(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
(スキャナ装置の構成の説明)
本実施形態のスキャナ装置は、一般物体認識(generic object recognition)の技術を利用する。一般物体認識とは、対象となる商品(オブジェクト)をカメラで撮像した画像データの中から当該商品の名称や種別等を認識する技術である。コンピュータは、画像データからこの画像データの中に含まれる商品の外観特徴量を抽出する。そしてコンピュータは、抽出した外観特徴量と認識辞書ファイルに登録された基準画像の特徴量データとを照合して類似度を算出し、この類似度に基づいて当該商品の名称や種別等を認識する。画像データの中に含まれる物品を認識する技術については、下記の文献に詳しく解説されている。
柳井 啓司,“一般物体認識の現状と今後”,情報処理学会論文誌,Vol.48,No.SIG16[平成28年5月20日検索],インターネット< URL: http://mm.cs.uec.ac.jp/IPSJ-TCVIM-Yanai.pdf >
また、画像データをオブジェクト毎に領域分割することによって一般物体認識を行う技術については、下記の文献に詳しく解説されている。
Jamie Shottonら,“Semantic Texton Forests for Image Categorization and Segmentation”,[平成28年5月20日検索],インターネット< URL: http://jamie.shotton.org/work/publications/cvpr08.pdf#search='Jamie+Shotton+Semantic' >
【0009】
図1は、本実施形態に係るスキャナ装置100の外観を示す外観図である。
図1に示すように、スキャナ装置100は縦型のスキャナ装置であり、店舗の会計場所に設置される。スキャナ装置100は、対面したオペレータの目よりも低い位置に撮像窓11aが位置するように、サッカー台2の上方に備えられた筐体11の内部に設置される。筐体11は、直方体形状をなす箱状に形成されており、筐体11の正面壁に撮像窓11aを有し、筐体11の正面前方に位置したオペレータと対面する。サッカー台2は、買物籠等を一時的に載置する置き台である。スキャナ装置100の上部には、操作入力部3と表示器4とが配設される。操作入力部3は、タッチパネル付き表示器およびキーボード等を有し、店員であるオペレータの操作を受け付ける。表示器4は、客側に向けて設置されて、商品の値段等を表示する。
【0010】
スキャナ装置100は、スキャナ本体10と、このスキャナ本体10を支持する支持部20とを備える。支持部20は、サッカー台2に立設される。スキャナ本体10は、筐体11に内蔵されて、支持部20の上部に取り付けられる。
【0011】
(撮像装置の構成の説明)
以下、
図2,
図3を用いて、スキャナ本体10が備える撮像装置12の詳細構成について説明する。
図2は、スキャナ装置100に内蔵されたスキャナ本体10が備える撮像装置12の側面図である。撮像装置12は、本発明における撮像部の一例である。また、
図3(a)は、撮像装置12の正面図(P矢視図)である。そして、
図3(b)は、スキャナ装置100の撮像窓11aに設置される透過板15の正面図(Q矢視図)である。
【0012】
スキャナ本体10は、筐体11の内部に、
図2に示すCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子12aを有する撮像装置12と、撮像装置12の撮像領域Eに向かって照明光を照射する照明光源13と、撮像素子12aが撮像した商品の画像データに対して、当該商品の認識に係る処理を実行する、非図示の画像処理ボードと、を備える。照明光源13は、撮像装置12の撮像レンズ17の外周近傍に設置されており、複数の白色LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)13a、13b、13c、13d(13c、13dの詳細な設置位置は
図3(a)に示す)を備える。
【0013】
なお、以降の説明のために、
図2に示す座標系xyzを設定する。すなわち、撮像素子12aの左右方向(水平方向)に沿う座標軸x、撮像素子12aの上下方向(鉛直方向)に沿う座標軸y、撮像レンズ17の光軸A1に沿う座標軸zをそれぞれ設定する。
【0014】
撮像窓11aは、
図3(b)に示すように、正面視で略矩形状に形成される。
【0015】
撮像窓11aは、透過性を有する平面状の透過板15によって形成される。透過板15は、例えば、透明なガラスや樹脂製である。透過板15の外縁は筐体11(
図1)に支持される。具体的には、透過板15は、撮像窓11aの周縁部において、接着剤等の固定手段を用いて筐体11に固定される。
【0016】
撮像装置12は、
図3(b)に示すように、撮像窓11aを正面視したときに、撮像窓11aの略中央位置に配置される。撮像装置12に装着された撮像レンズ17は、光軸A1が、撮像窓11aの略中央位置において透過板15と直交するように設置されている。撮像装置12は、筐体11の内側から、撮像窓11aを通して、撮像窓11aの外側に形成される
図2に示す撮像領域Eにオペレータが翳した対象物(商品)の外観を撮像する。
【0017】
撮像装置12は、撮像した商品の外観を示す画像データを出力する。そして、出力された画像データは、前述した非図示の画像処理ボードに入力される。画像処理ボードは、画像データの中から当該商品の名称や種別等を認識する一般物体認識処理を行う。一般物体認識処理は周知の技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0018】
画像データに写っている商品の名称や種別等の認識が完了した後、スキャナ装置100は、認識結果を、
図1に図示しないPOS(Point Of Sales)端末に送信する。そして、POS端末は、受信した認識結果に基づいて、商品の売上登録処理および決済処理を含む、いわゆる販売データ処理を行う。なお、販売データ処理の内容は周知であって、なおかつ本発明の要旨ではないため、詳細説明は省略する。
【0019】
図3(a)に示すように、撮像装置12の撮像レンズ17の外周近傍には、照明光源13(白色LED13a、13b、13c、13d)が設置されている。照明光源13は、撮像領域Eの外側の領域に設置されて、撮像領域Eに対して照明光を照射する。4個の白色LED(13a、13b、13c、13d)は、撮像領域Eの内部をできるだけ均一に照明するために、撮像レンズ17の光軸A1に関して対称な位置に設置されている。また、各白色LED(13a、13b、13c、13d)の光軸は互いに略平行になるように配置されている。なお、本実施形態では照明光源13は4個の白色LED(13a、13b、13c、13d)で構成されるものとして説明するが、LEDの個数は4個に限定されるものではない。
【0020】
照明光源13から照射された照明光は、撮像窓11aの外側の撮像領域Eに位置した対象物(商品)で反射して、撮像窓11aから筐体11内に入射して、撮像レンズ17を通して撮像素子12aに撮像される。
【0021】
撮像装置12における撮像素子12aの撮像可能範囲は、撮像レンズ17の特性によって定まる。本実施形態の撮像レンズ17は固定焦点レンズであって、焦点位置(ピントが最も合う位置)は撮像レンズ17の先端から一定の距離だけ離れた位置にある。この焦点位置に撮像物である商品が置かれた時に、解像度が最も高い鮮明な画像が撮像される。そして、焦点位置から撮像素子12aに対して近づく方向および遠ざかる方向に撮像物である商品が置かれるにしたがって、ピントがぼけた解像度の低い画像が撮像される。
【0022】
図3(b)に示すように、撮像レンズ17と透過板15の間には、撮像レンズ17の光軸A1(
図2)と略直交する位置に、矩形上のフィルタ14が設置されている。フィルタ14は透明で透光性を有する、例えばポリカーボネート等の樹脂で形成されている。フィルタ14の撮像装置12側の表面14a(
図2)には、照明光源13を構成する白色LED(13a、13b、13c、13d)とそれぞれ対応する位置に、遮光部材16(16a、16b、16c、16d)が設置されている。すなわち、フィルタ14は、撮像素子12aが撮像レンズ17を通して撮像領域Eを撮像する際に光を透過させる透光部材であるとともに、遮光部材16の支持部材である。なお、遮光部材16(16a、16b、16c、16d)の設置位置およびその形状について、詳しくは後述する。
【0023】
遮光部材16(16a、16b、16c、16d)は、プレスカッター、レーザカッター等を用いた型抜き加工によって成形された、遮光性を有する黒色のシールである。そして、遮光部材16(16a、16b、16c、16d)は、接着剤によってフィルタ14の撮像装置12側の表面14aに貼付されている。
【0024】
なお、フィルタ14の中央部には、
図3(b)に示すように孔部18が形成されている。孔部18は、撮像素子12aが、撮像窓11aの外側に翳された対象物である商品をできるだけ鮮明に画像化するために設けるものである。
【0025】
(遮光部材の設置位置の説明)
次に、
図4を用いて、遮光部材16の設置位置について説明する。なお、前述した複数の遮光部材16(16a、16b、16c、16d)(
図3(b))のうち、白色LED13aから出射した照明光を遮光する遮光部材16aについてのみ説明する。
【0026】
図4に示すように、白色LED13aから出射した照明光のうち、光線Ra1は、点S1においてフィルタ14に入射する。そして、光線Ra1はフィルタ14を透過して透過板15(撮像窓11a)の点S2に到達する。光線Ra1は点S2で正反射して、光線Ra2としてフィルタ14の点S3に到達する。そして、光線Ra2はフィルタ14を透過して、迷光として撮像素子12aに観測される。このとき、遮光部材16aは、点S1に入射した光線Ra1または点S3に入射した光線Ra2を遮光する位置に設置される。したがって、撮像素子12aは光線Ra2を観測しない。すなわち、迷光は発生しない。なお、
図4において、遮光部材16aは、点S1に到達した光線Ra1と点S3に到達した光線Ra2とをともに遮光する位置に設置しているが、遮光部材16aは、点S1に到達した光線Ra1または点S3に到達した光線Ra2のいずれか一方を遮光できる位置に設置すればよい。
【0027】
また、
図4に示すように、白色LED13aから出射した照明光のうち、光線Rb1は、点S4においてフィルタ14に入射する。そして、光線Rb1は点S4で正反射して、光線Rb2として撮像素子12aに観測される。この光線Rb2も迷光として撮像素子12aに観測される。このとき、遮光部材16aは、点S4に入射した光線Rb1を遮光する位置に設置される。したがって、撮像素子12aは光線Rb2を観測しない。すなわち、迷光は発生しない。
【0028】
白色LED13aから出射して、フィルタ14または透過板15に到達した光線が、正反射して撮像素子12aに入射しない条件は、白色LED13aの位置と、撮像素子12aの位置と、フィルタ14の位置と、透過板15の位置に基づいて、予め計算することができる。したがって、スキャナ本体10のレイアウトが決まってさえいれば、予め遮光部材16aの設置位置と大きさおよび形状を、迷光が発生しない条件で設計することができる。
【0029】
(遮光部材に到達した照明光の挙動の説明(フィルタに直交する方向))
次に、スキャナ装置100において、照明光源13から出射して遮光部材16に到達した照明光の挙動について、
図5を用いて説明する。
図5は、yz平面上における照明光の挙動について説明する図である。なお、いずれの白色LED(13a、13b、13c、13d)から出射した照明光も、当該白色LED(13a、13b、13c、13d)とそれぞれ対応する位置に設置された遮光部材16(16a、16b、16c、16d)に到達した際に同様の挙動を示す。ここでは、代表して、白色LED13aから出射した照明光が、遮光部材16aに到達した際の挙動について説明する。
【0030】
図5(a)は、白色LED13aから出射した照明光の、型抜き加工されたシールで形成された遮光部材16aの外縁部17aにおけるyz平面上の挙動について説明する図である。
【0031】
白色LED13aから出射して遮光部材16aに到達した照明光のうち、遮光部材16aの表面に到達した光線は遮光される。したがって、遮光部材16aの表面に到達した光線はフィルタ14の裏面14b側の撮像領域E(
図2)には至らない。一方、遮光部材16aに対して、外縁部17aよりも外側に到達した光線、例えば、
図5(a)に示す光線R1は、一部がフィルタ14を透過して、例えば光線R13として撮像領域Eに至る。
【0032】
また、光線R1の一部は、フィルタ14の表面14aで正反射して、光線R11として撮像素子12aの方向に向かう。仮に、この光線R11が撮像素子12aに届いたときは、撮像素子12aには光線R11による明るい像が形成される。この場合、光線R11はいわゆる迷光となる。
【0033】
なお、フィルタ14の表面14aに到達した光線R1の一部は、屈折してフィルタ14の裏面14bに至るが、裏面14bに到達した光線の一部は、フィルタ14の裏面14bで正反射する。そして、光線R12として撮像素子12aの方向に向かう。仮に、この光線R12が撮像素子12aに届いたときは、撮像素子12aには光線R12による明るい像が形成される。すなわち、光線R12も、前述したのと同様に迷光となる。
【0034】
遮光部材16aは、このような迷光の発生を防止する位置に設置されているため、白色LED13aから出射した照明光がフィルタ14の表面14aおよび裏面14bで正反射した際に、正反射光が迷光となって撮像素子12aに観測されることはない。
【0035】
なお、遮光部材16aを設置することによって、迷光を防止することができる代わりに、白色LED13aから出射した照明光の一部が遮光部材16aによって遮光されるため、撮像領域Eにおいて、撮像物である商品を照明する光量が減少してしまう。そのため、照明光源13として複数の白色LED(13a、13b、13c、13d)を設置することによって、減少した光量を補うことができる。また、図示しないが、白色LED(13a、13b、13c、13d)とは別に、撮像領域Eの内部を照明する別の白色LEDを設置することによって、光量の減少を補ってもよい。
【0036】
次に、白色LED13aから出射した照明光のうち、遮光部材16aの外縁部17aに到達した光線の挙動について説明する。外縁部17aに到達した光線R1の一部は、外縁部17aにおいて回折して、遮光部材16aの厚さ方向に沿って形成された外周面である辺縁部17bに回り込む。そして、辺縁部17bに回り込んだ光線R1は、辺縁部17bを形成する面の状態に応じた反射特性を呈する。
【0037】
本実施形態で使用する遮光部材16aは、プレスカッター、レーザカッター等を用いた型抜き加工によって成形されたものである。したがって、遮光部材16aの外周面を形成する辺縁部17bは、微小な凹凸が少なく、遮光部材16aの外周方向および厚さ方向に亘って、法線方向が連続する滑らかな面を形成している。すなわち、辺縁部17bがなす面は、平滑面に近い状態にある。そのため、回折によって辺縁部17bに回り込んだ光線R1は、正反射性が高い挙動を示す。すなわち、遮光部材16aの辺縁部17bに到達した光線R1の多くは正反射して、フィルタ14の表面14aまたは裏面14bに到達する。そして、光線R1はフィルタ14の表面14aまたは裏面14bにおいて屈折して撮像領域Eに向けて進行するか、もしくは、フィルタ14の表面14aまたは裏面14bにおいて正反射して撮像装置12の側に進行する。
【0038】
本実施形態にあっては、遮光部材16aは、辺縁部17bに到達した光線R1の正反射光についても、撮像素子12aに入射しない設置位置と大きさおよび形状に設計されている。したがって、遮光部材16aは、辺縁部17bに到達した光線R1が迷光となるのを防止する。なお、外縁部17aおよび辺縁部17bに到達した光線R1の一部は、外縁部17aおよび辺縁部17bにおいて拡散反射(乱反射)するが、外縁部17aおよび辺縁部17bを構成する面は平滑面に近い状態であるため、拡散反射光の量は少ない。したがって、撮像素子12aが撮像する遮光部材16aの像は、迷光によって、外縁部17aおよび辺縁部17bが明るく光った像にはならない。他の遮光部材16b、16c、16dについても同様である。
【0039】
次に、比較例として、
図5(b)を用いて、フィルタ14の表面14aに、シルク印刷等の印刷によって形成した遮光部材16xを設置した場合における、照明光の挙動について説明する。
図5(b)は、印刷によって形成した遮光部材16xの外縁部17xおよび辺縁部17yにおける照明光の挙動を説明する図である。
【0040】
遮光部材16xは、前述した遮光部材16aと同様に、遮光部材16xに到達した光線を遮光することによって、フィルタ14の表面14aまたは裏面14bにおける正反射光による迷光の発生を防止する。なお、印刷によって形成された遮光部材16xは、布等の網目によって形成された版を通して押し出されたインクによって形成されるため、遮光部材16xの外縁部17xおよび辺縁部17yを構成する面は、一般に、微小でランダムな凹凸を有する粗面を形成している。すなわち、遮光部材16xの外周面は、外周方向および厚さ方向に亘って、法線方向が不連続な面となる。
【0041】
図5(b)において、白色LED13aから出射した照明光である光線R2の一部は、外縁部17xに到達した後、外縁部17xにおいて回折することによって辺縁部17yに回り込む。そして、光線R2の一部は、外縁部17xおよび辺縁部17yにおいて拡散反射(乱反射)する。このとき、拡散反射が発生した外縁部17xおよび辺縁部17yの点は、あたかもそこに点光源が存在するかのようにあらゆる方向に光を照射する。すると、拡散反射した光線のうち、例えば、
図5(b)に示す光線R21と光線R22の間の方向に向かう拡散反射光は撮像素子12aに到達する。すなわち、撮像素子12aは迷光を観測する。
【0042】
また、外縁部17xで拡散反射した光線のうち、フィルタ14の裏面14bに到達した光線は、裏面14bで正反射して、撮像素子12aの方向に向かって進行する。そして、例えば、
図5(b)に示す光線R23と光線R24の間の方向に向かう正反射光は撮像素子12aに到達する。すなわち、撮像素子12aは迷光を観測する。
【0043】
さらに、光線R2の一部は、外縁部17xにおいて回折して辺縁部17yに到達する。辺縁部17yを構成する面も拡散反射面をなしているため、辺縁部17yにおける拡散反射光は撮像素子12aに到達する。すなわち、撮像素子12aは迷光を観測する。
【0044】
遮光部材16xの外縁部17xおよび辺縁部17yに到達した光線R2の多くは拡散反射(乱反射)することによって、前述した挙動をなす。したがって、撮像装置12は、遮光部材16xの外周面を形成する外縁部17xおよび辺縁部17yに、無数の点光源が存在するような画像を観測する。
【0045】
このような拡散反射が、遮光部材16xの外周面を形成する外縁部17xおよび辺縁部17yのうち、白色LED13aから出射した照明光が到達する全ての点で発生するため、
図5(b)の例では、撮像装置12は、遮光部材16xの外縁部17xおよび辺縁部17yが光った画像を観測する。さらに、前述したように、フィルタ14の裏面14bにおける正反射光も同時に観測される。したがって、撮像装置12は、遮光部材16xの外縁部17xに沿う2重の輪郭を観測する。実際の観測される画像の実例については後述する。
【0046】
(遮光部材に到達した照明光の挙動の説明(フィルタの面方向))
次に、スキャナ装置100において、照明光源13から出射して遮光部材16に到達した照明光の挙動について、
図6を用いて説明する。
図6は、xy平面上における照明光の挙動について説明する図である。なお、いずれの白色LED(13a、13b、13c、13d)から出射した照明光も、当該白色LED(13a、13b、13c、13d)と対応する位置に設置された遮光部材16(16a、16b、16c、16d)に到達した際に同様の挙動を示す。ここでは、代表して、白色LED13aから出射した照明光が、遮光部材16aに到達した際の挙動について説明する。
【0047】
図6(a)は、白色LED13aから出射した照明光の、型抜き加工されたシールで形成された遮光部材16aの外縁部17aにおけるxy平面上の挙動について説明する図である。
【0048】
白色LED13aから出射して遮光部材16aに到達した照明光のうち、遮光部材16aの表面に到達した光線は遮光される。したがって、撮像素子12aから見てフィルタ14の裏面14b側の撮像領域E(
図2)には至らない。一方、遮光部材16aに対して、外縁部17aよりも外側に到達した光線、例えば
図6(a)に示す光線R3a、R3bの一部は、フィルタ14の表面14a(
図5(a))上の点P1、P2においてそれぞれ正反射して、光線R31、R32として撮像素子12aの方向に向かう。光線R31、R32が撮像素子12aに届いたときは、撮像素子12aには光線R31,R32による明るい像が形成される。すなわち、光線R31、R32はいわゆる迷光となる。しかし、前述したように、遮光部材16aは、このような迷光の発生を防止する位置に設置されているため、光線R31、R32は撮像素子12aに観測されない。
【0049】
光線R3a、R3bの一部は、外縁部17aにおいて回折して辺縁部17b(
図5(a)に回り込む。辺縁部17bを構成する面は平滑面に近い状態をなしているため、回折によって辺縁部17bに回り込んだ光線は、辺縁部17bを構成する面において正反射する。そして、正反射光は、さらにフィルタ14の表面14aおよび裏面14bにおいて正反射して、撮像素子12aの方向に向かう。これらの正反射光は、いずれも撮像素子12aには到達しないように、遮光部材16aの設置位置と大きさおよび形状が決められている。すなわち、撮像素子12aは迷光を観測しない。
【0050】
図7(b)は、
図5(a)、
図6(a)に示した条件のときに、撮像装置12が実際に観測した遮光部材16aを含む画像の一例である。
図7(b)に示すように、遮光部材16aを設置することによって、遮光部材16aを設置しないときに観測される白色LED13aの正反射像(
図7(a)参照)が観測されないことがわかる。すなわち、スキャナ装置100が撮像対象である商品の画像を認識する処理を行う際に、認識を妨げることがない。
【0051】
次に、比較例として、
図6(b)を用いて、フィルタ14の表面14aに、シルク印刷等の印刷によって形成した遮光部材16xを設置した場合における、照明光の挙動について説明する。
図6(b)は、印刷によって形成した遮光部材16xの外縁部17xおよび辺縁部17y(
図5(b))における照明光の挙動を説明する図である。
【0052】
遮光部材16xの外縁部17xを構成する面は、前述したように、微小でランダムな凹凸を有する粗面を形成している。すなわち、遮光部材16xの外縁部17xを構成する面は、遮光部材16xの外周方向に亘って、法線方向が不連続な面を形成する。したがって、白色LED13aから出射して外縁部17xに到達する光線、例えば光線R4a、R4bの一部は、外縁部17xにおいて拡散反射(乱反射)する。このとき、拡散反射が発生した外縁部17xの点P3、P4は、あたかも点P3、P4に点光源が存在するかのようにあらゆる方向に光を拡散反射する。このとき、点P3において拡散反射した光線のうち、例えば、光線R41と光線R42の間の方向に向かう拡散反射光は撮像素子12aに到達する。すなわち、撮像素子12aは迷光を観測する。同様に、点P4において拡散反射した光線のうち、例えば、光線R43と光線R44の間の方向に向かう拡散反射光は撮像素子12aに到達する。すなわち、撮像素子12aは迷光を観測する。
【0053】
さらに、外縁部17xに到達した光線の一部は、回折によって辺縁部17y(
図5(b))に回り込む。そして、辺縁部17yに回り込んだ光線は、辺縁部17yにおいて拡散反射する。そして拡散反射した光線の一部は撮像素子12aに到達するため、撮像素子12aは迷光を観測する。
【0054】
このような拡散反射が、遮光部材16xの外周面を形成する外縁部17xおよび辺縁部17yのうち、白色LED13aから出射した照明光が到達する全ての点で発生するため、
図6(b)の例では、撮像装置12は、遮光部材16xの外縁部17xおよび辺縁部17yが光った画像を観測する。さらに、前述したように、フィルタ14の裏面14bにおける正反射光も同時に観測される。したがって、撮像装置12は、遮光部材16xの外縁部17xに沿う2重の輪郭を観測する。実際の観測される画像の実例については後述する。
【0055】
図7(c)は、
図5(b)、
図6(b)に示した条件のときに、撮像装置12が実際に観測した遮光部材16xを含む画像の一例である。
図7(c)に示す2重の輪郭は、遮光部材16xの外縁部17xおよび辺縁部17yにおける拡散反射光によって生じる光線と、拡散反射光がフィルタ14の裏面14bにおいて正反射光した光線と、に対応する。この2重の輪郭は、スキャナ装置100が撮像対象である商品の画像を認識する処理を行う際に、認識を妨げるノイズとなる。したがって、前述した
図7(b)のように、この2重の輪郭の発生を防止できるのが望ましい。
【0056】
(遮光部材の貼付方法の説明)
本実施形態において、遮光部材16(16a、16b、16c、16d)は、接着剤19によってフィルタ14の表面14aに貼付される。接着剤19は、本発明における接着部材の一例である。
【0057】
図8を用いて、遮光部材16aの貼付構造について説明する。
図8(a)は、遮光部材16aの貼付構造を示す図である。
図8(a)に示すように、遮光部材16aは、遮光部材16aの裏面側に塗布された接着剤19aによって、フィルタ14の表面14aに貼付されている。このとき、接着剤19aは、遮光部材16aの辺縁部17bよりも所定量だけ内側に設定された糊代部19cの内部にのみ塗布されている。そして、遮光部材16aをフィルタ14の表面14aに貼付したときに、圧着された接着剤19aは、糊代部19cを超えて外側にはみ出さない。すなわち、この場合には、照明光源13を構成する白色LED13a(
図2)から出射した照明光は、接着剤19aには照射されないため、接着剤19aが、照明光の挙動に影響を与えることはない。
【0058】
なお、前述した糊代部19cの設置位置を規定する所定量は、塗布する接着剤19aの量、接着剤19aの粘度、遮光部材16aをフィルタ14に圧着した際の圧着力等に基づいて、予め決めておくことができる。一例として、直径8mmの遮光部材16aに対して、外周から例えば0.5mmの位置に糊代部19cを設ける。
【0059】
次に、比較例として、
図8(b)を用いて、遮光部材16aの辺縁部17bから接着剤19bがはみ出した場合について説明する。
図8(b)の例では、接着剤19bは、遮光部材16aの裏面全体に塗布されている。そして、遮光部材16aをフィルタ14の表面14aに貼付したときに、圧着された接着剤19bが辺縁部17bから遮光部材16aの外側へはみ出している。このように接着剤19bがはみ出した場合、照明光源13を構成する白色LED13aから出射した照明光は、辺縁部17bからはみ出した接着剤19bに照射される。接着剤19bに照射された照明光は、接着剤19bの表面で正反射または拡散反射するため、撮像装置12が観測した遮光部材16aの画像の中には、接着剤19bからの反射光が観測される。この接着剤19bからの反射光は、撮像装置12が撮像対象である商品の画像を認識する処理を行う際にノイズとなるため、スキャナ装置100の認識処理の妨げになる。
【0060】
図7(d)は、撮像装置12によって観測される、はみ出した接着剤19bからの反射光を撮像した画像の一例を示す図である。
図7(d)に示すように、はみ出した接着剤19bからの反射光が迷光として観測される。
【0061】
なお、本実施形態にあっては、遮光部材16aをフィルタ14に圧着した際に、接着剤19aが糊代部19cの外側にはみ出さないものとして説明したが、仮に接着剤19aが糊代部19cの外側にはみ出した場合であっても、遮光部材16aの外周からはみ出さなければ、接着剤19aが照明光の挙動に影響を与えることはない。
【0062】
以上説明したように、実施形態のスキャナ装置100によれば、撮像装置12(撮像部)の撮像領域Eに向けて、照明光源13が撮像装置12の側から照明光を照射する。そして、照射された照明光の一部は、照明光源13と撮像領域Eとの間に、撮像装置12の光軸A1と略直交する位置に設置された透光性を有するフィルタ14の面上に設置された、辺縁部17b(外周面)を備えた遮光部材16によって遮光される。遮光部材16は、照明光によって発生する、撮像窓11aの内側に反射して撮像装置12に入射する迷光と、フィルタ14の面で反射して撮像装置12に入射する迷光と、の発生を防止する位置に設置される。したがって、簡易な構成で迷光の発生を防止することができる。
【0063】
また、実施形態のスキャナ装置100によれば、遮光部材16(16a、16b、16c、16d)の辺縁部17b(外周面)は、辺縁部17bにおける法線方向が、遮光部材16の外周方向および遮光部材16の厚さ方向に沿って連続している。したがって、辺縁部17bに到達した照明光は、高い正反射性を呈するため、反射光の進行方向を予め計算によって求めることができる。すなわち、迷光を確実に防止することが可能な遮光部材の設置位置と大きさおよび形状を予め算出することができる。
【0064】
そして、実施形態のスキャナ装置100によれば、遮光部材16(16a、16b、16c、16d)は、フィルタ14の撮像装置12(撮像部)の側の面(表面14a)に、接着剤19a(接着部材)によって貼付される。したがって、照明光によって発生する、撮像窓11aの内側に反射して撮像装置12に入射する迷光と、フィルタ14の面で反射して撮像装置12に入射する迷光と、をともに確実に防止することができる。
【0065】
さらに、実施形態のスキャナ装置100によれば、接着剤19a(接着部材)は、遮光部材16(16a、16b、16c、16d)の外縁から所定量だけ内側の範囲に塗布される。したがって、遮光部材16(16a、16b、16c、16d)をフィルタ14に貼付した際に、接着剤19aが遮光部材16の外周からはみ出さない。したがって、接着剤19aは照明光の挙動に影響をおよぼさない。
【0066】
また、実施形態のスキャナ装置100によれば、フィルタ14は、撮像装置12(撮像部)の撮像範囲Eの一部に孔部18を有する。したがって、撮像素子12aは、撮像窓11aの外側に翳された対象物である商品を鮮明に画像化することができる。
【0067】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。