(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6835382
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】電子データ判定システム、電子データ判定装置、電子データ判定方法、電子データ判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/00 20120101AFI20210215BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20210215BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
G06Q40/00 400
H04N1/00 Z
G06T1/00 440
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-527118(P2020-527118)
(86)(22)【出願日】2020年5月15日
(86)【国際出願番号】JP2020019556
【審査請求日】2020年5月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516380407
【氏名又は名称】ファーストアカウンティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】森 啓太郎
【審査官】
片岡 利延
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−021596(JP,A)
【文献】
特開2019−152948(JP,A)
【文献】
特開2014−016879(JP,A)
【文献】
特開2015−064760(JP,A)
【文献】
特許第6612962(JP,B1)
【文献】
特開2019−186665(JP,A)
【文献】
特許第6683377(JP,B1)
【文献】
岡部毅,第30回「電子帳簿保存法(スキャナ保存制度)の要件緩和について」,[online],2016年 7月,https://www.superstream.jp/jp/column/gemba/vol_030/,URL,https://www.superstream.jp/jp/column/gemba/vol_030/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 40/00
G06T 1/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャナによる読取方式と、カメラによる読取方式とが含まれる書類の画像データの読取方式を判別することを機械学習した画像判別AIを有し、書類を読取した画像データから、前記画像判別AIを用いた画像解析処理により当該画像データの読取方式を判別する画像判別部と、
前記画像判別部により判別された読取方式に応じて前記画像データの振り分けを行う振分部と、
前記画像データから画像解析処理により書類の受領日を抽出する受領日抽出部と、
前記受領日抽出部により抽出された受領日から前記画像データの読取日までの期間が前記読取方式に応じて定められた所定期間内であるか否かを判定する期間判定部と、
前記期間判定部により前記所定期間外であると判定された前記画像データに対してアラート処理を行うアラート処理部と、
を備える電子データ判定システム。
【請求項2】
前記読取方式に応じて定められた所定期間は、前記スキャナによる読取方式に定められた第1の所定期間よりも、前記カメラによる読取方式に定められた第2の所定期間の方が短い、請求項1に記載の電子データ判定システム。
【請求項3】
前記画像データが所定の画像要件を満たしているか否かを判定する画像要件判定部をさらに備え、
前記アラート処理部は、前記画像要件判定部により前記所定の画像要件を満たしていないと判定された前記画像データに対してアラート処理を行う、請求項2に記載の電子データ判定システム。
【請求項4】
前記所定の画像要件は、画像の解像度に基づき定められている請求項3に記載の電子データ判定システム。
【請求項5】
前記所定の画像要件は、画像の色の階調に基づき定められている請求項3又は4に記載の電子データ判定システム。
【請求項6】
前記所定の画像要件は、画像の大きさに基づき定められている請求項3から5のいずれか一項に記載の電子データ判定システム。
【請求項7】
スキャナによる読取方式と、カメラによる読取方式とが含まれる書類の画像データの読取方式を判別することを機械学習した画像判別AIを有し、書類を読取した画像データから、前記画像判別AIを用いた画像解析処理により当該画像データの読取方式を判別する画像判別部と、
前記画像判別部により判別された読取方式に応じて前記画像データを振り分けて保存する振分部と、
前記画像データから画像解析処理により書類の受領日を抽出する受領日抽出部と、
前記受領日抽出部により抽出された受領日から前記画像データの読取日までの期間が前記読取方式に応じて定められた所定期間内であるか否かを判定する期間判定部と、
前記期間判定部により前記所定期間外であると判定された前記画像データに対してアラート処理を行うアラート処理部と、
を備える電子データ判定装置。
【請求項8】
書類を読取した画像データから、スキャナによる読取方式と、カメラによる読取方式とが含まれる書類の画像データの読取方式を判別することを機械学習した画像判別AIを用いた画像解析処理により当該画像データの読取方式を判別する画像判別ステップと、
前記画像判別ステップにより判別された読取方式に応じて前記画像データを振り分けて保存する振分ステップと、
前記画像データから画像解析処理により書類の受領日を抽出する受領日抽出ステップと、
前記受領日抽出ステップにより抽出された受領日から前記画像データの読取日までの期間が前記読取方式に応じて定められた所定期間内であるか否かを判定する期間判定ステップと、
前記期間判定ステップにより前記所定期間外であると判定された前記画像データに対してアラート処理を行うアラート処理ステップと、
をコンピュータが実行する電子データ判定方法。
【請求項9】
書類を読取した画像データから、スキャナによる読取方式と、カメラによる読取方式とが含まれる書類の画像データの読取方式を判別することを機械学習した画像判別AIを用いた画像解析処理により当該画像データの読取方式を判別する画像判別ステップと、
前記画像判別ステップにより判別された読取方式に応じて前記画像データを振り分けて保存する振分ステップと、
前記画像データから画像解析処理により書類の受領日を抽出する受領日抽出ステップと、
前記受領日抽出ステップにより抽出された受領日から前記画像データの読取日までの期間が前記読取方式に応じて定められた所定期間内であるか否かを判定する期間判定ステップと、
前記期間判定ステップにより前記所定期間外であると判定された前記画像データに対してアラート処理を行うアラート処理ステップと、
をコンピュータに実行させるための電子データ判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は証憑等の書類に係る電子データを保存するため、当該電子データの判定を行う電子データ判定システム、電子データ判定サーバ、電子データ判定方法、電子データ判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙の書類を電子化し、紙資源の節約、印刷コストの削減、業務の効率化を図るペーパーレス化が進んでいるが、重要な書類の電子化には一定の要件が必要となる場合がある。
【0003】
例えば、レシートや領収書等の証憑を含む国税関係帳簿書類については、その全部又は一部について電子データによる保存を認める電子帳簿保存法が制定されている。当該電子帳簿保存法では、記録の真実性及び可視性等の確保に必要となる所定の要件を具備することで、スキャナや、スマートフォン又はデジタルカメラで読取した書類の電子データとしての保存が許されている。
【0004】
当該電子帳簿保存要件としては、真実性の確保のために書類の電子データにタイムスタンプを付与することが規定されている。そこで、携帯端末を用いて作成した電子データに対して容易にタイムスタンプを発行し、これを管理可能な技術も開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−175377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1で示す技術等により、タイムスタンプを容易に付与することはできるが、その他の要件も具備していなければ電子データによる保存は許されない。
【0007】
例えば、スキャナで読取した画像データであるか、スマートフォン又はデジタルカメラのようなカメラにより読取した画像データであるか等によって、電子データとしての保存要件が異なる場合がある。画像データが電子帳簿保存要件を具備しているかをチェックするには手間がかかり、人手によるチェックは精度のばらつきが生じるおそれもある。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、書類の電子データの保存に際して、書類の電子化の正確性及び作業効率を向上させることのできる電子データ判定システム、電子データ判定装置、電子データ判定方法、電子データ判定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電子データ判定システムは、書類を読取した画像データから、画像解析処理により当該画像データの読取方式を判別する画像判別部と、前記画像判別部により判別された読取方式に応じて前記画像データの振り分けを行う振分部と、を備える。
【0010】
上記電子データ判定システムにおいて、前記画像データから画像解析処理により書類の受領日を抽出する受領日抽出部と、前記受領日抽出部により抽出された受領日から前記画像データの読取日までの期間が前記読取方式に応じて定められた所定期間内であるか否かを判定する期間判定部と、前記期間判定部により前記所定期間外であると判定された前記画像データに対してアラート処理を行うアラート処理部と、をさらに備えてもよい。
【0011】
また、上記電子データ判定システムにおいて、画像判別部により判別する読取方式には、スキャナによる読取方式と、カメラによる読取方式とが含まれてもよい。
【0012】
さらに、上記電子データ判定システムにおいて、前記読取方式に応じて定められた所定期間は、前記スキャナによる読取方式に定められた第1の所定期間よりも、前記カメラによる読取方式に定められた第2の所定期間の方が短くてもよい。
【0013】
また、上記電子データ判定システムにおいて、前記画像データが所定の画像要件を満たしているか否かを判定する画像要件判定部をさらに備え、前記アラート処理部は、前記画像要件判定部により前記所定の画像要件を満たしていないと判定された前記画像データに対してアラート処理を行ってもよい。
【0014】
また、上記電子データ判定システムにおいて、前記所定の画像要件は、画像の解像度に基づき定められていてもよい。
【0015】
また、上記電子データ判定システムにおいて、前記所定の画像要件は、画像の色の階調に基づき定められていてもよい。
【0016】
また、上記電子データ判定システムにおいて、前記所定の画像要件は、画像の大きさに基づき定められていてもよい。
【0017】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電子データ判定装置は、書類を読み取りした画像データから、画像解析処理により当該画像データの読取方式を判別する画像判別部と、前記画像判別部により判別された読取方式に応じて前記画像データを振り分けて保存する振分部と、を備える。
【0018】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電子データ判定方法は、書類を読取した画像データから、画像解析処理により当該画像データの読取方式を判別する画像判別ステップと、前記画像判別部により判別された読取方式に応じて前記画像データを振り分けて保存する振分ステップと、をコンピュータが実行する。
【0019】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電子データ判定プログラムは、書類を読取した画像データから、画像解析処理により当該画像データの読取方式を判別する画像判別ステップと、前記画像判別部により判別された読取方式に応じて前記画像データを振り分けて保存する振分ステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0020】
上記手段を用いる本発明によれば、書類の電子データの保存に際して、書類の電子化の正確性及び作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子データ判定システムを示したシステム構成図である。
【
図2】管理サーバにより実行される書類の電子データ判定処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施形態に係る電子データ判定システムを示したシステム構成図であり、同図に基づき本実施形態の構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る電子データ判定システム1は、情報端末2と管理サーバ3(電子データ判定装置)とが有線又は無線の通信手段を介して接続されて構成されている。なお、情報端末2と管理サーバ3とは、VPN(Virtual Private Network)、イントラネット、又はインターネット等の通信網を介して接続されていてもよい。また、説明の簡略化のため
図1では管理サーバ3は一つの情報端末2と接続されているが、管理サーバ3は複数の情報端末2と接続可能である。
【0025】
情報端末2を使用する者は、例えば企業の経理担当者、税理士及び会計士等の専門家であったり、直接会計処理を行う法人や個人等である。なお、電子帳簿保存法では、国税関係書類の作成又は受領をする者(以下、受領者等という)が国税関係書類を読み取る場合と、受領者等以外の者が国税関係書類を読み取る場合とで、タイムスタンプを付する要件が異なる。受領者等以外の者が国税関係書類を読み取る場合は、書類を作成又は受領後(例えば受領日から)、おおむね7営業日以内、又は通常の業務処理期間(最大2ヵ月)と7営業日以内にタイムスタンプを付する必要がある。本実施形態の電子データ判定システム1は、受領者等以外の者(例えば企業の経理担当者)が使用するシステムとして説明する。
【0026】
情報端末2は、例えばスマートフォン、タブレットPC、及び携帯電話のような携帯端末や、パーソナルコンピュータ(以下、PCという)であり、読取部10と表示部11とを有している。なお、情報端末2は、スキャナであってもよい。
【0027】
読取部10は、スキャナ、及び、スマートフォンやデジタルカメラ等のカメラを含む光学機器であり、書類を画像データとして取り込み可能な部分である。なお、本実施形態及び特許請求の範囲における「書類」は、例えば、電子帳簿保存法に定められる国税関係帳簿書類である。具体的には、書類には、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金・買掛金元帳固定資産台帳、売上・仕入帳等の帳簿や、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、その他決算に関して作成した書類等の決算関係書類や、領収書やレシート、その他の受領書、請求書、納品書、金融機関の通帳、会計上金銭授受の証明となる書類、電子マネー等のICカードによる取引情報を含む証憑類が含まれる。
【0028】
表示部11は、例えばディスプレイであり、管理サーバ3からのメッセージ等の情報を視認可能に表示するものである。
【0029】
情報端末2は、管理サーバ3に読取部10にて読み取った書類の画像データを送信可能である。また当該画像データには送信元の情報、つまり情報端末2の情報、当該情報端末2を使用している経理担当者の情報や国税関係書類の受領者等の情報(例えば個人ID)も紐づけされており、誰がどのような書類の画像データを送ってきたか認識可能となっている。
【0030】
一方、管理サーバ3は、プログラムに基づき書類の電子データの保存処理を実行する1又は複数のサーバ(コンピュータ)から構成されている。機能的には主に、書類の画像データから、画像データの読取方式を判別する画像判別部20と、判別された画像データを振り分ける振分部21と、画像データから書類の受領日等の画像要素を抽出する画像要素抽出部22(受領日抽出部)と、受領日から読取日までの期間に関する要件を判定する期間判定部23と、画像に関する要件を判定する画像要件判定部24と、アラート処理を行うアラート処理部25とを有している。また管理サーバ3は、画像判別AI及び画像要素抽出AIを生成する学習システム26と、受領日から読取日までの期間に関する要件、及び画像に関する要件が記憶されている要件データベース27、書類の電子データが記憶される書類データベース28、等の各種データベース(以下、データベースを「DB」と表記する)を有している。
【0031】
詳しくは、画像判別部20は、情報端末2の読取部10にて読み取った書類の画像データを受信し、画像解析処理により当該画像データの読取方式を判別する機能を有している。
【0032】
具体的には、画像判別部20は、画像解析処理として、書類の画像データから読取方式を判別するための画像判別AIを有し、当該画像判別AIにより書類の画像データから読取方式を判別可能である。なお、画像判別部20は、画像判別AIを用いずに、他の画像解析処理を用いて読取方式を判別してもよい。
【0033】
本実施形態では、読取方式には、スキャナによる読取方式と、スマートフォンやデジタルカメラ等のスキャナによる読取方式の2種類があり、画像判別部20は、画像データからいずれの読取方式で読み取られたデータであるかを判別する。
【0034】
振分部21は、画像判別部20により判別された読取方式に応じて画像データの振り分けを行う機能を有している。本実施形態の振分部21は、具体的には、スキャナによる読取方式である画像データと、カメラによる読取方式である画像データとを振り分ける。なお、振分部21は、振り分けた画像データを書類DB28に保存するよう出力してもよいし、情報端末2の表示部11に表示させるよう出力してもよい。
【0035】
画像要素抽出部22は、振分部21にて振り分けた画像データを受信し、画像解析処理により当該画像データから画像に関する判断要素(以下、画像要素という)を抽出する機能を有している。画像要素は後述する保存要件の項目に対応した要素であり、例えば、当該書類を受領した日(受領日)、画像データの読取日、画像データの送信日時、画像データの解像度や色の階調や画像の大きさやデータ形式(JPEG、GIF、PNG、TIFF、BMP、PDF等)、書類内に記載されている文字情報や数字情報の少なくとも1つが含まれる。なお、1つの画像データに複数の書類が写り込んでいる場合は、それぞれの書類を認識し、各書類毎に画像要素を抽出してもよい。
【0036】
具体的には、画像要素抽出部22は、書類の画像データから画像要素を抽出するための画像要素抽出AIを有し、当該画像要素抽出AIにより書類の画像データから画像要素を抽出可能である。なお、画像データの読取日、画像データの送信日時、画像データの解像度や色の階調や画像の大きさやデータ形式等の画像データ自体(メタデータ)に係る画像要素については、画像要素抽出AIを用いずに画像データを画像解析することで抽出してもよい。
【0037】
画像要素抽出AIは、書類内の画像要素については、画像データ内から画像要素に対応する部分(位置)を特定し、特定された部分の内容に対応する画像要素をテキストとして抽出する。つまり、画像要素抽出AIは、学習システム26において、機械学習により画像データ内から画像要素に対応する部分を含む領域を指定し、当該指定された部分の内容に対応する画像要素をテキストとして出力することを学習したAIである。例えば、画像要素抽出AIは、書類の画像データ内において、受領日に相当する日付部分の位置及び数字を認識して、年月日等のテキストを当該書類の受領日として抽出可能である。この他にも、画像要素抽出AIは、書類の形状、大きさ、色等の外観、書類名部分、金額部分、取引先部分、摘要部分を指定し、金額部分においては数字を認識して金額のテキストを抽出し、書類名や取引先に対応する部分や摘要に対応する部分においては文字を認識して書類名、取引先、摘要のテキストを抽出してもよい。
【0038】
画像要素抽出部22は、画像要素抽出AIを用いて、例えば日付については、「日付」「年」「月」「日」等の文字や「/」等の記号の前後や上下の数字部分を特定する。金額については「¥」等の記号や商品名、「金額」「預り金」「小計」「合計」「税」「お釣り」「割引」「円」「支払い」「預り」「残高」等の金額に関係する文字の前後や上下の数字部分を特定する。なお、画像要素抽出部22は、抽出された文字の意味についても認識可能であり、例えば「小計」は商品の価格を合算した金額である等の会計上の関係性まで特定可能である。
【0039】
また、取引先については、「株式会社」「(株)」「(カ)」等の文字の前後の文字部分や、ロゴマーク、電話番号、証憑の外観を特定して、これらの情報に基づく会社名や個人名に対応する部分を特定する。摘要については、「但」等の文字に続く文字部分を特定する。取引元については、「様」等の文字の前にある文字の部分を特定する。
【0040】
なお、画像要素はこれに限られるものではなく、また画像要素の抽出に用いる数字、文字、図形もこれに限られるものではない。例えば、証憑に、購入品の数量が記載されている場合には数量を画像要素として含めてもよいし、受領者等の本人の署名や、同席者の名前や人数等の情報が記載されている場合には、受領者等の本人の署名や同席者及び人数を画像要素として含めてもよい。また、各企業を特定するために設定された番号(法人番号、事業所番号)を抽出してもよい。
【0041】
なお、画像要素抽出AIは、証憑の画像データ内から画像要素に対応する部分(位置)を特定する画像認識AIと、特定された部分の内容に対応する画像要素をテキストとして抽出する文字認識AIの2つのAIで構成してもよい。
【0042】
画像要素抽出部22は、書類の画像データと、当該画像データから抽出した画像要素に関する情報を含めたデータを書類の電子データとして、期間判定部23に出力する。
【0043】
期間判定部23は、画像要素抽出部22により抽出された画像データ内の書類の受領日から画像データの読取日までの期間(読取日−受領日)が読取方式に応じて定められた所定期間内であるか否かを判定する機能を有している。この読取方式に応じて定められた所定期間は要件DB27に記憶されており、例えばスキャナによる読取方式に定められた第1の所定期間よりも、カメラによる読取方式に定められた第2の所定期間の方が短く設定されている。本実施形態では第1の所定期間を2カ月と7営業日、第2の所定期間を7営業日とする。
【0044】
画像要件判定部24は、画像データが所定の画像要件を満たしているか否かを判定する機能を有している。この所定の画像要件は、要件DB27に記憶されており、例えば画像の解像度に基づく要件、画像の色の階調に基づく要件、画像の大きさに基づく要件が設定されている。また、所定の画像要件は画像データの読取方式に応じて個別に設定されていてもよい。本実施形態では、読取方式に応じて個別に設定せず、いずれの読取方式においても、解像度に基づく要件は200dpi(所定解像度)以上であるか、画像の色の階調に基づく要件は赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ256階調(所定階調)以上(24ビットカラー)であるか、画像の大きさに基づく要件はA4サイズ(所定の大きさ)以上であるか、とする。そして、画像要件判定部24は、これらの画像要件を具備した画像データについては書類DB28に保存する。この書類DB28に保存する画像データには、が画像判別部20により判別された読取方式、画像要素抽出部22により抽出された画像要素、期間判定部23及び画像要件判定部24の判定結果、等の情報が付与されている。
【0045】
アラート処理部25は、期間判定部23により所定期間外であると判定された画像データ、又は、画像要件判定部24により所定の画像要件を満たしていないと判定された画像データに対してアラート処理を行う機能を有している。アラート処理としては、例えば情報端末2の表示部11に要件を満たしていない画像データとともに満たしていない要件を提示したり、画像データのリストにおいて要件を満たしていない画像データについては他と異なる表示(マーカー表示、フラグ表示、等)を行うことで、情報端末2の使用者に対して当該画像データのチェックを促す。
【0046】
学習システム26は、上述した画像判別AI及び画像要素抽出AIを学習させ、学習済みのAIを供給する機能を有している。詳しくは、学習システム26は、書類の画像データと当該画像データの読取方式に関する情報からなる学習用データに基づき機械学習(いわゆるディープラーニング)させることで、画像判別AIを生成する。また、学習システム26は、書類の画像データと当該画像データに含まれる受領日、解像度、色の階調、画像の大きさ等に関する情報からなる学習用データに基づき機械学習させることで、画像要素抽出AIを生成する。
【0047】
要件DB27は、上述した期間判定部23にて判定を行うための所定期間や、画像要件判定部24にて判定を行うための所定の画像要件を記憶する機能を有している。これらの所定期間や所定の画像要件は法律の改正等に応じて電子データの保存要件に変更があった場合等に更新が可能である。
【0048】
書類DB28は、振分部21により振り分けられ、期間判定部23及び画像要件判定部24にてそれぞれの要件を満たした画像データを記憶する機能を有している。例えば、当該書類DB28に記憶されている書類の画像データは、スキャナによる読取方式とカメラによる読取方式とに分けて記憶されている。
【0049】
ここで
図2を参照すると、管理サーバ3により実行される書類の電子データ判定方法の流れを示したフローチャートが示されており、以下同フローチャートに沿って、電子データ判定方法について詳しく説明する。なお、当該電子データ判定方法は、情報端末2からの書類の画像データを受信することでスタートする。
【0050】
まず、ステップS1として、管理サーバ3の画像判別部20は、画像解析処理により当該画像データの読取方式を判別する。具体的には、画像判別部20は、画像判別AIを用いて画像データがスキャナによる読取方式であるか、カメラによる読取方式であるかを判別する。
【0051】
ステップS2において、振分部21は、画像判別部20にて判別された結果、画像データがスキャナによる読取方式であるか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)である場合は、ステップS3に進む。
【0052】
ステップS3において、画像要素抽出部22は、画像解析処理により画像データから画像要素を抽出する。具体的には、画像要素抽出部22は、画像要素抽出AIを用いて、当該画像データにおける、書類を受領した日(受領日)、画像データの読取日、画像データの解像度や色の階調や画像の大きさ、等を抽出する。
【0053】
そしてステップS4において、期間判定部23は、画像データ内の書類の受領日から画像データの読取日までの期間(読取日−受領日)が、スキャナによる読取方式に定められた第1の所定期間(2カ月と7営業日)以下であるか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)である場合、ステップS5に進む。
【0054】
ステップS5において、画像要件判定部24は、画像データの解像度が所定解像度(200dpi)以上であるか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)である場合はステップS6に進む。
【0055】
ステップS6において、画像要件判定部24は、画像データの色の階調が所定階調(256階調)以上であるか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)である場合はステップS7に進む。
【0056】
ステップS7において、画像要件判定部24は、画像データの画像の大きさが所定の大きさ(A4サイズ)以上であるか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)である場合はステップS8に進む。
【0057】
ステップS8において、画像要件判定部24は、今回取得した書類の画像データは保存要件を満たした画像データとして、当該画像データの読取方式、画像要素、ステップS4〜S7の判定結果、等の情報を書類DB28に保存し、当該ルーチンを終了する。
【0058】
一方、ステップS4〜S7の判定結果のいずれかが偽(No)であった場合、即ち書類の受領日から読取日までの期間(読取日−受領日)が第1の所定期間を超えていた場合、解像度が所定解像度未満であった場合、色の階調が所定階調未満であった場合、又は画像の大きさが所定の大きさより小さかった場合には、ステップS9に進む。
【0059】
ステップS9において、アラート処理部25は、今回取得した書類の画像データは保存要件を満たさなかった画像データとして、ステップS4〜S7の判定結果に応じたアラート処理を行い、当該ルーチンを終了する。
【0060】
また上記ステップS2の判定結果が偽(No)であった場合、即ち振分部21により画像データがカメラによる読取方式と判定された場合には、ステップS10に進む。
【0061】
ステップS10では、ステップS3と同様に、画像要素抽出部22が、画像解析処理により画像データから受領日等の画像要素を抽出する。
【0062】
そしてステップS11において、期間判定部23は画像データ内の書類の受領日から画像データの読取日までの期間(読取日−受領日)が、カメラによる読取方式に定められた第2の所定期間(7営業日)以下であるか否かを判定する。当該判定結果が真(Yes)である場合はステップS12に進み、当該判定結果が偽(No)である場合は上述したステップSS9に進む。
【0063】
これ以降のステップS12〜S15は、上述したステップS5〜S8と同様である。
【0064】
以上のように、本実施形態における電子データ判定システム1では、まず書類の画像データの読取方式を判別して、読取方式に応じて画像データを振り分ける。このように自動的に読取方式に応じて画像データの振り分けを行うことで、1つ1つ人手により画像データの読取方式を確認する手間を省くことができ、且つ人手によるチェックの精度のばらつきを防ぐことができる。
【0065】
また、電子データ判定システム1では、書類の受領日から画像データの読取日までの期間が読取方式に応じて定められた所定期間内であるか否かを判定し、所定期間外であると判定された画像データに対してはアラート処理を行うことで、読取方式に応じた保存要件を自動的にチェックし、不備がある場合にはアラート処理されることで、人手によるチェックを最小限に抑えることができる。
【0066】
特に、判別する読取方式として、本実施形態のようにスキャナによる読取方式と、カメラによる読取方式とが含まれることで、例えばスキャナによる読取方式とカメラによる読取方式とが同じデータ方式であり区別できない場合であっても、画像解析処理により読取方式を判別し振り分けることができる。
【0067】
また、本実施形態のように、読取方式に応じて定められた所定期間がスキャナによる読取方式に定められた第1の所定期間よりも、カメラによる読取方式に定められた第2の所定期間の方が短く設定されていることで、電子帳簿保存法等に沿った振り分けを行うことができる。
【0068】
さらに、画像要件判定部24により、画像の解像度に基づく要件、画像の色の階調に基づく要件、画像の大きさに基づく要件、等の所定の画像要件を画像データが満たしているかの判定を行い、当該所定の画像要件を満たしていない場合にはアラート処理を行うことで、期間判定部23による期間の判定だけでなく画像要件の判定も行うことができ、さらに人手によるチェックを削減することができる。
【0069】
以上のことから、本実施形態に係る電子データ判定システム1は、書類の電子データの保存に際して、書類の電子化の正確性及び作業効率を向上させることができる。
【0070】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0071】
例えば、上記実施形態の電子データ判定システム1は情報端末2と管理サーバ3の2つのコンピュータにより構成されているが、例えば、1つのコンピュータ(例えばPC)のみで構成してもよいし、3つ以上のコンピュータで機能を分割して構成してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、電子データとして保存する書類を、電子帳簿保存法に定められる国税関係帳簿書類としているが、保存要件が定められている書類であればその他の書類にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 電子データ判定システム
2 情報端末
3 管理サーバ
10 読取部
11 表示部
20 画像判別部
21 振分部
22 画像要素抽出部(受領日抽出部)
23 期間判定部
24 画像要件判定部
25 アラート処理部
26 学習システム
27 要件DB
28 書類DB
【要約】
電子データ判定システム1は、書類を読取した画像データから、画像解析処理により当該画像データの読取方式を判別する画像判別部20と、画像判別部20により判別された読取方式に応じて画像データの振り分けを行う振分部21と、を備え、さらに、画像データから画像解析処理により書類の受領日等の画像要素を抽出する画像要素抽出部22と、抽出された受領日から画像データの読取日までの期間が読取方式に応じて定められた所定期間内であるか否かを判定する期間判定部23と、期間判定部23により所定期間外であると判定された画像データに対してアラート処理を行うアラート処理部25と、を備える。