特許第6835477号(P6835477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6835477透明導電性フィルム用キャリアフィルム及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835477
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】透明導電性フィルム用キャリアフィルム及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20210215BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20210215BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210215BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20210215BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20210215BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20210215BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210215BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20210215BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   C09J7/20
   C09J133/14
   C09J11/06
   C09J11/04
   C09J175/04
   B32B7/025
   B32B27/00 M
   B32B27/26
   B32B27/30 A
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-86010(P2016-86010)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2016-210974(P2016-210974A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2019年4月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-93150(P2015-93150)
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 真理
(72)【発明者】
【氏名】三井 数馬
(72)【発明者】
【氏名】天野 立巳
【審査官】 川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−048394(JP,A)
【文献】 特開2013−256559(JP,A)
【文献】 特開2012−021164(JP,A)
【文献】 特開2015−004072(JP,A)
【文献】 特開2014−115348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/20,9/02,
11/06,133/04,
B32B 7/02,27/00,
27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも片面に粘着剤層を有する透明導電性フィルム用キャリアフィルムであって、
前記粘着剤層は、アルキル(メタ)アクリレート、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満の水酸基含有モノマー、及びホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上の水酸基含有モノマーを含むモノマー成分を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマー、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤およびスズ系触媒を含む粘着剤組成物から形成されたものであり、
前記架橋剤の配合量が、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して20重量部を超え、
前記キャリアフィルムの前記粘着剤層を被着体に貼り合せた状態で140℃、90分間加熱した後、前記キャリアフィルムを被着体から引張速度0.3m/分で剥離した時の粘着力P、及び、引張速度10m/分で剥離した時の粘着力Qが、いずれも0.7N/50mm以下であり、かつ
前記粘着力Pと粘着力Qの差の絶対値が、0.2N/50mm以下であることを特徴とする透明導電性フィルム用キャリアフィルム。
【請求項2】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満の水酸基含有モノマーの配合量が、前記モノマー成分全量に対して10〜17重量%であり、
前記ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上の水酸基含有モノマーの配合量が、前記モノマー成分全量に対して2〜8重量%であることを特徴とする請求項に記載の透明導電性フィルム用キャリアフィルム。
【請求項3】
前記モノマー成分が、さらにカルボキシル基含有モノマーを含み、当該カルボキシル基含有モノマーの配合量が、前記モノマー成分全量に対して0.005〜0.10重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電性フィルム用キャリアフィルム。
【請求項4】
前記脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性フィルム用キャリアフィルム。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の透明導電性フィルム用キャリアフィルムと、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムに積層された透明導電性フィルムを有する積層体であって、
前記透明導電性フィルムの少なくとも片方の表面に、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の粘着面が貼り合わされていることを特徴とする積層体。
【請求項6】
前記透明導電性フィルムは、透明導電層及び透明基材を有し、
前記透明基材の前記透明導電層と接触する面とは反対側の表面に、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の粘着面が貼り合わされていることを特徴とする請求項に記載の積層体。
【請求項7】
前記透明導電性フィルムは透明導電層及び透明基材を有し、さらに前記透明基材の前記透明導電層と接触する面とは反対側の表面に機能層を有しており、
前記機能層の前記透明基材と接触する面とは反対側の表面に、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の粘着面が貼り合わされていることを特徴とする請求項に記載の積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体と粘着剤層を有する透明導電性フィルム用キャリアフィルムに関する。また、本発明は、当該透明導電性フィルム用キャリアフィルムと透明導電性フィルムを有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル、液晶ディスプレイパネル、有機ELパネル、エレクトロクロミックパネル、電子ペーパー素子等において、プラスチックフィルム上に透明電極を設けてなるフィルム基板を用いた素子の需要が増加しつつある。
【0003】
透明電極の材料として、現在、ITO薄膜(In・Sn複合酸化物)、銀や銅などの金属薄膜、銀ナノワイヤー薄膜が用いられており、前記ITO薄膜・銀や銅などの金属薄膜・銀ナノワイヤー薄膜を含む薄膜基材の厚さは、年々薄くなる傾向にある。
【0004】
また、前記ITO薄膜を含む薄膜基材等に、機能層として、反射防止(AR)層を設けて、視認性の向上を図ったり、ハードコート(HC)層を設けて、傷の発生を防止したり、アンチブロッキング(AB)層を設けて、ブロッキングを防止したり、オリゴマー防止(OB)層を設けて、加熱時の白濁を防止したりすることも多い。
【0005】
このような中で、ITO薄膜等の光学部材に対して、加工工程や搬送工程等において、キズや汚れ等を防止する目的で、表面保護フィルム等が貼り合わされて使用されている。
【0006】
光学部材に用いる表面保護用の粘着フィルムとしては、例えば、ガラス転移温度の異なる2種類の(メタ)アクリル系ポリマーを特定の配合比で用い、かつ架橋剤による架橋の程度を調整した粘着剤から形成される粘着剤層を支持体上に有する表面保護シート(特許文献1参照)や、2−エチルヘキシルアクリレートとヒドロキシエチルメタクリレートを特定量含むモノマー成分から形成されるアクリル共重合体と、特定量の多官能イソシアネート架橋剤を含む粘着剤溶液から得られる粘着剤層をプラスチックフィルムの片面に設けた粘着フィルム(特許文献2参照)等が知られている。
【0007】
また、透明導電性フィルム用キャリアフィルムとして、支持体の少なくとも片面に、ガラス転移温度が−50℃以下である(メタ)アクリル系ポリマー、イソシアネート系架橋剤、及び鉄を中心とする触媒を含む粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する透明導電性フィルム用キャリアフィルムが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−146151号公報
【特許文献2】特開2012−21164号公報
【特許文献3】特開2015−48394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、2では、透明導電性フィルム用途については十分に検討がなされていない。従って、特許文献1、2の表面保護シートを、透明導電性フィルム用キャリアフィルムとして用いた場合、低速剥離と高速剥離で粘着力の差が十分に小さくならず、剥離の途中でフィルムが折れてしまったり、被着体である透明導電性フィルムにクラックが入ったりする場合があった。
【0010】
また、特許文献3では、透明導電フィルムから剥離する際のジッピングについては解消できるものではあるが、低速剥離と高速剥離で粘着力の差が十分に小さいものではなく、作業性の観点からは、さらなる検討の余地があった。
【0011】
透明導電性フィルムをキャリアフィルムから剥離する際に起こる「ジッピング」とは、透明導電性フィルムをキャリアフィルムから剥離する場合に滑らかに剥離せず、パリパリと音を立てながら剥がれたり止まったりを繰り返す現象を意味する。被着体である透明導電性フィルムに対するキャリアフィルムの粘着力が高い場合に前記ジッピングが発生すると、透明導電性フィルムにクラックが生じたり、剥離痕が残ったりするため、好ましくない。
【0012】
また、透明導電性フィルムからキャリアフィルムを剥離する際、高速で剥離した場合の粘着力が、低速で剥離した場合の粘着力よりが高くなる傾向がある。キャリアフィルムの剥離は手作業で行われる場合が多く、一般的に、作業者は高速で剥離することが多いため、キャリアフィルムが剥がれにくく、作業性に劣る場合があった。さらに、剥離途中でフィルムが破断したり、折れてしまったりする場合があった。また、通常、このような手作業での剥離は、始めは低速で剥がして徐々に高速で剥離するように、剥離速度が一定でない場合が多い。そのような場合に、低速剥離と高速剥離で粘着力の差が大きいと、剥離の途中でフィルムが折れてしまったり、被着体である透明導電性フィルムにクラックが入ったりする危険性があり、どのような剥離速度でも一定の粘着力である透明導電性フィルム用キャリアフィルムが切望されていた。
【0013】
本発明は、ジッピングの発生を抑制することができ、透明導電性フィルムに対する密着性と再剥離性に優れ、かつ、高速剥離と低速剥離で粘着力の差が小さくて作業性に優れる透明導電性フィルム用キャリアフィルムを提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルム及び透明導電性フィルムを含む積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討したところ、下記の透明導電性フィルム用キャリアフィルムを用いることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、支持体の少なくとも片面に粘着剤層を有する透明導電性フィルム用キャリアフィルムであって、
前記キャリアフィルムの前記粘着剤層を被着体に貼り合せた状態で140℃、90分間加熱した後、前記キャリアフィルムを被着体から引張速度0.3m/分で剥離した時の粘着力P、及び、引張速度10m/分で剥離した時の粘着力Qが、いずれも0.7N/50mm以下であり、かつ
前記粘着力Pと粘着力Qの差の絶対値が、0.2N/50mm以下であることを特徴とする透明導電性フィルム用キャリアフィルムに関する。
【0016】
前記粘着剤層が、アルキル(メタ)アクリレート、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満の水酸基含有モノマー、及びホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上の水酸基含有モノマーを含むモノマー成分を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物から形成されたものであることが好ましい。
【0017】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満の水酸基含有モノマーの配合量が、前記モノマー成分全量に対して10〜17重量%であり、
前記ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上の水酸基含有モノマーの配合量が、前記モノマー成分全量に対して2〜8重量%であることが好ましい。
【0018】
前記モノマー成分が、さらにカルボキシル基含有モノマーを含み、当該カルボキシル基含有モノマーの配合量が、前記モノマー成分全量に対して0.005〜0.10重量%であることが好ましい。
【0019】
前記粘着剤組成物が、さらに架橋剤を含み、当該架橋剤の配合量が、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して20重量部を超えることが好ましい。
【0020】
前記架橋剤が、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤であることが好ましく、前記脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤が、ヘキサメチレンジイソシアネートを含有することがより好ましい。
【0021】
また、支持体の少なくとも片面に粘着剤層を有する透明導電性フィルム用キャリアフィルムであって、
前記粘着剤層が、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満の水酸基含有モノマー、及びホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上の水酸基含有モノマーを含むモノマー成分を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物から形成されたものであることを特徴とする透明導電性フィルム用キャリアフィルムであってもよい。
【0022】
また、本発明は、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムと、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムに積層された透明導電性フィルムを有する積層体であって、
前記透明導電性フィルムの少なくとも片方の表面に、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の粘着面が貼り合わされていることを特徴とする積層体に関する。
【0023】
また、前記積層体としては、前記透明導電性フィルムが透明導電層及び透明基材を有し、
前記透明基材の前記透明導電層と接触する面とは反対側の表面に、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の粘着面が貼り合わされているものが挙げられる。
【0024】
また、前記積層体としては、前記透明導電性フィルムが透明導電層及び透明基材を有し、さらに前記透明基材の前記透明導電層と接触する面とは反対側の表面に機能層を有しており、
前記機能層の前記透明基材と接触する面とは反対側の表面に、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の粘着面が貼り合わされているものが挙げられる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムは、ジッピングの発生を抑制することができ、透明導電性フィルムに対する密着性と再剥離性に優れ、高速剥離と低速剥離で粘着力の差が小さく作業性に優れる。さらに、本発明は、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルム及び透明導電性フィルムを含む積層体を提供することができる。
【0026】
また、本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムを用いることで、被着体である透明導電性フィルムにシワやキズ等を発生させることがなく、また、透明導電性フィルムの形状を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムの一実施形態を示す模式図である。
図2】本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層面に、透明導電性フィルムを貼付した積層体の一実施形態を示す模式図である。
図3】本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層面に、機能層付透明導電性フィルムを貼付した積層体一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.透明導電性フィルム用キャリアフィルム
以下、本発明の実施の形態について、図1〜3を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は、図1〜3の実施形態に限定されるものではない。
【0029】
図1に示すように、本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルム3は、支持体2の少なくとも片面に粘着剤層1を有し、前記粘着剤層1の前記支持体2と接触する面と反対側に粘着面Aを有する。前記粘着面Aは、図2に示すように、被着体である透明導電性フィルム6が機能層を有さない場合には、透明導電性フィルムを構成する透明基材5表面(透明基材5の透明導電層4が存在しない側)と接触する面であり、図3に示すように、被着体である透明導電性フィルムが機能層付き透明導電性フィルム8である場合には、前記機能層7と接触する面である。なお、後述する本発明の積層体9は、図2、3に示すように、透明導電性フィルム用キャリアフィルム3と透明導電性フィルム6(又は機能層付き透明導電性フィルム8)を含むものである。
【0030】
本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムは、前記キャリアフィルムの前記粘着剤層を被着体に貼り合せた状態で140℃、90分間加熱した後、前記キャリアフィルムを被着体から引張速度0.3m/分で剥離した時の粘着力P、及び、引張速度10m/分で剥離した時の粘着力Qが、いずれも0.7N/50mm以下であり、かつ
前記粘着力Pと粘着力Qの差の絶対値が、0.2N/50mm以下であることを特徴とする。
【0031】
前記粘着力Pは、0.7N/50mm以下であり、0.6N/50mm以下であることが好ましく、0.5N/50mm以下であることがさらに好ましい。粘着力Pの下限値は特に限定されるものではないが、被着体である透明導電性フィルムに対する粘着力の観点から、0.1N/50mm以上であることが好ましい。引張速度0.3m/分で剥離した時の粘着力が前記範囲であることで、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを透明導電性フィルムから低速度で剥離した際にもジッピングが発生することなく、密着性と再剥離性のバランスに優れるため好ましい。
【0032】
前記粘着力Qは、0.7N/50mm以下であり、0.6N/50mm以下であることが好ましく、0.5N/50mm以下であることがさらに好ましい。粘着力Qの下限値は特に限定されるものではないが、被着体である透明導電性フィルムに対する粘着力の観点から、0.1N/50mm以上であることが好ましい。引張速度10m/分で剥離した時の粘着力が0.7N/50mmを超えると、作業性が悪くなり、また、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを透明導電性フィルムから剥離する際に、フィルム破断や折れが発生する場合がある。一方、引張速度10m/分で剥離した時の粘着力が前記範囲にあることで、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを透明導電性フィルムから高速で剥離した際にもジッピングが発生することなく、密着性と再剥離性のバランスに優れるため好ましい。
【0033】
前記粘着力Pと粘着力Qの差の絶対値は、0.2N/50mm以下であり、0.15N/50mm以下であることが好ましく、0.1N/50mm以下であることがさらに好ましく、0.05N/50mm以下であることが特に好ましい。前記粘着力Pと粘着力Qの差の絶対値の下限値は、特に限定されるものではなく、小さければ小さいほど好ましいものであり、理想的には差がない(0N/50mm)ことが好ましい。粘着力Pと粘着力Qの差の絶対値が0.2N/50mmを超えると、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを透明導電性フィルムから剥離する際に、剥離の途中でフィルムが折れたり、透明導電層へクラックが入ったりする場合がある。一方、粘着力Pと粘着力Qの差の絶対値が前記範囲内であることで、手作業での剥離作業(通常、始めが低速で剥がして徐々に高速剥離に近づく)のように、剥離速度が一定ではないような場合であっても、剥離の途中でフィルムが折れたり、透明導電層にクラックが入ったりすることなく、透明導電性フィルム用キャリアフィルムの再剥離性に優れるため好ましい。
【0034】
前記粘着力測定時の「被着体」は、透明導電性フィルムであり、透明導電性フィルムが機能層を有さない場合には、被着面は透明導電性フィルムを構成する透明基材の表面であり、透明導電性フィルムが機能層を有する場合には、被着面は当該機能層の表面となる。
【0035】
本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムは、支持体の少なくとも片面に粘着剤層を有し、前記粘着力を有するものであればよく、粘着剤組成等については特に限定されないが、以下に好ましい組成について説明する。
【0036】
(1)粘着剤層
本発明における粘着剤層は、特に限定されるものではなく、アクリル系、合成ゴム系、ゴム系、シリコーン系等の粘着剤等とすることができるが、透明性、耐熱性等の観点から、(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤であることが好ましい。
【0037】
アクリル系粘着剤のベースポリマーとなる(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合して得られるものであり、アルキル(メタ)アクリレート、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満の水酸基含有モノマー、及びホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上の水酸基含有モノマーを含むモノマー成分を重合して得られた(メタ)アクリル系ポリマーが、高速剥離と低速剥離で粘着力の差が小さくなるため好ましい。
【0038】
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、炭素数2〜14アルキル基を有するものを用いることができるが、アルキル(メタ)アクリレートの主モノマー成分としては、アルキル基の炭素数が4〜14であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数6〜14であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数6〜9であるアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。ここで主モノマーとは、モノマー成分に含まれる「アルキル(メタ)アクリレート」の全量に対して、50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは80重量%以上であり、特に好ましくは100重量%である。
【0039】
前記炭素数2〜14であるアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート(BA)、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート(2EHA)、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらを一種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中でもn−ブチル(メタ)アクリレート(BA)や2−エチルへキシル(メタ)アクリレート(2EHA)が好ましく、特に、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート(2EHA)が好ましい。
【0040】
特に、粘着剤層に軽剥離が要求される場合は、前記炭素数6〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、前記炭素数6〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを、アルキル(メタ)アクリレートの全量に対して、50重量%以上とするのが好ましく、60重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、90重量%以上が特に好ましい。
【0041】
前記アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、モノマー成分中65重量%であることが好ましく、75重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。
【0042】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満の水酸基含有モノマーとしては、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満であって、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ、水酸基を含有するものを挙げることができる。具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート(ホモポリマーのTg:−15℃)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(ホモポリマーのTg:26℃)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(ホモポリマーのTg:−7℃)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(ホモポリマーのTg:−32℃)等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(ホモポリマーのTg:17℃)、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(ホモポリマーのTg:18℃)等の環状構造を有する(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート(エチレングリコールのモル数:10、ホモポリマーのTg:−64℃)、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(プロピレングリコールのモル数:6、ホモポリマーのTg:−59℃)等のアルキレンオキシド構造を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、ジッピングが抑制できる点から、4−ヒドロキシブチルアクリレート(ホモポリマーのTg:−32℃)が好ましい。
【0043】
また、前記水酸基含有モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は50℃未満であればよいが、例えば、30℃以下であることが好ましく、−40〜30℃であることがより好ましく、−40〜0℃であることがさらに好ましい。
【0044】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満の水酸基含有モノマーの含有量は、モノマー成分全量に対して10〜17重量%であることが好ましく、10〜15重量%であることがより好ましく、11〜14重量%であることがさらに好ましい。前記ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満の水酸基含有モノマーの含有割合が10重量%未満であると、反応点が少ないため架橋密度が下がり、粘着力が高くなる傾向がある。その場合、透明導電性フィルムに対する再剥離性が低下してしまうため、好ましくない。一方、前記ホモポリマーのガラス転移温度が50℃未満の水酸基含有モノマーの含有割合が17重量%を超えると、反応点が多すぎるため架橋密度が上がり、粘着力が下がりすぎてしまう傾向がある。その場合、透明導電性フィルムに対する密着性が低下してしまうため、好ましくない。
【0045】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上の水酸基含有モノマーとしては、ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上であって、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ、水酸基を含有するものを挙げることができる。具体的には、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(ホモポリマーのTg:55℃)、N−メチロールアクリルアミド(ホモポリマーのTg:110℃)、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(ホモポリマーのTg:98℃)等を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、ジッピングが抑制できる点から、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(ホモポリマーのTg:55℃)が好ましい。
【0046】
また、前記水酸基含有モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は50℃以上であればよいが、例えば、50〜150℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましく、50〜90℃であることがさらに好ましい。
【0047】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上の水酸基含有モノマーの含有量は、モノマー成分全量に対して2〜8重量%であることが好ましく、3〜6重量%であることがより好ましい。前記ホモポリマーのガラス転移温度が50℃以上の水酸基含有モノマーの含有割合が2重量%未満であると、高速剥離での粘着力が下がりにくい傾向があり、8重量%を超えると、高速剥離での粘着力が下がりすぎる傾向があり、好ましくない。
【0048】
前記モノマー成分には、前記アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有モノマー以外のその他の重合性モノマーを含むことができる。前記その他の重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点や剥離性を調整するための重合性モノマー等を、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。その他の重合性モノマーは単独で用いてもよく、組み合わせて用いても良いが、前記その他の重合性モノマーの配合量としては、モノマー成分全量に対して10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0049】
前記重合性モノマーとしては、カルボキシル基含有モノマーが挙げられる。カルボキシル基含有モノマーは、架橋反応をより効率的に行うことができ、高速剥離での粘着力を下げられる点から用いることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ、カルボキシル基を含有するものを挙げることができ、具体的には、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有モノマーの中でも、その重合性や、凝集性、価格、汎用性の点からアクリル酸が好ましい。
【0050】
前記カルボキシル基含有モノマーの含有量としては、モノマー成分全量に対して、0.005〜0.10重量%が好ましく、0.005〜0.05重量%がより好ましい。カルボキシル基含有モノマーの含有量が前記範囲であることにより、高速剥離での粘着力を下げる効果があるため好ましい。
【0051】
前記その他の重合性モノマーとしては、例えば、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマー等の凝集力・耐熱性向上成分や、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマー等、架橋化基点として働く官能基を有するモノマー成分を適宜用いることができる。これらのモノマー成分は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0052】
前記酸無水物基含有モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0053】
前記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0054】
前記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、メタクリル酸2−(ホスホノオキシ)エチル、メタクリル酸3−クロロ−2−(ホスホノオキシ)プロピル等が挙げられる。
【0055】
前記シアノ基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0056】
前記ビニルエステルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が挙げられる。
【0057】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
【0058】
前記アミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0059】
前記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
前記エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0061】
前記ビニルエーテルモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0062】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーは、前記モノマー成分を重合することにより得られるものであり、その重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の公知の方法により重合でき、作業性等の観点から、溶液重合がより好ましい。また、得られるポリマーは、ホモポリマーやランダムコポリマー、ブロックコポリマー等いずれでもよい。
【0063】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が30万〜500万が好ましく、より好ましくは40万〜200万、特に好ましくは50万〜100万である。重量平均分子量が30万より小さい場合は、被着体である(機能層付き)透明導電性フィルムへの濡れ性の向上により、剥離時の粘着力が大きくなるため、剥離工程(再剥離)での被着体損傷の原因になることがあり、また、粘着剤層の凝集力が小さくなることにより糊残りを生じる傾向がある。一方、重量平均分子量が500万を超える場合は、ポリマーの流動性が低下し、被着体である(機能層付き)透明導電性フィルムへの濡れが不十分となり、被着体と透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
【0064】
また、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、前記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)としては、0℃以下(通常−100℃以上であり、−70℃以上が好ましい)が好ましく、−10℃以下がより好ましく、−20℃以下が更に好ましく、−30℃以下が特に好ましい。ガラス転移温度が0℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく、被着体である透明導電性フィルムの透明基材への濡れが不十分となり、被着体とキャリアフィルムの粘着剤層との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。なお、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調整することができる。
【0065】
本発明で用いる粘着剤組成物には、前記(メタ)アクリル系ポリマー以外に、架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、及び金属キレート化合物等が用いられる。これらの中でも、主に適度な凝集力を得る観点から、イソシアネート化合物が特に好ましく用いられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0066】
前記イソシアネート化合物としては、イソシアネート基を少なくとも2つ有する化合物を挙げることができ、例えば、一般には、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が用いられる。本発明においては、ジッピング抑制と粘着力の点から、脂肪族ポリイソシアネートを好ましく用いることができるが、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートは、ジッピング抑制と粘着力の点から用いないことが好ましい。
【0067】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、これらの中でも、ジッピング抑制と粘着力の点から、ヘキサメチレンジイソシアネートを含む脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
【0068】
イソシアネート系架橋剤の市販品としては、例えば、商品名「コロネートHL」、「コロネートHX」(以上、日本ポリウレタン工業(株)製);商品名「タケネートD−160N」、「タケネートD−165N」、「タケネートD−170HN」、「タケネートD−178N」(以上、三井化学(株)製)等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0069】
本発明において、イソシアネート系架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、20重量部を超えることが好ましく、20重量部を超え30重量部以下であることがより好ましく、21〜25重量部であることがさらに好ましく、22〜24重量部であることが特に好ましい。イソシアネート系架橋剤の配合量を20重量部より多くすることで、(メタ)アクリル系ポリマーが有する水酸基との反応により、粘着剤層の架橋形成を十分に行い、凝集力を向上させて、ジッピングの発生を抑制する点で好ましい。また、高速剥離と低速剥離で適切な粘着力を発現することができ、高速剥離と低速剥離の粘着力の差が小さくできるため好ましい。また、特にイソシアネート系架橋剤の配合量が、(メタ)アクリル系ポリマーが有する水酸基に対して、OH/NCO当量比で、0.89〜1.22となる量で添加することが好ましく、0.95〜1.14となる量で添加することがより好ましい。イソシアネート系架橋剤の配合量を前記範囲にすることで、高速剥離と低速剥離の粘着力の差を小さく制御することができるため好ましい。
【0070】
これらイソシアネート系架橋剤は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよく、2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用して用いることも可能である。
【0071】
前記エポキシ化合物としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名:TETRAD−X、三菱瓦斯化学(株)製)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン(商品名:TETRAD−C、三菱瓦斯化学(株)製)等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
前記メラミン系樹脂としてはヘキサメチロールメラミン等が挙げられる。アジリジン誘導体としては、例えば、市販品としての商品名HDU(相互薬工(株)製)、商品名TAZM(相互薬工(株)製)、商品名TAZO(相互薬工(株)製)等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0073】
金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、チタン、ニッケル、ジルコニウム等、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、アセチルアセトン等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0074】
イソシアネート系架橋剤以外の架橋剤を併用する場合、その使用量は本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、イソシアネート系架橋剤の総量が、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、20重量部を超え、かつ、架橋剤全量における、イソシアネート系架橋剤の割合が、50重量%以上、さらには70重量%以上、さらには90重量%以上の範囲で用いることが好ましい。
【0075】
また、本発明の粘着剤組成物には、前記(メタ)アクリル系ポリマーの他に、放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーを配合することができる。多官能モノマーは(メタ)アクリル系ポリマーを調製する際に、モノマー成分として用いることができる。かかる場合には、放射線等を照射することにより(メタ)アクリル系ポリマーを架橋させる。一分子中に放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーとしては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルベンジル基等の放射線の照射で架橋処理(硬化)することができる1種又は2種以上の放射線反応性を2個以上有する多官能モノマーが挙げられる。また、前記多官能モノマーとしては、一般的には放射線反応性不飽和結合が10個以下のものが好適に用いられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0076】
前記多官能モノマーの具体例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等挙げられる。
【0077】
前記多官能モノマーの配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部(固形分)に対し、30重量部以下が好ましい。
【0078】
放射線としては、例えば、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、X線、電子線等が挙げられるが、制御性及び取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線が好適に用いられる。より好ましくは、波長200〜400nmの紫外線が用いられる。紫外線は、高圧水銀灯、マイクロ波励起型ランプ、ケミカルランプ等の適宜光源を用いて照射することができる。なお、放射線として紫外線を用いる場合には粘着剤組成物に光重合開始剤を配合する。
【0079】
光重合開始剤としては、放射線反応性成分の種類に応じ、その重合反応の引金となり得る適当な波長の紫外線を照射することによりラジカルもしくはカチオンを生成する物質であればよい。
【0080】
光ラジカル重合開始剤として、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、o−ベンゾイル安息香酸メチル−p−ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン等のベンゾイン類、ベンジルジメチルケタール、トリクロルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−4’−イソプロピル−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−クロルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(エトキシ)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類、ベンジル、ジベンゾスベロン、α−アシルオキシムエステル等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0081】
光カチオン重合開始剤として、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩や、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体等の有機金属錯体類、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナート等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。光重合開始剤は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、通常0.1〜10重量部配合し、0.2〜7重量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0082】
さらに、アミン類等の光開始重合助剤を併用することも可能である。前記光開始助剤としては、例えば、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。重合開始助剤は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、0.05〜10重量部配合するのが好ましく、0.1〜7重量部の範囲で配合するのがより好ましい。
【0083】
本発明で用いられる粘着剤組成物には、触媒を添加することができる。触媒の種類は特に限定されず、スズ触媒等、本分野において公知の触媒を用いることができるが、スズ触媒を用いることが好ましい。また、本発明においては、鉄を活性中心とする触媒は含まないことが好ましい。
【0084】
前記スズ触媒としては、ジラウリン酸ジオクチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジオレート、ジフェニルスズジアセテート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジブチルスズベンジルマレート、ジオクチルスズジアセテート等を挙げることができ、これらを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、ジラウリン酸ジオクチルスズが好ましい。また、触媒の添加量としては特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.001〜0.5重量部程度であることが好ましい。
【0085】
さらに、本発明で用いられる粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、例えば、着色剤、顔料等の粉体、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、低分子量ポリマー、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機又は有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物等を使用する用途に応じて適宜配合することができる。
【0086】
また、粘着剤組成物の固形分としては、特に限定されるものではなく、20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。
【0087】
本発明において用いられる粘着剤層は、以上のような粘着剤組成物から形成されるものである。また、本発明の(機能層付き)透明導電性フィルム用キャリアフィルムは、かかる粘着剤層を支持体(基材、基材層)上に形成してなるものである。その際、(メタ)アクリル系ポリマーの架橋は、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を支持体等に転写することも可能である。
【0088】
支持体(基材、又は基材層ともいう。)上に、粘着剤層を形成する方法は、特に問わないが、例えば、前記粘着剤組成物を支持体に塗布(例えば、固形分としては、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。)し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を支持体上に形成することにより作製される。その後、粘着剤層の成分移行の調整や架橋反応の調整等を目的として養生をおこなってもよい。また、粘着剤組成物を支持体上に塗布して、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを作製する際には、支持体上に均一に塗布できるよう、粘着剤組成物中に重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0089】
また、前記粘着剤組成物の塗布方法としては、粘着テープ等の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法等が挙げられる。
【0090】
支持体に塗布した粘着剤組成物を乾燥する際の乾燥条件は、粘着剤組成物の組成、濃度、組成物中の溶媒の種類等によって適宜決定できるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、80〜200℃で10秒〜30分程度で乾燥することができる。
【0091】
また、上述のように任意成分とする光重合開始剤を配合した場合には、支持体(基材、基材層)の片面又は両面に塗工した後、光照射することにより粘着剤層を得ることができる。通常は、波長300〜400nmにおける照度が1〜200mW/cmである紫外線を、光量400〜4000mJ/cm程度照射して光重合させることにより粘着剤層が得られる。
【0092】
本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の厚みは、5〜50μmが好ましく、より好ましくは10〜30μmである。前記範囲内であると、密着性と再剥離性のバランスに優れ、好ましい態様となる。本発明に用いられる支持体(基材層)の少なくとも片面に、上記粘着剤層を塗布等して形成し、フィルム状やシート状、テープ状等の形態としたものである。
【0093】
(2)支持体
本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムを構成する支持体(基材)(図1中の2)として、特に制限されないが、例えば、紙等の紙系支持体;布、不織布、ネット等の繊維系支持体(その原料としては、特に制限されず、例えば、マニラ麻、レーヨン、ポリエステル、パルプ繊維等を適宜選択することができる);金属箔、金属板等の金属系支持体;プラスチックのフィルムやシート等のプラスチック系支持体;ゴムシート等のゴム系支持体;発泡シート等の発泡体や、これらの積層体(例えば、プラスチック系支持体と他の支持体との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体等)等の適宜な薄葉体を用いることができる。
【0094】
前記プラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも特に、前記ポリエステル系樹脂は、強靭性、加工性、透明性等を有するため、これを透明導電性フィルム用のキャリアフィルムに使用することにより、作業性・検査性が向上することとなり、より好ましい態様となる。
【0095】
前記ポリエステル系樹脂としては、シート状やフィルム状等に形成できるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムが挙げられる。これらのポリエステル系樹脂は単独(ホモポリマー)で使用してもよく、また2種以上を混合・重合(コポリマー等)して使用してもよい。特に、本発明においては、透明導電性フィルム用キャリアフィルムとして用いるため、支持体として、ポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。ポリエチレンテレフタレートを用いることにより、強靭性、加工性、透明性に優れた透明導電性フィルム用キャリアフィルムとなり、作業性が向上し、好ましい態様となる。
【0096】
前記支持体の厚みは、25〜300μmが一般的に用いられるが、75〜200μmが好ましく、より好ましくは80〜140μmであり、特に好ましくは90〜130μmである。前記範囲内であると、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを、(機能層付き)透明導電性フィルムに貼付して使用することにより、コシがなく、撓みやすい前記透明導電性フィルムの形状を保持することができ、加工工程や搬送工程等において、シワやキズ等の不具合の発生を防止でき、有用である。
【0097】
また、前記支持体には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型及び防汚処理や酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の易接着処理、塗布型、練り込み型、蒸着型等の静電防止処理をすることもできる。特に静電防止処理を行う際には、支持体と粘着剤層の間に静電防止層を設けることが好ましい。
【0098】
なお、粘着剤層と支持体間の密着性を向上させるため、支持体の表面にはコロナ処理等を行ってもよい。また、支持体には背面処理を行ってもよい。
【0099】
本発明の(機能層付き)透明導電性フィルム用キャリアフィルムは、必要に応じて粘着面を保護する目的で粘着剤表面にシリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系又は脂肪酸アミド系等の離型剤処理されたセパレータを貼り合わせることが可能である。セパレータを構成する基材としては、紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0100】
また、前記セパレータ用の支持体には、必要に応じて、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の易接着処理、塗布型、練り込み型、蒸着型等の静電防止処理をすることもできる。特に、静電防止処理を行う場合には、支持体と離型剤の間に静電防止処理層を設けることが好ましい。
【0101】
2.(機能層付き)透明導電性フィルム
透明導電性フィルム6は、図2、3に示すように、透明導電層4と透明基材5を有するフィルムを挙げることができる。
【0102】
透明基材5としては、樹脂フィルムや、ガラス等からなる基材(例えば、シート状やフィルム状、板状の基材(部材)等)等が挙げられ、特に、樹脂フィルムを挙げることができる。透明基材5の厚さは、特に限定されないが、10〜200μm程度が好ましく、15〜150μm程度がより好ましい。
【0103】
前記樹脂フィルムの材料としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチック材料が挙げられる。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂である。
【0104】
また、前記透明基材5には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化等のエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる透明導電層4等の前記透明基材5に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、透明導電層4を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄等により除塵、清浄化してもよい。
【0105】
前記透明導電層4の構成材料としては特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ等が好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。ITOとしては、酸化インジウム80〜99重量%及び酸化スズ1〜20重量%を含有することが好ましい。
【0106】
前記透明導電層4の厚みは特に制限されないが、10〜300nmであることがより好ましく、15〜100nmであることがさらに好ましい。
【0107】
前記透明導電層4の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0108】
また、透明導電層4と透明基材5との間に、必要に応じて、アンダーコート層、オリゴマー防止層等を設けることができる。
【0109】
また、前記透明導電層4を有する透明導電性フィルム6は、光学デバイス用基材(光学部材)として用いることができる。光学デバイス用基材としては、光学的特性を有する基材であれば、特に限定されないが、例えば、表示装置(液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパー等)、入力装置(タッチパネル等)等の機器を構成する基材(部材)又はこれらの機器に用いられる基材(部材)が挙げられる。これらの光学デバイス用基材は近年の薄膜化の傾向に伴い、コシがなくなり、加工工程や搬送工程等において、撓みや形状の変形を生じ易かった。本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムを貼付して使用することにより、形状を保持することができ、不具合の発生を抑制でき、好ましい態様となる。
【0110】
図3に示すように、前記透明導電性フィルム6の透明導電層5を設けていない側の面には、機能層7を設けることができる。
【0111】
前記機能層としては、例えば、視認性の向上を目的とした防眩処理(AG)層、反射防止(AR)層、ハードコート(HC)、アンチブロッキング(AB)層等を挙げることができる。
【0112】
前記防眩処理層の構成材料としては特に限定されず、例えば電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。防眩処理層の厚みは0.1〜30μmが好ましい。前記反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられる。反射防止層は複数層を設けることができる。
【0113】
前記ハードコート(HC)層の形成材料としては、例えば、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の硬化型樹脂からなる硬化被膜が好ましく用いられる。ハードコート層の厚さとしては、0.1〜30μmが好ましい。厚さを0.1μm以上とすることが、硬度を付与するうえで好ましい。また、前記ハードコート層上に、前記防眩処理層や反射防止層やアンチブロッキング層を設けることができる。また、防眩機能、反射防止機能、アンチブロッキング機能、オリゴマー防止機能を有するハードコート層を用いることができる。
【0114】
アンチブロッキング層としては、硬化型樹脂層中に微粒子を含有させたものや、硬化型樹脂組成物として相分離する2種以上の成分を含有するコーティング組成物を用いたもの、あるいはこれらを併用することによって、表面に凹凸が形成されたものが好適に用いられる。硬化型樹脂層の成分としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等を挙げることができる。また、相分離する2種以上の成分を含有するコーティング組成物としては、例えば国際公開第2005/073763号パンフレットに記載の組成物を好適に用いることができる。アンチブロッキング層の厚さとしては、0.1〜30μmが好ましい。
【0115】
前記機能層付き透明導電性フィルム(機能層を含む)の厚みとしては、210μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。前記範囲内の透明導電性フィルム(被着体)に対して、本発明の(機能層付き)透明導電性フィルム用キャリアフィルムを使用することにより、透明導電性フィルムが非常に薄い場合でもその形状を保持することができ、シワやキズ等の不具合の発生を抑制でき、好ましい態様となる。
【0116】
3.積層体
また、本発明は、透明導電性フィルム用キャリアフィルム3と、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルム3に積層された透明導電性フィルム6を有する積層体9であって、
前記透明導電性フィルム用キャリアフィルム3が本明細書に記載された透明導電性フィルム用キャリアフィルムであり、
前記透明導電性フィルム6は透明導電層4及び透明基材5を有し、
前記透明基材5の前記透明導電層4と接触する面とは反対側の表面に、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルム3の粘着剤層1の粘着面が貼り合わされていることを特徴とする積層体9に関する(例えば、図2)。
【0117】
さらに、本発明は、透明導電性フィルム用キャリアフィルム3と、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルム3に積層された透明導電性フィルム6を有する積層体であって、
前記透明導電性フィルム用キャリアフィルム3が本明細書に記載された透明導電性フィルム用キャリアフィルムであり、
前記透明導電性フィルム3は透明導電層4及び透明基材5を有し、さらに前記透明基材の前記透明導電層と接触する面とは反対側の表面に機能層7を有しており、
前記機能層7の前記透明基材5と接触する面とは反対側の表面に、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルム3の粘着剤層1の粘着面が貼り合わされていることを特徴とする積層体に関する(例えば、図3)。
【0118】
本発明の積層体に用いられる透明導電性フィルム用キャリアフィルム、(機能層付き)透明導電性フィルムについては、前述のものを挙げることができる。
【実施例】
【0119】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。配合内容については、表1及び表2に示し、評価結果については、表2に示す。
【0120】
製造例1
(アクリル系ポリマーの調整)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つロフラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)82.99重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)14重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)3重量部、アクリル酸0.01重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、酢酸エチル186重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を60℃付近に保って約6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(A1)溶液(約35重量%)を調製した。前記アクリル系ポリマー(A1)の重量平均分子量は65万であり、Tgは−63℃であった。
【0121】
製造例2〜12
製造例1において、表1に示すように、アクリル系ポリマーの調製に用いたモノマーの種類、その使用割合を変えた以外は、製造例1と同様の方法により、アクリル系ポリマー(A2)〜(A8)、(A11)〜(A14)の溶液を調製した。
【0122】
【表1】
表1中の略記は、それぞれ以下の通りである。
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタリレート
HPA:2−ヒドロキシプロピルアクリレート
AA:アクリル酸
【0123】
<アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定>
作製したポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
装置:HLC−8220GPC、東ソー(株)製
カラム:
サンプルカラム:TSKguardcolumn Super HZ−H(1本)+TSKgel Super HZM−H(2本) 東ソー(株)製
リファレンスカラム:TSKgel Super H−RC(1本)東ソー(株)製
流量:0.6ml/min
注入量:10μL
カラム温度:40℃
溶離液:THF
注入試料濃度:0.2重量%
検出器:示差屈折計
なお、重量平均分子量はポリスチレン換算により算出した。
【0124】
<アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度(Tg)(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tg(℃)として下記の文献値を用い、下記の式により求めた。
【0125】
式:1/(Tg+273)=Σ[Wn/(Tg+273)]
(式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wn(−)は各モノマーの重量分率、Tg(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。)
ブチルアクリレート(BA):−55℃
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA):−32℃
2−ヒドロキシエチルメタリレート(HEMA):55℃
2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA):−7℃
アクリル酸:106℃
なお、文献値として「アクリル樹脂の合成・設計と新用途開発」(中央経営開発センター出版部発行)、メーカーカダログを参照した。
【0126】
実施例1
(粘着剤溶液の調整)
製造例1で得られたアクリル系ポリマー(A1)溶液(約35重量%)を酢酸エチルで29重量%に希釈し、この溶液のアクリル系ポリマー100重量部(固形分)に対して、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:コロネートHX、日本ポリウレタン工業(株)製)22重量部、スズ触媒としてジラウリン酸ジオクチルスズ0.015重量部を加えて、25℃付近に保って約1分間混合撹拌を行い、アクリル系粘着剤組成物(1)を調製した。
【0127】
(透明導電性フィルム用キャリアフィルムの作製)
上記アクリル系粘着剤組成物(1)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材(厚さ125μm、支持体)の片面に塗布し、150℃で90秒間加熱して、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施したPET剥離ライナー(厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合せ、50℃で1日間保存して、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを作製した。なお、使用時には、前記剥離ライナーは除去して使用した。
【0128】
実施例2〜10、比較例1〜6
表2に示すように、アクリル系ポリマーの種類や、粘着剤組成物を構成する架橋剤又はその配合量を変更し、さらに、比較例3、4では、スズ触媒に代えて鉄触媒(アセチルアセトン第二鉄)を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを作製した。
【0129】
実施例、及び比較例で得られた透明導電性フィルム用キャリアフィルムについて下記評価を行った。
【0130】
<粘着力測定>
被着体として、SUS板(SUS430BA)に固定された幅50mm、長さ100mmの透明導電性フィルム(商品名:V150−OFJ、PETフィルムの片面に透明導電層を有し、他の片面にアンチブロッキング層(0.8μmのアクリル粒子を5重量%未満含有する、アモルファスシリカ、アクリル系モノマー、光開始剤、添加剤で構成される塗コーティング組成物から形成されている)を有するフィルム、日東電工(株)製)のアンチブロッキング層面に、透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の粘着面を貼り合せた(貼り合わせ機にて圧着:0.25MPa、圧着速度2.0m/分)。次いで、140℃で90分間加熱し、その後30分以上、常温(25℃)で放置した後、同環境下で万能引張試験機を用いて、剥離速度0.3m/分(低速剥離)、及び、10m/分(高速剥離)、剥離角度180°の条件で透明導電性フィルムから透明導電性フィルム用キャリアフィルムを剥離し、このときの剥離力(N/50mm)を測定した。
【0131】
<ジッピング>
被着体として、SUS板(SUS430BA)に固定された幅50mm、長さ100mmの透明導電性フィルム(商品名:V150−OFJ、PETフィルムの片面に透明導電層を有し、他の片面にアンチブロッキング層(0.8μmのアクリル粒子を5重量%未満含有する、アモルファスシリカ、アクリル系モノマー、光開始剤、添加剤で構成される塗コーティング組成物から形成されている)を有するフィルム、日東電工(株)製)のアンチブロッキング層面に、透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の粘着面を貼り合せた(貼り合わせ機にて圧着:0.25MPa、圧着速度2.0m/分)。次いで、140℃で90分間加熱し、その後30分以上、常温(25℃)で放置した後、同環境下で万能引張試験機を用いて、剥離速度0.3m/分、剥離角度180°の条件で透明導電性フィルムから透明導電性フィルム用キャリアフィルムを80mm剥離し、このときの剥離力(N/50mm)を測定した。上記剥離力の後半60mm分の測定データを用いて、下記の式によりジッピングの有無を評価した。
〇:ΔF/F(Ave)<15%(ジッピングが発生しない)
×:ΔF/F(Ave)≧15%(ジッピングが発生する)
ΔF:F(Max)−F(Min)
(上記式中、F(Max)は、最大剥離力であり、F(Min)は、最小剥離力である)
F(Ave):平均剥離力
【0132】
【表2】
表2中、
A1〜A14は、それぞれ、製造例1〜12で製造された(メタ)アクリル系ポリマーであり、
C/HXは、イソシアネート系架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、商品名:コロネートHX、日本ポリウレタン工業(株)製)、
C/Lは、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物、商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)、
スズ触媒は、ジラウリン酸ジオクチルスズ、
鉄触媒は、アセチルアセトン第二鉄
を示す。
【符号の説明】
【0133】
1 粘着剤層
2 支持体(基材)
3 透明導電性フィルム用キャリアフィルム
4 透明導電層
5 透明基材
6 透明導電性フィルム
7 機能層
8 機能層付透明導電性フィルム
9 積層体
A 粘着面
図1
図2
図3