(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物が、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、及び2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の電子写真用トナーの製造方法。
工程1が、下記工程1B−1〜工程1B−4を含み、下記工程1B−1〜工程1B−4のいずれかの工程において、陰イオン性界面活性剤を添加する、請求項1〜6のいずれかに電子写真用トナーの製造方法。
工程1B−1:結着樹脂が有機溶剤に溶解した溶液を得る工程
工程1B−2:工程1B−1で得られた溶液に、水系媒体を添加し、結着樹脂粒子の水系分散液を調製する工程
工程1B−3:結着樹脂粒子を凝集させて、凝集粒子を得る工程
工程1B−4:凝集粒子を融着し、結着樹脂を含む樹脂組成物粒子の水系分散液を調製する工程
【発明を実施するための形態】
【0007】
[電子写真用トナーの製造方法]
本発明の電子写真用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)の製造方法は、下記工程1及び工程2を含む。
工程1:結着樹脂を含む樹脂組成物粒子、陰イオン性界面活性剤、及び有機溶剤を含有する水系分散液を調製する工程
工程2:樹脂組成物粒子を下記式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物(以下、単に「ポリヒドロキシアミン化合物」又は「PHA」ともいう)を含有する水溶液で洗浄する工程
【化2】
〔式中、R
1は、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
2は、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
3及びR
4は、炭素数1以上5以下のアルカンジイル基を示す。R
3及びR
4は、同一でも異なっていてもよい。〕
上記のトナーの製造方法によれば、優れた帯電性を示し、残留有機溶剤が効率的に除去される。
【0008】
このような効果が得られる理由は、明らかではないが、以下のように考えられる。
陰イオン性界面活性剤は、比較的除去しやすいのでケミカルトナーの製造工程で用いられることが多いが、それでも界面活性剤が残留する。ポリヒドロキシアミン化合物を含有する水溶液により樹脂組成物粒子を洗浄することで、ポリヒドロキシアミン化合物が、陰イオン性界面活性剤に化学的に相互作用し、当該界面活性剤が除去しやすくなったものと考えられる。
【0009】
<工程1>
工程1では、結着樹脂を含む樹脂組成物粒子、陰イオン性界面活性剤、及び有機溶剤を含有する水系分散液を調製する。
上記水系分散液は、例えば、懸濁法、凝集融着法によるトナーの製造工程において、トナー粒子を得る際に用いられる水系分散液が挙げられる。より詳細には、水系分散液としては、例えば、懸濁法における造粒後の水分散液、凝集融着法における融着工程後の水分散液が挙げられる。
なお、本明細書において、「水系分散液」とは、液体媒体中40質量%以上が水である分散液を意味する。
【0010】
〔樹脂組成物粒子〕
結着樹脂を含む樹脂組成物粒子としては、例えば、トナー粒子、トナー粒子の製造原料として使用する結着樹脂粒子が挙げられる。
樹脂組成物粒子は、少なくとも結着樹脂を含む。
【0011】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の重縮合系樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂等のスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、又はこれらの複合樹脂等が挙げられる。なお、複合樹脂としては、例えば、ポリエステル-ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂セグメントを有する複合樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂セグメントを有する複合樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂セグメント及びスチレン系樹脂セグメントを有する複合樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂セグメントを有する複合樹脂等のポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0012】
《ポリエステル系樹脂》
ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分とを含む原料モノマーの重縮合により得られるものが好ましい。
【0013】
アルコール成分としては、芳香族ポリオールであっても、脂肪族ポリオールであってもよい。
芳香族ポリオールとしては、帯電性をより向上させる観点から、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、より好ましくは式(I):
【化3】
〔式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及びプロピレン基から選ばれる少なくとも1種であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上であり、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下であり、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である。〕で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。
【0014】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのプロピレンオキサイド付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
【0015】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、そして、好ましくは100モル%である。
【0016】
脂肪族ポリオールとしては、例えば、炭素数2以上20以下の脂肪族ジオール、グリセリン等の3価以上の脂肪族アルコールが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
【0017】
カルボン酸成分としては、好ましくはジカルボン酸を含む。ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸であっても、脂肪族ジカルボン酸であってもよい。
以下、カルボン酸の例示には、その化合物のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び、各カルボン酸の、炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
【0018】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられ、これらの中では、テレフタル酸又はイソフタル酸がより好ましく、テレフタル酸が更に好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
芳香族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、100モル%以下である。
【0019】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
脂肪族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは20モル%以上あり、そして、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは50モル%以下である。
【0020】
また、カルボン酸成分は、生産性の観点から、3価以上のカルボン酸を含有していることが好ましい。
3価以上のカルボン酸としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸が挙げられる。これらの中では、トリメリット酸又はその酸無水物が好ましい。
【0021】
3価以上のカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。
【0022】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、分子量調整の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0023】
カルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、末端基を調整する観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0024】
アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180℃以上250℃以下程度の温度で行うことができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒とともに用い得るエステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0025】
<結着樹脂の物性>
結着樹脂の軟化点は、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは105℃以下である。
【0026】
結着樹脂のガラス転移温度は、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下である。
【0027】
結着樹脂は、酸性基を有することが好ましい。酸性基としては、例えば、カルボキシ基が挙げられる。
結着樹脂の酸価は、帯電性をより向上させる観点から、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上である。
【0028】
軟化点、ガラス転移温度、酸価の測定方法は、実施例に記載の方法による。2種以上の樹脂を含有する場合は、軟化点、ガラス転移温度、酸価は、それぞれの加重平均値が上記範囲にあることが好ましい。
【0029】
上述の結着樹脂の中でも、樹脂組成物粒子は、好ましくは非晶質樹脂A(以下単に「樹脂A」ともいう)を含有する。
本発明において、「非晶質樹脂」とは、示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最高ピーク温度(℃)に対する軟化点(℃)の比、すなわち[(軟化点)/(吸熱の最高ピーク温度)]で定義される結晶性指数の値が1.4以上、又は0.6未満の樹脂をいう。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。
非晶質樹脂は、上述の結着樹脂の中でも、アルコール成分として、芳香族ポリオールを含む樹脂が好ましい。なお、芳香族ポリオールの好ましい例、その他の好ましい例は上述の例示と同様である。
樹脂Aの含有量は、結着樹脂中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下である。
【0030】
上述の結着樹脂の中でも、樹脂組成物粒子は、非晶質樹脂に加えて、好ましくは結晶性樹脂C(以下単に「樹脂C」ともいう)を更に含有する。
「結晶性樹脂」とは、前記結晶性指数の値が0.6以上1.4未満、好ましくは0.8以上1.2以下である樹脂をいう。
樹脂Cは、上述の樹脂の中でも、アルコール成分として、脂肪族ポリオール化合物を含む樹脂が好ましい。
脂肪族ジオールは、好ましくはα,ω-脂肪族ジオールである。
α,ω-脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール等が挙げられる。
なお、脂肪族ポリオール化合物の好ましい含有量は上述の例示と同様である。
【0031】
樹脂Cは、カルボン酸成分として、脂肪族ジカルボン酸を含む樹脂が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、100モル%以下である。
【0032】
樹脂Cの軟化点は、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下であり、そして、耐高温オフセット性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上である。
樹脂Cの融点は、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下であり、そして、耐高温オフセット性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上である。
【0033】
樹脂Cの含有量は、結着樹脂中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0034】
結着樹脂の含有量は、樹脂組成物粒子中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0035】
(着色剤)
樹脂組成物粒子は、着色剤を含んでいてもよい。
着色剤としては、顔料及び染料が用いられ、トナーの画像濃度を向上させる観点から、顔料が好ましい。顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用できるが、有機顔料が好ましい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、無機系複合酸化物が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料が挙げられる。
マゼンタ有機顔料としては、例えば、モノアゾ化合物、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられ、より具体的には、C.I.ピグメントレッド2, 3, 5, 6, 7, 23, 48:1, 48:2, 48:3, 48:4, 57:1, 81:1, 122, 144, 146, 150, 166, 169, 177, 184, 185, 202, 206, 220, 221, 238, 254, 269、C.I.ピグメントバイオレッド19が挙げられる。これらの中でも、ナフトール化合物が好ましく、C.I.ピグメントレッド269がより好ましい。
【0036】
シアン有機顔料としては、例えば、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられ、より具体的には、C.I.ピグメントブルー1, 7, 15, 15:1, 15:2, 15:3, 15:4, 60, 62, 66が挙げられる。これらの中でも、銅フタロシアニン化合物が好ましく、C.I.ピグメントブルー15:3がより好ましい。
【0037】
イエロー有機顔料としては、例えば、モノアゾ化合物、ジスアゾ化合物、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、イソインドリン化合物、ベンズイミダゾロン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物が挙げられ、より具体的には、C.I.ピグメントイエロー17, 74, 93, 95, 109, 111, 128, 139, 151, 154, 155, 174, 180, 185が挙げられる。これらの中でも、モノアゾ化合物が好ましく、C.I.ピグメントイエロー74がより好ましい。
なお染料としては、例えば、アクリジン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、インジゴ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系の染料が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
【0038】
着色剤の含有量は、印刷物の画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0039】
(ワックス)
樹脂組成物粒子は、ワックスを含んでいてもよい。
ワックスとしては、例えば、炭化水素ワックス、エステルワックス、シリコーンワックス、脂肪酸アミドワックスが挙げられる。
炭化水素ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物又は石油系炭化水素ワックス;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックス等のポリオレフィンワックス等の合成炭化水素ワックスが挙げられる。
エステルワックスとしては、例えば、モンタンワックス等の鉱物又は石油系エステルワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系エステルワックス;ミツロウ等の動物系エステルワックスが挙げられる。
脂肪酸アミドワックスとしては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドが挙げられる。
これらの中でも、トナーの離型性の観点から、炭化水素ワックス又はエステルワックスが好ましく、炭化水素ワックスがより好ましく、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、及びポリオレフィンワックスから選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、パラフィンワックスが更に好ましい。
【0040】
ワックスの融点は、トナーの離型性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
ワックスの融点は、実施例に記載の方法によって求められる。
【0041】
ワックスの含有量は、トナーの離型性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
【0042】
樹脂組成物粒子は、例えば、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤を含んでいてもよい。
【0043】
〔陰イオン性界面活性剤〕
陰イオン性界面活性剤は、造粒時、又は融着時に使用した陰イオン性界面活性剤に限定されず、それ以前の各製造工程において使用された陰イオン性界面活性剤であってもよい。
陰イオン性界面活性剤は、好ましくは、炭素数8以上30以下のアルキル基を有する陰イオン性界面活性剤である。
アルキル基の炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
アルキル硫酸塩としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムが挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩は、好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩である。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。
これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩がより好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが更に好ましい。
【0044】
工程1の水系分散液において、陰イオン性界面活性剤の含有量は、樹脂組成物粒子中の結着樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
【0045】
〔有機溶剤〕
有機溶剤は、造粒時、又は融着時に使用した有機溶剤に限定されず、それ以前の各製造工程において使用された有機溶剤であってもよい。
有機溶剤は、溶解性パラメータ (SP値:POLYMER HANDBOOK THIRD EDITION 1989 by John Wiley & Sons, Inc) で表したとき、好ましくは15.0MPa
1/2以上、より好ましくは16.0MPa
1/2以上、更に好ましくは17.0MPa
1/2以上であり、そして、好ましくは26.0MPa
1/2以下、より好ましくは24.0MPa
1/2以下、更に好ましくは22.0MPa
1/2以下である。
有機溶剤としては、例えば、エタノール (26.0) 、イソプロパノール (23.5) 、イソブタノール (21.5) 等のアルコール系溶媒;アセトン (20.3) 、メチルエチルケトン (19.0) 、メチルイソブチルケトン (17.2) 、ジエチルケトン (18.0) 等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル (16.5) 、テトラヒドロフラン (18.6) 、ジオキサン (20.5) 等のエーテル系溶媒;酢酸エチル (18.6) 、酢酸イソプロピル (17.4) 等の酢酸エステル系溶媒が挙げられる。なお、各溶媒の後ろのカッコ内の数値はそれぞれのSP値 (単位:MPa
1/2) である。これらの中でも、水系媒体添加後の混合液からの除去が容易である観点から、ケトン系溶媒及び酢酸エステル系溶媒から選ばれる少なくとも1種が好ましく、メチルエチルケトン、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、酢酸エチル又はメチルエチルケトンが更に好ましい。
【0046】
工程1の水系分散液において、有機溶剤の含有量は、樹脂組成物粒子中の結着樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは500質量部以下、より好ましくは300質量部以下である。
【0047】
水系分散液に含まれる液体媒体中の水の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0048】
工程1は、例えば、懸濁法、凝集融着法のいずれの方法であってもよい。
【0049】
<懸濁法>
工程1を懸濁法により行う場合、工程1は、例えば、下記工程1A−1及び工程1A−2を含む工程であってもよい。
工程1A−1:結着樹脂が有機溶剤に溶解又は分散された混合液を得る工程
工程1A−2:前記混合液を、分散安定剤及び陰イオン性界面活性剤を含有する水系分散媒中に投入し、結着樹脂を含む樹脂組成物粒子の水系分散液を調製する工程
【0050】
〔工程1A−1〕
工程1A−1の混合液は、例えば、攪拌をしながら、有機溶剤中に結着樹脂を徐々に添加していき、溶解又は分散させればよい。
当該工程において、着色剤、ワックス、を添加してもよい。
【0051】
着色剤は、マスターバッチとして添加することが好ましい、
着色剤のマスターバッチは、着色剤及び結着樹脂を混合し、溶融混練することにより得られる。結着樹脂は、他の結着樹脂との親和性の観点から上述の結着樹脂が好ましい。溶融混練は、公知の方法により行うことができる。
マスターバッチにおける着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、そして、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。
着色剤のマスターバッチの添加量は、上述の樹脂組成物粒子における着色剤の含有量となる量である。
【0052】
ワックスは、ワックス粒子の分散液として添加することが好ましい。
分散媒としては、有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては上述の有機溶剤が挙げられる。
分散液は公知の方法により得ることができるが、例えば、有機溶剤中でワックスの融点付近まで温度を上昇させて、ワックスを溶解させた後、冷却してビーズミルにより分散処理し、ワックス粒子の分散液を製造することができる。
ワックス粒子の分散液の体積中位粒径(D
50)は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは200nm以上であり、そして、好ましくは600nm以下、より好ましくは550nm以下、更に好ましくは500nm以下である。ワックス粒子の体積中位粒径は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
ワックス粒子の分散液の添加量は、上述の樹脂組成物粒子におけるワックスの含有量となる量である。
結着樹脂は、その一部を結着樹脂の分散液として添加してもよい。
【0053】
〔工程1A−2〕
上述の混合液を、分散安定剤及び陰イオン性界面活性剤を含有する水系分散媒中に投入し、結着樹脂を含む樹脂組成物粒子の水系分散液を調製する。
当該工程で使用する装置としては、例えば、高剪断力を有する撹拌機を設置した竪型撹拌槽で行なうことができる。高剪断力を有する撹拌機の市販品としては、例えば、「ハイシェアミキサー」(IKA社製)、「T.K.ホモミクサー」、「T.K.フィルミックス」(以上、特殊機化工業株式会社製)、クレアミックス(エム・テクニック株式会社製)が挙げられる。
【0054】
水系分散媒中に含まれる分散安定剤としては、例えば、炭酸塩、リン酸金属塩、硫酸塩、金属水酸化物が挙げられる。
炭酸塩としては、例えば、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが挙げられる。リン酸金属塩としては、例えば、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸亜鉛が挙げられる。硫酸塩としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウムが挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄が挙げられる。これらの中でも、リン酸カルシウムが好ましい。
分散安定剤の含有量は、水系分散媒中、好ましくは0.01モル/L以上、より好ましくは0.03モル/L以上、更に好ましくは0.04モル/L以上であり、そして、好ましくは0.5モル/L以下、より好ましくは0.3モル/L以下、更に好ましくは0.2モル/L以下である。
【0055】
水系分散媒中に含まれる陰イオン性界面活性剤としては、上述の陰イオン性界面活性剤が挙げられる。懸濁法においては、これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸塩がより好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが更に好ましい。
【0056】
混合液を水系分散媒に投入した後、有機溶剤を除去してもよい。有機溶剤の除去は、例えば、系全体を攪拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶剤を留去する方法、系全体を攪拌しながら減圧し、有機溶剤を留去する方法が挙げられる。
【0057】
分離の容易性の観点から、混合液を水系分散媒に投入した後、鉱酸水溶液を添加し、分散安定剤を溶解させることが好ましい。
結着樹脂を含む樹脂組成物粒子の水系分散液を後述の工程2で用いる。
【0058】
<凝集融着法>
工程1を凝集融着法により行う場合、工程1は、例えば、下記工程1B−1〜工程1B−4を含んでいてもよい。ここでは、下記工程1B−1〜工程1B−4のいずれかの工程において、陰イオン性界面活性剤を添加する。
工程1B−1:結着樹脂が有機溶剤に溶解した溶液を得る工程
工程1B−2:工程1B−1で得られた溶液に、水系媒体を添加し、結着樹脂粒子の水系分散液を調製する工程
工程1B−3:結着樹脂粒子を凝集させて、凝集粒子を得る工程
工程1B−4:凝集粒子を融着し、結着樹脂を含む樹脂組成物粒子の水系分散液を調製する工程
【0059】
陰イオン性界面活性剤の添加時期は、工程1B−3において、凝集を停止際に加えることが好ましい。
陰イオン性界面活性剤の添加量は、上述の水系分散液における含有量となる量である。
【0060】
〔工程1B−1〕
溶液において、結着樹脂の含有量は、有機溶剤溶液中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
有機溶剤の例は、上述の有機溶剤の例示と同様である。
【0061】
溶液には、中和剤を添加することが好ましい。中和剤としては、例えば、塩基性物質が挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の含窒素塩基性物質が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0062】
結着樹脂の酸基に対する中和剤の使用当量(モル%)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
なお、中和剤の使用当量(モル%)は、下記式によって求めることができる。中和剤の使用当量は、100モル%以下の場合、中和度と同義であり、下記式で中和剤の使用当量が100モル%を超える場合には、中和剤が樹脂の酸基に対して過剰であることを意味し、この時の樹脂の中和度は100モル%とみなす。
中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{結着樹脂の加重平均酸価(mgKOH/g)×結着樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
【0063】
〔工程1B−2〕
工程1B−2において、水系媒体を添加することで転相乳化により、結着樹脂粒子の水系分散液が得られる。
水系媒体としては、水を主成分とするものが好ましく、結着樹脂粒子の分散液の分散安定性を向上させる観点から、水系媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、より更に好ましくは100質量%である。水としては、脱イオン水又は蒸留水が好ましい。
水系媒体に含まれうる水以外の成分としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶剤が挙げられる。
【0064】
添加する水系媒体の量は、結着樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、そして、好ましくは900質量部以下、より好ましくは600質量部以下である。
【0065】
工程1B−1で得られた溶液中の有機溶剤に対する水系媒体の質量比(水系媒体/有機溶剤)は、好ましくは20/80以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは97/3以下、より好ましくは93/7以下、更に好ましくは90/10以下である。
【0066】
水系媒体を添加後の後に、必要に応じて、得られた分散液から蒸留等により有機溶剤を除去する工程を有していてもよい。この場合、有機溶剤の残存量は、水系分散液中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは実質的に0%である。
【0067】
〔工程1B−3〕
工程1B−3では、結着樹脂粒子を凝集させて、凝集粒子を得る。
工程1B−3では、例えば、結着樹脂粒子の水系分散液、及び必要に応じて、ワックス、凝集剤、界面活性剤、着色剤等の任意成分を混合し、結着樹脂粒子と他の成分を凝集して凝集粒子を得ることが好ましい。
【0068】
工程1B−3は、好ましくは、次の工程1B−3−1を含み、続けて工程1B−3−2を行ってもよい。
工程1B−3−1:工程1B−2で得られた結着樹脂粒子を、水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程
工程1B−3−2:工程1B−3−1で得られた凝集粒子(1)に、結着樹脂を含有する樹脂粒子を更に添加して、該結着樹脂粒子を付着してなる凝集粒子(2)を得る工程
【0069】
<工程1B−3−1>
工程1B−3−1は、工程1B−2で得られた結着樹脂粒子を、水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(1)を得る工程である。
【0070】
〔凝集粒子(1)〕
凝集粒子(1)は、例えば、工程1B−2で得られた結着樹脂粒子の分散液に、必要に応じて着色剤、ワックス、凝集剤、界面活性剤等の任意成分を混合し、混合分散液を得た後に、凝集させて得られる。
結着樹脂粒子の分散液、及び必要に応じて、着色剤、ワックス、凝集剤、界面活性剤等の任意成分を水系媒体中で混合して、混合分散液を得ることが好ましい。そして、該混合分散液中の成分を凝集させて、凝集粒子(1)の分散液を得る際、凝集を効率的に行う観点から、凝集剤として、陰イオン性界面活性剤を添加することが好ましい。
なお、結着樹脂粒子に着色剤を混合しない場合には、該混合分散液中に着色剤を混合することが好ましい。
各成分の混合順序は、特に制限はなく、各成分をどのような順で添加してもよく、各成分を全て同時に添加してもよい。
【0071】
≪着色剤粒子≫
結着樹脂粒子を含む混合分散液中に着色剤を混合する場合、着色剤を水系媒体に分散した着色剤粒子分散液を用いることが好ましい。
着色剤分散液は、着色剤と水系媒体とを、ホモジナイザー、超音波分散機等の分散機を用いて分散して得ることが好ましい。
【0072】
着色剤の水系媒体への分散は、着色剤の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行うことが好ましい。
着色剤分散液の製造に用いる界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられる。
着色剤分散液中の界面活性剤の含有量は、着色剤の分散安定性を向上させる観点から、着色剤100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。
着色剤粒子の体積中位粒径(D
50)は、好ましくは50nm以上、より好ましくは80nm以上、更に好ましくは100nm以上であり、そして、好ましくは600nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下である。着色剤粒子の体積中位粒径は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
着色剤分散液の添加量は、上述の樹脂組成物粒子における着色剤の含有量となる量である。
【0073】
≪ワックス粒子≫
結着樹脂粒子を含む混合分散液中にワックスを混合する場合、ワックスを水系媒体に分散したワックス粒子分散液を用いることが好ましい。
ワックス粒子分散液は、界面活性剤を用いて得ることも可能であるが、ワックスと後述する樹脂粒子(F)とを混合して得ることが、凝集並びに融着時のワックスの脱離及び露出を抑制する観点から好ましい。ワックスとしては、上述のワックスが用いられる。
【0074】
(樹脂粒子(F))
樹脂粒子(F)を構成する樹脂は、例えば、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、水系媒体中でのワックスの分散性を向上させる観点から、上述の結着樹脂が挙げられる。
【0075】
(ワックス粒子分散液の製造)
ワックス粒子分散液は、ワックスと、樹脂粒子(F)の分散液とを混合することにより得られる。
ワックスと、樹脂粒子(F)を用いてワックス粒子を調製することで、樹脂粒子(F)によりワックス粒子が安定化され、界面活性剤を使用しなくてもワックスを水系媒体中に分散させることが可能となる。ワックス粒子の分散液中では、ワックス粒子の周囲に樹脂粒子(F)が多数吸着した構造を有していると考えられる。これにより、後の凝集工程において、結着樹脂粒子の集合体の中にワックス粒子が取り込まれやすくなる。
【0076】
ワックス粒子分散液は、例えば、ワックスと樹脂粒子(F)分散液と必要に応じて水系媒体とを、ワックスの融点以上の温度で、分散機を用いて分散することによって得られる。分散機としては、ワックス粒子の安定性の観点から、好ましくはホモジナイザー、高圧分散機、超音波分散機等であり、より好ましくは超音波分散機である。分散時間は用いる分散機により適宜設定すればよい。超音波分散機としては、例えば、超音波ホモジナイザーが挙げられる。その市販品としては、例えば、「US-150T」、「US-300T」、「US-600T」(株式会社日本精機製作所製)、「SONIFIER(登録商標)4020-400」、「SONIFIER(登録商標)4020-800」(ブランソン社製)が挙げられる。
また、分散機を使用する前に、ワックス、及び樹脂粒子(F)分散液、必要に応じて水系媒体を、あらかじめホモミクサー、ボールミル等の混合機で予備分散させておいてもよい。水系媒体の好ましい態様は、結着樹脂粒子を得る際に用いられるものと同様である。
【0077】
ワックス粒子の分散安定性を向上させる観点から、ワックス100質量部に対する樹脂粒子(F)の量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上であり、そして、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。
ワックス粒子分散液は、界面活性剤を含有してもよいが、界面活性剤を含有しないことが好ましい。界面活性剤を含有する場合、ワックス粒子中の界面活性剤の量は、ワックス100質量部に対し、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下であり、そして、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上である。
【0078】
ワックスと樹脂粒子(F)の分散液とを水系媒体中に添加し、ワックスの融点以上の温度で加熱しながら分散させるのが好ましい。
分散時の加熱温度は、ワックス粒子分散液の生産性を向上させる観点から、好ましくはワックスの融点以上且つ80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは、樹脂粒子(F)に含まれる樹脂の軟化点未満且つ100℃以下、より好ましくは98℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
【0079】
ワックス粒子の体積中位粒径(D
50)は、好ましくは50nm以上、より好ましくは150nm以上、更に好ましくは300nm以上であり、そして、好ましくは600nm以下、より好ましくは550nm以下、更に好ましくは500nm以下である。
ワックス粒子の粒径分布の変動係数(以下、「CV値」ともいう)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上であり、そして、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下である。ワックス粒子の体積中位粒径及びCV値は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
ワックス粒子の分散液の添加量は、上述の樹脂組成物粒子におけるワックスの含有量となる量である。
【0080】
混合分散液中の結着樹脂粒子の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
混合温度は、凝集を制御して目的の粒径の凝集粒子を得る観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。
【0081】
混合分散液を調製する際、結着樹脂粒子及び必要に応じて添加されるワックス粒子等の任意成分の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行ってもよい。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル類等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤を使用する場合、その使用量は、結着樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0082】
≪凝集剤≫
次に、混合分散液中の粒子を凝集させて、凝集粒子(1)の分散液を好適に得ることができる。凝集を効率的に行うために凝集剤を添加することが好ましい。
【0083】
凝集剤としては、例えば、第四級塩のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤;無機金属塩、無機アンモニウム塩、2価以上の金属錯体等の無機系凝集剤が挙げられる。凝集性を向上させ均一な凝集粒子を得る観点から、1価以上5価以下の無機系凝集剤が好ましく、1価以上2価以下の無機金属塩、無機アンモニウム塩がより好ましく、無機アンモニウム塩が更に好ましい。
【0084】
無機金属塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の金属塩、及びポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等の無機金属塩重合体が挙げられる。
無機アンモニウム塩としては、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムが挙げられる。
これらの中でも、凝集剤としては、硫酸アンモニウムがより好ましい。
凝集剤は、凝集を制御して所望の粒径の凝集粒子を得る観点から、例えば、2質量%以上40質量%以下の凝集剤水溶液として滴下することが好ましい。凝集剤の水溶液は、7.0以上9.0以下のpHであることが好ましい。
【0085】
凝集剤を用いて、例えば、0℃以上40℃以下の結着樹脂粒子を含む混合分散液に、樹脂の総量100質量部に対し5質量部以上50質量部以下の凝集剤を添加し、結着樹脂粒子を水系媒体中で凝集させて、凝集粒子(1)を得る。
更に、凝集を促進させ、所望の粒径及び粒径分布の凝集粒子を得る観点から、凝集剤を添加した後に分散液の温度を上げることが好ましい。保持する温度としては、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0086】
凝集粒子(1)の体積中位粒径(D
50)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。凝集粒子の体積中位粒径は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
【0087】
<工程1B−3−2>
工程1B−3−2は、工程1B−3−1で得られた凝集粒子(1)に、結着樹脂を含有する樹脂粒子を更に添加して、凝集粒子(1)に該結着樹脂粒子を付着してなる凝集粒子(2)を得る工程である。
【0088】
〔凝集粒子(2)〕
凝集粒子(2)を経ることで、凝集粒子(1)の成分をコア部分に含有し、添加した結着樹脂をシェル部分に含有するコアシェル構造を有するトナー粒子が得られる。
工程1B−3−2で添加する結着樹脂としては、上述の結着樹脂が挙げられ、非晶質樹脂が好ましい。
【0089】
工程1B−3−2は、例えば、凝集粒子(1)の分散液に、結着樹脂粒子の分散液を、40℃以上80℃以下の温度で、凝集粒子(1)100質量部に対し、0.03質量部/min以上1.0質量部/min以下の結着樹脂粒子の添加速度で添加することにより、凝集粒子(1)に更に結着樹脂粒子を付着させ、凝集粒子(2)の分散液を得ることが好ましい。
【0090】
工程1B−3−2で添加する結着樹脂(2)と、工程1B−3−1で添加する結着樹脂(1)との質量比[結着樹脂(2)/結着樹脂(1)]は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、更に好ましくは0.13以上、更に好ましくは0.15以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。
【0091】
凝集粒子(2)の体積中位粒径(D
50)は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下、更に好ましくは8μm以下である。
【0092】
工程1B−3においては、凝集粒子が、トナーとして適度な粒径に成長したところで凝集を停止させてもよい。
凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤として、陰イオン性界面活性剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
陰イオン性界面活性剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、結着樹脂の総量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、トナーへの残留を低減する観点から、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。凝集停止剤は、水溶液で添加してもよい。
【0093】
凝集停止剤を添加する温度は、トナーの生産性を向上させる観点から、凝集粒子の分散液を保持する温度と同じであることが好ましい。当該温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下である。
また、凝集粒子を安定化し、一旦凝集した粒子が融着前に離散するのを防ぐ観点から、凝集の停止とともに酸を添加して、凝集粒子の分散液を中性から酸性にするのが好ましい。
添加する酸に制限はなく、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、及び酢酸等が好ましく挙げられるが、添加に対してpH変化が迅速である観点から、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸及び酢酸から選ばれる少なくとも1種、より好ましくは塩酸、硫酸、及び硝酸から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくは硫酸である。
酸は、水溶液の状態で添加することが好ましい。また、凝集停止剤とともに添加してもよい。
【0094】
<工程1B−4>
工程1B−4は、工程1B−3で得られた凝集粒子を融着し、結着樹脂を含む樹脂組成物粒子の水系分散液を調製する工程である。
ここで、「工程1B−3で得られた凝集粒子」とは、工程1B−3−2を実施しない場合には工程1B−3−1で得られた凝集粒子(1)のことをいい、工程1B−3−2を実施する場合には工程1B−3−2で得られた凝集粒子(2)のことをいう。
本工程では、工程1B−4で得られた凝集粒子中の、主として物理的にお互いに付着している状態であった各粒子が融着されて一体となり、融着粒子が形成される。
凝集粒子(2)を融着させた場合には、コアシェル構造を有するトナー粒子を得ることができる。
【0095】
本工程においては、凝集粒子の融着性を向上させる観点から、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。保持時間は、特に限定されず、融着粒子の円形度をモニターし、適度な範囲となった時点で、融着を終了してもよい。
【0096】
融着粒子の体積中位粒径(D
50)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
融着粒子の円形度は、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上、更に好ましくは0.965以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
融着後の結着樹脂を含む樹脂組成物粒子の水系分散液を後述の工程2で用いることが好ましい。
【0097】
<工程2>
工程2では、樹脂組成物粒子を、ポリヒドロキシアミン化合物を含有する水溶液で洗浄する。
工程2では、はじめに、工程1で得られた水系分散液の固液分離を行うことが好ましい。
固液分離には、例えば、濾過、遠心分離により分離することができる。
濾過に用いる装置としては、例えば、フィルタープレス、ベルトプレス、スクリュープレス、シリンダープレスが挙げられる。また、吸引濾過法を用いてもよい。
【0098】
固液分離後に、ポリヒドロキシアミン化合物を含有する水溶液で洗浄を行うことが好ましい。
工程2で使用されるポリヒドロキシアミン化合物は、優れた帯電性を示すトナーを得る観点、及び残留有機溶剤を効率的に除去する観点から、下記式(1)で表されるものである。
【化4】
〔式中、R
1は、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
2は、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
3及びR
4は、炭素数1以上5以下のアルカンジイル基を示す。R
3及びR
4は、同一でも異なっていてもよい。〕
【0099】
R
1のアルキル基の炭素数は、トナーの帯電性をより向上させる観点、及び残留有機溶剤をより効率的に除去する観点から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは1である。
R
1のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられ、好ましくはメチル基及びエチル基から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはメチル基である。
【0100】
R
1のヒドロキシアルキル基の炭素数は、トナーの帯電性をより向上させる観点、及び残留有機溶剤をより効率的に除去する観点から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは1である。
R
1のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基が挙げられ、好ましくはヒドロキシメチル基及び2-ヒドロキシエチル基から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはヒドロキシメチル基である。
【0101】
これらの中でもR
1は、好ましくは、水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基及びヒドロキシエチル基から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくは水素原子、及びヒドロキシメチル基から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはヒドロキシメチル基である。
【0102】
R
2のアルキル基の炭素数は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下であり、そして、好ましくは1以上である。
R
2のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
R
2のヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下であり、そして、好ましくは1以上である。R
2のヒドロキシアルキル基の例としては、上述のR
1と同様のものが挙げられる。
これらの中でもR
2は、好ましくは、水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0103】
R
3及びR
4のアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは1である。
R
3及びR
4のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン-1, 2-ジイル基、テトラメチレン基が挙げられ、好ましくはメチレン基である。
【0104】
ポリヒドロキシアミン化合物としては、例えば、2-アミノ-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1, 3-プロパンジオール、4-アミノ-4-ヒドロキシプロピル-1, 7-ヘプタンジオール、2-(N-エチル)アミノ-1, 3-プロパンジオール、2-(N-エチル)アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオール、2-(N-デシル)アミノ-1, 3-プロパンジオール、2-(N-デシル)アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオールが挙げられる。
これらの中では、トナーの帯電性をより向上させる観点、及び残留有機溶剤をより効率的に除去する観点から、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1, 3-プロパンジオール、及び2-アミノ-2-エチル-1, 3-プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種が好ましく、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオール、及び2-アミノ-1, 3-プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオールが更に好ましい。
上記のポリヒドロキシアミン化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。なお、ポリヒドロキシアミン化合物は、常法により製造することができる。
【0105】
水溶液中のポリヒドロキシアミン化合物の含有量は、トナーの帯電性をより向上させる観点、及び残留有機溶剤をより効率的に除去する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0106】
樹脂組成物粒子を、ポリヒドロキシアミン化合物を含有する水溶液で洗浄する。洗浄は複数回行うことが好ましい。
洗浄において、水溶液の使用量は、トナーの帯電性をより向上させる観点、残留有機溶剤をより効率的に除去する観点、及び洗浄に用いる水を削減する観点から、結着樹脂100質量部に対し、好ましくは400質量部以下、より好ましくは350質量部以下、更に好ましくは300質量部以下であり、そして、トナーの帯電性をより向上させる観点、及び残留有機溶剤をより効率的に除去する観点から、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは150質量部以上である。
【0107】
洗浄において、ポリヒドロキシアミン化合物の使用量は、トナーの帯電性をより向上させる観点、及び残留有機溶剤をより効率的に除去する観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、トナーの帯電性をより向上させる観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。
【0108】
洗浄後、乾燥を行うことが好ましい。乾燥時の温度は、樹脂組成物粒子自体の温度が、結着樹脂のガラス転移温度の最小値より低くなるようにすることが好ましい。乾燥方法としては、例えば、真空低温乾燥法、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、フラッシュジェット法が挙げられる。乾燥後の水分含量は、トナーの帯電特性を向上させる観点から、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下に調整する。
樹脂組成物粒子を乾燥させることにより、トナー粒子を得ることができる。
【0109】
<工程3>
トナーの製造方法は、更に下記工程3を含んでいてもよい。
工程3:得られた樹脂組成物粒子と外添剤を混合する工程
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤の平均粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、そして、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは100nm以下である。
外添剤を用いて樹脂組成物粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0110】
トナー粒子の体積中位粒径(D
50)は、高画質の画像を得る観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
トナー粒子の円形度は、高画質の画像を得る観点から、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上、更に好ましくは0.965以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
トナー粒子のCV値は、高画質の画像を得る観点から、好ましくは12%以上、より好ましくは14%以上、更に好ましくは16%以上であり、そして、好ましくは30%以下、より好ましくは26%以下である。
【0111】
トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる。また、当該トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例】
【0112】
樹脂等の各物性値については次の方法により測定、評価した。
【0113】
[測定方法]
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度、融点、ガラス転移温度、及び結晶性指数〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで0℃まで冷却しそのまま1分間静止させる。その後、昇温速度50℃/minで測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側に現れるピークの温度を樹脂の吸熱の最高ピーク温度とする。樹脂の軟化点と吸熱の最高ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最高ピーク温度(℃))を結晶性指数とする。また、吸熱の最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば融点とし、20℃超の差であればガラス転移温度とする。
【0114】
〔樹脂粒子、着色剤粒子、及びワックス粒子の体積中位粒径D
50及びCV値〕
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」(株式会社堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で体積中位粒径D
50及び体積平均粒径を測定した。また、CV値は次の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
【0115】
〔樹脂粒子の分散液、着色剤粒子の分散液、及びワックス粒子の分散液の固形分濃度〕
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、水分量の変動幅0.05%)にて、水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100 − 水分(質量%)
【0116】
〔凝集粒子の体積中位粒径D
50〕
凝集粒子の体積中位粒径D
50は次のとおり測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・測定条件:試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、改めて3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径D
50を求めた。
【0117】
〔トナー粒子の体積中位粒径(D
50)〕
トナー粒子の体積中位粒径(D
50)は以下の方法で測定した。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mLと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)を求める。
【0118】
〔外添剤の個数平均粒径〕
外添剤の平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
【0119】
[評価方法]
〔帯電性〕
トナー 4質量部(0.4g)に対して、平均粒子径90μmのシリコンコートフェライトキャリア(関東電化工業株式会社製)96質量部(9.6g)を20ccのポリビンに入れたものを温度25℃相対湿度80%の環境下で10分間ボールミルにて混合し、「q/m Meter MODEL 210HS」(TREK社製)を用いて帯電量を測定する。
【0120】
〔有機溶剤の残留量〕
有機溶剤の残留量は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて、以下の方法により測定する。
1.ガスクロマトグラフィー(GC)の測定条件
(測定機器)
測定器:GC-14A(株式会社島津製作所製)
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
カラム:内径32mm×長さ2.1m
充填剤:PEG-20M(10%),Chromosorb W60/80 AW-DMCS
(測定条件)
昇温プログラム:
INITIAL TEMP:100℃
INITIAL TIME:10min
PROGRAM RATE:10℃/min
FINAL TEMP:200℃
FINAL TIME:10min
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
RANG:102
溶媒:ヘキサン
(検量線の作成(内部標準法))
エチルベンゼン及び酢酸エチルを各々0.1g精秤した後、ヘキサンでメスアップし、50ppmの標準液を調製する。標準液の測定結果より、酢酸エチルについて、エチルベンゼンとの濃度比及びピーク面積比を求め、検量線を作成する。
(内部標準液の調製)
エチルベンゼンを0.1g精秤した後、ヘキサンでメスアップし、50ppmの内部標準液を調製する。
(トナー中の酢酸エチルの定量)
20mL容のスクリュー管に試料0.5gを精秤した後、内部標準液(エチルベンゼンをヘキサンに溶解させた溶液)2mLを添加する。さらにヘキサン8mLを追加し、試料をボールミルで20分間溶解させる。
次いで、目開き0.2μmのフィルターでろ過し、得られたろ液を注入口より2μL注入する。
測定結果から、酢酸エチルについて、エチルベンゼンとのピーク面積比を求め、検量線を用いて、酢酸エチルとエチルベンゼンと濃度比を求めて、酢酸エチルの含有量を算出する。
上記の方法と同様に、メチルエチルケトンについても検量線を作成して、ガスクロマトグラフィーにより含有量を算出した。
【0121】
[結晶性ポリエステル樹脂の製造方法]
製造例C1(樹脂C−1)
1,6-ヘキサンジオール2128質量部、及び、ドデカン二酸3938質量部、ステアリン酸307質量部を、温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管を有する流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した後、200℃で2時間反応を行った。その後、160℃まで反応釜を冷却し、スチレンオリゴマーを添加し、160℃にて4時間加熱撹拌させた後、200℃まで5時間かけて昇温した。さらに、2-エチルヘキサン酸錫(II)20質量部、及び没食子酸2質量部を添加して、200℃で1時間反応させた。その後、200℃、8kPaにて所定の酸価になるまで反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C−1)を得た。各種物性を測定し表1に示した。
【0122】
[非晶質ポリエステル樹脂の製造方法]
製造例A1(樹脂A−1)
ビスフェノールAのポリプロピレンオキシド付加物(ポリプロピレンオキシドの平均付加モル数は2.2モル)5250質量部、及び、テレフタル酸1245質量部と、2-エチルヘキサン酸錫(II)50質量部、及び、没食子酸2質量部を、温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管を有する流下式コンデンサー、及び窒素導入管を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃で8時間反応させた後、8kPaにて1時間反応させた。その後200℃まで温度を下げ、アジピン酸438質量部、及び、トリメリット酸288質量部を添加して常圧で2時間反応させた後、8kPaにて目的の軟化点になるまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A−1)を得た。各種物性を測定し表1に示した。
【0123】
【表1】
【0124】
[結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液の製造]
製造例E1(分散液E−1)
結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C−1)をジェットミル粉砕機で10μmまで粉砕した。
500mL容の容器に、酢酸エチル100g及び結晶性ポリエステル樹脂10gを入れ、更に、0.3mmφのジルコニアビーズ300gを入れ、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)にて5時間振とうした後、ステンレス金網(200メッシュ)でジルコニアビーズを濾過し、結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液(分散液E−1)を得た。
【0125】
[トナーの製造方法(懸濁法)]
実施例1:トナー1の製造
〔ワックス分散液の製造〕
500mL容の容器に、酢酸エチル100g及びパラフィンワックス「HNP-9」(日本精鑞株式会社製、融点75℃)10gを入れ、70℃に昇温し完全に溶解することを確認した後、氷水槽に漬け、10分かけて20℃まで冷却し、その後、0.3mmφのジルコニアビーズ300gを入れ、5時間振とうし、ワックス分散液(分散液W−1)を得た。ワックスの体積中位粒径(D
50)は350nmであった。
【0126】
〔顔料マスターバッチの製造〕
非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A−1)100質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化工業株式会社製、C.I.ピグメントブルー15:3)20質量部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)にて撹拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練し、顔料マスターバッチP1を得た。
【0127】
〔混合液の製造〕
非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A−1)100質量部、顔料マスターバッチ(P1)20質量部、酢酸エチル150質量部を、パドル型撹拌翼を備えた2Lフラスコにて溶解させた後、結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液(分散液E−1)100質量部、ワックス分散液(分散液W−1)50質量部を加え、アトライター(日本コークス工業株式会社製)を用いて充分に混合、分散し、混合液M−1を得た(工程1A−1)。
【0128】
〔分散安定剤の水系分散液の製造〕
一方、高速撹拌装置「T.K.ホモミクサー」(プライミクス株式会社製)を備えた4Lの四つ口容器中にイオン交換水300質量部と0.1MのNa
3PO
4水溶液390質量部と陰イオン性界面活性剤「ネオペレックスG-15」(花王株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.4質量部を投入し、40℃に加温した。ここに、1.0MCaCl
2水溶液60質量部を添加し、回転数10,000rpmで撹拌して微細な分散安定剤Ca
3(PO
4)
2を含む水系分散液D−1を調製した。
【0129】
〔トナーの製造〕
(造粒工程)
混合液M−1を水系分散液D−1に投入して窒素気流下40℃に保持しつつ10,000rpmで4分間撹拌を続けて、造粒を行なった(工程1A−2)。その後、撹拌をパドル型撹拌翼に切り替え、40℃で2時間、減圧下で酢酸エチルを回収した。減圧留去終了後、容器中の内容物を室温まで冷却し、これに36N塩酸10倍に希釈した溶液400質量部を加えて分散安定剤を溶解した。
【0130】
(濾過・洗浄工程)
定性濾紙No.2 φ185(ADVANTEC社製)をブフナー漏斗にセットし、吸引瓶をポンプで300Torrの減圧状態に保ち、トナーの作製の工程で生成した水系分散体の濾過を行った。濾過後、濾過物の表面が乾かないうちに、2質量%の2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールの水溶液を結着樹脂100質量部に対して、100質量部ずつ2回に分けて、濾過物にかけながらブフナー漏斗に注ぎ入れ、分散安定剤と界面活性剤の洗浄を行った。トナー粒子の体積中位粒径(D
50)は表1に示す通りであった。
【0131】
(乾燥工程)
吸引瓶中に溜まった水は適宜、排水を行い、吸引瓶を300Torrの減圧状態に保ったまま、濾過物をブフナー漏斗上で1日乾燥を行った。その後、ブフナー漏斗から濾過物を取り出し、解砕後、角バット上に取り出し、温度30℃相対湿度20%で48時間保管することで乾燥を行った。
【0132】
(外添処理)
得られた上記トナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ「NAX-50」(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径40nm)1.0質量部、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル株式会社製、平均粒子径16nm)0.6質量部、ST、A0撹拌羽根を装着した10L容のヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)に投入し、3,000r/minにて2分間撹拌して、トナー1を得た。各種評価を行い、その結果を表1に示した。
【0133】
実施例2〜7:トナー2〜7の製造
濾過・洗浄工程におけるポリヒドロキシアミン化合物の水溶液を表に示す濃度に、表に示すポリヒドロキシアミン化合物とした以外は、実施例1と同様にしてトナー2〜7を得た。各種評価を行い、その結果を表1に示した。
【0134】
比較例1〜2:トナー51〜52の製造
濾過・洗浄工程におけるポリヒドロキシアミン化合物の水溶液を、イオン交換水に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナー51〜52を得た。各種評価を行い、その結果を表1に示した。
【0135】
[トナーの製造方法(凝集融着法)]
実施例8:トナー8
〔着色剤分散液の製造〕
銅フタロシアニン「ECB-301」(大日精化工業株式会社製)50g、非イオン性界面活性剤「エマルゲン150」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)5g及びイオン交換水200gを混合し、ホモジナイザーを用いて10分間分散させて、着色剤粒子を含有する着色剤分散液を得た。着色剤粒子の体積中位粒径(D
50)は137nmであり、固形分濃度は22質量%であった。
【0136】
〔結着樹脂粒子の水系分散液の製造〕
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた3L容の容器に、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A−1)135質量部、結晶性ポリエステル樹脂(樹脂C−1)15質量部、酢酸エチル450質量部を仕込み、73℃にて2時間かけて溶解させた(工程1B−1)。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を樹脂の酸価に対して中和度40モル%になるように添加して中和し、30分撹拌した。その後30℃に保持したままで280r/分(周速88m/分)の撹拌を行いながら、イオン交換水675質量部を77分かけて添加した(工程1B−2)。ついで30分かけて50℃に昇温させた後、酢酸エチルを減圧下で留去した。その後、280r/分(周速88m/分)の撹拌を行いながら水系分散液を30℃に冷却した後、陰イオン性界面活性剤「エマールE27C」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)を16.7g混合し、完全に溶解させた。その後分散液の固形分濃度を測定し、20質量%になるようにイオン交換水を加えて結着樹脂粒子の水系分散液を得た。
【0137】
〔ワックス粒子分散液の製造〕
1L容のビーカーに、脱イオン水225質量部、カルナウバワックス「カルナウバワックス1号」(株式会社加藤洋行製、融点83℃)5質量部、及びパラフィンワックス「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、融点75℃)45質量部を添加し、90〜95℃に温度を保持して溶融させて撹拌し、カルナウバワックスとパラフィンワックスとが一体となって溶融した溶融混合物を得た。ついで、オキサゾリン基含有ポリマー水溶液「エポクロス(登録商標)WS-700」(株式会社日本触媒製、不揮発分25質量%、数平均分子量20,000)1.7質量部を添加し、90〜95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US-600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて15分間分散処理を行った。ここに塩化ビニル系共重合エマルション「ビニブラン(登録商標)701」(日信化学工業株式会社製、固形分30質量%、酸価46mgKOH/g、ガラス転移温度70℃、平均粒径30nm)9.0質量部を添加し、超音波ホモジナイザーにて15分間分散処理を行った後に室温まで冷却した。得られた分散物に脱イオン水を加え、固形分濃度を20質量%に調製し、ワックス粒子分散液を得た。得られたワックス粒子分散液の体積中位粒径(D
50)は440nm、CV値は30%であった。
【0138】
〔トナーの製造〕
2L容のフラスコに、結着樹脂組成物の水系分散液300質量部、脱イオン水36質量部、及びワックス粒子の分散液31質量部、温度25℃下で、高速撹拌機「T.K.ホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製、2M-03型)にて6,000rpmの条件で撹拌、混合した。次に、撹拌を継続しながら、硫酸アンモニウム19質量部を脱イオン水286質量部に溶解した水溶液を25℃で1分かけて滴下した後、更に5分間撹拌を行い混合物を得た。
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した2L容の四つ口フラスコに、該混合物を入れ、55℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径(D
50)が4.8μmになるまで55℃で保持し、凝集粒子の分散液を得た(工程1B−3)。
得られた凝集粒子分散液に、陰イオン性界面活性剤「エマール(登録商標)E-27C」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効濃度27質量%)12質量部を脱イオン水469質量部で希釈した水溶液を添加した後、1mol/L硫酸(キシダ化学株式会社製)を添加し、系内のpHを4.8に調製した。その後、70℃まで1時間かけて昇温し、70℃で1時間保持して、融着粒子の分散液を得た(工程1B−4)。
【0139】
(濾過・洗浄工程)
定性濾紙No.2 φ185(ADVANTEC社製)をブフナー漏斗にセットし、吸引瓶をポンプで300Torrの減圧状態に保ち、トナーの作製の工程で生成した水系分散体の濾過を行った。濾過後、濾過物の表面が乾かないうちに、結着樹脂100質量部に対して、表1に示す濃度の2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール水溶液を100質量部ずつ2回に分けて、濾過物にかけながらブフナー漏斗に注ぎ入れ、陰イオン性界面活性剤の洗浄を行った。トナー粒子の体積中位粒径(D
50)は表1に示す通りであった。
【0140】
(乾燥工程)
吸引瓶中に溜まった水は適宜、排水を行い、吸引瓶を300Torrの減圧状態に保ったまま、濾過物をブフナー漏斗上で1日乾燥を行った。その後、ブフナー漏斗から濾過物を取り出し、解砕後、角バット上に取り出し、温度30℃相対湿度20%で48時間保管することで乾燥を行った。
【0141】
(外添工程)
上記トナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ「NAX-50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒子径40nm)1.0質量部、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒子径16nm)0.6質量部、酸化チタン「JMT-150IB」(テイカ株式会社製、個数平均粒子径15nm)0.5質量部を、ST、A0撹拌羽根を装着した10Lヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)に投入し、3,000rpmにて2分間撹拌して、トナー8を得た。各種評価を行い、その結果を表1に示した。
【0142】
比較例3:トナー53
濾過・洗浄工程におけるポリヒドロキシアミン化合物の水溶液を、イオン交換水に変更した以外は、実施例8と同様にしてトナー53を得た。各種評価を行い、その結果を表1に示した。
【0143】
【表2】
【0144】
表2中の略語は以下のとおりである。
EA:酢酸エチル
MEK:メチルエチルケトン
1-1:2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール
1-2:2-アミノ-1,3-プロパンジオール
【0145】
実施例及び比較例に示されるように、実施例のトナーは、ポリヒドロキシアミン化合物を含有する水溶液で洗浄することで、帯電性に優れ、残留溶媒が低減することがわかる。