(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹凸形状表面の凸形状頂部から半透明メタリック層底面までの前記透明樹脂層の厚さが10〜500μmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
前記光輝層は前記基体層上に別体としてあり、前記光輝層が、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛、及びゲルマニウムから選択される金属、又はこれらの合金若しくは化合物を含む金属薄膜である、請求項1に記載の加飾フィルム。
前記基体層又は前記光輝性基体層と、前記透明樹脂層と、前記保護層との少なくとも一つの貯蔵弾性率が、周波数10Hz、引っ張りモードの条件で測定したときに110℃〜150℃の温度範囲で1×106Pa〜1.5×108Paである、請求項10に記載の加飾フィルム。
前記基体層又は前記光輝性基体層と、前記透明樹脂層との貯蔵弾性率が、周波数10Hz、引っ張りモードの条件で測定したときに110℃〜150℃の温度範囲で1×106Pa〜1.5×108Paである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
前記基体層又は前記光輝性基体層と、前記透明樹脂層と、前記保護層との貯蔵弾性率が、周波数10Hz、引っ張りモードの条件で測定したときに110℃〜150℃の温度範囲で1×106Pa〜1.5×108Paである、請求項10に記載の加飾フィルム。
前記透明樹脂層は、前記半透明メタリック層に隣接する略平坦な第1と第2の表面を有する第1透明樹脂層と、前記第1透明樹脂層上または上方にあり、前記凹凸形状表面に隣接する第1の表面と略平坦な第2表面を有する第2透明樹脂層とを有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の加飾フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の加飾フィルムは、基体層と、基体層上に基体層と別体である、あるいは基体層と一体である、凹凸形状表面を有する光輝層と、その光輝層の上または上方にある透明樹脂層と、透明樹脂層の上または上方にある略平坦な表面形状を有する半透明メタリック層とを有し、立体感及びフリップフロップ性を呈するものである。
【0019】
第1の実施形態における加飾フィルムは、基体層と、基体層と別体の凹凸形状表面を有する光輝層と、光輝層の上または上方にある透明樹脂層と、透明樹脂層の上または上方にある半透明メタリック層とを有する。このような構成にすることで、立体感等の視覚効果と、視角により模様を可視化又は不可視化することができ、広がり、深み、揺らぎ等を有する複雑なフリップフロップ性とを同時に発揮することができる。
【0020】
第2の実施形態における加飾フィルムは、基体層と光輝層が一体となった、凹凸形状表面を有し、光輝材を含む光輝性基体層と、光輝性基体層の上または上方にある透明樹脂層と、透明樹脂層の上または上方にある半透明メタリック層とを有する。このような構成にすることで、立体感等の視覚効果と、視角により模様を可視化又は不可視化することができ、広がり、深み、揺らぎ等を有する複雑なフリップフロップ性とを同時に発揮することができる。
【0021】
第1の実施形態における加飾フィルムにおいて、半透明メタリック層の可視光線透過率は10〜70%にすることができる。このような範囲であると、良好なフリップフロップ性を提供することができる。
【0022】
第2の実施形態における加飾フィルムにおいて、半透明メタリック層の可視光線透過率は15〜75%にすることができる。このような範囲であると、良好なフリップフロップ性を提供することができる。
【0023】
第1の実施形態における加飾フィルムにおいて、光輝層の厚さは10nm〜100μmにすることができる。このような範囲であると、光の反射性、隠蔽性を向上させることができるので、立体感、高級感等の視覚効果及びフリップフロップ性により優れた加飾フィルムを得ることができる。
【0024】
第1又は第2の実施形態における加飾フィルムにおいて、凹凸形状表面の深さは1μm〜100μmにすることができる。凹凸形状表面の深さは光の反射性、散乱性に影響を及ぼす。このような範囲であると、立体感、高級感等の視覚効果及びフリップフロップ性により優れた加飾フィルムを得ることができる。
【0025】
第1又は第2の実施形態における加飾フィルムにおいて、凹凸形状表面の凸形状頂部から半透明メタリック層底面までの透明樹脂層の厚さは10〜500μmにすることができる。このような範囲であると、立体感、高級感等の視覚効果及びフリップフロップ性により優れた加飾フィルムを得ることができる。
【0026】
第1の実施形態における加飾フィルムにおいて、光輝層は、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛及びゲルマニウムから選択される金属、又はこれらの合金若しくは化合物を含む金属薄膜を使用することができる。このような材料は光の反射性及び/又は色味に優れるので、立体感、高級感等の視覚効果及びフリップフロップ性により優れた加飾フィルムを提供することができる。
【0027】
第2の実施形態における加飾フィルムにおいて、光輝材は、アルミ光輝材又はパール光輝材を使用することができる。このような光輝材は、光の反射性及び/又は色味に優れるので、立体感、高級感等の視覚効果及びフリップフロップ性により優れた加飾フィルムを提供することができる。
【0028】
第1又は第2の実施形態における加飾フィルムにおいて、半透明メタリック層上または上方に保護層を含んでもよい。保護層を適用することによって、加飾フィルムに対して、表面保護性能、バリア性、耐候性、防汚性等の性能を付与することができ、また、立体感、高級感等の視覚効果を向上させることもできる。
【0029】
第1又は第2の実施形態における加飾フィルムにおいて、基体層又は光輝性基体層と、透明樹脂層と、任意に存在する保護層との少なくとも一つの貯蔵弾性率は、周波数10Hz、引っ張りモードの条件で測定したときに110℃〜150℃の温度範囲で1×10
6Pa〜1.5×10
8Paにすることができる。これらの層の貯蔵弾性率をこの範囲にすると、加飾フィルムに加わる応力及び/又は熱に基づく、凹凸形状の変形、消失、損傷等の不具合を防止することができる。したがって、立体形状を有する被着体に対してインサートモールド(IM)法、真空圧空成型法等の三次元曲面被覆(TOM)法など、によって加飾フィルムを適用する用途において特に好適に使用することができる。基体層又は光輝性基体層、透明樹脂層、及び任意に存在する保護層の全ての貯蔵弾性率が、上記の範囲に入ることが好ましい。
【0030】
第1又は第2の実施形態における加飾フィルムにおいて、透明樹脂層は、半透明メタリック層に隣接する略平坦な第1と第2の表面を有する第1透明樹脂層と、第1透明樹脂層上または上方にあり、凹凸形状表面に隣接する第1の表面と略平坦な第2表面を有する第2透明樹脂層とを有してもよい。このような層構造とすることで、凹凸形状表面を有する光輝層と半透明メタリック層との積層構造をより容易に形成することが可能になる。
【0031】
また、略平坦な第1透明樹脂表面上に、あるいは、第1の透明樹脂層及び第2の透明樹脂層との間に、種々の方法で意匠層を形成することもできる。意匠層を設けることで、加飾フィルムの意匠性をより向上させることができる。
【0032】
第1又は第2の実施形態における加飾フィルムを基体物品に貼り付けることで、立体感等の視覚効果を呈すると共に、視角により模様を可視化又は不可視化し得るフリップフロップ性を呈する物品を提供することができる。
【0033】
第1の実施形態における加飾フィルムの製造方法は、第1及び第2の主表面を有する透明樹脂層の第1の主表面にエンボスパターンを有する型を適用して、凹凸形状表面を有する透明樹脂層を提供する工程と、透明樹脂層の凹凸形状表面に光輝層を適用する工程と、光輝層上にコーティングにより基体層を形成する工程と、透明樹脂層の第2の主表面に半透明メタリック層を適用する工程と、を含み、半透明メタリック層を適用する工程が、半透明メタリック層を第2の主表面に直接適用する工程、又は半透明メタリック層を透明樹脂層とは別の透明樹脂層を介して第2の主表面に適用する工程である。
【0034】
第2の実施形態における加飾フィルムの製造方法は、第1及び第2の主表面を有する透明樹脂層の第1の主表面にエンボスパターンを有する型を適用して、凹凸形状表面を有する透明樹脂層を提供する工程と、透明樹脂層の凹凸形状表面にコーティングにより光輝材を含む光輝性基体層を形成する工程と、透明樹脂層の第2の主表面に半透明メタリック層を適用する工程と、を含み、半透明メタリック層を適用する工程が、半透明メタリック層を第2の主表面に直接適用する工程、又は半透明メタリック層を透明樹脂層とは別の透明樹脂層を介して前記第2の主表面に適用する工程である。
【0035】
これらの製造方法を採用することによって、立体感等の視覚効果を呈すると共に、視角により模様を可視化又は不可視化し得るフリップフロップ性を呈し、製造コストにも優れる加飾フィルムを提供することができる。
【0036】
第1又は第2の実施形態における加飾フィルムと基体部品とを用意し、加飾フィルムを3次元曲面被覆成型法により基体部品表面に適用して、加飾フィルムが基体部品表面に貼り付けられた部品を形成する、部品の製造方法を提供することもできる。この部品の製造方法により、立体感等の視覚効果を呈すると共に、視角により模様を可視化又は不可視化し得るフリップフロップ性を呈する外観を有する部品を提供できる。
【0037】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。図面の参照番号について、異なる図面において類似する番号が付された要素は、類似又は対応する要素であることを示す。
【0038】
本開示において「フィルム」には「シート」と呼ばれる物品も包含される。
【0039】
本開示において「フリップフロップ性」とは、加飾フィルム内部の凹凸形状に基づく模様が現れたり、消失したりする外観的性能を意味する。立体感及びフリップフロップ性を呈する加飾フィルムを備える物品の一例を
図4に示す。例えば、
図4に示す写真において、中央部の可視域では、多数の筋状のパターンを含む複雑な模様を視認することができるが、この領域に隣接する不可視領域では筋状のパターンや模様は視認することができない。この可視領域と不可視領域は観察者が物品を見る角度(視角)により変化する。
【0040】
本開示において、「貯蔵弾性率」とは、動的粘弾性測定装置を用いて、周波数10Hzの引っ張りモードで粘弾性測定を行ったときのせん断貯蔵弾性率G’である。
【0041】
本開示において「透明」とは、可視光領域の平均透過率が、約80%以上、好ましくは約90%以上であることを意味する。
【0042】
本開示において「半透明」とは、可視光領域の平均透過率が、約80%未満、好ましくは約75%以下であり、下地を完全に隠蔽しないことを意味する。
【0043】
本開示において、「略平坦な表面形状」とは、目視で明らかな凹凸がなく、例えば、半透明メタリック層表面で、少なくともメタリックな反射が生じうる平滑性を持つ表面状態をいう。
【0044】
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0045】
本開示において「3次元曲面被覆成形法」(TOM)とは、フィルム及び3次元形状を有する物品を準備する工程と、加熱装置を内部に有する真空チャンバ内にフィルム及び物品を配置する工程であって、フィルムが真空チャンバの内部空間を2つに分離し、分離された内部空間の一方に物品が配置される、工程と、フィルムを加熱装置によって加熱する工程と、物品が配置された内部空間とその反対側の内部空間を共に減圧雰囲気にする工程と、物品が配置された内部空間を減圧雰囲気にし、反対側の内部空間を加圧雰囲気又は常圧雰囲気としながら物品とフィルムとを接触させて、物品をフィルムによって被覆する工程とを含む成形方法をいう。
【0046】
図1に、本開示の第1の実施態様による立体感及びフリップフロップ性を有する加飾フィルム100の断面図を示す。加飾フィルム100は、半透明メタリック層120と、接合層130、透明樹脂層140と、凹凸形状表面を有する光輝層150と、基体層160とを含む。加飾フィルム100は、任意の要素として、意匠層、加飾フィルムを構成する層同士を接合する接合層、プライマー層、剥離ライナー、基体物品に加飾フィルムを取り付けるための接着層、表面を保護する保護層などの追加層をさらに含んでもよい。
図1では任意の要素として、保護層110、接合層130、接着層170、剥離ライナー180が示されている。加飾フィルム100内の矢印10は、入射する可視光線の光路を意味する。
【0047】
図1において、光輝層150は基体層160及び透明樹脂層140と隣り合っている。本開示において層同志が「隣り合う」とは、一方の層が他方の層の上または上方にある関係をいい、例えば、光輝層が基体層及び/又は透明樹脂層と直接接触している場合に加えて、光輝層と基体層及び/又は透明樹脂層との間に、プライマー層、薄い接合層などの他の層、及びコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理などの表面処理が介在する場合も含む。光輝層と基体層及び透明樹脂層とが直接接触していない場合、これらの層間の最遠距離は、一般に約10μm以下、約5μm以下、又は約1μm以下である。
【0048】
基体層として、様々な樹脂、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの共重合体又はこれらの混合物が使用できる。強度、耐衝撃性などの観点から、基体層としてポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びポリカーボネートが有利に使用できる。基体層は加飾フィルムを被着体に取り付けるための土台となる層である。基体層は、成形時の均一な伸びを提供する、及び/又は外部からの穿刺、衝撃などから構造体をより有効に保護する保護層として機能することもできる。基体層が接着性を有してもよい。接着性を有する基体層は後述する接着層と同じ材料で形成することができる。この実施態様では、加飾フィルムは、基体層の下部に接着層及び剥離ライナーを備える。接着層及び/又は存在する場合はプライマー層に、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理などの表面処理が適用されてもよい。基体層は、後述する光輝材を含むことができ、光輝層の性能も備える光輝性を有する基体層(以下、「光輝性基体層」という場合がある。)としてもよい。この場合、光輝層を適用しなくてもよい。
【0049】
基体層の厚さは様々であってよいが、加飾フィルムの成形性に悪影響を及ぼさずに、任意に、凹凸形状の変形、消失、損傷等の不具合を防止するという観点から、一般に、約10μm以上、約20μm以上、又は約50μm以上であり、約500μm以下、約200μm以下、又は約100μm以下とすることができる。基体層が平坦でない場合の基体層の厚さとは、基体層のうち最も薄い部分の厚さを意味する。
【0050】
いくつかの実施態様では、基体層の貯蔵弾性率が、周波数10Hz、引っ張りモードの条件で測定したときに110℃〜150℃の温度範囲で約1.0×10
6Pa以上、約1.5×10
6Pa以上、又は約2.0×10
6Pa以上、約1.5×10
8Pa以下又は約1.3×10
8Pa以下であってもよい。基体層の貯蔵弾性率が上記範囲であることにより、加飾フィルムに応力、熱などが加えられたとき又は加飾フィルムが変形したときに、光輝層又は光輝性基体層の破損を防止し、凹凸形状表面を維持することができる。その結果、応力、熱、変形を伴う場合であっても、加飾フィルムは、視角により変化する視覚効果(立体感、フリップフロップ性等)を発揮することができる。
【0051】
基体層は一層でもよく、多層構造を有してもよい。基体層が多層構造を有する場合、基体層の貯蔵弾性率とは、個々の層の貯蔵弾性率が複合した、多層構造全体について観測される一つの値を意味する。
【0052】
透明樹脂層として、様々な透明樹脂、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの共重合体又はこれらの混合物が使用できる。透明性、強度、耐衝撃性などの観点から、透明樹脂層として(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びポリカーボネートが有利に使用できる。透明樹脂層は外部からの穿刺、衝撃などから光輝層又は光輝性基体層の凹凸形状表面を保護する保護層として機能することができる。透明樹脂層は接着性を有してもよい。いくつかの実施態様では、透明樹脂層の上に接合層を介さずに、半透明メタリック層、意匠層などを直接ラミネートすることができる。接着性を有する透明樹脂層は後述する接合層と同じ材料で形成することができる。
【0053】
透明樹脂層の厚さには限定はないが、厚いほど、光輝性基体層の凹凸形状表面に由来する立体感、奥行き感のある外観が得られるため、約10μm以上であることが好ましく、より好ましくは約40μm以上、又は約50μm以上であってもよい。一方、透明樹脂層が厚すぎると、フリップフロップ性を人の目で感知しづらくなるため、約300μm以下、約200μm以下、又は約100μm以下とすることが好ましい。これらの透明樹脂層の厚み範囲であれば、加飾フィルムの成形性に悪影響を及ぼさずに立体感のある外観とともにフリップフロップ性を発現させることができる。また、透明樹脂層の厚さとは、透明樹脂層のうち最も薄い部分、即ち、凹凸形状表面の凸形状頂部から半透明メタリック層底面までの厚さ(t
2)を意味する。透明樹脂層の厚さは、半透明メタリック層と凹凸形状を有する光輝層又は光輝性基体層との間隔を確定する因子である。
図1において、光輝層150の凹凸形状表面で反射(散乱)して半透明メタリック層120を通過した可視光線10が、凹凸形状を模様として視認させる。この反射及び/又は散乱した可視光線10は、接合層(透明樹脂層)130側の半透明メタリック層120に入射するが、透明樹脂層の厚さ(t
2)によって、反射及び/又は散乱した可視光線10の半透明メタリック層120への入射角(半透明メタリック層の垂線と入射光との角度)が変動する。入射角が小さい可視光線は半透明メタリック層を透過することができるが、入射角が大きい可視光線は、半透明メタリック層を透過せずに内部側に反射し、異なる凹凸形状表面で再度反射されるため、凹凸形状模様の視認性も変動する。したがって、平坦な光輝層の場合とは異なり、凹凸形状を有する光輝層又は光輝性基体層を備える加飾フィルムにおいて、立体感とフリップフロップ性、特に、広がり、深み、揺らぎ等を有するより複雑なフリップフロップ性との両方の外観性能を発現させるためには、透明樹脂層の厚さ(t
2)を上記の範囲にすることが好ましい。
【0054】
なお、光輝層又は光輝性基体層の凹凸形状は、加飾フィルムに形成する模様のパターンに応じて凹凸の頻度、深さ、幅等は変化する。したがって、
図2に示すように、光10の反射行路は凹凸形状の状態を反映したものとなる。
【0055】
いくつかの実施態様では、透明樹脂層の貯蔵弾性率が、周波数10Hz、引っ張りモードの条件で測定したときに110℃〜150℃の温度範囲で約1.0×10
6Pa以上、約1.5×10
6Pa以上、又は約2.0×10
6Pa以上、約1.5×10
8Pa以下又は約1.3×10
8Pa以下であってもよい。透明樹脂層の貯蔵弾性率が上記範囲であることにより、加飾フィルムに応力、熱などが加えられたとき又は加飾フィルムが変形したときに、光輝層又は光輝性基体層の破損を防止し、凹凸形状表面を維持することができる。その結果、応力、熱、変形を伴う場合であっても、加飾フィルムは、視角により変化する視覚効果(立体感、フリップフロップ性等)を発揮することができる。
【0056】
透明樹脂層は一層でもよく、多層構造を有してもよい。透明樹脂層が多層構造を有する場合、透明樹脂層の貯蔵弾性率とは、個々の層の貯蔵弾性率が複合した、多層構造全体について観測される一つの値を意味する。透明樹脂層は、多層構造であってもよく、接着性を有してもよいため、
図1の接合層130が透明性を有するならば、接合層130は透明樹脂層(別の透明樹脂層)となり得る。後述するように、接合層130を第1の透明樹脂層、透明樹脂層140を第2の透明樹脂層と呼ぶこともできる。
【0057】
いくつかの実施態様では、基体層及び透明樹脂層の貯蔵弾性率が、周波数10Hz、引っ張りモードの条件で測定したときに110℃〜150℃の温度範囲で約1.0×10
6Pa以上、約1.5×10
6Pa以上、又は約2.0×10
6Pa以上、約1.5×10
8Pa以下又は約1.3×10
8Pa以下であってもよい。上記範囲の貯蔵弾性率を有する基体層と透明樹脂層とで凹凸形状部分を両側から支持するサンドイッチ構造とすることにより、例えばIM、TOMなどの真空成形法において加飾フィルムを大きく変形させたとき、例えば面積伸び率で100%以上又は200%以上となるように加飾フィルムを延伸したときでも、凹凸形状部分(光輝層、光輝性基体層)の破損を防止し、凹凸形状表面を維持することができる。その結果、応力、熱、変形を伴う場合であっても、加飾フィルムは、視角により変化する視覚効果(立体感、フリップフロップ性等)を発揮することができる。
【0058】
光輝層は、加飾フィルムを構成する層、例えば透明樹脂層又は基体層の上に真空蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、めっきなどによって形成されたアルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛、ゲルマニウムなどから選択される金属、又はこれらの合金若しくは化合物を含む金属薄膜であってよい。このような金属薄膜は高い光沢を有するため、特に優れた視覚効果を提供することができる。
【0059】
光輝層は、アルミニウムフレーク、蒸着アルミニウムフレーク、金属酸化物被覆アルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレークなどのアルミ光輝材、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物で被覆されたフレーク状のマイカ及び合成マイカなどのパール光輝材などの顔料が、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂などのバインダー樹脂に分散された光輝性樹脂層であってもよい。光輝層をアルミニウム、ニッケル、金、銀、銅などの金属箔とすることもできる。基体を構成する樹脂に上記の光輝材を配合して、光輝性基体とすることができる。光輝材の配合量は様々であってもよいが、光輝性、隠蔽性等を考慮し、光輝性基体に対し、約0.1質量%以上又は約0.3質量%以上、約12質量%以下又は約5質量%以下配合することができる。
【0060】
光輝層の凹凸形状表面は、例えば凹凸形状表面を有する透明樹脂層又は基体層の上に金属薄膜を堆積する、あるいは光輝性樹脂層組成物を塗布して乾燥又は硬化することにより形成することができる。光輝性基体層の凹凸形状表面は、例えば光輝材を含む基体自体に凹凸形状を適用する、あるいは、凹凸形状表面を有する透明樹脂層上に光輝性基体層組成物を塗布して乾燥又は硬化することにより形成することができる。
【0061】
一実施態様では、
図5に示すように、加飾フィルムの一部となる積層体(凹凸加飾部)を次のように形成することができる。剥離ライナー(図示せず)上に透明樹脂層310を塗布し、エンボスパターンを有する型を必要に応じて加熱しながら透明樹脂層310に適用して凹凸形状表面を有する透明樹脂層310が形成される。この凹凸形状表面に金属薄膜を蒸着等で堆積する、あるいは光輝性樹脂層組成物を塗布して乾燥又は硬化することにより光輝層320が形成される。次いで、光輝層320の凹凸形状表面を基体層330でその凹部を満たすように覆うことによって、加飾フィルムの一部となる積層体(凹凸加飾部)が形成される。または、上記透明樹脂層310の凹凸形状表面の凹部を満たすように光輝性基体層組成物を塗布して乾燥又は硬化することで、光輝層320を有さない加飾フィルムの一部となる積層体(凹凸加飾部)が形成される。剥離ライナーが適用された透明樹脂層表面は平滑性に優れるため、透明樹脂層上に適用する半透明メタリック層の平滑性も同時に向上する。したがって、この積層体(凹凸加飾部)を採用して形成した加飾フィルムはフリップフロップ性がより向上する。
【0062】
別の実施態様では、エンボスパターンを有する型を必要に応じて加熱しながら基体層に圧着することにより凹凸形状表面を有する基体層330を形成し、その上に金属薄膜を堆積する、あるいは光輝性樹脂層組成物を塗布して乾燥又は硬化することにより光輝層320が形成される。この際に、エンボスパターンが熱転写される基体層は、2層以上の多層で形成してもよい。この場合、エンボスパターンに近接する側の層をそれ以外の層に比べ低剛性とすることが好ましい。こうすることにより、エンボスパターンの押圧により生じる歪みを低剛性の層で吸収あるいは緩和し、他の層への影響を抑制できる。また、残留歪によるエンボス形状の経時的変化を防止することもできる。
【0063】
光輝層320の凹凸形状表面を透明樹脂層310でその凹部を満たすように覆うことによって、加飾フィルムの一部となる積層体(凹凸加飾部)が形成される。または、エンボスパターンを有する型を必要に応じて加熱しながら光輝性基体層に圧着することにより凹凸形状表面を有する光輝性基体層が形成される。光輝性基体層の凹凸形状表面を透明樹脂層でその凹部を満たすように覆うことによって、加飾フィルムの一部となる積層体(凹凸加飾部)が形成される。透明樹脂層は、基体層に比較し高剛性であることが好ましい。光輝性基体層の凹凸形状を埋める透明樹脂層側には残留歪が少なく、しかも高剛性であるため、凹凸形状をより安定に維持することができる。
【0064】
別の実施態様では、必要に応じて離型処理が施された、凹凸形状表面を有する金型又シートの表面上に透明樹脂層組成物を薄く塗布して乾燥又は硬化することにより第2透明樹脂層を形成し、その上に金属薄膜を堆積する、あるいは光輝性樹脂層組成物を塗布して乾燥又は硬化することにより光輝層が形成される。その後、第2透明樹脂層及び光輝層の積層体を金型又はシートから取り外し、光輝層とは反対側の第2透明樹脂層の凹凸形状表面を第1透明樹脂層、意匠層、又は保護層でその凹部を満たすように覆い、光輝層側の凹凸形状表面を基体層で覆うことによって、加飾フィルムの一部となる積層体(凹凸加飾部)が形成される。または、必要に応じて離型処理が施された、凹凸形状表面を有する金型又シートの凹部を覆うように透明樹脂層組成物を満たして乾燥又は硬化することにより、凹凸形状表面を有する透明樹脂層が形成される。この透明樹脂層の凹凸形状表面を光輝性基体層で覆うことによって、加飾フィルムの一部となる積層体(凹凸加飾部)が形成される。
【0065】
また、上述した積層体(凹凸加飾部)の基体層又は光輝性基体層上に、接着層、剥離ライナーを適用してもよい。
【0066】
光輝性樹脂層のバインダー樹脂が熱可塑性である場合、あるいは光輝層が金属箔を含む場合は、エンボスパターンを有する型を光輝層に必要に応じて加熱しながら圧着することにより、光輝層に凹凸形状表面を付与することもできる。
【0067】
光輝層又は光輝性基体層の凹凸形状表面のパターンも若しくは模様は、規則的でも不規則であってもよく、特に限定されないが、例えば、万線状、木目、砂目、石目、布目、梨地、皮絞、マット、ヘアライン、スピン、文字、記号、幾何学図形などとすることができる。凹凸形状が溝によって形成される場合、溝の幅は、一般に約1μm以上、又は約10μm以上、約1mm以下、又は約100μm以下の範囲にある。凹凸形状の溝の幅を上記範囲とすることで、加飾フィルムが呈する視角により変化する視覚効果(立体感、フリップフロップ性等)をより高めることができる。
【0068】
図1においてt
1として示される光輝層の凹凸形状表面の深さは、凸形状頂部から連続する凹形状底部までの高低差として決定される。光輝層の凹凸形状表面の深さは、凹凸形状表面全体にわたって均一であってもよく、様々な値であってもよい。光輝層の凹凸形状表面の深さは、一般に約1μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約100μm以下、又は約50μm若しくはそれよりも低い範囲にある。この凹凸形状表面の深さ(t
1)は、光輝性基体層にも適用することができる。凹凸形状の深さは、入射する可視光線の反射及び/又は散乱に寄与する。例えば、凹凸形状の深さが浅い場合には、入射した可視光線は凹凸形状表面で反射され、そのまま半透過メタリック層へ入射する。一方、凹凸形状の深さが深い場合には、凹凸形状表面で反射された可視光線は隣接する凹凸形状表面に入射してその表面で反射されるなど、光反射の強弱が生じる場合があるため、凹凸形状模様の視認性が変動し得る。したがって、平坦な光輝層の場合とは異なり、凹凸形状を有する光輝層又は光輝性基体層を備える加飾フィルムにおいて、立体感とフリップフロップ性、特に、広がり、深み、揺らぎ等を有するより複雑なフリップフロップ性との両方の外観性能を発現させるためには、凹凸形状表面の深さを上記の範囲にすることが好ましい。
【0069】
光輝層の厚さは、例えば約10nm以上が望ましい。光輝層の厚さを約10nm以上とすることにより、基体物品の表面(下地表面)を隠蔽し、かつ視角により変化する視覚効果(立体感、フリップフロップ性等)を発揮するために必要な反射を得ることができる。同様な理由から、光輝層の厚さは、約20nm以上、又は約30nm以上であってもよい。なお、光輝層の厚さは、プロセスコストを抑え、貼り付け時に柔軟性を確保する観点で、約100μm以下、約50μm以下、又は約20μm以下であってもよい。
【0070】
光輝層が真空蒸着、スパッタなどにより形成された金属薄膜である場合、光輝層の厚さを約10nm以上、又は約20nm以上、約100nm以下、又は約80nm以下とすることができる。このように非常に薄い光輝層を含む加飾フィルムは、例えばTOMなどのような加飾フィルムの大きな変形、例えば面積伸び率で約100%以上の延伸を伴う成形方法に特に好適に使用することができる。
【0071】
いくつかの実施態様では、基体層若しくは光輝性基体層及び透明樹脂層のうち、周波数10Hz、引っ張りモードの条件で測定したときに110℃〜150℃の温度範囲で約1×10
6Pa〜約1.5×10
8Paの貯蔵弾性率を有する層のいずれか一方、又は両方の厚さが、凹凸形状表面の深さの、約1.0倍以上、約1.2倍以上、又は約1.5倍以上、約3.0倍以下、約2.5倍以下、又は約2.0倍以下であってもよい。
【0072】
図1に示されるように、加飾フィルム100は透明樹脂層140又は接合層130の上に半透明メタリック層120を含む。半透明メタリック層120は、入射角度に応じ、可視光線10を反射又は透過させ得る層である。
【0073】
半透明メタリック層は、真空蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、めっきなどによって形成されたアルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛、ゲルマニウムなどから選択される金属、又はこれらの合金若しくは化合物を含む金属薄膜であってよい。
【0074】
半透明メタリック層は、アルミニウムフレーク、蒸着アルミニウムフレーク、金属酸化物被覆アルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレークなどのアルミ光輝材、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物で被覆されたフレーク状のマイカ及び合成マイカなどのパール光輝材などの光輝性(メタリック)顔料が、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂などのバインダー樹脂に分散された光輝性(メタリック)樹脂層であってもよい。半透明メタリック層をアルミニウム、ニッケル、金、銀、銅などの金属箔とすることもできる。
【0075】
半透明メタリック層の可視光線透過率は、光輝層又は光輝性基体層の光輝性(反射性)などに応じ、様々であってよいが、光輝層が、金属蒸着層、金属箔等のように光輝性(反射性)が高い場合には、例えば、約10%以上、約15%以上又は約17%以上、約70%以下、約50%以下、約40%以下又は約30%以下であり、光輝材を含む光輝層又は光輝性基体層のように光輝性(反射性)が金属蒸着層などに比べて低い場合には、例えば、約15%以上、約20%以上、約25%以上又は約30%以上、約75%以下、約70%以下又は約65%以下であってもよい。可視光線透過率は、半透明メタリック層に隣り合う保護層及び/又は接合層を含む場合には、これらの層を含む構成における可視光線透過率を意味する。半透明メタリック層の可視光線透過率を上記範囲とすることで、加飾フィルムが呈する視角により変化する視覚効果(フリップフロップ性、高級感等)をより高めることができる。
【0076】
半透明メタリック層の厚さは、加飾フィルムが所望の視覚効果(フリップフロップ性、立体感、高級感等)を呈すれば様々であってよいが、上記の可視光線透過率、視覚効果(フリップフロップ性、立体感、高級感等)を考慮し、例えば約0.1nm以上、約1nm以上、又は約2nm以上、約100nm以下、約50nm以下、又は約40nm以下とすることができる。なお、通常、これらの膜は海島構造をなし、連続的な層構造を為しておらず、ここでいう膜厚は、島状部での厚みの目安である。半透明メタリック層の厚さを上記範囲とすることにより、入射する可視光線の反射性及び透過性のバランスが優れるため、視角により変化する視覚効果(高級感、立体感、フリップフロップ性等)を発揮することが可能な加飾フィルムを得ることができる。
【0077】
半透明メタリック層が真空蒸着、スパッタなどにより形成された金属薄膜である場合、上記の可視光線透過率、視覚効果(フリップフロップ性、立体感、高級感等)を考慮し、半透明メタリック層の厚さを例えば約0.1nm以上、約1nm以上、又は約2nm以上、約100nm以下、約50nm以下、又は約40nm以下とすることができる。このように非常に薄い半透明メタリック層を含む加飾フィルムは、例えばTOMなどのような加飾フィルムの大きな変形、例えば面積伸び率で約100%以上の延伸を伴う成形方法に特に好適に使用することができる。
【0078】
本開示の加飾フィルムは保護層を含んでもよい。保護層として、様々な樹脂、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及び(メタ)アクリル共重合体を含む(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、メチルメタクリレート−フッ化ビニリデン共重合体(PMMA/PVDF)などのフッ素樹脂、シリコーン系共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)及びそのアイオノマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの共重合体又はこれらの混合物が使用できる。耐候性に優れていることから、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン、フッ素樹脂及びポリ塩化ビニルが好ましく、耐擦傷性に優れており、廃棄物として焼却したり埋め立てたりする際の環境負荷が小さいことから、(メタ)アクリル樹脂及びポリウレタンがより好ましい。保護層は多層構造を有してもよい。例えば、保護層は、上記樹脂から形成されたフィルムの積層体であってもよく、上記樹脂の多層コーティングであってもよい。半透明メタリック層の材料が金属系材料である場合、保護層を配置することで、半透明メタリック層の酸化劣化に基づく可視光線透過率の変動を防止することができる。酸化ケイ素等のバリア層を備える保護層を採用すると、半透明メタリック層の酸化劣化をより防止することができる。
【0079】
保護層は、直接又は接合層を介して半透明メタリック層上に樹脂組成物をコーティングして形成することができる。保護層のコーティングは、加飾フィルムを物品に適用する前又は適用した後に実施することができる。あるいは、別のライナー上に樹脂組成物をコーティングして保護層フィルムを形成し、接合層を介して半透明メタリック層上にそのフィルムをラミネートすることもできる。半透明メタリック層が、ライナー上に形成された保護層フィルムに対して接着性を有する場合は、接合層を介さず半透明メタリック層に保護層フィルムを直接ラミネートすることもできる。
【0080】
保護層として、押出、延伸などによってあらかじめフィルム状に形成されたものを使用してもよい。このようなフィルムは接合層を介して半透明メタリック層にラミネートすることができる。あるいは、半透明メタリック層が、このようなフィルムに対して接着性を有する場合は、接合層を介さず半透明メタリック層にフィルムを直接ラミネートすることもできる。平坦性の高いフィルムを使用することで、より表面平坦性の高い外観を構造物に与えることができる。また、保護層を他の層と多層押し出しすることによって形成することもできる。他の層として、(メタ)アクリルフィルムを使用することができる。(メタ)アクリルフィルムとして、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリアクリル酸ブチル、(メタ)アクリル共重合体、エチレン/アクリル共重合体、エチレン酢酸ビニル/アクリル共重合体などを含む樹脂をフィルム状にして用いることができる。(メタ)アクリルフィルムは透明性に優れ、熱や光に強く、屋外で使用しても退色や光沢変化が生じにくい。また、可塑剤を使用せずとも耐汚染性に優れ、しかも成形加工性に優れ深絞り加工できるという特性を有する。特にPMMAを主成分とするものが好ましい。保護層はその表面にエンボスパターンなどの3次元形状を有してもよい。
【0081】
保護層の厚さは様々であってよいが、一般に、約1μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約200μm以下、約100μm以下、又は約80μm以下である。複雑な形状の物品に対して加飾フィルムを適用する場合、保護層は薄い方が形状追従性の観点から有利であり、例えば、約100μm以下、又は約80μm以下であることが望ましい。一方、構造体に高い耐光性及び/又は耐候性を付与する場合、保護層は厚い方が有利であり、例えば約5μm以上、又は約10μm以上であることが望ましい。
【0082】
保護層は、必要に応じて、ベンゾトリアゾール、Tinuvin(商標)400(BASF社製)などの紫外線吸収剤、Tinuvin(商標)292(BASF社製)などのヒンダードアミン光安定化剤(HALS)などを含んでもよい。紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定化剤などを用いることによって、意匠層などに含まれる着色材(特に紫外線などの光に対する感受性が比較的高い有機顔料)の、変色、退色、劣化などを有効に防止することができる。保護層はハードコート材、光沢付与剤などを含んでもよく、追加のハードコート層を有してもよい。保護層は一般に透明であるが、目的とする外観を提供するために、全体又は部分的に半透明であってもよく、部分的に不透明であってもよい。
【0083】
いくつかの実施態様では、保護層の貯蔵弾性率が、周波数10Hz、引っ張りモードの条件で測定したときに110℃〜150℃の温度範囲で約1.0×10
6Pa以上、約1.5×10
6Pa以上、又は約2.0×10
6Pa以上、約1.5×10
8Pa以下又は約1.3×10
8Pa以下であってもよい。保護層が多層構造を有する場合、保護層の貯蔵弾性率とは、個々の層の貯蔵弾性率が複合した、多層構造全体について観測される一つの値を意味する。保護層の貯蔵弾性率が上記範囲であることにより、加飾フィルムに応力、熱などが加えられたとき又は加飾フィルムが変形したときに、半透明メタリック層及び/又は光輝層若しくは光輝性基体層の破損を防止することができる。その結果、応力、熱、変形を伴う場合であっても、加飾フィルムは、視角により変化する視覚効果(立体感、フリップフロップ性等)を発揮することができる。
【0084】
いくつかの実施態様では、保護層及び透明樹脂層の貯蔵弾性率が、周波数10Hz、引っ張りモードの条件で測定したときに110℃〜150℃の温度範囲で約1.0×10
6Pa以上、約1.5×10
6Pa以上、又は約2.0×10
6Pa以上、約1.5×10
8Pa以下又は約1.3×10
8Pa以下であってもよい。上記範囲の貯蔵弾性率を有する保護層と透明樹脂層とで半透明メタリック層を両側から支持するサンドイッチ構造とすることにより、例えばIM、TOMなどの真空成形法において加飾フィルムを大きく変形させたとき、例えば面積伸び率で100%以上又は200%以上となるように加飾フィルムを延伸したときでも、半透明メタリック層の破損を防止することができる。その結果、応力、熱、変形を伴う場合であっても、加飾フィルムは、視角により変化する視覚効果(立体感、フリップフロップ性等)を発揮することができる。
【0085】
一実施態様では、加飾フィルムは保護層と半透明メタリック層との間又は半透明メタリック層と透明樹脂層との間、例えば、
図3に示すように、第1透明樹脂層(接合層)130と第2透明樹脂層140の間などに意匠層135を含んでもよい。
【0086】
意匠層として、塗装色などを呈するカラー層、木目、石目、幾何学模様、皮革模様などの模様、ロゴ、絵柄などを構造体に付与するパターン層、表面に凹凸形状が設けられたレリーフ(浮き彫り模様)層など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0087】
カラー層として、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、赤色酸化鉄などの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、アゾレーキ系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドンレッドなどのキナクリドン系顔料などの有機顔料などの顔料が、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂などのバインダー樹脂に分散されたものを使用することができる。
【0088】
パターン層として、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、レーザー印刷、スクリーン印刷などの印刷、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコートなどのコーティング、打ち抜き、エッチングなどにより形成された模様、ロゴ、絵柄などを有するフィルム、シートなどを使用することができる。
【0089】
レリーフ層として、従来公知の方法、例えばエンボス加工、スクラッチ加工、レーザー加工、ドライエッチング加工、又は熱プレス加工などによる凹凸形状を表面に有する熱可塑性樹脂フィルムを使用することができる。凹凸形状を有する離型フィルム上に硬化性(メタ)アクリル樹脂などの熱硬化性又は放射線硬化性樹脂を塗布し、加熱又は放射線照射により硬化して、離型フィルムを取り除くことによりレリーフ層を形成することもできる。レリーフ層に用いられる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び放射線硬化性樹脂として、特に限定されないが、フッ素系樹脂、PET、PENなどのポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ABS樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリウレタンなどを使用することができる。
【0090】
意匠層の厚さは様々であってよく、一般に、約0.1μm以上、約1μm以上、又は約3μm以上、約300μm以下、約200μm以下、又は約100μm以下とすることができる。
【0091】
加飾フィルムは、基体物品に加飾フィルムを取り付けるための接着層170をさらに含んでもよい。接着層として、一般に使用される(メタ)アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を使用することができる。接着層の厚さは、一般に、約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約200μm以下、約100μm以下、又は約80μm以下とすることができる。
【0092】
接着層又は接着性を有する基体層を保護するための剥離層として、任意の好適な剥離ライナー180を使用することができる。代表的な剥離ライナーとして、紙(例えば、クラフト紙)又はポリマー材料(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンビニルアセテート、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルなど)から調製されるものが挙げられる。剥離ライナーは、必要に応じてシリコーン含有材料又はフルオロカーボン含有材料などの剥離剤の層でコーティングされていてもよい。
【0093】
剥離剤層の厚さは、一般に、約5μm以上、約15μm以上又は約25μm以上、約300μm以下、約200μm以下又は約150μm以下とすることができる。
【0094】
加飾フィルムを構成する各層を接合するために接合層及び/又はプライマー層を用いてもよい。接合層、プライマー層として、一般に使用されるアクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を使用することができる。接合層及び/又はプライマー層の厚さは、一般に、約0.05μm以上、約0.5μm以上、又は約5μm以上、約100μm以下、約50μm以下、又は約20μm以下とすることができる。接合層及び/又はプライマー層が透明樹脂から形成されており透明樹脂層に隣接する場合は、接合層及び/又はプライマー層は透明樹脂層の一部とみなされ得る。
【0095】
加飾フィルムの視覚効果(立体感、フリップフロップ性等)に不具合を生じさせない範囲で、保護層、透明樹脂層、基体層、接着層、及び/又は接合層は、意匠層について説明したものと同じ無機顔料、有機顔料などの着色材を含んでもよい。
【0096】
スズ蒸着膜、インジウム蒸着膜などの金属薄膜を光輝層として含む加飾フィルム、例えばクロムメッキ代替フィルムなどとして使用される加飾フィルムにおいては、基体層、接着層などに上記顔料を含ませることによって基体物品を隠蔽する性能を高めることができる。スズ蒸着膜などは蒸着膜表面にピンホールなどの蒸着欠陥を有する場合があるが、基体層、接着層などを着色することでこのような欠陥を目立たなくすることができる。
【0097】
上記層に含まれる顔料の量は、上記層の約0.1質量%以上、約0.2質量%以上、又は約0.5質量%以上、約50質量%以下、約20質量%以下、又は約10質量%以下とすることが有利である。
【0098】
加飾フィルムの厚さは、一般に、約25μm以上、約50μm以上、又は約100μm以上、約2mm以下、約1mm以下、又は約500μm以下であってもよい。加飾フィルムの厚さを上記範囲とすることにより、複雑な形状を有する物品に対しても加飾フィルムを十分に追従させて、優れた外観を有する構造体を提供することができる。
【0099】
加飾フィルムの耐引っかき性はJIS K5600−5−4に準拠した鉛筆硬度によって評価することができる。ある実施態様の加飾フィルムは、接着層又はポリウレタン加熱接着層をガラス板の表面に向けて加飾フィルムをガラス板の上に固定し、600mm/分の速度で保護層を引っかいたときの鉛筆硬度が6B以上である。鉛筆硬度は、5B以上、4B以上、又は3B以上とすることができる。
【0100】
加飾フィルムの製造方法について
図5を参照しながら例示的に説明するが、加飾フィルムの製造方法はこれに限られない。
【0101】
PETフィルムなどの剥離ライナー(図示せず)上にポリウレタンなどを含む透明樹脂層310をコーティングする。エンボスパターンを有する型を必要に応じて加熱しながら透明樹脂層310に適用し、凹凸形状表面を有する透明樹脂層310を形成する。この際、エンボスパターンが熱転写される透明樹脂層310は、2層以上の多層で形成することもできる。この場合、エンボスパターンに近接する側の層をそれ以外の層に比べ低剛性とすることが好ましい。こうすることにより、エンボスパターンの押圧により生じる歪を低剛性層で吸収あるいは緩和し、他の層への影響を抑制できる。
【0102】
その後、この凹凸形状表面に金属薄膜を蒸着等で適用し、光輝層320を形成する。光輝層320の凹凸形状表面を、ポリウレタンなどを含む基体層330でその凹部を満たすように覆うことによって、積層体(凹凸加飾部)を形成する。ここで、光輝層320を適用せずに、透明樹脂層310の凹凸形状表面を光輝性基体層でその凹部を満たすように覆うことによって、加飾フィルムの一部となる積層体(凹凸加飾部)を形成してもよい。次いで、表面を剥離処理したPETフィルムなどの剥離ライナー350上に、接着層340コーティングし、積層体(接着部)を形成する。積層体(凹凸加飾部)の基体層330と積層体(接着部)の接着層340を必要に応じて加熱及び/又は加圧して貼り合わせ、積層体A(300)を形成する。
【0103】
PETフィルムなどの剥離ライナー410上にポリウレタンなどを含む接合層420をコーティングする。接合層420上に金属薄膜を蒸着等で適用し、半透明メタリック層430を含む積層体(半透明メタリック部)400を形成する。一方、保護層の一部となるポリウレタンなどの保護層510を含む積層体(保護部)500を準備する。必要に応じて接合層を保護層又は半透明メタリック層にコーティングし、積層体(半透明メタリック部)400と積層体(保護部)500とを積層する。なお、保護層510は、複数の層から形成することができ、キャスティングや共押出し法などにより、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)等よりなる保護層とポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)等を含む保護層の積層体としてもよい。積層体(半透明メタリック部)400と積層体(保護部)500とを必要に応じて加熱及び/又は加圧して貼り合わせ、積層体Bを形成する。
【0104】
積層体A及び積層体Bの剥離ライナーを各々除去し、積層体A(300)の透明樹脂層310と積層体Bの接合層420とを必要に応じて加熱及び/又は加圧して貼り合わせ、加飾フィルム600を形成する。加飾フィルムの製造方法において、コーティングは必要に応じて乾燥及び/又は硬化工程を備えてもよく、単層押出法、多層押出法などに置換することもできる。
【0105】
本開示の一実施態様によれば、加飾フィルムを基体物品に被覆した物品が提供される。例えば、IM又はTOMにより加飾フィルムを物品に適用することによって、加飾フィルムを貼り付けた物品を形成することができる。別の実施態様では、基体物品となる熱可塑性材料を加飾フィルムの上に押し出すことによって、加飾フィルム及び押し出された熱可塑性材料が合体した物品を形成することができる。IM、TOM、及び押出は、従来公知の方法によって行うことができる。
【0106】
基体物品は様々な材料、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、又はそれらの混合物若しくはブレンドで作られていてよく、様々な平面及び3次元形状を有する材料を使用することができる。
【0107】
成形後の加飾フィルムの最大面積伸び率は、一般に、約50%以上、約100%以上、又は約200%以上、約1000%以下、約500%以下、又は約300%以下である。面積伸び率は、面積伸び率(%)=(B−A)/A(A:加飾フィルムのある部分の成形前の面積、B:加飾フィルムのAに対応する部分の成形後の面積)で定義される。例えば、加飾フィルムのある部分の面積が成形前に100cm
2であって、その部分が成形後に物品の表面で250cm
2となった場合は150%である。最大面積伸び率は、成形品表面全ての加飾フィルムのなかで最も高い面積伸び率の箇所の値を指す。3次元形状を有する物品に平らなフィルムをTOMにより貼り付けると、例えば、最初にフィルムが物品に当たる部分はほとんど延伸されず面積伸び率はほぼ0%となる。最後に貼り付けられる端部では大きく延伸されて面積伸び率が200%以上になる。このように、場所によって面積伸び率は大きく異なる。フィルムが最も大きく延伸された部分に対し、物品に対する未追従、フィルムの破れなどの不具合が生じるか否かが成形の合否を決める。したがって、成形品全体の平均面積伸び率ではなく、最も大きく延伸された部分の面積伸び率、すなわち最大面積伸び率が成形品の合否の実質的な指標となる。最大面積伸び率は、例えば成形前の加飾フィルムの表面全体に1mm四方のマス目を印刷しておき、成形後にその面積変化を測定する、あるいは成形前後の加飾フィルムの厚さを測定することにより確認できる。
【0108】
本開示の加飾フィルムは、自動車部品、家電製品、車輌(鉄道など)、建材などの装飾を目的として、TOM、IM、押出法などの様々な成形技術において利用することができ、特にTOMにおいて好適に使用することができる。
【実施例】
【0109】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0110】
本実施例で使用した試薬、原料などを以下の表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
<粘弾性特性>
加飾フィルムを構成する層の粘弾性特性は、動的粘弾性測定装置ARES(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、日本国東京都品川区)を用い、引っ張りモード、周波数10.0Hzにおいて、110℃から150℃における貯蔵弾性率G’(Pa)により決定される。
【0113】
<例1〜5、比較例1>
光輝層を有する加飾フィルムを以下の手順で作製した。
【0114】
(1)保護層、半透明メタリック層、第1透明樹脂層
離型処理を施した50μm厚みのPETフィルム上に水系ポリウレタン溶液(レザミン(商標)D6260)をナイフコーターでコーティングした後、120℃で5分間加熱して乾燥して、厚さ約30μmのポリウレタン層を形成した。55質量部のセイカボンド(登録商標)E−295NT、酢酸エチル43質量部、2質量部の硬化剤C−55を混合することによって、接着剤溶液を調製し、PETフィルムに塗布し30μm厚みの接合層を形成し、先に形成したポリウレタン層上に積層した。こうして作製した、保護層となるポリウレタン層の接着剤が形成されていない側の離型性PETフィルム除去後のポリウレタン層表面上に、アルミニウム又はスズを以下の条件で堆積して蒸着層を形成した。次いで、蒸着層上に同様の条件で、厚さ30μmのポリウレタン層(接合層の機能を備える第1透明樹脂層)を被覆し、積層体(半透明メタリック部)を形成した。得られた積層体(半透明メタリック部)の可視光線透過率をJIS−K−7105に準拠して測定した。その結果を表2に示す。
装置:真空蒸着装置EX−400(株式会社アルバック製、日本国神奈川県茅ヶ崎市)
ターゲット金属蒸発のエネルギー源:電子線
蒸着膜の成膜速度:5オングストローム/秒
【0115】
(2)エンボス剥離フィルム
50μm厚のPETフィルムの両側に50μm厚の無延伸ポリプロピレンフィルムが配置された剥離フィルムを用意した。凹凸の最大深さ25μmのエンボスパターンが彫り込まれた型A及び凹凸の最大深さ15μmエンボスパターンが彫り込まれた型Bを用意した。これらの型を剥離フィルムに加熱圧着してエンボスパターンを有する剥離フィルムをそれぞれ形成した。
【0116】
(3)第2透明樹脂層
93.85質量部のレザミン(商標)D6260、0.99質量部のレザミン(商標)D28、0.47質量部のサーフィノール(商標)104E、及び4.69質量部のIPAを混合することによって、水系ポリウレタン溶液を調製した。得られた水系ポリウレタン溶液を、ナイフコーターを用いてエンボス剥離フィルム表面に薄く塗布し、120℃で5分間加熱して乾燥して、ポリウレタンの第2透明樹脂層を形成した。第2透明樹脂層の厚さは3μmであった。
【0117】
(4)光輝層(スズ蒸着膜)
光輝層としてスズ蒸着膜を以下の条件で第2透明樹脂層の表面に堆積した。形成された光輝層は凹凸形状表面を有していた。
装置:真空蒸着装置EX−400(株式会社アルバック製、日本国神奈川県茅ヶ崎市)
ターゲット金属蒸発のエネルギー源:電子線
スズ蒸着膜の成膜速度:5オングストローム/秒
スズ蒸着膜の厚さ:43nm(430オングストローム)
【0118】
(5)ポリウレタン基体層
第2透明樹脂層の形成に使用した水系ポリウレタン溶液をナイフコーターで凹凸形状表面を有するスズ蒸着膜の上に塗布し、120℃で5分間加熱して乾燥して、厚さ20μmのポリウレタン基体層を形成した。ポリウレタン基体層の貯蔵弾性率は、周波数10Hz、引っ張りモードの条件で測定したときに110〜150℃の温度範囲で1.1×10
8Pa〜6.2×10
6Paの範囲にあった。
【0119】
(6)アクリル接着層
49.95質量部のSK−ダイン(登録商標)1506BHE、18.14質量部のジュリマー(登録商標)YM−5、0.54質量部のE−5XM、及び31.36質量部のMIBKを混合することによって、アクリル接着剤溶液を調製した。得られたアクリル接着剤溶液をナイフコーターで剥離処理PETフィルム(ACW200)上に塗布し、120℃で5分間加熱して乾燥して、厚さ40μmのアクリル接着層を形成した。
【0120】
(7)アクリルプライマー層
8.57質量部のポリメント(登録商標)NK−350及び91.43質量部のメチルイソブチルケトンを混合することによって、アクリルプライマー溶液を調製した。得られたアクリルプライマー溶液をワイヤーバーでポリウレタン基体層の上に乾燥厚さが7μmとなるように塗布し、室温で乾燥した。
【0121】
(8)アクリル接着層の積層
アクリル接着層をアクリルプライマー層の上に50℃でロールラミネーターを用いて加熱積層した。次にエンボス剥離フィルムを除去し、第2透明樹脂層の形成に使用した水系ポリウレタン溶液をナイフコーターで凹凸形状表面を有する第2透明樹脂層の上に塗布して平滑な第2透明樹脂層を形成した。凹凸形状平滑な第2透明樹脂層を120℃で5分間加熱乾燥して積層体(凹凸加飾部)を形成した。
【0122】
(9)加飾フィルム
積層体(半透明メタリック部)の第1透明樹脂層のポリウレタン層を、積層体(凹凸加飾部)の第2透明樹脂層上に50℃でロールラミネーターを用いて加熱積層して、加飾フィルムを得た。加飾フィルムの厚さは150μmであり、光輝層の凸形状頂部から半透明メタリック層底部までの厚さは33μmであった。
【0123】
得られた加飾フィルムを、TOMを用いて成形温度135℃で面積伸び率が100%となるように基体物品(PC/ABS板(CK43黒色、テクノポリマー株式会社製、日本国東京都港区))の上に接着して物品を形成した。物品に適用された加飾フィルムの外観を目視観察し、その結果を表2に示す。「フリップフロップ性」の有無の評価は、物品表面に対し、観察者の物品に対する視角を約30〜約90度の範囲で変化させたときに(
図4写真上図参照)、視角変化に伴う加飾フィルムの表面の模様出現と消失の変化(フリップフロップ)の状態を四段階で評価した。フリップフロップが観察されない場合を「Not good」、フリップフロップが観察される場合を「Good」、フリップフロップが観察される場合であって、明確なフリップフロップが観察される場合を「Very good」、明確にしかも物品の広範囲でフリップフロップが観察される場合を「Excellent」とした。なお、
図4に示す物品の写真例はここでいう「Excellent」の例5に相当する。立体感の視覚的効果に関しては、観察者が物品を観察したときに立体感を得られるかどうかに着目して評価した。いすれの例も立体感が得られたが、立体感のレベルにより、良好な立体感が得られる場合を「Good」、非常に明確な立体感が得られる場合を「Excellent」とした。
【0124】
【表2】
【0125】
物品の外観を観察したところ、TOMの成形後においても同様に、立体感とフリップフロップ性とを呈する外観が認識された。例1〜5の加飾フィルムは、自動車の成形された内装部品などにTOMなどの真空成形法を用いて好適に適用することができる。
【0126】
<例5〜12>
光輝性基体層を有する加飾フィルムを以下の手順で作製した。
【0127】
(1)保護層、半透明メタリック層、第1透明樹脂層
例1と同様に、積層体(半透明メタリック部)を形成した。得られた積層体(半透明メタリック部)の可視光線透過率をJIS−K−7105に準拠して測定した。その結果を表3に示す。
【0128】
(2)エンボス剥離フィルム
50μm厚のPETフィルムの両側に50μm厚の無延伸ポリプロピレンフィルムが配置された剥離フィルムを用意した。凹凸の最大深さ25μmのエンボスパターンが彫り込まれた型Cを用意した。これらの型を剥離フィルムに加熱圧着してエンボスパターンを有する剥離フィルムをそれぞれ形成した。
【0129】
(3)ポリウレタン光輝性基体層
100質量部のレザミン(商標)D6260、0.99質量部のレザミン(商標)D28、0.47質量部のサーフィノール(商標)104E、3質量部のEMR−D6390及び4.69質量部のIPAを混合することによって、光輝性水系ポリウレタン溶液を調製した。得られた光輝性水系ポリウレタン溶液をナイフコーターで凹凸形状表面を有するエンボス剥離フィルムの凹部を埋めるように塗布し、120℃で5分間加熱して乾燥して、厚さ25μmのポリウレタン光輝性基体層を形成した。ポリウレタン光輝性基体層の貯蔵弾性率は、周波数10Hz、引っ張りモードの条件で測定したときに110〜150℃の温度範囲で1.1×10
8Pa〜6.2×10
6Paの範囲にあった。
【0130】
(4)アクリルプライマー層
例1で得られたアクリルプライマー溶液をワイヤーバーでポリウレタン光輝性基体層の上に乾燥厚さが7μmとなるように塗布し、室温で乾燥した。
【0131】
(5)アクリル接着層の積層
例1で得られたアクリル接着層をアクリルプライマー層の上に50℃でロールラミネーターを用いて加熱積層した。次にエンボス剥離フィルムを除去した。例1の第2透明樹脂層の形成に使用した水系ポリウレタン溶液をナイフコーターで凹凸形状表面を有するポリウレタン光輝性基体層の上に塗布してポリウレタン光輝性基体層を平滑化し、120℃で5分間加熱乾燥して積層体(凹凸加飾部)を形成した。
【0132】
(6)加飾フィルム
積層体(半透明メタリック部)の第1透明樹脂層のポリウレタン層を、積層体(凹凸加飾部)の平滑化したポリウレタン光輝性基体層上に50℃でロールラミネーターを用いて加熱積層して、加飾フィルムを得た。加飾フィルムの厚さは150μmであり、光輝層の凸形状頂部から半透明メタリック層底部までの厚さは30μmであった。
【0133】
得られた加飾フィルムを、TOMを用いて成形温度135℃で面積伸び率が100%となるように基体物品(ABS)の上に接着して物品を形成した。物品に適用された加飾フィルムの外観を目視観察し、その結果を表3に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
物品の外観を観察したところ、TOMの成形後においても同様に、立体感とフリップフロップ性とを呈する外観が認識された。例5〜12の加飾フィルムも、自動車の成形された内装部品などにTOMなどの真空成形法を用いて好適に適用することができる。