特許第6835232号(P6835232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835232
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】機械式過給機付エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 67/06 20060101AFI20210215BHJP
   F02B 39/04 20060101ALI20210215BHJP
   F02M 39/02 20060101ALI20210215BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   F02B67/06 F
   F02B39/04
   F02M39/02 A
   F02M59/44 Z
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-537537(P2019-537537)
(86)(22)【出願日】2017年8月25日
(86)【国際出願番号】JP2017030605
(87)【国際公開番号】WO2019038922
(87)【国際公開日】20190228
【審査請求日】2020年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤平 伸次
(72)【発明者】
【氏名】後藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】西田 良太郎
【審査官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−270456(JP,A)
【文献】 特開平08−326550(JP,A)
【文献】 特開平09−228846(JP,A)
【文献】 特開2006−299852(JP,A)
【文献】 特開2011−163252(JP,A)
【文献】 特開2013−194712(JP,A)
【文献】 特開2015−086752(JP,A)
【文献】 特開2016−031067(JP,A)
【文献】 特開2016−205241(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0116117(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00 − 1/32
F02B 33/32 − 33/42
F02B 39/04
F02B 67/00 − 67/06
F02M 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムシャフト及びインジェクタが設けられたエンジンと、前記カムシャフトに取り付けられ、かつ該カムシャフトの回転位相を変更するよう構成された可変動弁機構と、前記インジェクタから噴射される燃料の圧力を調整するよう構成された燃料ポンプと、前記エンジンによって駆動される機械式過給機と、を備えた機械式過給機付エンジンであって、
前記カムシャフト、前記燃料ポンプ及び機械式過給機は、いずれも、前記エンジンの機関出力軸から伝達された動力によって、駆動機構を介して駆動されるとともに、
前記カムシャフト及び前記燃料ポンプは、前記駆動機構を構成する第1駆動機構を介して動力が伝達される一方、前記機械式過給機は、前記駆動機構を構成する前記第1駆動機構とは別系統の第2駆動機構を介して動力が伝達され
前記燃料ポンプは、前記燃料の圧力を40MPa以上に設定するよう構成され、
前記エンジンの幾何学的圧縮比は、15以上であり、
前記インジェクタは、前記エンジンの気筒内に燃料を直接噴射するよう構成され、
前記エンジンは、少なくともCI燃焼を実行可能に構成され、
前記可変動弁機構は、前記第1及び第2駆動機構とは独立して前記カムシャフトの回転位相を変更するよう構成され、
前記機関出力軸の一端側では、前記第1駆動機構と前記カムシャフト及び前記燃料ポンプとが駆動連結され、
前記機関出力軸の他端側では、前記第2駆動機構と前記機械式過給機とが駆動連結されている
ことを特徴とする機械式過給機付エンジン。
【請求項2】
請求項に記載された機械式過給機付エンジンにおいて、
前記第1駆動機構は、前記機関出力軸の一端部と前記燃料ポンプとに巻きかけられた一端側無端伝動部材を有する
ことを特徴とする機械式過給機付エンジン。
【請求項3】
請求項に記載された機械式過給機付エンジンにおいて、
前記第1駆動機構は、前記一端側無端伝動部材とは別に、前記カムシャフトに対して動力を伝達するように構成された第2の一端側無端伝動部材を有する
ことを特徴とする機械式過給機付エンジン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載された機械式過給機付エンジンにおいて、
前記第2駆動機構は、前記機関出力軸の他端部と前記機械式過給機とに巻きかけられた他端側無端伝動部材を有する
ことを特徴とする機械式過給機付エンジン。
【請求項5】
請求項に記載された機械式過給機付エンジンにおいて、
前記第2駆動機構は、前記他端側無端伝動部材とは別に、エアコンディショナのコンプレッサに対して動力を伝達するように構成された第2の他端側無端伝動部材を有する
ことを特徴とする機械式過給機付エンジン。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載された機械式過給機付エンジンにおいて、
前記インジェクタは、少なくともガソリンを含む燃料を噴射するよう構成されている
ことを特徴とする機械式過給機付エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、機械式過給機付エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンの一例が開示されている。具体的に、この特許文献1に開示されたエンジンは、カムシャフトと、高圧の燃料を噴射するべく、燃圧を調整可能に構成された燃料ポンプとを備えている。この燃料ポンプは、エンジンの機関出力軸(クランク軸)から伝達された動力を受けて駆動されるように構成されており、機関出力軸の一端側(リヤ側)において、無端伝動部材としての第1チェーンを有する駆動機構によって動力が伝達されるようになっている。
【0003】
また、特許文献1に記載された駆動機構は、機関出力軸の一端部と燃料ポンプとの間に巻きかけられた第1駆動チェーンとは別に、燃料ポンプとカムシャフトとの間に巻きかけられた第2チェーンを有している。よって、このエンジンが運転すると、その動力は、第1駆動チェーンを介して燃料ポンプに伝達されるとともに、第2駆動チェーンを介してカムシャフトに伝達されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−205241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでは、カムシャフトの一端部(例えば後端部)に対して燃料ポンプを直に取り付けて連結するのが通例であった。また、燃料ポンプに加えて、カムシャフトの回転位相を変更するための可変動弁機構も備えた構成とする場合、そうした可変動弁機構もまた、前述の一端部に取り付けるのが通例であった。
【0006】
一方、例えば圧縮着火燃焼を実行可能なエンジンにおいては、燃料噴霧のペネトレーション(噴霧先端の到達距離)の短縮や、霧化促進によるガスの冷却等の促進を図るという観点から、高圧の燃料を噴射することが求められる場合がある。
【0007】
しかし、高圧の燃料を噴射する場合、燃料ポンプの作動に要する駆動負荷は、その燃圧に応じて相対的に大きくなる。この場合、駆動負荷が大きくなる分、カムシャフトの回転位相を変更する際の抵抗が増加することを考慮すると、可変動弁機構の応答性を確保するためには、前述の一端部に対して燃料ポンプを直に取り付けるのではなく、例えば、前記特許文献1に記載されているように、第1駆動チェーンを介して機関出力軸と燃料ポンプとを連結する一方、第2駆動チェーンを介して燃料ポンプとカムシャフトとを連結することにより、駆動負荷を分散させることが考えられる。
【0008】
そうしたエンジンにおいて、さらに機械式過給機を併用する場合、その作動に要する駆動負荷も考慮することが求められる。そのため、例えば燃料ポンプと機械式過給機とで駆動機構を共通にしてしまうと、その駆動機構全体の駆動負荷が大きくなることから、可変動弁機構の応答性を確保する上で不都合となる。
【0009】
またそもそも、前述のように、燃料ポンプ及び機械式過給機のための駆動機構を共通にしてしまうと、機関出力軸における所定の部位に対して荷重が集中する虞がある。そうすると、荷重の偏りが生じてしまい、機関出力軸の信頼性を確保するには不都合となる。この場合、機関出力軸の信頼性を確保するべく、その軸受を大型化すること等が求められるものの、機械抵抗の増大に伴う燃費の悪化を招くため望ましくない。
【0010】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、機械式過給機付エンジンにおいて、可変動弁機構の応答性を確保しながらも、機関出力軸に加わる荷重を集中させることなく、燃料ポンプ及び機械式過給機の駆動性能を相互に阻害させないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここに開示する技術は、カムシャフト及びインジェクタが設けられたエンジンと、前記カムシャフトに取り付けられ、かつ該カムシャフトの回転位相を変更するよう構成された可変動弁機構と、前記インジェクタから噴射される燃料の圧力を調整するよう構成された燃料ポンプと、前記エンジンによって駆動される機械式過給機と、を備えた機械式過給機付エンジンに係る。
【0012】
前記カムシャフト、前記燃料ポンプ及び機械式過給機は、いずれも、前記エンジンの機関出力軸から伝達された動力によって、駆動機構を介して駆動されるとともに、前記カムシャフト及び前記燃料ポンプは、前記駆動機構を構成する第1駆動機構を介して動力が伝達される一方、前記機械式過給機は、前記駆動機構を構成する前記第1駆動機構とは別系統の第2駆動機構を介して動力が伝達され、前記燃料ポンプは、前記燃料の圧力を40MPa以上に設定するよう構成され、前記エンジンの幾何学的圧縮比は、15以上であり、前記インジェクタは、前記エンジンの気筒内に燃料を直接噴射するよう構成され、前記エンジンは、少なくともCI燃焼を実行可能に構成され、前記可変動弁機構は、前記第1及び第2駆動機構とは独立して前記カムシャフトの回転位相を変更するよう構成され、前記機関出力軸の一端側では、前記第1駆動機構と前記カムシャフト及び前記燃料ポンプとが駆動連結され、前記機関出力軸の他端側では、前記第2駆動機構と前記機械式過給機とが駆動連結されている。
【0013】
この構成によれば、燃料ポンプと機械式過給機とは、それぞれ、別系統の駆動機構によって動力が伝達される。これにより、各々の作動に要する駆動負荷を分散させることができるため、可変動弁機構の応答性を確保することが可能になる。
【0014】
また、燃料ポンプに対して動力を伝達するための駆動機構と、機械式過給機に対して動力を伝達するための駆動機構とを共通にすることなく別系統としたことで、機関出力軸に加わる荷重を分散させて、ひいては、機関出力軸の信頼性を確保することが可能になる。それと同時に、燃料ポンプと機械式過給機の駆動性能を相互に阻害させないようにすることも可能になる。
【0015】
このように、前記の構成によると、可変動弁機構の応答性を確保しながらも、機関出力軸に加わる荷重を集中させることなく、燃料ポンプ及び機械式過給機の駆動性能を相互に阻害させないようにすることができる。
【0016】
また、前記のように、燃料ポンプのための駆動機構と、機械式過給機のための駆動機構とを共通にすることなく別系統としたことで、例えば同系統とした構成と比較して、駆動機構のレイアウト性を確保する上で有利になる。
【0017】
また、前述のように、高圧の燃料を噴射する場合、燃料ポンプの作動に要する駆動負荷は、その燃圧に応じて相対的に大きくなる。よって、前記の構成を適用することで、燃料ポンプの駆動負荷を大きくすることが許容されるようになるから、より高圧の燃料を噴射することが可能になる。このことは、特に圧縮着火式のエンジンにおいて、燃料噴霧のペネトレーションの短縮や、霧化促進によるガスの冷却等を促進し、ひいては、エミッション性能、燃費性能および出力性能を高める上で有効である。
【0018】
また、燃料ポンプは、従来よりも燃圧を高めに設定することになる。既に説明したように、前記の構成は、燃料ポンプのための駆動機構と、機械式過給機のための駆動機構とを共通にすることなく別系統としたことで、燃料ポンプの駆動負荷を大きくすることが許容されるようになるため、より高圧の燃料を噴射するときに有効となる。
【0019】
また、前記のように機関出力軸に加わる荷重を一端側と他端側とに分散させることで、機関出力軸の信頼性を確保する上で有利になる。
【0020】
また、前記第1駆動機構は、前記機関出力軸の一端部と前記燃料ポンプとに巻きかけられた一端側無端伝動部材を有する、としてもよい。
【0021】
ここで、一端側無端伝動部材は、エンドレスのタイミングベルトとしてもよいし、タイミングチェーンとしてもよい。
【0022】
また、前記第1駆動機構は、前記一端側無端伝動部材とは別に、前記カムシャフトに対して動力を伝達するように構成された第2の一端側無端伝動部材を有する、としてもよい。
【0023】
この構成によれば、第1駆動機構において、燃料ポンプ及びカムシャフトの作動に要する駆動負荷を、一端側無端伝動部材と、第2の一端側無端伝動部材とに分散させることが可能になる。そのことで、各部材の信頼性を確保することができる。
【0024】
また、前記第2駆動機構は、前記機関出力軸の他端部と前記機械式過給機とに巻きかけられた他端側無端伝動部材を有する、としてもよい。
【0025】
ここで、他端側無端伝動部材は、一端側無端伝動部材と同様に、エンドレスのタイミングベルトとしてもよいし、タイミングチェーンとしてもよい。
【0026】
また、前記第2駆動機構は、前記他端側無端伝動部材とは別に、エアコンディショナのコンプレッサに対して動力を伝達するように構成された第2の他端側無端伝動部材を有する、としてもよい。
【0027】
この構成によれば、第2駆動機構において、機械式過給機及びコンプレッサの作動に要する駆動負荷を、他端側無端伝動部材と、第2の他端側無端伝動部材とに分散させることが可能になる。そのことで、各ベルトの信頼性を確保することができる。
【0028】
また、第2駆動機構によってエアコンディショナを駆動させるように構成したことで、第1駆動機構における駆動負荷を低減し、ひいては第1駆動機構の信頼性を確保することができるようになる
【0029】
た、前記インジェクタは、少なくともガソリンを含む燃料を噴射するよう構成されている、としてもよい。
【0030】
この構成によれば、エンジンを、所謂ガソリンエンジンとすることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、前記の機械式過給機付エンジンによると、可変動弁機構の応答性を確保しながらも、機関出力軸に加わる荷重を集中させることなく、燃料ポンプ及び機械式過給機の駆動性能を相互に阻害させないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、エンジンの構成を例示する概略図である。
図2図2は、エンジンを正面から見て示す図である。
図3図3は、エンジンを上側から見て示す図である。
図4図4は、エンジンの一部構成を示す斜視図である。
図5図5は、第1駆動機構を概略的に示す図である。
図6図6は、第2駆動機構を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、機械式過給機付エンジンの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明は例示である。図1は、ここに開示する機械式過給機付エンジン(以下、単に「エンジン」と呼称する)1の構成を例示する概略図である。また、図2は、エンジン1を正面から見て示す図であり、図3は、エンジン1を上側から見て示す図である。
【0034】
エンジン1は、四輪の自動車に搭載される4ストローク式の内燃機関であり、図1に示すように、機械駆動式の過給機(機械式過給機)44を備えた構成とされている。エンジン1の燃料は、この構成例においてはハイオク仕様(燃料のオクタン価が96程度)のガソリンである。この燃料は、バイオエタノール等を含むガソリンであってもよい。エンジン1の燃料は、少なくともガソリンを含む液体燃料であれば、どのような燃料であってもよい。
【0035】
特に、この構成例においては、エンジン1は、SI(Spark Ignition)燃焼と、CI(Compression Ignition)燃焼とを両方とも行うことができる。ここで、SI燃焼は、燃焼室の中の混合気に対して点火することにより開始する燃焼である。対して、CI燃焼は、燃焼室の中の混合気が圧縮自己着火することにより開始する燃焼である。
【0036】
また、エンジン1は、列状に配置された4つのシリンダ(気筒)11を備えており、4つのシリンダ11が車幅方向に沿って並ぶような姿勢で搭載される、いわゆる直列4気筒の横置きエンジンとして構成されている。これにより、この構成例においては、4つのシリンダ11の配列方向(気筒列方向)であるエンジン前後方向が車幅方向と略一致していると共に、エンジン幅方向が車両前後方向と略一致している。
【0037】
なお、直列多気筒エンジンにおいては、気筒列方向と、機関出力軸としてのクランクシャフト15の中心軸方向(機関出力軸方向)と、そのクランクシャフト15に連結される吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト27各々の中心軸方向とが一致する。以下の記載では、これらの方向を気筒列方向(又は車幅方向)と総称する場合がある。
【0038】
以下、特に断らない限り、前側とは車両前後方向の前側を指し、後側とは車両前後方向の後側を指し、左側とは車幅方向の一方側(気筒列方向の一方側であり、エンジンリヤ側)を指し、右側とは車幅方向の他方側(気筒列方向の他方側であり、エンジンフロント側)を指す。
【0039】
また、以下の記載において、上側とはエンジン1を車両に搭載した状態(以下、「車両搭載状態」ともいう)における車高方向の上側を指し、下側とは車両搭載状態における車高方向の下側を指す。
【0040】
(エンジンの概略構成)
この構成例において、エンジン1は、前方吸気・後方排気式に構成されている。つまり、エンジン1は、4つのシリンダ11を有するエンジン本体10と、エンジン本体10の前側に配置され、吸気ポート18を介して各シリンダ11に連通する吸気通路40と、エンジン本体10の後側に配置され、排気ポート19を介して各シリンダ11に連通する排気通路50と、を備えている。
【0041】
吸気通路40は、外部から導入されたガス(新気)を通過させて、エンジン本体10の各シリンダ11内に供給するように構成されている。この構成例では、吸気通路40は、エンジン本体10の前側において、ガスを導く複数の通路と、過給機44やインタークーラ46などの装置とが組み合わされてユニット化されている。
【0042】
エンジン本体10は、吸気通路40から供給されたガスと燃料との混合気を、各シリンダ11内で燃焼させるように構成されている。具体的に、エンジン本体10は、シリンダブロック12と、その上に載置されるシリンダヘッド13とを備えている。混合気が燃焼することによって得られた動力は、シリンダブロック12に設けられたクランクシャフト15を介して外部へ出力される。
【0043】
シリンダブロック12の内部には、前述の4つのシリンダ11が形成されている。4つのシリンダ11は、クランクシャフト15の中心軸方向(つまり、気筒列方向)に沿って列を成すように並んでいる。なお、図1では、1つのシリンダ11のみを示す。
【0044】
各シリンダ11の内部には、ピストン14が摺動自在に内挿されている。ピストン14は、コネクティングロッド141を介してクランクシャフト15に連結されている。ピストン14は、シリンダ11及びシリンダヘッド13と共に燃焼室17を区画する。なお、ここでいう「燃焼室」は、ピストン14が圧縮上死点に至ったときに形成される空間の意味に限定されない。「燃焼室」の語は広義で用いる。
【0045】
エンジン本体10の幾何学的圧縮比は、燃焼室17の形状に応じて定まっている。この構成例においては、ハイオク仕様のエンジンとするべく、幾何学的圧縮比は、15〜18とされている。なお、レギュラー仕様(燃料のオクタン価が91程度)のエンジンにおいては、14〜17としてもよい。
【0046】
シリンダヘッド13には、1つのシリンダ11につき、2つの吸気ポート18が形成されている。図1には、1つの吸気ポート18のみを示す。2つの吸気ポート18は、気筒列方向に隣接しており、それぞれ対応するシリンダ11に連通している。
【0047】
2つの吸気ポート18には、それぞれ吸気バルブ21が配設されている。吸気バルブ21は、燃焼室17と各吸気ポート18との間を開閉する。吸気バルブ21は、吸気動弁機構によって所定のタイミングで開閉する。
【0048】
吸気動弁機構は、この構成例においては、吸気バルブ21を作動させる吸気カムシャフト(図4も参照)22と、その吸気カムシャフト22に取り付けられ、かつ吸気カムシャフト22の回転位相を変更するように構成された吸気電動S−VT(Sequential-Valve Timing)23と、を有している。吸気電動S−VT23は、「可変動弁機構」の例示である。
【0049】
吸気カムシャフト22は、シリンダヘッド13の内部に設けられていて、当該吸気カムシャフト22の中心軸方向と機関出力軸方向とが略一致するような姿勢で軸支されている。吸気カムシャフト22は、チェーン式の第1駆動機構70を介してクランクシャフト15に連結されている。第1駆動機構70は、周知のように、クランクシャフト15が2回転する間に、吸気カムシャフト22を一回転させる。
【0050】
吸気電動S−VT23は、吸気バルブ21のバルブタイミング及びバルブリフトのうちの少なくとも一方を可変にするべく、吸気カムシャフト22の回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更するように構成されている。これによって、吸気バルブ21の開弁時期及び閉弁時期は、連続的に変化する。なお、吸気動弁機構は、吸気電動S−VT23に代えて、液圧式のS−VTを有していてもよい。
【0051】
シリンダヘッド13にはまた、1つのシリンダ11につき、2つの排気ポート19が形成されている。図1には、1つの排気ポート19のみを図示する。2つの排気ポート19は、気筒列方向に隣接しており、それぞれ対応するシリンダ11に連通している。
【0052】
2つの排気ポート19には、それぞれ排気バルブ26が配設されている。排気バルブ26は、燃焼室17と各排気ポート19との間を開閉する。排気バルブ26は、排気動弁機構によって所定のタイミングで開閉する。
【0053】
排気動弁機構は、この構成例においては、排気バルブ26を作動させる排気カムシャフト(図4も参照)27と、その排気カムシャフト27に取り付けられ、かつ排気カムシャフト27の回転位相を変更するように構成された排気電動S−VT28と、を有している。排気電動S−VT28もまた、「可変動弁機構」の例示である。
【0054】
排気カムシャフト27は、シリンダヘッド13の内部に設けられていて、吸気カムシャフト22と平行になるような姿勢で軸支されている。排気カムシャフト27は、前述の第1駆動機構70を介してクランクシャフト15に連結されている。クランクシャフト15が2回転する間に、排気カムシャフト27が一回転するようになっている。
【0055】
排気電動S−VT28は、吸気電動S−VT23と同様に構成されており、排気カムシャフト27の回転位相を変更することにより、排気バルブ26の開弁時期及び閉弁時期を連続的に調整する。なお、排気動弁機構は、排気電動S−VT28に代えて、液圧式のS−VTを有していてもよい。
【0056】
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎にインジェクタ6が取り付けられている。インジェクタ6は、少なくともガソリンを含む燃料を、シリンダ11内(具体的には、燃焼室17の中)に直接噴射するよう構成されている。この構成例においては、インジェクタ6は、多噴口型の燃料噴射弁である。
【0057】
インジェクタ6には、燃料供給システム61が接続されている。燃料供給システム61は、燃料ポンプ65によって加圧された燃料を、インジェクタ6に供給することができるよう構成されている。
【0058】
具体的に、燃料供給システム61は、燃料を貯留するよう構成された燃料タンク63と、燃料タンク63とインジェクタ6とを互いに連結する燃料供給路62とを備えている。燃料供給路62には、燃料ポンプ65とコモンレール64とが介設している。
【0059】
燃料ポンプ65は、インジェクタ6から噴射される燃料の圧力を調整するよう構成されている。この構成例においては、燃料ポンプ65は、クランクシャフト15から伝達された動力によって駆動されるプランジャー式のポンプであり、コモンレール64に対して燃料を圧送するよう構成されている。
【0060】
なお、燃料ポンプ65は、燃料の圧力を、少なくとも40MPa以上、好ましくは60MPa以上、さらに好ましくは80MPa以上に設定することができるように構成されている。この燃料供給システム61における最高燃料圧力は、例えば120MPa程度にしてもよい。インジェクタ6に供給する燃料の圧力は、エンジン1の運転状態に応じて変更してもよい。
【0061】
コモンレール64は、燃料ポンプ65から圧送された燃料を、高い燃料圧力で蓄えるよう構成されている。インジェクタ6が開弁すると、コモンレール64に蓄えられていた燃料が、インジェクタ6の噴口から燃焼室17の中に噴射される。
【0062】
なお、燃料供給システム61の最高燃料圧力は、例えば120MPa程度にしてもよい。インジェクタ6に供給する燃料の圧力は、エンジン1の運転状態に応じて変更してもよい。なお、燃料供給システム61の構成は、前記の構成は限定されない。
【0063】
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に点火プラグ29が取り付けられている。点火プラグ29は、その先端が燃焼室17の中に臨むような姿勢で取り付けられており、燃焼室17の中の混合気に強制的に点火をする。
【0064】
吸気通路40の説明に戻ると、この構成例における吸気通路40は、エンジン本体10の一側面(具体的には、前側の側面)に接続されており、各シリンダ11の吸気ポート18に連通している。
【0065】
ここで、吸気通路40の上流端部には、新気を濾過するエアクリーナ41が配設されている。対して、吸気通路40の下流端近傍には、サージタンク42が配設されている。サージタンク42よりも下流の吸気通路40は、シリンダ11毎に分岐する独立通路を構成している。独立通路の下流端が、各シリンダ11の吸気ポート18に接続されている。
【0066】
吸気通路40におけるエアクリーナ41とサージタンク42との間には、スロットルバルブ43が配設されている。スロットルバルブ43は、そのバルブ開度を調整することによって、燃焼室17へ導入する新気の量を調整するよう構成されている。
【0067】
吸気通路40において、スロットルバルブ43の下流には過給機44が配設されている。過給機44は、燃焼室17へ導入するガスを過給するよう構成されている。この構成例において、過給機44は、エンジン1(具体的には、クランクシャフト15から伝達される動力)によって駆動される機械式過給機であり、ルーツ式のスーパーチャージャとされている。過給機44の構成は、どのようなものであってもよい。過給機44は、例えば、リショルム式、ベーン式、又は遠心式であってもよい。
【0068】
過給機44とクランクシャフト15との間には電磁クラッチ45が介設している。電磁クラッチ45は、過給機44とクランクシャフト15との間で駆動力を伝達させたり、駆動力の伝達を遮断したりする。ECU(Engine Control Unit)など、不図示の制御手段が電磁クラッチ45の遮断及び接続を切り替えることによって、過給機44のオンとオフとが切り替わる。つまり、このエンジン1は、過給機44のオンとオフとを切り替えることにより、燃焼室17に導入するガスを過給する運転と、燃焼室17に導入するガスを過給しない運転とを切り替えることができるよう構成されている。
【0069】
なお、過給機44は、ベルト式の第2駆動機構80を介してクランクシャフト15に連結されている。後述の如く、第2駆動機構80は、前述の第1駆動機構70とは別系統とされている。
【0070】
詳しくは、過給機44は、気筒列方向に沿って延びる回転軸を有する一対のロータ(不図示)と、ロータを回転駆動する過給機駆動プーリ44dとを備え、過給機駆動プーリ44dに巻きかけられたタイミングベルト81を介してクランクシャフト15に連結されている。過給機駆動プーリ44dとロータとの間には、前述の電磁クラッチ45が介設している。
【0071】
吸気通路40における過給機44の下流には、インタークーラ46が配設されている。インタークーラ46は、過給機44において圧縮されたガスを冷却するよう構成されている。インタークーラ46は、例えば水冷式とすればよい。
【0072】
また、吸気通路40には、バイパス通路47が接続されている。バイパス通路47は、過給機44及びインタークーラ46をバイパスするよう、吸気通路40における過給機44の上流部とインタークーラ46の下流部とを互いに接続する。バイパス通路47には、エアバイパスバルブ48が配設されている。エアバイパスバルブ48は、バイパス通路47を流れるガスの流量を調整する。
【0073】
過給機44をオフにしたとき(つまり、電磁クラッチ45を遮断したとき)には、エアバイパスバルブ48を全開にする。これにより、吸気通路40を流れるガスは、過給機44をバイパスして、エンジン1の燃焼室17に導入される。エンジン1は、非過給、つまり自然吸気によって運転する。
【0074】
過給機44をオンにしたとき(つまり、電磁クラッチ45を接続したとき)には、エアバイパスバルブ48の開度を適宜調整する。このとき、過給機44を通過したガスの一部は、バイパス通路47を通って過給機44の上流に逆流する。エアバイパスバルブ48の開度を調整することによって逆流量を調整することができるから、その逆流量を介して、燃焼室17に導入するガスの過給圧を調整することができる。この構成例においては、過給機44とバイパス通路47とエアバイパスバルブ48とによって、過給システム49が構成されている。
【0075】
一方、排気通路50は、エンジン本体10の他側面(具体的には、後側の側面)に接続されており、各シリンダ11の排気ポート19に連通している。排気通路50は、燃焼室7から排出された排気ガスが流れる通路である。詳細な図示は省略するが、排気通路50の上流部分は、シリンダ11毎に分岐する独立通路を構成している。それら独立通路の上流端が、各シリンダ11の排気ポート19に接続されている。
【0076】
排気通路50には、複数の触媒コンバータ51を有する排気ガス浄化システムが配設されている。触媒コンバータ51は、三元触媒を含んで構成されている。なお、排気ガス浄化システムは、三元触媒を含むものに限られない。
【0077】
吸気通路40と排気通路50との間には、外部EGRシステムを構成するEGR通路52が接続されている。EGR通路52は、既燃ガスの一部を吸気通路40に還流させるための通路である。詳しくは、EGR通路52の上流端は、排気通路50において触媒コンバータ51付近の部位に接続されている。一方、EGR通路52の下流端は、吸気通路40における過給機44の上流に接続されている。
【0078】
EGR通路52には、水冷式のEGRクーラ53が配設されている。EGRクーラ53は、既燃ガスを冷却するよう構成されている。EGR通路52にはまた、EGRバルブ54が配設されている。EGRバルブ54は、EGR通路52を流れる既燃ガスの流量を調整するよう構成されている。EGRバルブ54の開度を調整することによって、冷却された既燃ガス、つまり外部EGRガスの還流量を調整することができる。
【0079】
この構成例において、EGRシステム55は、EGR通路52及びEGRバルブ54を含んで構成されている外部EGRシステムと、前述した吸気電動S−VT23及び排気電動S−VT28を含んで構成されている内部EGRシステムとによって構成されている。
【0080】
また、エンジン1には、前述の燃料ポンプ65以外にも、各種の補機が付設されている。このエンジン1は、そうした補機として、電気系統で使用する交流電流を発生するオルタネータ91と、空調用のエアコンディショナ92と、冷却水を循環させるウォータポンプ93と、を備えている。
【0081】
ここで、燃料ポンプ65は、図2に示すように、エンジン本体10における左端側の前部に取り付けられている(図4も参照)。対して、オルタネータ91及びエアコンディショナ92は、エンジン本体10における右端側の前部に取り付けられている一方、ウォータポンプ93は、同右端側の後部に取り付けられている(図3図4を参照)。オルタネータ91とエアコンディナ92は、上方からこの順で並んでいる。
【0082】
(第1及び第2駆動機構の構成)
以下、第1及び第2駆動機構70,80の構成について詳細に説明する。
【0083】
図4は、エンジン1の一部構成を示す斜視図である。この図4においては、第1駆動機構70及び第2駆動機構80の構成を示すべく、シリンダブロック12など、エンジン1を構成する部材が一部省略されている。また、図5は、第1駆動機構70を概略的に示す図であり、図6は、第2駆動機構80を概略的に示す図である。
【0084】
前述のように、燃料ポンプ65及び過給機44は、双方とも、エンジン1のクランクシャフト15から伝達された動力によって駆動される。ここで、燃料ポンプ65は、第1駆動機構70を介して動力が伝達される一方、過給機44は、第1駆動機構70とは別系統の第2駆動機構80を介して動力が伝達されるようになっている。
【0085】
詳しくは、図4に示すように、第1駆動機構70は、気筒列方向の一端側(左端側)にレイアウトされている一方、第2駆動機構80は、同方向の他端側(右端側)にレイアウトされている。このようなレイアウトとすることで、第1駆動機構70及び第2駆動機構80は、互いに別系統の機構となる。
【0086】
そして、第1駆動機構70と燃料ポンプ65とは、クランクシャフト15の左端側において駆動連結されている一方、第2駆動機構80と過給機44とは、クランクシャフト15の右端側において駆動連結されている。
【0087】
以下、第1駆動機構70の構成と、第2駆動機構80の構成を順番に説明する。
【0088】
−第1駆動機構−
図5に示すように、第1駆動機構70は、タイミングチェーン71を用いたギヤ駆動機構とされており、エンジン1の左側面に設けられている。この第1駆動機構70は、吸気カムシャフト22を介して吸気バルブ21を作動させる一方、排気カムシャフト27を介して排気バルブ26を作動させるとともに、前述の燃料ポンプ65を駆動するよう構成されている。
【0089】
詳しくは、第1駆動機構70は、燃料ポンプ65を駆動するための第1チェーン機構70aと、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト27を駆動するための第2チェーン機構70bと、を備えている。
【0090】
第1駆動機構70はまた、タイミングチェーン71として、第1チェーン機構70aにおいて動力を伝達するための第1チェーン71aと、第2チェーン機構70bにおいて動力を伝達するための第2チェーン71bとの2つのチェーンを有している。なお、第1チェーン71aは「一端側無端伝動部材」の例示であり、第2チェーン71bは「第2の一端側無端伝動部材」の例示である。
【0091】
具体的に、第1チェーン機構70aは、クランクシャフト15の左端部(一端部)に設けられる第1スプロケット15aと、燃料ポンプ65の左端部に設けられる第2スプロケット65aと、第1スプロケット15a及び第2スプロケット65aの間に巻き掛けられる前述の第1チェーン71aと、第1チェーン71aに対して張力を付与する第1オートテンショナ72aと、を有している。
【0092】
詳しくは、図5から見て取れるように、第1スプロケット15aは、車高方向においてはシリンダブロック12の下部に位置すると共に、車両前後方向においてはシリンダブロック12の中央部に位置するようになっている。
【0093】
対して、第2スプロケット65aは、車高方向においてはシリンダブロック12の中央部に位置すると共に、車両前後方向においてはシリンダブロック12の前端部に位置するようになっている。
【0094】
一方、第2チェーン機構70bは、燃料ポンプ65において第2スプロケット65aの左方かつ内周側に設けられる第3スプロケット65bと、吸気電動S−VT23に設けられるスプロケットギヤ23aと、排気電動S−VT28に設けられるスプロケットギヤ28aと、第3スプロケット65b、及び、スプロケットギヤ23a,28aの間に巻き掛けられる第2チェーン71bと、第2チェーン71bに対して張力を付与する第2オートテンショナ72bと、を有している。
【0095】
詳しくは、第3スプロケット65bは、第2スプロケット65aと同様に、車高方向においてはシリンダブロック12の中央部に位置すると共に、車両前後方向においてはシリンダブロック12の前端部に位置するようになっている。
【0096】
ここで、吸気電動S−VT23の説明に戻ると、図4に示すように、吸気電動S−VT23は、吸気カムシャフト22の左側部に取り付けられており、シリンダヘッド13の左側面に対して左方に突出している。また、図5に示すように、吸気電動S−VT23は、車高方向においてはシリンダヘッド13の上端付近に位置する一方、車両前後方向においてはシリンダヘッド13の後側部分に位置している。
【0097】
詳細な図示は省略するが、吸気電動S−VT23は、第2チェーン71bが巻きかけられ、クランクシャフト15と連動して回転するスプロケットギヤ23aと、吸気カムシャフト22と連動して回転するカムシャフトギヤと、スプロケットギヤ23aに対するカムシャフトギヤの回転位相を調整するためのプラネタリギヤと、プラネタリギヤを駆動するS−VTモータ23bと、を備えている。S−VTモータ23bは、吸気電動S−VT23において左側の先端に設けられている。
【0098】
一方、排気電動S−VT28は、排気カムシャフト27の左側部に取り付けられており、図5から見て取れるように、吸気電動S−VT23に対して前方に隣接している。排気電動S−VT28もまた、スプロケットギヤ28a及びS−VTモータ28bを備えた構成とされている。
【0099】
よって、スプロケットギヤ23a,28aは、吸気電動S−VT23、排気電動S−VT28と同様に、車高方向においては両方ともシリンダヘッド13の上端付近に位置する一方、車両前後方向においては前後に隣接するように配置されている。
【0100】
クランクシャフト15が回動すると、その動力は、第1スプロケット15aから出力されて、第1チェーン71aを介して第2スプロケット65aを回動させる。そうして、燃料ポンプ65に動力が伝達されて、その動力によって燃料ポンプ65が駆動される。
【0101】
一方、クランクシャフト15から伝達された動力が第2スプロケット65aを回動させると、燃料ポンプ65の第3スプロケット65bもまた回動する。そうすると、その動力は、第2チェーン71bを介してスプロケットギヤ23a,28aに伝達される。伝達された動力は、吸気カムシャフト22及び排気カムシャフト27を回動させる。これにより、吸気バルブ21及び排気バルブ26がそれぞれ動作することになる。
【0102】
−第2駆動機構−
図6に示すように、第2駆動機構80は、タイミングベルト81を用いたベルト駆動機構とされており、エンジン1の右側面に設けられている。この第2駆動機構80は、過給機駆動プーリ44dを介して過給機44を作動させる一方、前述のオルタネータ91、エアコンディショナ92及びウォータポンプ93を駆動するように構成されている。
【0103】
詳しくは、第2駆動機構80は、過給機44及びウォータポンプ93を駆動するための第1ベルト機構80aと、オルタネータ91及びエアコンディショナ92を駆動するための第2ベルト機構80bと、を備えている。
【0104】
第2駆動機構80はまた、タイミングベルト81として、第1ベルト機構80aにおいて動力を伝達するための第1ベルト81aと、第2ベルト機構80bにおいて動力を伝達するための第2ベルト81bとの2つのベルトを有している。なお、第1ベルト81aは「他端側無端伝動部材」の例示であり、第2ベルト81bは「第2の他端側無端伝動部材」の例示である。
【0105】
具体的に、第1ベルト機構80aは、図4及び図6に示すように、クランクシャフト15の右端部(他端部)に設けられる第1クランクシャフトプーリ15bと、ウォータポンプ93の右端部に設けられるウォータポンプ駆動プーリ93aと、アイドルプーリ82など、複数の従動プーリ(詳細は省略)と、過給機駆動プーリ44dと、第1クランクシャフトプーリ15b、ウォータポンプ駆動プーリ93a、複数の従動プーリ及び過給機駆動プーリ44dに巻きかけられる前述の第1ベルト81aと、第1ベルト81aに対して張力を付与する油圧式のオートテンショナ83と、を有している。
【0106】
一方、第2ベルト機構80bは、図6に示すように、クランクシャフト15において第1クランクシャフトプーリ15bの左側に隣接して設けられる第2クランクシャフトプーリ(図4を参照)15cと、オルタネータ91の右端部に設けられるオルタネータ駆動プーリ91aと、エアコンディショナ92のコンプレッサに設けられるエアコンディショナ駆動プーリ92aと、第2クランクシャフトプーリ15c、オルタネータ駆動プーリ91a、エアコンディショナ駆動プーリ92aに巻きかけられる前述の第2ベルト81bと、第2ベルト81bに対して張力を付与するダブルアームテンショナ84と、を有している。
【0107】
よって、クランクシャフト15が回動すると、その動力は、第1クランクシャフトプーリ15bから出力されて、第1ベルト81aを介してウォータポンプ駆動プーリ93a及び過給機駆動プーリ44dを回動させる。そうして、ウォータポンプ93と過給機44とに動力が伝達されて、その動力によって各々が駆動される。
【0108】
一方、クランクシャフト15が回動すると、その動力は、第2クランクシャフトプーリ15cからも出力されて、第2ベルト81bを介してオルタネータ駆動プーリ91a及びエアコンディショナ駆動プーリ92aを回動させる。そうしてオルタネータ91とエアコンディショナ92のコンプレッサとに動力が伝達されて、その動力によって各々が駆動される。
【0109】
(まとめ)
以上説明したように、燃料ポンプ65と過給機44とは、図4に示すように、それぞれ、別系統の駆動機構によって動力が伝達される。これにより、各々の作動に要する駆動負荷を分散させることができるため、例えば燃料ポンプ65及び過給機44を両方とも第1駆動機構70によって駆動させるような構成と比較して、S−VTモータ23b,28bの動作を阻害することなく、吸気及び排気電動S−VT23,28の応答性を確保することが可能になる。
【0110】
また、燃料ポンプ65に対して動力を伝達するための第1駆動機構70と、過給機44に対して動力を伝達するための第2駆動機構80とを共通にすることなく別系統としたことで、クランクシャフト15に加わる荷重を分散させて、ひいては、クランクシャフト15の信頼性を確保することが可能になる。それと同時に、燃料ポンプ65及び過給機44の駆動性能を相互に阻害させないようにすることも可能になる。
【0111】
このように、吸気及び排気電動S−VT23,28の応答性を確保しながらも、クランクシャフト15に加わる荷重を集中させることなく、燃料ポンプ65及び過給機44の駆動性能を相互に阻害させないようにすることができる。
【0112】
また、図4に示すように、燃料ポンプ65のための第1駆動機構70と、過給機44のための第2駆動機構80とを共通にすることなく別系統としたことで、例えば同系統とした構成と比較して、第1及び第2駆動機構70,80全体のレイアウト性を確保する上で有利になる。
【0113】
また、前述のように、高圧の燃料を噴射する場合、燃料ポンプ65の作動に要する駆動負荷は、その燃圧に応じて相対的に大きくなる。よって、図4に示す構成を適用することで、燃料ポンプ65の駆動負荷を大きくすることが許容されるようになるから、より高圧の燃料を噴射することが可能になる。このことは、特に圧縮着火式のエンジンにおいて、燃料噴霧のペネトレーションの短縮や、霧化促進によるガスの冷却等を促進し、ひいては、エミッション性能、燃費性能および出力性能を高める上で有効である。
【0114】
また、図4に示すように、クランクシャフト15の左端側では、第1駆動機構70と燃料ポンプ65とが駆動連結されている一方、クランクシャフト15の右端側では、第2駆動機構80と過給機44とが駆動連結されている。このような構成とすると、クランクシャフト15に加わる荷重を左端側と右端側とに分散させることができ、そのことで、クランクシャフト15の信頼性を確保する上で有利になる。
【0115】
また、図5に示すように、第1駆動機構70において、燃料ポンプ65並びに吸気及び排気カムシャフト22,27の作動に要する駆動負荷を、第1チェーン71aと第2チェーン71bに分散させることが可能になる。そのことで、タイミングチェーン71の信頼性を確保することができる。
【0116】
また、図6に示すように、第2駆動機構80において、過給機44、及びエアコンディショナ92のコンプレッサの作動に要する駆動負荷を、第1ベルト81aと第2ベルトに分散させることが可能になる。そのことで、タイミングベルト81の信頼性を確保することができる。
【0117】
また、第2駆動機構80によってエアコンディショナ92を駆動させるように構成したことで、第1駆動機構70における駆動負荷を低減し、ひいては第1駆動機構70の信頼性を確保することができるようになる。
【0118】
《他の実施形態》
前記実施形態では、第1駆動機構70は、タイミングチェーン71を用いたギヤ駆動機構とされているとともに、第2駆動機構80は、タイミングベルト81を用いたベルト駆動機構とされていたが、この構成には限られない。例えば、第1駆動機構70と第2駆動機構80を両方ともベルト駆動機構としてもよい。
【0119】
また、前記実施形態では、可変動弁機構としての吸気及び排気伝動S−VT23,28は、第1駆動機構70の一要素となるように構成されていたが、その構成には限定されない。例えば、第2駆動機構80の一要素としてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 エンジン
6 インジェクタ
11 シリンダ(気筒)
15 クランクシャフト(機関出力軸)
22 吸気カムシャフト(カムシャフト)
23 吸気電動S−VT(可変動弁機構)
27 排気カムシャフト(カムシャフト)
28 排気電動S−VT(可変動弁機構)
44 過給機(機械式過給機)
65 燃料ポンプ
70 第1駆動機構
71 タイミングチェーン
71a 第1チェーン(一端側無端伝動部材)
71b 第2チェーン(第2の一端側無端伝動部材)
80 第2駆動機構
81 タイミングベルト
81a 第1ベルト(他端側無端伝動部材)
81b 第2ベルト(第2の他端側無端伝動部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6