(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プローブを前記液体試料収容部に連通させた状態で、前記試料設置部に設置されている試料容器に前記プローブを介して液体試料を導入させた後、前記切替部を切り替えることにより前記プローブを前記ポンプに連通させた状態とし、この状態で前記ポンプを駆動させることにより前記試料容器内から前記プローブに液体試料を吸引させる分注制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の前処理システム。
前記プローブを前記洗浄液収容部に連通させた状態で、前記プローブに洗浄液を導入させることにより、前記洗浄液収容部から前記プローブまでの流路を洗浄する洗浄制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の前処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.分析システムの全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る前処理システムを含む分析システムの構成例を示す概略正面図である。この分析システムは、前処理装置1、LC(液体クロマトグラフ)100、MS(質量分析装置)200及び細胞培養装置300を備えている。この分析システムでは、細胞培養装置300内の液体試料が前処理装置1に導入され、前処理装置1において、その液体試料に対して前処理が実行される。そして、前処理が施された液体試料がLC100及びMS200に順次導入されて分析が行われる。この分析システムでは、前処理装置1及び細胞培養装置300によって、前処理システムが構成されている。
【0023】
細胞培養装置300は、培地で細胞を培養するための装置であって、細胞が培養された培地が液体試料として前処理装置1に導入され、前処理装置1において前処理が施される。
【0024】
分析システムでは、前処理装置1に液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)が接続された構成となっている。ただし、このような構成に限らず、LC100又はMS200のいずれか一方が省略されることにより、前処理装置1により前処理を実行した液体試料が、LC100又はMS200のいずれか一方にのみに導入されるような構成であってもよい。
【0025】
前処理装置1は、液体試料や、液体試料に混合する試薬を分注位置に分注する分注装置として機能するものであり、分注位置に分注された液体試料及び試薬に対して、濾過、攪拌、温調といった各種の前処理を行う。これらの前処理が行われた後の液体試料は、LC100に備えられたオートサンプラ101を介してLC100に導入される。
【0026】
LC100には、カラム(図示せず)が備えられており、当該カラム内を液体試料が通過する過程で分離された試料成分が、MS200に順次導入される。MS200は、LC100から導入された液体試料をイオン化するイオン化部201と、イオン化された液体試料を分析する質量分析部202とを備えている。
【0027】
2.前処理装置の構成
図2は、前処理装置1の構成例を示す平面図である。この前処理装置1では、分離容器50と回収容器54の組からなる前処理キットを試料ごとに1組用いて、各前処理キットに対して設定された前処理(濾過、攪拌、温調など)が実行される。
【0028】
前処理装置1には、分注位置としての分注ポート32の他、分注ポート32に分注された液体試料に対して前処理を実行するための複数の処理ポートが設けられている。これにより、液体試料が収容された前処理キットをいずれかの処理ポートに設置することで、その前処理キットに収容されている液体試料に対して、各処理ポートに対応する前処理が実行されるようになっている。
【0029】
処理ポートとしては、各前処理に対応付けて、濾過ポート30、廃棄ポート34、攪拌ポート36a、温調ポート38,40、転送ポート43及び洗浄ポート45などが設けられている。これらの各処理ポートは、複数種類の前処理をそれぞれ実行する複数の前処理部を構成している。
【0030】
前処理キットを構成する分離容器50及び回収容器54は、搬送部としての搬送アーム24によって各処理ポート間で搬送される。搬送アーム24の先端側には、分離容器50及び回収容器54を保持するための保持部25が形成されている。搬送アーム24の基端部側は、鉛直軸29を中心に回転可能に保持されている。搬送アーム24は水平方向に延びており、鉛直軸29を中心に回転することにより、保持部25が水平面内で円弧状の軌道を描くように移動する。分離容器50及び回収容器54の搬送先である各処理ポートや、その他のポートは、全て保持部25が描く円弧状の軌道上に設けられている。
【0031】
前処理キットには、試料容器6から液体試料が分注される。液体試料が収容された試料容器6は、試料設置部2に複数設置することができ、試料分注アーム20を用いて各試料容器6から試料が順次採取される。試料設置部2には、複数の試料容器6を保持する試料ラック4が、円環状に並べて複数設置される。試料設置部2は、水平面内で回転することにより、各試料ラック4を周方向に移動させる。これにより、所定の試料採取位置に各試料容器6を順次移動させることができる。
【0032】
ここで、試料採取位置は、試料分注アーム20の先端部に設けられた、プローブの一例としての試料分注プローブ20aの軌道上に位置しており、当該試料採取位置において試料分注プローブ20aにより試料容器6から液体試料が吸引される。試料容器6内の液体試料は、試料分注プローブ20aにより吸引された後、分注ポート32に設置された分離容器50に対して吐出される。分離容器50に対する液体試料の吐出量は、例えば、10〜100μL程度であり、好ましくは、50μL程度である。
【0033】
試料分注アーム20は、基端部側に設けられた鉛直軸22を中心に水平面内で回転可能であるとともに、鉛直軸22に沿って鉛直方向に上下動可能である。試料分注プローブ20aは、試料分注アーム20の先端部において鉛直下方に向かって延びるように保持されており、試料分注アーム20の動作に応じて、水平面内で円弧状の軌道を描く移動又は鉛直方向への上下動が行われる。
【0034】
分注ポート32は、試料分注プローブ20aの軌道上で、かつ搬送アーム24の保持部25の軌道上となる位置に設けられている。分注ポート32は、未使用の分離容器50に対して試料分注プローブ20aから試料を分注するためのポートである。未使用の分離容器50は、搬送アーム24によって分注ポート32に搬送される。
【0035】
試料ラック4が円環状に並べて配置された試料設置部2の中央部には、試薬容器10を設置するための試薬設置部8が設けられている。試薬設置部8に設置された試薬容器10内の試薬は、試薬分注アーム26を用いて採取される。試薬分注アーム26は、その基端部が搬送アーム24と共通の鉛直軸29によって支持されており、当該鉛直軸29を中心に水平面内で回転可能であるとともに、鉛直軸29に沿って鉛直方向に上下動可能である。
【0036】
試薬分注アーム26の先端部には、試薬分注プローブ26aが鉛直下方に向かって延びるように保持されている。当該試薬分注プローブ26aは、試薬分注アーム26の動作に応じて、水平面内で搬送アーム24の保持部25と同一の円弧状の軌道を描く移動又は鉛直方向への上下動が行われる。
【0037】
試薬設置部8は、試料設置部2とは独立して水平面内で回転可能となっている。試薬設置部8には、複数の試薬容器10が円環状に並べて配置され、試薬設置部8が回転することによって各試薬容器10が周方向に移動する。これにより、所定の試薬採取位置に所望の試薬容器10を移動させることができる。
【0038】
ここで、試薬採取位置は、試薬分注アーム26の先端部に設けられた試薬分注プローブ26aの軌道上に位置しており、当該試薬採取位置において試薬分注プローブ26aにより試薬容器10から試薬が吸引される。試薬容器10内の試薬は、試薬分注プローブ26aにより吸引された後、分注ポート32に設置された分離容器50に対して吐出されることにより、当該分離容器50内の試料に添加される。
【0039】
分離容器50及び回収容器54は、試料設置部2や試薬設置部8とは異なる位置に設けられた容器保持部12により保持されている。容器保持部12には、未使用の分離容器50及び回収容器54が重ねられた状態の複数組の前処理キットが、円環状に並べて配置される。容器保持部12には、水平面内で回転する回転部14と、当該回転部14に対して着脱可能な複数の容器ラック16とが備えられている。
【0040】
各容器ラック16には、複数の前処理キットを保持することができる。複数の容器ラック16は、回転部14上に円環状に並べて設置される。円環状に並べて配置された複数の容器ラック16により、複数の前処理キットを保持する円環状の保持領域が形成される。回転部14は、水平面内で回転することにより、各容器ラック16を保持領域の周方向に変位させる。これにより、複数の前処理キットを所定の搬送位置に順次移動させることができる。ここで、搬送位置は、搬送アーム24の先端部に設けられた保持部25の軌道上に位置しており、当該搬送位置において保持部25により分離容器50又は回収容器54が保持され、搬送先のポートへと搬送される。
【0041】
このように、複数の容器ラック16に分割して前処理キットを保持することにより、各容器ラック16を回転部14に対して個別に着脱することが可能になる。これにより、いずれかの容器ラック16に保持された分離容器50又は回収容器54に対する処理が行われている場合であっても、他の容器ラック16を着脱して別の作業を行うことができるため、前処理効率を向上させることができる。
【0042】
ただし、分離容器50及び回収容器54は、容器ラック16を介して容器保持部12により保持されるような構成に限らず、例えば、容器保持部12に直接保持されるような構成であってもよい。また、分離容器50及び回収容器54は、互いに重ね合せられた状態で容器保持部12により保持されるような構成に限らず、分離容器50及び回収容器54が個別に保持されるような構成であってもよい。さらに、複数の容器ラック16は、円環状に並べて配置されるような構成に限らず、例えば、円弧状に並べて配置されるような構成であってもよい。この場合は、円環状ではなく、円弧状の保持領域に複数の分離容器50及び回収容器54が保持される。
【0043】
容器保持部12には、異なる分離性能を有する分離層が設けられた複数種類(例えば2種類)の分離容器50を分析者が設置しておくことができる。これらの分離容器50は、試料の分析項目に応じて使い分けられ、分析者によって指定された分析項目に応じた分離容器50が容器保持部12から選択されて搬送される。ここで、分析項目とは、前処理装置1で前処理が施された試料を用いて引き続き行われる分析の種類であり、例えばLC100又はMS200により実行される分析の種類である。
【0044】
図3Aは、分離容器50の構成例を示す側面図である。
図3Bは、
図3Aの分離容器50の平面図である。
図3Cは、
図3BのA−A断面を示す断面図である。
図4Aは、回収容器54の構成例を示す側面図である。
図4Bは、
図4Aの回収容器54の平面図である。
図4Cは、
図4BのB−B断面を示す断面図である。
図5は、分離容器50及び回収容器54が重ね合せられた状態の前処理キットを示す断面図である。
【0045】
分離容器50は、液体試料を濾過することにより液体試料中の特性の成分を分離するためのものであって、
図3A〜
図3Cに示すように、液体試料や試薬を収容する内部空間50aを有する円筒状の容器である。内部空間50aの内径は、例えば5〜10mm、好ましくは6〜7mm程度である。内部空間50aの底部には、分離層52が設けられている。分離層52とは、例えば、試料を通過させて特定成分と物理的又は化学的に反応することで、試料中の特定成分を選択的に分離させる機能を有する分離剤又は分離膜である。
【0046】
分離層52を構成する分離剤としては、例えば、イオン交換樹脂、シリカゲル、セルロース、活性炭などを用いることができる。また、分離膜としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜、ナイロン膜、ポリプロピレン膜、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜、アクリル共重合体膜、混合セルロース膜、ニトロセルロース膜、ポリエーテルスルホン膜、イオン交換膜、グラスファイバー膜などを用いることができる。
【0047】
試料中の蛋白質を濾過によって取り除くための除蛋白フィルタ(分離膜)としては、PTFE、アクリル共重合体膜などを用いることができる。この場合、除蛋白フィルタの目詰まりを防止するために、分離層52の上側にプレフィルタ(図示せず)を設けてもよい。このようなプレフィルタとしては、例えば、ナイロン膜、ポリプロピレン膜、グラスファイバー膜などを用いることができる。プレフィルタは、試料中から粒径の比較的大きい不溶物質や異物を取り除くためのものである。このプレフィルタにより、除蛋白フィルタが粒径の比較的大きい不溶物質や異物によって目詰まりするのを防止することができる。
【0048】
分離容器50の上面には、液体試料や試薬を注入するための開口50bが形成されている。また、分離容器50の下面には、分離層52を通過した試料を抽出するための抽出口50dが形成されている。分離容器50の外周面の上部には、搬送アーム24の保持部25を係合させるための鍔部50cが周方向に突出するように形成されている。
【0049】
分離容器50の外周面の中央部には、当該分離容器50が回収容器54とともに濾過ポート30に収容されたときに濾過ポート30の縁に接触するスカート部51が設けられている。スカート部51は、分離容器50の外周面から周方向に突出し、そこから下方に延びるように断面L字状に形成されることにより、分離容器50の外周面との間に一定の空間を形成している。
【0050】
回収容器54は、
図4A〜
図4C及び
図5に示すように、分離容器50の下部を収容し、分離容器50の抽出口50dから抽出された液体試料を回収する有底円筒状の容器である。回収容器54の上面には、分離容器50の下部を挿入させる開口54bが形成されている。回収容器54の内部には、分離容器50におけるスカート部51よりも下側の部分を収容する内部空間54aが形成されている。回収容器54の外周面の上部には、分離容器50と同様に、搬送アーム24の保持部25を係合させるための鍔部54cが周方向に突出するように形成されている。
【0051】
図5のように分離容器50及び回収容器54が重ね合せられた状態では、回収容器54の上部がスカート部51の内側に入り込む。分離容器50の外径は、回収容器54の内径よりも小さく形成されている。これにより、回収容器54の内部空間54aに収容された分離容器50の外周面と、回収容器54の内周面との間に、僅かな隙間が形成される。容器保持部12には、分離容器50の下部が回収容器54内に収容された状態(
図5の状態)で、分離容器50及び回収容器54が設置される。
【0052】
回収容器54の上面の縁には、3つの切欠き54dが形成されている。したがって、
図5のように分離容器50及び回収容器54が重ね合せられることにより、回収容器54の上面がスカート部51の内面に当接した状態であっても、切欠き54dを介して、回収容器54の内側と外側とを連通させることができる。ただし、切欠き54dの数は、3つに限らず、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。また、切欠き54dに限らず、例えば小穴が形成された構成などであってもよい。
【0053】
再び
図2を参照すると、濾過ポート30は、容器保持部12の内側に設けられている。すなわち、濾過ポート30の外周に並べて配置された複数の容器ラック16により、円環状又は円弧状の保持領域が形成されており、当該保持領域に複数の分離容器50及び回収容器54が保持されている。このように、分離容器50及び回収容器54の保持領域が円環状又は円弧状に形成され、その中央部の空きスペースに濾過ポート30の設置スペースを確保することによって、よりコンパクトな構成とすることができる。
【0054】
特に、本実施形態では、分離容器50及び回収容器54が重ねられた状態で保持領域に保持されるため、分離容器50及び回収容器54の保持領域を別々に設ける必要がない。したがって、より多くの分離容器50及び回収容器54を小さい保持領域で保持することができる。これにより、分離容器50及び回収容器54の保持領域を小さくすることができ、さらにコンパクトな構成とすることができる。
【0055】
また、円環状又は円弧状に形成された保持領域の中央部に濾過ポート30を設けることにより、保持領域に保持されている複数の分離容器50及び回収容器54と濾過ポート30の距離を比較的短くすることができる。これにより、分離容器50及び回収容器54を濾過ポート30に搬送する時間を短縮することができるため、前処理効率を向上させることができる。
【0056】
濾過ポート30は、分離容器50内の試料に圧力を付与することにより分離層52で液体試料を分離させる濾過部を構成している。本実施形態では、例えば、2つの濾過ポート30が搬送アーム24の保持部25の軌道上に並べて設けられている。分離容器50及び回収容器54は、
図5のように重ね合せられた状態で各濾過ポート30に設置され、負圧によって分離容器50内の分離層52で分離された試料が、回収容器54内に回収されるようになっている。ただし、分離容器50及び回収容器54は、互いに重ね合せられた状態で各濾過ポート30に設置されるような構成に限らず、分離容器50及び回収容器54が個別に設置されるような構成であってもよい。また、濾過ポート30の数は、2つに限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0057】
攪拌ポート36aは、容器保持部12の近傍に設けられた攪拌部36に、例えば、搬送アーム24の保持部25の軌道上に並べて3つ設けられている。攪拌部36は、各攪拌ポート36aを個別に水平面内で周期的に動作させる機構を有している。このような機構により、各攪拌ポート36aに配置された分離容器50内の試料を攪拌することができる。ただし、攪拌ポート36aの数は、3つに限らず、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0058】
温調ポート38,40は、例えば、ヒータとペルチェ素子により温度制御された熱伝導性のブロックに設けられており、温調ポート38,40に収容された分離容器50又は回収容器54の温度が一定温度に調節される。温調ポート38は、分離容器50用であり、例えば、搬送アーム24の保持部25の軌道上に並べて4つ配置されている。温調ポート40は、回収容器54用であり、分離容器50用の温調ポート38と同様に、例えば、搬送アーム24の保持部25の軌道上に並べて4つ配置されている。ただし、温調ポート38,40の数は、それぞれ4つに限らず、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0059】
図6Aは、濾過ポート30の構成例を示す平面図である。
図6Bは、
図6AのX−X断面を示す断面図である。
図6Cは、
図6AのY−Y断面を示す断面図である。
図6Dは、濾過ポート30に前処理キットを設置した状態を示す断面図である。
【0060】
濾過ポート30は、例えば、凹部からなり、当該凹部が前処理キットを設置するための設置空間30aを構成している。すなわち、搬送アーム24により容器保持部12から搬送された分離容器50及び回収容器54が、
図6Dに示すように、互いに重ねられた状態で設置空間30a内に設置される。このとき、設置空間30aには、まず回収容器54が収容され、その後に回収容器54の内部空間54aに分離容器50の下部が収容される。
【0061】
濾過ポート30内には、回収容器54を挟み込むように保持する保持部材31が設けられている。保持部材31は、例えば、上方が開放されたU字状の金属部材であり、上方に延びた2本の腕部が濾過ポート30の内径方向へ弾性的に変位可能な2本の板ばねを構成している。保持部材31の2本の板ばね部分は、例えば、上端部と下端部の間の部分において、互いの間隔が最も狭くなるように内側に窪んだ湾曲形状又は屈曲形状となっている。2本の板ばね部分の間隔は、上端部及び下端部では回収容器54の外径よりも大きく、最も間隔が狭い部分では回収容器54の外径よりも小さくなっている。
【0062】
上記のような保持部材31の形状により、濾過ポート30の設置空間30a内に回収容器54が差し込まれた場合には、回収容器54が下降するのに応じて保持部材31の2本の板ばね部分が開き、その弾性力によって回収容器54が設置空間30aに保持される。回収容器54は、保持部材31の2本の板ばね部分により、互いに対向する2方向から均等に押圧され、設置空間30aの中央部に保持される。保持部材31は、設置空間30a内に固定されており、回収容器54が取り出される際に回収容器54とともに浮き上がらないようになっている。
【0063】
濾過ポート30の上面開口部の縁には、弾性力を有するリング状の封止部材60が設けられている。封止部材60は、例えば、濾過ポート30の上面開口部の縁に設けられた窪みに嵌め込まれている。封止部材60の材質は、例えば、シリコーンゴムやEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)などの弾性材料である。濾過ポート30の設置空間30a内に回収容器54及び分離容器50が設置された場合には、分離容器50のスカート部51の下端が封止部材60に当接し、スカート部51によって設置空間30aが密閉された状態となる。ただし、分離容器50における封止部材60との接触部分は、スカート部51のような形状の部材により構成されるものに限らず、例えば、フランジ部などの他の各種形状の接触部により構成することができる。
【0064】
設置空間30aには、濾過ポート30の底面から減圧用の流路56が連通している。流路56には、負圧負荷機構55の流路57が接続されている。負圧負荷機構55は、例えば、真空ポンプを含み、設置空間30a内に負圧を負荷する負圧負荷部を構成している。濾過ポート30に分離容器50及び回収容器54が収容された状態で、負圧負荷機構55により設置空間30a内を減圧すれば、設置空間30a内が負圧になる。
【0065】
負圧になった設置空間30aには、回収容器54の切欠き54d、及び、回収容器54の内周面と分離容器50の外周面との隙間を介して、回収容器54の内部空間54aが連通している。分離容器50の上面は大気開放されているため、分離容器50の内部空間50aと回収容器54の内部空間54aとの間に分離層52を介して圧力差が生じる。したがって、分離容器50の内部空間50aに収容されている試料のうち分離層52を通過することができる成分のみが、その圧力差によって分離層52で分離され、回収容器54の内部空間54a側に抽出される。
【0066】
図7は、負圧負荷機構55の構成例を示す概略図である。2つの濾過ポート30は、共通の真空タンク66に接続されている。各濾過ポート30と真空タンク66との間は、それぞれ流路57により接続されており、各流路57には圧力センサ62及び3方バルブ64が設けられている。各濾過ポート30の設置空間30a内の圧力は、各圧力センサ62により検知される。各3方バルブ64は、濾過ポート30と真空タンク66との間を接続した状態、流路57のうち濾過ポート30側を大気開放した状態(
図7の状態)、又は、流路57のうち濾過ポート30側の端部を密閉した状態のいずれかに切り替えることができる。
【0067】
真空タンク66には、圧力センサ68が接続されるとともに、3方バルブ70を介して真空ポンプ58が接続されている。したがって、3方バルブ70を切り替えることにより、必要に応じて真空タンク66に真空ポンプ58を接続し、真空タンク66内の圧力を調節することができる。
【0068】
いずれかの濾過ポート30において液体試料の抽出処理を実行する際には、その濾過ポート30と真空タンク66との間を接続し、当該濾過ポート30の設置空間30a内の圧力を検知する圧力センサ62の値が所定値となるように調節する。その後、流路57のうち当該濾過ポート30側の端部を密閉した状態にする。これにより、濾過ポート30の設置空間30aが密閉系となり、設置空間30a内の減圧状態が維持されることによって、試料の抽出が行われる。
【0069】
再び
図2を参照すると、この前処理装置1には、回収容器54に抽出された液体試料をオートサンプラ101側に転送するための試料転送部42が備えられている。試料転送部42は、水平面内で一方向(
図2の矢印方向)に移動する移動部44を備えており、当該移動部44の上面に、回収容器54を設置するための転送ポート43が設けられている。移動部44は、例えば、ラックピニオン機構を有する駆動機構の動作により移動する。
【0070】
オートサンプラ101側への液体試料の転送を行っていないときには、搬送アーム24の保持部25の軌道上(
図2に実線で示されている位置)に転送ポート43が配置される。この状態で、搬送アーム24による転送ポート43への回収容器54の設置や、転送ポート43からの回収容器54の回収が行われる。
【0071】
オートサンプラ101側への液体試料の転送を行う際には、抽出された液体試料を収容している回収容器54が転送ポート43に設置された後、移動部44が前処理装置1の外側方向へ移動し、転送ポート43がオートサンプラ101に隣接する位置(
図2に破線で示されている位置)に配置される。この状態で、オートサンプラ101に設けられたサンプリング用のプローブにより、回収容器54内の液体試料が吸引される。
【0072】
オートサンプラ101による液体試料の吸引が終了すると、移動部44は元の位置(
図2に実線で示されている位置)に戻され、搬送アーム24によって回収容器54が回収される。使用済みの回収容器54は、搬送アーム24によって廃棄ポート34に搬送され、廃棄される。廃棄ポート34は、搬送アーム24の保持部25の軌道上における分注ポート32の近傍に配置されており、使用済みの分離容器50及び回収容器54が廃棄される。
【0073】
試料分注プローブ20aの軌道上には、当該試料分注プローブ20aの洗浄を行うための洗浄ポート45が設けられている。なお、図示は省略されているが、試薬分注プローブ26aの軌道上には、当該試薬分注プローブ26aの洗浄を行うための洗浄ポートが設けられている。
【0074】
3.前処理システムの構成
図8は、前処理システムの構成例を概略的に示した図である。
前処理システムは、上記したように、前処理装置1及び細胞培養装置300(培養槽301)を含んでいる。この前処理システムは、細胞培養装置300内の液体試料に対する前処理を自動化して行うためのシステムである。
【0075】
前処理装置1は、上記した試料分注プローブ20a及び洗浄ポート45に加えて、ポンプの一例としてのシリンジポンプ81と、3方バルブ82,83と、洗浄液収容部84と、チューブポンプ85とを備えている。
【0076】
試料分注プローブ20aは、試料分注アーム20(
図2参照)の動作により、試料容器6、分離容器50及び洗浄ポート45のそれぞれにおいて各種処理を行う位置まで移動可能である。
洗浄ポート45には、不要な液体を廃棄するためのドレイン45aと、洗浄液を貯留可能な凹部45bが形成されている。
【0077】
シリンジポンプ81は、試料分注プローブ20aから液体試料を吐出させ、又は、試料分注プローブ20aに液体試料を吸引させるためのポンプである。シリンジポンプ81には、流路91の一端が接続されており、試料分注プローブ20aには、流路91の他端が接続されている。流路91の途中部には、3方バルブ82が介在されている。
【0078】
洗浄液収容部84は、内部に洗浄液を収容している。洗浄液は、例えば、純水である。洗浄液収容部84内には、流路92の一端が配置されている。流路92の他端は、3方バルブ83に接続されている。
3方バルブ83には、流路93の一端が接続されている。流路93の他端は、3方バルブ82に接続されている。
【0079】
チューブポンプ85は、流路93の途中部に介在されている。チューブポンプ85は、洗浄液収容部84内の洗浄液、又は、細胞培養装置300に設けられた培養槽301内の液体試料を送出するためのポンプである。培養槽301が、培地収容部の一例である。
【0080】
培養槽301には、液体試料としての培地が収容されている。培養槽301には、流路94の一端が接続されている。流路94の他端は、3方バルブ83に接続されている。
【0081】
前処理システムでは、3方バルブ82,83が切替部を構成している。3方バルブ82は、流路91を介して試料分注プローブ20aとシリンジポンプ81とが連通する状態(第1状態)、又は、流路91と流路93とが連通する状態(第2状態)に切り替えられるように動作される。また、3方バルブ83は、流路93と流路92とが連通する状態(第3状態)、又は、流路93と流路94とが連通する状態(第4状態)に切り替えられるように動作される。
【0082】
すなわち、前処理システムでは、3方バルブ82が第1状態となることで、流路91を介して試料分注プローブ20aとシリンジポンプ81とが連通する状態に切り替えられる。また、3方バルブ82が第2状態となり、3方バルブ83が第4状態となることで、流路91,93,94を介して試料分注プローブ20aと培養槽301とが連通する状態に切り替えられられる。また、3方バルブ82が第2状態となり、3方バルブ83が第3状態となることで、流路91,93,92を介して試料分注プローブ20aと洗浄液収容部84とが連通する状態に切り替えられられる。
【0083】
4.分析システムの電気的構成
図9は、分析システムの電気的構成の一例を示すブロック図である。この分析システムには、前処理システム(細胞培養装置300及び前処理装置1)が含まれている。
【0084】
以下の説明において「ポート」とは、分離容器50又は回収容器54が設置される濾過ポート30、分注ポート32、攪拌ポート36a、温調ポート38,40及び転送ポート43などの複数種類のポートのうちのいずれかを意味している。
前処理装置1は、上記した構成に加えて、操作表示部1a及び制御部86を備えている。操作表示部1aは、例えば、タッチパネルを含んでいる。
【0085】
操作表示部1a、試料設置部2、試薬設置部8、容器保持部12、試料分注アーム20、搬送アーム24、試薬分注アーム26、攪拌部36、試料転送部42、負圧負荷機構55、シリンジポンプ81、3方バルブ82,83及びチューブポンプ85の動作は、制御部86により制御される。
【0086】
制御部86は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含み、当該CPUがプログラムを実行することにより、前処理制御部86a、ランダムアクセス部86b、分注制御部86c及び洗浄制御部86dなどとして機能する。
【0087】
制御部86には、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)や専用のコンピュータにより構成される演算処理装置90が接続されており、分析者は演算処理装置90を介して前処理装置1を管理することができる。演算処理装置90には、前処理装置1だけでなく、前処理装置1で前処理が施された試料の分析を行うLC100及びMS200や、LC100への試料の注入を行うオートサンプラ101などが接続されており、演算処理装置90により、これらの装置を連動させて自動制御することができるようになっている。
【0088】
既述の通り、試料設置部2には複数の試料容器6が設置されており、それらの試料容器6に収容されている液体試料が分離容器50に順次分注され、その液体試料に対して実行されるべき前処理に対応するポートに分離容器50及び回収容器54が搬送される。前処理制御部86aは、各ポートに分離容器50又は回収容器54が設置されたときに、そのポートにおける前処理を実行する。
【0089】
ランダムアクセス部86bは、各ポートにおける前処理の状況を確認し、そのポートでの前処理が終了した分離容器50及び回収容器54を次の前処理を行うためのポートに搬送するように、搬送アーム24の動作を制御する。すなわち、ランダムアクセス部86bは、各液体試料に対して次に行うべき前処理を確認し、その前処理に対応するポートの空き状況を確認し、空きがあればその液体試料を収容した分離容器50又は回収容器54を当該ポートに搬送させる。また、各液体試料に対して次に行うべき前処理に対応するポートの空きがない場合には、ランダムアクセス部86bは、そのポートが空き次第、対象の分離容器50又は回収容器54を当該ポートに搬送させる。
【0090】
分注制御部86cは、液体試料及び試薬の分注動作に関する制御を行う。当該分注動作には、細胞培養装置300内から試料分注プローブ20aに液体試料を吸引して試料容器6内に吐出する動作、試料容器6内から試料分注プローブ20aに試料を吸引して分離容器50内に吐出する動作、及び、試薬容器10内から試薬分注プローブ26aに試薬を吸引して分離容器50内に吐出する動作が含まれる。
洗浄制御部86dは、試料分注プローブ20a及び試料分注プローブ20aに連通する流路の洗浄動作に関する制御を行う。
【0091】
試料の分析を行う際には、分析者が操作表示部1aを操作することにより試料の分析項目を選択する。分析項目は、例えばLC100やMS200における分析対象となる成分名により選択される。そして、分析者は、さらに操作表示部1aを操作することによって、選択された分析項目について、その分析項目を実行するために必要な前処理の設定及び選択を行うことができる。すなわち、選択された分析項目について、任意の前処理を1つ又は複数選択して、前処理装置1において実行されるように設定することができる。
【0092】
前処理制御部86a、ランダムアクセス部86b及び分注制御部86cは、設定内容にに基づいて、各ポートにより構成される前処理部、試料分注アーム20、搬送アーム24、試薬分注アーム26、シリンジポンプ81、3方バルブ82,83及びチューブポンプ85などを制御する。このとき、異なる試料についてそれぞれ設定された複数種類の前処理を同時並行的に実行するように制御が行われる。また、洗浄制御部86dは、シリンジポンプ81、3方バルブ82,83及びチューブポンプ85などを制御して、適宜、試料分注アーム20などを洗浄する。
【0093】
5.制御部のよる制御動作
以下では、制御部86の制御動作、及び、前処理システムにおける各部材の動作について説明する。
分析者によって、各種設定が行われると、まず、ランダムアクセス部86bの制御によって、分注ポート32が空いているか否かが確認される。分注ポート32が空いていれば、ランダムアクセス部86bの制御によって、液体試料を収容するための未使用の分離容器50が搬送アーム24により容器保持部12から取り出され、分注ポート32に設置される。これにより、分離容器50は、分注位置に配置される。このとき、試料設置部2には、未使用の試料容器6がセットされている。
【0094】
なお、容器保持部12には分離容器50と回収容器54が重ねられた状態(
図5の状態)で設置されているが、搬送アーム24は、上側の分離容器50のみを保持部25で保持して分注ポート32へ搬送する。
【0095】
この状態から、分注制御部86cは、
図10Aに示すように、培養槽301内の液体試料を試料分注プローブ20aから吐出させて、試料容器6内に導入する。
図10Aは、前処理システムの構成例を概略的に示した図であって、液体試料が培養槽301から試料容器6に導入される状態を示している。
【0096】
具体的には、分注制御部86cの制御によって、3方バルブ82が動作されて、流路91と流路93とが連通する状態(第2状態)に切り替えられるとともに、3方バルブ83が動作されて、流路93と流路94とが連通する状態(第4状態)に切り替えられる。これにより、流路91,93,94を介して試料分注プローブ20aと培養槽301とが連通する状態になる。また、分注制御部86cの制御によって、試料分注プローブ20aが試料設置部2に設置されている試料容器6上に移動される。
【0097】
そして、分注制御部86cの制御によって、チューブポンプ85が駆動されて、培養槽301内の液体試料が、流路94、流路93及び流路91を介して試料分注プローブ20aから吐出されて、試料容器6内に導入される。
【0098】
このとき、試料分注プローブ20aの先端と、試料容器6内に貯留される液体試料の液面とが接触しない状態で、予め定められた量の液体試料が試料容器6内に導入される。例えば、試料容器6内には、500μL程度の液体試料が導入される。
次いで、
図10Bに示すように、分注制御部86cの制御によって、試料分注プローブ20aに液体試料が吸引される。
図10Bは、前処理システムの構成例を概略的に示した図であって、試料容器6内から試料分注プローブ20aに液体試料が吸引される状態を示している。
【0099】
具体的には、分注制御部86cの制御によって、3方バルブ82が動作されて、流路91を介して試料分注プローブ20aとシリンジポンプ81とが連通される状態(第1状態)に切り替えられる。これにより、流路91を介して試料分注プローブ20aとシリンジポンプ81とが連通する状態となる。なお、3方バルブ83は、動作されずに、流路93と流路94とが連通する状態(第4状態)が維持される。
【0100】
また、分注制御部86cの制御によって、試料分注プローブ20aが下降される。試料分注プローブ20aは、静電容量式の液面検知機能を備えている。分注制御部86cは、この試料分注プローブ20aの液面検知機能により、試料分注プローブ20aの先端部が、試料容器6内の液体試料の液面に接触するまで、試料分注プローブ20aを下降させる。
そして、分注制御部86cの制御によって、シリンジポンプ81が駆動されて、試料容器6内の液体試料が試料分注プローブ20aに吸引される。
その後、
図10Cに示すように、分注制御部86cの制御によって、試料分注プローブ20aから液体試料が吐出される。
図10Cは、前処理システムの構成例を概略的に示した図であって、液体試料が試料分注プローブ20aから分離容器50に吐出される状態を示している。
【0101】
具体的には、分注制御部86cの制御によって、試料分注プローブ20aが分注位置に配置される分離容器50上に移動される。そして、分注制御部86cによって、シリンジポンプ81が駆動されて、試料分注プローブ20aから液体試料が吐出され、その液体試料が分離容器50に導入される。
このとき、分離容器50には、予め定められた量の液体試料が導入される。例えば、分離容器50内には、50μL程度の液体試料が導入される。
次いで、
図10Dに示すように、洗浄制御部86dの制御によって、試料分注プローブ20aに連通する流路が洗浄される。
図10Dは、前処理システムの構成例を概略的に示した図であって、洗浄液収容部から試料分注プローブまでの流路が洗浄される状態を示している。
【0102】
具体的には、洗浄制御部86dの制御によって、3方バルブ82が動作されて、流路91と流路93とが連通される状態(第2状態)に切り替えられるとともに、3方バルブ83が動作されて、流路93と流路92とが連通される状態(第3状態)に切り替えられる。これにより、流路91,93,92を介して試料分注プローブ20aと洗浄液収容部84とが連通する状態になる。また、洗浄制御部86dの制御によって、試料分注プローブ20aが洗浄ポート45のドレイン45a上に移動される。
【0103】
そして、洗浄制御部86dの制御によって、チューブポンプ85が駆動されて、洗浄液収容部84内の洗浄液が、流路92、流路93及び流路91を介して試料分注プローブ20aに導入される。これにより、流路92、流路93及び流路91に充填されていた液体試料が洗浄液とともに、洗浄ポート45のドレイン45aに排出される。そして、流路92、流路93、流路91及び試料分注プローブ20aの内部が洗浄液によって洗浄される。
【0104】
その後、
図10Eに示すように、試料分注プローブ20a(試料分注プローブ20aの外表面)が洗浄される。
図10Eは、前処理システムの構成例を概略的に示した図であって、試料分注プローブ20aの外表面が洗浄される状態を示している。
【0105】
具体的には、洗浄制御部86dの制御によって、試料分注プローブ20aが洗浄ポート45の凹部45b上に移動される。このとき、試料分注プローブ20aの先端部は、洗浄ポート45の凹部45bの内部空間に配置されている。
【0106】
そして、洗浄制御部86dの制御によって、チューブポンプ85が駆動されて、洗浄液収容部84内の洗浄液が、流路92、流路93及び流路91を介して試料分注プローブ20aから吐出される。これにより、洗浄ポート45の凹部45bに洗浄液が貯留される。そして、試料分注プローブ20aが貯留された洗浄液に浸漬される。これにより、試料分注プローブ20aの外表面が洗浄される。
【0107】
なお、シリンジポンプ81に対して別の洗浄液収容部が接続されていて、試料分注プローブ20aの洗浄後に、この洗浄液収容部によって、シリンジポンプ81を洗浄する動作が行われてもよい。
【0108】
次いで、
図10Fに示すように、試料分注プローブ20aに液体試料が充填される。
図10Fは、前処理システムの構成例を概略的に示した図であって、培養槽301から試料分注プローブ20aにわたって液体試料が充填される状態を示している。
【0109】
具体的には、分注制御部86cの制御によって、3方バルブ82が動作されて、流路91と流路93とが連通する状態(第2状態)に切り替えられるとともに、3方バルブ83が動作されて、流路93と流路94とが連通する状態(第4状態)に切り替えられる。これにより、流路91,93,94を介して試料分注プローブ20aと培養槽301とが連通する状態になる。また、分注制御部86cによって、試料分注プローブ20aが洗浄ポート45のドレイン45a上に移動される。
【0110】
そして、分注制御部86cの制御によって、チューブポンプ85が駆動されて、培養槽301内の液体試料が、流路94、流路93及び流路91を介して試料分注プローブ20aから吐出される。これにより、流路92、流路93及び流路91に充填されていた洗浄液が、洗浄ポート45のドレイン45aに排出される。そして、流路92、流路93、流路91及び試料分注プローブ20aの内部に液体試料が充填される。
その後は、別の未使用の試料容器6に対して、上記した動作が行われる。
【0111】
なお、液体試料が導入された分離容器50内には、分注制御部86cの制御によって、試薬分注プローブ26aが移動された後、予め定められた量の試薬が吐出される。そして、ランダムアクセス部86bの制御によって、分注ポート32内の分離容器50が、攪拌ポート36aへと搬送アーム24により搬送される。また、前処理制御部86aの制御によって、攪拌ポート36aにおいて、攪拌処理が行われる。この攪拌処理は、予め設定された一定時間だけ行われ、これにより分離容器50内の試料と試薬が混合される。
【0112】
さらに、ランダムアクセス部86bの制御によって、回収容器54が濾過ポート30へと搬送アーム24により搬送される。このとき濾過ポート30に設置される回収容器54は、攪拌ポート36aにおいて攪拌中の分離容器50と対をなす回収容器54であり、容器保持部12において当該分離容器50と重ねた状態で設置されていた回収容器54である。
【0113】
攪拌部36(攪拌ポート36a)における攪拌処理が終了すると、ランダムアクセス部86bの制御によって、搬送アーム24により攪拌ポート36aから濾過ポート30へと分離容器50が搬送され、
図6Dのように濾過ポート30内の回収容器54上に分離容器50が設置される。このとき、封止部材60がスカート部51の下端により押し潰されるため、スカート部51の下端と封止部材60との間の気密性が向上する。
【0114】
そして、負圧負荷機構55が動作されて、分離容器50及び回収容器54が設置された濾過ポート30の設置空間30aに所定の負圧が負荷される。濾過ポート30の設置空間30aに負圧が負荷された状態で一定時間維持されることにより、分離容器50の液体試料が濾過され、回収容器54に液体試料が抽出される。
【0115】
試料の濾過処理が終了した後、3方バルブ64(
図9参照)が切り替えられることにより、濾過ポート30の設置空間30a内が大気圧とされる。そして、使用済みの分離容器50は、搬送アーム24の保持部25により濾過ポート30から取り出され、廃棄ポート34に廃棄される。
【0116】
その後、濾過ポート30内の回収容器54が搬送アーム24により試料転送部42へと搬送され、転送ポート43上に設置される。そして、移動部44が、隣接配置されたオートサンプラ101側の位置(
図2で破線で示された位置)へ移動することにより、回収容器54がオートサンプラ101側へ転送される。オートサンプラ101側では、試料転送部42から転送された回収容器54内に対して、サンプリング用のプローブによる液体試料の吸引が行われる。
【0117】
移動部44は、オートサンプラ101における試料吸引が終了するまでオートサンプラ101側の位置で停止しており、試料吸引が終了した旨の信号をオートサンプラ101から受信すると、元の位置(
図2に実線で示された位置)に戻る。液体試料の転送が終了した後、使用済みの回収容器54は、搬送アーム24により転送ポート43から回収され、廃棄ポート34に廃棄される。
【0118】
6.作用効果
(1)本実施形態では、3方バルブ82,83の動作により、流路91を介して試料分注プローブ20aとシリンジポンプ81とが連通する状態(
図10B参照)と、流路91,93,94を介して試料分注プローブ20aと培養槽301とが連通する状態(
図10A参照)とに切り替えることができる。すなわち、3方バルブ82,83の動作により、培養槽301から液体試料が試料分注プローブ20aに導入される状態に切り替えることができる。
【0119】
そのため、ユーザが培養槽301内の液体試料を直接サンプリングすることなく、自動的に試料分注プローブ20aから吐出させることができる。
その結果、前処理システムにおいて、ユーザの手作業によるサンプリング作業を省くことができ、ユーザの作業を簡素化できる。
【0120】
(2)また、本実施形態では、分注制御部86cは、
図10Aに示すように、3方バルブ82,83を動作させて、流路91,93,94を介して試料分注プローブ20aと培養槽301とが連通する状態とし、チューブポンプ85を駆動させて、培養槽301内の液体試料を試料分注プローブ20aから試料容器6内に導入させる。そして、分注制御部86cは、
図10Bに示すように、3方バルブ82,83を動作させて、流路91を介して試料分注プローブ20aとシリンジポンプ81とが連通する状態とし、この状態でシリンジポンプ81を駆動させて、試料容器6内の液体試料を試料分注プローブ20aに吸引させる。
【0121】
そのため、分注制御部86cの制御により、培養槽301から試料容器6に試料分注プローブ20aを介して液体試料を導入する動作、及び、試料容器6内から試料分注プローブ20aに液体試料を吸引させる動作を自動的に切り替えて実施することができる。
その結果、前処理システムにおける一連の動作を自動化でき、ユーザの作業を一層簡素化できる。
【0122】
(3)また、本実施形態では、分注制御部86cは、試料分注プローブ20aを分注位置に配置される分離容器50上に移動させた後、シリンジポンプ81を駆動させて、試料分注プローブ20aから液体試料を分離容器50に吐出させる。
【0123】
すなわち、分注制御部86cの制御によって、試料分注プローブ20aから分離容器50に液体試料を吐出させることにより、分離容器50において液体試料中の特定の成分を分離できる。
そのため、前処理システムにおいて、試料分注プローブ20aに液体試料を導入し、液体試料中の特定の成分を分離するまでの動作を自動化できる。
【0124】
(4)また、本実施形態では、3方バルブ82,83の動作により、流路91,93,92を介して試料分注プローブ20aと洗浄液収容部84とが連通する状態(
図10D及び
図10E参照)に切り替えられる。
【0125】
そのため、試料分注プローブ20aと洗浄液収容部84とが連通する状態において、チューブポンプ85を駆動させることにより、洗浄液収容部84内の洗浄液を自動的に試料分注プローブ20aに導入できる。
【0126】
(5)また、本実施形態では、洗浄制御部86dは、
図10D及び
図10Eに示すように、3方バルブ82,83を動作させて、流路91,93,92を介して試料分注プローブ20aと洗浄液収容部84とが連通する状態とし、チューブポンプ85を駆動させて、洗浄液収容部84内の洗浄液を試料分注プローブ20aに導入させることにより、流路92、流路93、流路91及び試料分注プローブ20aの内部を洗浄する。
【0127】
そのため、前処理システムにおいて、流路92、流路93、流路91及び試料分注プローブ20aの内部を洗浄する動作を自動化できる。
【0128】
(6)また、本実施形態では、細胞培養装置300の培養槽301の培地に対して前処理を行う。
そのため、細胞培養装置300の培養槽301の培地に対する前処理において、ユーザの手作業によるサンプリング作業を省くことができ、ユーザの作業を簡素化できる。
【0129】
7.変形例
以上の実施形態では、チューブポンプ85が駆動されることにより培養槽301内の液体試料、及び、洗浄液収容部84内の洗浄液が送出され、シリンジポンプ81が駆動されることにより、試料容器6内の液体試料が試料分注プローブ20aに吸引されて吐出されるとして説明した。しかし、チューブポンプ85及びシリンジポンプ81が1つのポンプにより構成され、この1つのポンプが駆動されることにより、これらの動作が行われてもよい。
【0130】
また、以上の実施形態では、濾過ポート30の設置空間30a内を負圧とすることにより、分離容器50内の試料が分離されるような構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、分離容器50内を加圧することにより、分離容器50内の試料が分離されるような構成であってもよい。
【0131】
また、前処理装置1の制御部86と演算処理装置90は、別々に設けられた構成に限らず、1つの制御部によって分析システム全体の動作が制御されるような構成であってもよい。また、前処理装置1により前処理が施された後の試料は、LC100又はMS200に導入される構成に限らず、他の装置に導入されるような構成であってもよい。
【0132】
また、試料設置部2に設置される各試料容器6は、使用後に廃棄されてもよい。そして、各試料容器6が廃棄されるたびに、新しい試料容器6が試料設置部2に設置されてもよい。
【0133】
また、以上の実施形態では、試料設置部2に設置された複数の試料容器6のうちの1つの試料容器6に対して液体試料を導入し、その試料容器6から液体試料を吸引する動作を繰り返すとして説明した。しかし、複数の試料容器6のそれぞれに液体試料を導入し、その後、各試料容器6内の液体試料を順次吸引する動作を行ってもよい。
【0134】
また、以上の実施形態では、切替部は、3方バルブ82,83によって構成されるとして説明した。しかし、切替部は、各流路の連通状態を切り替えることができる構成であればよく、2つの3方バルブからなる構成に限られない。
【0135】
また、以上の実施形態では、分注位置には、分離容器50が設置されるとして説明した。しかし、分注位置には、回収容器54に分離容器50が重ねられた状態の前処理キットが設置され、その状態の分離容器50に対して液体試料が導入されてもよい。この場合には、各処理を行うたびに前処理キット自体(分離容器50及び回収容器54)が搬送されることが望ましい。
【0136】
また、以上の実施形態では、細胞培養装置300の培養槽301が液体試料収容部であるとして説明した。しかし、液体試料収容部は、細胞培養装置300の培養槽301に限らず、例えば、測定対象試料を扱う他の装置に設けられた液体試料収容部であってもよい。