特許第6835425号(P6835425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6835425建築物高さ算出装置、建築物高さ算出方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835425
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】建築物高さ算出装置、建築物高さ算出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20210215BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20210215BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   G06T7/00 640
   G06T7/60 180B
   G01B11/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-502946(P2019-502946)
(86)(22)【出願日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2018006587
(87)【国際公開番号】WO2018159468
(87)【国際公開日】20180907
【審査請求日】2019年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2017-37556(P2017-37556)
(32)【優先日】2017年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】山下 喜宏
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−366977(JP,A)
【文献】 特開2014−185947(JP,A)
【文献】 特開2007−298332(JP,A)
【文献】 特開2004−086266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 − 7/90
G06T 1/00
G01B 11/00
G01C 3/06
G01S 13/89
G01S 17/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象となる建築物の部分毎の位置座標及び高さを含む三次元点群データを取得する、データ取得部と、
取得された前記三次元点群データに対して、それに含まれる前記位置座標及び前記高さに基づいて、クラスタリングを行なって、前記建築物における高さの分布を作成し、作成した前記分布に基づいて、前記建築物の最も高い部分を推定する、クラスタリング部と、
前記三次元点群データから、前記最も高い部分の高さと、前記建築物が建っている場所の地面の高さとを特定し、特定した、前記最も高い部分の高さと前記建築物が建っている場所の地面の高さとから、前記建築物の前記地面からの高さを算出する、高さ算出部と、
を備え
前記クラスタリング部が、前記高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定後、前記最も高さが高いクラスタに対して、再度クラスタリングを行って、前記最も高さが高いクラスタを複数のクラスタに分割し、分割されたクラスタの中から最も高さが高いクラスタを特定することによって、前記建築物の最も高い部分を推定する、
ことを特徴とする建築物高さ算出装置。
【請求項2】
前記クラスタリング部が、前記クラスタリングの後に、前記建築物における高さの分布を作成し、前記高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定することによって、前記建築物の最も高い部分を推定する、
請求項1に記載の建築物高さ算出装置。
【請求項3】
前記高さ算出部は、前記建築物が存在している特定のエリアにおける地点が指定された場合に、前記特定のエリアの三次元点群データから、指定された前記地点の高さを特定し、更に、特定した高さと、前記特定のエリアにおける標高を特定する基準データとの差分を求め、そして、前記建築物の最も高い部分における標高を特定する基準データに、求めた前記差分を加算して、前記建築物が建っている場所の地面の高さとする、
請求項1または2に記載の建築物高さ算出装置。
【請求項4】
(a)対象となる建築物の部分毎の位置座標及び高さを含む三次元点群データを取得する、ステップと、
(b)取得された前記三次元点群データに対して、それに含まれる前記位置座標及び前記高さに基づいて、クラスタリングを行なって、前記建築物における高さの分布を作成し、作成した前記分布に基づいて、前記建築物の最も高い部分を推定する、ステップと、
(c)前記三次元点群データから、前記最も高い部分の高さと、前記建築物が建っている場所の地面の高さとを特定し、特定した、前記最も高い部分の高さと前記建築物が建っている場所の地面の高さとから、前記建築物の前記地面からの高さを算出する、ステップと、
を有し、
前記(b)のステップにおいて、前記高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定後、前記最も高さが高いクラスタに対して、再度クラスタリングを行って、前記最も高さが高いクラスタを複数のクラスタに分割し、分割されたクラスタの中から最も高さが高いクラスタを特定することによって、前記建築物の最も高い部分を推定する、
ことを特徴とする建築物高さ算出方法。
【請求項5】
前記(b)のステップにおいて、前記クラスタリングの後に、前記建築物における高さの分布を作成し、前記高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定することによって、前記建築物の最も高い部分を推定する、
請求項に記載の建築物高さ算出方法。
【請求項6】
前記(c)のステップにおいて、前記建築物が存在している特定のエリアにおける地点が指定された場合に、前記特定のエリアの三次元点群データから、指定された前記地点の高さを特定し、更に、特定した高さと、前記特定のエリアにおける標高を特定する基準データとの差分を求め、そして、前記建築物の最も高い部分における標高を特定する基準データに、求めた前記差分を加算して、前記建築物が建っている場所の地面の高さとする、
請求項4または5に記載の建築物高さ算出方法。
【請求項7】
コンピュータに、
(a)対象となる建築物の部分毎の位置座標及び高さを含む三次元点群データを取得する、ステップと、
(b)取得された前記三次元点群データに対して、それに含まれる前記位置座標及び前記高さに基づいて、クラスタリングを行なって、前記建築物における高さの分布を作成し、作成した前記分布に基づいて、前記建築物の最も高い部分を推定する、ステップと、
(c)前記三次元点群データから、前記最も高い部分の高さと、前記建築物が建っている場所の地面の高さとを特定し、特定した、前記最も高い部分の高さと前記建築物が建っている場所の地面の高さとから、前記建築物の前記地面からの高さを算出する、ステップと、
を実行させ
前記(b)のステップにおいて、前記高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定後、前記最も高さが高いクラスタに対して、再度クラスタリングを行って、前記最も高さが高いクラスタを複数のクラスタに分割し、分割されたクラスタの中から最も高さが高いクラスタを特定することによって、前記建築物の最も高い部分を推定する、プログラム。
【請求項8】
前記(b)のステップにおいて、前記クラスタリングの後に、前記建築物における高さの分布を作成し、前記高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定することによって、前記建築物の最も高い部分を推定する、
請求項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記(c)のステップにおいて、前記建築物が存在している特定のエリアにおける地点が指定された場合に、前記特定のエリアの三次元点群データから、指定された前記地点の高さを特定し、更に、特定した高さと、前記特定のエリアにおける標高を特定する基準データとの差分を求め、そして、前記建築物の最も高い部分における標高を特定する基準データに、求めた前記差分を加算して、前記建築物が建っている場所の地面の高さとする、請求項7または8に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物高さ算出装置、建築物高さ算出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ上で立体地図を作成する際の基礎データとして、地表面の地形、植生及び建築物を数値データで表現した数値標高モデル(DEM:Digital Elevation Model)が利用されている(例えば、非特許文献1参照)。また、数値標高モデルから植生及び建築物を除いた地形だけのモデルは、特に、数値地形モデル(DTM:Digital Terrain Model)と呼ばれている。
【0003】
一般に、数値標高モデルは、航空レーザ測量によって作成される。具体的には、航空機から、地表に向けてレーザ光線を照射し、そして、反射されたレーザ光が再び航空機に到達するまでの時間を計測し、この計測された時間から、地表面、植物、建物の高さが算出される。その後、算出された高さと、計測時の航空機の位置とが関連付けられた三次元点群データが生成され、この三次元点群データが数値標高モデルとなる。
【0004】
また、特許文献1は、数値標高モデルから、建築物の3次元モデルを生成する技術を開示している。具体的には、特許文献1では、まず、数値標高モデルを構成する三次元点群データが取得される。そして、2次元の電子地図データから、対象となる建築物が存在している領域が特定され、特定された領域を三次元点群データに照合することによって、建築物のみを示す三次元点群データが抽出される。その後、抽出された三次元点群データから、建築物の高さが特定され、3次元モデルが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−242497号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“DEM(数値標高モデル)”,[online],国土交通省国土地理院,[平成27年2月16日検索],インターネット<URL:http://www.gsi.go.jp/KIDS/KIDS16.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、三次元点群データで特定される高さが、そのまま、建築物の高さとみなされる。このため、三次元点群データにノイズが発生していると、高さを誤った3次元モデルが生成されてしまう。また、建築物にアンテナ等の突起物が取り付けられていると、突起物の先端の高さが屋根の高さとみなされる場合があり、この場合も、高さを誤った3次元モデルが生成されてしまう。
【0008】
本発明の目的の一例は、上記問題を解消し、三次元点群データから建築物の高さを算出する際の精度を向上し得る、建築物高さ算出装置、建築物高さ算出方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における建築物高さ算出装置は、
対象となる建築物の部分毎の位置座標及び高さを含む三次元点群データを取得する、データ取得部と、
取得された前記三次元点群データに対して、それに含まれる前記位置座標及び前記高さに基づいて、クラスタリングを行なって、前記建築物における高さの分布を作成し、作成した前記分布に基づいて、前記建築物の最も高い部分を推定する、クラスタリング部と、
前記三次元点群データから、前記最も高い部分の高さと、前記建築物が建っている場所の地面の高さとを特定し、特定した、前記最も高い部分の高さと前記建築物が建っている場所の地面の高さとから、前記建築物の前記地面からの高さを算出する、高さ算出部と、を備えている、ことを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における建築物高さ算出方法は、
(a)対象となる建築物の部分毎の位置座標及び高さを含む三次元点群データを取得する、ステップと、
(b)取得された前記三次元点群データに対して、それに含まれる前記位置座標及び前記高さに基づいて、クラスタリングを行なって、前記建築物における高さの分布を作成し、作成した前記分布に基づいて、前記建築物の最も高い部分を推定する、ステップと、
(c)前記三次元点群データから、前記最も高い部分の高さと、前記建築物が建っている場所の地面の高さとを特定し、特定した、前記最も高い部分の高さと前記建築物が建っている場所の地面の高さとから、前記建築物の前記地面からの高さを算出する、ステップと、
を有する、ことを特徴とする。
【0011】
更に、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるプログラムは、
コンピュータに、
(a)対象となる建築物の部分毎の位置座標及び高さを含む三次元点群データを取得する、ステップと、
(b)取得された前記三次元点群データに対して、それに含まれる前記位置座標及び前記高さに基づいて、クラスタリングを行なって、前記建築物における高さの分布を作成し、作成した前記分布に基づいて、前記建築物の最も高い部分を推定する、ステップと、
(c)前記三次元点群データから、前記最も高い部分の高さと、前記建築物が建っている場所の地面の高さとを特定し、特定した、前記最も高い部分の高さと前記建築物が建っている場所の地面の高さとから、前記建築物の前記地面からの高さを算出する、ステップと、
を実行させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、三次元点群データから建築物の高さを算出する際の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態における建築物高さ算出装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施の形態で用いられる三次元点群データの一例を示す図である。
図3図3は、高さの算出対象となる建築物が存在するエリアの二次元の電子地図を模式的に示す図である。
図4図4(a)は、高さ算出部13による補正処理を説明する斜視図であり、図4(b)は、高さ算出部13による補正処理を説明する側面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態における建築物高さ算出装置の動作を示すフロー図である。
図6図6は、本発明の実施の形態における建築物高さ算出装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における、建築物高さ算出装置、建築物高さ算出方法、及びプログラムについて、図1図6を参照しながら説明する。
【0015】
[装置構成]
最初に、図1を用いて、本実施の形態における建築物高さ算出装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態における建築物高さ算出装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示す、本実施の形態における建築物高さ算出装置10は、三次元点群データから、建築物の高さを算出するための装置である。図1に示すように、建築物高さ算出装置10は、データ取得部11と、クラスタリング部12と、高さ算出部13とを備えている。
【0017】
データ取得部11は、対象となる建築物(以下「対象建築物」と表記する。)の部分毎の位置座標及び高さを含む三次元点群データを取得する。クラスタリング部12は、まず、取得された三次元点群データに対して、それに含まれる位置座標及び高さに基づいて、クラスタリングを行なって、対象建築物における高さの分布を作成する。次いで、クラスタリング部12は、作成した分布に基づいて、対象建築物の最も高い部分を推定する。
【0018】
高さ算出部13は、まず、三次元点群データから、推定された最も高い部分の高さと、建築物が建っている場所の地面の高さとを特定する。次いで、特定した、最も高い部分の高さと建築物が建っている場所の地面の高さとから、建築物の地面からの高さを算出する。
【0019】
このように、本実施の形態では、三次元点群データに対して、位置座標及び高さに基づいてクラスタリングが行なわれる。このため、得られる高さ分布は、3軸方向の座標値から作成されており、突起の影響が抑制され、ノイズの少ないものとなっている。この結果、三次元点群データから建築物の高さを算出する際の精度の向上が図られる。
【0020】
続いて、図2及び図3を用いて、本実施の形態における建築物高さ算出装置10の構成をより具体的に説明する。図2は、本発明の実施の形態で用いられる三次元点群データの一例を示す図である。図3は、高さの算出対象となる建築物が存在するエリアの二次元の電子地図を模式的に示す図である。
【0021】
まず、本実施の形態において用いられる三次元点群データは、データ取得部11によって取得される前に、特定のエリアにおける三次元点群データから、対象建築物に相当する部分を抽出することによって得られたデータである。図2に示すように、三次元点群データは、位置座標(x、y)と高さzとを含んでいる。なお、位置座標としては、緯度及び経度、または世界測地系などが挙げられ、高さとしては標高などが挙げられる。
【0022】
また、このときのデータの抽出は、例えば、既存の技術を用いて、図3に示す二次元の電子地図から、対象建築物(斜線の部分)の外形を抽出し、抽出された外形内に含まれる全ての点の座標を、特定のエリアにおける三次元点群データから抽出することによって行なわれる。
【0023】
クラスタリング部12は、本実施の形態では、図2に示すデータのx、y、zの値をまとめて、クラスタリングを実行する。このため、zの値が近似していても、x、yの値が遠いデータは、別のクラスタに分類されることになる。
【0024】
また、クラスタリング部12は、本実施の形態では、クラスタリングの後に、対象建築物における高さの分布を作成すると、高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定することによって、対象建築物の最も高い部分を推定する。最も高さが高いクラスタを特定する際、クラスタに含まれる母数に一定の閾値を設け、閾値以上のクラスタに含まれる母数を持つクラスタだけを特定対象とすることで、ノイズやアンテナなどの小さな突起物を排除することができる。
【0025】
更に、クラスタリング部12は、本実施の形態では、高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定後、この特定した最も高さが高いクラスタに対して、再度クラスタリングを行なって、最も高さが高いクラスタを複数のクラスタに分割することもできる。この場合、クラスタリング部12は、分割されたクラスタの中から最も高さが高いクラスタを特定することによって、建築物の最も高い部分を推定する。この態様は、最初に特定された最も高さが高いクラスタに含まれる母数が、一定数以上である場合に有効である。クラスタに含まれる母数が多すぎると、高さの算出精度が低下するからである。
【0026】
高さ算出部13は、本実施の形態では、建築物が存在している特定のエリアにおける地点が指定された場合に、特定のエリアの三次元点群データから、指定された地点の高さを特定し、特定した高さを、建築物が建っている場所の地面の高さとする。なお、地点の指定は、例えば、建築物高さ算出装置10の管理者、ユーザ等が、特定のエリアにおける写真又は地図等から道路といった明らかに地面と判断できる地点を指定することによって行なわれる。
【0027】
更に、高さ算出部13は、特定のエリアにおける標高を特定する基準データを用いて、指定された地点(具体的には、明らかに地面と判断できる地点)の高さを補正し、補正後の高さを、建築物が建っている場所の地面の高さとすることもできる。標高を特定する基準データとしては、国等によって整備された基準データ、具体的には、日本国においては、国土地理院が整備した基盤地図情報数値標高モデルが挙げられる。基盤地図情報数値標高モデルは、5m間隔又は10m間隔で、地図上の標高の値が付与された地形モデルである。
【0028】
ここで、図4(a)及び(b)を用いて、高さ算出部13による補正処理について説明する。図4(a)は、高さ算出部13による補正処理を説明する斜視図であり、図4(b)は、高さ算出部13による補正処理を説明する側面図である。また、図4(a)において、バツ印は指定された前記明らかに地面と判断出来る地点を示している。
【0029】
まず、高さ算出部13は、エリアAにおいて、明らかに地面と判断出来る地点が指定されると、エリアAの三次元点群データから、指定された地点の高さH1を特定する。続いて、高さ算出部13は、基盤地図情報数値標高モデルにおいて、エリアAの指定された地点を含む区画を特定し、更に、特定した区間の標高H2を特定する。
【0030】
そして、高さ算出部13は、高さH1と標高H2とを比較し、両者の間に差分が存在する場合は、高さH1と標高H2との差分を補正値△Hとして保持する。次に、高さ算出部13は、基板地図情報数値標高モデルにおいて、対象建築物の最も高い部分の位置座標(水平座標)に相当する位置を特定し、更に、その位置の標高h2を特定する。そして、高さ算出部13は、特定した標高h2に補正値△Hを加算することで、三次元点群データにおける対象建築物の最も高い部分の真下に位置する地面の高さh1を算出する。その後、高さ算出部13は、対象建築物の最も高い部分の三次元点群データにおける高H3さから、算出した地面の高さh1を減算することで、建築物の地面からの高さを算出する。
【0031】
[装置動作]
次に、本実施の形態における建築物高さ算出装置10の動作について図5を用いて説明する。図5は、本発明の実施の形態における建築物高さ算出装置の動作を示すフロー図である。以下の説明においては、適宜図1図4を参酌する。また、本実施の形態では、建築物高さ算出装置を動作させることによって、建築物高さ算出方法が実施される。よって、本実施の形態における建築物高さ算出方法の説明は、以下の建築物高さ算出装置の動作説明に代える。
【0032】
図5に示すように、最初に、データ取得部11が、対象建築物の部分毎の位置座標及び高さを含む、三次元点群データを取得する(ステップA1)。
【0033】
次に、クラスタリング部12が、ステップA1で取得された三次元点群データに対して、それに含まれるx、y、zの値をまとめて、クラスタリングを実行して、高さの分布を作成する(ステップA2)。
【0034】
続いて、クラスタリング部12は、ステップA2で作成された高さ分布に基づいて、対象建築物の最も高い部分を推定する(ステップA3)。具体的には、クラスタリング部12は、最も高さが高いクラスタを特定することによって、対象建築物の最も高い部分を推定する。
【0035】
また、クラスタリング部12は、高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定後に、この特定した最も高さが高いクラスタに対して、再度クラスタリングを行なって、最も高さが高いクラスタを複数のクラスタに分割することもできる。この場合、クラスタリング部12は、分割されたクラスタの中から最も高さが高いクラスタを特定することによって、建築物の最も高い部分を推定する。
【0036】
次に、高さ算出部13は、三次元点群データから、推定された最も高い部分の高さを特定する(ステップA4)。続いて、高さ算出部13は、建築物が存在している特定のエリアの指定された地点(明らかに地面であると判断された地点)の高さを、特定のエリアの三次元点群データから特定し、特定した高さを建築物が建っている場所の地面の高さとする(ステップA5)。なお、ステップA5では、高さ算出部13は、特定のエリアにおける基盤地図情報数値標高モデルを用いて、指定された地点の高さを補正することもできる。
【0037】
その後、高さ算出部13は、ステップA4で特定した最も高い部分の高さと、ステップA5で特定した建築物が建っている場所の地面の高さとから、建築物の地面からの高さを算出する(ステップA6)。
【0038】
以上のように、ステップA1〜A6が実行されると、建築物の地面からの高さが算出される。そして、本実施の形態では、建築物の最も高い部分は、三次元点群データの位置座標と高さとに基づいてクラスタリングによって推定されているので、ノイズ又は突起物による推定の誤りの発生が抑制される。このため、本実施の形態によれば、三次元点群データから建築物の高さを算出する際の精度の向上が図られることになる。
【0039】
[プログラム]
本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、図5に示すステップA1〜A6を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態における建築物高さ算出装置と建築物高さ算出方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、データ取得部11、クラスタリング部12、及び高さ算出部13として機能し、処理を行なう。
【0040】
また、本実施の形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、データ取得部11、クラスタリング部12、及び高さ算出部13のいずれかとして機能しても良い。
【0041】
ここで、本実施の形態におけるプログラムを実行することによって、建築物高さ算出装置10を実現するコンピュータについて図6を用いて説明する。図6は、本発明の実施の形態における建築物高さ算出装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0042】
図6に示すように、コンピュータ110は、CPU(Central Processing Unit)111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。なお、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていても良い。
【0043】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0044】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0045】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0046】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0047】
なお、本実施の形態における建築物高さ算出装置10は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによっても実現可能である。更に、建築物高さ算出装置10は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0048】
上述した実施の形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)〜(付記12)によって表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0049】
(付記1) 対象となる建築物の部分毎の位置座標及び高さを含む三次元点群データを取得する、データ取得部と、
取得された前記三次元点群データに対して、それに含まれる前記位置座標及び前記高さに基づいて、クラスタリングを行なって、前記建築物における高さの分布を作成し、作成した前記分布に基づいて、前記建築物の最も高い部分を推定する、クラスタリング部と、
前記三次元点群データから、前記最も高い部分の高さと、前記建築物が建っている場所の地面の高さとを特定し、特定した、前記最も高い部分の高さと前記建築物が建っている場所の地面の高さとから、前記建築物の前記地面からの高さを算出する、高さ算出部と、を備えている、ことを特徴とする建築物高さ算出装置。
【0050】
(付記2) 前記クラスタリング部が、前記クラスタリングの後に、前記建築物における高さの分布を作成し、前記高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定することによって、前記建築物の最も高い部分を推定する、
付記1に記載の建築物高さ算出装置。
【0051】
(付記3) 前記クラスタリング部が、前記高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定後、前記最も高さが高いクラスタに対して、再度クラスタリングを行って、前記最も高さが高いクラスタを複数のクラスタに分割し、分割されたクラスタの中から最も高さが高いクラスタを特定することによって、前記建築物の最も高い部分を推定する
付記1に記載の建築物高さ算出装置。
【0052】
(付記4) 前記高さ算出部は、前記建築物が存在している特定のエリアにおける地点が指定された場合に、前記特定のエリアの三次元点群データから、指定された前記地点の高さを特定し、更に、特定した高さと、前記特定のエリアにおける標高を特定する基準データとの差分を求め、そして、前記建築物の最も高い部分における標高を特定する基準データに、求めた前記差分を加算して、前記建築物が建っている場所の地面の高さとする、
付記1から3のいずれかに記載の建築物高さ算出装置。
【0053】
(付記5)(a)対象となる建築物の部分毎の位置座標及び高さを含む三次元点群データを取得する、ステップと、
(b)取得された前記三次元点群データに対して、それに含まれる前記位置座標及び前記高さに基づいて、クラスタリングを行なって、前記建築物における高さの分布を作成し、作成した前記分布に基づいて、前記建築物の最も高い部分を推定する、ステップと、
(c)前記三次元点群データから、前記最も高い部分の高さと、前記建築物が建っている場所の地面の高さとを特定し、特定した、前記最も高い部分の高さと前記建築物が建っている場所の地面の高さとから、前記建築物の前記地面からの高さを算出する、ステップと、
を有する、ことを特徴とする建築物高さ算出方法。
【0054】
(付記6) 前記(b)のステップにおいて、前記クラスタリングの後に、前記建築物における高さの分布を作成し、前記高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定することによって、前記建築物の最も高い部分を推定する、
付記5に記載の建築物高さ算出方法。
【0055】
(付記7) 前記(b)のステップにおいて、前記高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定後、前記最も高さが高いクラスタに対して、再度クラスタリングを行って、前記最も高さが高いクラスタを複数のクラスタに分割し、分割されたクラスタの中から最も高さが高いクラスタを特定することによって、前記建築物の最も高い部分を推定する、
付記5に記載の建築物高さ算出方法。
【0056】
(付記8) 前記(c)のステップにおいて、前記建築物が存在している特定のエリアにおける地点が指定された場合に、前記特定のエリアの三次元点群データから、指定された前記地点の高さを特定し、更に、特定した高さと、前記特定のエリアにおける標高を特定する基準データとの差分を求め、そして、前記建築物の最も高い部分における標高を特定する基準データに、求めた前記差分を加算して、前記建築物が建っている場所の地面の高さとする、付記5〜7のいずれかに記載の建築物高さ算出方法。
【0057】
(付記9)コンピュータに、
(a)対象となる建築物の部分毎の位置座標及び高さを含む三次元点群データを取得する、ステップと、
(b)取得された前記三次元点群データに対して、それに含まれる前記位置座標及び前記高さに基づいて、クラスタリングを行なって、前記建築物における高さの分布を作成し、作成した前記分布に基づいて、前記建築物の最も高い部分を推定する、ステップと、
(c)前記三次元点群データから、前記最も高い部分の高さと、前記建築物が建っている場所の地面の高さとを特定し、特定した、前記最も高い部分の高さと前記建築物が建っている場所の地面の高さとから、前記建築物の前記地面からの高さを算出する、ステップと、
を実行させる、プログラム。
【0058】
(付記10) 前記(b)のステップにおいて、前記クラスタリングの後に、前記建築物における高さの分布を作成し、前記高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定することによって、前記建築物の最も高い部分を推定する、
付記9に記載のプログラム
【0059】
(付記11) 前記(b)のステップにおいて、前記高さの分布から最も高さが高いクラスタを特定後、前記最も高さが高いクラスタに対して、再度クラスタリングを行って、前記最も高さが高いクラスタを複数のクラスタに分割し、分割されたクラスタの中から最も高さが高いクラスタを特定することによって、前記建築物の最も高い部分を推定する、
付記9に記載のプログラム
【0060】
(付記12) 前記(c)のステップにおいて、前記建築物が存在している特定のエリアにおける地点が指定された場合に、前記特定のエリアの三次元点群データから、指定された前記地点の高さを特定し、更に、特定した高さと、前記特定のエリアにおける標高を特定する基準データとの差分を求め、そして、前記建築物の最も高い部分における標高を特定する基準データに、求めた前記差分を加算して、前記建築物が建っている場所の地面の高さとする、付記9〜11のいずれかに記載のプログラム
【0061】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0062】
この出願は、2017年2月28日に出願された日本出願特願2017−37556を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明によれば、三次元点群データから建築物の高さを算出する際の精度を向上することができる。本発明は、建築物の高さを算出する必要がある分野に有用である。
【符号の説明】
【0064】
10 建築物高さ算出装置
11 データ取得部
12 クラスタリング部
13 高さ算出部
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6