(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワイドバンドギャップ半導体素子は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、および、ダイアモンドの少なくともいずれかを含む、請求項6に記載の短絡判定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の電力変換装置では、ロゴスキーコイルの端子間電圧を積分し、積分出力の値がある一定レベル以上であることを検出した場合にスイッチング素子が短絡していると判定している。しかしながら、スイッチング素子が短絡したことを、可能な限り早く判定することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、短絡判定装置を提供する。短絡判定装置は、制御端子、第1主端子、および、第2主端子を有するスイッチング素子における、第1主端子および第2主端子間に流れる主電流の時間変化を検出するセンサを備えてよい。短絡判定装置は、制御端子を駆動するための制御信号がオンした後における第1のタイミング以降において、主電流の時間変化が第1のしきい値以上となった場合に、スイッチング素子が短絡したと判定する短絡判定部を備えてよい。
【0005】
短絡判定部は、第1のタイミングを検出するタイミング検出部と、タイミング検出部が第1のタイミングを検出した場合に、主電流の時間変化が第1のしきい値以上となったか否かの判定を開始する第1の判定部とを有してよい。
【0006】
タイミング検出部は、主電流の時間変化が第2のしきい値以下となったタイミングを、第1のタイミングとして検出してよい。
【0007】
タイミング検出部は、制御信号がオンしてから予め定められた期間が満了したタイミングを、第1のタイミングとして検出してよい。
【0008】
短絡判定部は、主電流の大きさ、スイッチング素子の温度、および、スイッチング素子の特性の少なくともいずれかに基づいて、予め定められた期間の長さを変更するタイミング変更部を更に有してよい。
【0009】
短絡判定部は、主電流の時間変化を積分する積分器と、積分器の出力に基づいて、スイッチング素子の短絡を判定する第2の判定部とを更に有してよい。
【0010】
スイッチング素子が短絡したと判定された場合に、短絡電流を遮断する短絡電流遮断部を更に備えてよい。
【0011】
センサは、ロゴスキーコイルであってよい。
【0012】
スイッチング素子は、ワイドバンドギャップ半導体素子であってよい。
【0013】
ワイドバンドギャップ半導体素子は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、および、ダイアモンドの少なくともいずれかを含んでよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、スイッチ装置を提供する。スイッチ装置は、短絡判定装置を備えてよい。スイッチ装置は、スイッチング素子を備えてよい。
【0015】
本発明の第3の態様においては、短絡判定方法を提供する。短絡判定方法は、制御端子、第1主端子、および、第2主端子を有するスイッチング素子の短絡を判定してよい。短絡判定方法は、第1主端子および第2主端子間に流れる主電流の時間変化を検出することを備えてよい。短絡判定方法は、制御端子を駆動するための制御信号がオンした後における第1のタイミング以降において、主電流の時間変化が第1のしきい値以上となった場合に、スイッチング素子が短絡したと判定することを備えてよい。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
ここで、本明細書において「…と…との間に設けられる」等の表現は、物理的な配置を限定するものではなく、「…と…とに電気的に接続される」ことを意味するものとする。また、本明細書において「接続される」等の表現は、他の素子を介さずに直接的に接続されることに限らず、他の素子を介して間接的に接続されることをも含むものとする。
【0020】
図1は、本実施形態に係る短絡判定装置100を備えるスイッチ装置10のブロック図の一例を示す。本図において、各ブロックは、それぞれ機能的に分離された機能ブロックを示しており、実際の構成とは必ずしも一致していなくてもよい。すなわち、本図において、1つのブロックとして示されているからといって、それが必ずしも1つの回路やデバイスにより構成されていなくてもよい。また、本図において、別々のブロックとして示されているからといって、それらが必ずしも別々の回路やデバイスにより構成されていなくてもよい。
【0021】
スイッチ装置10は、スイッチング素子20と、制御端子駆動部30と、短絡判定装置100とを備える。
【0022】
スイッチング素子20は、一例として、ワイドバンドギャップ半導体素子であってよく、ワイドバンドギャップ半導体素子は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、および、ダイアモンドの少なくともいずれかを主材料として含んでよい。このようなスイッチング速度が速いデバイスは、一般に、短絡耐量が低い傾向がある。したがって、このような高速デバイスを短絡判定の対象とすることにより、短絡判定装置100は、本実施形態による効果をより高めることができる。
【0023】
スイッチング素子20は、制御端子22、第1主端子24、および、第2主端子26を有し、制御端子22に入力される電圧または電流に応じて、第1主端子24と第2主端子26との間を電気的に接続(オン)または切断(オフ)する。一例として、本実施形態において、スイッチング素子20は、制御端子22としてゲート、第1主端子24としてドレイン、第2主端子26としてソースを有するnMOSトランジスタであり、第2主端子26を基準とした制御端子22の電圧(「バイアス電圧」とも示す。)、すなわち、例えば、ゲート−ソース電圧Vgsがゲートしきい値電圧以下の場合にオフし、ゲート−ソース電圧Vgsがゲートしきい値電圧を超えるとオンする。
【0024】
以下、スイッチング素子20がnMOSトランジスタである場合を例に説明するが、各実施形態は、制御端子をゲート、2つの主端子をドレインおよびソースと呼称するMOSトランジスタ、制御端子をゲート、2つの主端子をコレクタおよびエミッタと呼称するIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、ならびに、制御端子をベース、2つの主端子をコレクタおよびエミッタと呼称するバイポーラトランジスタといった様々なタイプのスイッチング素子20に適用可能である。
【0025】
制御端子駆動部30は、スイッチング素子20の制御端子22、例えば、ゲートに接続されている。そして、制御端子駆動部30は、図示せぬ電源から電源供給を受け、外部から入力される制御信号に応じてスイッチング素子20の制御端子22を駆動する。これにより、制御端子駆動部30は、スイッチング素子20の第1主端子24および第2主端子26の間、例えば、ドレイン−ソース間のオン/オフを切り替える。
【0026】
短絡判定装置100は、スイッチング素子20の主電流の時間変化を検出し、検出された結果に基づいて、スイッチング素子20の短絡を判定する。この際、本実施形態に係る短絡判定装置100は、制御信号がオンした後における第1のタイミング以降において、主電流の時間変化が予め定められたしきい値以上となった場合に、スイッチング素子20が短絡したと判定する。
【0027】
短絡判定装置100は、センサ110と、短絡判定部120と、短絡電流遮断部160とを備える。ここで、短絡判定装置100は、1または複数の集積回路によって実現されていてもよく、複数のディスクリート部品の組み合わせによって実現されていてもよい。
【0028】
センサ110は、スイッチング素子20における第1主端子24および第2主端子26間に流れる主電流の時間変化を検出する。一例として、センサ110は、ロゴスキーコイルであってよい。一般に、ロゴスキーコイルは、一次導体周辺に空芯のコイルを設置することにより、一次導体に流れる一次電流に対応した電圧が当該コイルの両端に誘起される。この際、誘起される電圧は、一次電流の時間変化、すなわち、微分波形(di/dt)となる。このようなロゴスキーコイルは、磁気コアがなく、また、磁気損失による発熱、飽和、および、ヒステリシスがないため、好ましい。本実施形態において、センサ110は、一例として、スイッチング素子20における第2主端子26、例えば、ソースに接続された導体の周辺に設置されたロゴスキーコイルであってよい。そして、センサ110は、例えば、ロゴスキーコイルの両端に誘起された電圧、すなわち、スイッチング素子20における第1主端子24および第2主端子26間に流れる主電流の時間変化を、短絡判定部120へ出力する。
【0029】
短絡判定部120は、センサ110の出力に基づいて、スイッチング素子20の短絡を判定する。短絡判定部120は、定常動作時短絡判定部130と、ターンオン動作時短絡判定部140と、短絡信号出力部150とを有する。
【0030】
定常動作時短絡判定部130は、定常動作時に発生したスイッチング素子20の短絡を判定するブロックである。定常動作時短絡判定部130は、制御端子22を駆動するための制御信号がオンした後における第1のタイミング以降において、主電流の時間変化が第1のしきい値Th1以上となった場合に、スイッチング素子20が短絡したと判定する。より詳細には、定常動作時短絡判定部130は、タイミング検出部132と、第1の判定部134とを含む。
【0031】
タイミング検出部132は、第1のタイミングを検出する。本実施形態においては、タイミング検出部132は、主電流の時間変化が第2のしきい値Th2以下となったタイミングを、第1のタイミングとして検出してよい。一例として、タイミング検出部132は、比較器等であってよく、一方の入力端子には、センサ110の出力が接続されてよい。そして、タイミング検出部132は、一方の入力端子に入力されたセンサ110の出力、すなわち、主電流の時間変化と、他方の入力端子に入力された第2のしきい値Th2とを比較し、主電流の時間変化が第2のしきい値Th2以下となった場合に、第1のタイミングを検出して検出信号を第1の判定部134へ出力してよい。
【0032】
第1の判定部134は、タイミング検出部132が第1のタイミングを検出した場合に、主電流の時間変化が第1のしきい値Th1以上となったか否かの判定を開始する。一例として、第1の判定部134は、タイミング検出部132から検出信号が供給されると、検出信号のエッジをラッチし、センサ110の出力、すなわち、主電流の時間変化が第1のしきい値Th1以上となったか否かの判定を開始する。そして、主電流の時間変化が第1のしきい値Th1以上となったと判定された場合、第1の判定部134は、スイッチング素子20が短絡したと判定して、第1の短絡検知信号を短絡信号出力部150へ出力する。
【0033】
このように、第1の判定部134は、タイミング検出部132から検出信号が供給されたことをトリガとして、短絡判定を開始する。換言すると、第1の判定部134は、タイミング検出部132から検出信号が供給されるまでは、短絡判定を行わない。したがって、第1の判定部134は、例えば、ターンオン時にスイッチング素子20の短絡が発生し、センサ110の出力、すなわち、主電流の時間変化が第1のしきい値Th1以上となった場合であっても、第1の短絡検知信号を出力しない。これについては、波形を用いて後述する。
【0034】
ターンオン動作時短絡判定部140は、ターンオン動作時に発生したスイッチング素子20の短絡を判定するブロックである。ターンオン動作時短絡判定部140は、主電流が第3のしきい値Th3以上となった場合に、スイッチング素子20が短絡したと判定する。より詳細には、ターンオン動作時短絡判定部140は、積分器142と、第2の判定部144とを含む。
【0035】
積分器142は、センサ110と第2の判定部144との間に設けられており、センサ110の出力を積分する。すなわち、積分器142は、主電流の時間変化(di/dt)を積分する。そして、積分器142は、主電流の時間変化を積分した結果、すなわち、主電流の値を第2の判定部144へ出力する。
【0036】
第2の判定部144は、積分器142の出力に基づいて、スイッチング素子20の短絡を判定する。一例として、第2の判定部144は、積分器142の出力、すなわち、主電流の値が第3のしきい値Th3以上となったか否かを判定する。そして、積分器142の出力が第3のしきい値Th3以上となったと判定された場合、第2の判定部144は、スイッチング素子20が短絡したと判定して、第2の短絡検知信号を短絡信号出力部150へ出力する。
【0037】
ここで、上述のとおり、第1の判定部134は、タイミング検出部132から検出信号が供給されたことをトリガとして、短絡判定を開始する。これに対して、第2の判定部144は、このようなトリガを設けておらず、常時、短絡判定を行う。したがって、第2の判定部144は、ターンオン時にスイッチング素子20の短絡が発生し、積分器142の出力が第3のしきい値Th3以上となった場合に、スイッチング素子20が短絡したと判定して、第2の短絡検知信号を出力する。これについても、波形を用いて後述する。
【0038】
短絡信号出力部150は、第1の判定部134および第2の判定部144に接続され、第1の短絡検知信号および第2の短絡検知信号を入力する。短絡信号出力部150は、例えば、論理和(OR)回路であってよい。そして、短絡信号出力部150は、第1の短絡検知信号および第2の短絡検知信号の少なくともいずれか一方が入力された場合、スイッチング素子20が短絡したと判定して、短絡信号を短絡電流遮断部160へ出力する。
【0039】
短絡電流遮断部160は、一例として、短絡信号出力部150およびスイッチング素子20の制御端子22に接続されている。そして、短絡電流遮断部160は、短絡信号出力部150から短絡信号が供給された場合、すなわち、スイッチング素子20が、ターンオン時または定常動作時の少なくともいずれかにおいて短絡したと判定された場合に、サージ電圧を抑制しながら短絡電流を遮断する。一例として、短絡電流遮断部160は、制御端子が短絡信号出力部150に接続され、主端子の一端がスイッチング素子20の制御端子22に接続され、他端がスイッチング素子20の第2主端子26に接続されたトランジスタを含んでよい。そして、短絡電流遮断部160は、短絡信号出力部150から短絡信号が供給された場合に、トランジスタをオンして、スイッチング素子20の制御端子電圧、例えば、ゲート−ソース電圧Vgsを引き下げ、短絡電流を遮断してよい。この際、短絡電流遮断部160は、スイッチング素子20の制御端子電圧を緩やかに引き下げることで、短絡電流を遮断する際にスイッチング素子20に印加されるサージ電圧を軽減させて、スイッチング素子20の破壊を防止してもよい。なお、本図においては、短絡電流遮断部160を制御端子駆動部30とは別のブロックとして示したが、短絡電流遮断部160は、制御端子駆動部30の一部として構成されていてもよい。
【0040】
図2は、ターンオン時に短絡が発生した場合における各種信号波形の一例を示す。時刻t21において、制御信号がオンすると、制御端子駆動部30は、スイッチング素子20の制御端子22を駆動する。これに応じて、スイッチング素子20の制御端子電圧、例えば、ゲートーソース電圧Vgsが上昇を始める。
【0041】
時刻t22において、制御端子電圧がゲートしきい値電圧を超えると、スイッチング素子20がターンオンする。これに応じて、スイッチング素子20の主電流が増加を始める。したがって、主電流の時間変化を検出するセンサ110の出力は、時刻t22において上昇する。本図は、このターンオンと同時に、何らかの理由でスイッチング素子20が短絡した場合における各種信号波形の一例を示している。
【0042】
なお、時刻t22において、スイッチング素子20がターンオンすると、センサ110の出力が第1のしきい値Th1以上となるが、この時点においては、未だタイミング検出部132が検出信号を出力していないため、第1の判定部134が第1の短絡検知信号を出力することはない。
【0043】
ここで、スイッチング素子20が短絡していない場合においては、すなわち,正常なターンオン動作においては,図示しない対抗アーム素子のフライホイールダイオード(FWD)の逆回復動作によって,スイッチング素子20に流れる電流が減少するため、センサ110の出力が負の値をとる。しかしながら、何らかの理由でスイッチング素子20が短絡した場合、センサ110の出力は上昇したままとなり、主電流は増加し続ける。
【0044】
時刻t23において、センサ110の出力を積分した積分器142の出力、すなわち、主電流の値が第3のしきい値Th3以上となった場合、第2の判定部144は、スイッチング素子20がターンオン時に短絡したとして、第2の短絡検知信号を短絡信号出力部150へ出力する。これに応じて、短絡信号出力部150は、短絡信号を短絡電流遮断部160へ出力する。
【0045】
時刻t24において、短絡信号出力部150による短絡信号の出力から遮断動作への移行の遅れを経て、短絡電流遮断部160は、短絡電流の遮断を開始する。この際、短絡電流遮断部160は、スイッチング素子20の制御端子電圧を引き下げる。これに応じて、主電流は低下を始める。なお、この際、センサ110の出力が第2のしきい値Th2以下となるため、タイミング検出部132は、検出信号を第1の判定部134へ出力する。
【0046】
時刻t25において、制御端子電圧がゲートしきい値電圧以下となると、スイッチング素子20がオフする。これに応じて、スイッチング素子20の主電流が0となる。したがって、主電流の時間変化を検出するセンサ110の出力も、このタイミングにおいて0となる。
【0047】
このように、本実施形態に係る短絡判定装置100は、ターンオン時にスイッチング素子20が短絡した場合に、スイッチング素子20の短絡を検知し、短絡電流を遮断する。
【0048】
図3は、定常動作時に短絡が発生した場合における各種信号波形の一例を示す。時刻t31において、時刻t21と同様、制御信号がオンすると、制御端子駆動部30は、スイッチング素子20の制御端子22を駆動する。これに応じて、スイッチング素子20の制御端子電圧、例えば、ゲート−ソース電圧Vgsが上昇を始める。
【0049】
時刻t32において、時刻t22と同様、制御端子電圧がゲートしきい値電圧を超えると、スイッチング素子20がターンオンする。これに応じて、スイッチング素子20の主電流が増加を始める。したがって、主電流の時間変化を検出するセンサ110の出力は、時刻t32において上昇する。
図2においては、このターンオンと同時にスイッチング素子20が短絡した場合について説明したが、本図においては、スイッチング素子20が短絡せずに、正常にターンオンしたものとする。
【0050】
なお、時刻t32において、スイッチング素子20がターンオンすると、センサ110の出力が第1のしきい値Th1以上となるが、この時点においては、未だタイミング検出部132が検出信号を出力していないため、第1の判定部134が第1の短絡検知信号を出力することはない。
【0051】
時刻t33において、図示しない対抗アーム素子のフライホイールダイオード(FWD)の逆回復動作によって、スイッチング素子20に流れる電流が減少するためセンサ110の出力が負の値をとる。これに応じて、センサ110の出力が第2のしきい値Th2以下となるため、タイミング検出部132は、検出信号を第1の判定部134へ出力する。すなわち、タイミング検出部132は、時刻t33を第1のタイミングとして検出する。これにより、第1の判定部134は、短絡判定を開始する。なお、このように、スイッチング素子20が短絡せずに正常にターンオンした場合には、時刻t33までの間において、センサ110の出力を積分した積分器142の出力、すなわち、主電流の値が第3のしきい値Th3以上となることはない。
【0052】
時刻t34において、スイッチング素子20は、ターンオンに伴う遷移期間を経て、定常動作を開始する。
【0053】
時刻t35において、何らかの理由により、スイッチング素子20が短絡したものとする。そうすると、主電流は急激に増加する。これに応じて、主電流の時間変化を検出するセンサ110の出力は上昇する。そして、主電流の時間変化が第1のしきい値Th1以上となった場合、第1の判定部134は、スイッチング素子20が定常動作時に短絡した判定として、第1の短絡検知信号を短絡信号出力部150へ出力する。これに応じて、短絡信号出力部150は、短絡信号を短絡電流遮断部160へ出力する。
【0054】
時刻t36において、短絡信号出力部150による短絡信号の出力から遮断動作への移行の遅れを経て、短絡電流遮断部160は、短絡電流の遮断を開始する。この際、短絡電流遮断部160は、スイッチング素子20の制御端子電圧を引き下げる。これに応じて、主電流は低下を始める。
【0055】
時刻t37において、制御端子電圧がオン電圧以下となると、スイッチング素子20がオフする。これに応じて、スイッチング素子20の主電流が0となる。したがって、主電流の時間変化を検出するセンサ110の出力も、このタイミングにおいて0となる。
【0056】
このように、本実施形態に係る短絡判定装置100は、定常動作時にスイッチング素子20が短絡した場合に、スイッチング素子20の短絡を検知し、短絡電流を遮断する。この際、本実施形態に係る短絡判定装置100は、主電流の時間変化が第1のしきい値Th1以上となった場合に、スイッチング素子20が短絡したと判定する。これにより、本実施形態に係る短絡判定装置100によれば、定常動作時においてスイッチング素子20が短絡したことを比較的早い段階で判定することができる。すなわち、仮に、ターンオン動作時短絡判定部140を用いて定常動作時の短絡判定も行おうとした場合、センサ110の出力を積分した値、すなわち、主電流が第3のしきい値Th3以上となった時刻t35'において、スイッチング素子20が短絡したと判定される。これに対して、本実施形態に係る短絡判定装置100によれば、時刻t35'よりも早い時刻t35において、スイッチング素子20が短絡したと判定することができる。また、本実施形態に係る短絡判定装置100は、第1の判定部134が第1のタイミングより前においては短絡判定を行わず、第1のタイミング以降において短絡判定を行う。これにより、本実施形態に係る短絡判定装置によれば、第1の判定部134が、正常にターンオンした場合においてまでスイッチング素子20が短絡したと誤判定することを防止することができる。そして、本実施形態に係る短絡判定装置100は、
図2および
図3において説明したように、ターンオン時に発生した短絡と、定常動作時において発生した短絡とを、それぞれ異なる判定部によって判定する。これにより、本実施形態に係る短絡判定装置100によれば、いずれの場合において発生した短絡であっても、比較的早いタイミングで検知することができる。
【0057】
図4は、本実施形態の変形例に係る短絡判定装置100を備えるスイッチ装置10のブロック図の一例を示す。
図4においては、
図1と同じ機能および構成を有する部材に対して同じ符号を付すとともに、以下相違点を除き説明を省略する。上述の説明では、タイミング検出部132が、センサ110の出力、すなわち、主電流の時間変化に基づいて第1のタイミングを検出する場合を一例として示した。しかしながら、これに限定されるものではない。
【0058】
本変形例においては、タイミング検出部132は、センサ110の出力を用いることなく第1のタイミングを検出する。一例として、タイミング検出部132は、制御端子駆動部30に入力される制御信号を取得してよい。そして、タイミング検出部132は、制御信号がオンしてから予め定められた期間が満了したタイミングを、第1のタイミングとして検出する。より詳細には、タイミング検出部132は、例えば、タイマ等であってよく、制御信号がオンしたタイミングでタイマをスタートさせ、予め定められた期間が満了したタイミングを、第1のタイミングとして検出してよい。
【0059】
ここで、予め定められた期間は、例えば、スイッチング素子20が短絡せずに、正常にターンオンした場合に、制御信号がオンしてからフライホイールダイオードの逆回復が完了するまでの期間としてよい。このような期間は、例えば、実験やシミュレーションに基づいて、予め定められた期間であってよい。
【0060】
また、本変形例において、定常動作時短絡判定部130は、タイミング変更部410を更に含んでもよい。
【0061】
タイミング変更部410は、タイミング検出部132に接続されてよい。タイミング変更部410は、一例として、主電流の大きさ、スイッチング素子20の温度、および、スイッチング素子20の特性の少なくともいずれかに基づいて、予め定められた期間の長さを変更してよい。そして、タイミング変更部410は、変更した期間の長さに関する情報を、タイミング検出部132に通知してよい。これにより、タイミング検出部132は、変更された期間に基づいて第1のタイミングを検出してよい。一般に、制御信号がオンしてからフライホイールダイオードの回復が完了するまでの期間は、スイッチング素子20の使用環境や特性に依存する。したがって、タイミング変更部410が、これらのうちの少なくともいずれかに基づいて、期間を最適化することにより、本変形例に係る短絡判定装置100は、第1の判定部134が短絡判定を開始するタイミングをスイッチング素子20の使用環境や特性に合わせて最適化することができる。
【0062】
なお、検出信号は正常にスイッチング素子20がターンオフした際に次のターンオンに備えて第1の判定部134への出力をリセットする必要がある。検出信号はある一定期間出力したら自動で出力をリセットしても良いし、スイッチング素子のターンオフにより、センサ110の出力が負の値となるタイミングをトリガとして出力をリセットしても良い。また、
図4においては制御端子駆動部30に入力される制御信号を利用して検出信号の第1の判定部134への出力をリセットしても良い。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0064】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【解決手段】制御端子、第1主端子、および、第2主端子を有するスイッチング素子における、第1主端子および第2主端子間に流れる主電流の時間変化を検出するセンサと、制御端子を駆動するための制御信号がオンした後における第1のタイミング以降において、主電流の時間変化が第1のしきい値以上となった場合に、スイッチング素子が短絡したと判定する短絡判定部とを備える短絡判定装置を提供する。