特許第6835260号(P6835260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6835260モノクローナル抗体の簡素化された定量方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835260
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】モノクローナル抗体の簡素化された定量方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/06 20060101AFI20210215BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20210215BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20210215BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20210215BHJP
   C07K 17/00 20060101ALN20210215BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20210215BHJP
   C12N 11/00 20060101ALN20210215BHJP
【FI】
   G01N30/06 E
   G01N30/72 C
   G01N27/62 X
   !C12N15/13
   !C07K17/00
   !C07K16/00
   !C12N11/00
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-561520(P2019-561520)
(86)(22)【出願日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】JP2017047190
(87)【国際公開番号】WO2019130536
(87)【国際公開日】20190704
【審査請求日】2020年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】岩本 典子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼梨 めぐみ
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/143227(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/033479(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/143223(WO,A1)
【文献】 特表2008−532019(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0156426(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 − 30/96
G01N 27/62
G01N 1/28
C12N 11/00 − 15/13
C07K 16/00 − 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
(a)サンプル中のモノクローナル抗体を捕捉して多孔質体の細孔内に固定化するステップ、
(b)該モノクローナル抗体を固定化した多孔質体と、プロテアーゼを固定化したナノ粒子とを接触させてモノクローナル抗体の選択的プロテアーゼ消化を30分間以上かけて行うステップ、及び
(c)選択的プロテアーゼ消化によって得られたペプチド断片を液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)によって検出するステップ
を含む、サンプル中のモノクローナル抗体の検出方法であって、ステップ(b)を、反応開始初期の10秒間〜5分間の撹拌条件下と、その後の静置条件下で実施する、上記方法。
【請求項2】
ステップ(b)において、反応開始初期の10秒間〜1分間の撹拌に加えて、更に10秒間〜1分間の1回以上の追加の撹拌を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
撹拌が、自動化された分注器によるピペッティング操作によって達成される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
所定の反応温度に設定された加熱容器内でステップ(b)を実施する、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
サンプル中の0.05〜300μg/mlの抗体濃度範囲に対して定量可能な結果をもたらす、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノクローナル抗体の簡素化された定量方法に関し、具体的には、質量分析を利用した自動化定量システムにより適合した定量方法に関する。より具体的には、本発明は、モノクローナル抗体の定量のために既に確立されたプロトコールの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ELISA法に代わる定量法として、LC-MS/MS法を用いた抗体医薬のバイオアナリシスの開発が盛んに行われている。
【0003】
本発明者等のグループは、測定対象のモノクローナル抗体と、これを基質として消化し得るプロテアーゼの両方を固相に固定化することで、位置選択的な固相-固相反応によるモノクローナル抗体のプロテアーゼ消化が可能であることを見出し、個々のモノクローナル抗体特有のペプチドを取得することに成功している(特許文献1〜6及び非特許文献1〜8)。この方法は、モノクローナル抗体を細孔内に固定化した多孔質体と、プロテアーゼを固定化したナノ粒子とを液体中で接触させてモノクローナル抗体のFab領域選択的プロテアーゼ消化を行う質量分析の前処理方法であり、得られたペプチド断片を液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)によって効果的に検出及び定量することができる画期的な技術である。本発明者等は本方法を「ナノ表面及び分子配向制限的タンパク分解(nano-surface and molecular-orientation limited proteolysis)方法(nSMOL法)」と命名している。
【0004】
nSMOL法による血中抗体医薬の定量は、抗体医薬の特異的配列を有するFab領域のみを限定的にプロテアーゼ消化し、LC-MS/MS分析において最も問題視される、イオンサプレッション効果を抑制し、より安定した信頼性の高い定量値を提供することが可能な方法である。本発明者等は既に、nSMOL法及びLC-MS/MS法を組み合わせて用いたモノクローナル抗体の定量方法が、15種類以上にわたる抗体医薬の血中濃度測定において、日本、米国及び欧州における生物学的分析方法のバリデーションのためのガイドラインの基準を満たすものであることを確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開 WO2015/033479号
【特許文献2】国際公開 WO2016/143223号
【特許文献3】国際公開 WO2016/143224号
【特許文献4】国際公開 WO2016/143226号
【特許文献5】国際公開 WO2016/143227号
【特許文献6】国際公開 WO2016/194114号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Analyst. 2014 Feb 7; 139(3): 576-80. doi: 10.1039/c3an02104a
【非特許文献2】Anal. Methods, 2015; 21: 9177-9183. doi:10.1039/c5ay01588j
【非特許文献3】Drug Metabolism and Pharmacokinetics, 2016; 31: 46-50. doi:10.1016/j.dmpk.2015.11.004
【非特許文献4】Bioanalysis. 2016; 8(10):1009-20. doi: 10.4155. bio-2016-0018
【非特許文献5】Biol Pharm Bull, 2016;39(7):1187-94. doi: 10.1248/bpb.b16-00230
【非特許文献6】J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci; 2016; 1023-1024:9-16. doi: 10.1016/j.jchromb.2016.04.038
【非特許文献7】Clin Pharmacol Biopharm 2016; 5:164. doi:10.4172/2167-065X.1000164
【非特許文献8】J. Pharm Biomed Anal; 2017; 145:33-39. doi:10.1016/j.jpba.2017.06.032
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
nSMOL法は、直径約200 nmのナノ粒子表面に固相したプロテアーゼが、細孔径約100 nmの多孔質体に固定した抗体分子に接触することで、制限された反応場において、抗体分子のFabを選択的に切断する反応メカニズムを持っている。このため、nSMOL法による抗体分子の選択的プロテアーゼ消化を進めるためには、ナノ粒子表面と多孔質体との均質な接触が必要であり、反応中は混合若しくは攪拌により、これらが反応液中に均質に分散することが必須と考えられていた。
【0008】
例えば、nSMOL法の実施のために、LC/MS/MS用前処理キット「nSMOL Antibody BA Kit」(島津製作所)が市販されており、キットと合わせて提供されているプロトコルでは、ナノ粒子と多孔質体との接触時にボルテックスミキサーなどを用いた撹拌をすることが記載されている。マイクロリットルオーダーの微量サンプルをボルテックスミキサー上に立て、攪拌しながら反応を進めることにより、再現性の高い反応を実現することができた。
【0009】
一方、ボルテックスミキサーを使う場合、反応後の収率が容器形状の影響や、特にインキュベーターの形状に大きく依存し、ある種の機種依存性が発生する。従って、nSMOL法の実施は、一般的な研究室では可能であっても、初期導入や病院内に設置されたクリニカルラボなどでは難しい可能性があった。
【0010】
nSMOL法において使用する容器は、マイクロチューブの形態であることが必須であり、特殊な形状のチューブ、もしくは低容量のチューブでは実施しにくいと考えられる。また、多検体の分析においてはマイクロプレートを用いることができるが、ボルテックスミキサーを用いた攪拌をすることで均一な反応環境を実現できない可能性がある。従って攪拌スピードを厳格にコントロールしなければならないなど、汎用性に欠ける部分もあった。
【0011】
低速での撹拌を行うために、上記特許文献4(WO 2016/143226号)では、タッピングローテーション撹拌をする方法を開示しているが、この改良方法も、汎用性の点では解決すべき点が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題に鑑み、我々は、nSMOL法の汎用性を高めることを目的とし、反応条件の更なる検討を実施した。
【0013】
具体的には、容器特殊性を排除することを目的として、nSMOL反応がどんな実験機器にも対応できるような条件を検討した。例えば、箱形でかつ水バットを張れるインキュベーター以外にも、ブロックヒーター、サーマルサイクラー、省スペースインキュベーター、ウォーターバスなど、様々な機器を用いてnSMOLを実施することができるようにすることを目的として検討した。
【0014】
その結果、ナノ粒子と多孔質体とを接触させてモノクローナル抗体の選択的プロテアーゼ消化を行う場合に、消化反応中に常時撹拌をせずに、サンプル中で双方の粒子が沈殿した状態であっても、検出結果を大きく損なうことなく、定量的な検出を可能とするものであることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
1. 以下のステップ:
(a)サンプル中のモノクローナル抗体を捕捉して多孔質体の細孔内に固定化するステップ、
(b)該モノクローナル抗体を固定化した多孔質体と、プロテアーゼを固定化したナノ粒子とを接触させてモノクローナル抗体の選択的プロテアーゼ消化を30分間以上かけて行うステップ、及び
(c)選択的プロテアーゼ消化によって得られたペプチド断片を液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)によって検出するステップ
を含む、サンプル中のモノクローナル抗体の検出方法であって、ステップ(b)を、反応開始初期の10秒間〜5分間の撹拌条件下と、その後の静置条件下で実施する、上記方法。
2. ステップ(b)において、反応開始初期の10秒間〜1分間の撹拌に加えて、更に10秒間〜1分間の1回以上の追加の撹拌を含む、上記1記載の方法。
3. 撹拌が、自動化された分注器によるピペッティング操作によって達成される、上記1又は2記載の方法。
4. 所定の反応温度に設定された加熱容器内でステップ(b)を実施する、上記1〜3のいずれか記載の方法。
5. サンプル中の0.05〜300μg/mlの抗体濃度範囲に対して定量可能な結果をもたらす、上記1〜4のいずれか記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、反応手技を簡素化できると共に、nSMOL法によるモノクローナル抗体の検出のために使用可能な容器の範囲が拡大し、同時に実施可能な実験施設も拡大する。また、特に多検体処理のためのマイクロプレートの使用が可能となり、自動化された多検体分析への応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】3種の反応条件におけるトラスツズマブの分析結果を示す。(A)はステップ(b)を1時間実施し、(B)はステップ(b)を3時間、(C)はステップ(b)を5時間行った場合の結果であり、A_1、A_3及びA_5はずっと撹拌した場合、B_1、B_3及びB-5は1時間毎に10秒間撹拌した場合、C_3及びC_5は最初の撹拌後は静置した場合の結果を示す。縦軸は相対ピーク強度を示す。
図2】3種の反応条件におけるベバシズマブの分析結果を示す。(A)はステップ(b)を1時間実施し、(B)はステップ(b)を3時間、(C)はステップ(b)を5時間行った場合の結果であり、A_1、A_3及びA_5はずっと撹拌した場合、B_1、B_3及びB-5は1時間毎に10秒間撹拌した場合、C_3及びC_5は最初の撹拌後は静置した場合の結果を示す。縦軸は相対ピーク強度を示す。
図3】2種の反応条件におけるアダリムマブの分析結果を示す。(A)はステップ(b)を1時間実施し、(B)はステップ(b)を3時間、(C)はステップ(b)を5時間行った場合の結果であり、A_1、A_3及びA_5はずっと撹拌した場合、C_1、C_3及びC_5は最初の撹拌後は静置した場合の結果を示す。縦軸は相対ピーク強度を示す。
図4】2種の反応条件におけるニボルマブの分析結果を示す。(A)はステップ(b)を1時間実施し、(B)はステップ(b)を3時間、(C)はステップ(b)を5時間行った場合の結果であり、A_1、A_3及びA_5はずっと撹拌した場合、C_1、C_3及びC_5は最初の撹拌後は静置した場合の結果を示す。縦軸は相対ピーク強度を示す。
図5】2種の反応条件におけるインフリキシマブの分析結果を示す。(A)はステップ(b)を1時間実施し、(B)はステップ(b)を3時間、(C)はステップ(b)を5時間行った場合の結果であり、A_1、A_3及びA_5はずっと撹拌した場合、C_1、C_3及びC_5は最初の撹拌後は静置した場合の結果を示す。縦軸は相対ピーク強度を示す。
図6】2種の反応条件におけるリツキシマブの分析結果を示す。(A)はステップ(b)を1時間実施し、(B)はステップ(b)を3時間、(C)はステップ(b)を5時間行った場合の結果であり、A_1、A_3及びA_5はずっと撹拌した場合、C_1、C_3及びC_5は最初の撹拌後は静置した場合の結果を示す。縦軸は相対ピーク強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、以下のステップ:
(a)サンプル中のモノクローナル抗体を捕捉して多孔質体の細孔内に固定化するステップ、
(b)該モノクローナル抗体を固定化した多孔質体と、プロテアーゼを固定化したナノ粒子とを接触させてモノクローナル抗体の選択的プロテアーゼ消化を30分間以上かけて行うステップ、及び
(c)選択的プロテアーゼ消化によって得られたペプチド断片を液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)によって検出するステップ
を含む、サンプル中のモノクローナル抗体の検出方法であって、ステップ(b)を、反応開始初期の10秒間〜5分間の撹拌条件下と、その後の静置条件下で実施する、上記方法を提供する。
【0019】
<ステップ(a)>
本発明の方法のステップ(a)は、サンプル中のモノクローナル抗体を捕捉して多孔質体の細孔内に固定化するステップに相当する。
【0020】
本明細書において、「サンプル」とは、モノクローナル抗体の存在を検出すべき液体サンプルであって、特に限定するものではないが、一般的にはマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウシ、ヒト等の哺乳動物、特にヒト被験者、主としてヒト患者由来の生物学的サンプルであり、好ましくは血漿または血清、もしくは組織ホモジネート抽出液である。あるいは、サンプルは、例えば発明の効果を実証するために、人為的に添加されたモノクローナル抗体と血漿とを含む液体サンプルであり得る。本発明の方法におけるモノクローナル抗体の検出のためには、サンプル中のモノクローナル抗体の濃度は、0.05〜300μg/mlの範囲内であれば良い。
【0021】
測定対象となり得るモノクローナル抗体としては、限定するものではないが、例えばパニツムマブ、オファツムマブ、ゴリムマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、ラムシルマブ、アダリムマブ等のヒト抗体;トシリズマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブ-DM1、ベバシズマブ、オマリズマブ、メポリズマブ、ゲムツズマブ、パリビズマブ、ラニビズマブ、セルトリズマブ、オクレリズマブ、モガムリズマブ、エクリズマブ、トリシズマブ、メポリズマブ等のヒト化抗体;リツキシマブ、セツキシマブ、インフリキシマブ、バシリキシマブ、等のキメラ抗体等が挙げられる。
【0022】
また、モノクローナル抗体の特異性を維持しつつ更なる機能を付加した複合体、例えばFc融合タンパク質(エタネルセプト、アバタセプト等)、抗体-薬物複合体(例えばブレンツキシマブベドチン、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、トラスツズマブ-エムタンシン等)も測定対象のモノクローナル抗体となり得る。測定に先立って複合体の結合を解離させ、抗体部分のみを分析に供しても良いが、複合体の形態のままで分析に供することもできる。
【0023】
モノクローナル抗体のアミノ酸配列の情報等は、例えば京都遺伝子ゲノム百科事典(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes, KEGG)から取得することができる。
【0024】
本発明の方法に使用する多孔質体としては、多数の細孔を有し、抗体を部位特異的に結合可能なものを使用することができる。多孔質体の平均細孔径は、10nm〜200nm程度の範囲で、かつナノ粒子の平均粒径よりも小さい範囲で適宜に設定される。
【0025】
本発明のステップ(a)では、測定対象のモノクローナル抗体を多孔質体の細孔内に固定化する。この目的で、多孔質体の細孔内に、抗体と部位特異的に相互作用するリンカー分子が固定化されたものが好ましく用いられる。
【0026】
リンカー分子としては、抗体のFcドメインと部位特異的に結合するProtein AやProtein G等が好ましく用いられる。細孔内にこれらのリンカー分子が固定化された多孔質体を用いることにより、細孔内に抗体のFcドメインが固定化され、Fabドメインが細孔の表層付近に位置するため、プロテアーゼによるFabドメインの位置選択的消化が可能となる。
【0027】
本発明において好適に使用可能な多孔質体として、特に限定するものではないが、例えばProtein G Ultralink樹脂(Pierce社製)、トヨパール TSKgel(TOSOH社製)、トヨパール AF-rProtein A HC-650F resin(TOSOH社製)、Protein A Sepharose(GEヘルスケア)、KanCapA(KANEKA)等が挙げられる。
【0028】
抗体を多孔質体の細孔内に固定化する方法は特に限定されず、例えば、細孔内にProtein AやProtein Gが固定化された多孔質体に抗体を固定化する場合は、多孔質体の懸濁液と抗体を含む溶液とを混合することにより、細孔内に抗体を容易に固定化できる。多孔質体と抗体の量比は、目的に応じて適宜に設定できる。
【0029】
<ステップ(b)>
本発明の方法のステップ(b)は、上記ステップ(a)で得られたモノクローナル抗体を固定化した多孔質体と、プロテアーゼを固定化したナノ粒子とを接触させてモノクローナル抗体の選択的プロテアーゼ消化を30分間以上かけて行うステップに相当する。
【0030】
ナノ粒子に固定化させるプロテアーゼの種類は、質量分析による定量又は同定の対象となるモノクローナル抗体の種類に応じて適宜選択すればよく、限定はされないが、例えば、トリプシン、キモトリプシン、リジルエンドペプチダーゼ、V8プロテアーゼ、AspNプロテアーゼ(Asp-N)、ArgCプロテアーゼ(Arg-C)、パパイン、ペプシン、ジペプチジルペプチダーゼを単独又は組み合わせて使用することができる。プロテアーゼとして、特にトリプシンが好ましく用いられる。本発明の方法において好適に使用できるプロテアーゼとして、例えばTrypsin Gold(プロメガ社製)、Trypsin TPCK-treated(シグマ社製)等が挙げられる。
【0031】
ナノ粒子は、その平均粒径が、多孔質体の平均細孔径よりも大きいものであり、形状は特に限定されないが、多孔質体の細孔へのプロテアーゼのアクセスの均一化の観点から、球状のナノ粒子が好ましい。また、ナノ粒子は、分散性が高く、平均粒径が均一であることが好ましい。
【0032】
ナノ粒子の種類としては、水性媒体に分散又は懸濁することができ、分散液又は懸濁液から磁気分離または磁性沈殿分離により容易に回収することができる磁気ナノ粒子が好ましい。また、凝集が起こりにくいという点において、その表面が有機ポリマーで被覆された磁気ナノ粒子がより好ましい。有機ポリマーで被覆された磁性ナノビーズの具体例としては、FGビーズ、SGビーズ、Adembeads、nanomagなどが挙げられる。市販品としては、例えば、多摩川精機株式会社製のFG beads(フェライト粒子をポリグリシジルメタクリレート(ポリGMA)で被覆した粒径約200nmのポリマー磁性ナノ粒子)が好適に用いられる。
【0033】
上記ナノ粒子は、非特異的なタンパク質の吸着抑制と、プロテアーゼの選択的な固定化のために、プロテアーゼと結合可能なスペーサ分子で修飾されていることが好ましい。スペーサ分子を介してプロテアーゼを固定化することにより、ナノ粒子表面からのプロテアーゼの脱離が抑制され、プロテアーゼ消化の位置選択性が高められる。また、スペーサの分子サイズを調整することにより、抗体の所望の位置にプロテアーゼを選択的にアクセスさせ、位置選択性を高めることもできる。
【0034】
このようなスペーサ分子で表面修飾されたナノ粒子もまた市販されており、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドで活性化されたエステル基(活性エステル基)を有するスペーサ分子で修飾されたナノ粒子は、商品名「FG beads NHS」(多摩川精機株式会社)として市販されている。
【0035】
プロテアーゼをナノ粒子の表面に固定化する方法は特に限定されず、プロテアーゼとナノ粒子(あるいはナノ粒子表面を修飾するスペーサ分子)の特性等に応じて適宜の方法を採用できる。尚、上記のLC/MS/MS用前処理キット「nSMOL Antibody BA Kit」(島津製作所)には、プロテアーゼとしてトリプシンが固定化されたナノ粒子であるFG beads Trypsin DART(登録商標)が含まれており、本発明の方法に好適に用いることができる。
【0036】
上記モノクローナル抗体を固定化した多孔質体と、プロテアーゼを固定化したナノ粒子とを接触させることにより、モノクローナル抗体が選択的にプロテアーゼ消化され、ペプチド断片が産生される。
【0037】
プロテアーゼ消化は、例えば、プロテアーゼの至適pH近傍に調整された緩衝溶液中で実施する。プロテアーゼ消化のための反応温度は37℃程度であって良いが、飽和蒸気圧下、約50℃で行うことが好適である。反応時間は、30分間〜20時間、例えば1時間〜8時間、3〜5時間の範囲とすることができる。
【0038】
本発明の方法では、ステップ(b)を、反応開始初期の10秒間〜5分間、例えば10秒間〜1分間の撹拌条件下と、その後の静置条件下で実施する。ここで、「反応開始初期」とは、30分間以上かけて実施するステップ(b)のうちの最初の時間であることが意図されるが、種々の実験環境下において、多孔質体とナノ粒子との厳密な接触直後に撹拌することが必ずしも可能ではないことは理解されるであろう。しかしながら、通常は、モノクローナル抗体を固定化した多孔質体にプロテアーゼを固定化したナノ粒子を添加した段階、又はプロテアーゼを固定化したナノ粒子にモノクローナル抗体を固定化した多孔質体を添加した段階で撹拌を行う。
【0039】
撹拌の方法は、特に限定するものではなく、ボルテックスミキサー、スターラー、ロータリーミキサー、タッピングロータリーミキサーによる撹拌とすることができる。撹拌はまた、例えば自動化された分注器におけるピペッティング操作、すなわちマイクロピペットによる反応液の吸い込み及び吐出によって撹拌効果を得ることができる。
【0040】
実施例で実証するように、ステップ(b)の反応は、驚くべきことに、反応前に十分撹拌しておくことで、従来必須と考えられていた常時撹拌する条件下でなくても十分進行し、サンプル中のモノクローナル抗体の定量的検出という目的を果たすことが可能であることが確認された。
【0041】
従って、反応開始初期に攪拌すれば良く、その後の攪拌は必ずしも必要ではないが、本発明の方法は、ステップ(b)において、例えば反応開始初期の10秒間〜1分間撹拌し、更に10秒間〜1分間の1回以上の追加の撹拌を行うことを除外するものではない。
【0042】
このように、本発明は、ステップ(b)の反応を反応開始初期の撹拌条件と、その後の静置条件下で行うことにより、より簡素化されたモノクローナル抗体の検出方法を提供することができる。
【0043】
反応液の蒸発を防ぐために、反応を飽和蒸気圧下で維持することが好ましい。この目的で、例えば省スペースインキュベーターでは、水を張った小さな箱などを置くことが想定される。ヒートブロックでは、例えば水を湿らせたワイパーとサンプルを一緒に、サランラップ等で密封して加熱することができる。そのような汎用的な手技でも、nSMOL反応が十分に進行し、抗体医薬のバイオアナリシスが可能である。また、例えば、ステップ(b)を、所定の反応温度に設定された加熱容器内で実施することができ、これは検出方法の自動化のために有効であり得る。
【0044】
プロテアーゼ消化によって消化されたペプチドは、反応液中に溶解して放出される。従って、目的のペプチド断片を質量分析に供するためには、多孔質体及びナノ粒子を除去することが必要である。これは、プロテアーゼ消化後のサンプルに対して濾過、遠心分離、磁気分離、透析等の操作を行うことで達成できる。
【0045】
例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)製のろ過膜(Low-binding hydrophilic PVDF、孔径0.2μm、ミリポア社製)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のろ過膜(Low-binding hydrophilic PTFE、孔径0.2μm、ミリポア社製)等を用いてろ過することにより、多孔質体及びナノ粒子を簡便に除去することができる。ろ過は、遠心ろ過とすると迅速かつ簡便なろ過が可能である。
【0046】
<ステップ(c)>
本発明の方法のステップ(c)は、選択的プロテアーゼ消化によって得られたペプチド断片を液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)によって検出するステップに相当する。
【0047】
質量分析におけるイオン化法、及びイオン化された試料の分析方法は特に限定されない。また、三連四重極型質量分析装置等を用いて、MS/MS分析、あるいはMS3以上の多段階質量分析、多重反応モニタリング(multiple reaction monitoring, MRM)を行うことができる。
【0048】
本発明の方法において特に適した装置は、特に限定するものではないが、例えばLCMS-8030、LCMS-8040、LCMS-8050、LCMS-8060、(いずれも島津製作所)、LCMS-IT-TOF、(島津製作所)を挙げることができる。
【0049】
質量分析等により、目的のモノクローナル抗体に特異的なFab領域、例えば重鎖及び/又は軽鎖のCDR1領域、CDR2領域、CDR3領域のアミノ酸配列を含むペプチド断片を検出することで、目的のモノクローナル抗体の同定・定量が可能である。
【0050】
抗体医薬として使用することが意図されるモノクローナル抗体は、そのアミノ酸配列情報等が公開されており、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列、Fab及びFcドメイン、相補性決定領域(CDR)、ジスルフィド結合等の情報を入手することが可能である。従って、nSMOL法によるプロテアーゼ消化で複数のペプチドが得られるが、それぞれのペプチドについてのアミノ酸配列情報が得られれば、そのペプチドがモノクローナル抗体のいずれの位置に存在するものであるかを容易に理解することができる。従って、Fab領域由来の複数のペプチドのうち、特に好適なペプチドを分析対象として選択することができる。このように選択されるペプチドは「シグネチャーペプチド」と呼ばれている。
【0051】
nSMOL法の詳細は、例えばWO2015/033479号;WO2016/143223号;WO2016/143224号;WO2016/143226号;WO2016/143227号;WO2016/194114号;Analyst. 2014 Feb 7; 139(3): 576-80. doi: 10.1039/c3an02104a;Anal. Methods, 2015; 21: 9177-9183. doi:10.1039/c5ay01588j;Drug Metabolism and Pharmacokinetics, 2016; 31: 46-50. doi:10.1016/j.dmpk.2015.11.004;Bioanalysis. 2016; 8(10):1009-20. doi: 10.4155. bio-2016-0018;Biol Pharm Bull, 2016;39(7):1187-94. doi: 10.1248/bpb.b16-00230;J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci; 2016; 1023-1024:9-16. doi: 10.1016/j.jchromb.2016.04.038;Clin Pharmacol Biopharm 2016; 5:164. doi:10.4172/2167-065X.1000164;及びJ. Pharm Biomed Anal; 2017; 145:33-39. doi:10.1016/j.jpba.2017.06.032等に開示されている。これらの文献の開示内容は、参照により本明細書に組み入れるものとする。
【実施例】
【0052】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0053】
まず、本実施例で行ったnSMOL法の手順を以下に記載する。尚、使用する試薬及び容器等は、取扱説明書と共に「nSMOL Antibody BA Kit」として島津製作所から提供されているものを使用することができる。
尚、nSMOL(登録商標)Antibody BA Kitには、以下の試薬が含まれている。
Immunoglobulin Collection Resin(本発明における多孔質体の懸濁液)
Wash Solution 1(洗浄溶液)
Wash Solution 2(洗浄溶液)
Reaction Solution(反応溶液)
Enhanced Reaction Solution(反応促進溶液)
Reaction Stop Solution(反応停止溶液)
FEG Beads Trypsin DART(登録商標、プロテアーゼを固定したナノ粒子(粒径200nm)の懸濁液)
【0054】
nSMOL法の一般的なプロトコルは以下に示すようなものである。
<ステップ(a)>
Immunoglobulin Collection Resin(懸濁液)を25μLとる。
Wash solution 1を90μLとり、上記に加える。
モノクローナル抗体を含むサンプル(例えばヒト血漿)を10μLとり、上記に加える。
5分程度軽く攪拌する。
懸濁液をフィルターカップもしくはフィルタープレートに移す。
遠心(10,000 g x 1分間、もしくは3,000 g x 2分間)し上清を除去する。
Wash solution 1を200μL加え、同様に遠心して上清を除去する(2回)。
Wash solution 2を200μL加え、同様に遠心して上清を除去する(2回)。
【0055】
<ステップ(b)>
Reaction bufferもしくはEnhanced reaction bufferを75μL加える。
FG beads Trypsin DARTを10μL加える。
飽和蒸気圧下、50℃にて、5時間撹拌する。
Reaction Stop Solutionを10μL加える。
遠心ろ過をして、溶液を回収する。回収は、磁気分離、又はフィルタープレートを二段重ねにして、遠心ろ過をする。
【0056】
<ステップ(c)>
LC-MS分析を行う。
【0057】
[実施例1]
測定対象としてトラスツズマブを用い、従来の一般的なnSMOL法のステップ(b)における50℃での反応を、以下の3通りの条件でそれぞれ5時間実施した。尚、撹拌はボルテックスミキサー(200-1000 rpm)で行った。
条件A:撹拌し続ける
条件B:1分間撹拌後に1時間静置を繰り返す(1時間ごとに撹拌)
条件C:1分間撹拌後、静置する
【0058】
サンプルは、ヒト血漿(コージンバイオ株式会社製)中に50μg/ml濃度のトラスツズマブ(中外製薬株式会社製)を添加して用い、反応液としてnSMOL Antibody BA Kitに含まれるEnhanced Reaction Solutionを使用した。
【0059】
ステップ(b)の進行中に、反応液を目視で観察した。その結果、静置時間が長くなるにつれて、Immunoglobulin Collection Resin及びFG beads Trypsin DARTが容器底部に沈降するのが観察された。
【0060】
1時間、3時間、及び5時間反応させたサンプルに速やかにReaction Stop Solution(10%ギ酸)を添加して溶液を回収し、NexeraX2 システム(島津製作所)及びLCMS-8050/8060(島津製作所)を使用してLC-MS測定を行った。トラスツズマブの定量のためのペプチド断片(シグネチャーペプチド)として、重鎖のCDR2領域に存在するIYPTNGYTR(配列番号1)を選択した。
【0061】
LC-MS測定の結果を図1に示す。図1の結果から明らかなように、継続して撹拌した条件Aにおいて、最も高いイオン収率が得られている。しかしながら、条件B及び条件Cの結果は、条件Aと比較して10〜20%低い値を示すのみであり、測定に使用するには問題ないレベルであることが確認された。また、いずれの条件においても反応時間を長くすることによって値が高くなっていることから、ステップ(b)の反応時間を調整することでも対応可能であることが明らかである。
【0062】
[実施例2]
実施例1と同様の検討を、測定対象としてベバシズマブを用いて実施した。サンプルは、ヒト血漿(コージンバイオ株式会社製)中に50μg/ml濃度のベバシズマブ(中外製薬株式会社)を添加して用い、反応液としてnSMOL Antibody BA Kitに含まれるReaction Solutionを使用した。ベバシズマブの定量のためのシグネチャーペプチドとして、重鎖のCDR2領域に存在するFTFSLDTSK(配列番号2)を選択した。
LC-MS測定の結果を図2に示す。本実施例では、撹拌条件による検出結果に顕著な差は認められなかった。
【0063】
[実施例3]
実施例1と同様の検討を、測定対象としてアダリムマブを用い、条件A及びCで実施した。サンプルは、ヒト血漿(コージンバイオ株式会社製)中に50μg/ml濃度のアダリムマブ(アッヴィ合同会社)を添加して用い、反応液としてnSMOL Antibody BA Kitに含まれるEnhanced Reaction Solutionを使用した。アダリムマブの定量のためのシグネチャーペプチドとして、軽鎖のCDR3領域に存在するAPYTFGQGTK(配列番号3)を選択した。
【0064】
LC-MS測定の結果を図3に示す。図1の結果から明らかなように、継続して撹拌した条件Aにおいて、高いイオン収率が得られている。しかしながら、条件Cの結果は、条件Aと比較して10〜20%低い値を示すのみであり、測定に使用するには問題ないレベルであることが確認された。また、いずれの条件においても反応時間を長くすることによって値が高くなっていることから、ステップ(b)の反応時間を調整することでも対応可能であることが明らかである。
【0065】
[実施例4]
実施例1と同様の検討を、測定対象としてニボルマブを用い、条件A及びCで実施した。サンプルは、ヒト血漿(コージンバイオ株式会社製)中に50μg/ml濃度のニボルマブ(小野薬品工業株式会社)を添加して用い、反応液としてnSMOL Antibody BA Kitに含まれるEnhanced Reaction Solutionを使用した。ニボルマブの定量のためのシグネチャーペプチドとして、重鎖のCDR1領域に存在するASGITFSNSGMHWVR(配列番号4)を選択した。
LC-MS測定の結果を図4に示す。本実施例では、撹拌条件による検出結果に顕著な差は認められなかった。
【0066】
[実施例5]
実施例1と同様の検討を、測定対象としてインフリキシマブを用い、条件A及びCで実施した。サンプルは、ヒト血漿(コージンバイオ株式会社製)中に50μg/ml濃度のインフリキシマブ(田辺三菱製薬株式会社)を添加して用い、反応液としてnSMOL Antibody BA Kitに含まれるEnhanced Reaction Solutionを使用した。インフリキシマブの定量のためのシグネチャーペプチドとして、重鎖のCDR2領域に存在するSINSATHYAESVK(配列番号5)を選択した。
LC-MS測定の結果を図5に示す。本実施例では、撹拌条件による検出結果に顕著な差は認められなかった。
【0067】
[実施例6]
実施例1と同様の検討を、測定対象としてリツキシマブを用い、条件A及びCで実施した。サンプルは、ヒト血漿(コージンバイオ株式会社製)中に50μg/ml濃度のリツキシマブ(全薬工業株式会社)を添加して用い、反応液としてnSMOL Antibody BA Kitに含まれるEnhanced Reaction Solutionを使用した。リツキシマブの定量のためのシグネチャーペプチドとして、重鎖のCDR2領域に存在するGLEWIGAIYPGNGDTSYNQK(配列番号6)を選択した。
【0068】
LC-MS測定の結果を図6に示す。図6の結果から明らかなように、継続して撹拌した条件Aにおいて、高いイオン収率が得られている。しかしながら、条件Cの結果は、条件Aと比較して10〜20%低い値を示すのみであり、測定に使用するには問題ないレベルであることが確認された。また、いずれの条件においても反応時間を長くすることによって値が高くなっていることから、ステップ(b)の反応時間を調整することでも対応可能であることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により、nSMOL法のプロトコールが改良され、質量分析を用いたモノクローナル抗体の検出方法の簡素化および多検体分析、自動化分析、特に自動分注器への応用が期待できる。特に薬物動態試験、治療薬物モニタリング試験において、広く応用が可能となる。
【0070】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]