(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蓋部は、前記点火器の作動により燃焼された前記伝火薬の燃焼生成物の一部が、前記ハウジング内に充填された前記ガス発生剤の前記所定の燃焼開始部位とは異なる部位であって、該蓋部の裏側に位置する追加燃焼部位に到達するように設けられた貫通孔を、更に有する、
請求項1又は請求項2に記載のガス発生器。
容器本体及び該容器本体に対して形成された蓋部を有し、伝火薬を収容する収容容器であって、該収容された伝火薬は、該収容容器の外部に配置された点火器の作動により燃焼される、収容容器であって、
前記蓋部は、前記伝火薬の燃焼で生じる燃焼生成物により受ける圧力で開裂可能に構成された脆弱部と、該燃焼生成物により受ける圧力でも前記容器本体との接続状態を維持可能に構成された強接続部とを有し、
前記点火器が作動することで前記伝火薬が燃焼すると、前記脆弱部が開裂し且つ前記強接続部を介して前記容器本体に接続された状態の前記蓋部の一部又は全部が、該伝火薬の燃焼で生じる燃焼生成物の放出を、前記収容容器の外部に位置する、該伝火薬とは異なるガス発生剤の所定の燃焼開始部位に向かう方向に規定するように構成され、
前記収容容器は、前記強接続部がガス発生器の中心軸とは反対側もしくは最遠となる側に位置するように、該ガス発生器のハウジング内で位置決めされる、該ガス発生器用である、
収容容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス発生器において点火器の作動により燃焼室に充填されたガス発生剤を燃焼させる場合、ガス発生剤のむらの無い燃焼のためには、点火器を中心としてその周囲にガス発生剤を均等に配置するのが好ましい。しかし、ガス発生器の構造によっては、そのように点火器をガス発生剤に対してその均等な燃焼に適した位置に配置することが困難な場合がある。例えば、ガス発生器の形状や寸法の制限から、点火器の配置がガス発生剤に対して偏った位置にせざるを得ない場合がある。
【0006】
上記のガス発生器で採用された構成は、内筒部材に設けられた伝火孔の向きを燃焼室の周壁に沿った方向に合わせる構成であり、点火器の配置がガス発生剤の均等な燃焼に適した位置からずれている場合に、ガス発生剤の均等燃焼を実現させるにはまだ改良の余地がある。
【0007】
本発明は、上記した問題に鑑み、ガス発生器における点火器の配置にかかわらず、均等なガス発生剤の燃焼を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ガス発生器のハウジング内に配置された点火器に対して、伝火薬を収容した収容容器を位置決めするとともに、点火器の作動によって収容容器の蓋部が開裂し、そこで発生した燃焼生成物がその蓋部によって好適なガス発生剤の燃焼が行われ得る所定の方向に放出されるように、その収容容器を形成した。このような構成により、ガス発生器の構造にかかわらずガス発生剤の燃焼の好適な開始部位を規定することが可能となる。
【0009】
具体的には、本発明は、点火器と、容器本体及び該容器本体に対して形成された蓋部を有し、伝火薬を収容する収容容器であって、該収容容器の外部に配置された前記点火器の作動により該伝火薬が燃焼するように、該点火器に対して位置決めされた、収容容器と、前記点火器と前記収容容器とを収容するハウジングであって、前記収容容器の前記蓋部に隣接する該ハウジング内の所定の領域内に、前記点火器の作動により燃焼された前記伝火薬の燃焼生成物により燃焼されるガス発生剤が充填されたハウジングと、を備える、ガス発生器である。そして、前記蓋部は、前記伝火薬の燃焼で生じる燃焼生成物により受ける圧力で開裂可能に構成された脆弱部と、該燃焼生成物により受ける圧力でも前記容器本体との接続状態を維持可能に構成された強接続部とを有し、前記点火器が作動することで前記伝火薬が燃焼すると、前記脆弱部が開裂し且つ前記強接続部を介して前記容器本体に接続された状態の前記蓋部の一部又は全部が、該伝火薬の燃焼で生じる燃焼生成物の放出を、前記ハウジング内に充填された前記ガス発生剤の所定の燃焼開始部位に向かわせる方向に規定するように構成される。
【0010】
本発明のガス発生器では、ハウジング内にガス発生剤が充填されるとともに、点火器と収容容器が配置されている。点火器が作動すると収容容器内に収容されている伝火薬が燃焼されるように、ハウジング内での点火器と収容容器との位置関係が決められている。このとき、収容容器の蓋部は、ハウジングの所定領域内に充填されているガス発生剤と隣接した状態となっている。そのため、収容容器での伝火薬が燃焼すると、その燃焼生成物が収容容器の蓋部を破りそこから放出されてガス発生剤と接触することで、ガス発生剤が燃焼する。そして、そのガス発生剤の燃焼によって燃焼ガスが生成されることになる。このように、上記ガス発生器では、点火器の作動を起点として、収容容器内の伝火薬の燃焼を介して、最終的にハウジング内のガス発生剤が燃焼されることになる。ここで、伝火薬としては、ハウジング内において上記ガス発生剤とは分離して収容されている別のガス発生剤でもよく、別法として、従来の黒色火薬等の火薬であってもよい。
【0011】
ここで、収容容器の蓋部には脆弱部と強接続部が設けられている。脆弱部は、伝火薬が燃焼することで収容容器内の圧力が上昇した際に、その圧力により優先的に開裂し得る部位であり、例えば、その肉厚を蓋部の他の部位よりも薄く溝状に形成した部位とされる。一方で、強接続部はその燃焼時の圧力に晒されても容器本体との接続状態が維持される程度の強度を有している部位である。したがって、蓋部がこのような脆弱部と強接続部を有することで、伝火薬が燃焼した際には、脆弱部の開裂により蓋部が変形するとともに強接続部により蓋部は容器本体と繋がった状態を維持し、ハウジング内に飛び散ることにはならない。そのため、伝火薬の燃焼生成物が収容容器から放出される際に、容器本体に繋がった状態となった蓋部の一部又は全部が、その燃焼生成物の放出に対する抵抗部材、もしくはガイド部材となり得る。すなわち、容器本体に繋がった状態となった蓋部の一部又は全部は、収容容器から流出していく燃焼生成物の流れを規定する機能を有することになる。
【0012】
そこで、点火器の作動により伝火薬が燃焼すると、上記容器本体に繋がった状態となった蓋部の一部又は全部が、伝火薬の燃焼で生じる燃焼生成物の放出を、ハウジング内のガス発生剤の所定の燃焼開始部位に向かわせる方向に規定するように構成される。当該所定の燃焼開始部位は、ハウジングに充填されたガス発生剤を均等に燃焼させるための、当該
ガス発生剤の燃焼の起点となる部位であり、ハウジングでのガス発生剤の充填形態に応じて適宜設定すればよい。このような構成を採用することで、ハウジングでの点火器の配置にかかわらず、伝火薬の燃焼生成物を、ガス発生剤の燃焼に適した部位に向かわせることが可能となる。
【0013】
ここで、上記のガス発生器において、前記伝火薬の燃焼が進むに従い、前記蓋部の一部又は全部による、該伝火薬の燃焼生成物の放出開口は大きくなるように構成されてもよい。その場合、前記伝火薬の燃焼過程における所定の燃焼時期に、該伝火薬の燃焼生成物は、前記蓋部の一部又は全部によって前記所定の燃焼開始部位に導かれる。所定の燃焼時期は、伝火薬の燃焼過程においてガス発生剤の燃焼開始を決定づける程度に伝火薬の燃焼生成物の量が多くなる時期である。このように伝火薬の所定の燃焼時期に、その燃焼生成物がガス発生剤の所定の燃焼開始部位に導かれることで、ガス発生剤の均等燃焼が実現できるようにその燃焼を開始させることができる。
【0014】
上述までのガス発生器において、前記蓋部は、前記点火器の作動により燃焼された前記伝火薬の燃焼生成物の一部が、前記ハウジング内に充填された前記ガス発生剤の前記所定の燃焼開始部位とは異なる部位であって、該蓋部の裏側に位置する追加燃焼部位に到達するように設けられた貫通孔を、更に有してもよい。このように貫通孔を介して、伝火薬の燃焼生成物の一部を、蓋部の裏側の、追加燃焼部位に位置するガス発生剤にも届けることで、燃焼開始部位からガス発生剤の燃焼が開始されるときに蓋部の裏側にあることでその燃焼が阻害され得る位置にあるガス発生剤の一部を、好適に燃焼させることができる。その結果、ハウジング内において、ガス発生剤を好適に燃焼させ、燃焼むらを抑制することが可能となる。なお、追加燃焼部位に送られる燃焼生成物の量を、燃焼開始部位に直接送られる燃焼生成物の量よりも少なくすることで、追加燃焼部位にあるガス発生剤が、燃焼開始部位にあるガス発生剤に対して補助的に着火されるようになる。
【0015】
上述までのガス発生器において、前記点火器は、前記ハウジングの底面側に配置され、そして、前記ハウジングは、前記点火器を取り囲みその内部に該点火器を収容するように設けられ、且つ該ハウジング内に充填された前記ガス発生剤側に開口した隔壁部材を有し、前記収容容器は、前記隔壁部材の内部において該収容容器の底部側を前記点火器に隣接させ、且つ該収容容器の周壁部を該隔壁部材の内壁面に対向させて、前記蓋部が該隔壁部材の開口を介して前記ガス発生剤側に向くように配置されてもよい。このように収容容器の周壁部を隔壁部材の内壁面に対向させた状態で、収容容器の底部側が点火器に隣接するように点火器と収容容器とが位置決めされることで、点火器の作動により収容容器内の伝火薬を好適に燃焼させることができる。そして、その上で伝火薬の燃焼生成物を、隔壁部材の開口を通り上記の通り変形された蓋部によりハウジング内のガス発生剤側に導くことで、点火器の作動を起点として、ガス発生剤を、その均等な燃焼に適した所定の燃焼開始部位から燃焼させることが可能となる。
【0016】
なお、上記のガス発生器において、前記隔壁部材は、前記ハウジングの内部空間を上部空間と下部空間とに分割するように構成されてもよい。そして、前記ガス発生剤は、前記上部空間内であって、前記ハウジングの底面側に配置された前記点火器の上側の空間に充填され、前記下部空間内の前記ハウジングの底面側に、前記点火器とは異なる別の点火器が配置されるとともに、該別の点火器の作動により燃焼される、前記ガス発生剤とは異なる別のガス発生剤が該下部空間内に充填される。すなわち、当該ガス発生器は、その高さ方向に燃焼室となる空間(上部空間と下部空間)が重ねて形成されており、ガス発生器の表面積を抑えつつその出力を増大させることを可能とする構成となっている。
【0017】
このような構成のガス発生器では、ハウジングの底面側に2つの点火器が配置されているが、それぞれの点火器に対応するガス発生剤が充填された空間(上部空間と下部空間)
は、ガス発生器の高さ方向に重なって形成されているため、上部空間に充填されているガス発生剤に対して、それに対応する点火器は偏った位置に配置される場合がある。そのような構成を有するガス発生器においても、本願発明を適用することで、そのガス発生剤をより好適にむら無く燃焼させることが可能となる。
【0018】
ここで、本願発明を収容容器の側面から捉えることができる。すなわち、本願発明は、容器本体及び該容器本体に対して形成された蓋部を有し、伝火薬を収容する収容容器であって、該収容された伝火薬は、該収容容器の外部に配置された点火器の作動により燃焼される、収容容器であって、前記蓋部は、前記伝火薬の燃焼で生じる燃焼生成物により受ける圧力で開裂可能に構成された脆弱部と、該燃焼生成物により受ける圧力でも前記容器本体との接続状態を維持可能に構成された強接続部とを有し、前記点火器が作動することで前記伝火薬が燃焼すると、前記脆弱部が開裂し且つ前記強接続部を介して前記容器本体に接続された状態の前記蓋部の一部又は全部が、該伝火薬の燃焼で生じる燃焼生成物の放出を、前記収容容器の外部に位置する、該伝火薬とは異なるガス発生剤の所定の燃焼開始部位に向かう方向に規定するように構成される。このような収容容器をガス発生器に適用することで、ガス発生器における点火器の配置にかかわらず、そこに充填されたガス発生剤の均等な燃焼が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ガス発生器における点火器の配置にかかわらず、均等なガス発生剤の燃焼が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るガス発生器、及びそこに組み込まれる収容容器について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0022】
<実施例1>
図1は、ガス発生器1の高さ方向の断面図であり、
図2は、そのガス発生器1に含まれる下部シェル3の上面図である。なお、両図中のZ0は、ガス発生器1の高さ方向(軸方向)の中心軸を表している。ガス発生器1は、上部シェル2及び下部シェル3で形成されるハウジング4内に充填されたガス発生剤を燃焼させて、燃焼ガスを放出するように構成されている。上部シェル2は周壁部2cと頂面部2dを有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。頂面部2dは、後述の下部シェル3の底面部3bとともに、上面視で概ね円形状を有しており、周壁部2c及び後述の下部シェル3の周壁部3aは、それぞれ頂面部2d、底面部3bの周囲を囲み、各面部から概ね垂直に延在した環状の壁面を形成して
いる。上部シェル2の内部空間は、後述するようにガス発生剤22が充填される空間である。周壁部2cの一端側に頂面部2dが接続し、その他端側は上部シェル2の開口部となる。そして、周壁部2cの当該他端側には、当該開口部から順に、嵌合壁部2a、突き当て部2bが設けられている。嵌合壁部2aによる内部空間の半径は、頂面部2d寄りの周壁部2cによる内部空間の半径より大きく形成され、嵌合壁部2aは、突き当て部2bを介して周壁部2cへと繋がっている。
【0023】
また、下部シェル3は周壁部3aと底面部3bを有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。当該内部空間は、後述するようにガス発生剤26が充填される空間である。周壁部3aの一端側に底面部3bが接続し、その他端側は下部シェル3の開口部となる。そして、周壁部3aによる内部空間の半径は、上部シェル2の周壁部2cによる内部空間の半径と概ね同じである。
図2に示すように、下部シェル3の底面部3bには、後述するように第1点火器23と第2点火器27がそれぞれ固定される嵌合孔3c及び嵌合孔3dが設けられている。
【0024】
更に、ハウジング4内には、上部シェル2と下部シェル3との間に隔壁部材10が配置されている。隔壁部材10は、終端部15と、その終端部15から下部シェル3の周壁部3aに沿って延在する嵌合壁部14と、嵌合壁部14に繋がりハウジング4内を概ね上下の空間に分割する分割壁部13と、分割壁部13に繋がり下部シェル3の底面部3bまで延在する周壁部12と、周壁部12に繋がり第1点火器23が取り付けられる取付縁部11とを有する。
図1に示すように終端部15が下部シェル3の周壁部3aの終端面上に置かれて隔壁部材10がハウジング4に取り付けられたときに、分割壁部13は、上部シェル2の頂面部2dや下部シェル3の底面部3bに概ね平行となる壁面を形成し、周壁部12は、その分割壁部13の壁面から下部シェル3側に窪んだ空間を形成するように分割壁部13と繋がっている。また、周壁部12には貫通孔10aが設けられており、貫通孔10aは、隔壁部材10により分割されて形成される2つの空間(後述する第1の空間21と第2の空間25)を連通する。なお、この窪んだ空間は、その上方の空間側に開口し、後述するように第1点火器23が収容されるが、当該窪んだ空間を「周壁部12による収容空間」と称する。また、取付縁部11は、下部シェル3の嵌合孔3cに嵌め込まれた第1点火器23を挿通する貫通孔を形成している。なお、隔壁部材10が下部シェル3に取り付けられ状態では、取付縁部11が底面部3bの嵌合孔3c近くの底面上に接触し、更に、隔壁部材10の嵌合壁部14は、下部シェル3の周壁部3aに嵌合された状態となる。
【0025】
そして、このように下部シェル3上に隔壁部材10が取り付けられた状態で、上方より上部シェル2が更に取り付けられる。上記の通り、上部シェル2の嵌合壁部2aによる内部空間の半径は、周壁部2cによる内部空間の半径より大きく形成されているため、上部シェル2は、その突き当て部2bが隔壁部材10の終端部15に突き当たるまで、下部シェル3に対して嵌め込まれる。上部シェル2の突き当て部2bが終端部15に突き当たった状態において、嵌合壁部14は下部シェル3の周壁部3aに嵌合された状態となる。なお、ハウジング4において、上部シェル2、下部シェル3の接触部位は、内部に充填されるガス発生剤の防湿等のために好適な接合方法(例えば、溶接等)により接合される。
【0026】
このようにハウジング4においては、隔壁部材10によってその内部空間が概ね上下に2つの空間に分割されることになる。ハウジング4の内部空間のうち上部シェル2と隔壁部材10によって画定される第1の空間21(上部空間)には、第1点火器23、収容容器40、ガス発生剤22が配置され、下部シェル3と隔壁部材10によって画定される第2の空間25(下部空間)には、第2点火器27、ガス発生剤26が配置されることで、ガス発生器1は2つの第1点火器23、第2点火器27を備えるデュアルタイプのガス発生器に構成されている。なお、第1点火器23と第2点火器27はともに下部シェル3の
底面部3b上に固定されており、そのため、第1点火器23は、第1点火器23の側方が隔壁部材10の周壁部12に囲まれ、且つその頂部が周壁部12に繋がる分割壁部13から飛び出さないように、周壁部12による収容空間内に収められた状態となっている。
【0027】
ここで、第1の空間21では、周壁部12による収容空間には第1点火器23が収容されるため、その上方の空間(概ね、分割壁部13より上方の空間)にガス発生剤22が充填されることになるが、そのガス発生剤22を取り囲むように環状のフィルタ32が配置されている。このときガス発生剤22は、第1の空間21内で不要に振動しないようにクッション31の付勢力によりフィルタ32、分割壁部13等に抑えつけられた状態で充填されている。ガス発生剤22は、比較的燃焼温度の低いガス発生剤を使用している。ガス発生剤22の燃焼温度は、1000〜1700℃の範囲にあることが望ましく、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、単孔円柱状のものを用いることができる。
【0028】
なお、フィルタ32は、ステンレス鋼製平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮して形成されており、ガス発生剤22による燃焼ガスを冷却し、その燃焼残渣を捕集する。フィルタ32として、その他に針金を心棒に多層に巻いて形成された巻線タイプの構造のものを採用してもよい。なお、フィルタ32は、第2の空間25に充填されたガス発生剤26の燃焼残渣も捕集する。また、上部シェル2の周壁部2cとフィルタ32との間に形成された間隙33より、フィルタ32の周囲に半径方向断面に環状のガス通路が形成される。この間隙33により、燃焼ガスはフィルタ32の全領域を通過し、フィルタ32の有効利用と燃焼ガスの効果的な冷却・浄化が達成される。間隙33を流れる燃焼ガスは、周壁部2cに設けられたガス排出口5に至る。また、ハウジング4内に外部より湿気が侵入するのを阻止するために、ガス発生器1の作動前では、アルミニウムテープ34によりガス排出口5がハウジング4の内部から塞がれている。
【0029】
次に、第2の空間25では、下部シェル3の嵌合孔3dに固定された第2点火器27に対応して、ガス発生剤26が充填されている。このときガス発生剤26も、第2の空間25内で不要に振動しないように図示しない緩衝部材によって付勢された状態で充填されている。また、ガス発生剤26にも、ガス発生剤22と同様に、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、単孔円柱状のものを用いることができる。
【0030】
このような構成により、ガス発生器1では第1点火器23の作動によるガス発生剤22の燃焼と、第2点火器27の作動によるガス発生剤26の燃焼とによって、比較的多量の燃焼ガスを生成し、外部に放出することができる。しかし、ガス発生器1においては、ガス発生剤22は環状のフィルタ32の中央部分の空間に配置され、その充填されたガス発生剤22の群の中心は、ガス発生器1の中心軸Z0に概ね一致しているが、下部シェル3の底面部3bに第1点火器23と第2点火器27とが配置されているために、周壁部12による収容空間内に配置されている第1点火器23の高さ方向の中心軸は、ガス発生器1の中心軸Z0からずれている。そのため、ガス発生器1の第1の空間21では、充填されたガス発生剤22に対する第1点火器23の相対位置が、ガス発生剤22の群の中心から偏った位置となる。その結果、第1点火器23の作動により中心軸Z0に沿った方向に放出される燃焼生成物は、そのままでは充填されたガス発生剤22の群の略中心からずれた位置に向かって放出されることになり、ガス発生剤22の燃焼にむらが生じ、ガス発生器1の出力特性が想定通りのものからずれるおそれがある。
【0031】
そこで、ガス発生器1においては、第1の空間21において、周壁部12による収容空間に収容された第1点火器23と、充填されたガス発生剤22との間に、所定の伝火薬を収容した収容容器40が配置されている。収容容器40は、
図3に示すように、その内部
に伝火薬44を収容する収容空間を有する容器である。
図3の上段(a)は収容容器40の断面を表し、下段(b)は収容容器40の上面図である。伝火薬44としては、着火性が良く、ガス発生剤22、26より燃焼温度の高いガス発生剤を使用することができる。伝火薬44の燃焼温度は、1700〜3000℃の範囲にあることが望ましい。このような伝火薬44としては、例えばニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)からなる、ディスク状のものを用いることができる。
【0032】
収容容器40は、円形状の蓋部41、及び周壁部42を有し、その外観は略円柱形状を有しているが、その底面部43は、
図1に示すガス発生器1での配置状態において接触する第1点火器23の外形に倣った形状となっている。第1点火器23が作動すると、それにより収容容器40の底面部43が破壊され、その中の伝火薬44が燃焼されることになる。なお、
図1に示すガス発生器1での配置状態において、収容容器40の蓋部41は、分割壁部13の壁面と同程度の高さとなり、上方に位置するガス発生剤22と隣接している。また、周壁部42は、隔壁部材10の周壁部12による収容空間を形成する、その内壁面に対向した状態となる。
【0033】
このような収容容器40は、第1点火器23の作動前では、蓋部41が周壁部42に対して固着され、収容容器40内を密封している。そのため伝火薬44を外部の湿気から十分に防ぐことができる。そして、その蓋部41には、
図3(b)に示すように、蓋部41の他の部位よりも薄肉に形成されたノッチ45が設けられている。ノッチ45は、蓋部41の周縁部(蓋部41が周壁部42と接続される部位)の近くに、中心角が概ね300度程度の円弧状に形成されている。したがって、ノッチ45が延在していない蓋部41の周縁部近くの部位46は、ノッチ45が形成された部位と比べて、蓋部41の厚さが厚くなり強度が高くなる。そこで、当該部位46は本願発明の強接続部に相当し、ノッチ45は本願発明の脆弱部に相当する。
【0034】
このように蓋部41にノッチ45と部位46とによって強度が異なる部位が設けられることで、収容容器40内の伝火薬44が燃焼しその内部圧力が上昇したときには、
図4に示すように、蓋部41は、ノッチ45が形成された部位が開裂しながらも、ノッチ45に概ね囲まれた蓋部41の一部である蓋部要素47は、収容容器40の本体側(周壁部42側)と接続された状態が維持される。このように蓋部要素47が収容容器40の本体側に接続されたまま収容容器40が開口された状態を、「片開き状態」と称する。蓋部要素47が片開き状態となると、収容容器40内で伝火薬44により発生した燃焼生成物は、蓋部要素47に沿って蓋部要素47が大きく開口している側に放出されることになる。また、収容容器40内の圧力に応じて、蓋部要素47の傾き(伝火薬44の燃焼前における蓋部41の位置に対する、片開き状態における蓋部要素47の傾き)が変化する場合、その傾きに応じて収容容器40からの燃焼生成物の放出の向きも変化することになる。
【0035】
このように構成された収容容器40が、
図1に示すように、第1の空間21において第1点火器23の上に配置される。このときの収容容器40と、上部シェル2内の第1の空間21との相対位置関係を
図5に示す。
図5は、第1の空間21を上方から見た図である。このように蓋部41の部位46が、ガス発生器1の中心軸Z0とは反対側もしくは最遠となる側(
図5中の左側)に位置するように、第1点火器23上で収容容器40は位置決めされる。なお、収容容器40は上面視で概ね円形であるから、配置後に第1点火器23上で回転しないように、第1点火器23との間に回転を阻止する引掛り部位が設けられてもよい。また、別法として、隔壁部材10の周壁部12の断面を楕円形状とし、収容容器40の断面形状もそれに対応した楕円形状とすることで、上記配置後の収容容器40の位置ずれを防止することもできる。
【0036】
図5に示すように第1点火器23に対して収容容器40が位置決めされた状態で、第1
点火器23が作動すると、収容容器40内の圧力が上昇し、蓋部41のノッチ45が開裂する。その結果、
図6に示すように蓋部41の蓋部要素47が片開き状態となり、このとき蓋部要素47は、第1の空間21に充填されているガス発生剤22の群の概ね中央の部位R1(部位R1は、概ねガス発生器1の中心軸Z0上の領域であり、本願発明の所定の燃焼開始部位に相当する)に向けて大きく開口した状態となる。その結果、伝火薬44による燃焼生成物は、その片開き状態となった蓋部要素47に沿ってガス発生剤22に向かって放出されるため、ガス発生剤22を実質的に中央の部位R1から燃焼開始させることができ、以てガス発生剤22の燃焼のむらを可及的に抑制することができる。
【0037】
なお、第1点火器23の作動前は収容容器40の蓋部要素47は開口しておらず、その内部圧力の上昇に伴ってその開口面積が増加していく。特に、伝火薬44の燃焼初期では、ガス発生剤22の燃焼は進んでおらず第1の空間21に残っているガス発生剤22の量は多いため、蓋部要素47も開口しにくい。そのため、蓋部要素47が開口した直後の状態(
図6において、参照番号が47aで参照されている蓋部要素の状態)では、蓋部要素47の傾きは、比較的小さく、その開口方向も部位R1を指向した方向とはないっていない。しかし、このような状態では収容容器40から放出される燃焼生成物の量も比較的少ないため、まとまった量のガス発生剤22の燃焼開始を決定づけるものではない。その後、伝火薬44の燃焼が進むことで蓋部要素47が更に押し上げられることで、
図6において参照番号が47bで参照されている状態に蓋部要素47が至ると、まとまった量のガス発生剤22の燃焼開始を決定づけるに十分な量の燃焼生成物が、その蓋部要素47に沿って部位R1に向かって放出され、ガス発生剤22の好適な燃焼開始を実現することができる。このように、伝火薬44による燃焼生成物の量がガス発生剤22の燃焼に適した量となるタイミングにおいて、片開き状態となった蓋部要素47が部位R1を指向するように、収容容器40の蓋部41におけるノッチ45や部位46の位置、大きさ、形状等が設計される。
【0038】
なお、伝火薬44の燃焼が更に進むと、蓋部要素47の傾きは更に大きくなり、蓋部要素47が
図6において参照番号が47cで参照されている状態に至る。しかし、このときは既にガス発生剤22の燃焼もある程度進行しているため、ガス発生剤22の燃焼に及ぼす影響は十分に無視することができる。
【0039】
以上により、本実施例に係るガス発生器1では、第1点火器23が作動すると、先ずは収容容器40内の伝火薬44が燃焼される。その燃焼で生じた燃焼生成物により収容容器40の蓋部41の一部である蓋部要素47が片開き状態となり、その蓋部要素47によって燃焼生成物を、第1の空間21に充填されているガス発生剤22の部位R1に好適に放出でき、ガス発生剤22の均等な燃焼を実現することができる。ガス発生剤22の燃焼で生じた燃焼ガスは、ガス排出口5からハウジング4の外部に放出される。更に、第1点火器23の作動後において、第2点火器27が作動すると、第2の空間25に充填されているガス発生剤26が燃焼される。その燃焼で生じた燃焼ガスは、貫通孔10aを経て収容容器40の周壁部42を開裂させて第1の空間21に流れ込み、更にガス排出口5からハウジング4の外部に放出される。ガス発生器1の出力特性に応じて、第1点火器23と第2点火器27の作動タイミングは適宜決定すればよい。
【0040】
<変形例1>
ガス発生器1に適用可能な収容容器40の第1の変形例について、
図7に基づいて説明する。
図7は、その左側に第1点火器23の作動前における収容容器40が示され、その右側には第1点火器23が作動した後の収容容器40が示されている。
図7に示す収容容器40は、蓋部41の構成が上記実施例の収容容器40と異なっている。具体的には、蓋部41に段差48が設けられており、その上側が上側蓋部41aとされ、その下側が下側蓋部41bとされる。そして、ノッチ45は、その下側蓋部41bの側に概ね半円状に設
けられている。ノッチ45の両端が段差48近くまで延在することで、ノッチ45が形成されている部位より高強度に形成された部位46は、段差48近くの部位とされ、本願発明の強接続部に相当する。なお、
図7には示されていないが、収容容器40の底面部は、上記実施例と同じように、下方に位置する第1点火器23の形状に倣った形状となっている。
【0041】
このように構成される収容容器40では、第1点火器23が作動すると、収容容器40内の伝火薬が燃焼され、下側蓋部41bの一部である蓋部要素47が片開き状態となることで、その蓋部要素47に沿って伝火薬による燃焼生成物を放出させることが可能となる。なお、本変形例の蓋部要素47はある程度傾いていくと、蓋部要素47が段差48と接触し、その傾きが構造的に制限された状態に至る(
図7の右側に示す状態)。このときの片開き状態の蓋部要素47により燃焼生成物が指向される方向が、
図6に示す部位R1に向かう方向となれば、燃焼生成物をより好適に部位R1に導くことが可能となり、より効果的にガス発生剤22を均等に燃焼させることができる。
【0042】
また、
図7には示していないが、蓋部要素47の上に、片開き状態で段差48に接触する突起を設ける構成を採用してもよい。当該突起の大きさを調整することで、蓋部要素47が段差48に接触したときの蓋部要素47の傾きを調整できる。これにより、ガス発生剤22の燃焼に好適な部位R1に、伝火薬による燃焼生成物が効果的に到達するように、収容容器40を形成しやすくなる。
【0043】
<変形例2>
ガス発生器1に適用可能な収容容器40の第2の変形例について、
図8に基づいて説明する。
図8は、その左側に第1点火器23の作動前における収容容器40が示され、その右側には第1点火器23が作動した後の収容容器40が示されている。
図8に示す収容容器40は、蓋部41の構成が上記実施例の収容容器40と異なっている。具体的には、蓋部41の蓋部要素47となる部位に蓋部41の厚みを厚くしたり、蓋部41の一部を凸状に変形させることで形成されたリブ47dが設けられている。本変形例におけるノッチ45も概ね半円状に設けられており、リブ47dは、ノッチ45の両端の略中間点からノッチ45の中央部分に向かって延在した形状となっている。したがって、リブ47dの延在方向に沿った軸X0から見たときに、
図8の左側の下図に示すように、蓋部要素47は盛り上がった状態となり、リブ47dの一方の端部は、ノッチ45が形成されている部位より高強度に形成された部位46近くに位置している。なお、
図8には示されていないが、収容容器40の底面部は、上記実施例と同じように、下方に位置する第1点火器23の形状に倣った形状となっている。
【0044】
このように構成される収容容器40では、第1点火器23が作動すると、収容容器40内の伝火薬が燃焼され、蓋部41の一部である蓋部要素47が片開き状態となることで、その蓋部要素47に沿って伝火薬による燃焼生成物を放出させることが可能となる。なお、本変形例の場合、蓋部要素47上に軸X0に沿ってリブ47dが設けられているため、蓋部要素47の剛性が高くなり片開き状態となったときの蓋部要素47の傾きを安定的に比較的小さく調整することができる。そこで、そのような蓋部要素47の傾きで伝火薬による燃焼生成物を、ガス発生剤22における部位R1に方向づけることが可能であれば、本変形例による収容容器40は、極めて有用な形態と考えられる。
【0045】
<変形例3>
ガス発生器1に適用可能な収容容器40の第3の変形例について、
図9に基づいて説明する。
図9に示す収容容器40は、第1点火器23の作動によってその内部の伝火薬が燃焼することで、
図9の上段(a)に示すように、蓋部要素47が両開き状態となることで、伝火薬による燃焼生成物の放出を方向づけるように構成されている。このとき蓋部要素
47は、一方の蓋部要素である第1蓋部要素47eと他方の蓋部要素である第2蓋部要素47fとなって、両蓋部要素による両開き状態が形成される。すなわち、両開き状態とは、それぞれの蓋部要素が互いに向かい合うように片開き状態となることで形成されるものである。
【0046】
このように蓋部要素47が両開き状態になる場合でも、それぞれの蓋部要素47e、47fによって燃焼生成物の流れが規定されるため、結果的に、収容容器40から放出される方向が何れかの方向に決定されることになる。好適には、一方の蓋部要素(第1蓋部要素47e)を他方の蓋部要素(第2蓋部要素47f)より大きく形成し、その大きさの比率を調整することで、収容容器40からの燃焼生成物の放出方向を調整することができる。
【0047】
このような蓋部要素47の両開き状態を実現するための、収容容器40の蓋部41の形態を、
図9の中段(b)、下段(c)に示す。
図9(b)の例では、第1蓋部要素47eを画定する円弧状のノッチ45aと、第2蓋部要素47fを画定する円弧状のノッチ45bを蓋部41上に設ける。第1蓋部要素47eに対応する強接続部が46aで示され、第2蓋部要素47fに対応する強接続部が46bで示されている。ノッチ45aとノッチ45bは、概ね両者の中央部分で互いに接するように、且つ、第1蓋部要素47eの面積が第2蓋部要素47fの面積より大きくなるように蓋部41上に設けられている。
【0048】
また別法の形態を示す
図9(c)の例では、第1蓋部要素47eと第2蓋部要素47fを画定する、3本のノッチ45a、45b、45cを蓋部41上に設ける。これらの3本のノッチによって、図に示すようにH形状のノッチ45が形成される。ノッチ45bとノッチ45cに挟まれた領域が蓋部要素47となり、その領域がノッチ45aによって、第1蓋部要素47eの面積が第2蓋部要素47fの面積より大きくなるように第1蓋部要素47eと第2蓋部要素47fが画定される。そして、第1蓋部要素47eに対応する強接続部が46aで示され、第2蓋部要素47fに対応する強接続部が46bで示されている。
【0049】
<変形例4>
ガス発生器1に適用可能な収容容器40の第4の変形例について、
図10に基づいて説明する。本変形例のガス発生器1は、収容容器40の蓋部要素47に貫通孔47Hが設けられている点で、上記の実施例と異なる。第1点火器23の作動で収容容器40内の伝火薬44が燃焼し蓋部要素47が片開き状態となることで、上記実施例で示したように、伝火薬44による燃焼生成物を、ガス発生剤22の部位R1に方向づけることが可能となる。このとき、蓋部要素47に沿って流れる燃焼生成物の一部は、貫通孔47Hを通って蓋部要素47の直裏側に位置するガス発生剤22の一部を燃焼させる。蓋部要素47が片開き状態となったときに、蓋部要素47の直裏側に位置するガス発生剤は、部位R1から開始されたガス発生剤の燃焼の進行に関し蓋部要素47の裏側に位置することになるため、その均等な燃焼が阻害される可能性がある。そこで、本変形例のように伝火薬44による燃焼生成物の一部を、貫通孔47Hを介して蓋部要素47の直裏側に運ぶことで、第1の空間21に充填されたガス発生剤22をより好適に均等に燃焼させることが可能となる。なお、蓋部要素47の直裏側の位置が、本願発明の追加燃焼部位に相当する。
【0050】
<実施例2>
第2の実施例のガス発生器1について、
図11に基づいて説明する。
図11は、本実施例のガス発生器100の高さ方向の断面図である。なお、
図11中のZ0は、ガス発生器100の高さ方向(軸方向)の中心軸を表している。ガス発生器100は、上部シェル102及び下部シェル103で形成されるハウジング104内に充填されたガス発生剤を燃焼させて、燃焼ガスを上部シェル102設けられたガス排出口105から外部に放出する
ように構成されている。上部シェル102は周壁部102cと頂面部102dを有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。また、下部シェル103は周壁部103aと底面部103bを有し、これらにより凹状の内部空間を形成する。頂面部102dは、後述の下部シェル103の底面部103bとともに、上面視で概ね円形状を有しており、周壁部102c及び後述の下部シェル103の周壁部103aは、それぞれ頂面部102d、底面部103bの周囲を囲み、各面部から概ね垂直に延在した環状の壁面を形成している。周壁部102cの一端側に頂面部102dが接続し、その他端側は上部シェル102の開口部となる。周壁部103aの一端側に底面部103bが接続し、その他端側は下部シェル103の開口部となる。
【0051】
そして、ハウジング104の内部空間121には、ガス発生剤122が充填されるとともに、その燃焼のための点火器123が底面部103bに配置されている。更に、内部空間121には、ガス発生剤122を取り囲むように環状のフィルタ132が配置されている。フィルタ132は、ステンレス鋼製平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮して形成されており、ガス発生剤122による燃焼ガスを冷却し、その燃焼残渣を捕集する。このときガス発生剤122は、内部空間121内で不要に振動しないようにクッション131の付勢力によりフィルタ132、底面部103b等に抑えつけられた状態で充填されている。ガス発生剤122としては、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、単孔円柱状のものを用いることができる。
【0052】
また、上部シェル102の周壁部102cとフィルタ132との間に形成された間隙133より、フィルタ132の周囲に半径方向断面に環状のガス通路が形成される。また、ガス発生器100の作動前では、アルミニウムテープ134によりガス排出口105がハウジング104の内部から塞がれ、ハウジング104内への湿気の侵入が阻止される。
【0053】
このようにガス発生器は1台の点火器を有するシングルタイプのガス発生器であり、ガス発生器100では点火器123の作動によるガス発生剤122の燃焼によって燃焼ガスを生成し、外部に放出することができる。しかし、ガス発生器100においては、ガス発生剤122は環状のフィルタ132の中央部分の空間に配置され、その充填されたガス発生剤122の群の中心は、ガス発生器100の中心軸Z0に概ね一致しているが、点火器123は、所定の理由により下部シェル3の底面部3bにおいてガス発生器1の中心軸Z0からずれた位置に設けられている。そのため、ガス発生器100の内部空間121では、充填されたガス発生剤122に対する点火器123の相対位置が、ガス発生剤122の群の中心から偏った位置となる。その結果、第1点火器23の作動により放出される燃焼生成物は、充填されたガス発生剤122の群の略中心からずれた位置で、中心軸Z0に沿った方向に放出されることになり、ガス発生剤122の燃焼にむらが生じ、ガス発生器100の出力特性が想定通りのものからずれるおそれがある。
【0054】
そこで、ガス発生器100においても、内部空間121において、点火器123と、充填されたガス発生剤122との間に、所定の伝火薬を収容した収容容器140が配置されている。収容容器140は、その内部に伝火薬を収容する容器であり第1の実施例で示した収容容器40と実質的に同じであるから詳細な説明は省略する。収容容器140内の伝火薬を点火器123の作動により燃焼させるために、収容容器140は点火器123上に配置される。このとき、収容容器140の蓋部141を効率よく開裂させるために、点火器123の側部を囲むように内部空間121側に開口する筒状の隔壁部材110が底面部103bに設けられる。更に、隔壁部材110の内部には収容容器140も収容され、収容容器140の蓋部141が、概ね、隔壁部材110の端部と同じ高さに位置するように隔壁部材110の高さが設定されている。これにより蓋部141はガス発生剤122に隣接した状態に置かれる。
【0055】
このように隔壁部材110の内部に点火器123と収容容器140を重ねて配置し、
図6に示すように点火器123の作動で収容容器の蓋部141の一部が片開き状態となり、ガス発生剤122の略中央の部位(
図6の部位R1に相当する部位)に向けて伝火薬による燃焼生成物の放出が方向づけられるようにガス発生器100が構成される。これにより、シングルタイプのガス発生器100において、点火器123の位置がガス発生剤122の中心から偏って配置されている場合でも、ガス発生剤122の均等な燃焼を実現することができる。