び試薬15の混合液における溶媒よりも比重が大きい。重力で収容部6に効率よく落とせるビーズ14が選択されてもよい。例えば、金属を含有するビーズ14を解析対象物の捕捉用のビーズ14にしてもよい。ビーズ14は例えば、フェライトや、鉄、銅、金、銀、白金、ニッケル、コバルト、スズ、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムなどの金属から少なくとも1つ以上の金属を含有しているビーズ14を用いてもよい。
また、フェライトや磁石を含有するビーズ14を用いて、磁石によりビーズ14を収容部6に誘導してもよい。磁性ビーズを使うことで磁力によりビーズ14を収容部6の中に引き込むことも可能である。
また、樹脂でできているビーズ14を解析対象物の捕捉用ビーズとして選択し、遠心力を利用して収容部6にトラップしてもよい。ビーズ14の材料としての樹脂は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリテレフタラートなどの樹脂の中から任意の材料を選択してもよい。
【0047】
解析対象物がDNAの場合にはビーズ14の表面にDNAプローブによる標識が施されていてもよい。解析対象物がタンパク質の場合にはビーズ14に対して抗体標識が施されていてもよい。
【0048】
ビーズ14の形状は、収容部6内にビーズ14を収容可能な大きさであればよく、且つ、1つのビーズ14が1つの収容部6に収容されたときに、収容部6の開口側から見て、収容部6の開口部の形状と、ビーズ14の形状とが非相似形状であることが好ましい。
解析対象物となる物質自体は、溶媒中に分散しているので、解析対象物が溶媒中に分散したままでは収容部6内に入りにくい。本実施形態では、溶媒よりも比重が高いビーズ14に解析対象物を捕捉させて、収容部6内へ解析対象物をビーズ14とともに収容することができる。
【0049】
ビーズ14のサイズは収容部6にその位置を固定される大きさであれば任意の大きさのものを使用できるが、0.1μmから20μmが好ましい。その理由は、ビーズ14の大きさが0.1μmより小さくなると光学的にビーズ14を検出することが難しくなることが予想されるためである。またビーズ14が20μmより大きいとビーズ14の表面積が小さくなり、ビーズ14上の核酸を捕捉するプローブと核酸の接触回数が減ることによるハイブリダイゼーション効率の低下が懸念される。
すなわち、ビーズ14のサイズが0.1μmから20μmの範囲にあることによって、光学的な観察が容易であるとともに十分に高いハイブリダイゼーション効率を得ることができる。なお、ビーズ14のサイズは、収容部6の形状に対応して、上記の好ましい範囲(0.1〜20μm)以外のサイズとすることもできる。
【0050】
試薬15(
図2参照)は、解析デバイス2の液体注入部11から流路9を通じて収容部6に送液される。試薬15は、酵素と、緩衝液とを含んでいる。
【0051】
試薬15に含まれる酵素は、例えば解析対象物が核酸である場合には、解析対象物に関連する鋳型核酸に対する酵素反応などの生化学的反応を行うために、生化学的反応の内容に対応して選択される。鋳型核酸に対する生化学的反応は、例えば、鋳型核酸が存在する条件下でシグナル増幅が起こるような反応である。試薬15は、例えば核酸を検出可能な方法に応じて選択される。具体的には、インベーダー(登録商標)法や、LAMP法(商標登録)、TaqMan(登録商標)法、又は蛍光プローブ法やその他の方法に使用される試薬15が本実施形態に係る試薬15に含まれる。
例えば、特定の遺伝子が解析(検出)対象の場合、鋳型核酸そのもの、又は鋳型核酸の一部分が解析対象となる。
【0052】
緩衝液は、試料16と試薬15とが混合された状態において酵素反応を促進するように、各種の添加物を溶媒に溶解させた液体である。緩衝液の組成は、生化学的反応の種類に応じて公知の組成から適宜選択されてよい。
【0053】
なお、試薬15は、界面活性剤等の添加物を含有していてもよい。水性の試薬15に界面活性剤を添加することにより、ビーズ14を再度分散させることで、1収容部6に1つのビーズ14を収容することが容易となる。その際に、ピペットを用いて混合液を攪拌させることで、さらにビーズ14が凝集しないようにしてもよい。
【0054】
また、検出する蛍光の劣化を防止するための添加剤が試薬15に含まれていてもよい。
例えば、蛍光は活性酸素などの影響により劣化してしまう場合があるので、これを防止するために、スカベンジャー試薬やグルコースオキシダーゼなどが試薬15に添加されていてもよい。
【0055】
反応に必要な試薬15はボトルに充填しておいてもよいが、同じボトルから複数回試薬15を用いるとコンタミネーションによる誤解析が生じる可能性がある。この問題を解決するために、一回きりで使える量の試薬15をボトルに充填しておき、一回で使いきるボトルを用いてもよい。ボトルの形状はキャップを開けて試薬15を使用する形状でもよいし、シールをはがして試薬15を取り出す形状でもよいし、チップなどを蓋に刺して試薬15を吸引する形状でもよい。
【0056】
また試薬15のコンタミネーションを防ぐために、試薬15をボトルなどに充填するのではなく、はじめから収容部6内に試薬15を充填しておいてもよい。収容部6に試薬15を充填する場合は、試薬15を乾燥固化させてもよいし、液体の状態で試薬15を充填し蒸発しないように蓋を設けてもよい。試薬15の充填量は特に限定はしないが、混合する試料16の量に合わせて濃度を調整することができる。例えば、試薬15に等量の試料16を混合する場合には、試薬15濃度を最終濃度の2倍にしておくことができる。
【0057】
封止液17(
図3参照)は、複数の収容部6を個別に封止するために流路9に供給される液体である。封止液17は、試料16及び試薬15と混合しない組成の液体である。試料16及び試薬15が水性である場合には、封止液17は油性であることが好ましい。封止液17は、流路9に液体注入部11から送液可能な溶液である。油性の封止液17としては、例えば、ミネラルオイルやシリコーンオイル、クロロホルム、スクアレン、ヘキサデカン、フッ素系液体のFC−40等を用いることができる。
本実施形態では、封止液17の比重は、ビーズ14を除く試薬15の比重よりも高い。
【0058】
封止液17は油性液でなくてもよい。油性液でない封止液17の例として、例えば熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が挙げられる。これらの封止液17の粘性は例えば0.5〜500CSであり、好ましくは0.7〜200CSであり、更に好ましくは0.8〜100CSである。
【0059】
封止液17は、自家蛍光を低減するために、添加剤を含有していてもよい。後述する方法では蛍光や燐光を利用するため、封止液17は、自家蛍光を実質的に有しないことが好ましい。ここで、「自家蛍光を実質的に有しない」とは、封止液17が、実験結果の検出に使用する波長の自家蛍光を全く有しないか、有していても実験結果の検出に影響を与えないほど微弱であることを意味する。例えば、検出対象の蛍光に比べて1/2以下、1/10以下程度の自家蛍光であれば、実験結果の検出に影響を与えないほど微弱であるといえる。
【0060】
封止液17に添加される添加剤としては、有機質又は無機質の顔料が例示できる。具体的には、黒色顔料としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、鉄黒、黄色顔料としては、クロム黄、亜鉛黄、黄土、ハンザイエロー、パーマネントイエロー、ベンジンイエロー、橙色顔料としては、オレンジレーキ、モリブデンオレンジ、ベンジンオレンジ、赤色顔料としては、べんがら、カドミウムレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド、リソールレッド、レーキレッド、ブリリアントスカーレット、チオインジゴレッド、青色顔料としては、群生、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、フェロシアンブルー、インジゴ、緑色顔料としては、クロムグリーン、ビリジアンナフトールグリーン、フタロシアニングリーン等があげられる。
【0061】
また、封止液17に分散する顔料だけでなく、封止液17に溶解する各種染料も有色成分として用いることが可能である。染料は各種染料法より例示できる。具体的には、直接染料、塩基性染料、カチオン染料、酸性染料、媒染染料、酸性媒染染料、硫化染料、建染染料、ナフトール染料、分散染料、反応染料などが挙げられる。特に、樹脂を染色する場合には、分散染料が選択されることが多い。
【0062】
封止液17に界面活性剤が添加されていてもよい。封止液17に界面活性剤を添加することで、封止効率を上げることができる。界面活性剤の種類や濃度は特に限定されないが、試薬15や微小孔アレイ層5の材料との相性を鑑みて設定することができ、0.001%〜10%の範囲であることが好ましい。
【0063】
また、封止液17として、上記の油性の封止液17と上記の熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂から構成された封止液17とを併用することもできる。たとえば、油性の封止液の送液後に熱硬化性樹脂から構成された封止液を送液することにより、蛍光を観察する際のノイズを低減することができる。
【0064】
本実施形態における解析方法について、上記の解析デバイス2を用いた場合を例として説明する。なお、解析方法について、上記の解析デバイス2を用いることは必須でない。
以下では、解析対象物が核酸であり、核酸の濃度を測定する例を示す。
【0065】
まず、ビーズ14と、解析対象物を含む試料16とを混合する。
本実施形態では、解析対象物である核酸を、ハイブリダイゼーションによってビーズ14に捕捉させる。試料16に含まれる核酸には、解析対象となる核酸以外の核酸も含まれている。ビーズ14は、解析対象となる核酸に対して相補的なプローブによって修飾されているので、解析対象となる核酸を特異的に捕捉することができる。ビーズ14上に結合している核酸捕捉用プローブとしては、例えば目的核酸と相補鎖を形成するDNA、RNA、BNA、PNAなどの核酸から任意のものを選択できる。
【0066】
目的配列の核酸を捕捉するためのプローブが結合したビーズ14のプローブ部分に目的の核酸をハイブリダイゼーションさせる工程において、目的の核酸を効率よくビーズ14に捕捉させるために、目的の核酸を二本鎖から一本鎖に解離させることや、目的の核酸における自己ハイブリダイゼーションを解くことも可能である。前記方法は、アルカリ変性による方法や、熱変性による方法または酵素による方法から選ぶことができる。熱変性による方法としては、例えばサーマルサイクラーを用いてもよい。サーマルサイクラーを用いるのは、目的配列の核酸を効率よくビーズ14に捕捉させるためである。
【0067】
サーマルサイクラーを用いて、目的核酸とビーズ14上のプローブとをハイブリダイゼーションさせる場合、ハイブリダイゼーション効率をさらに高めるために熱対流が起こりやすい構造のチューブ(容器)を用いてもよい。熱対流が起こりやすい構造としては、例えば、チューブの下部を薄めに形成し、上部は厚めに形成し、チューブ内の溶液の熱分布を変えることによって、熱対流が起こりやすくされていてもよい。また1つのチューブを形成している材質を複数選択することで溶液の熱分布を変え、熱対流を起こしてもよい。
例えば、チューブ下部は熱が伝わりやすい材料でできており、上部は熱が伝わりにくい材料でできていてもよい。
【0068】
また、例えば、1つの装置にボタンを複数個付けておき、それぞれのボタンによって反応に必要な温度になるように調整できるようにしてもよい。また、サーマルサイクラーや、複数のボタンつきホットプレートではなく、複数のホットプレートを用意して、それぞれ必要な温度に設定しておき、ハイブリダイゼーションを行ってもよい。また一台のホットプレートで温度を変えながらハイブリダイゼーションを行ってもよい。
【0069】
また、ビーズ14上のプローブ核酸にターゲット核酸をハイブリダイゼーションさせる過程において、加温作業の代わりに、攪拌することでハイブリダイゼーション効率を上げてもよい。攪拌するスピードは600rpmから3000rpmの任意のスピードを選べるが、核酸の損傷を防ぐために好ましくは600rpmから2000rpmがよい。また攪拌時間は任意の時間でよいが、ハイブリダイゼーション効率が悪い場合は一晩攪拌してもよい。
【0070】
撹拌しながらのハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション溶液を磁石付き容器に入れ、ホットプレートスターラーまたは通常のスターラーを用いて回転させながら反応させる。これにより、ハイブリダイゼーション溶液を混合しながらハイブリダイゼーション反応をさせることが出来る。攪拌を行う場合は、ビーズ14が再分散しやすいように、攪拌しやすいように、レイノルズ数が高くなる条件すなわち乱流が発生する条件が選択される。本実施形態におけるハイブリダイゼーションを撹拌しながら行う場合には、レイノルズ数は、数百〜1000程度が好ましい。
【0071】
ビーズ14に解析対象物を捕捉させた後、ビーズ14を回収して試薬15と混合する。
例えば磁気ビーズを使用した場合には、ハイブリダイゼーションが終わったら、磁気スタンドを用いてビーズ14をチューブの底に集め、上清をピペットにより取り除く。他の方法としては、ハイブリダイズ後のビーズを含む溶液をピペットチップに吸い取った後、磁石をピペットチップに当てて、ビーズ14を捕捉した状態で、液のみ排出する。その後、検出用試薬15を吸引し、磁石を外してビーズ14と試薬15を攪拌した後に、ビーズ14の入った試薬15を検出デバイスに導入してもよい。使用する磁石は、ピペットチップの側面から当ててもよい。また、ピペットチップに装着可能なドーナツ状の磁石を使用することもできる。
また、シリカビーズ等磁気ビーズ以外のビーズ14を使用した場合には、遠心分離によりビーズ14を回収して検出用試薬15と混合する。この場合、ビーズ14の直径よりも孔径の小さなフィルターを使用してビーズ14を分離してもよい。
【0072】
ビーズ14に対して非特異的に結合した物質を除去するために、洗浄液を用いてビーズ14を洗浄してもよい。
【0073】
解析対象を捕捉したビーズ14と解析対象を検出するための検出用試薬15が混合された後、この混合液を、
図2に示すように、例えば手作業で解析デバイス2の液体注入部11に注入する。
解析対象物を含む溶液を空の解析デバイス2の液体注入部11から導入する場合、流路9内の一部のみを満たす微量の溶液を導入し、続けて封止液17を導入することで、溶液に満たされた部分に形成された収容部6に溶液を導入しつつ、収容部6には入らなかった溶液が封止液17で押し出されてその先の流路9内の一部を満たし、この部分に形成された収容部6に溶液を導入しつつ、さらに封止液17で押し出されて収容部6には入らなかった溶液が、さらにその先の流路9内の一部を満たすことを繰り返すことで、微量の溶液を効率よく収容部6へ導入してもよい。
【0074】
試料16と試薬15との混合液を収容部6へ収容する方法は上記の方法には限られない。
たとえば、解析デバイス2の内部を事前に事前バッファーで満たしておき、試料16(解析対象物を捕捉したビーズ14)と試薬15との混合液を液体注入部11から導入して事前バッファーと置換することで収容部6へ混合液を導入してもよい。
空の解析デバイス2の液体注入部11から溶液を導入して解析デバイス2に遠心力を加えることで収容部6へ混合液を導入してもよい。
解析デバイス2内の空気が溶け込むことが出来る容量の溶液や事前バッファーを液体注入部11から導入し続けることで収容部6へ混合液を導入してもよい。
【0075】
解析デバイス2に事前に何かしらの液を導入しておく場合は、流路9の入口8と出口10に封をする。封をする方法としては、蓋により栓をするタイプでもフィルムシールでカバー部7上面を封止するタイプでもよい。
【0076】
また、ビーズ14と試薬15とを混合せずに、先にビーズ14を解析デバイス2の収容部6に導入し、その後、試薬15を解析デバイス2に送液してもよい。この場合、収容部6内でビーズ14と試薬15とが接触して生化学的反応が開始可能となる。
【0077】
混合液を液体注入部11から流路9へ注入する操作は、ピペットや分注装置により行われてもよい。また、溶液を測り取ったピペットチップを入口8に刺し、ピペットチップをピペッターから外して自然に液を注入することで送液速度を人手による差が無く一定にして行ってもよい。この場合、ピペットチップ内の溶液の液面の高さは、解析デバイス2の流路9より上にあることが望ましい。また、溶液の量は解析デバイス2内を満たすことが出来る量以上であることが好ましいが、これに限らない。
【0078】
解析デバイス2の流路9内に、ビーズ14、試薬15、及び解析対象物を含む試料16の混合液を導入した後、
図3に示すように、流路9に封止液17を導入することによって収容部6を個別に封止する。収容部6に収容されたビーズ14は重力により収容部6内に留まり、収容部6内に収容された試薬15は収容部6内が親水性であることにより収容部6内に留まる。
【0079】
廃液貯蔵部12に封止液17が入り込むまで封止液17を流路9に導入することによって、流路9内における余剰の試薬15及び試料16が廃液貯蔵部12へと押し流される。
廃液貯蔵部12内において、ビーズ14を除く試薬15よりも封止液17の方が比重が高いので、試薬15と試料16との混合液は封止液17に重層された状態となっている。
【0080】
封止液17により収容部6が個別に封止された後、シグナル増幅反応等の生化学的反応を生じさせるための処理を行う。これにより、収容部6内に解析対象物と試薬15とが適切に収容されている場合には、蛍光シグナルを検出可能となる。なお、生化学的反応の種類によっては、蛍光ではなく燐光を検出する場合もある。
【0081】
シグナル増幅反応の一例として、収容部6内でインベーダー反応を行う例を示す。
インベーダー反応は、所定の温度条件で一定時間反応を行う等温反応である。このため、インベーダー反応を行う場合には、温度が一定に保たれたチャンバー内に、解析デバイス2を静置する。また、温度が一定に保たれたホットプレート上に解析デバイス2を静置してもよい。反応温度に加温するホットプレートなどの加熱装置は、タイマー付きの装置を使用してもよい。
【0082】
蛍光検出のしやすさを向上させるために、検出用試薬15の反応時間を長くしたり、検出用試薬15中の蛍光物質濃度を高くしたりしてもよい。または、検出装置の感度を上げてもよい。
【0083】
インベーダー反応にビーズ14を使用する際、使用するビーズ14は、解析対象物と検出用試薬15との反応で生じた蛍光の波長とは異なる波長の蛍光を発する蛍光ビーズを用いてもよい。この場合、蛍光検出により、ビーズ14をカウントすることができる。
【0084】
蛍光や燐光を検出する際、解析デバイス2の温度を最適な温度に適宜変更することで、検出に最適な光の強度に調整することが可能となる。蛍光物質は温度の上昇とともに蛍光強度が減少するため、蛍光測定時に温度の管理をすることでシグナル値を向上させることが可能となる。
【0085】
蛍光や燐光の検出は、蛍光顕微鏡などの装置を用いて行うことができる。
本実施形態において使用される蛍光顕微鏡は、顕微鏡画像を撮像するためのカメラと、カメラが撮像した顕微鏡画像を解析するソフトウェアがインストールされたコンピュータシステムとに接続されている。
【0086】
本実施形態では、複数の収容部6を視野に含む顕微鏡画像を撮像して、この画像における蛍光の有無に基づいて、シグナル増幅反応が起こった収容部6の数を計測する。これにより、収容部6全体のうち、解析対象物を捕捉したビーズ14が含まれる収容部6の数を計測することができる。
【0087】
解析デバイス2を使用した蛍光の観察方法は、解析デバイス2を直接顕微鏡に設置する方法でもよいが、小さな解析デバイス2の場合には、蛍光顕微鏡のステージから解析デバイス2が落下することを防止するためのつっかえ棒等をもつ治具を利用する。または、治具はテープ状のものでもよい。
【0088】
観察したい対象物が幾層にもピントのZ方向(対物レンズの光軸方向)にある場合には、それぞれを選択してピント合わせを自動で行うために、通常のオートフォーカスに加え、画像選択、認識機能を蛍光顕微鏡に持たせてもよい。例えば、収容部6中のビーズ14にピントを合わせるために、一旦ピントを収容部6に合わせ、その場所から、上・下に一定量微動して、ビーズ14を捜す機能として用いることができる。
また、ビーズ14に焦点が合うように画像処理・画像認識アルゴリズムを入れてもよい。
【0089】
画像処理に関しては、コントラストを上げる方法や、エッジを際立たせる方法がある。
一方、画像認識に関しては登録してある画像、特にピンボケ、照明ムラ、汚れ等が発生したビーズ14がどのように観察されるか画像データベース化しておくと、適合精度が上がり、なお好ましい。好ましくはさらに、透過照明で、位相差で、エッジを際立たせた状態で、ビーズ14と収容部6のピント方向のZ軸上の位置を記憶させて、蛍光照明に切り替えて蛍光画像で、ビーズ14と収容部6を確認するような仕組みにすれば、より精度が上がり望ましい。
収容部6を縦長くし、フォーカスしてよい範囲を広げ、ビーズ14を捜すようにすることも可能である。
【0090】
フォーカス調整用の基準部材を使用して蛍光顕微鏡のレンズの位置を設定後、測定したい解析デバイス2を蛍光顕微鏡にセットする。収容部6を縦に長くし、フォーカスしてよい範囲を広げることで、蛍光顕微鏡における制約を減らすことも可能である。蛍光キューブの蛍光フィルターに厚みの差がある場合には、蛍光フィルターごとに光路長が変わらないように、フィルターの組み合わせを考えるか、それぞれの蛍光キューブに合わせて対物レンズを微動させフォーカスさせてもよい。
もしくは、フィルターによってオフセットするような光路長が変化する光学素子で、調整してもよい。
【0091】
低倍率のレンズで広範囲の写真をとり、ビーズ14や光った収容部6のカウントを行う。被写体の平行出しを精度よく行うことで、各ショットごとのオートフォーカスの必要性は減らせるが、収容部6を縦に長くしフォーカスの合う範囲(被写界深度)を広げてもよい。
解析デバイス2に照射する励起光を強くすることで、蛍光が暗くても、長時間の露光は必要なくなり、短時間で測定できる。また、解析デバイス2の照射する励起光を弱くした場合、露光に必要な時間は増加するが、蛍光の退色を低く抑えることができる。
【0092】
蛍光顕微鏡に使用される光源として、水銀ランプや発光ダイオード等が採用されてよい。
最近、LED光源が蛍光顕微鏡用に販売されている。まだ、それほど多くの波長の種類がなく、すべてで水銀ランプよりLEDが強い励起光源になる訳ではないが、波長が合えば励起波長に合った強い励起光が可能で、蛍光強度も強いが、蛍光劣化は少ない光源とすることが可能で、露光時間を短くすることが可能となる。
UV側をカットでき、励起光幅の広い適切なフィルターを選べば、励起光を強くしたことと同じになり、露光時間を減らすことが可能である。
【0093】
倍率5倍の対物レンズでもカウント出来るように積算撮影等の画像処理を行う。
例えば、400万画素程度のカメラで撮影する場合、1000万画素クラスに変更して、解像度を高くする。
低倍率の対物レンズの撮影結果から、撮影条件を決定することも可能である。例えば、低倍率の対物レンズで撮影を行い、画像全体の輝度が高かった場合にはターゲット濃度が高いため、多くの収容部6を観察せず撮影枚数を減らすことが可能であり、低倍率の対物レンズで撮影をしたときに全体の輝度が低かった場合には、ターゲット濃度が低いため撮影枚数を増やすようにすることも可能である。低倍率で撮影した後に、撮影を高倍率に切り替えることも可能である。
【0094】
蛍光顕微鏡を用いた撮影時において、ビーズ14と蛍光とを別々に撮影してもよい。数種類の異なる波長の励起光又は蛍光を用いて撮影してもよい。ビーズ14は1視野(又は数視野)だけを測定し、全体の封入率を決定してもよい。この場合、測定時間を短縮することができる。または、ビーズ14は実験回数によらず封入率が一定とし、測定を行わずにデフォルトの封入率で計算することも可能である。この場合、測定時間をさらに短縮することができる。
【0095】
顕微鏡画像を撮像するカメラは、CCDやCMOSイメージセンサを備えた公知のカメラから適宜選択することができる。顕微鏡の倍率が10倍では、視野が狭くなるが、CMOSセンサのチップの大きいカメラにすれば、視野範囲は大きくなる。倍率が下がるので、視野範囲は広がる。
【0096】
撮像時における階調数を下げることでデータ量を削減することができる。また、必要な部分だけ階調数を高くしたり、不要な部分を撮像範囲から除外したりしてデータ量を削減してもよい。
【0097】
カメラ自体の性能として12bit程度の階調である場合には、演算するときには、14bitで演算することによって、桁落を防ぐことができる。なお、最終結果だけであれば、階調数を8bitにすることも可能である。また、RAID1〜5の冗長性のあるサーバを専用に持ってこのサーバにデータを保存する事がのぞましい。
【0098】
顕微鏡画像を用いた解析において、収容部6が蛍光を発しているか否かは、あらかじめ決められた値を閾値としてもよい。収容部6の蛍光強度を未発光部分との蛍光強度の比で表すことで、見かけ上、収容部6の蛍光強度のムラがなくなる。
【0099】
もともと、励起光、カメラ側のレンズの透過率が周辺で弱くなっているので、予め補正してもよい。その場合は、標準の被写体として、炭酸バリウム等の粉末を固めたものが反射率の被写体として使われることが多いのでその標準反射体を撮影して、ソフトウェアで減光量を補正することが可能である。または、画像の中心、すなわちレンズの中心の画像をつなぎ合わせて、周辺部の減光の割合を算定し、補正する方法も、補正方法の一つとして利用できる。
【0100】
異物や抜けがあった画像は使用しない等の対策も必要であり、収容部6と同等のサイズに光っている点を画像処理で取り除くこともできる。例えば、収容部6のサイズが5μmである場合、5μm未満または5μmより大きいサイズの光っている点は収容部6とは見なさず、測定対象から除外することが出来る。
【0101】
顕微鏡画像における複数の収容部6の位置は、顕微鏡装置に付属するコンピュータシステムにおいて、予め、パターンとして記憶されている。着色された封止液17を使用することで、解析デバイス2の自家蛍光や解析デバイス2内の乱反射を抑えることができる。
【0102】
自家蛍光のリファレンス(校正用)を測定するときに、校正用のベタ膜(全面形成膜)を先に測定し焦点距離を測った後に、解析デバイス2を測定することもできる。また、必要なところ以外に励起光があたらないようにマスクして励起露光することで自家蛍光を低く抑えることもできる。
【0103】
測定に必要な条件を満たした場合には、コンピュータシステムは、自動で解析対象物の解析結果、例えば、解析対象物が核酸である場合には、変異率、濃度を出せるようにする。1つでも条件を満たさない場合には、結果としては、参考とし、何が条件として不足しているかを明確に表示させることで、間違った結果が自動で出てくることを防止する。たとえば、収容部6が全部明るい、あるいは収容部6が全部暗い場合は、生化学的反応が生じた収容部6における蛍光が生化学的反応が起こらなかった収容部6における蛍光よりもn倍高い値というような比較ができないので、これをもってエラーとする方法も採用できる。
また、蛍光強度が規定の値以上高い値を示す収容部6の割合が、たとえば全体の10%以上の場合は、エラーとすることもできる。特に、解析データとして成り立つ条件を明らかにし、その上で判定する基準を設けることができる。
また、エラーに関するデータを蓄えておき、エラーの参照のデータベースを構築することで、エラーであるか否かの判定が難しいデータについて都度確認を要求するプログラムとしてもよい。また、エラーの可能性があることを認識するような仕組みを設けてもよい。また、判定基準よりも規定の倍数以上高い値を示すものに関しては、生化学的反応が起こらなかった収容部6にも生化学的反応が生じた収容部6にも含めない(すなわち無視する)とする方法も採用できる。
【0104】
必要最低限の励起光を照射する仕組みとして、操作していない場合には、励起光を切り、それまでの画像を表示する方法や、励起光を弱いところから徐々に上げるようにすることができる。励起光が強い設定で終了しても、サンプルを変えると弱いところから、立ち上がるようにすることができる。もしくは、強い光の場合は、励起光ONと同時に連動してカメラで撮影する。
カメラの感度は、最大もしくは、1秒程度(初期設定で、0.1秒にも、5秒にも、10秒にも設定できる)の露光からはじめる。その間は、励起光は強めることが出来ない。
【0105】
あらかじめビーズ14なしで撮影し、次にビーズ14ありの撮影をしてその画像の差分でビーズ14の画像を抽出することもできる。のぞましくは、ピントを多少ずらした場合や、多少傾いて、センターは合っていて、右が+、左が−でぼけているような画像、照明にムラのある場合等を組み合わせて参考画像として、ビーズ14のない収容部6の画像を登録しておくとよい。
【0106】
ビーズ14の参考画像を登録し、似たものを判定する画像処理アルゴリズムで、ビーズ14を抽出しカウントすることも出来る。画像データベースとして多くの例が集まれば、適合率を高めることができる。蛍光を発する収容部6をカウントする場合に使用する蛍光の波長によっては、別の蛍光波長のほうがカウントしやすい場合もある。または、別の波長で検出可能なビーズ14を選定し使用してもよい。
【0107】
このように、本実施形態に係る解析デバイス2を使用して、収容部6内で生化学的反応が生じることで蛍光観察時に蛍光を発する収容部6をカウントすることができる。
【0108】
本実施形態に係る解析デバイス2の作用について説明する。
本実施形態では、試料16と試薬15との混合液と封止液17との界面18近傍において、混合液と封止液17とが撹拌されたり、混合液中の溶質が封止液17へ移行したりすることが考えられる。試料16と試薬15の混合液は、蛍光を発する生化学的反応が起こっているので、励起光の照射に対応して蛍光を発し得る状態にある。このため、試料16と試薬15との混合物の余剰分が収容部6の近傍に位置していると、余剰分による蛍光と収容部6における蛍光との区別がつきにくくなってしまう。また、試料16と試薬15との混合物の余剰分が封止液17と混合されて収容部6近傍まで移動してくる場合にも、余剰分による蛍光と収容部6における蛍光との区別がつきにくくなってしまう。
【0109】
これに対して、本実施形態では、廃液貯蔵部12と収容部6との最短距離が流路9に沿って2mm以上離れているので、混合液と封止液17との界面18は収容部6から十分に離れた位置にある。このため、本実施形態では、上記の撹拌や移行による溶質は、収容部6における生化学的反応に影響を及ぼしにくい。また、上記の撹拌や移行による溶質は、励起光の照射に対応して蛍光を発し得るが、収容部6から十分に離れているので、蛍光の測定に影響を及ぼしにくい。その結果、本実施形態に係る解析キット1及び解析デバイス2によれば、廃液貯蔵部12に貯蔵された試薬15が収容部6における蛍光観察の邪魔になりにくいので、再現性の高い解析をすることができる。
【0110】
本実施形態に係る解析キット1及び解析デバイス2は、廃液を回収するための装置を別途用意する必要がないので、全体として小型化可能である。
【0111】
また、本実施形態に係る解析キット1では、封止液17の比重がビーズ14を除く試薬15の比重よりも高いので、試料16と試薬15との混合液における余剰分が廃液貯蔵部12に移行した後に廃液貯蔵部12から流路9へと逆流しにくい。
【0112】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本実施形態に係る解析キットにおける解析デバイスの模式的な断面図である。
本実施形態に係る解析デバイス2Aにおいて、廃液貯蔵部12と収容部6との最短距離は、流路9に沿って2mm以上離れている必要はない。そのかわり、本実施形態に係る解析デバイス2Aにおいては、試料16及び試薬15が封止液17上に重層された状態で廃液貯蔵部12に貯蔵されている時の試料16及び試薬15と封止液17との界面18と収容部6との最短距離は、流路9に沿って2mm以上離れている。界面18の位置は、液体注入部11から注入される封止液17の量に対応している。すなわち、本実施形態では、界面18と収容部6との最短距離L2が流路9に沿って2mm以上離れるようにするために必要な量の封止液17が液体注入部11から注入されるようになっている。たとえば、本実施形態における界面18と収容部6との最短距離L2は、例えば、複数の収容部6において最も廃液貯蔵部12に近い位置にある収容部6から界面18までを流路9及び廃液貯蔵部12内を通じて最短でつなぐように屈曲した直線に沿って測った距離でよい。
なお、界面18と収容部6との最短距離は、流路9の中央を通るように測った距離としてもよい。
封止液17の注入は、手作業で行われてもよい。また、封止液17の注入は、所定量の封止液17を自動的に注入するシステムにより行われてもよい。
なお、
図4においては、廃液貯蔵部12が流路の垂直方向に位置する(流路9の上方に位置する)例を示したが、廃液貯蔵部12が流路の水平方向に位置していてもよい。すなわち、
図4における解析デバイス2Aの側面に廃液貯蔵部12が設けられていてもよい。廃液貯蔵部12が流路の水平方向に配置された場合、微小孔アレイに格納されなかった試料は、観察面方向(水平方向)へ移動させることもできる。廃貯蔵部12が流路の水平方向に配置された場合においても、廃液貯蔵部12に貯蔵されている時の試料16及び試薬15と封止液17との界面18が形成されるように構成してもよく、界面18と収容部6との最短距離は、流路9に沿って2mm以上離れているように構成することが好ましい。
廃液貯蔵部12を流路の水平方向に配置するように構成した場合には、解析デバイス2Aを平たくすることができる(厚みを薄くすることができる)ため、持ち運びに優れ、装置との干渉も少なくすることができる。
なお、廃液貯蔵部12の配置は、流路の垂直方向、流路の水平方向に限られず、試料の解析、検出を妨げない範囲においては、流路の斜め上、流路の斜め下等に配置されていてもよく、本実施形態の例示に限定されない。
【0113】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。
図5は、本実施形態に係る解析装置(解析システム)の模式図である。
図5に示す本実施形態に係る解析装置(解析システム)20は、上記の第1実施形態に開示された解析デバイス2および上記の第2実施形態に開示された解析デバイス2Aを用いて自動的に解析を行うシステムを含む装置である。以下では、第1実施形態に開示された解析デバイス2を用いて解析を行うシステムについて説明する。第2実施形態に開示された解析デバイス2Aも、本実施形態の解析システム20において同様に利用可能である。
【0114】
解析システム20は、解析デバイス2を載置するためのステージ21と、ステージ21上の解析デバイス2に対して各種液体を注入する注液装置22と、対物レンズ31を含む光学系30と、光学系30に接続された撮像部35と、光学系30を通じて解析デバイス2における収容部6に励起光を照射する光源部36と、撮像部35が撮像した画像を解析する解析装置37とを備えている。
【0115】
注液装置22は、試料16及び試薬15を解析デバイス2へ注入するための第一注液部23と、封止液17を解析デバイス2へ注入するための第二注液部24とを有している。
【0116】
第一注液部23として、公知の自動分注装置の構成を適宜選択して採用することができる。たとえば、第一注液部23は、試料16及び試薬15が混合された状態で収容された容器(不図示)から、この混合液を解析デバイス2の液体注入部11へと分注する。また、第一注液部23は、第1実施形態に開示されたハイブリダイゼーションの処理をするための不図示の装置と連携し、ビーズ14に解析対象物を捕捉させた後に、解析対象物を補足したビーズ14を試薬15と混合して解析デバイス2に注入することができるようになっていてもよい。
【0117】
第二注液部24は、たとえば、タンク25と、配管26と、ノズル27と、ポンプ28と、制御部29とを有している。本実施形態では、タンク25とノズル27とはチューブによって接続されており、配管26にポンプ28が接続されている。制御部29は、解析デバイス2および光学系30の構成に対応して封止液17の注入量を決定し、ポンプ28を駆動させてタンク25からノズル27を介して解析デバイス2へと封止液17を送液する。
【0118】
光学系30は、ステージ21上の解析デバイス2の各収容部6の底面6a近傍に対物レンズ31の焦点を設定可能であり、各収容部6内における蛍光を観察するために使用される。本実施形態では、対物レンズ31またはステージ21を対物レンズ31の光軸方向へ移動させることによって、焦点位置32を各収容部6の底面6aに設定することができる。光学系30の対物レンズ31の焦点位置32が収容部6の底面6aに設定されている場合、対物レンズ31の光軸方向において焦点位置32を中心として一定の範囲(焦点深度33)の範囲を好適に撮像可能である。
【0119】
撮像部35は、光学系30を通じて撮像部35へ伝わる蛍光を検出するためのイメージセンサを有している。撮像部35は、蛍光画像を撮像して解析装置37へと出力する。
【0120】
光源部36は、解析デバイス2を用いた生化学的反応において使用される蛍光標識物質の種類に対応した波長の励起光を光学系30を通じて解析デバイス2へと照射する。
【0121】
解析装置37は、解析デバイス2の収容部6における蛍光の有無を、撮像部35が撮像した画像に基づいて判定する。さらに、解析装置37は、解析デバイス2における収容部6のうち蛍光を発している収容部6の数を計測し、解析デバイス2に注入された試料16における解析対象物の濃度を算出する。
【0122】
本実施形態に係る解析システム20における制御部29の制御動作のうち、封止液17の注入量を決定するための制御動作について説明する。
制御部29は解析デバイス2の形状に関するデータと、対物レンズ31の焦点深度33に関するデータとを記憶している。
解析デバイス2の形状に関するデータとは、少なくとも、対物レンズ31の光軸方向における収容部6の底面6aの位置と、解析デバイス2に液体を注入する量と廃液貯蔵部12における当該液体の表面位置との関係を示すデータである。
【0123】
底面6aの位置は、例えば、ステージ21上面(解析デバイス2が載置される面)を基準とすることができる。
解析デバイス2に液体を注入する量と廃液貯蔵部12における当該液体の表面位置との関係を示すデータは、テーブルや計算式等として制御部29に記憶されている。
【0124】
制御部29は、収容部6の底面6aの位置と、対物レンズ31の焦点深度33との情報を用いて、対物レンズ31の焦点位置32が収容部6の底面6aに位置している場合において、対物レンズ31の光軸方向においてピントが合う範囲の広さを取得する。この範囲は、例えば、解析装置37を用いて蛍光の有無を判定する際に誤判定が発生する頻度が所定の閾値以下の頻度となるように、対物レンズ31のレンズデータに基づいて予め決められている。制御部29は、対物レンズ31の光軸方向において、収容部6の底面6aから、ピントが合う範囲における対物レンズ31から遠い側の境界までの距離(蛍光取得可能距離34)を取得する。
【0125】
制御部29は、解析デバイス2に液体を注入する量と廃液貯蔵部12における当該液体の表面位置との関係を示すデータに基づいて、収容部6の底面6aから表面位置までの距離L3が上記の蛍光取得可能距離34以上となるように、好ましくは距離L3が上記の蛍光取得可能距離34よりも長くなるように、封止液17の注入量を決定する。決定された注入量だけ封止液17が解析デバイス2に注入されると、封止液17は試料16及び試薬15を流路9から廃液貯蔵部12へと押し出す。さらに、封止液17の注入が終了した時点において、廃液貯蔵部12における試料16及び試薬15の混合液と封止液17との界面18の位置は、対物レンズ31の光軸方向において、収容部6の底面6aから蛍光取得可能距離34よりも離れた位置にある。
【0126】
本実施形態の解析システム20の作用について説明する。
本実施形態の解析システム20の使用時には、封止液17の注入が終了した時点において、試料16及び試薬15の余剰分並びに流路9に供給された封止液17の一部が、廃液貯蔵部12に廃液として貯蔵される。試料16及び試薬15の混合液は、廃液貯蔵部12内において、封止液17上に重層された状態となる。廃液貯蔵部12における試料16及び試薬15の混合液と封止液17との界面18の位置は、対物レンズ31の光軸方向において、収容部6の底面6aから蛍光取得可能距離34よりも離れた位置にある。このため、廃液貯蔵部12に貯蔵された試料16及び試薬15は、光学系30においてピントが合う範囲外に位置している。廃液貯蔵部12内の試料16及び試薬15の混合液は、解析対象物及び試薬15を含んでいるので、励起光の照射に対応して蛍光を発し得る状態となっている。本実施形態では、光学系30を通じて廃液貯蔵部12内の混合液に励起光が照射された場合、廃液貯蔵部12内の混合液が焦点位置32から離れた位置にあるので、蛍光強度が低い。さらに、廃液貯蔵部12内の混合液はピントが合う位置にないので、蛍光を発していても画像上で光点とならない。このため、本実施形態に係る解析システム20では、廃液貯蔵部12の近くにある収容部6における蛍光と、廃液貯蔵部12内における蛍光とのS/N比を、解析装置37において収容部6の蛍光の有無を判定できる程度に十分に高めることができる。
【0127】
本実施形態に係る解析システム20によれば、廃液貯蔵部12と収容部6との距離が近くても、廃液貯蔵部12に貯蔵される封止液17によって、余剰の試料16及び試薬15を収容部6から遠ざけることができる。このように封止液17の注入量を制御部29が制御することによって、廃液貯蔵部12の近くにある収容部6における蛍光と、廃液貯蔵部12内における蛍光とのS/N比を高めることができる。その結果、本実施形態に係る解析システム20では、廃液貯蔵部12に貯蔵された試薬15が収容部6における蛍光観察の邪魔になりにくく再現性の高い解析をすることができるとともに、収容部6から廃液貯蔵部12までの距離を短くして解析デバイス2を小型化することができる。
なお、
図5においては、上記第1実施形態および第2実施実施形態と同様に、廃液貯蔵部12が流路の垂直方向に位置する(流路の上方に位置する)例を示したが、廃液貯蔵部12が流路の水平方向に位置していてもよい。すなわち、
図5における解析デバイス2、2Aの側面に廃液貯蔵部12が設けられていてもよい。廃液貯蔵部12が流路の水平方向に配置された場合、微小孔アレイに格納されなかった試料は、観察面方向(水平方向)へ移動させることもできる。廃貯蔵部12が流路の水平方向に配置された場合においても、廃液貯蔵部12に貯蔵されている時の試料16及び試薬15と封止液17との界面18が形成されるように構成してもよく、界面18と収容部6との最短距離は、流路9に沿って2mm以上離れていることが好ましい。
廃液貯蔵部12を流路の水平方向に配置するように構成した場合には、解析デバイス2、2Aを平たくすることができる(厚みを薄くすることができる)ため、持ち運びに優れ、解析システム20に用いる装置との干渉も少なくすることができる。
なお、廃液貯蔵部12の配置は、流路の垂直方向、流路の水平方向に限られず、試料の解析、検出を妨げない範囲においては、流路の斜め上、流路の斜め下等に配置されていてもよく、本実施形態の例示に限定されない。
【0128】
(変形例)
上記各実施形態に開示された解析デバイス2の変形例について説明する。
本変形例の解析デバイス2は、ビーズ14を使用しない解析に使用される。
解析対象物を含む溶液を解析デバイス2に直接導入することで、収容部6に解析対象物を導入し、解析を行う。解析対象物の濃度が低い場合は、解析対象物を含む溶液を解析デバイス2に導入する前にプレ増幅を行ってもよい。プレ増幅は、ポリメラーゼチェーン反応(PCR)を用いてもよい。PCRは必要に応じて数サイクルから数十サイクル行ってもよく、好ましくは、10サイクル以上がよい。また、解析対象物がRNAの場合は、解析対象物を含む溶液を解析デバイス2に導入する前に逆転写PCRを行ってもよい。
【0129】
これらの増幅反応は、市販のチューブで実施してもよいが、プレ増幅を行うための部位が解析デバイス2に設けられてもよい。プレ増幅後の増幅試薬15と解析対象物を含む溶液を解析デバイス2に送液し、解析デバイス2内で増幅反応を行った後、検出反応用試薬15を添加し、その後、封止液17で封をして検出反応(シグナル増幅反応)を収容部6に対して行ってもよい。
【0130】
その他、解析対象物の濃度が低い場合は、複数のデバイスを用いることで、解析対象物が収容部6に存在する数を増やして解析を行ってもよい。また、解析対象物を含む溶液をロスなく、解析に使用したい場合も同様に、複数のデバイスを用いて解析を行ってもよい。さらに、この場合、解析対象物を含む溶液を蒸発濃縮させてから、デバイスに導入してもよい。
【0131】
また、ビーズ14を使用する場合と比較して、ビーズ14を使用しない場合には核酸が収容部6に入りにくいことに対応して、例えば収容部6の容積を増やすことで、より多くの核酸を無駄なく収容部6にトラップしてもよい。この場合、収容部6の直径は、100nm以上100μm以下の範囲で選べるが、好ましくは1μmから100μmである。その理由として、収容部6の直径が1μmより小さいと収容部6内に核酸を保持しておくのが難しくなると考えられるためである。また、収容部6の直径が100μmより大きいと、一つの収容部6に複数の核酸が入ってしまう。収容部6の深さは100nm以上100μm以下の範囲で選べるが、好ましくは1μmから10μmである。収容部6の深さが1μmより小さいと収容部6内に核酸を保持するのが難しくなる。また収容部6の深さが100μmより大きいと一つの収容部6に複数の核酸が入ってしまう可能性がある。
収容部6の容積を増やす場合、反応速度の低下が懸念される。よって、縦長い収容部6にすることで、反応速度が低下しても観察方向の蛍光シグナルを積算し、観察を容易にすることができる。収容部6の深さと直径の比を1:1以上にすることが好ましいが、直径が小さくなりすぎるとカメラによる観察が困難になるため直径の長さを考慮して決定する必要がある。収容部6の深さと直径の比は、さらに好ましくは1:2以上である。
【実施例】
【0132】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0133】
[実施例1]
<解析デバイスの作製>
0.6mm厚であり、シクロオレフィンポリマー製であり、直径5μmの孔を100万個持つ基体部3を射出成形にて作製した。
【0134】
続いて、基体部3との隙間が100μmとなるように、カバー部7としてカバーガラスを基体部3上に設置した。基体部3とカバー部7との間には、粘着テープから構成されたスペーサ13が配された。
【0135】
さらに、
図5に示したような解析装置における注液装置22の第一注液部23を用いて、液体注入部11を介して、基体部3とカバー部7との間に、核酸を含まない水性液体を置換液として送液し、直径5μmの孔と、基体部3とカバー部7との間の隙間との全体に、水性液体を満たした。
本実施例では水性液体の組成は20mM MOPS pH7.5、15mM NaCl、6.25mM MgCl
2である。
【0136】
<試料と検出反応試薬との混合液の送液>
インベーダー反応試薬(1μM アレルプローブ、1μM インベーダーオリゴ、1μM FAM標識アーム、20mM MOPS pH7.5、15mM NaCl、6.25mM MgCl
2、50U/μL クリベース(登録商標))と、人工合成DNAとを混合して得た混合液Xを、注液装置22の第一注液部23を用いて、液体注入部11を介して基体部3とカバー部7との間の隙間に送液した。
ここで、人工合成DNAの濃度については、基体部3に形成された直径5μmの孔の1つに1分子が入るように、人工合成DNAの濃度が3pMとなるように人工合成DNAを混合液Xに添加した。
直径5μm高さ3μmの円柱の微小孔は59fLの体積となり、ポアソン分布に従うと仮定すると3pMの人工合成DNA濃度では100万個の微小孔のうち10%の微小孔に入ると推定される。
インベーダー反応試薬と人工合成DNAとの混合物を送液した後、注液装置22の第二注液部24を用いて、液体注入部11を介して基体部3とカバー部7との間の隙間に油性封止液17としてFC−40(SIGMA)を送液し、直径5μmの孔を封止することで、100万個の独立した核酸検出反応容器を構成した。
この際、
図5に示したように、収容部6の底面6aから廃液貯蔵部12における試料及び試薬の混合液と封止液との界面18までの距離L3が、0mm(試験A)、1mm(試験B)、2mm(試験C)、4mm(試験D)、8mm(試験E)となるように、封止液17の注液量を変えた条件で以下の蛍光観察の測定を行った。
【0137】
<蛍光強度の測定、収容部の底面から廃液貯蔵部における試料及び試薬の混合液と封止液との界面までの距離L3の検討>
次に、100万個の独立した核酸検出反応容器を有する本実施例の解析デバイスを、63°の条件で15分間インキュベートし、蛍光顕微鏡(
図5における光学系30、対物レンズ31、光源部36、撮像部35、解析装置37に対応する)で撮影し各孔の蛍光強度を観察した。
ここでは、反応後の解析デバイスは、蛍光顕微鏡を用いて蛍光画像を撮影した。
なお、蛍光顕微鏡の制御部は、ステージ上に載置された解析デバイスにおける複数の収容部の位置と、蛍光顕微鏡における対物レンズの焦点深度と、を取得可能なように構成した。
実施例1に係る蛍光顕微鏡で用いた対物レンズの焦点深度は、3μmであった。
【0138】
距離L3が0mmである試験Aにおいては、流路中に存在する試料の蛍光発光の影響により、蛍光を発する核酸検出反応容器の数は計測できなかった。
距離L3が1mmである試験Bにおいては、試験Aと同様に、廃液貯蔵部に存在する核酸に由来すると考えられるバックグラウンドの蛍光発光の影響が大きく、蛍光を発する核酸検出反応容器の数が計測できなかった。
距離L3が2mmである試験C、距離L3が4mmである試験D、距離L3が8mmである試験Eの条件においては、廃液貯蔵部に存在する核酸に由来すると考えられるバックグラウンドの蛍光発光の影響を受けずに、蛍光を発する核酸検出反応容器の数を計測することができた。
特に距離L3が2mmより大きいデバイスD、デバイスEにおいては、廃液貯蔵部に存在する核酸に由来すると考えられるバックグラウンドの蛍光発光の影響を受けずに、蛍光を発する核酸検出反応容器の数を再現性よく、かつ、ノイズ発生の影響をより低減して、計測することができた。
【0139】
これらの結果から、本実施例に係る解析デバイスを用いた解析装置によれば、2mmが蛍光取得可能距離34に相当すると考えられる(厳密には、1mmと2mmとの間に蛍光取得可能距離34が存在し、2mmが蛍光取得可能距離34との閾値に相当すると考えられる)。
すなわち、蛍光取得可能距離34(2mm)>L3の関係である場合、蛍光を発する核酸検出反応容器の数を計測することが困難であった。一方、蛍光取得可能距離34(2mm)≦L3の関係を満たす場合、本実施例において、蛍光を発する核酸検出反応容器の数を計測可能であることを確認した。
このように、収容部の底面から廃液貯蔵部における試料及び試薬の混合液と封止液との界面までの距離L3が2mm以上である(蛍光取得可能距離以上である)デバイスC〜デバイスEによれば、廃液貯蔵部に存在する核酸に由来すると考えられるバックグラウンドの蛍光発光の影響を受けずに、蛍光を発する核酸検出反応容器の数を計測することができることを確認した。
【0140】
なお、蛍光取得可能距離34(2mm)≦L3の関係を満たす場合、試料及び試薬が封止液上に重層された状態で廃液貯蔵部に貯蔵されている時の試料及び試薬と封止液との界面が、対物レンズの焦点が複数の収容部に設定されている場合の焦点深度の範囲外に位置することも確認した。
【0141】
[その他の実施例]
たとえば、上記の第1実施形態では、解析デバイスが核酸定量用のアレイデバイスとして使用される場合が示されているが、解析デバイスを用いた解析対象物は核酸には限られない。たとえば、本発明の実施形態に係る解析デバイスは、タンパク質や脂質や糖鎖を解析するためのアレイデバイスに適用することもできる。
【0142】
また、上記の第1実施形態では、試薬及び試料の混合液における溶媒よりも比重の大きなビーズを使用する例が示されているが、たとえば収容部が鉛直下方に開口するように(混合液の送液時に収容部が下向きに開口するように)形成されている場合には、溶媒よりも比重が小さなビーズを試薬に含有させることによって、試料中の解析対象物を収容部にビーズとともに収容することができる。
【0143】
また、生化学的反応に使用する各種の液体を事前に流路に送液し、流路内を溶液で満たしておいてもよい。例えば、検出反応試薬を事前に解析デバイスに充填しておき、長期間の保存を経て、封止液を流路に送液し、その後測定することができる。このとき、微小孔アレイ層とカバー部との間の入口及び出口を蓋材で封止しておく場合がある。蓋材はプラスチックや金属などの成型品、高分子ポリマーのゲル状材料や、フィルム状のシール材、ラミネートによるカバー部との接着を利用してもよい。
【0144】
上記各実施形態に開示された解析デバイスは、複数の解析デバイスが互いに連結された状態で提供されるようになっていてもよい。この場合、1解析ごとに解析デバイスを切り離して利用できるようになっていてもよい。
【0145】
また、解析デバイスは、ハイブリダイゼーション反応を行うためのスペースを有していてもよい。または、廃液貯蔵部においてハイブリダイゼーション反応を行うこともできる。
【0146】
また、上記の第3実施形態に開示された解析システムに適用可能な解析デバイスにおいて、廃液貯蔵部は、廃液貯蔵部内における試料及び試薬の混合液を対物レンズの焦点深度の範囲外に位置させることができるように配置されていれば、解析デバイスにおける任意の位置にあってよい。たとえば、各収容部に対する蛍光の観察をする際に流路の出口及び廃液貯蔵部が対物レンズの光軸上に位置するようになっていてもよい。
また、解析デバイスにおいて、流路の入口と出口とが兼用されるように、貫通孔を1つのみ有していてもよい。この場合、貫通孔の大きさは特に制限されない。たとえば、基板の厚さ方向から見たときに複数の収容部が含まれるような口径の貫通孔がカバー部に形成されていてもよい。この場合、収容部が配された領域において流路の上面が貫通孔によって開放された状態となっており、この領域では、収容部内における試料と試薬との混合液は封止液によって封止され、封止液上に試料と試薬との混合液の余剰分が重層された状態となる。この場合においても、試料と試薬との混合液の余剰分が対物レンズの焦点深度の範囲外に封止液によって移動されるように制御部が封止液の注入量を決定することで、試料と試薬との混合液の余剰分からの蛍光と収容部内からの蛍光とのS/N比を上記第3実施形態と同様に高めることができる。
【0147】
また、上述の各実施形態及びその変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
なお、上記具体的な構成に対する設計変更等は上記事項には限定されない。