(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理装置は、前記出力信号からノイズ信号を除去して前記受信波を取得し、前記ノイズ信号が除去された前記受信波から前記基準波を抽出すると共に、前記ノイズ信号が除去された前記受信波と前記基準波との相関値のデータを生成する、請求項1又は2に記載の計測方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、放射した音波(超音波)の反射波を用いて対象物99に関する計測を行う技術では、音波の発生時刻(発生タイミング)と反射波の受信時刻(受信タイミング)との時間計測が必要である。しかし、
図12に示すように、センサ95から出力される信号には、対象物99の反射波P2による信号の他に、音波の発生部94からセンサ95に直接的に到達した直接波P1による信号が含まれ、更には、これら直接波及び反射波の受信により発生する振動波による信号が含まれる。前記振動波は、センサ95の受信面が振動することにより出力されるものであり、センサ95によって様々な態様となる。また、センサ95が劣化(経年変化)することによって振動波の態様が変化することもある。
【0007】
センサ95の出力信号は、様々な波形が重なっており、また、振動波を含むことから時間経過に沿って尾を引くような信号となる。このような信号から、反射波(受信時刻)を特定するために、従来では、処理装置96の機能(例えばバンドパスフィルタ)により、不要であると推測される周波数成分を削除するフィルタ処理が多段階で実行されている。しかし、不要となる周波数成分が明らかな帯域については、フィルタ処理は有効であるが、明らかでない帯域も存在し、この場合、フィルタ処理が有効に機能せず、必要な信号まで削除されてしまう可能性があり、反射波の受信時刻(受信タイミング)を正確に特定することは困難である。この特定が不正確であると、例えば対象物の位置の計測結果の精度は低くなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、反射波の受信タイミングを精度良く特定することが可能となり、対象物に関する情報を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の計測方法は、パルスレーザを集光することで発生させたレーザ誘起ブレークダウンにより発生部から超音波を放射し、当該超音波を受けた対象物からの反射波をセンサにより受信し、当該センサからの出力信号に基づいて当該対象物に関する情報を処理装置が取得する方法であって、前記処理装置は、前記出力信号により受信波を取得し、当該受信波の初期波を基準波として抽出し、取得した受信波の時間経過に沿って当該受信波と前記基準波との相関値のデータを生成し、当該相関値の高いデータから前記反射波の受信タイミングを特定し、前記対象物に関する情報を取得する。
この計測方法によれば、センサの出力信号により取得された受信波の中から、反射波の受信タイミングが精度良く特定され、対象物に関する正確な情報を取得することが可能となる。
この計測方法によれば、例えば、前記対象物に関する情報として、当該対象物の三次元位置の情報を取得することができる。
【0010】
また、前記計測方法において、前記発生部の周囲に対象物が存在していない状態で超音波を発生させて、センサの出力信号により取得された受信波から、前記基準波を抽出してもよいが、前記基準波は、当該基準波との相関値を求める対象となる前記受信波から抽出された波形であるのが好ましい。この場合、センサの劣化等によって出力信号が変化する場合や、超音波及び反射波の伝搬物の違いによってセンサの出力信号が変化する場合であっても、対応可能となる。
【0011】
また、前記処理装置は、前記出力信号からノイズ信号を除去して前記受信波を取得し、前記ノイズ信号が除去された前記受信波から前記基準波を抽出すると共に、前記ノイズ信号が除去された前記受信波と前記基準波との相関値のデータを生成するのが好ましい。この場合、センサの出力信号から、明らかに不要な周波数成分(前記ノイズ信号)を除去することができ、より一層正確な情報を取得することが可能となる。
【0012】
また、本発明の計測システムは、パルスレーザを発生させるレーザ発生装置と、前記レーザ発生装置により発生させたパルスレーザを集光するレンズを含む光学部と、前記レンズにより集光した前記パルスレーザによりレーザ誘起ブレークダウンを発生させる発生部と、前記レーザ誘起ブレークダウンの発生により放射される超音波を受けた対象物からの反射波を受信する複数のセンサと、前記センサからの出力信号に基づいて前記対象物に関する情報を取得する処理装置と、を備え、前記処理装置は、前記出力信号により受信波を取得する取得部と、当該受信波の初期波を基準波として抽出し、取得した受信波の時間経過に沿って当該受信波と前記基準波との相関値のデータを生成すると共に、当該相関値の高いデータから前記反射波の受信タイミングを特定する第一処理部と、特定した前記受信タイミングに基づいて前記対象物に関する情報を取得する第二処理部と、を有している。
この計測システムによれば、センサの出力信号により取得された受信波の中から、反射波の受信タイミングが精度良く特定され、対象物に関する正確な情報を取得することが可能となる。
【0013】
また、前記計測方法では、超音波を用いたが、超音波以外であってもよく、その計測方法は、放射した音波を受けた対象物からの反射波をセンサにより受信し、当該センサからの出力信号に基づいて当該対象物に関する情報を処理装置が取得する方法であって、前記処理装置は、前記出力信号により受信波を取得し、当該受信波の初期波を基準波として抽出し、取得した受信波の時間経過に沿って当該受信波と前記基準波との相関値のデータを生成し、当該相関値の高いデータから前記反射波の受信タイミングを特定し、前記対象物に関する情報を取得する。
この計測方法によれば、センサの出力信号により取得された受信波の中から、反射波の受信タイミングが精度良く特定され、対象物に関する正確な情報を取得することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センサの出力信号により取得された受信波の中から、反射波の受信タイミングが精度良く特定され、対象物に関する正確な情報を取得することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の計測システムの一例を簡略化して示す構成図である。
図1に示す計測システム10は、集光させたパルスレーザによりレーザ誘起ブレークダウン(誘電破壊)を生じさせ、このレーザ誘起ブレークダウンにより発生した超音波を用いて対象物7に関する情報を取得するためのものである。本実施形態では、対象物7に関する情報として、対象物7の三次元位置の情報を取得する。なお、対象物7に関する情報としては、他の情報であってもよく、例えば対象物7の形状(画像)等であってもよい。
【0017】
図1に示す計測システム10は、パルスレーザを発生させるレーザ発生装置11と、発生させたパルスレーザを導くための光学部12と、超音波が発生する発生部14と、複数(
図1では三つ)のセンサ21,22,23と、処理装置16とを備えている。この計測システム10は、更に、取り付け部材20を備えており、この取り付け部材20に発生部14と、センサ21,22,23とが搭載されている。取り付け部材20が計測システム10のヘッドとなり、このヘッド(取り付け部材20)を様々な位置に設置することができる。
図1に示す取り付け部材20は、円盤状の部材であり、中央にパルスレーザを通過させる孔が設けられている。なお、取り付け部材20は
図1に示す形態以外であってもよい。
【0018】
発生部14内(パルスレーザが透過可能な液中、例えば水中)において、集光させたパルスレーザによりレーザ誘起ブレークダウン(誘電破壊)を生じさせ、このレーザ誘起ブレークダウンにより超音波を発生させる。
図1では、取り付け部材20が、対象物7が存在している水槽8内に投入されている場合を説明している。なお、このような、パルスレーザが透過可能な水中以外に、後述する水入りバルーン14aを有する発生部14とすれば、この発生部14を搭載する取り付け部材20が、パルスレーザが透過不可能な液中にあっても、この計測システム10を用いることができ、また、パルスレーザの集光点に物体(粒子)を存在させれば大気中であっても、この計測システム10を用いることができる。パルスレーザが透過可能な水中、大気中で用いられる場合、バルーン14aは無くてもよい。バルーン14aが無い場合、発生部14はパルスレーザの集光位置である。なお、水中や大気中等の三次元空間において対象物7(例えば、その位置)を、超音波(その反射波)を用いて検知するためには、異なる位置に設置された少なくとも三つのセンサ(21,22,23)の信号を要することは、一般的に知られている。
【0019】
取り付け部材20は、複数のセンサ21,22,23を集約して取り付けるためのフレームとして機能する。センサ21,22,23は、相互が離れて設置されている。なお、対象物7の三次元情報(三次元位置)を取得するために、本実施形態ではセンサの数を三つとしているが、四つ以上としてもよい。センサの数を増やすことで、対象物7の検知範囲を広くすることができ、また、計測精度を高めることができる。取り付け部材20には、パルスレーザを通過させる光ファイバ(図示せず)が接続されている。この光ファイバは、パルスレーザを通し、取り付け部材20まで運ぶ。
【0020】
レーザ発生装置11は、パルスレーザを発生させ出力することができ、本実施形態では、Nd:YAGレーザを出力する。レーザ波長を例えば1064ナノメートルとすることができるが、他の波長であってもよい。パルスレーザを発生させる繰り返し周波数は例えば1Hz〜20Hzである。
【0021】
光学部12は、レーザ発生装置11により発生させたパルスレーザを集光するレンズ13を含む他、減衰器46、ミラー47,48、及びビームエキスパンダ49を有している。減衰器46は、パルスレーザの出力を調整する。ビームエキスパンダ49は、パルスレーザのビーム径を拡大する。レンズ13に入射させるパルスレーザのビーム径が大きいほどレンズ焦点位置にパルスレーザの出力を集中させやすく、所望の位置でレーザ誘起ブレークダウンを発生させることができる。レンズ13は、単焦点レンズであり、球面収差が小さいものとされている。
【0022】
本実施形態の発生部14は、水入りバルーン14aを有する構成であり、パルスレーザが作用する。つまり、発生部14は、レーザ誘起ブレークダウンを発生させる水を含む構成である。水槽8に水が溜められている場合、バルーン14aは省略されていてもよい。レンズ13によりパルスレーザを集光させ、バルーン14a内において、集光させたパルスレーザによりレーザ誘起ブレークダウンを発生させる。レーザ誘起ブレークダウンの発生により、超音波(レーザパルス超音波)が発生する。超音波は球面波として放射され、周囲に伝搬する。
【0023】
レーザ発生装置11のレーザ発生のタイミングは、処理装置16によって制御されており、そのタイミングで、超音波(レーザ誘起ブレークダウン)が発生しており、超音波の発生タイミング(発生時刻)については処理装置16が取得することができる。
【0024】
センサ21,22,23それぞれは、超音波センサ(ハイドロホン)であり、レーザ誘起ブレークダウンの発生により放射された超音波を受けた対象物7からの反射波を受信する。反射波を受信することでセンサ21,22,23それぞれが出力する信号(アナログ信号)は、アンプ27によって増幅され、この信号を用いて処理装置16が各種の情報処理を実行する。本実施形態では、処理装置16は、相互に離れた三つのセンサ21,22,23からの出力信号を取得し、これら出力信号に基づいて対象物7の三次元位置の情報を取得する。処理装置16がこの情報を取得するために行う処理は、例えば開口合成法による演算である。超音波の速度は既知であることから、発生部14で発生した超音波の発生時刻(発生タイミング)と、センサ21,22,23それぞれが受信した反射波の受信時刻(受信タイミング)とによって、対象物7の位置を取得することができる。
【0025】
図2は、処理装置16の機能を説明するブロック図である。処理装置16は、取得部61と、第一処理部62と、第二処理部63とを有している。処理装置16は、更に、メモリ等により構成されている記憶部64を有している。処理装置16は、コンピュータ装置を含むことで構成されている。コンピュータ装置に記憶されているプログラムにしたがってCPUが各種処理を実行することで、前記取得部61、第一処理部62及び第二処理部63としての機能が実現される。または、これら機能部の一部は、別の機器によって構成されていてもよい。
【0026】
取得部61は、変換器(高速デジタイザ)の機能を有し、センサ21,22,23それぞれの出力信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、この出力信号により受信波を取得する(
図9のステップSt1)。
図9は、処理装置16が行う処理のフロー図である。
図9に示すステップSt1〜St5の繰り返し周期が、パルスレーザの繰り返し周波数(1Hz〜20Hz)と同じになる。取得部61は、センサ21,22,23毎に所定のサンプリング周波数で受信波を取得する。このサンプリング周波数は、20MHz〜10GHz程度とすることができる。取得した受信波のデータは、センサ21,22,23毎に対応付けられて記憶部64に記憶される。このために記憶部64は、センサ21,22,23毎の記憶領域を有している。
図3に、第一のセンサ21の受信波(検出波形)を示す。
図3に示すグラフにおいて、縦軸は信号電圧であり、横軸は時間である。
【0027】
本実施形態では、取得部61は、前記出力信号からノイズ信号を除去するために、バンドパスフィルタの機能を有している。つまり、取得部61は、前記出力信号からノイズ信号を除去し、ノイズ信号が除去された受信波を取得し、この受信波のデータを記憶部64に記憶させる。
図4に、ノイズ信号が除去された受信波を示す。
図4に示すグラフおいて、縦軸は信号電圧であり、横軸は時間である。なお、
図3と
図4では、縦軸及び横軸のスケールは異なっている。横軸の時間については、データのサンプリング数と時刻とが対応付けられることから、横軸はサンプリング数(プロット数)であってもよい。ノイズ信号が小さい場合、ノイズ除去せずに記憶部64に記憶させてもよい。
【0028】
第一処理部62は、取得部61が取得した受信波から基準波を生成する(
図9のステップSt2)。具体的には、第一処理部62は、受信波の初期波を基準波として抽出する。本実施形態では、前記のとおり出力信号からノイズ信号が除去されているため、第一処理部62は、ノイズ信号が除去された受信波から基準波を抽出する。抽出する基準波には、各センサの出力信号の立ち上がり(又は立ち下がり)の波形及びこの立ち上がり(又は立ち下がり)開始から所定時間までの波形が含まれる。
図4において、初期波の領域を二点鎖線で囲む範囲内(符号K)としている。抽出した基準波を
図5に示す。
【0029】
前記所定時間は、例えば1マイクロ秒〜2マイクロ秒程度とすることができる。本実施形態では、前記所定時間は、各センサが、発生部14から放射された超音波の直接波を受信したタイミングを含む時間(直接波を受信したタイミングを含み対象物7の反射波を受信するタイミングを含まない時間)に設定されている。このため、基準波には直接波が含まれる(反射波が含まれない)。基準波のデータは受信波毎(つまり、センサ毎)に記憶部64に記憶される。
【0030】
第一処理部62は、更に、記憶部64に記憶されている各受信波と、取得した受信波から抽出した初期波との相関値のデータを求める(
図9のステップSt3)。本施形態では、基準波を抽出した受信波と、その基準波との相関値のデータが求められる。相関値のデータは、受信波の時間経過に沿って求められ、相関値についての時系列データが生成される。
図6に、相関値の時系列データを示す。
図6において、縦軸は相関値であり、横軸は時間である。なお、
図6においても、横軸の時間については、データのサンプリング数と時刻とが対応付けられることから、横軸はサンプリング数(プロット数)であってもよい。
【0031】
このように、第一処理部62は、受信波の初期波を基準波として抽出し(更に、基準波を記憶させ)、取得した受信波の時間経過に沿ってこの受信波と基準波との相関値のデータを生成する。本実施形態の第一処理部62は、更に、生成した相関値のデータの信号を平滑化する処理を行う機能も有している。本実施形態では、第一処理部62は、平滑化する処理として畳み込み積分の演算を行う。
図7に、
図6に示すデータを平滑化した結果を示す。
【0032】
図8(A)は、取得部61が、第一のセンサ21の出力信号により受信波を取得し(
図3参照)、第一処理部62が、この受信波の初期波を基準波として抽出し(
図4及び
図5参照)、取得した受信波の時間経過に沿ってこの受信波と前記基準波との相関値のデータを生成し(
図6参照)、更に本実施形態では、この相関値のデータを平滑化する処理を行って得た、時系列データである。
【0033】
基準波には、前記のとおり、直接波と反射波とが含まれている。このため、第一処理部62は、相関値の最初のピークのタイミングを、第一のセンサ21が直接波を受信した時刻(受信タイミング)に相当すると判定し、相関値の二番目のピークのタイミングを、第一のセンサ21が反射波を受信した時刻(受信タイミング)に相当すると判定する。なお、
図8(A)では、最初に相関値のピークが現れる領域のデータ群が削除されている。この削除する処理は、第一処理部62によって実行される。このため、
図8(A)では、最初のピークのタイミングが、反射波を受信した時刻(受信タイミング)に相当する。このように、第一処理部62は、相関値の高いデータから、センサ21による反射波の受信タイミングを特定する(
図9のステップSt4)。
【0034】
以上の各処理は、処理装置16により、第二のセンサ22の出力信号についても実行され(
図8(B)参照)、第三のセンサ23の出力信号についても実行される(
図8(C)参照)。なお、
図8(A)(B)(C)に示す各センサの処理結果は、規格化の演算がされており、相関値のピークの最大値が定数(本実施形態では「1」)に揃えられている。この規格化の処理は、第一処理部62が実行してもよく、第二処理部63が実行してもよい。
【0035】
そして、第二処理部63は、
図8(A)(B)(C)に示すセンサ21,22,23それぞれから生成されたデータに基づいて、対象物7の三次元位置の情報を演算により取得する(
図9のステップSt5)。このために第二処理部63は、本実施形態の場合、開口合成法による演算を行う。超音波の速度は既知であり、また、発生部14での超音波(レーザ誘起ブレークダウン)の発生時刻は、前記のとおり処理装置16が取得している。そこで、第二処理部63は、発生部14で発生した超音波の発生時刻(発生タイミング)と、前記のとおり特定したセンサ21,22,23それぞれにおける反射波の受信時刻(受信タイミング)とによって、センサ21,22,23それぞれの位置を基準とした、対象物7の予想位置を示す三つの予想曲面(予想曲線)を求め、これら予想曲面(予想曲線)の交点を対象物7の位置と判定し、この位置を示す座標情報を取得することが可能となる。このように、処理装置16は、特定した反射波の受信タイミングに基づいて対象物7に関する情報を取得することができる。具体的な計算方法として、尤度関数を用いる方法がある。例えば空間をメッシュ状に分割し、その一つ一つの尤度を求める方法である。
【0036】
以上より、前記構成を有する計測システム(
図1参照)が行う計測方法は、パルスレーザを集光することで発生させたレーザ誘起ブレークダウンにより発生部14から超音波を放射し、この超音波を受けた対象物7からの反射波をセンサ21,22,23により受信し、これらセンサ21,22,23からの出力信号に基づいて対象物7に関する情報を処理装置16が取得する方法である。処理装置16は、センサ21,22,23からの出力信号により受信波を取得し(
図9のステップSt1)、この受信波の初期波を基準波として抽出し(
図9のステップSt2)、取得した受信波の時間経過に沿ってこの受信波と前記基準波との相関値のデータを生成し(
図9のステップSt3)、この相関値の高いデータから前記反射波の受信タイミングを特定し(
図9のステップSt4)、対象物7に関する情報を取得する(
図9のステップSt5)。
【0037】
この計測方法によれば、センサ21,22,23の出力信号により取得された受信波の中から、反射波の受信タイミングが精度良く特定され、対象物7に関する正確な情報を取得することが可能となる。また、相関値のデータを用いることにより、受信波において重なった波形を見分けることが可能となり、空間分解能が向上する。
【0038】
また、前記の処理は、刻々と実行される。例えば、前記のとおり、パルスレーザは周期的に発生されることから(例えば、繰り返し周波数1Hz〜20Hz)、この周期と同じ、又は、この周期の整数倍の周期で、ステップSt1からステップSt5の処理を繰り返して処理装置16は実行する。これにより、対象物7が移動する場合であっても、その移動位置(軌跡)の情報を取得することが可能となる。
【0039】
基準波の抽出処理(
図9のステップSt2)及び相関値のデータの生成処理(
図9のステップSt3)に関して、次の手段を採用することもできる。つまり、まず、発生部14の周囲に対象物7が存在していない状態で超音波を発生させて、センサ21,22,23の出力信号により受信波をセンサ毎に取得し、この受信波の初期波を基準波として抽出し、これをセンサ毎に記憶部64に記憶させる。そして、その後において、対象物7が存在している環境で、発生部14において発生させた超音波による反射波をセンサ21,22,23が受信し、受信波を取得すると、この受信波と、予め記憶部64に記憶させていた前記基準波との相関値のデータを生成してもよい。
【0040】
しかし、本実施形態では、基準波を、前記のように予め取得して記憶させていた(共通の)波形とするのではなく、受信波が取得されると、その受信波から基準波を抽出し、この抽出した基準波と、基準波が抽出された受信波との相関値のデータを生成している。つまり、基準波は、この基準波との相関値を求める対象となる受信波から抽出された波形である。これにより、例えばセンサ21,22,23の劣化等によって出力信号が変化する場合や、超音波及び反射波の伝搬物の違いによってセンサ21,22,23の出力信号が変化する場合であっても、対応可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、前記のとおり、処理装置16の取得部61は、センサ21,22,23の出力信号からノイズ信号を除去して受信波を取得し、第一処理部62は、このノイズ信号が除去された受信波から基準波を抽出すると共に、このノイズ信号が除去された受信波と基準波との相関値のデータを生成する。この構成により、センサ21,22,23の出力信号から、明らかに不要な周波数成分(前記ノイズ信号)を除去することができ、より一層正確な情報を取得することが可能となる。
【0042】
また、前記計測方法では、超音波を用いたが、超音波以外であってもよく、その計測方法は、
図10に示すように、発生部74から音波を放射し、この音波を受けた対象物7からの反射波をセンサ21,22,23により受信し、これらセンサ21,22,23からの出力信号に基づいて対象物7に関する情報を処理装置16が取得する方法である。
図10に示す発生部74は、音源装置とすることができる。なお、
図10に示す形態と
図1に示す形態とで同じ構成については同じ符号を付している。そして、
図10に示す形態において、処理装置16は、センサ21,22,23の出力信号により受信波を取得し(更に、これを記憶し)、この受信波の初期波を基準波として抽出し(更に、これを記憶し)、取得した受信波の時間経過に沿ってこの受信波と前記基準波との相関値のデータを生成し、相関値の高いデータ(の時刻)から反射波の受信タイミングを特定し、対象物7に関する情報を取得する。
図10に示す形態では、超音波の代わりに音波を用いる点で、
図1に示す形態と異なっているが、処理装置16が実行する処理は同じであり、ここでは説明を省略する。
【0043】
この計測方法によれば、センサ21,22,23の出力信号により取得された受信波の中から、反射波の受信タイミングが精度良く特定され、対象物7に関する正確な情報を取得することが可能となる。なお、
図1に示す形態で説明した処理装置16が行う各種処理を、
図10に示す処理装置16も行うことができる。
【0044】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の計測システム及び計測方法は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
例えば、前記実施形態では、センサの数を三つとしたが、これ以外であってもよい。つまり、センサは少なくとも三つとするのが好ましく、四つ以上とすることができる。
また、前記実施形態では、発生部14は、バルーン14aを有する場合について説明したが、バルーン14aを省略してもよい。