(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記2つの溝部はそれぞれ、上記一方の切刃の直線状切刃部側が上記一端側とされるとともに、上記他方の切刃の円弧状切刃部側が上記他端側とされていることを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。
上記溝部における上記幅狭部の他端における溝幅が、上記着座面に対向する方向から見た上記切刃の上記円弧状切刃部の半径rに対して0.05×r〜0.18×rの範囲とされていることを特徴とする請求項1、請求項2、および請求項4から請求項6のうちいずれか一項に記載の切削インサート。
請求項1、請求項2、請求項4から請求項6、および請求項10のうちのいずれか一項に記載の切削インサートが、軸線回りに回転されるエンドミル本体の先端部に形成されたインサート取付座に、上記インサート取付座の底面から突出する凸部に上記溝部の壁面を当接させて着脱可能に取り付けられていることを特徴とする刃先交換式ボールエンドミル。
上記凸部は、上記溝部の上記幅狭部が当接する部分では、該溝部が延びる方向の上記他端側から上記一端側に向かうに従い幅広となるように形成されていることを特徴とする請求項11に記載の刃先交換式ボールエンドミル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、これら特許文献1、2の図面に記載された切削インサートでは、上記溝部の対向する2つの壁面が互いに平行に延びるように示されているが、こうして溝部の壁面が平行に延びている場合に、エンドミル本体の凸部の剛性を高めて切削インサートのずれ動きに対する強度を確保するためにこの凸部の幅を大きくすると、切削インサートの溝部の幅も大きくなり、切削インサートの強度の低下を招いて切削加工時の負荷により損傷を生じ易くなるおそれがある。その一方で、切削インサートの強度を確保するために溝部の幅を小さくすると、エンドミル本体の凸部の幅も小さくせざるを得なくなって切削インサートの取付剛性を確保できず、切削加工時の負荷による切削インサートのずれ動きを確実に防止することができなくなるおそれが生じる。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、切削インサートの強度を損なうことなく、その切削加工時のずれ動きを確実に防止することが可能な切削インサートおよび該切削インサートを着脱可能に取り付けた刃先交換式ボールエンドミルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の切削インサートは、軸線回りに回転される刃先交換式ボールエンドミルのエンドミル本体の先端部に形成されたインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートであって、上記エンドミル本体の回転方向に向けられるすくい面と、このすくい面とは反対側を向いて上記インサート取付座の底面に着座される着座面と、これらすくい面と着座面との周囲に延びる逃げ面とを備え、上記すくい面と上記逃げ面との交差稜線部には、上記すくい面に対向する方向から見た平面視において円弧状に延びる円弧状切刃部と、この円弧状切刃部に接するように延びる直線状切刃部とをそれぞれ備えた2つの切刃が、上記円弧状切刃部と直線状切刃部を上記すくい面の周方向に交互に位置させて形成されるとともに、上記着座面には、上記インサート取付座の底面から突出する凸部に当接可能な壁面を有する2つの溝部が、上記2つの切刃で互いに一方の切刃の直線状切刃部側から他方の切刃の円弧状切刃部側に延びるように形成されており、上記2つの溝部は、該溝部が延びる方向の一端側から他端側に向かうに従い溝幅が狭くなる幅狭部をそれぞれ有している。
【0008】
また、本発明の刃先交換式ボールエンドミルは、このような切削インサートが、軸線回りに回転されるエンドミル本体の先端部に形成されたインサート取付座に、このインサート取付座の底面から突出する凸部に上記溝部の壁面を当接させて着脱可能に取り付けられている。
【0009】
このような構成の切削インサートおよび刃先交換式ボールエンドミルに係る切削インサートの溝部は、該溝部が延びる方向の一端側から他端側に向けて溝幅が狭くなる幅狭部を有しているので、この幅狭部の溝幅が狭くなる他端側においては切削インサートの肉厚を確保して応力を分散し、強度の向上を図ることができる。一方、逆に幅狭部の一端側では溝幅が広くなるので、刃先交換式ボールエンドミルにおいて、上記凸部を、上記溝部の上記幅狭部が当接する部分で、該溝部が延びる方向の上記他端側から上記一端側に向かうに従い幅広となるように形成することにより、切削加工時の負荷に対する取付剛性を高めて切削インサートのずれ動きを確実に防止することが可能となる。
【0010】
このような切削インサートおよび刃先交換式ボールエンドミルでは、上記切刃のうち円弧状切刃部が専ら切削に使用される。上記2つの溝部をそれぞれ、上記一方の切刃の直線状切刃部側を上記一端側とするとともに、上記他方の切刃の円弧状切刃部側を上記他端側とする。他方の切刃が切削に使用される場合に、その円弧状切刃部に作用する切削負荷に対しては、幅狭部の幅狭となった他端側において切削インサートの強度を確保することができるとともに、切削に使用されない切刃の円弧状切刃部に沿った切削インサートのずれ動きは、この切刃の円弧状切刃部から離れた幅広となる幅狭部の一端側で確実に防止することが可能となる。
【0011】
本発明の切削インサートでは、第1に、上記2つの切刃のうち一方は主切刃とし、他方は副切刃とする。上記副切刃の円弧状切刃部は、上記主切刃の円弧状切刃部に対して等しい半径で周長が短く形成されていて、切削インサートが特許文献2に記載されているように非対称形状とされている。この同形同大の1種2つの切削インサートにより、主切刃の円弧状切刃部によってエンドミル本体先端の軸線付近から外周にかけての切削を行うことが可能となるとともに、この軸線から離れた位置から外周にかけての切削を副切刃の円弧状切刃部によって行うことが可能となり、切削インサートの管理が容易となるとともに経済的である。
【0012】
従って、この場合には、上記2つの溝部のうち上記副切刃の円弧状切刃部側を上記他端側とする溝部は、この副切刃の円弧状切刃部に連なる上記逃げ面に開口していてもよい。
上記副切刃の円弧状切刃部が、該副切刃の直線状切刃部から離れるに従い上記着座面側から離れた後に該着座面側に近づく凸曲線状に形成されていれば、この副切刃の円弧状切刃部は、その上記着座面に対して最も凸となる最凸点から徐々に被削材に切り込むことになるので、切削抵抗の低減を図ることができる。
【0013】
すなわち、刃先交換式ボールエンドミルに用いられる切削インサートにおいて、切削加工時には、円弧状切刃部の先端部や、これに連なる逃げ面やインサート本体の側面には大きな切削負荷が印加される。そこで、この切削負荷を軽減することや、切屑の排出性を考慮した切刃形状が望まれている。本発明では、円弧状切刃部と被削材との接触形態を制御することにも着目した。
【0014】
例えば、切削加工方法として等高線加工を選択した場合には、切刃が被削材に食い付く領域として、切屑厚みが薄くなる切刃先端側を設定することが望ましい。円弧状切刃部を上述のような凸曲線状で形成することによって、切刃が捩れ形状となり、切刃に作用する衝撃を軽減することができるので、より好ましい切刃形状となる。
【0015】
一方、切削加工方法として走査線加工を選択した場合には、エンドミル本体の軸線方向への切り込みの際に、切屑厚みが厚くなる円弧状切刃部の先端部側より被削材に食い付くため、先端部に大きな切削負荷が印加される。そこで、円弧状切刃部を凸曲線状として最凸点を設けて厚肉化することにより、切刃強度の向上を図ることができる。
【0016】
溝部が副切刃の円弧状切刃部に連なる逃げ面に開口し、この副切刃の円弧状切刃部が凸曲線状に形成されている場合には、上記副切刃の円弧状切刃部に連なる上記逃げ面への上記溝部の開口部は、この副切刃の円弧状切刃部が上記着座面に対して最も凸となる最凸点よりも該副切刃の直線状切刃部側に位置する。これにより、最凸点から副切刃の円弧状切刃部が被削材に食い付いて切り込む際の衝撃によって溝部の開口部から切削インサートに損傷が生じるのを防ぐことができる。
【0017】
具体的には、上記着座面に対向する方向から見た底面視において、上記最凸点と上記副切刃の円弧状切刃部の中心とを結ぶ直線と、この副切刃の円弧状切刃部に連なる逃げ面に開口する上記溝部の該副切刃の直線状切刃部側を向く壁面と上記逃げ面との交差稜線部の上記着座面側への端部と上記副切刃の円弧状切刃部の中心とを結ぶ直線とがなす第1の交差角が、5°〜60°の範囲とされていることが望ましい。
【0018】
この第1の交差角が5°を下回るほど小さいと、副切刃の円弧状切刃部に連なる逃げ面への溝部の開口部が最凸点に近づきすぎて副切刃の円弧状切刃部の食い付き時に切削インサートが損傷するおそれがある。その一方で、この第1の交差角が60°を上回るほど大きいと、切削インサートに形成した取付孔にクランプネジを挿通してインサート取付座のネジ孔にねじ込むことにより切削インサートを取り付ける場合に、溝部や凸部が取付孔やネジ孔と干渉するおそれが生じる。
【0019】
また、同じく上述のように溝部が副切刃の円弧状切刃部に連なる逃げ面に開口し、この副切刃の円弧状切刃部が凸曲線状に形成されている場合に、上記着座面に対向する方向から見た底面視において、上記最凸点と上記副切刃の円弧状切刃部の中心とを結ぶ直線と、上記副切刃の円弧状切刃部側への該副切刃の直線状切刃部の延長線とがなす第2の交差角は、10°〜50°の範囲とされていることが望ましい。
【0020】
この第2の交差角が10°を下回るほど小さいと、副切刃が切削に使用される場合に最凸点がエンドミル本体の軸線に近づきすぎてしまい、軸線回りの回転速度が小さい部分から副切刃の円弧状切刃部が被削材に切り込むことになって、切削抵抗を低減する効果が損なわれるおそれがある。一方、この第2の交差角が50°を上回るほど大きいと、上述のように溝部の開口部を副切刃の円弧状切刃部に連なる逃げ面において最凸点よりも副切刃の直線状切刃部側に位置させようとしたときに、やはり溝部や凸部が切削インサートの取付孔やインサート取付座のネジ孔と干渉するおそれが生じる。
【0021】
本発明の切削インサートは、第2に、上述のように非対称形状ではなく、例えば特許文献1に記載された切削インサートと同じように、上記すくい面の中心と上記着座面の中心とを結ぶインサート中心線に関して該すくい面の周方向に180°回転対称形状に形成されていてもよい。
【0022】
この第2の場合には、例えば周長が1/4円弧状をなす円弧状切刃部を備えた主切刃を2つ有する切削インサートと、この切削インサートと半径が等しくて周長が短い円弧状切刃を備えた副切刃を2つ有する切削インサートとを用意して、主切刃の円弧状切刃部によってエンドミル本体先端の軸線付近から外周にかけての切削を行うとともに、この軸線から離れた位置から外周にかけての切削を副切刃の円弧状切刃部によって行うことが可能である。
【0023】
この第2の場合でも、上記溝部の他端は上記円弧状切刃部に連なる上記逃げ面に開口していてもよい。また、上記切刃は、上記円弧状切刃部側から上記直線状切刃部側に向かうに従い上記着座面側から離れた後に該着座面側に近づく凸曲線状に形成されていてもよい。ただし、この第2の場合には、上記円弧状切刃部に連なる上記逃げ面への上記溝部の開口部は、上記切刃が上記着座面に対して最も凸となる最凸点よりも該切刃の上記円弧状切刃部側に位置していることが望ましい。
【0024】
具体的には、上記着座面に対向する方向から見た底面視において、上記切刃の上記最凸点とこの切刃の上記円弧状切刃部の中心とを結ぶ直線と、この切刃の上記円弧状切刃部と直線状切刃部との接点と上記円弧状切刃部の中心とを結ぶ直線とがなす第3の交差角が40°以下の範囲とされているのが望ましい。第3の交差角がこの範囲を上回るほど大きくなると、やはり円弧状切刃部に連なる逃げ面への溝部の開口部が最凸点に近づきすぎて、切刃が最凸点から被削材に食い付いたときに切削インサートが損傷するおそれがある。
【0025】
また、この第2の場合や上述した第1の場合のように、1つの切削インサートに形成される2つの切刃の円弧状切刃部の半径が互いに等しくなる。この場合には、上記溝部における上記幅狭部の他端における溝幅は、上記着座面に対向する方向から見た上記切刃の上記円弧状切刃部の半径rに対して0.05×r〜0.18×rの範囲とされていることが望ましい。
【0026】
幅狭部において最も幅狭となる他端における溝幅が上記範囲を下回るほど狭いと、インサート取付座の凸部の幅も小さくせざるを得ず、確実に剛性を確保することが困難となるおそれがある。その一方で、この幅狭部の他端における溝幅が上記範囲を上回るほど広くて、溝部の壁面が互いに平行な状態に近くなると、幅狭部の他端側において肉厚を確保することにより応力を分散して切削インサートの強度を維持することができなくなるおそれがある。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、切削インサートの着座面に形成された溝部の幅狭部により、溝幅が狭くなる他端側においては切削インサートの肉厚を確保して応力を分散し、強度の向上を図ることができ、切削加工時の負荷による切削インサートの損傷を防止することができる。その一方で、一端側では幅狭部の溝幅が広くなるので、刃先交換式ボールエンドミルの凸部を幅広に形成することができ、切削インサートの取付剛性を高めてずれ動きを確実に防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
《第1の実施形態》
図1ないし
図7は、本発明の第1の実施形態の切削インサート1を示すものである。また、
図8ないし
図13は、この第1の実施形態の切削インサート1が着脱可能に取り付けられる本発明の刃先交換式ボールエンドミルの第1の実施形態におけるエンドミル本体11の先端部を示すものであり、
図14ないし
図19は、このエンドミル本体11のインサート取付座12に第1の実施形態の切削インサート1が着脱可能に取り付けられた本発明の刃先交換式ボールエンドミルの第1の実施形態の先端部を示すものである。
【0030】
本実施形態の切削インサート1は、超硬合金等の硬質材料により形成されて、
図2に示すような平面視において木の葉形の板状をなしている。切削インサート1の上面が上述のような木の葉形のすくい面2である。このすくい面2とは反対側を向く下面は、すくい面2と略相似形の木の葉形であり、上記インサート取付座の底面に着座する平坦な着座面3である。これらすくい面2と着座面3との間において周囲に延びる側面は逃げ面4である。
【0031】
すくい面2と逃げ面4との交差稜線部には、すくい面2に対向する方向から見た平面視において
図2に示すように円弧状に延びる円弧状切刃部5a、6aと、この円弧状切刃部5a、6aに接するように延びる直線状切刃部5b、6bとをそれぞれ備えた2つの切刃が、これら円弧状切刃部5a、6aと直線状切刃部5b、6bをすくい面2の周方向に交互に位置させて形成されている。これら2つの切刃のうち一方の切刃は主切刃5とされ、他方の切刃は副切刃6とされる。
【0032】
また、逃げ面4は、すくい面2から着座面3側に向かうに従い切削インサート1の内周側に向かうように傾斜しており、本実施形態の切削インサート1はポジティブタイプとされている。さらに、すくい面2と着座面3の中央部には、切削インサート1を貫通するように形成された断面円形の取付孔7が開口しており、この取付孔7のすくい面2側は着座面3側に向かうに従い縮径するように形成されている。
【0033】
上記平面視において、主切刃5の円弧状切刃部5aは略1/4円弧状をなしているのに対し、副切刃6の円弧状切刃部6aは、主切刃5の円弧状切刃部5aと等しい半径で、ただし周長は主切刃5の円弧状切刃部5aよりも短くされている。すなわち、円弧状切刃部6aは、1/4円弧よりも短い円弧状に形成されている。これに伴い、主切刃5の直線状切刃部5bは、逆に副切刃6の直線状切刃部6bよりも短くされている。すなわち、本実施形態の切削インサート1は、
図2および
図3に示すように取付孔7の中心線であるインサート中心線X回りに180°回転対称とはされておらず、非対称とされている。
【0034】
これら主切刃5と副切刃6の直線状切刃部5b、6bは、上記平面視において主切刃5の円弧状切刃部5aと副切刃6の直線状切刃部6bとが交差するすくい面2の第1の端部2aから主切刃5の直線状切刃部5bと副切刃6の円弧状切刃部6aとが交差するすくい面2の第2の端部2bに向かうに従い互いに近づくように延びている。また、これら第1、第2の端部2a、2bは、主切刃5と副切刃6の円弧状切刃部5a、6aと直線状切刃部5b、6bとに鈍角に交差する面取り状に形成されている。第1の端部2aは、第2の端部2bよりも着座面3の近くに位置している。
【0035】
これら主切刃5と副切刃6の円弧状切刃部5a、6aは、それぞれの直線状切刃部5b、6bから離れるに従い上記着座面3側から離れた後に該着座面3側に近づく凸曲線状に形成されており、このうち副切刃6の円弧状切刃部6aがなす凸曲線が着座面3に対して最も離れて凸となる点が、この副切刃6の円弧状切刃部6aの最凸点Sとなる。
主切刃5と副切刃6の直線状切刃部5b、6bは、逃げ面4に対向する方向から見た側面視においても、
図4および
図6に示すように円弧状切刃部5a、6aがなす凸曲線に接して、円弧状切刃部5a、6aから離れるに従い着座面3側に近づく略直線状に延びている。
【0036】
すくい面2の中央部における上記取付孔7の開口部の周辺には、主切刃5や副切刃6よりも着座面3から離れる方向に突出した上記平面視に略楕円状をなす突部2cが形成されている。この突部2cの上端面は着座面3と平行な平坦面とされていて、取付孔7はこの突部2cの上端面に開口している。この突部2cの外周面は、上記上端面側に向かうに従いすくい面2の内側に向かうように傾斜している。また、すくい面2は、主切刃5および副切刃6から離れて該すくい面2の内側に向かうに従い着座面3側に延びた後に凹曲面状をなして突部2cの上記外周面に連なっている。
【0037】
主切刃5と副切刃6の直線状切刃部5b、6bに連なる逃げ面4は、上述のように傾斜する平面状に形成されている。一方、主切刃5と副切刃6の円弧状切刃部5a、6aに連なる逃げ面4は、すくい面2側ではこれら円弧状切刃部5a、6aに沿って切削インサート1の周方向に湾曲しているが、着座面3側には上述のように傾斜しつつ平面状に切り欠かれた平面部4aを有している。
【0038】
一方、
図3に示すように、上記着座面3には溝部8が形成されている。本実施形態では、着座面3に垂直に対向する方向から見た底面視において、
図3に示すように、第1、第2の2つの溝部8A、8Bが、着座面3における取付孔7の開口部と間隔をあけて、この開口部を間にして互いに反対側に形成されている。第1の溝部8Aは、取付孔7の開口部よりもすくい面2の第1の端部2a側に形成され、第2の溝部8Bは、すくい面2の第2の端部2b側に形成されている。
【0039】
これらの溝部8は、該溝部8が延びる方向に直交する断面が、取付孔7が延びるインサート中心線X方向に偏平した略長方形状に形成されている。すなわち、溝部8は、着座面3に略垂直な方向に延びて互いに対向する第1、第2の2つの壁面8a、8bと、これら第1、第2の壁面8a、8bの間に延びる着座面3に平行な底面8cとを備えている。各溝部8の第1の壁面8aはすくい面2の第1の端部2a側を向いており、第2の壁面8bはすくい面2の第2の端部2b側を向いている。第1、第2の壁面8a、8bと着座面3との交差稜線部は凸曲面によって面取りされ、第1、第2の壁面8a、8bと底面8cとが交差する隅角部は凹曲面状に形成されている。
【0040】
これら第1、第2の溝部8A、8Bは、該第1、第2の溝部8A、8Bがそれぞれ延びる方向の一端側から他端側に向けて溝幅が狭くなる幅狭部9を有している。本実施形態では、副切刃6と主切刃5の直線状切刃部6b、5bに連なる逃げ面4側が第1、第2の溝部8A、8Bの一端側とされるとともに、主切刃5と副切刃6の円弧状切刃部5a、6aに連なる逃げ面4側が他端側とされている。さらに、
図3に示すように第1、第2の溝部8A、8Bは、その全体がこの幅狭部9とされている。
【0041】
この幅狭部9は、本実施形態では溝幅が狭くなる割合が第1、第2の溝部8A、8Bの一端側から他端側に向けて一定とされる。すなわち、幅狭部9は、第1、第2の溝部8Bの第1、第2の壁面8a、8bは上記底面視において一端側から他端側に向かうに従い直線状をなして互いに接近するように形成されている。これら第1、第2の溝部8A、8Bは、本実施形態では副切刃6と主切刃5の直線状切刃部6b、5bに連なる逃げ面4と主切刃5と副切刃6の円弧状切刃部5a、6aに連なる逃げ面4との双方に開口する貫通溝状に形成されている。
【0042】
上記副切刃6の円弧状切刃部6aに連なる逃げ面4への第2の溝部8Bの開口部は、側面視に凸曲線状をなすこの副切刃6の円弧状切刃部6aが着座面3に対して最も凸となる上記最凸点Sよりも副切刃6の直線状切刃部6b側に位置している。具体的には、上記底面視において
図3に示すように、上記最凸点Sと副切刃6の円弧状切刃部6aがなす円弧の中心Pとを結ぶ直線L1と、副切刃6の直線状切刃部6b側を向く第2の溝部8Bの第1の壁面8aと逃げ面4との交差稜線部(面取り部分を除く)の着座面3側への端部Qと上記中心Pとを結ぶ直線L2とがなす第1の交差角θ1が5°〜60°の範囲とされている。
【0043】
同じく上記底面視において、上記最凸点Sと副切刃6の円弧状切刃部6aの中心Pとを結ぶ上記直線L1と、副切刃6の円弧状切刃部6a側への該副切刃6の直線状切刃部6bの延長線L3とがなす第2の交差角θ2は10°〜50°の範囲とされている。
本実施形態では、副切刃6の円弧状切刃部6aの逃げ面4に開口する第2の溝部8Bの他端における幅狭部9の溝幅W1は、この幅狭部9を第2の溝部8Bの他端側に位置する副切刃6の円弧状切刃部6aの着座面3側から見た半径rに対して0.05×r〜0.18×rの範囲とされる。例えば、溝幅W1は、1mm〜7mmの範囲とされている。ただし、
図3において、円弧状切刃部6aの着座面3側から見た形状が円弧からずれた形状になっている場合は、そのずれた形状に対して最も近接した円弧を仮想的に描いて、この仮想の円弧から半径rを求めることにする。
【0044】
これに対して、幅狭部9の一端における溝幅W2は、W2>W1である。溝幅W2は、幅狭部9を有する溝部(第2の溝部8B)の他端側に位置する円弧状切刃部(副切刃6の円弧状切刃部6a)の着座面3側から見た底面視、またはすくい面2側から見た平面視の半径rに対して0.10×r〜0.30×rの範囲で、主切刃5の直線状切刃部5bの上記平面視または底面視における長さRに対しては0.10×R〜0.32×Rの範囲とされている。これらの溝幅W1、W2は、第1、第2の壁面8a、8bが着座面3に対向する方向から見た底面視において直線状に延びている場合は、これら第1、第2の壁面8a、8bがなす直線の二等分線に垂直な方向の幅である。
【0045】
上記底面視において、第2の溝部8Bの第2の壁面8bの他端側への延長面がなす直線L4が、副切刃6の円弧状切刃部6a側への該副切刃6の直線状切刃部6bの延長線L3に対してなす傾斜角αは、45°〜90°の範囲とされている。同じく上記底面視において、第2の溝部8Bの第1の壁面8aの延長面がなす直線L5が主切刃5の直線状切刃部5bに対してなす傾斜角βは45°〜90°の範囲とされ、第2の溝部8Bの第2の壁面8bの延長面がなす直線L4が主切刃5の直線状切刃部5bに対してなす傾斜角γは上記傾斜角βよりも小さくされている。本実施形態では、上記底面視において、第1の溝部8Aは第1の端部2a側で副切刃6の直線状切刃部6bと鋭角に交差する方向に延びるとともに、第2の溝部8Bは第2の端部2b側で主切刃5の直線状切刃部5bと鋭角に交差する方向に延びている。これらの溝幅W1、W2や第1、第2の交差角θ1、θ2、傾斜角α〜γは、同じ幅狭部9を有する第1の溝部8Aに同様に適用されてもよい。
【0046】
このような第1の実施形態の切削インサート1は、上述のように
図8ないし
図13に示すエンドミル本体11の先端部に形成されたインサート取付座12に着脱可能に取り付けられ、
図14ないし
図19に示す本発明の刃先交換式ボールエンドミルの第1の実施形態を構成する。このエンドミル本体11は、鋼材等の金属材料により形成され、その先端部は、基端側が軸線Oを中心とした円柱状とされるとともに、先端側は軸線O上に中心を有する基端側の円柱と等しい半径の凸半球状とされている。本実施形態の刃先交換式ボールエンドミルは、このエンドミル本体11が軸線O回りにエンドミル回転方向Tに回転させられつつ該軸線Oに交差する方向に送り出されることにより、インサート取付座12に取り付けられた切削インサート1によって被削材に切削加工を施す。
【0047】
本実施形態では、エンドミル本体11の先端部外周を切り欠くようにして2つのチップポケット13が形成されており、これらのチップポケット13のエンドミル回転方向Tを向く底面に、それぞれインサート取付座12が周方向に間隔をあけて互いに反対側に形成されている。そして、これら2つのインサート取付座12には、第1の実施形態に基づく同形同大の1種の第1、第2の切削インサート1A、1Bがそれぞれ取り付けられる。
【0048】
これらのインサート取付座12は、エンドミル回転方向Tを向く平坦な底面12aと、この底面12aからエンドミル回転方向Tに延びてエンドミル本体11の外周側を向く先端内周側の壁面12bおよび先端外周側を向く後端外周側の壁面12cとを備えている。
壁面12b、12cは、底面12aから離れるに従いインサート取付座12の外側に傾斜する平面状に形成され、底面12aに切削インサート1の着座面3を着座させた状態で、主切刃5と副切刃6の直線状切刃部5b、6bに連なる平面状の逃げ面4と円弧状切刃部5a、6aに連なる逃げ面4の着座面3側の平面部4aに当接可能とされている。
【0049】
これらの壁面12b、12cの間には、切削インサート1の湾曲した逃げ面4との接触を避けるために凹んだ凹部12dが形成されている。底面12aには、切削インサート1の取付孔7に挿通される図示されないクランプネジがねじ込まれるネジ孔12eが形成されている。このネジ孔12eの中心線は、上述のように切削インサート1の着座面3を底面12aに着座させて、主切刃5と副切刃6の直線状切刃部5b、6bに連なる平面状の逃げ面4と円弧状切刃部5a、6aに連なる逃げ面4の着座面3側の平面部4aを壁面12b、12cに当接させた状態で、切削インサート1の取付孔7の中心線よりも凹部12d側に僅かに偏心するようにされている。
【0050】
これら2つのインサート取付座12のうち第1のインサート取付座12Aは、
図9および
図10に示すようにエンドミル本体11の先端部を、先端側で軸線Oを含む範囲まで切り欠くように形成されている。この第1のインサート取付座12Aには、第1の切削インサート1Aが、主切刃5の円弧状切刃部5aを軸線O近傍から延びて該軸線O上に中心を有する凸半球上に位置させるとともに、主切刃5の直線状切刃部5bをこの凸半球に接する軸線Oを中心とした円筒面上に位置させるようにして取り付けられる。従って、第1のインサート取付座12Aの壁面12bには第1の切削インサート1Aにおける副切刃6の直線状切刃部6bに連なる平面状の逃げ面4が当接させられ、壁面12cには第1の切削インサート1Aにおける副切刃6の円弧状切刃部6aの逃げ面4の平面部4aが当接させられる。
【0051】
そして、この第1のインサート取付座12Aの底面12aには、第1の切削インサート1Aの着座面3に形成された第1の溝部8Aが当接可能な第1の凸部14Aが、ネジ孔12eよりも先端側に突出して、エンドミル本体11の先端部の外周面から上記壁面12cに向けて延びるように形成される。さらにこの第1のインサート取付座12Aの底面12aには、第2の溝部8Bが当接可能な第2の凸部14Bが、ネジ孔12eと壁面12cとの間に突出してエンドミル本体11の先端部の外周面から上記凹部12dに向けて延びるように形成されている。本実施形態では、第1の凸部14Aは上記壁面12cに達する半島状に形成される一方、第2の凸部14Bは凹部12dと間隔をあけて該凹部12dには達しない離島状に形成されている。
【0052】
これら第1、第2の凸部14A、14Bは、該第1、第2の凸部14A、14Bが延びる方向に直交する断面がエンドミル回転方向Tに偏平した略長方形状をなしている。このうち第1の凸部14Aは、全体が幅狭部9とされた第1の溝部8Aに対して、この第1の溝部8が延びる方向の上記他端側から一端側(エンドミル本体11の外周側から内周側)に向かうに従い、壁面12cとの接続部がくびれている以外は幅広となるように形成される。第2の凸部14Bは同じく全体が幅狭部9とされた第2の溝部8Bに対して、この第2の溝部8Bが延びる方向の上記他端側から上記一端側(エンドミル本体11の内周側から外周側)に向かうに従い全体的に幅広となるように形成されている。
【0053】
これら第1、第2の凸部14A、14Bの幅(第1、第2の凸部14A、14Bが延びる方向に直交する方向の幅)は、第1、第2の溝部8A、8Bが延びる方向において第1、第2の凸部14A、14Bに当接する位置での幅(第1、第2の溝部8A、8Bが延びる方向に直交する方向での幅)よりも僅かに小さい。第1、第2の凸部14A、14Bの底面12aからの突出高さも第1の切削インサート1Aの着座面3からの第1、第2の溝部8A、8Bの深さよりも僅かに小さい。
【0054】
2つのインサート取付座12のうち第2のインサート取付座12Bは、
図9および
図12に示すようにエンドミル本体11の先端側で軸線Oから外周側に僅かに離れた位置から形成されている。この第2のインサート取付座12Bには第2の切削インサート1Bが、その副切刃6の円弧状切刃部6aを軸線Oから離れた位置から第1の切削インサート1Aの主切刃5の円弧状切刃部5aが位置する上記凸半球上に位置させるとともに、この副切刃6の直線状切刃部6bを第1の切削インサート1Aの主切刃5の直線状切刃部5bが位置する上記円筒面上に位置させるようにして取り付けられる。従って、第2のインサート取付座12Bの壁面12bには第2の切削インサート1Bの主切刃5の直線状切刃部5bに連なる平面状の逃げ面4が当接させられ、壁面12cには第2の切削インサート1Bの主切刃5の円弧状切刃部5aの逃げ面4の平面部4aが当接させられる。
【0055】
そして、この第2のインサート取付座12Bの底面12aには、ネジ孔12eよりも先端側に第3の凸部14Cが形成されるとともに、ネジ孔12eと壁面12cとの間には第4の凸部14Dが形成されている。これら第3、第4の凸部14C、14Dも、エンドミル本体11の先端部の外周面から内周側に向かって延びて、第3の凸部14Cは第2のインサート取付座12Bの壁面12bの手前にまで該壁面12bと間隔をあけ、また第4の凸部14Dは第2のインサート取付座12Bの凹部12dの手前にまで該凹部12dと間隔をあけて形成されている。従って、第3の凸部14Cには第2の切削インサート1Bの第2の溝部8Bが当接し、第4の凸部14Dには第2の切削インサート1Bの第1の溝部8Aが当接する。
【0056】
また、これら第3、第4の凸部14C、14Dも、第3、第4の凸部14C、14Dが延びる方向に直交する断面がエンドミル回転方向Tに偏平した略長方形状をなしており、このうち第3の凸部14Cは、当接する第2の切削インサート1Bの第2の溝部8Bの全体が幅狭部9とされているのに対して、この第2の溝部8Bが延びる方向の上記他端側から上記一端側(エンドミル本体11の外周側から内周側)に向かうに従い全体的に幅広となるように形成され、第4の凸部14Dの幅は、第1の溝部8Aが延びる方向の上記他端側から上記一端側(エンドミル本体11の内周側から外周側)に向かうに従い全体的に幅広となるように形成されている。
【0057】
さらに、これら第3、第4の凸部14C、14Dの幅(第3、第4の凸部14C、14Dが延びる方向に直交する方向の幅)も、第2、第1の溝部8B、8Aが延びる方向において第3、第4の凸部14C、14Dに当接する位置での幅(第2、第1の溝部8B、8Aが延びる方向に直交する方向での幅)よりも僅かに小さくされている。また、第2のインサート取付座12Bの底面12aからの第3、第4の凸部14C、14Dの突出高さも第2の切削インサート1Bの着座面3からの第2、第1の溝部8B、8Aの深さよりも僅かに小さくされている。
【0058】
このような第1、第2のインサート取付座12A、12Bに第1、第2の切削インサート1A、1Bが上述のように着座させられて、倒立した円錐台状の頭部を有するクランプネジを取付孔7に挿通してネジ孔12eにねじ込んでゆくと、このネジ孔12eの中心線が切削インサート1の取付孔7の中心線よりも凹部12d側に僅かに偏心していることから、切削インサート1は凹部12d側に押し付けられる。
【0059】
このとき、第1のインサート取付座12Aにおいては、第1の切削インサート1Aの副切刃6の直線状切刃部6bに連なる逃げ面4と円弧状切刃部6aに連なる逃げ面4の平面部4aが壁面12b、12cにそれぞれ押圧される。また、第2のインサート取付座12Bにおいては、第2の切削インサート1Bの主切刃5の直線状切刃部5bに連なる逃げ面4が壁面12bに押圧され、主切刃5の円弧状切刃部5aに連なる逃げ面4の平面部4aが壁面12cに押圧される。
【0060】
そして、これとともに、第1のインサート取付座12Aにおいては、第1、第2の凸部14A、14Bに第1の切削インサート1Aの第1、第2の溝部8A、8Bがエンドミル本体11の先端側から当接する。従って、これら第1、第2の凸部14A、14Bには、そのエンドミル本体11の先端側を向く側面14aに第1の切削インサート1Aの第1、第2の溝部8A、8Bにおける第2の壁面8bが当接し、第1、第2の溝部8A、8Bにおける第1の壁面8aおよび底面8cと第1の凸部14Aとの間には僅かな間隔があけられることになる。
【0061】
また、第2のインサート取付座12Bにおいては、第3、第4の凸部14C、14Dに第2の切削インサート1Bの第2、第1の溝部8B、8Aが同じくエンドミル本体11の先端側から当接する。従って、これら第3、第4の凸部14C、14Dには、そのエンドミル本体11の先端側を向く側面14aに第2、第1の溝部8B、8Aの第1の壁面8aがそれぞれ当接し、第2、第1の溝部8B、8Aの第2の壁面8bと第3、第4の凸部14C、14Dとの間には僅かな間隔があけられる。このように、第1ないし第4の凸部14A〜14Dに第1、第2の溝部8A、8Bが当接することにより、切削加工時の負荷による切削インサート1のずれ動きを防止することができる。
【0062】
そして、上記構成の切削インサート1および刃先交換式ボールエンドミルにおいては、切削インサート1の第1、第2の溝部8A、8Bが、これら第1、第2の溝部8A、8Bが延びる方向の一端側から他端側に向けて溝幅が狭くなる幅狭部9を有しており、幅狭部9の溝幅が小さくなる第1、第2の溝部8A、8Bの他端側では、切削インサート1の肉厚を大きく確保して強度を向上させることができる。このため、切削加工時に過大な負荷が切削インサート1に作用しても、第1、第2の溝部8A、8Bから切削インサート1に損傷が生じるのを防止することができる。
【0063】
その一方で、第1、第2の溝部8A、8Bが延びる方向の一端側では幅狭部9は逆に広くなるので、刃先交換式ボールエンドミルのエンドミル本体11においては、第1、第2の溝部8A、8Bの一端側が当接する部分における第1ないし第4の凸部14A〜14Dを幅広に形成することができる。このため、切削加工時の負荷に対する切削インサート1の取付剛性を高めることができ、切削インサート1のずれ動きをさらに確実に防止して精度の高い切削加工を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態の切削インサート1においては、第1、第2の切削インサート1A、1Bが同形、同大であって、主切刃5と副切刃6の円弧状切刃部5a、6aの半径も等しくされており、幅狭部9の最も幅狭となる他端における溝幅W1が、この円弧状切刃部5a、6aの着座面3側から見た半径rに対して0.05×r〜0.18×rの範囲とされていて、これによってもさらに確実に切削インサート1の強度を向上しつつ取付剛性を高めることができる。すなわち、この幅狭部9の他端における溝幅W1が上記範囲を下回るほど狭いと、インサート取付座12における第1ないし第4の凸部14A〜14Dの幅も狭くせざるを得なくなって切削インサート1の取付剛性を高めることができなくなるおそれがある一方、幅狭部9の他端における溝幅W1が上記範囲を上回るほど広くて、第1、第2の溝部8A、8Bの第1、第2の壁面8a、8bが平行に近いと、これら第1、第2の溝部8A、8Bの他端側で切削インサート1の肉厚を大きく確保して切削インサート1の強度を確保することができなくなり、過大な負荷が作用したときに損傷を生じるおそれがある。
【0065】
図20Aから
図20Cは、溝部8の他端における溝幅W1を変化させた場合のシミュレーション解析による応力の分散状態を示す図であって、溝部8の他端側に位置する円弧状切刃部(例えば、副切刃6の円弧状切刃部6a)の半径rが15.0mmのとき、
図20Aは溝幅W1が溝部の全長に亙って3.0mmで一定の場合(幅狭部9を有さない場合)、
図20Bは幅狭部9を有して円弧状切刃部6aの半径rに対する他端の溝幅W1が2.0mm(0.133×r)の場合、
図20Cも幅狭部9を有して円弧状切刃部6aの半径rに対する他端の溝幅W1が1.0mm(0.067×r)の場合である。解析は、エンドミル本体11の回転数が2500min
−1、回転速度が230m/min、送り速度が1500mm/min(1刃当たりの送り量は0.3mm/1刃)、切り込み量と切削幅はともに15mm、被削材はS45C(硬さ220HB)、エンドミル本体の材料はSKD61(硬さ45HRC、引っ張り強度1600MPa、疲労強度500MPa)を想定し、ミーゼス応力で評価した。
【0066】
この
図20において、着座面3に白く描かれた部分の溝部側の領域が、応力が集中している範囲となる。すると、溝幅が一定で幅狭部9を有することのない
図20Aの結果よりも、幅狭部9を有する
図20B、Cの方が白く描かれた部分が小さくて応力が分散しており、特に溝幅W1が小さい
図20Cが最も応力が集中している範囲が小さくなっている。この結果より、幅狭部9を設けることによって応力を分散して切削インサート1の強度を確保することができ、また溝幅W1が0.05×r〜0.18×rの範囲とされるのが望ましいことが分かる。
【0067】
この溝幅W1は0.06×r〜0.17×rの範囲がより望ましく、0.065×r〜0.16×rの範囲がさらに望ましい。溝幅W1は、幅狭部9の一端における溝幅W2に対しては、0.25×W2〜0.90×W2の範囲とされるのが望ましく、0.30×W2〜0.85×W2の範囲とされるのがより望ましく、0.32×W2〜0.80×W2の範囲とされるのがさらに望ましい。一方、この幅狭部9の一端における溝幅W2は、上記半径rに対して0.10×r〜0.30×rの範囲が望ましく、0.12×r〜0.28×rの範囲がより望ましく、0.15×r〜0.26×rの範囲がさらに望ましい。
【0068】
本実施形態の切削インサート1は、副切刃6の円弧状切刃部6aが主切刃5の円弧状切刃部5aと等しい半径で、ただし周長は短くされており、すなわち非対称に形成されている。そして、これに伴い、本実施形態の刃先交換式ボールエンドミルにおいても、第1のインサート取付座12Aはエンドミル本体11の先端部を先端側で軸線Oを含む範囲まで切り欠くように形成されているのに対して、第2のインサート取付座12Bは軸線Oから外周側に僅かに離れた位置から形成されている。これら第1、第2のインサート取付座12A、12Bに同形同大の1種2つの切削インサート1が、第1の切削インサート1Aは主切刃5の円弧状切刃部5aをエンドミル本体11先端の軸線O付近から延びるように、また第2の切削インサート1Bは副切刃6の円弧状切刃部6aを軸線Oから離れた位置から延びるようにして、同一の凸半球面状に位置させている。
【0069】
このため、1種の切削インサート1によってエンドミル本体11の先端の軸線O付近から外周にかけての切削と、軸線Oから離れた位置から外周にかけての切削を行うことができ、切削インサート1の管理を容易にすることができるとともに、切削インサート1を製造するための金型も1種で済む。また、第1の切削インサート1Aの主切刃5と第2の切削インサート1Bの副切刃6に切削によって摩耗等が生じた場合には、これらの切削インサート1を反対側のインサート取付座12に取り付け直すことにより、第1の切削インサート1Aを第2の切削インサート1Bとして、また第2の切削インサート1Bを第1の切削インサート1Aとして再使用することができるので、経済的である。
【0070】
さらに、本実施形態では、一端側が幅広とされるとともに他端側が幅狭とされる幅狭部9を有する第2の溝部8Bが、副切刃6の円弧状切刃部6a側から主切刃5の直線状切刃部5b側に向けて延びている。幅狭部9は、このうち主切刃5の直線状切刃部5b側が上記一端側とされるとともに、副切刃6の円弧状切刃部6a側が上記他端側とされて、幅狭となるようにされている。このため、第2の切削インサート1Bとして副切刃6を切削に使用する場合には、本実施形態のように第2の溝部8Bが副切刃6の円弧状切刃部6aに連なる逃げ面4に開口していても、この副切刃6に作用する負荷を幅狭となった第2の溝部8Bの幅狭部9の他端側で受け止めることができて強度を確保することが可能である。切削に使用されない主切刃5の円弧状切刃部5aに沿った第2の切削インサート1Bのずれ動きは、この円弧状切刃部5aから離れた第2の溝部8Bの幅狭部9の幅広の一端側で確実に防止することができる。これは、切削インサート1を第1の切削インサート1Aとして使用する場合でも同様である。
【0071】
本実施形態では、主切刃5の円弧状切刃部5aおよび副切刃6の円弧状切刃部6aが、直線状切刃部5b、6bから離れるに従い着座面3側から離れた後に再び着座面3側に近づく凸曲線状に形成されている。従って、円弧状切刃部5a、6aは、切削の際に着座面3に対して最も離れて凸となる上記最凸点Sから徐々に被削材に食い付いて切り込むことになるので、切削抵抗を低減することができる。切削インサート1の着座面3に形成された第2の溝部8Bの溝幅W1が狭くなる他端側においては、最凸点Sにおける肉厚を確保して強度の向上を図ることができ、切削加工時の負荷による切削インサート1の損傷を防止することができる。最凸点Sにおける肉厚とは、
図4に符号tで示すように着座面3に垂直な方向における着座面3から最凸点Sまでの距離である。第2の溝部8Bの他端側の幅狭部9において、最凸点Sにより切削インサート1の肉厚が確保される範囲は、
図4、
図7において符号Uで示される領域である。符号Uで示される領域におけるインサート肉厚の値は、上記t値に対して0.65×t〜1.00×tの範囲が望ましく、0.70×t〜1.00×tの範囲がより望ましく、0.75×t〜1.00×tの範囲がさらに望ましい。
【0072】
本実施形態では、こうして円弧状切刃部5a、6aが凸曲線状に形成されている。第2の溝部8Bは、上述のように副切刃6の円弧状切刃部6aに連なる逃げ面4に開口しているものの、この第2の溝部8Bの逃げ面4への開口部は、副切刃6の円弧状切刃部6aの最凸点Sよりも副切刃6の直線状切刃部6b側に位置している。従って、この最凸点Sから副切刃6の円弧状切刃部6aが被削材に食い付いて切り込む際の衝撃が第2の溝部8Bの開口部に直接伝播するのを避けることができ、このような衝撃によって第2の溝部8Bの開口部から切削インサート1が損傷するのも防ぐことができる。
【0073】
このような衝撃による切削インサート1の損傷を確実に防ぐには、本実施形態のように、上記底面視において、最凸点Sと副切刃6の円弧状切刃部6aの中心Pとを結ぶ直線L1と、副切刃6の直線状切刃部6b側を向く第2の溝部8Bの第1の壁面8aと逃げ面4との交差稜線部の着座面3側への端部Qと副切刃6の円弧状切刃部6aの中心Pとを結ぶ直線L2とがなす第1の交差角θ1が、5°〜60°の範囲とされていることが望ましい。これは、図示は略してあるが主切刃5の円弧状切刃部5aと第1の溝部8Aの他端側の開口部についても同様である。
【0074】
この第1の交差角θ1が5°を下回るほど小さいと、第2の溝部8Bの逃げ面4への開口部が、この逃げ面4が連なる副切刃6の円弧状切刃部6aの最凸点Sに近づきすぎ、この円弧状切刃部6aが最凸点Sから被削材に食い付く際の衝撃によって切削インサート1に損傷が生じるおそれがある。逆に、この第1の交差角θ1が60°よりも大きいと、本実施形態のように切削インサート1の取付孔7に挿通したクランプネジをインサート取付座12のネジ孔12eにねじ込んで切削インサート1を取り付ける場合には、第2の溝部8Bや第1、第2の凸部14A、14Bが取付孔7やネジ孔12eと干渉するおそれが生じる。第1の交差角θ1は、5°〜30°の範囲とされるのがより望ましく、5°〜15°の範囲とされるのがさらに望ましい。
【0075】
本実施形態では、同じく上記底面視において、副切刃6の円弧状切刃部6aの上記最凸点Sとこの円弧状切刃部6aの中心Pとを結ぶ直線L1と、副切刃6の円弧状切刃部6a側への該副切刃6の直線状切刃部6bの延長線L3とがなす第2の交差角θ2が10°〜50°の範囲とされており、これによっても第2の溝部8Bや第1、第2の凸部14A、14Bと取付孔7やネジ孔12eとの干渉を防ぎつつ、副切刃6の凸曲線状の円弧状切刃部6aによって確実な切削抵抗の低減を図ることができる。これも、図示は略してあるが主切刃5の円弧状切刃部5aについても同様である。
【0076】
すなわち、上記延長線L3は、切削インサート1を第2の切削インサート1Bとして第2のインサート取付座12Bに取り付けたときには、この第2の切削インサート1Bの着座面3に対向する上記底面視、または取付孔7の中心線に沿ってすくい面2に対向する方向から見た平面視において、エンドミル本体11の軸線Oと略平行になる。このため、上記第2の交差角θ2は、軸線O上に位置した円弧状切刃部6aの中心Pと最凸点Sとを結ぶ上記直線L1と、軸線Oとがなす交差角と略等しくなる。ただし、直線状切刃部5b、6bは、切削インサート1をエンドミル本体11に取り付けたときに若干のバックテーパー角度をもっていてもよく、従って交差角θ2は厳密に直線L1と軸線Oとがなす交差角と等しくなくてもよい。
【0077】
従って、この第2の交差角θ2が50°よりも大きいと、第1の交差角θ1を上述のような範囲としたときに、第2の溝部8Bや第1、第2の凸部14A、14Bが取付孔7やネジ孔12eと干渉するおそれが生じる。また、この第2の交差角θ2が10°を下回るほど小さいと、第2の切削インサート1Bの円弧状切刃部6aにおいて最凸点Sが軸線Oに近づきすぎ、軸線O回りの回転速度が小さい部分から副切刃6の円弧状切刃部6aが被削材に切り込むことになって、切削抵抗を低減する効果が損なわれるおそれがある。この第2の交差角θ2は、20°〜50°の範囲とされるのがより望ましく、35°〜50°の範囲とされるのがさらに望ましい。
【0078】
《第2の実施形態および第3の実施形態》
次に、
図21ないし
図25は、本発明の切削インサートの第2の実施形態を示すものであり、
図26ないし
図31は、この第2の実施形態の切削インサート21と第3の実施形態の切削インサート31が着脱可能に取り付けられる本発明の刃先交換式ボールエンドミルの第2の実施形態におけるエンドミル本体41の先端部を示すものであり、
図32ないし
図37は、このエンドミル本体41の第3、第4のインサート取付座12C、12Dに第2、第3の実施形態の切削インサート21、31が着脱可能に取り付けられた本発明の刃先交換式ボールエンドミルの第2の実施形態の先端部を示すものである。これら
図21ないし
図37に示す実施形態において、
図1ないし
図19に示した実施形態と共通する要素には同一の符号を配して説明を省略するとともに、溝幅W1、W2や第1、第2の交差角θ1、θ2、傾斜角α〜γ等も共通するので図示を省略する。
【0079】
第1の実施形態の切削インサート1が周長の異なる円弧状切刃部5a、6aを主切刃5と副切刃6に備えて取付孔7の中心を通るインサート中心線Xに関して非対称であったのに対し、これら第2、第3の実施形態の切削インサート21、31は、インサート中心線Xに関してすくい面2の周方向に180°回転対称形状に形成されていることを特徴とする。
【0080】
また、第2の実施形態の切削インサート21は、第1の実施形態の切削インサート1の主切刃5と同じく略1/4円弧状の円弧状切刃部5aとこれに接する直線状切刃部5bとをすくい面2の周方向に交互に2つ有する。第3の実施形態の切削インサート31は、第1の実施形態の切削インサート1の副切刃6と同じく1/4円弧状よりも短い周長の円弧状切刃部6aとこれに接する直線状切刃部6bとをすくい面2の周方向に交互に2つ有している。これら第2の実施形態の主切刃5における円弧状切刃部5aと第3の実施形態の副切刃6における円弧状切刃部6aの半径は互いに等しくされている。
【0081】
従って、第2の実施形態の切削インサート21の2つの主切刃5の直線状切刃部5b同士と、第3の実施形態の切削インサート31の2つの副切刃6の直線状切刃部6b同士はそれぞれ互いに平行である。また、第2の実施形態の切削インサート21の2つの主切刃5の直線状切刃部5b同士の間隔は、第3の実施形態の切削インサート31の2つの副切刃6の直線状切刃部6b同士の間隔よりも大きい。
【0082】
これら第2、第3の実施形態の切削インサート21、31においても、その着座面3には、エンドミル本体41の第3、第4のインサート取付座12C、12Dの底面12aから突出する凸部に当接可能な壁面を有する2つの溝部8が、上記2つの切刃(主切刃5および副切刃6)で互いに一方の切刃の直線状切刃部5b、6b側から他方の切刃の円弧状切刃部5a、6a側に延びるように形成されている。これら2つの溝部8は、該溝部8が延びる方向の一端側から他端側に向かうに従い溝幅が狭くなる幅狭部9をそれぞれ有している。これら第2、第3の実施形態においても、幅狭部9はそれぞれ直線状切刃部5b、6b側が一端側とされるとともに、円弧状切刃部5a、6a側が他端側とされる。
【0083】
これら第2、第3の実施形態においても、第1の実施形態と同じく溝部8はその他端が円弧状切刃部5a、6aに連なる逃げ面4に開口しているとともに、一端も直線状切刃部5b、6bに連なる逃げ面4に開口している。これら第2、第3の実施形態では、
図21および
図25に示すように上記2つの切刃(主切刃5および副切刃6)が全体的に、円弧状切刃部5a、6a側から直線状切刃部5b、6b側に向かうに従い着座面3側から離れた後に着座面3側に近づく凸曲線状に形成されている。円弧状切刃部5a、6aに連なる逃げ面4への溝部8の開口部は、主切刃5および副切刃6が着座面3に対して最も凸となる最凸点Sよりも円弧状切刃部5a、6a側に位置している。
【0084】
具体的には、着座面3に対向する方向から見た底面視において
図23に示すように、切刃(
図3では主切刃5)の最凸点Sとこの主切刃5の円弧状切刃部5aの中心P1とを結ぶ直線L6と、この主切刃5の円弧状切刃部5aと直線状切刃部5bとの接点Vと中心P1とを結ぶ直線L7とがなす第3の交差角θ3が40°以下の範囲とされているのが望ましい。勿論、この第3の交差角θ3は0°でもよく、すなわち直線L6と直線L7が重なっていてもよい。
【0085】
第2の実施形態の切削インサート21は、その主切刃5の円弧状切刃部5aをエンドミル本体41先端部における軸線O近傍から延びて該軸線O上に中心を有する凸半球上に位置させるとともに、主切刃5の直線状切刃部5bをこの凸半球に接する軸線Oを中心とした円筒面上に位置させるようにして第3のインサート取付座12Cに取り付けられる。第3の実施形態の切削インサート31は、その副切刃6の円弧状切刃部6aを軸線Oから離れた位置から第2の実施形態の切削インサート21の主切刃5の円弧状切刃部5aが位置する上記凸半球上に位置させるとともに、この副切刃6の直線状切刃部6bを第2の実施形態の切削インサート21の主切刃5の直線状切刃部5bが位置する上記円筒面上に位置させるようにして第4のインサート取付座12Dに取り付けられる。
【0086】
これら第3、第4のインサート取付座12C、12Dの底面12aにも、第1ないし第4の凸部14A〜14Dが形成されている。第2、第3の実施形態の切削インサート21、31の着座面3に形成された幅狭部9を有する溝部8は、これら第1ないし第4の凸部14A〜14Dに当接させられて取り付けられる。第2の実施形態の刃先交換式ボールエンドミルにおけるエンドミル本体41の第3のインサート取付座12Cの先端側の第1の凸部14Aは、半島状であった第1の実施形態とは異なり、他の第2ないし第4の凸部14B〜14Dと同じく離島状に形成されている。
【0087】
このような第2、第3の実施形態の切削インサート21、31および第2の実施形態の刃先交換式ボールエンドミルにおいても、切削インサート21、31の着座面3に幅狭部9を有する溝部8が形成されている。この溝部8は、インサート取付座12C、12Dに形成された凸部14A〜14Dに当接可能とされているので、第1の実施形態の切削インサート1および刃先交換式ボールエンドミルと同様に、切削インサート21、31の強度を向上させて損傷を防止することができるとともに、切削加工時の切削インサート21、31のずれ動きを防いで高精度の加工を行うことができる。
【0088】
これら第2、第3の実施形態の切削インサート21、31では、主切刃5および副切刃6が円弧状切刃部5a、6a側から直線状切刃部5b、6b側に向かうに従い着座面3側から離れた後に着座面3側に近づく凸曲線状に形成されているので、その最凸点Sから徐々に主切刃5および副切刃6を被削材に食い付かせることができ、切削抵抗の低減を図るとともに、厚肉化による切刃強度の向上を促すことができる。
【0089】
しかも、これら第2、第3の実施形態の切削インサート21、31では、溝部8の他端は円弧状切刃部5a、6aに連なる逃げ面4に開口しているのに対し、この溝部8の開口部が、主切刃5および副切刃6が着座面3に対して最も凸となる最凸点Sよりも円弧状切刃部5a、6a側に位置しているので、やはり第1の実施形態と同様に最凸点Sが食い付く際の衝撃がインサート中心線X方向に溝部8の開口部に直接伝播するのを避けることができ、このような衝撃によって溝部8の開口部から切削インサート21、31が損傷するのも防ぐことができる。
【0090】
このように溝部8の他端が円弧状切刃部5a、6aに開口している場合や、これら第2、第3の実施形態の切削インサート21、31のように溝部8の一端も直線状切刃部5b、6bに連なる逃げ面4に開口している場合には、着座面3に対向する方向から見た底面視において、主切刃5および副切刃6の上記最凸点Sと円弧状切刃部5a、6aの中心P1とを結ぶ直線L6と、主切刃5および副切刃6の円弧状切刃部5a、6aと直線状切刃部5b、6bとの接点Vと円弧状切刃部5a、6aの中心p1とを結ぶ直線L7とがなす第3の交差角θ3が大きすぎると、逃げ面4への溝部8の開口部に最凸点Sが近づきすぎて、上述のように切削インサート21、31の損傷を確実に防ぐことができなくなるそれが生じる。このため、上記第3の交差角θ3は40°以下の範囲とされているのが望ましく、37°以下の範囲とされるのがより望ましく、35°以下の範囲とされるのがさらに望ましい。
【0091】
また、これら第2、第3の実施形態の切削インサート21、31は、上述のように取付孔7の中心線であるインサート中心線Xに関してすくい面2の周方向に180°回転対称形状に形成されている。このため、第3、第4のインサート取付座12C、12Dに取り付けられた状態で切削に使用された切削インサート21、31のそれぞれ一方の主切刃5および副切刃6に摩耗等が生じて寿命に達したなら、切削インサート21、31を一旦取り外してインサート中心線X回りに180°回転させ、第3、第4のインサート取付座12C、12Dに取り付け直すことにより、第1の実施形態と同様に1つの切削インサート21、31でそれぞれ2回の使用が可能である。