(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
同一の受電設備から供給される商用交流電源を降圧した2以上の電源信号と、2以上の発振器の発振信号を前記商用交流電源と同じ周波数になるように分周した2以上のクロック信号と、の時間差をそれぞれ取得する時間差取得ステップと、
互いに異なる前記発振器について取得した前記時間差を比較して、各々の前記発振信号を用いて計測するローカル時刻の時刻差を算出する時刻差算出ステップと、
前記時刻差算出ステップで算出した前記時刻差に基づいて前記ローカル時刻を補正する時刻補正ステップと、
を有する時刻補正方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
センサはその用途によって、様々な場所に設置される。例えば、地震観測や地震後の建築物の健全性の解析をするためにセンサを室内や地下に設置する場合があるが、そのような場合にはGPS信号を受信することができない。このため、特許文献1のように、GPS信号に基づく基準タイミング信号を取得することができず、時刻の自動補正ができなかった。
【0008】
また、地震観測や地震時の建築物の振動解析等を目的とするセンサのデータ取得周期は、10msec程度である。これに対し、特許文献2の時刻修正方法は、1日1回の時刻修正を前提としており、日間誤差が0.3s程度であるため、センサネットワークによる振動解析等を目的として時刻取得をするシステムに適用することはできなかった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、外部から時刻情報を取得することなく、高精度に時刻を補正することが可能な時刻補正装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る時刻補正装置は、
受電設備から供給される商用交流電源を降圧した第1電源信号と、第1発振器の発振信号を前記商用交流電源と同じ周波数になるように分周した第1クロック信号と、の時間差である第1時間差に基づいて、前記発振信号を用いて計測するローカル時刻を補正する時刻補正装置であって、
前記受電設備と同一の受電設備から供給される商用交流電源を降圧した
第2電源信号と、
前記第1発振器と異なる第2発振器の発振信号を前記商用交流電源と同じ周波数になるように分周した
第2クロック信号と、の
時間差である第2時間差
を取得する時間差取得部と、
前記第1時間差と前記第2時間差
とを比較して、
前記ローカル時刻の時刻差を算出する時刻差算出部と、
前記時刻差算出部が算出した前記時刻差に基づいて前記ローカル時刻を補正する時刻補正部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
前記第1時間差と前記
第2時間差
との周期変動を示す時間差波形を取得する時間差波形取得部を、更に備え、
前記時刻差算出部は、
前記第1時間差と、前記
第2時間差と、前記時間差波形取得部が取得した前記時間差波形のずれと、に基づいて、前記ローカル時刻の前記時刻差を算出してもよい。
【0012】
外部から時刻情報を受信する時刻情報受信部を更に備え、
前記時刻補正部は、前記時刻情報受信部で受信した時刻情報を基準に、前記時刻差算出部が算出した時刻差を加算又は減算して前記ローカル時刻を補正してもよい。
【0013】
前記
第1発振
器は、前記商用交流電源で駆動するセンサ装置内に備えられ、
前記ローカル時刻は、前記センサ装置のセンサ検出時刻であってもよい。
【0014】
また、本発明の第2の観点に係るセンサ装置は、
商用交流電源と、
発振器と、
前記商用交流電源を降圧した第1電源信号と、前記発振器の発振信号を前記商用交流電源と同じ周波数になるように分周した第1クロック信号と、の時間差を示す第1時間差データ、及び、内部又は外部に有するセンサが出力するセンサ検出データを互いにタイミングを対応付けて送信する送信部と、
を備えるセンサ装置であって、
前記センサ装置から前記第1時間差データ及び前記センサ検出データを受信する時刻補正装置が、前記センサ装置の商用交流電源と同一の受電設備から供給される他の商用交流電源を降圧した第2電源信号と、他の発振器の発振信号を前記分周した第2クロック信号と、の時間差を示す第2時間差データ、及び、前記センサ装置から受信した前記第1時間差データに基づいて前記センサ装置に備える前記発振器の発振信号に基づくローカル時刻を補正することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第3の観点に係るセンサシステムは、
同一の受電設備から供給される商用交流電源で駆動するセンサ装置と、前記センサ装置のセンサ検出時刻を補正する時刻補正装置と、からなるセンサシステムであって、
前記センサ装置は、
前記センサ装置に供給される前記商用交流電源を降圧した第1電源信号と、前記センサ装置に備える発振器の発振信号を前記商用交流電源と同じ周波数になるように分周した第1クロック信号と、の時間差を示す第1時間差データ、及び、センサ検出データを互いにタイミングを対応付けて送信し、
前記時刻補正装置は、
前記時刻補正装置に供給される前記商用交流電源を降圧した第2電源信号と、前記時刻補正装置に備える発振器の発振信号を前記分周した第2クロック信号と、の時間差を示す第2時間差データ、及び、前記センサ装置から受信した前記第1時間差データを取得する時間差取得部と、
前記第1時間差データと第2時間差データを比較して、前記センサ装置に備える前記発振器の発振信号に基づくローカル時刻と前記時刻補正装置に備える前記発振器の発振信号に基づく基準時刻との時刻差を算出する時刻差算出部と、
前記時刻差算出部が算出した前記時刻差に基づいて前記ローカル時刻を補正する時刻補正部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第4の観点に係る時刻補正方法は、
同一の受電設備から供給される商用交流電源を降圧した2以上の電源信号と、2以上の発振器の発振信号を前記商用交流電源と同じ周波数になるように分周した2以上のクロック信号と、の時間差をそれぞれ取得する時間差取得ステップと、
互いに異なる前記発振器について取得した前記時間差を比較して、各々の前記発振信号を用いて計測するローカル時刻の時刻差を算出する時刻差算出ステップと、
前記時刻差算出ステップで算出した前記時刻差に基づいて前記ローカル時刻を補正する時刻補正ステップと、を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第5の観点に係るプログラムは、
コンピュータを
同一の受電設備から供給される商用交流電源を降圧した2以上の電源信号と、2以上の発振器の発振信号を前記商用交流電源と同じ周波数になるように分周した2以上のクロック信号と、の時間差をそれぞれ取得する時間差取得部、
互いに異なる前記発振器について取得した前記時間差を比較して、各々の前記発振信号を用いて計測するローカル時刻の時刻差を算出する時刻差算出部、
前記時刻差算出部が算出した前記時刻差に基づいて前記ローカル時刻を補正する時刻補正部、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外部から時刻情報を取得することなく、高精度に時刻を補正することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
センサシステム1は、任意の場所に位置する1以上のセンサ装置10と、センサ装置10におけるローカル時刻を補正する時刻補正装置30と、から構成される。
図1は、本実施形態に係るセンサシステム1の構成を示すブロック図である。本実施形態では、地震観測や地震後の建築物の健全性の解析等を目的として複数のセンサ装置10が加速度データ等を取得するセンサシステム1について説明する。
【0022】
図1に示すように、各センサ装置10と時刻補正装置30は、同一の受電設備50からケーブル51を介して商用交流電源が供給される装置であり、例えば、同じ建物内に設置される。各センサ装置10は、センサによる物理量の検出を要する箇所に備えられ、プラグ11をコンセント52に差し込むことで商用交流電源に接続する。ここでは、商用交流電源の周波数が50Hzの場合について説明する。
【0023】
時刻補正装置30は、外部から時刻情報を取得できる位置に設置され、プラグ31をコンセント52に差し込むことで商用交流電源に接続する。例えば、時刻補正装置30は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を構成する衛星60から送信される電波信号をアンテナ36で受信して時刻情報を取得する。
【0024】
センサ装置10は、任意の物理量を検出するセンサを内部又は外部に備え、センサが検出した物理量を出力する装置であるが、本実施形態では、所定の方向における加速度を検出する加速度センサ16を内部に備えた場合について説明する。
【0025】
図2は、センサ装置10の機能構成を示す機能ブロック図である。センサ装置10は、
図2に示すように、水晶発振器12と、水晶発振器12の発振信号を分周する分周器13と、分周器13の出力の正弦波信号と商用交流(Alternating Current:AC)電源の正弦波信号の時間差を計測する時間間隔計14を備える。センサ装置10は更に、分周器13の出力に基づいて時刻を計測する時計15と、加速度センサ16と、分周器13の出力をサンプリング信号として用いて加速度センサ16の出力をAD(Analog-Digital)変換するADコンバータ(ADC)17と、通信部18と、記憶部19と、制御部20とを備える。センサ装置10は更に、加速度以外の物理量を計測する他のセンサを外部接続する接続端子21を備えてもよい。
【0026】
水晶発振器12は、特定の周波数の正弦波信号を出力するものであり、例えば、100kHzの発振周波数を有する。分周器13は、水晶発振器12の発振信号を商用交流電源の電源周波数と同じ周波数になるように分周するものであり、例えば、100kHzの正弦波信号を2000分周して50Hzの正弦波信号であるクロック信号を生成して出力する。
【0027】
時間間隔計14は、分周器13が出力するクロック信号と、商用交流(AC)電源を降圧した電源信号と、の時間差を計測する。具体的には、クロック信号と電源信号は略同じ周波数の正弦波であるため、それぞれの正弦波の、互いに同じ特定の位相の時間差(以下、「同位相の時間差」と呼ぶ)を計測する。例えば、クロック信号と電源信号との、位相0°に相当する電圧0Vの時間差を計測する。
【0028】
時計15は、分周器13が出力するクロック信号に基づいて、時刻を計測するが、経時変化や温度に依存する変化により時刻にずれが生じるため、数日おきなど定期的に時刻修正する。加速度センサ16は、所定の方向における加速度を検出し、検出信号を出力する。
【0029】
ADコンバータ17は、分周器13の出力をサンプリング信号として用いて加速度センサ16の出力であるアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。ここでは、分周器13出力のサンプリング周波数50Hzでデジタル信号を生成する。なお、接続端子21に他のセンサを接続する場合は、ADコンバータ17が当該センサの出力であるアナログ信号もデジタル信号に変換して出力する。
【0030】
通信部18は任意の通信方式によって、データを送受信する。通信部18は時刻補正装置30からデータ取得を指示する指示信号を受信して制御部20に出力し、制御部20から入力されたデータを送信する。
【0031】
記憶部19は、例えばフラッシュメモリのような不揮発性メモリから構成される。記憶部19の一部の記憶領域は各種計測データを上書き保存するバッファとして用いられる。また、記憶部19のその他の記憶領域は制御部20が実行する各種プログラムを記憶する。
【0032】
記憶部19のバッファは、例えば、スカラー値(実数)を所定の個数分だけ格納する1次元バッファであり、取得データを順次格納する。所定の個数分を超えて入力された場合は、既に格納されているデータのうち、最も古いデータから順に上書き保存される仕組みを備えている。
【0033】
制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央演算装置)、ROM(Read Only Memory:読み出し専用メモリ)、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)等から構成される。制御部20は、記憶部19に記憶されているプログラムを実行することにより、
図2に示すように、時間差取得部201、時刻取得部202、センサ検出値取得部203、データ出力部204の各機能部として機能する。なお、制御部20の各機能部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用回路で構成してもよい。
【0034】
時間差取得部201は、時間間隔計14が出力する、分周器13出力のクロック信号と商用交流(AC)電源を降圧した電源信号との同位相の時間差のデータを取得する。時刻取得部202は、時計15が計測する時刻データを取得する。センサ検出値取得部203は、加速度センサ16を含む各センサが検出する検出信号をAD変換したセンサ検出データを取得する。
【0035】
通信部18がデータ取得指示を受信すると、時間差取得部201、時刻取得部202、センサ検出値取得部203はデータ取得を開始する。データ出力部204は各取得部が出力するデータを、取得したタイミングを互いに対応付けて記憶部19のバッファに格納する。データ出力部204は、バッファに記憶している各種信号を、通信部18に出力し、通信部18が送信する。
【0036】
図3は、時刻補正装置30の機能構成を示す機能ブロック図である。時刻補正装置30は、
図3に示すように、水晶発振器32と、水晶発振器32の発振信号を分周する分周器33と、分周器33の出力の正弦波信号と商用交流(AC)電源の正弦波信号との同位相の時間差を計測する時間間隔計34を備える。時刻補正装置30は更に、分周器33の出力に基づいて時刻を計測する時計35と、アンテナ36からGPS信号を受信するGPS受信部37と、通信部38と、記憶部39と、制御部40と、を備える。
【0037】
水晶発振器32、分周器33、時間間隔計34、時計35は、それぞれ、センサ装置10に備える水晶発振器12、分周器13、時間間隔計14、時計15と同様の構成を有する。
【0038】
GPS受信部37は衛星60から受信するGPS信号に含まれる時刻情報を取得し、制御部40に出力する。
【0039】
通信部38は任意の通信方式によって、データを送受信する。通信部38は各センサ装置10に対してデータ取得の指示を送信し、また、各センサ装置10から送信された加速度データを含む各種データを受信して制御部40に出力する。
【0040】
記憶部39は、例えばフラッシュメモリのような不揮発性メモリから構成される。記憶部39は、制御部40の処理により得られたセンサ検出データ及びセンサ検出した時刻のデータ等の各種データを記憶する。記憶部39は、制御部40が実行する各種プログラムを記憶する。
【0041】
制御部40は、例えば、CPU、ROM、RAM等から構成される。制御部40は、記憶部39に記憶されているプログラムを実行することにより、
図3に示すように、時間差取得部401、時刻取得部402、センサデータ取得部403、時刻差算出部404、時刻補正部405の各機能部として機能する。なお、制御部40の各機能部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用回路で構成してもよい。
【0042】
時間差取得部401はセンサ装置10の時間差取得部201と同様に、時間間隔計34が出力する、分周器33が出力するクロック信号と商用交流(AC)電源を降圧した電源信号との同位相の時間差のデータを取得する。
【0043】
時刻取得部402は時計35が計測する時刻データを取得するとともに、GPS受信部37が受信するGPS信号に含まれる時刻情報に基づいて、時計35が計測する時刻データを補正して基準時刻を出力する。センサデータ取得部403は各センサ装置10から受信した時間差のデータ、時刻データ、センサ検出データを取得する。
【0044】
時刻差算出部404は、時間差取得部401が取得した時間差のデータと、センサデータ取得部403が取得した時間差のデータを比較することにより、各水晶発振器12、32に基づく時刻の時刻差を算出する。
【0045】
時刻補正部405は、センサデータ取得部403が取得したセンサの検出時刻、つまりセンサ装置10におけるローカル時刻を、時刻差算出部404及び時刻取得部402から入力される情報に基づいて、時刻補正を行う。
【0046】
時刻補正方法について
図4を用いて説明する。
図4は、電源信号とクロック信号の同位相の時間差を示した図である。
【0047】
図4において、センサ装置10の分周器13が出力するクロック信号の波形をクロック1として表し、センサ装置10の商用交流電源を降圧した電源信号の波形を電源1として表す。また、時刻補正装置30の分周器33が出力するクロック信号の波形をクロック2として表し、時刻補正装置30の商用交流電源を降圧した電源信号の波形を電源2として表す。
【0048】
電源1と電源2は、商用交流電源が同じ受電設備50から供給されていることから、ほぼ同じ波形である。ここで、センサ装置10と時刻補正装置30は数100m以内に配置されていることを想定しているため、ケーブル51の伝送距離による時刻の遅れは数μsec以下であり、無視できると考える。
【0049】
これに対し、クロック1とクロック2はそれぞれ互いに異なる水晶発振器12,32から出力され分周されたものであるから、位相にずれがある。センサ装置10が出力する時刻データは水晶発振器12に基づくものであり、時刻補正装置30が出力する時刻データは水晶発振器32に基づくものであるから、水晶発振器12、32の位相のずれがそれぞれの時刻データの時刻差になる。
【0050】
時間差取得部201、401は、それぞれクロック1と電源1の同位相の時間差Δt1と、クロック2と電源2の同位相の時間差Δt2と、を取得する。時間差Δt1は、クロック1と電源1の同位相の時間差を時間間隔計14が計測することにより得られる。時間差Δt2も同様に、クロック2と電源2の同位相の時間差を時間間隔計34が計測することにより得られる。
【0051】
時刻差算出部404は、時間差Δt1と時間差Δt2の差を計算し、その差を時刻差として出力する。
【0052】
時刻補正部405は、センサ検出信号に対応づけられたセンサ検出時刻を、時刻取得部402が取得した基準時刻に時刻差算出部404が算出した時刻差を加算又は減算した時刻に補正する。
【0053】
以上のように構成されたセンサシステム1の動作について、
図5に示すフローチャートに沿って説明する。
図5は時刻補正装置30が実行する時刻補正処理のフローチャートである。
【0054】
時刻補正装置30のセンサデータ取得部403は通信部38を介して各センサ装置10に対してセンサデータの取得を開始する指示を送信する(ステップS101)。センサ装置10の制御部20は時刻補正装置30からの指示信号を受信すると、受信から所定のタイミングで時間差取得部201が、分周器13の出力と商用交流電源との正弦波信号の同位相の時間差Δt1を時間間隔計14から取得する。そして、同じタイミングで時刻取得部202が時計15から出力される時刻データを取得し、センサ検出値取得部203が加速度センサ16を含む各センサが検出するセンサ検出データを取得する。
【0055】
次に、時刻補正装置30の制御部40の時間差取得部401が、分周器33の出力と商用交流電源との正弦波信号の同位相の時間差Δt2を時間間隔計34から取得する(ステップS102)。この時間差データの取得のタイミングは、ステップS101でセンサ装置10に対する指示信号送信のタイミングに基づいて、センサ装置10での時間差データ、時刻データ、センサ検出データの取得のタイミングに合わせるように予めタイミングを調整する。
【0056】
また、時間差データΔt2を取得開始後の所定のタイミングで時刻取得部402は、時計35が計測する時刻データを取得するとともに、GPS受信部37が受信するGPS信号に含まれる時刻情報に基づいて、時計35が計測する時刻データを補正した基準時刻を取得する(ステップS103)。
【0057】
所定時間経過後に、センサデータ取得部403が、各センサ装置10から、時間差データΔt1、時刻データ、センサ検出データからなるセンサデータを、通信部38を介して取得する(ステップS104)。
【0058】
そして、時刻差算出部404が、ステップS102で取得した時間差Δt2とステップS104で取得した時間差Δt1との差を時刻差として算出する(ステップS105)。
【0059】
ステップS104で取得したセンサデータの時刻データは、センサ装置10において加速度センサ16が加速度を検出したローカル時刻であるセンサ検出時刻を示している。このセンサ検出時刻は水晶発振器12の経時変化や温度に依存する変化によりずれが生じる。このため、時刻補正部405はステップS104で取得した時刻データが示す時刻からステップS105で算出する時刻差を加算又は減算した時刻を算出し、その時刻に、加速度センサ16のセンサ検出時刻を補正する(ステップS106)。
【0060】
その後、ステップS104で取得したセンサデータとステップS106で補正した時刻データと、センサ装置10の識別情報を互いに対応付けて記憶部39に保存する(ステップS107)。
【0061】
このようにして、時刻補正装置30は各センサ装置10で取得したセンサデータを互いに整合をとった時刻データとともに保存することができ、センサ装置10の設置位置に対する加速度の変化の情報を取得することができる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態において、受電設備50から商用交流電源が供給されるセンサ装置10は、商用交流電源を降圧した電源信号と水晶発振器12の発振信号を分周したクロック信号の同位相の時間差のデータを送信する。同一の受電設備50から商用交流電源が供給される時刻補正装置30は、センサ装置10から時間差データを受信し、時刻補正装置30の電源信号と水晶発振器32の発振信号を分周したクロック信号の同位相の時間差のデータを取得する。これら時間差の差を、センサ装置10の水晶発振器12と時刻補正装置30の水晶発振器32の発振信号に基づく時刻の時刻差として算出し、当該時刻差分、センサ装置10のローカル時刻を補正することとした。これにより、各センサ装置が外部から時刻情報を取得することなく、高精度に時刻を整合させることができる。
【0063】
(実施形態2)
本発明の実施形態2について図面を参照して詳細に説明する。
【0064】
実施形態1に係るセンサシステム1は、センサ装置10と時刻補正装置30とで、電源信号とクロック信号の同位相の時間差を計測するタイミングを合わせることで、電源信号の同じ周期内における同位相の時間差を比較して時刻差を求めることとした。しかし、同位相の時刻を取得したときそれが電源信号の同じ周期内であることを判別することが困難な場合がある。本実施形態に係るセンサシステム1は、同位相の時刻を取得したときそれが電源信号の同じ周期内であるか否かに関わらず、センサ装置10と時刻補正装置30の時刻差を算出できるものである。
【0065】
本実施形態のセンサシステム1は、実施形態1と同様に、任意の場所に位置する1以上のセンサ装置10と、センサ装置10におけるローカル時刻を補正する時刻補正装置30と、から構成される。本実施形態でも、地震観測や地震後の建築物の健全性の解析等を目的として複数のセンサ装置10が加速度データを含むセンサ検出データを取得するセンサシステム1について説明する。
【0066】
図1に示すように、センサ装置10と時刻補正装置30は、同一の受電設備50からケーブル51を介して商用交流電源が供給される装置であり、例えば、同じ建物内に設置される。センサ装置10の構成は実施形態1と同様である。
【0067】
時刻補正装置30の構成は、実施形態1と同様に、水晶発振器32と、分周器33と、時間間隔計34と、時計35と、GPS受信部37と、通信部38と、記憶部39と、制御部40と、を備えるが、制御部40の機能が一部異なる。本実施形態の制御部40は、時間差取得部401及びセンサデータ取得部403が取得する時間差の波形を比較する時間差波形比較部406を更に備える点が実施形態1と異なる。
【0068】
本実施形態の時刻補正装置30について
図6を用いて詳細に説明する。
図6は、本実施形態に係る時刻補正装置30の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0069】
時間間隔計34は、水晶発振器32の発振信号を分周器33で分周した正弦波信号であるクロック信号と、商用交流(AC)電源を降圧した正弦波信号である電源信号の、同位相の時間差のデータを出力する。制御部40の時間差取得部401は、時間間隔計34が出力する時間差データを取得する。
【0070】
センサデータ取得部403は、センサ装置10から送信されてきた時間差データ、時刻データ、センサ検出データを取得する。ここで、センサデータ取得部403が取得する時間差データは、センサ装置10において、時間間隔計14が、水晶発振器12の発振信号を分周器13で分周した正弦波信号であるクロック信号と、商用交流(AC)電源を降圧した正弦波信号である電源信号の、同位相の時間差を計測し出力したものである。
【0071】
時間差波形比較部406は、時間差取得部401が取得した時刻補正装置30のクロック信号と電源信号の時間差の周期変化を示す波形、及び、センサデータ取得部403が取得したセンサ装置10のクロック信号と電源信号の時間差の周期変化を示す波形を互いに比較して、波形のずれを算出する。
【0072】
時刻差算出部404は、時間差波形比較部406で得られた波形のずれに基づいて、電源信号の1波長に相当する時間以上の時刻差を算出する。その他の機能部の動作は実施形態1と同様である。
【0073】
本実施形態の時刻補正方法について
図7を用いて詳細に説明する。
図7は、電源信号とクロック信号の時間差の周期変化を示した図である。
【0074】
図7において、(1)のグラフは、センサデータ取得部403が取得した、センサ装置10の分周器13が出力するクロック信号と商用交流電源を降圧した電源信号の同位相の時間差Δt1の周期変化を示す。時間差Δt1は、
図4に示すような略同じ周波数を有するクロック信号(クロック1)と電源信号(電源1)の互いに同じ特定の位相の時間差を時間間隔計34が計測することにより得られたものである。時間間隔計34は、例えば、クロック信号と電源信号との、位相0°に相当する電圧0Vの時間差を計測する。
【0075】
また、(2)のグラフは、時間差取得部401が取得した、時刻補正装置30の分周器33が出力するクロック信号と商用交流電源を降圧した電源信号の同位相の時間差Δt2の周期変化を示す。時間差Δt2は、
図4に示すような略同じ周波数を有するクロック信号(クロック2)と電源信号(電源2)の互いに同じ特定の位相の時間差を時間間隔計14が計測することにより得られたものである。時間間隔計14は、例えば、クロック信号と電源信号との、位相0°に相当する電圧0Vの時間差を計測する。
【0076】
図7の(1)、(2)に示した、Δt1、Δt2は、電源の正弦波信号の1周期(20msec)毎の計測値であるため、Δt1、Δt2を、横軸を時間としてプロットすると、
図7に示すような周期変化が現れる。この周期変化は、各センサ装置10及び時刻補正装置30に供給されている商用交流電源の電圧の揺らぎに起因する。
【0077】
ここで、各センサ装置10と時刻補正装置30の商用交流電源は同じ受電設備50から供給されていることから、ほぼ同じ電圧変動の波形を有する。よって、Δt1、Δt2の周期変化もほぼ同じ波形を有するが、本実施形態では時間差データの取得のタイミングを合わせていないため、同じ波形が現れる時間がずれている。このΔt1、Δt2の周期変化を互いに照合すると、互いに波形が一致する時間のずれを算出することができる。
図7のグラフにおいては、Δt1を2つの破線の間のT*nの時間分後方にシフトさせることによりΔt2と波形が一致する。
【0078】
時間差波形比較部406は、時間差Δt1、Δt2の周期変化の波形を照合することにより、nの値を求める。そして、時刻差算出部404は、T*n離れた時刻における時間差Δt1a、Δt2aも取得し、{T*n+(Δt2a−Δt1a)}を時刻差として算出する。
【0079】
時刻補正部405は、センサの検出信号に対応づけたセンサ検出時刻を、時刻取得部402で取得した基準時刻に時刻差算出部404で算出した時刻差を加算又は減算した時刻に修正する。
【0080】
以上のように構成されたセンサシステム1の動作は、実施形態1と同様であり、
図5に示すフローチャートのステップS105の時刻差算出の処理のみが異なる。ステップS105において、時間差波形比較部406が、時間間隔計14、34がそれぞれ計測した時間差Δt1、Δt2の周期変化を取得し、時間差Δt1、Δt2の周期変化の波形を照合することにより、同じ波形が現れる時間のずれT*nを計算する。そして、時刻差算出部404が{T*n+(Δt2a−Δt1a)}を時刻差として算出する処理を行う。
【0081】
以上説明したように、本実施形態においては、制御部40の時間差波形比較部406が、商用交流電源を降圧した電源信号と水晶発振器12の発振信号を分周したクロック信号との同位相の時間差と、電源信号と水晶発振器32の発振信号を分周したクロック信号との同位相の時間差と、の波形を互いに比較した。そして、この時間差波形のずれからセンサ装置10の水晶発振器12と時刻補正装置30の水晶発振器32のそれぞれの発振信号に基づく時刻の時刻差を算出し、センサ装置10でセンサが検出信号を取得したセンサ検出時刻を補正することとした。これにより、予め時間差データを取得するタイミングを合わせる必要もなく、電源信号の1波長に相当する時間以上の時刻のずれがあった場合にも、高精度に時刻を整合させることができる。
【0082】
(実施例1)
センサ装置10の水晶発振器12の発振信号を分周したクロック信号と、商用交流電源を降圧した電源信号の、同位相の時間差を時間間隔計で実測した。
図8は、時間差波形の実測データを示した図である。横軸は時間tであり、縦軸はクロック信号と電源信号が0V(位相0°)となる時間差Δtである。
【0083】
実施形態1、2では、電源信号の周波数が50Hzであり、水晶発振器12の発振信号を分周したクロック信号も50Hzであるとしたが、実際には周波数にずれがある。よって、クロック信号と電源信号の同位相の時間差Δtは、20msecを超えた値となる場合がある。これに対し、実測データは、
図8に示すように時間差Δtの値は0〜20msecに分布しているため、時間差が20msecを超えたことにより、破線で示したように1周期分スリップしたサイクルスリップが生じる。
【0084】
このサイクルスリップ前後のデータのいずれか一方を20msecシフトさせる補正を行うことにより、
図9に示すような連続したデータを得ることができる。
図9は、時間差波形の実測データのサイクルスリップを補正した図である。
【0085】
図9に示した時間差の波形は、商用交流電源の電圧の揺らぎと、電源信号及びクロック信号の周波数のずれに起因するものである。つまり、
図7に示したΔt1、Δt2に対応する実測データである。
【0086】
センサ装置10の水晶発振器12の発振信号を分周したクロック信号と、商用交流電源を降圧した電源信号の、同位相の時間差Δt1、及び、時刻補正装置30の水晶発振器32の発振信号を分周したクロック信号と、商用交流電源を降圧した電源信号の、同位相の時間差Δt2を実測すると、
図9に示すような特有の形状を有する波形が得られた。Δt1とΔt2のいずれか一方を時間方向にシフトさせることにより、波形を高精度に一致させることができた。
【0087】
つまり、時刻補正装置30において、Δt1とΔt2を実測して互いに照合することにより、同じ波形が現れる時間のずれを求めることができた。この時間のずれT*nと、時間T*n離れた時刻における時間差Δt1a、Δt2aに基づいて、{T*n+(Δt2a−Δt1a)}を時刻差として算出することができた。
【0088】
このように本発明は、同一の受電設備から供給される商用交流電源を降圧した2以上の電源信号と、2以上の発振器の発振信号を商用交流電源と同じ周波数になるように分周した2以上のクロック信号と、の時間差を取得し、互いに異なる発振器について取得した時間差を比較して、発振信号を用いて計測するローカル時刻の時刻差を算出し、算出した時刻差に基づいてローカル時刻を補正することとした。これにより、外部から時刻情報を取得することなく、高精度に時刻を補正することが可能となる。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【0090】
例えば、実施形態において、センサ装置10と時刻補正装置30の、クロック信号と電源信号の時間差を比較して時刻差を求めるとしたが、複数のセンサ装置10同士の時間差を比較して時刻差を求めるようにしてもよい。このとき、何れか1つのセンサ装置10のローカル時刻を基準として、各々のセンサ装置10のクロック信号と電源信号の時間差を比較した結果に基づいて、他のセンサ装置10のローカル時刻を補正するようにしてもよい。この場合、GPS信号に基づいて取得する基準時刻との整合を図ることはできないが、センサ装置10間のデータの時刻整合が可能となる。
【0091】
複数のセンサ装置10同士の時間差を比較してセンサ装置10間のデータの時刻整合を行う場合は、各センサ装置10の記憶部19に時間差データ、時刻データ、センサ検出データを蓄積しておき、蓄積したデータをオンライン又はオフラインで収集した時刻補正装置30において、センサ装置10同士の時刻差を解析してセンサ装置10間のデータの時刻整合を実行するようにしてもよい。
【0092】
また、実施形態ではセンサ装置10は、時間間隔計14で計測したクロック信号と電源信号の同位相の時間差を、時刻補正装置30に送信するとしたが、センサ装置10は、クロック信号と電源信号をAD変換して得られたデータを時刻補正装置30に送信するようにしてもよい。センサ装置10に時間間隔計14を備えない構成でも時刻補正が可能となる。
【0093】
また、時刻補正装置30は、GPS受信部37で受信したGPS信号に含まれる時刻情報に基づいて基準時刻を取得するとしたが、他の通信ネットワークを用いて受信可能な時刻情報に基づいて基準時刻を取得してもよい。
【0094】
また、時刻補正装置30は、センサ装置10のローカル時刻におけるセンサ検出時刻を補正してセンサデータとともに出力するとしたが、時刻補正装置30が補正した時刻を定期的にセンサ装置10に送信し、センサ装置10の時計15の時刻を更新するようにしてもよい。
【0095】
また、時刻補正装置30の制御部40が実行した処理のプログラムを、既存のコンピュータ等の情報端末で実行させることにより、当該情報端末を含む装置を本発明に係る時刻補正装置30として機能させることも可能である。
【0096】
このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto Optical Disc)、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。